説明

オキセタン共重合体およびそれを用いた接着剤

【課題】接着性、保持力、タック性、リワーク性、リサイクル性等の粘接着特性に優れた重合体を提供する。
【解決手段】 式:


で示される第1繰り返し単位、および式:


で示される第2繰り返し単位を有する共重合体であるオキセタン重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機高分子類同士もしくは金属やガラス類等の無機物同士を接着するために、または有機高分子―無機物複合体を作成するために有用な重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子材料の基板等として用いられているポリイミドフィルムは表面の接着性が乏しいことが問題となっており、そのままでは製品の不良を生じる原因となる。このため、ポリイミドフィルムは、その表面及び金属界面の接着性を改善することを目的として、フィルム表面のコロナ放電処理やプラズマ処理を施して使用する方法が知られている(特許文献1)。また、ポリイミドフィルムの表面を粗面化するため、ポリイミド前駆体に不活性粒子を添加したり、フィルム表面に薬液処理を施したりする方法が知られている(特許文献2)。フィルム表面をコロナ放電処理や、プラズマ処理を施すことにより、表面に親水性を付与するものであるが、同時に表面は脆く、剥離しやすくなるため、本質的に接着力を向上させることはできない。更に、フィルム表面の粗面化は、ポリイミドの場合、通常その効果は小さく、フィルム作製または加工時の工程が煩雑になるばかりか、フィルムの持つ強度特性を低下させる要因となる等、課題が多い。
【0003】
また、最近、電子材料における分野では、基板に接合された複数の電子部品の中で特定の電子部品が導通不良などを起こした場合に、その不良電子部品のみを他の電子部品に取り替えることが出来れば、基板全体の損失を免れ正常な基板として作製し直すことが可能となるため、リワークに対する要求が高まっている。
更に、建築用資材,車の内装資材の分野において接着により得られた複合体は、その使命を終えた後、各構成部品へ分解しリサイクルされることが望ましいが、一般に強固に接着された複合体ほど分解が困難である。
最近、電子材料,建築用資材,車の内装資材の分野において、強い接着力を有しながら、不良品の部品交換や廃棄時の分別回収の目的で、基板や部品を痛めることなく回収できるリワーク性やリサイクル性に優れた接着剤の開発が期待されている。
【0004】
【特許文献1】特開平05−279497号公報
【特許文献2】特開平10−095847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、接着性、保持力、タック性、リワーク性、リサイクル性等の粘接着特性に優れた重合体、それを用いた接着剤および/または粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ね、本発明に到達した。すなわち、複数の開環重合性を示すオキセタン化合物の共重合体から構成される接着剤により接着後、加熱や溶媒洗浄することで良好なリワーク性やリサイクル性を達成できた。
本発明の要旨は、
式:

で示される第1繰り返し単位、および
式:

で示される第2繰り返し単位
[式中、R11およびR21は、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子で置換されていてよいヒドロキシアルキル基、エーテル酸素含有有機基もしくは脂肪族炭化水素基、または有機高分子基であり、R12およびR22は、同一または異なって、ヒドロキシル基並びに、ハロゲン原子で置換されていてよいヒドロキシアルキル基、エーテル酸素含有有機基もしくは炭化水素基、または有機高分子基である。隣接するR11とR12および/またはR21とR22は、互いに結合して環を形成しても良い。]
(但し、第1繰り返し単位と第2繰り返し単位は異なる。)
を有する共重合体であるオキセタン重合体に存する。
【0007】
本発明のオキセタン重合体は、接着剤として使用できる。
接着剤は、オキセタン重合体のみからなるか、あるいは(A)オキセタン重合体、および(B)オキセタン重合体と相溶する樹脂を含んでなる。
【0008】
本発明の接着剤は、例えば、以下のような接着方法において使用できる。
(1) シートまたは粉体の形態である接着剤を第1基材の上に配置し、接着剤を加熱して溶融させ、溶融接着剤層を形成し、溶融接着剤層の上に第2基材を配置し、溶融接着剤層を冷却して固化させて、第1基材と第2基材を接着剤層によって結合することを特徴とする基材の接着方法。
(2) 有機溶媒に溶解した溶液の形態である接着剤を第1基材の上に適用して接着剤溶液層を形成し、接着剤溶液層の上に第2基材を配置し、接着剤溶液層における有機溶媒を除去して固化接着剤層を形成させて、第1基材と第2基材を接着剤層によって結合することを特徴とする基材の接着方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、接着性、保持力、タック性、リワーク性等の粘接着特性に優れた重合体、それを用いた接着剤、粘着剤および複合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いられる共重合体について説明する。共重合体は、第1単量体から誘導される第1繰り返し単位、および第2単量体から誘導される第2繰り返し単位を有する。第1単量体と第2単量体は異なっているので、第1繰り返し単位と第2繰り返し単位は異なっている。
【0011】
第1繰り返し単位および第2繰り返し単位において、R11およびR21は、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子で置換されていてよいヒドロキシアルキル基、エーテル酸素含有有機基もしくは脂肪族炭化水素基、または有機高分子基である。R12およびR22は、同一または異なって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子で置換されていてよいヒドロキシアルキル基、エーテル酸素含有有機基もしくは炭化水素基、または有機高分子基である。
エーテル酸素含有有機基もしくは炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基)は、ハロゲン原子で置換されていてよい。
【0012】
第1単量体および第2単量体におけるヒドロキシアルキル基は、炭素数1〜20、例えば1〜10、特に1〜5であることが好ましい。
第1単量体および第2単量体におけるエーテル酸素含有有機基は、炭化水素基に結合した少なくとも1つのエーテル酸素結合を有する基である。エーテル酸素含有有機基の炭素数は1〜40、例えば2〜30、特に3〜15であることが好ましい。一般に、隣の炭素原子と結合するR11、R21、R11またはR21基における原子は、エーテル酸素原子または炭素原子である。エーテル酸素含有有機基におけるエーテル酸素原子の数は1〜20、特に1〜5であることが好ましい。
【0013】
エーテル酸素含有有機基は、式:
11−(O−A12)p−(O)q
[式中、A11およびA12は、少なくとも1つの水素原子がアルキル基、ヒドロキシル基、エーテル酸素含有有機基またはハロゲン原子のいずれかに置換されていてもよい炭化水素基であり、それぞれのA12は、同一または異なっており、
pは0〜20の整数であり、qは0または1である。]
で示される基である。好ましくは、A11は、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、A12は、アルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基である。
アルキル基およびアルキレン基は炭素数1〜10、例えば1〜6であることが好ましく、アリール基およびアリーレン基は炭素数6〜14、例えば6〜12であることが好ましく、アラルキル基およびアラルキレン基は炭素数7〜20、例えば7〜15であることが好ましい。
【0014】
エーテル酸素含有有機基は、オルガノオキシ基、あるいは少なくとも1つのエーテル酸素原子によって中断されている炭化水素基(以下、「エーテル基」と呼ぶことがある。)であることが好ましい。
オルガノオキシ基は、炭化水素基がエーテル酸素原子に結合している基である。
エーテル酸素含有有機基の好ましい例は、式:
21−(O−A22)r−O−CH
[A21は炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基、それぞれのA22は、同一または異なって、炭素数2〜5の直鎖または分岐のアルキル基、rは0〜10、特に1〜5の数である。]
で示される。
【0015】
オルガノオキシ基としては、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、オルガノシロキシ基等があげられる。
【0016】
アルコキシ基として、特にC1〜10のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンタノキシ基、ヘキサノキシ基、ヘプタノキシ基、オクタノキシ基、ノナノキシ基、デカノキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、トリエチレングリコールモノメチルエーテル基等があげられる。
【0017】
アラルキルオキシ基として、特にC7〜20のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、インデニルメチルオキシ基、ビフェニルメチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基、トリフェニルメチルオキシ基等があげられる。なおこれらの置換基は、その異性体を含む。
【0018】
アリールオキシ基として、特にC6〜14のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、トリロキシ基、キシリロキシ基、ナフトキシ基、ジメチルナフトキシ基等があげられる。なおこれらの置換基は、その異性体を含む。
【0019】
オルガノシロキシ基として、特にC3〜18のオルガノシロキシ基が好ましく、例えば、トリメチルシロキシ基、ジメチルエチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリプロピルシロキシ基、トリブチルシロキシ基、ブチルジメチルシロキシ基、フェニルジメチルシロキシ基、ナフチルジメチルシロキシ基、ジメチルエトキシシロキシ基、メチルジエトキシシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、等があげられる。なおこれらの置換基は、その異性体を含む。
【0020】
エーテル酸素含有有機基の一例であるエーテル基は、1つのエーテル酸素原子の両端にそれぞれ1つの(合計2つの)炭化水素基が結合しているモノエーテル基、モノエーテル基にさらに少なくとも1つのオルガノオキシ基が結合したポリエーテル基である。
モノエーテル基は、アルキル基、アリール基またはアラルキル基とアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基とをエーテル酸素原子によって結合した化合物である。ポリエーテル基は、モノエーテル基にさらに、エーテル酸素原子と、アルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基とが結合した化合物である。
【0021】
モノエーテルとしては、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、アルコキシアラルキル基、アリールオキシアルキル基、アリールオキシアリール基、アリールオキシアラルキル基、アラルキルオキシアラルキル基が挙げられる。
モノエーテルの具体例は、メトキシメチレン基、メトキシエチレン基、エトキシベンジル基、エトキシメチレン基、プロポキシメチレン基、エトキシエチレン基、プロポキシエチレン基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、メトキシベンジル基、フェノキシメチレン基、フェノキシエチレン基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルオキシエチル基である。
ポリエーテルとしては、アルキルポリ(オキシアルキレン)基、アルキルポリ(オキシアリール)基、アルキルポリ(オキシアラルキレン)基、アリールポリ(オキシアルキレン)基、アリールポリ(オキシアリーレン)基、アリールポリ(オキシアラルキレン)基、アラルキルポリ(オキシアラルキレン)基が挙げられる。ここで、「ポリ」とは2〜20の数、特に2〜10の数を意味する。
ポリエーテルの具体例は、メチルポリ(オキシエチレン)基、エチルポリ(オキシエチレン)基、メチルモノ(オキシエチレン)オキシメチル基、エチルモノ(オキシエチレン)オキシメチル基、メチルポリ(オキシエチレン)オキシメチル基、エチルポリ(オキシエチレン)オキシメチル基である。
【0022】
エーテル基は、アルコキシ基(アルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜5である。)および酸素原子の隣のアルキレン基(アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜5、特に2または3である。)を有するモノエーテル(エーテル酸素原子の数は1である。)またはポリエーテル(エーテル酸素原子の数は2〜5である。)であることが特に好ましい。
【0023】
第1単量体における脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1〜30)としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
第2単量体における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、芳香族炭化水素(アリール基)、芳香脂肪族炭化水素(アラルキル基)が挙げられる。
【0024】
アルキル基としては、C1〜20、特にC1〜12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基等があげられる。なおこれらの置換基は、その異性体を含む。
アルケニル基としては、C2〜20、特にC3〜12のアルケニル基が好ましく、例えば、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。なおこれらの置換基は、その異性体を含む。
アルキニル基としては、C2〜20、特にC3〜12のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。なおこれらの置換基は、その異性体を含む。
【0025】
アリール基としては、C6〜18のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基ジメチルナフチル基、アントラセル基、フェナントレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ナフタセニル基等があげられる。なおこれらの置換基は、その異性体を含む。
【0026】
アラルキル基としては、C7〜20のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、ナフチルメチル基、インデニルメチル基、ビフェニルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等があげられる。なおこれらの置換基は、その異性体を含む。
【0027】
11、R12、R21およびR22において、水素原子を置換するハロゲン原子としては,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子があげられる。
【0028】
有機高分子基としては、重合を阻害しない限り、分子量(特に数平均分子量)10000以下、例えば100〜8000、特に500〜5000である任意の有機高分子基が許容される。ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリハロオレフィン、ポリジエン、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ酸無水物、ポリイミン、ポリシロキサン、ポリファスファゼン、ポリケトン、ポリスルホンからなる有機高分子基等があげられるが、好ましくは、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリハロオレフィン、ポリエーテル、ポリシロキサンからなる有機高分子基、更に好ましくはポリエーテル、ポリシロキサンからなる有機高分子基があげられる。
【0029】
11およびR21が、ヒドロキシル基、ハロゲン原子で置換されていてよいアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基、アルコキシアルキル基であり、
12およびR22が水素原子、ハロゲン原子で置換されていてよいアルキル基、アリール基、アラルキル基であることが好ましい。
11およびR21がメチロール基、ハロゲン原子で置換されていてよい酸素原子数1〜5かつ炭素原子数2〜30(例えば、炭素原子数2〜10)のエーテル基、エーテル酸素含有有機基であり、R12およびR22がハロゲン原子で置換されていてよいアルキル基、アリール基、アラルキル基であることがさらに好ましい。
第1繰り返し単位と第2繰り返し単位のモル比は、1:1000〜1000:1、例えば、1:99〜99:1、特に10:90〜90:10である。
【0030】
オキセタン重合体は、(i)共重合体の非架橋体、または(ii)共重合体の架橋体であってよい。
オキセタン重合体の平均分子量(特に数平均分子量)は、500〜500000であることが好ましい。平均分子量は、例えば1000〜300000、特に2000〜200000であることがさらに好ましい。平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、クロロホルム溶出液を用い、ポリスチレン基準サンプルを用いて測定したものである。
【0031】
第1繰り返し単位の具体例は、


[式中、Etは、エチル基である。]
である。
第2繰り返し単位の例は、



[式中、Etは、エチル基であり、
R3は、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてよいエーテル基もしくは炭化水素基、または有機高分子基である。]
である。
【0032】
第2繰り返し単位の具体例は、

[式中、Etは、エチル基であり、R4〜R8は水素原子、炭化水素基に含まれる少なくとも1つの水素原子がアルキル基、オルガノオキシ基またはハロゲン原子に置換されていてよい炭化水素基であり、oは1〜20の数である。]
である。
第2繰り返し単位の詳細な具体例は、

および


である。
【0033】
オキセタン重合体の例は、式:

[式中、Etは、エチル基であり、R3は、ハロゲン原子で置換されていてよいエーテル基もしくは炭化水素基、または有機高分子基であり、mおよびnは1以上の整数である。]
で示される共重合体である。
【0034】
オキセタン重合体の例は、特に式:


[式中、Etは、エチル基であり、
R4〜R8は水素原子、炭化水素基に含まれる少なくとも1つの水素原子がアルキル基、オルガノオキシ基またはハロゲン原子に置換されていてよい炭化水素基であり、
m、n およびoは1以上の整数である。]
で示される共重合体である。
【0035】
オキセタン重合体の具体例は次のとおりである。


[式中、Etは、エチル基であり、
mおよびnは1以上の整数である。]

[mおよびnは1以上の整数である。]
【0036】
一般に、オキセタン重合体は2元共重合体である。本発明において、第1単量体および第2単量体のそれぞれは、2種以上の単量体の混合物であってよい。よって、オキセタン重合体は、3元以上の共重合体、例えば3〜5元の共重合体であってもよい。
本発明の共重合体において、それぞれの単位が、標記の通り位置するブロック重合体であってよく、あるいはそれぞれの単位が標記の通り位置しなくてもよく、ランダム重合体またはブロック重合体であってよい。
【0037】
オキセタン重合体は、オキセタン単量体を開環重合することによって製造できる。オキセタン重合体を製造するための重合方法は、どのようなものを用いてもよい。
重合は、溶媒、特に有機溶媒を用いてもよく、あるいは用いなくてもよい。重合は、一般に、溶液重合またはバルク重合である。好適な溶媒は、重合系内のオキセタン単量体および他の化合物を溶解する溶媒であり、具体例として、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
重合方法としては、例えば、触媒を用いる方法、重合開始剤を用いる方法等を用いることができる。
【0038】
重合方法として、(i)遷移金属錯体を用いた環状エーテルを開環ヒドロシリル化によりシロキシ化鎖状ポリエーテルとする合成方法や(ii)その他の公知の方法、例えば光あるいは熱により活性化されて酸成分を生成(以下、それぞれ「光潜在性」および「熱潜在性」と記載)し、単量体中の開環重合性基のカチオン開環重合を誘発する方法があげられる。
【0039】
遷移金属錯体は、触媒として働き、多核ルテニウムカルボニル触媒や多核コバルトカルボニウム錯体があげられる。特に、アセナフチレンまたはアズレンの配位した3核ルテニウムカルボニル錯体があげられる。得られた重合体を酸等で処理してシロキシ基を水酸基へ変換してもよい。例えば、特開2001−59021(特許第3478765号)に記載されている遷移金属錯体触媒および重合方法を本発明において用いてよい。
【0040】
光潜在性を有する重合開始剤としては、光照射により活性化され開環重合性基の開環を誘発し得る任意の光カチオン重合開始剤が用いることができ、光カチオン重合開始剤としては、オニウム塩類および有機金属錯体類などを例示することができる。ここで、活性化しうる光としては紫外線(一般に、波長200〜390nm)が好ましい。また光増感剤(例えば、9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体)を併用して波長が390〜500nmの短波可視光により重合開始剤を活性化することもできる。光重合開始剤としてのオニウム塩類としては、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩およびヨードニウム塩が挙げられる。また、有機金属錯体類としては、例えば、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体およびアリールシラノール−アルミニウム錯体などがあげられる。
【0041】
熱潜在性を有する重合開始剤としては、加熱により活性化され開環重合性基の開環を誘発する任意の熱重合開始剤が用いられる。例えば、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩等の各種オニウム塩類、有機金属錯体類などがあげられる。また、有機金属錯体類としては、例えば、アルコキシシラン−アルミニウム錯体などが挙げられる。
触媒および重合開始剤のそれぞれの量は、オキセタン単量体に対して、0.001〜10.0モル%、例えば0.01〜2.0モル%であってよい。
重合反応において、反応温度は、−100〜400℃、例えば0〜200℃、反応時間は、1秒〜120時間、例えば10分〜20時間であってよい。
【0042】
オキセタン重合体は、必要に応じて公知の手段により適宜精製することができる。精製法としては、再沈殿、カラム精製、活性炭または活性白土を用いる方法があげられる。これらを組み合わせて用いても良い。
【0043】
得られたオキセタン重合体の数平均分子量は、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)で決定することができる。
【0044】
オキセタン重合体は接着剤として使用できる。接着剤は、(A)オキセタン重合体のみからなってよく、あるいは(A)オキセタン重合体および(B)他の成分、例えば、オキセタン重合体と相溶する樹脂(特に、重合体)を含んでなる組成物であってよい。
樹脂(B)の具体例は、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリアミド樹脂である。樹脂(B)の量は、オキセタン重合体(A)100重量部に対して、0〜100000重量部、例えば0.1 〜10000重量部、特に1〜500重量部であってよい。
【0045】
接着剤は、シート、粉体、または有機溶媒に溶解した溶液の形態であってよい。
シートおよび粉体は、室温(20 ℃)で固体であることが好ましい。シートの厚さは、一般に、1.0μm〜10mmである。粉体の粒径は、一般に、0.1μm〜10mmである。
本発明の接着剤をシート状に加工する方法としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等の離型性を有する材料で成形した型に接着剤を充填してホットプレスする方法や、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等の離型性を有するフィルム間に接着剤を挟み込むように押出ラミネートする方法などの公知の方法が使用できる。
本発明の接着剤を粉体状に加工する方法としては、反応で生成したポリマーをそのままろ過しても良いし、乾燥させた塊をボールミル等で粉体に粉砕する粉砕法、溶融したポリマーを媒体中に分散造粒するアトマイズ法、溶媒に溶解したポリマーを媒体中に分散造粒する化学的分散法、などの公知の方法が使用できる。
接着剤を有機溶媒に溶解した溶液において、接着剤の濃度は、一般に、0.01 〜99.99重量%、例えば1〜60重量%である。有機溶媒の例は、均一な溶液となれば特に限定はされないが、トルエン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキサイド、ジメチルスルホン等が挙げられる。
【0046】
接着方法としては、一般的に用いられる方法であれば、特に限定されないが、好ましくは、ホットメルト法や溶剤希釈後に塗布する方法が挙げられる。
本発明の接着剤は、特に、以下のような接着方法において使用できる。
(1)シートまたは粉体の形態である接着剤を第1基材の上に配置し、接着剤を加熱して溶融させ、溶融接着剤層を形成し、溶融接着剤層の上に第2基材を配置し、溶融接着剤層を冷却して固化させて、第1基材と第2基材を接着剤層によって結合することを特徴とする基材の接着方法。
(2) 有機溶媒に溶解した溶液の形態である接着剤を第1基材の上に適用して接着剤溶液層を形成し、接着剤溶液層の上に第2基材を配置し、接着剤溶液層における有機溶媒を除去して固化接着剤層を形成させて、第1基材と第2基材を接着剤層によって結合することを特徴とする基材の接着方法。
接着剤層の厚さは、0.10μm〜10mm、特に10μm〜2mmであってよい。
【0047】
接着される基材は、有機材料(特に、有機高分子)、無機材料(特に、無機高分子)、金属などである。
【0048】
有機材料、特に有機高分子として、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリハロオレフィン、ポリジエン、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリ酸無水物、ポリイミン、ポリシロキサン、ポリファスファゼン、ポリケトン、ポリスルホン、等があげられる。有機高分子として、好ましくは、ポリエステル、ポリイミド等があげられる。
【0049】
無機材料として、ガラス、シリコン樹脂、水晶、石英、雲母、長石、石綿があげられる。
【0050】
金属として、卑金属(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉄、亜鉛、鉛)、貴金属(金、銀、銅)、これらの合金などがあげられる。金属は、好ましくは、アルミニウム、銅等である。
【0051】
基材は、固体であれば特に限定されず、シート状、薄膜、粉体であっても良い。
第1基材と第2基材は、同じまたは異なった材料の基材である。
【0052】
リワークやリサイクルにおいて、加熱により部品を取り外した後に対象物に残った接着剤を拭き取る際の溶剤としては、部品を破損しなければ特に限定されないが、特に好ましくは、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2‐イミダゾリジノン、ジメチルアセトアミド、などが挙げられる。これらの溶剤は、単一であっても2種類以上を混合して用いても良い。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明方法をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
実施例1
3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタンと3-エチル-3-エトキシエトキシメチルオキセタンの共重合
100mL 2口フラスコに、攪拌子、粉末状にした(Ace)Ru3(CO)7(161mg, 0.248mmol)を加え、アルゴン雰囲気とした。脱水したテトラヒドロピラン(THP)(4.52mL)を加え、錯体溶液をつくり、その中にHSiMe2Ph(3.88mL, 24.8mmol)を加え20℃で30分攪拌した。ついで、別途調製した3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタン(35.0g, 186mmol)と3-エチル-3-エトキシエトキシメチルオキセタン(11.6g 62.0mmol)をTHP7.0mLで希釈したオキセタン混合液を加え、24時間室温(20℃)で反応させた。1HNMRで原料であるオキセタン単量体が消失したことを確認した後、溶媒を減圧除去した。濃縮液にトルエン47.3mLを加え、溶解させた後、この溶液を室温(20℃)条件下MeOH372mLへ添加後、-36℃で2時間冷却し再沈殿操作をおこなった。えられた重合体に、活性白土4.2gを加え、エチレングリコールジメチルエーテル250mLを加えて、50℃で30分攪拌したのち、熱時ろ過をおこない不溶物を除去した。ろ液中の溶媒を減圧除去した後、恒量するまで60℃で減圧乾燥させ、目的物42.2 g(収率 90.5%)を得た。
【0055】
1HNMR
3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタン由来の繰返し単位をTMSOx, 3-エチル-3-エトキシエトキシメチルオキセタン由来の繰返し単位をEOEOxと以下記載する。
[1H-NMR](300MHz, C6D6):δ0.19-0.24(br, 9H, TMSOx内トリメチルシリル基-CH3), 1.03-1.23(m ,3H, TMSOx・EOEOx 内3位置換エチル基中の末端-CH3), 1.14-1.23(m ,3H, EOEOx 内3位置換エトキシエトキシ基中の末端-CH3), 1.60-1.79(bm,2H, TMSOx・EOEOx 内3位置換エチル基中の-CH2-), 3.17-3.87(bm,4H, TMSOx・EOEOx 内ポリマー主鎖の-OCH2-とbm,8H, EOEOx 内3位置換アルコキシ基中の-OCH2-) , 3.65-3.87(br,2H, TMSOx内3位置換トリフルオロメトキシ中の-OCH2-)
【0056】
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)
東ソー株式会社TSK-G5000HHRカラムとTSK-G2000HHRカラムを組み合わせ、クロロホルム溶出液を用い、ポリスチレン基準サンプルを用いて分子量分布を決定した結果、Mn=27820 Mw=48720, Mw/Mn=1.7であった。
【0057】
3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタン及び3-エチル-3-エトキシエトキシメチルオキセタン共重合体の脱保護
得られた共重合体(42.2g)にトルエン100mLを加えて溶解した。このポリマー溶液に2.5規定塩酸を250mL加え、ついで、メタノールを250mL加えて24時間室温(20℃)で攪拌した。減圧して有機溶媒を留去後、ろ過し、ろ物を恒量するまで60℃で減圧乾燥させ、下記の2種の繰り返し単位を有する目的物(ポリマー1)27.0g(収率 90.3 %)を得た。ポリマー1において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン繰り返し単位と3-エチル-3-エトキシエトキシメチルオキセタン繰り返し単位のモル比は、75:25であった。


および

【0058】
1HNMR
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン由来の繰返し単位をEHO, 3-エチル-3-エトキシエトキシメチルオキセタン由来の繰返し単位をEOEOxと以下記載する。
[1H-NMR](300MHz, CF3COOD):0.85 1.43(br , 3H, EHO・EOEOx 内3位置換エチル基中の末端-CH3), 1.29-1.43 (bm ,3H, EOEOx 内3位置換エトキシエトキシ基中の末端-CH3), 1.43-1.71(bm,2H, EHO・EOEOx 内3位置換エチル基中の-CH2-), 3.26-4.04(bm,4H, TMSOx・EOEOx 内ポリマー主鎖の-OCH2-とbm,8H, EOEOx 内3位置換アルコキシ基中の-OCH2-) , 3.65-3.87(br,2H, TMSOx内3位置換ヒドロキシメチル基中の-OCH2-)
【0059】
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)
東ソー株式会社TSK-G4000H8カラム、20mm LiBr/NMP溶出液を用い、ポリスチレン基準サンプルを用いて分子量分布を決定した結果、Mn=24190 Mw=46420, Mw/Mn=1.9であった。
【0060】
剥離強度評価(ポリイミド)
ポリマー1の粉末2.60gを2枚のポリイミド(宇部興産株式会社製 商品名ユーピレックスS 75μm厚、幅30.0cm x 長さ30.0cm)に挟み込み、常圧で140℃5分30秒保持した後、140℃4.9N/mm2で1分間加圧し、30℃4.9N/mm2で2分間冷却してポリイミド複合体を得た。この複合体を裁断し、JIS K 6854-3に従いT形剥離強度を測定したところ、84.0N/25mmであった。
【0061】
リワーク性確認試験
剥離試験サンプルを作成するのと同様に作成したポリイミド複合体を用いた。140℃に昇温すると、容易に複合体を分離することができた。ポリイミド表面に残っている共重合体をジメチルアセトアミド(DMAc)を染み込ませた布で軽くこすると、容易に除去することができた。ポリイミド表面に異常は認められなかった。
【0062】
実施例2
3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタンと3-エチル-3-{2-[2-(2-メトキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシメチル}オキセタンの共重合
100mL2口フラスコに、攪拌子、粉末状にした(Ace)Ru3(CO)7(195.3mg, 0.300mmol)を加え、アルゴン雰囲気とした。脱水したTHP(5.50mL)を加え、錯体溶液をつくり、その中にHSiMe2Ph(4.70mL, 30.0mmol.)を加え20℃で30分攪拌した。ついで、別途調製した3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタン(42.3g, 225mmol)と3-エチル-3-{2-[2-(2-メトキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシメチル}オキセタン(19.7g, 75.0mmol)をTHP14.2mLで希釈したオキセタン混合液を加え、24時間室温(20℃)で反応させた。1HNMRで原料であるオキセタン単量体が消失したことを確認した後、溶媒を減圧除去した。濃縮液にトルエン50mLを加え、溶解させた後、この溶液を室温(20℃)条件下MeOH450mLへ添加後、-36℃で2時間冷却し再沈殿操作をおこなった。得られた重合体に活性白土6.2gを加え、エチレングリコールジメチルエーテル250mLを加えて、50℃で30分攪拌したのち、熱時ろ過をおこない不溶物を除去した。ろ液中の溶媒を減圧除去した後、えられた液状ポリマーを恒量するまで60℃で減圧乾燥させ、目的物54.6g(収率 88.3%)を得た。
【0063】
1HNMR
3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタン由来の繰返し単位をTMSOx, 3-エチル-3-{2-[2-(2-メトキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシメチル}オキセタン由来の繰返し単位をTEGOxと以下記載する。
[1H-NMR](300MHz, C6D6):δ0.15-0.27(br, 9H, TMSOx内トリメチルシリル基-CH3), 0.99-1.16(bm ,3H, TMSOx・TEGOx 内3位置換エチル基中の末端-CH3), 1.55-1.78(bm,2H, TMSOx・TEGOx 内3位置換エチル基中の-CH2-), 3.13-3.22(br,3H, TEGOx 内3位置換ポリアルコキシ基の-OCH2-),3.29-3.62(bm,4H, TMSOx・TEGOx 内ポリマー鎖内の-OCH2-と, bm,14H, TEGOx 内3位置換ポリアルコキシ基中の-OCH2-) , 3.65-3.87(bm,2H, TMSOx 3位置換トリフルオロメトキシ中の-OCH2-)
【0064】
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)
東ソー株式会社TSK-G5000HHRカラムとTSK-G2000HHRカラムを組み合わせ、クロロホルム溶出液を用い、ポリスチレン基準サンプルを用いて分子量分布を決定した結果、Mn=24240 Mw=61410, Mw/Mn=2.5であった。
【0065】
3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタンと3-エチル-3-{2-[2-(2-メトキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシメチル}オキセタンの共重合体の脱保護
得られた共重合体(54.6g)にトルエン160mLを加えて溶解した。このポリマー溶液に2.5規定塩酸を240mL加え、ついで、メタノールを240mL加えて24時間室温(20℃)下で攪拌した。減圧して有機溶媒を留去後、ろ過し、ろ物を恒量するまで60℃で減圧乾燥させ、下記の2種の繰り返し単位を有する目的物(ポリマー2)35.4g(収率 87.6%)を得た。ポリマーにおいて、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン繰り返し単位と3-エチル-3-{2-[2-(2-メトキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシメチル}オキセタン繰り返し単位のモル比は、75:25であった。


および

【0066】
1HNMR
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン由来の繰返し単位をEHO, 3-エチル-3-{2-[2-(2-メトキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシメチル}オキセタン由来の繰返し単位をTEGOxと以下記載する。
[1H-NMR]( 300MHz, CF3COOD): 0.87-1.12(bm ,3H,EHO・TEGOx内3位置換エチル基中の末端-CH3), 1.39-1.70(bm,2H, EHO・TEGOx内3位置換エチル基中の-CH2-), 3.31-3.44(bm,3H, TEGOx内3位置換アルコキシ基の末端-CH3),3.44-4.14(bm,8H, EHO・TEGOx内ポリマー鎖内の-OCH2-とbm,4H, TEGOx内3位置換ポリアルコキシ基中の-OCH2-) ,
4.43-4.61(br,2H, TEGOx内3位置換トリフルオロメトキシ中の-OCH2-)
【0067】
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)
東ソー株式会社TSK-G4000H8カラム、20mm LiBr/NMP溶出液を用い、ポリスチレン基準サンプルを用いて分子量分布を決定した結果、Mn=21340 Mw=68260, Mw/Mn=3.2であった。
【0068】
剥離強度評価(ポリイミド)
ハンドプレス機で作成したポリマー2のシート(150μm厚、幅11.0cm x 長さ11.0cm)を2枚のポリイミド(宇部興産株式会社製 商品名ユーピレックスS 75μm厚、幅30.0cm x 長さ30.0cm)に挟み込み、ハンドプレス機を用い、常圧で140℃5分30秒保持した後、140℃4.9N/mm2で1分間加圧し、30℃4.9N/mm2で2分間冷却してポリイミド複合体を得た。この複合体を裁断し、JIS K 6854-3に従いT形剥離強度を測定したところ、50.9N/25mmであった。
【0069】
剥離強度評価(アルミ板)
ハンドプレス機で作成したポリマー2のシート(150μm厚、幅11.0cm x 長さ11.0cm)を2枚のアルミ板(0.50mm厚、幅30.0cm x 長さ30.0cm)に挟み込み、常圧で140℃5分30秒保持した後、140℃4.9N/mm2で1分間加圧し、30℃4.9N/mm2で2分間冷却してポリイミド複合体を得た。この複合体を裁断し、JIS K 6854-3に従いT形剥離強度を測定したところ、111N/25mmであった。
【0070】
180度剥離強度評価(銅板−ポリイミド)
ハンドプレス機で作成したポリマー2のシート(150μm厚、幅11.0cm x 長さ11.0cm)を0.5mm厚銅板とポリイミド(宇部興産株式会社製 商品名ユーピレックスS 75μm厚)で挟み込み、ハンドプレス機を用い、常圧で140℃5分30秒保持した後、140℃4.9N/mm2で1分間加圧し、30℃4.9N/mm2で2分間冷却して複合体を得た。この複合体を、JIS K 6854-2に従い裁断し180度剥離強度を測定したところ、63.0N/25mmであった。
【0071】
180度剥離強度評価(ガラス板−ポリイミド)
ハンドプレス機で作成したポリマー2のシート(150μm厚、幅11.0cm x 長さ11.0cm)をを1.0mm厚ガラス板とポリイミド(宇部興産株式会社製 商品名ユーピレックスS 75μm厚)で挟み込み、ハンドプレス機を用い、常圧で140℃5分30秒保持した後、140℃4.9N/mm2で1分間加圧し、30℃4.9N/mm2で2分間冷却して複合体を得た。この複合体をJIS K 6854-2に従い裁断し、180度剥離強度測定を試みたが、ポリイミド部分が破壊したため測定できなかった。
【0072】
比較例1
3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタンの重合
100mL2口フラスコに、攪拌子、粉末状にした(Ace)Ru3(CO)7(117.2mg,0.180mmol)を加え、アルゴン雰囲気とした。脱水したTHP(3.30mL)を加え、錯体溶液をつくり、その中にHSiMe2Ph(2.82mL, 18.0mmol.)を加え20℃で30分攪拌した。ついで、別途調製した3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタン(33.9g, 180mmol)をTHP8.76mLで希釈したオキセタン混合液を加え、24時間室温(20℃)で反応させた。1HNMRで原料であるオキセタン単量体が消失したことを確認した後、溶媒を減圧除去した。濃縮液にトルエン40mLを加え、溶解させた後、この溶液を室温(20℃)条件下MeOH600mLに添加後、-36℃で2時間冷却し再沈殿操作をおこなった。得られた重合体に活性白土3.3gを加え、エチレングリコールジメチルエーテル300mLを加えて、50℃で30分攪拌したのち、熱時ろ過をおこない不溶物を除去した。ろ液中の溶媒を減圧除去した後、えられた液状ポリマーを恒量するまで60℃で減圧乾燥させ、目的物31.5g(収率 93.0%)を得た。
【0073】
1HNMR
[1H-NMR](300MHz, C6D6):δ0.15-0.24(br, 9H,トリメチルシリル基-CH3), 0.92-1.20(bm ,3H,エチル基中-CH3), 1.52-1.81(bm,2H,エチル基中-CH2-), 3.34-3.56(bm,4H, ポリマー鎖内の-OCH2-), 3.62-3.76 (br, 2H, 2H, 3位置換TMSOCH2-)
【0074】
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)
東ソー株式会社TSK-G5000HHRカラムとTSK-G2000HHRカラムを組み合わせ、クロロホルム溶出液を用い、ポリスチレン基準サンプルを用いて分子量分布を決定した結果、Mn=25600 Mw=52270, Mw/Mn=2.0であった。
【0075】
3-エチル-3-トリメチルシロキシメチルオキセタン重合体の脱保護
得られた共重合体(31.5g)にトルエン144mLを加えて溶解した。このポリマー溶液に2.5規定塩酸を144mL加え、ついで、メタノールを288mL加えて24時間室温(20℃)下で攪拌した。減圧して有機溶媒を留去後、ろ過し、ろ物を恒量するまで60℃で減圧乾燥させ、目的物(ポリマーC1)19.7g(収率 94.2%)を得た。得られた化合物の1HNMR測定し、脱保護が完了したことを確認した。
【0076】
1HNMR
[1H-NMR](300MHz, CF3COOD):0.80 -1.09(br ,3H,エチル基中-CH3), 1.30-1.71(b)m,2H,エチル基中-CH2-), 3.27-3.81(bm,4H, ポリマー鎖内の-OCH2-), 3.82-4.01 (bs,2H,HOCH2-),
【0077】
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)
東ソー株式会社TSK-G4000H8カラム、20mm LiBr/NMP溶出液を用い、ポリスチレン基準サンプルを用いて分子量分布を決定した結果、Mn=31660 Mw=96270, Mw/Mn=3.0であった。
【0078】
剥離強度評価(ポリイミド)
ポリマーC1の粉末2.6gを2枚のポリイミド(宇部興産株式会社製 商品名ユーピレックスS 75μm厚、幅30.0cm x 長さ30.0cm)に挟み込み、ハンドプレス機を用い、常圧で140℃5分30秒保持した後、140℃4.9N/mm2で1分間加圧し、30℃4.9N/mm2で2分間冷却してポリイミド複合体を得た。この複合体を裁断し、JIS K 6854-3に従いT形剥離強度を測定したところ、0.8N/25mmであった。
【0079】
比較例2
剥離強度評価(ポリイミド)
Dupont社接着シートパイララックスLF100を、2枚のポリイミド(宇部興産株式会社製 商品名ユーピレックスS 75μm厚、幅30.0cm x 長さ30.0cm))に挟み込み、ハンドプレス機で常圧200℃2.0N/mm2で1時間加圧し、ポリイミド複合体を得た。この複合体を裁断し、JIS K 6854-3に従いT形剥離強度を測定したところ、5.60N/25mmであった。
【0080】
ポリイミドフィルム(宇部興産製ユーピレックスS、75μm厚)のT形剥離強度結果と剥離界面の状況を表1に併せて示す。
【0081】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:

で示される第1繰り返し単位、および
式:

で示される第2繰り返し単位
[式中、R11およびR21は、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子で置換されていてよいヒドロキシアルキル基、エーテル酸素含有有機基もしくは脂肪族炭化水素基、または有機高分子基であり、R12およびR22は、同一または異なって、ヒドロキシル基、ハロゲン原子で置換されていてよいヒドロキシアルキル基、エーテル酸素含有有機基もしくは炭化水素基、または有機高分子基である。隣接するR11とR12および/またはR21とR22は、互いに結合して環を形成しても良い。]
(但し、第1繰り返し単位と第2繰り返し単位は異なる。)
を有する共重合体であるオキセタン重合体。
【請求項2】
非架橋体または架橋体である請求項1に記載のオキセタン重合体。
【請求項3】
数平均分子量500〜500000である請求項1または2に記載のオキセタン重合体。
【請求項4】
第1繰り返し単位と第2繰り返し単位のモル比が、1:1000〜1000:1である請求項1〜3のいずれかに記載のオキセタン重合体。
【請求項5】
11およびR21が、ハロゲン原子で置換されていてよいヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ポリエーテル基、アルキル基であり、R12およびR22が、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてよいアルキル基、アリール基、アラルキル基である請求項1〜4のいずれかに記載のオキセタン重合体。
【請求項6】
11およびR21がメチロール基、ハロゲン原子で置換されていてよい酸素原子数1〜5かつ炭素原子数2〜10のエーテル基であり、R12およびR22がハロゲン原子で置換されていてよいアルキル基、アリール基、アラルキル基である請求項1〜4のいずれかに記載のオキセタン重合体。
【請求項7】
第1繰り返し単位が式:



[式中、Etは、エチル基である。]
で示される請求項1に記載のオキセタン重合体。
【請求項8】
第2繰り返し単位が式:



[式中、Etは、エチル基であり、R3は、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてよいエーテル基もしくは脂肪族炭化水素基、または有機高分子基である。]
で示される請求項1に記載のオキセタン重合体。
【請求項9】
第2繰り返し単位が、式:


[式中、Etは、エチル基であり、R4〜R8は水素原子、炭化水素基に含まれる少なくとも1つの水素原子がアルキル基、オルガノオキシ基またはハロゲン原子に置換されていてよい炭化水素基であり、oは1以上の整数である。]
で示される請求項1に記載のオキセタン重合体。
【請求項10】
オキセタン重合体が式:

[式中、Etは、エチル基であり、
R3は、ハロゲン原子で置換されていてよいエーテル酸素含有有機基もしくは脂肪族炭化水素基、または有機高分子基であり、mおよびnは1以上の整数である。]
で示される共重合体である請求項1〜9のいずれかに記載のオキセタン重合体。
【請求項11】
オキセタン重合体が式:


[式中、Etは、エチル基であり、
R4〜R8は水素原子、または炭化水素基に含まれる少なくとも一つの水素原子がアルキル基、オルガノオキシ基、及びハロゲン原子のいずれかに置換されていてよい炭化水素基であり、m、n およびoは1以上の整数である。]
で示される共重合体である請求項1に記載のオキセタン重合体。
【請求項12】
オキセタン重合体が式:


[式中、Etは、エチル基であり、
mおよびnは1以上の整数である。]
で示される共重合体である請求項1に記載のオキセタン重合体。
【請求項13】
オキセタン重合体が式:

[式中、Etは、エチル基であり、
mおよびnは1以上の整数である。]
で示される共重合体である請求項1に記載のオキセタン重合体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のオキセタン重合体を含んでなる接着剤。
【請求項15】
オキセタン重合体からなる請求項14に記載の接着剤。
【請求項16】
(A)オキセタン重合体、および(B)オキセタン重合体と相溶する樹脂を含んでなる請求項14に記載の接着剤。
【請求項17】
樹脂(B)が、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリアミド樹脂である請求項16に記載の接着剤。
【請求項18】
シート、粉体、有機溶媒に溶解した溶液の形態である請求項14〜17のいずれかに記載の接着剤。
【請求項19】
シートまたは粉体の形態である請求項14〜18のいずれかに記載の接着剤を第1基材の上に配置し、接着剤を加熱して溶融させ、溶融接着剤層を形成し、溶融接着剤層の上に第2基材を配置し、溶融接着剤層を冷却して固化させて、第1基材と第2基材を接着剤層によって結合することを特徴とする基材の接着方法。
【請求項20】
有機溶媒に溶解した溶液の形態である請求項14〜18のいずれかに記載の接着剤を第1基材の上に適用して接着剤溶液層を形成し、接着剤溶液層の上に第2基材を配置し、接着剤溶液層における有機溶媒を除去して固化接着剤層を形成させて、第1基材と第2基材を接着剤層によって結合することを特徴とする基材の接着方法。

【公開番号】特開2009−35649(P2009−35649A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202037(P2007−202037)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】