説明

オイルレベルゲージ

【課題】オイルレベルゲージ1において、ブリーザ溝24によりオイルパンの内圧を開放する機能を維持すると共に外部からの水や塵埃の侵入を阻止し得る構造とする。
【解決手段】管状のゲージガイド2からオイルパン内へ挿入されるゲージ本体10と、その上端に設けられたゴム状弾性材料製の把手20からなり、把手20には、ゲージガイド2の開口部に密接されるシール部23が形成されると共に、オイルパン内の圧力を大気開放するためのブリーザ溝24と、このブリーザ溝24を塞ぐように延びると共にゲージガイド2の内面2aに密接可能な膜部25が形成される。この膜部25は、所定の気圧差によって変形され、ブリーザ溝24を通じての通気を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内燃機関のオイル量を確認するためのオイルレベルゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図8〜図10に示されるようなオイルレベルゲージ100が知られている。このオイルレベルゲージ100は、不図示の内燃機関のオイルパンに設けられた管状のゲージガイド200に挿入されることによってオイルパン内のオイルを付着させて油面レベルを確認するための金属製のゲージ本体110と、その上端に設けられたゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)製の把手120からなる。把手120には、ゲージガイド200の開口部に密接されることによってこれをシールするためのシール部121が形成されると共に、このシール部121にオイルパン内の圧力を大気開放するためのブリーザ溝122が形成されている(例えば下記の特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−2027号公報
【特許文献2】特開平9−256832号公報
【0004】
ところが、従来のオイルレベルゲージ100は、ブリーザ溝122が、図9に示されるようにシール部121とゲージガイド200の間に上下方向へ延びる単純な通気路Bを形成するものにすぎないため、大気側の水や塵埃が通気路Bを通じてオイルパン内に侵入する可能性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、オイルレベルゲージにおいて、ブリーザ溝によりオイルパンの内圧を開放する機能を維持すると共に外部からの水や塵埃の侵入を阻止し得る構造とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係るオイルレベルゲージは、管状のゲージガイドからオイルパン内へ挿入されるゲージ本体と、このゲージ本体の上端に設けられたゴム状弾性材料製の把手からなり、前記把手には、前記ゲージガイドの開口部に密接されるシール部が形成されると共に、オイルパン内の圧力を大気開放するためのブリーザ溝と、このブリーザ溝を塞ぐように延びると共に前記ゲージガイドの内面に密接可能であって、所定の気圧差によって変形されて前記ブリーザ溝を通じての通気を許容する膜部が形成されたものである。
【0007】
また、本発明において一層好ましくは、膜部に開閉可能なスリットが形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るオイルレベルゲージによれば、外部からブリーザ溝を通じての水や塵埃の侵入は、ブリーザ溝を塞ぐように形成された膜部によって有効に防止される。またこの膜部は所定の気圧差によって容易に変形して前記ブリーザ溝を通じての通気を許容するため、オイルパンの内圧を開放する機能が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るオイルレベルゲージの好ましい第一の実施の形態を示す要部側面図である。
【図2】図1におけるII−II’断面図である。
【図3】図1におけるIII方向の矢視図である。
【図4】本発明に係るオイルレベルゲージの好ましい第二の実施の形態を示す要部側面図である。
【図5】図4におけるV−V’断面図である。
【図6】図4におけるVI方向の矢視図である。
【図7】本発明に係るオイルレベルゲージの好ましい第三の実施の形態を示す要部側面図である。
【図8】従来の技術に係るオイルレベルゲージの一例を示す要部側面図である。
【図9】図8におけるIX−IX’断面図である。
【図10】図8におけるX方向の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るオイルレベルゲージの好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。まず図1〜図3は第一の実施の形態を示すものである。
【0011】
第一の実施の形態のオイルレベルゲージ1において、参照符号10は不図示の内燃機関のオイルパンに設けられた管状のゲージガイド2に挿入されることによってオイルパン内のオイルを付着させて油面レベルを確認するための金属製のゲージ本体、参照符号20はゲージ本体10の上端に設けられたゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)製の把手である。
【0012】
把手20には、手指でつまむ部分である把手本体部21と、その下側の鍔部22と、さらにその下側のシール部23からなる。鍔部22は、下面がゲージガイド2の開口端部に密接可能であり、シール部23はゲージガイド2の内面2aに適当なつぶし代をもって密嵌可能な複数のシール突条23aを有する。
【0013】
把手20におけるシール部23の外周面から鍔部22の下面にかけて、ブリーザ溝24が形成されている。このブリーザ溝24は、図2に示されるように、鍔部22がゲージガイド2の開口端部に密接する位置までシール部23をゲージガイド2に嵌挿させた状態において、ゲージガイド2の内面2aとの間に、オイルパン内の圧力を大気開放するための通気路Bを形成するものである。
【0014】
ブリーザ溝24内には、このブリーザ溝24を塞ぐように延びる平面状の薄肉の膜部25が形成されている。膜部25の外周縁25aは、シール部23におけるシール突条23aの外径とほぼ同一円周をなしていて、このシール部23をゲージガイド2に挿入して密嵌した状態において、このシール突条23aに比較して十分に小さな荷重でゲージガイド2の内面2aに密接されるものである。したがって膜部25は、オイルパン内の温度変化などに伴うオイルパンの内圧変化によって容易に変形され、外部の大気圧との間の圧力差が所定値以上になったときにゲージガイド2の内面2aとの間に隙間を生じて通気を許容するものである。
【0015】
以上のように構成された第一の実施の形態のオイルレベルゲージ1は、通常、管状のゲージガイド2を通じて不図示のオイルパン内にゲージ本体10が挿入されると共に、図2に示されるように、把手20におけるシール部23がゲージガイド2の開口端部近傍の内面2aに嵌挿され、鍔部22の下面がゲージガイド2の開口端部に密接されている。そして把手20における把手本体部21を手指でつまんで、当該オイルレベルゲージ1をゲージガイド2から引き抜いて、オイルがゲージ本体10の先端からどの部分まで付着しているかを確認することによって、オイルパン内の油面レベルを確認することができ、付着したオイルの色によって、オイルの汚れを確認することができるものである。
【0016】
図2に示される装着状態では、ブリーザ溝24とゲージガイド2との間に形成された通気路Bは、ブリーザ溝24内の膜部25によって塞がれており、外部からの水や塵埃の侵入が有効に防止されている。
【0017】
また、温度変化などに起因してオイルパンの内圧が変化すると、外部の大気圧との圧力差によって膜部25が変形を受け、前記圧力差が所定値を超えて大きくなると、膜部25の外周縁25aとゲージガイド2の内面2aとの間に隙間を生じるため、通気路Bを通じて通気が許容され、オイルパンの内圧が大気開放される。そして大気開放により前記圧力差が所定値以下になると、膜部25の外周縁25aがゲージガイド2の内面2aに密接され、通気路Bを閉塞するのである。
【0018】
次に、図4〜図6は本発明に係るオイルレベルゲージの第二の実施の形態を示すものである。
【0019】
この第二の実施の形態のオイルレベルゲージ1において、上述した第一の実施の形態と異なるところは、膜部25が、図4に示される外周側からの投影形状において略V字形の屈曲形状又は円弧状の湾曲形状をなすことにある。その他の部分は基本的に第一の実施の形態と同様に形成することができる。
【0020】
詳しくは、膜部25の外周縁25aは、シール部23におけるシール突条23aの円周方向の延長面にほぼ沿った高さとなっており、前記図6に示される投影形状では、屈曲した中央部25bがシール突条23aとほぼ同じ高さになるような山形をなしている。また、膜部25の両端部25cは、ゲージガイド2の内面2aに対するシール突条23aのつぶし代の範囲内に位置している。
【0021】
すなわち、第一の実施の形態のように膜部25を平面状に形成した場合は、把手20にのシール部23をゲージガイド2に挿入することによって、シール部23のシール突条23aが圧縮を受けるのに伴って、膜部25がいびつに変形されやすいのに対し、第二の実施の形態によれば、ゲージガイド2への挿入によってシール部23のシール突条23aが圧縮を受けた状態では、略V字形の屈曲形状又は円弧状の湾曲形状に形成された膜部25は、最も変形が大きくなる中央部25b付近が屈曲していることによって形状が安定するため、ゲージガイド2の内面2aと良好な密接状態を得ることができる。
【0022】
またこの形態でも、膜部25は薄肉であるため、シール突条23aに比較して十分に小さな荷重でゲージガイド2の内面2aに密接されるものであって、オイルパンの内圧変化によって容易に変形され、外部の大気圧との間の圧力差が所定値以上になったときにゲージガイド2の内面2aとの間に隙間を生じて通気を許容するものである。
【0023】
次に、図7は本発明に係るオイルレベルゲージの第三の実施の形態を示すものである。
【0024】
この第三の実施の形態のオイルレベルゲージ1は、上述した第二の実施の形態における膜部25に、ブリーザ溝24の幅方向中央部でこのブリーザ溝24の延長方向へ貫通するスリット26を形成したことにある。すなわち、このスリット26は膜部25の中央の屈曲部分に形成されており、通常は密着(閉塞)状態にあって、オイルパンの内圧変化による膜部25の変形に伴い僅かに開かれるものである。その他の部分は基本的に第二の実施の形態と同様に形成することができる。
【0025】
以上の構成によれば、把手20のシール部23をゲージガイド2(図5など参照)の開口端部近傍の内周に嵌挿した状態において、通常は、ブリーザ溝24内の膜部25に形成されたスリット26は密閉しており、かつ前記膜部25の外周縁25aがゲージガイド2の内面2aに密接されている。このためブリーザ溝24とゲージガイド2との間に形成される通気路B(図5など参照)を通じて外部からの水や塵埃がオイルパンへ侵入するのを有効に防止することができる。
【0026】
また、温度変化などに起因してオイルパンの内圧が変化し、外部の大気圧との圧力差が所定値を超えて大きくなると、膜部25の変形に伴いスリット26が開かれるため、オイルパンの内圧が大気開放される。そして大気開放により前記圧力差が所定値以下になると、スリット26は密閉され、通気路Bを閉塞するのである。
【0027】
なお、図7ではスリット26を略V字形の屈曲形状又は円弧状の湾曲形状をなす膜部25に設けたが、第一の実施の形態のように膜部25が平面状をなすものであっても実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 オイルレベルゲージ
10 ゲージ本体
20 把手
21 把手本体部
22 鍔部
23 シール部
23a シール突条
24 ブリーザ溝
25 膜部
26 スリット
2 ゲージガイド
2a 内面
B 通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のゲージガイドからオイルパン内へ挿入されるゲージ本体と、このゲージ本体の上端に設けられたゴム状弾性材料製の把手からなり、前記把手には、前記ゲージガイドの開口部に密接されるシール部が形成されると共に、オイルパン内の圧力を大気開放するためのブリーザ溝と、このブリーザ溝を塞ぐように延びると共に前記ゲージガイドの内面に密接可能であって、所定の気圧差によって変形されて前記ブリーザ溝を通じての通気を許容する膜部が形成されたことを特徴とするオイルレベルゲージ。
【請求項2】
膜部に開閉可能なスリットが形成されたことを特徴とする請求項1に記載のオイルレベルゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−31812(P2012−31812A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173434(P2010−173434)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】