説明

オキシカム系化合物を含む固形製剤を製造する方法

【課題】本発明は、オキシカム系化合物の溶解性が高い固形製剤を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、オキシカム系化合物を含む固形製剤を製造する方法を提供する。該方法は、塩基性アミノ酸水溶液にオキシカム系化合物を溶解すること、及び該溶解液を乾燥することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシカム系化合物を含む固形製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシカム系化合物は水に難溶性であることから、その製剤化についてこれまで種々の方法が試みられている。
【0003】
特許文献1は、オキシカム系抗炎症剤の溶解性を改善するために、オキシカム系抗炎症剤に制酸剤である塩基性無機塩を混合粉砕する方法を記載する。
【0004】
特許文献2は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)及びアミノ酸誘導体を含むアルカリ物質を物理的に密に接触させるために、共粉砕またはそれと同等の方法で、激しく混合する方法を記載する。
【0005】
いわゆる制酸剤である塩基性無機塩を配合することにより、胃酸の更なる分泌が促進されることから、該配合がされた製剤は胃に炎症等を有する患者にとって負担がかかるものである。また、塩基性無機塩を配合することで固形製剤の大きさが大型化されるので、該配合がされた製剤は服用しにくいものであった。
【0006】
さらに、原薬と塩基性無機塩等とを混合粉砕するなどの前処理が必要不可欠であり、特に微粉砕が必要な場合には収率が悪いという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平03−240729号公報
【特許文献2】特開2008−504307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、オキシカム系化合物の溶解性が高い固形製剤を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、高濃度の塩基性アミノ酸水溶液に、オキシカム系化合物を溶解することで上記課題が解決されることを見いだした。さらに、該溶解液を乾固させることによって又は該溶解液を流動層造粒機に直接噴霧/乾燥することによって、上記課題がさらに効果的に解決されることを発見した。また、該溶解液に賦形剤を添加することによって、オキシカム系化合物の溶解性が高まることが分かった。
【0010】
本発明は、塩基性アミノ酸水溶液にオキシカム系化合物を溶解すること、及び該溶解液を乾燥することを含む、オキシカム系化合物を含む固形製剤の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の1つの実施態様において、該塩基性アミノ酸水溶液は、塩基性アミノ酸1部〜10部及び水10部〜40部を含む。
【0012】
本発明の1つの実施態様において、該塩基性アミノ酸水溶液10部〜50部に対して、該オキシカム系化合物が1部〜10部である。
【0013】
本発明の1つの実施態様において、該塩基性アミノ酸が、リジン又はアルギニンの少なくとも1を含む。
【0014】
本発明の1つの実施態様において、該塩基性アミノ酸水溶液のpHは7.0〜12.0である。
【0015】
本発明の1つの実施態様において、該塩基性アミノ酸水溶液のpHを酸性アミノ酸により調整するステップをさらに含む。
【0016】
本発明の1つの実施態様において、該塩基性アミノ酸水溶液に賦形剤をさらに添加することを含む。該賦形剤の例として、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0017】
本発明の1つの実施態様において、該固形製剤中の塩基性アミノ酸は、該固形製剤100〜200部に対して1〜25部である。
【0018】
本発明の1つの実施態様において、該固形製剤は経口固形製剤である。
【0019】
本発明の1つの実施態様において、オキシカム系化合物は、ロルノキシカム、ピロキシカム、テノキシカム又はアンピロキシカムの少なくとも1を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法において、塩基性アミノ酸を溶解した水溶液を用いることにより、オキシカム系化合物の溶解性が高い固形製剤を得ることができる。さらに、該溶解性の高さは、制酸剤が配合されなくても達成されうる。また、本発明により得られた固形製剤は、オキシカム系化合物の溶解性が高いので、良好なバイオアベイラビリティーを示す。
本発明の方法では、固形製剤の製造段階で塩基性アミノ酸水溶液を用いることにより、オキシカム系化合物を容易に溶解することができる。従って、該水溶液に制酸剤が配合されなくてもよい。
また、本発明により、固形製剤の高い収率が得られる。これは、混合粉砕の必要が無く、さらには微粉砕の必要も無いことによる。従来のジェット粉砕、混合粉砕又は微粉砕等の粉砕を行った場合の小スケールでの収率は約50%〜70%であるが、本発明の方法を用いた場合は粉砕処理をしなくてもよい故に、90%程度又はそれ以上の収率が得られる。
【0021】
本発明の製剤には、制酸剤が配合されなくてよいが、必要に応じて加えてもよい。制酸剤は、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイトを含む。よって、本発明の製剤の投与を受けた者において、胃酸の分泌を促進がされない。従って、制酸剤を配合する製剤と比べて、胃に炎症等を有する者に対する負担が軽減される。また、制酸剤の配合が無い故に、固形製剤の形を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明において、「オキシカム系化合物」は、オキシカム系抗炎症薬、オキシカム系消炎薬、オキシカム系消炎鎮痛薬を含む。オキシカム系化合物は、ロルノキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、アンピロキシカム、ドロキシカム、メロキシカム、クロノテキシカム、テノキシカム、ピロキシカムを含むがこれらに限定されない。オキシカム系化合物は、好ましくはロルノキシカム、ピロキシカム、テノキシカム又はアンピロキシカムである。オキシカム系化合物は、薬学的に許容される塩、エステル又はプロドラッグとして用いられてもよい。
「オキシカム系化合物」は例えば、抗炎症薬、消炎薬、消炎鎮痛薬として使用されるがこれらに限定されず、オキシカム系化合物が医薬品として厚生労働省によって現在又は将来的に認可されるであろうすべての用途のために使用されうる。
オキシカム系化合物の含有量は、製造される固形製剤に従い適宜調製されうる。オキシカム系化合物の含有量は、製造された固形製剤の重量に対して、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜4重量%、さらにより好ましくは2〜3重量%である。
【0023】
本発明において、固形製剤は好ましくは、内服用又は経口用固形製剤である。
本発明において、固形製剤とは、錠剤、被覆錠剤、トローチ剤、顆粒剤を含む。
【0024】
本発明において、塩基性アミノ酸水溶液にオキシカム系化合物が添加された結果、該水溶液にオキシカム系化合物が溶解又は懸濁してよい。または、添加されたオキシカム系化合物の一部が溶解し且つ残りが懸濁してもよい。
【0025】
本発明において、「塩基性アミノ酸」は、リジン、アルギニン、ヒスチジン又はオルニチン若しくはそれらの薬学的に許容される誘導体、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。「塩基性アミノ酸」は、好ましくはリジン、アルギニン、ヒスチジン又はオルニチンであり、より好ましくはリジン又はアルギニンであり、さらにより好ましくはアルギニンである。
【0026】
本発明において、塩基性アミノ酸水溶液は、水10部〜40部に対して塩基性アミノ酸1部〜10部を含む。塩基性アミノ酸水溶液の調製に際し、塩基性アミノ酸水溶液を溶解させる為に、温められた水に塩基性アミノ酸が溶解されうる。
【0027】
本発明において、塩基性アミノ酸水溶液に添加されるオキシカム系化合物の量は、塩基性アミノ酸水溶液10部〜50部に対して、オキシカム系化合物を1部〜10部である。
塩基性アミノ酸の含有量は、製造される固形製剤に従い適宜選択されるものであるが、好ましくは製造された固形製剤160部量に対して0.1〜20部、好ましくは1〜20部、更に好ましくは5〜15部、最も好ましくは8部である。
【0028】
塩基性アミノ酸水溶液のpHは、好ましくは7.0〜14.0、より好ましくは8.0〜13.0、さらにより好ましくは10.0〜12.0である。
【0029】
塩基性アミノ酸水溶液のpHは、任意のpH調整剤により調整されてよい。該pH調整剤の例として、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、サリチル酸、フマル酸、メタンスルホン酸、酢酸、EDTA−2ナトリウム若しくは酸性アミノ酸のような有機酸若しくはそれらの有機酸塩、又は、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸若しくは臭化水素酸のような無機酸が挙げられるが、これらに限定されない。酸性アミノ酸の例として、アスパラギン酸又はグルタミン酸が挙げられる。pH調整剤は単独で用いられてよく又は複数のpHが一緒に用いられてもよい。
【0030】
pH調整剤は、pH調整剤又はpH調整剤の水溶液として、塩基性アミノ酸水溶液に添加されうる。あるいは、pH調整剤の添加されるべき量を予め調べ、塩基性アミノ酸水溶液の調製の際に、塩基性アミノ酸と一緒に、pH調整剤が水に添加されてもよい。
【0031】
本発明において、「水」は、エタノール水(エタノール:水の重量比=1:1)又は水であり、好ましくは純水、蒸留水、脱塩水又は超純水であり、より好ましくは超純水である。
【0032】
塩基性アミノ酸水溶液は、ストックソリューションとして調製されてよく、又は、オキシカム系化合物の添加時に調製されてよい。
【0033】
本発明において、「乾燥」は、当技術分野の慣用の技術により行われてよく、好ましくは蒸発乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥又は静置乾燥により行われる。噴霧乾燥を用いることにより固形製剤中の成分が均一になる。また、該乾燥は、好ましくは流動層造粒/乾燥機を用いて行われる。
【0034】
本発明において、製剤化は、当技術分野の慣用技術により行われてよく、好ましくは蒸発乾固により得られた粗顆粒を整粒機により顆粒とし、該顆粒を滑沢剤の存在下で打錠機により成形することにより行われる。また、本発明において製剤化は、噴霧造粒により行われてもよい。
【0035】
本発明において、得られた固形製剤はさらにフィルムコーティングが施されうる。該フィルムコーティングは、当技術分野の当業者に既知の方法を用いて行われうる。
【0036】
本発明において、「賦形剤」は、ブドウ糖,果糖、乳糖、無水乳糖、しょ糖、麦芽糖、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなどの糖類、コーンスターチ、部分アルファー化デンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、クロスカルメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルメロースなどのデンプン類、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどのセルロース類、又は、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ステアリン酸等の脂肪酸あるいはその塩、ワックス類などを含みうる。賦形剤は、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース又はポリビニルピロリドンを含みうる。
賦形剤は造粒段階において添加されてよく、又は、造粒を行う前に、賦形剤の水溶液が、オキシカム系化合物を溶解した塩基性アミノ酸水溶液に添加されてもよい。
【0037】
本発明において、上記ヒドロキシプロピルセルロースとして、日本曹達株式会社製のNISSO HPCシリーズ、特にはHPC−SSL、HPC−SL又はHPC−Lを用いることができるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明において、上記ポリビニルピロリドンとして、BASFジャパン社により製造されるコリドン12PF、コリドン17PF、コリドン25、コリドン30若しくはコリドン90F、又は、ISP社により製造されるプラスドンK−29/32、プラスドンK−25、プラスドンK−90、プラスドンK−90D若しくはプラスドンK−90Mを用いることができるが、これらに限定されない。
【0039】
上記ヒドロキシプロピルセルロース又は上記ポリビニルピロリドンの含有量は、製造される固形製剤に従い適宜選択されるものであるが、好ましくは製造された錠剤の重量160部に対して0.1〜20部、好ましくは1〜20部、更に好ましくは5〜15部、最も好ましくは8部である。
【0040】
製造された固形製剤中の塩基性アミノ酸濃度は、該固形製剤100〜200部に対して1〜25部、好ましくは5〜20部である。
【0041】
以下に実施例を示す。なお、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0042】
以下に示す処方にて、ロルノキシカムを含む錠剤を製造した。

【0043】
L-アルギニン8.0部と水20.0部を温浴下50℃に加温して攪拌溶解して水溶液を得た。更に、該水溶液にロルノキシカム4.0部を加えて溶解させて、原薬溶解液を得た。別途、D-マンニトール、結晶セルロース及び、ヒドロキシプロピルセルロースを高速攪拌造粒機(流動層造粒機マルチプレックス(FD−MP−01)、株式会社Powrex製)で攪拌混合した。次に、原薬溶解液を上記造粒機に加えて湿式造粒により錬合物を得た。得られた錬合物を流動層乾燥機(流動層造粒機マルチプレックス(FD−MP−01)、株式会社Powrex製)に移して乾燥した。得られた乾燥粗顆粒を更に整粒機(コーミル(QC−197S)、株式会社Powrex製)(600μ)に通して顆粒を得た。得られた顆粒をV型混合機(V型混合機(V−10型)、株式会社徳寿工作所製)に移し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸カルシウムを加えて混合し、得られた混合末をロータリー打錠機(ロータリー型打錠機(VELA5)、株式会社菊水製作所製)で1錠160mgに圧縮して錠剤にした。
【実施例2】
【0044】
以下に示す処方にて、ロルノキシカムを含む錠剤を製造した。

【0045】
L-アルギニン8.0部と水20.0部を温浴下50℃に加温して攪拌溶解して水溶液を得た、更に、該水溶液にロルノキシカム4.0部を加えて溶解させて原薬溶解液を得た。別途、ポリビニルピロリドン8.0部を水72.0部に攪拌して溶解せしめ、これを原薬溶解液に加えて加えて結合液を得た。別途、D-マンニトール78.4部及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース25.0部を流動層造粒機(流動層造粒機マルチプレックス(FD−MP−01)、株式会社Powrex製)で混合し、ついで結合液を噴霧して造粒/乾燥し粗顆粒を得た。なお、本実施例2では、高速攪拌造粒機では投入する液の量が多すぎたため、流動層乾燥機による噴霧造粒とした。得られた粗顆粒を更に整粒機(600μ)に通して顆粒を得た。得られた顆粒をV型混合機に移し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース5.0部及びステアリン酸カルシウム1.6部を加えて混合し、得られた混合末をロータリー打錠機で1錠160mgに圧縮して錠剤に製した。
【実施例3】
【0046】
以下に示す処方にて、ロルノキシカムを含む錠剤を製造した。

【0047】
本実施例3では、実施例2で用いた基材ポリビニルピロリドンをヒドロキシプロピルセルロースに変更した。
L-アルギニン8.0部と水20.0部を温浴下50℃に加温して攪拌溶解して水溶液を得た。該水溶液にロルノキシカム4.0部を加えて溶解させて原薬溶解液を得た。別途、ヒドロキシプロピルセルロース8.0部を水40.0部に攪拌して溶解せしめ、これを原薬溶解液に加えて加えて結合液を得た。別途、D-マンニトール78.4部及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース25.0部を流動層造粒機で混合し、ついで結合液を噴霧して造粒/乾燥し粗顆粒を得た。得られた粗顆粒を更に整粒機(600μ)に通して顆粒を得た。得られた顆粒をV型混合機に移し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース10.0部及びステアリン酸カルシウム1.6部を加えて混合し、得られた混合末をロータリー打錠機で1錠160mgに圧縮して錠剤に製した。
【実施例4】
【0048】
以下に示す処方にて、ロルノキシカムを含むフィルムコート錠剤を製造した。

【0049】
本実施例4では、実施例3に従い製造された錠剤にフィルムコートが施された錠剤を製造した。
実施例3に従い素錠部を製造した。90.0部のエタノール水(重量比1:1)に、ヒプロメロース8.3部、マクロゴール1.0部及び酸化チタン0.7部を添加し溶解させて、フィルムコート部の混合液を得た。コーティング装置(ドリアコーター(DRC−300)、株式会社Powrex製)を用いて上記素錠部にフィルムコートを施して、フィルムコート錠剤を製した。なお、エタノール水(重量比1:1))はコーティング過程で蒸発除去される。
【0050】
[比較例1]
以下に示す処方にて、ロルノキシカム含む錠剤を製造した。

【0051】
ロルノキシカム、乳糖水和物、結晶セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースを高速攪拌造粒機で攪拌混合した。次に、エタノール水(重量比1:1)を加えて湿式造粒により錬合物を得た。得られた錬合物を流動層乾燥機に移して乾燥した。得られた乾燥粗顆粒を整粒機(600μ)に通して顆粒を得た。得られた顆粒をV型混合機に移し、部分アルファー化澱粉及びステアリン酸カルシウムを加えて混合した。得られた混合末をロータリー打錠機で1錠152mgに圧縮して錠剤に製した。
【0052】
[比較例2]
以下に示す処方にて、ロルノキシカム含む錠剤を製造した。本比較例2では、比較例1と異なり、塩基性無機塩である炭酸水素ナトリウムを使用した。

【0053】
ロルノキシカムと炭酸水素ナトリウム(制酸剤)とを、ハンマーミル(ラボミル(LM−05)、株式会社ダルトン製)を用いて共粉砕し倍散物を得た。得られた倍散物に乳糖水和物、結晶セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースを高速攪拌造粒機で攪拌混合した。次に、エタノール水(重量比1:1)を加えて湿式造粒により錬合物を得た。得られた錬合物を流動層乾燥機に移して乾燥した。得られた乾燥粗顆粒を更に整粒機(600μ)に通して顆粒を得た。得られた顆粒をV型混合機に移し、部分アルファー化澱粉及びステアリン酸カルシウムを加えて混合し、得られた混合末をロータリー打錠機で1錠160mgに圧縮して錠剤に製した。
【0054】
[比較例3]
以下に示す処方にて、ロルノキシカム含む錠剤を製造した。本比較例3では、アルギニンを粉末として添加する。

【0055】
ロルノキシカム及びL-アルギニンをポリ袋中に入れ、手混合により倍散物を得た。得られた倍散物に、乳糖水和物、結晶セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースを添加し、高速攪拌造粒機中で攪拌混合した。次に、エタノール水(重量比1:1)を加えて湿式造粒により錬合物を得た。得られた錬合物を流動層乾燥機に移して乾燥した。得られた乾燥粗顆粒を更に整粒機(600μ)に通して顆粒を得た。得られた顆粒をV型混合機に移し、部分アルファー化澱粉及びステアリン酸カルシウムを加えて混合し、得られた混合末をロータリー打錠機で1錠160mgに圧縮して錠剤に製した。
【0056】
[比較例4]
以下に示す処方にて、ロルノキシカム含む錠剤を製造した。本比較例4では、アルギニンを粉末として添加する。

【0057】
ロルノキシカム及びL-アルギニンをポリ袋中に入れ、手混合により倍散物を得た。得られた倍散物に、D-マンニトール、結晶セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースを添加し、高速攪拌造粒機中で攪拌混合した。次に、エタノール水(重量比1:1)を加えて湿式造粒により錬合物を得た。得られた錬合物を流動層乾燥機に移して乾燥した。得られた乾燥粗顆粒を更に整粒機(600μ)に通して顆粒を得た。得られた顆粒をV型混合機に移し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸カルシウムを加えて混合し、得られた混合末をロータリー打錠機で1錠160mgに圧縮して錠剤に製した。
【実施例5】
【0058】
以下に、実施例1〜3及び比較例1〜4の処方を示す。
【0059】

実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた錠剤について、第十五改正日本薬局方に収載の溶出試験法パドル法(第105〜108頁)に従い、溶出試験第1液(pH1.2)900mLにより溶出試験を実施した。その結果、図1に示す溶出結果が得られた。
【0060】
比較例1では、5分、15分、30分及び60分での溶出率が夫々、15.2%、26.7%、31.1%及び34.5%であり、十分な溶出が得られていない。比較例3では、5分、15分、30分及び60分での溶出率が夫々、18.4%、37.5%、50.2%及び57.6%であり、比較例1に対して、十分な溶出改善効果は得られなかった。
なお、比較例3において、乳糖水和物がアルギニンとメイラード反応をすることが分かった。比較例4では、乳糖水和物をD−マンニトールに変更した結果、アルギニンの存在によるメイラード反応が生じないことが分かった。
さらに、比較例3において、部分アルファー化澱粉がロルノキシカム/アルギニン溶解物を吸着することが分かった。比較例4では、部分アルファー化澱粉を低置換度低置換度ヒドロキシプロピルセルロースに変更した結果、ロルノキシカム/アルギニン溶解物を吸着しないことが分かった。
しかし、比較例4において、5分、15分、30分及び60分での溶出率は夫々、17.0%、33.5%、48.6%及び53.4%であり、比較例1に対して、十分な溶出改善効果は得られなかった。
実施例1の溶出率は、5分、15分、30分及び60分での溶出率が夫々、32.4%、58.9%、74.6%及び81.2%であり、比較例1、3又は4と比較して、溶出改善効果が認められた。
実施例2では、ポリビニルピロリドンを基材として選んだ結果、ロルノキシカムとアルギニンが同時に溶け出した。そして、実施例2では、実施例1よりも良い溶出改善効果が認められた。実施例2で得られた錠剤においては、5分、15分、30分及び60分で夫々、22.2%、47.8%、76.5%及び95.8%の溶出率が得られた。
本実施例3では、実施例2の基材を、ポリビニルピロリドンからヒドロキシプロピルセルロースに変更した。その結果、実施例3では、比較例2と同等又は上回る溶出改善効果が認められた。実施例3で得られた錠剤では、5分、15分、30分及び60分で夫々、78.0%、92.0%、97.0%及び98.0%の溶出率が得られた。また、実施例2の錠剤が30分で達成した溶出率(76.5%)を、実施例3の錠剤は5分で既に越している(78.0%)。すなわち、実施例3の錠剤は、実施例2よりも速やかな崩壊及び溶出を得られることが分かった。
【実施例6】
【0061】
実施例3で得られた錠剤と比較例2で得られた錠剤とについて、第十五改正日本薬局方に収載の溶出試験法パドル法(第105〜108頁)に従い、溶出試験を実施したところ、図2及び図3に示す溶出結果が得られた。尚、溶出試験液は以下の4種類で実施した:溶出試験第1液(pH1.2)、溶出試験第2液(pH6.8)、薄めたMcIlvaine緩衝液(pH4.0)及びイオン交換水(溶出試験第1液及び第2液については、第15改正日本薬局方第236頁を参照されたい。)。
比較例2による製剤では若干溶出不良傾向が認められた。薄めたMcIlvaine緩衝液では、10分及び30分における溶出率が夫々、69.1%、85.9%である。一方、実施例3の製剤では上記4種類の溶出試験液のいずれにおいても良好な溶出が得られた。薄めたMcIlvaine緩衝液においても、10分及び30分における溶出率が夫々、93.7%、96.0%である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1〜3及び比較例1〜4の製剤の溶出結果を示すグラフである。
【図2】実施例3の製剤の種々のpHにおける溶出結果を示すグラフである。
【図3】比較例3の製剤の種々のpHにおける溶出結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシカム系化合物を含む固形製剤を製造する方法であって、
塩基性アミノ酸水溶液にオキシカム系化合物を溶解すること、及び
該溶解液を乾燥すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
該塩基性アミノ酸水溶液が、塩基性アミノ酸1部〜10部及び水10部〜40部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該塩基性アミノ酸水溶液10部〜50部に対して、該オキシカム系化合物を1部〜10部を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該塩基性アミノ酸が、リジン又はアルギニンの少なくとも1を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該塩基性アミノ酸水溶液のpHが7.0〜14.0である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該塩基性アミノ酸水溶液のpHを酸性アミノ酸により調整するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該塩基性アミノ酸水溶液に賦形剤をさらに添加することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記賦形剤が、ポリビニルピロリドンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記賦形剤が、ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該固形製剤中の塩基性アミノ酸が、該固形製剤100〜200部に対して1〜25部である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記固形製剤が経口固形製剤である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
オキシカム系化合物が、ロルノキシカム、ピロキシカム、テノキシカム又はアンピロキシカムの少なくとも1を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−83826(P2010−83826A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255945(P2008−255945)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(306020438)日本ジェネリック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】