オクトレオチドの乾燥処方物の送達
オクトレオチドを被験体に送達する方法およびデバイスであって、オクトレオチドを送達するための放出制御組成物を埋め込むことを含み、この組成物は埋め込み前に水和を必要とせず、この組成物は必要に応じて離型剤を含む、方法およびデバイスが記載されている。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
末端肥大症は、脳下垂体が過剰な成長ホルモン(GH)を産生した場合に結果として生じるホルモン障害である。末端肥大症は、最も一般的には中年成人に発症し、重篤な疾患および早過ぎる死を生じさせ得る。末端肥大症であると診断されれば大多数の患者では治療可能であるが、その発症は緩徐で潜行性であることが多いために、正しく診断されないことが多い。末端肥大症の最も重篤な健康上の影響は、真性糖尿病、高血圧および心血管疾患のリスク上昇である。末端肥大症の患者は、癌に発達し得る大腸ポリープのリスクも高い。GH産生腫瘍が小児期に発生した場合、結果として生じる疾患は、末端肥大症ではなく巨人症と呼ばれる。長骨の成長板の癒合は思春期以後に発生するので、成人における過剰なGH産生の発達は身長の増加を生じさせない。成長板の癒合前の過剰なGHへの長期間曝露は、長骨の成長の増加および身長の増大を引き起こす。
【0002】
末端肥大症は、脳下垂体による成長ホルモン(GH)の長期間過剰産生によって誘発される。下垂体は、例えば成長および発達、生殖、ならびに代謝などの身体機能を制御するためのいくつかの重要なホルモンを生成する、脳基底部にある小さな分泌腺である。GHは、名称が意味するように、身体の肉体的成長を調節するホルモンのカスケードの一部である。このカスケードは、下垂体を調節するホルモンを生成する、視床下部と呼ばれる脳の一部で開始する。これらの内の1つである成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)は、脳下垂体がGHを産生するように刺激する。また別の視床下部ホルモンであるソマトスタチンは、GHの産生および放出を阻害する。下垂体による血流内へのGHの分泌は、肝臓内でインスリン様成長因子1(IGF−1)と呼ばれるまた別のホルモンの産生を引き起こす。IGF−1は、骨や身体の他の組織の成長を引き起こす因子である。IGF−1は、順に下垂体へGH産生を減少させるように信号する。身体内のGHRH、ソマトスタチン、GHおよびIGF−1のレベルは、相互に緊密に調節され、それらのレベルは、例えば睡眠、運動、ストレス、食物摂取量および血糖値などの環境刺激によって影響を受ける。下垂体が正常調節機構とは無関係にGHを産生する場合は、IGF−1のレベルは上昇し、骨の成長および器官の拡張をもたらすであろう。過剰なGHは、さらにまた糖および脂質代謝の変化もまた引き起こし、糖尿病を誘発することがある。
【0003】
90%を超える末端肥大症患者においては、GHの過剰産生は、腺腫と呼ばれる脳下垂体の良性腫瘍によって引き起こされる。これらの腫瘍は過剰なGHを産生し、腫瘍が拡張するにつれて、例えば視神経などの周囲脳組織を圧迫する。この拡張は、末端肥大症の症状であることが多い頭痛および視覚障害を引き起こす。さらに、周囲の正常下垂体組織の圧迫は、他のホルモンの産生を変化させ、女性における月経変化および乳腺分泌ならびに男性におけるインポテンスをもたらす。
【0004】
一部の患者においては、末端肥大症は、下垂体腫瘍によってではなく、膵臓、肺および副腎の腫瘍によって引き起こされる。これらの腫瘍は、GH自体を産生するため、またはより頻繁には下垂体にGHを生成させるように刺激するホルモンであるGHRHを産生するため、GHの過剰を引き起こす。これらの患者では、過剰なGHRHを血液で測定することができ、末端肥大症の原因が下垂体欠損ではないことが確定される。これらの非下垂体腫瘍は、手術によって除去されるとGHレベルが低下し、末端肥大症の症状は改善される。
【0005】
末端肥大症の治療レジメンには、GH産生を正常レベルへ減少させて、増大中の下垂体腫瘍が周囲脳領域に及ぼす圧力を取り除き、正常下垂体機能を保存し、および末端肥大症の症状を無効にするまたは緩和する工程が含まれる。治療の選択肢には、腫瘍の外科的切除、薬物療法および下垂体の放射線療法が含まれる。
【0006】
オクトレオチドは、末端肥大症の管理において有効であることが示されてきた。GHレベルは、通常はオクトレオチドの皮下注射後2時間以内に減少する。オクトレオチドは、患者の大多数においてGHおよびIGF−1レベルを減少させ、患者の60%までにおいては、IGF−1レベルを正常化させ生化学的寛解を示す。大多数の患者は、オクトレオチド療法の開始直後に、頭痛、関節痛および発汗を含む彼らの末端肥大症の症状の顕著な改善に気付く。オクトレオチドは、現在は、再構成すると酢酸オクトレオチドを含有するミクロスフェアの懸濁液であるSandostatin LAR(登録商標)デポ剤として入手可能である。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、末端肥大症患者における長期維持療法に用いられる唯一の医薬品である。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、さらにまた転移性カルチノイド腫瘍に関連する重症の下痢および紅潮のエピソードならびにVIP産生腫瘍に関連する激しい水様下痢の長期治療にも用いられる。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、用量設定期間後に、4週間毎の筋肉内注射によって投与される。酢酸オクトレオチドは、速効型製剤であるSandostatin(登録商標)注射液としても入手可能であり、これは1日3回の注射によって投与する必要がある。
【0007】
間欠的オクトレオチド注射に対してGHレベルの有意な減少を示さない患者においては、オクトレオチドのより頻回な投与がより大きな臨床反応を生じさせる場合がある。オクトレオチドは、難治性末端肥大症を有する患者に注射間のGHの逸出を防止するために皮下ポンプによって持続的に投与してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
末端肥大症の治療におけるオクトレオチドの有効性ならびにオクトレオチドの放出制御療法および処方物の欠如に鑑み、制御された速度で一定の期間にわたってオクトレオチドを送達し、例えば、複数回の定期的な注射の苦痛に耐えなければならないという患者の面倒を回避できるような、処方物および送達方法が明確に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、概略的に、ホルモン障害に罹患した個人の治療に使用できるオクトレオチド医薬組成物に関する。本発明は、好ましくは、放出制御処方物として調製される。詳細には、本発明は、埋込可能なデバイス、例えば埋め込み前にプライミングを必要としない埋込可能なデバイスを用いて、オクトレオチドを制御された速度で放出できるという予想外の発見に基づいている。
【0010】
一態様は、オクトレオチドを被験体に、実質的にゼロ次放出プロファイルで、約6カ月以上の長期間にわたって送達する方法に関し、この被験体はイヌではない哺乳動物であり、この方法は、被験体に少なくとも1つの埋込可能なデバイスを皮下埋め込みすることを含み、少なくとも1つの埋込可能なデバイスがオクトレオチドを含む組成物を含み、この組成物が親水性ポリマー中に収容され、埋込可能なデバイスが乾燥状態で埋め込まれて、被験体が少なくとも約6カ月の期間にわたって毎日、被験体の治療に有効な投与量のオクトレオチドを受け取る。特定の態様では、親水性ポリマーが、1以上のポリウレタン系ポリマーまたは1以上のメタクリレート系ポリマーを含む。特定の態様では、オクトレオチドが、遊離型、塩形態またはそれらの複合体の形態にあり、例えばこのときオクトレオチドは酢酸オクトレオチドである。特定の態様では、被験体が、GHもしくはIGF−1ホルモン障害またはその症状、例えば末端肥大症を患っている。特定の態様では、被験体が、オクトレオチドを約75μg/日〜約300μg/日の範囲の平均速度で少なくとも約6カ月の期間にわたって受け取る。特定の態様では、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.5ng/mL〜約2ng/mL、約0.5ng/mL〜約1.4ng/mL、約0.6ng/mL〜約1.2ng/mL、約0.8ng/mL〜約1.2ng/mLまたは約0.9ng/mL〜約1.0ng/mLの範囲のオクトレオチドの血清中濃度を生じさせる。特定の態様では、被験体が、少なくとも約12カ月の期間にわたって有効量のオクトレオチドを受け取る。血清中濃度を測定するために、範囲をある期間、例えば、約3日間〜約150日間、約3日間〜約120日間、約5日間〜約100日間、約10日間〜約75日間などにわたる平均値として示すことができる。特定の態様では、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.2ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる。特定の態様では、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約1.0ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる。特定の態様では、オクトレオチドの放出は、埋め込みから少なくとも3〜約10日後に発生する。特定の態様では、被験体は、カルチノイド症候群、VIP産生腫瘍、神経内分泌腫瘍、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵液および腸液瘻、グレーブス・バセドウ(Graves−Basedow)病性眼病、緑内障、ならびに化学療法またはAIDSに関連する症状からなる群より選択される状態を患っている。
【0011】
一態様は、ポリウレタン系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーに実質的に収容されるオクトレオチドを含む放出制御処方物を含む埋込可能なデバイスであって、埋込可能なデバイスがオクトレオチドを被験体に実質的にゼロ次放出プロファイルで約6カ月以上の長期間にわたって送達し、埋込可能なデバイスが被験体に乾燥状態で埋め込まれるとき、この被験体はイヌではない哺乳動物である、埋込可能なデバイスに関する。特定の態様では、親水性ポリマーが、1以上のポリウレタン系ポリマーを含んでいる。特定の態様では、オクトレオチドが、遊離型、塩形態またはそれらの複合体、例えば酢酸オクトレオチドの形態にある。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体がオクトレオチドを約75μg/日〜約300μg/日の範囲の平均速度で少なくとも約6カ月の期間にわたって受け取る。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約0.5ng/mL〜約2ng/mLの範囲のオクトレオチドの血清中濃度を生じさせる。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約0.8ng/mL〜約1.8ng/mLの範囲内のオクトレオチドの血清中濃度を生じさせる。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約1.2ng/mL未満のオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約1.0ng/mL未満のオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、オクトレオチドの放出は、埋め込みから少なくとも3〜約10日後に発生する。
【0012】
一態様は、イヌではない哺乳動物被験体を治療する医薬を製造するためのオクトレオチドの使用に関し、この医薬は、ポリウレタン系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーに実質的に収容される放出制御処方物であって、これにより埋込可能なデバイスを形成し、被験体に埋め込まれると、埋込可能なデバイスが、オクトレオチドを被験体に実質的にゼロ次放出プロファイルで約6カ月以上の長期間にわたって送達し、埋込可能なデバイスが乾燥状態で被験体に埋め込まれるとき、この被験体はイヌではない哺乳動物である。
【0013】
本発明は、治療有効量のオクトレオチドを長期間、好ましくは少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって提供する。本発明は、少なくとも約2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までにわたってオクトレオチドの放出制御を提供する組成物もまた提供する。
【0014】
本発明の態様は、オクトレオチドまたはその塩、プロドラッグもしくは誘導体を含む、様々な疾患および状態の効果的治療において使用できる医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】最大水和状態における平衡含水率対架橋HEMA/HPMAポリマー内ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)単位の重量%間の線形関係を示すグラフである。
【図2】本発明のインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図3】本発明のインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図4】本発明の異なる6つのインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図5】本発明の様々なインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図6】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた健常なイヌにおけるオクトレオチドおよびIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図7】6カ月にわたって本発明のオクトレオチドインプラント処方物1つが埋め込まれた3匹の健常なイヌからなる群におけるオクトレオチドおよびIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図8】6カ月にわたって本発明のオクトレオチドインプラント処方物2つが埋め込まれた3匹の健常なイヌからなる群におけるオクトレオチドおよびIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図9A】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、末端肥大症のヒト被験体11例におけるIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図9B】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、末端肥大症のヒト被験体11例におけるIGF−1の変化率(%)を示すグラフである。
【図10】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、末端肥大症のヒト被験体11例におけるオクトレオチドの血清中濃度を示すグラフである。
【図11】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、2匹のイヌにおけるオクトレオチドの血清中濃度を示すグラフである。
【図12】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、2匹のイヌにおけるIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図13】水和インプラントの送達および乾燥インプラントの送達後のオクトレオチドの血清中濃度を示すグラフである(表6も参照)。
【図14】水和インプラントの送達および乾燥インプラントの送達後のオクトレオチドの血清中濃度を示すグラフである(表6も参照)。
【図15A】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後の成長ホルモンのレベルを示すグラフである(GH濃度)。
【図15B】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後の成長ホルモンのレベルを示すグラフである(GHの減少率(%))。
【図16A】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のインスリン様成長第1因子(IGF−1)のレベルを示すグラフである(IGF−1濃度)。
【図16B】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のインスリン様成長第1因子(IGF−1)のレベルを示すグラフである(標準偏差)。
【図17A】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のインスリン様成長第1因子(IGF−1)のレベルを示すグラフである(試験からのデータを示しており、数値は正常IGF−1レベルのパーセントとして表示されている)。
【図17B】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のインスリン様成長第1因子(IGF−1)のレベルを示すグラフである(試験からのデータを示しており、数値は正常IGF−1レベルのパーセントとして表示されている)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組成物および方法について記載する前に、本発明は記載した特定の分子、組成物、方法、またはプロトコルに限定されず、変動する可能性があると理解すべきである。さらにまた、本説明において使用する用語は特定のバージョンもしくは実施形態を説明することだけを目的としており、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されると理解すべきである。本明細書で使用する用語は当業者に認識されていて公知である意味を有するが、便宜性および完全性のために、以下では特定の用語およびそれらの意味について記載する。
【0017】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明確に他が示されない限り、複数形を含んでいる。他に特に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解している意味と同一の意味を有する。本発明の実施形態の実施もしくは試験においては本明細書に記載したものに類似もしくは同等の任意の方法および材料を使用することができるが、以下では好ましい方法、デバイス、および材料について記載する。本明細書で言及した全ての刊行物は、それらが本発明を支持する範囲で参照により組み入れられる。本明細書に含まれるいかなる事項も、本発明が先行発明によってそのような開示に先行する資格がないという自認であると解釈されるべきではない。
【0018】
本明細書で使用する用語「約」は、それとともに使用される数値の±10%を意味する。例えば、約50%は、45%〜55%の範囲内にあることを意味する。
「放出制御処方物」は、長期間にわたって既定の治療有効量の薬物または、例えばポリペプチドもしくは合成化合物などの他の活性薬剤を一貫して放出するように設計され、その結果として所望の治療効果を達成するために不可欠な治療回数を減少させることができる処方物を示す。放出制御処方物は、成長ホルモンレベルの減少もしくはIGF−1レベルの減少において所望の効果を実現し、または例えば、成長異常、カルチノイド症候群、VIP産生腫瘍(血管作用性小腸ペプチド産生腺腫)、神経内分泌腫瘍(特に、紅潮および下痢の症状の治療)、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵液および腸液瘻、グレーブス・バセドウ病性眼病、緑内障を含むがそれらに限定されない末端肥大症に関連する症状を改善し、または化学療法およびAIDSの症状を治療するために必要な治療回数を減少させる。本発明の放出制御処方物は、被験体における所望の薬物動態プロファイル、好ましくは送達環境への配置の実質的直後に活性薬剤の放出が開始され、その後に前記活性薬剤の一貫した持続性の、好ましくはゼロ次もしくは近ゼロ次放出が続くプロファイルを達成する。
【0019】
本明細書で使用する用語「放出制御」は、活性薬剤の毒性レベル未満の治療的に有益な血中濃度が、少なくとも約2カ月、約6カ月以上(例えば、約2年まで)の期間にわたって維持されるような速度で、投与処方物からの活性薬剤の所定の一貫した放出を含む。
【0020】
用語「患者」および「被験体」は、ヒトを含む全ての動物を意味する。患者または被験体の例には、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、およびブタが含まれる。
本明細書で使用する用語「医薬上許容される塩、エステル、アミド、およびプロドラッグ」は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに患者の組織と接触させて使用するのに好適である、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド、およびプロドラッグを意味する。それらの使用は、妥当なリスク対効果比に見合い、かつ意図する用途に有効である。両性イオン型も、可能であれば、同様に本発明の有用な化合物である。本発明の化合物は、さらに、例えば、非溶媒和形態ならびに例えば、水、エタノールなどの医薬上許容される溶媒を用いた溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的にとって非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0021】
用語「プロドラッグ」は、例えば血液中での加水分解によってインビボで迅速に変換されて上記の式の親化合物を生じる化合物を意味する。完全な考察は、T.HiguchiおよびV.Stella,「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、ならびにBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987の中に提供されており、上記はどちらも全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0022】
用語「塩」は、本発明の化合物の比較的に非毒性の、無機および有機酸付加塩を意味する。これらの塩は、本化合物の最終単離および精製中に現場で、またはその遊離塩基形態にある精製化合物を適切な有機もしくは無機酸を用いて別個に反応させて、そこで形成された塩を単離する工程によって調製することができる。代表的な塩には、酢酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる。これらは、アルカリおよびアルカリ土類金属、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどをベースとするカチオン、ならびに非毒性アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどが含まれ得る(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、S.M.Barge et al.,「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19を参照されたい)。
【0023】
「治療」は、患者が患っている場合に、虚弱もしくは疾病を予防(防止)または治癒するために、患者に対する医薬の投与または医療処置の遂行を意味する。
「治療有効量」は、症状に付随する症候を減少させる、予防する、または緩和するために十分な量である。ホルモン療法の状況では、「治療有効量」は、さらに疾患もしくは不全での身体機能もしくはホルモンレベルを正常化するために十分な量を意味する場合もある。例えば、オクトレオチドの放出制御処方物の治療有効量は、所望の作用を達成するため、例えば患者における成長ホルモンもしくはIGF−1のレベルを効果的に減少させるために計算された所定量である。
【0024】
本発明は、例えば、末端肥大症および巨人症、またはオクトレオチドを用いて効果的に治療される他の疾患、障害もしくは症状を含む様々なホルモン障害、例えば、カルチノイド症候群、VIP産生腫瘍(血管作用性小腸ペプチド産生腺腫)、神経内分泌腫瘍(詳細には紅潮および下痢の症状を治療する)、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵液および腸液瘻、グレーブス・バセドウ病性眼病、緑内障を治療するため、または化学療法もしくはAIDSの症状を治療するために利用できる。
【0025】
末端肥大症は、手や足の拡張、前頭隆起、下顎の拡張および歯の間隔の増加を含む顔面の変化、関節痛、発汗、睡眠時無呼吸、高血圧、真性糖尿病および肥大型心筋症を含む多数の臨床的特徴を特徴とする。末端肥大症を誘発する腫瘍は、局所的解剖学的圧迫を誘発し、例えば視野欠損、頭痛、下垂体機能低下症、および脳神経麻痺を生じさせる。末端肥大症患者においては概して心血管および脳血管疾患に起因して2〜5倍の死亡率の上昇が存在する。さらに、末端肥大症に関連する悪性腫瘍の増加した比率も存在するが、最も明確に特徴付けられるのは大腸癌である。
【0026】
カルチノイド腫瘍は、通常は盲腸、気管支、結腸、または小腸において出現し、例えばセロトニンのような血管の拡張を誘発する化学物質を分泌する。血管拡張もまた、例えば下痢、紅潮および喘息などのカルチノイド腫瘍とともに通常観察される症状の原因となることがある。カルチノイド腫瘍によって分泌されるホルモンおよび生化学物質に依存して、多数の症状が存在する可能性がある。これらは集合的に、「カルチノイド症候群」として公知である。生化学的には、カルチノイド腫瘍を有する人々はより多くのセロトニンを産生する傾向があり、塩基としてアミノ酸トリプトファンを使用すると、セロトニンはさらに身体内で破壊され、そのような患者の大多数の尿中で見られる5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)を産生する。血液および尿を対象とする診断検査では、カルチノイド腫瘍の患者に、尿中5−HIAAの上昇、低血中トリプトファン、高血中クロモグラニンA、およびセロトニンが見られることが示されるであろう。血液検査もまた、ヒスタミン、ブラジキニン、ニューロン特異的エノラーゼ、カルシトニン、サブスタンスP、ニューロキニンA、および膵臓ポリペプチドを測定するために使用される。
【0027】
「OctreoScan(登録商標)」は、カルチノイド腫瘍および神経内分泌腫瘍を同定するために使用されるスキャン試験である。このスキャンは、ペネテトレオチドと呼ばれる放射性オクトレオチド誘導体を利用する。注射後、ペネテトレオチドはソマトスタチン受容体を発現する組織中に集中する。内分泌腫瘍は、この受容体を過剰発現し、この試験によってイメージングされる。
【0028】
本明細書で使用する用語「オクトレオチド」は、一般には様々な塩形態を含む図示した構造を含む全ての化合物を意味する。オクトレオチドは、以下のアミノ酸配列:L−システインアミド、D−フェニルアラニル−L−システイニル−L−フェニルアラニル−D−トリプトフィル−L−リシル−L−トレオニル−−N−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−,環状(2→7)−ジスルフィド;[R−−(R*,R*)]を備えるオクタペプチドを含んでいる。オクトレオチドの構造は以下に示す。
【0029】
【化1】
【0030】
化学式はC49H66N10O10S2であり、その分子量は1019.3Daである。その治療カテゴリーは、胃液分泌抑制薬である。本発明のオクトレオチドは、例えば、遊離型、塩形態、またはそれらの複合体の形態で存在することができる。酸付加塩は、例えば、有機酸、ポリマー酸および無機酸を用いて形成することができる。酸付加塩には、例えば塩酸塩および酢酸塩が含まれる。複合体は、オクトレオチドから、例えば無機物質、例えば無機塩もしくは例えばカルシウム塩および亜鉛塩などの水酸化物を添加して、および/またはポリマー有機物質を添加して形成される。酢酸塩は、本発明の処方物において好ましい塩である。
【0031】
本発明の実施形態は、以下の目的:治療作用を最大化して望ましくない副作用を最小限に抑えるための放出制御速度(ゼロ次もしくは約ゼロ次の放出速度);治療の終了に必要である場合、本デバイスを回収する便宜的方法;および吸収における変動が小さく初回通過代謝を伴わない、バイオアベイラビリティの増加、を達成できる薬物送達デバイスを提供する。
【0032】
酢酸オクトレオチドを含む放出制御医薬組成物は、放出制御ヒドロゲルデバイスの一部であってよい。本発明の組成物は、患者に投与されると、少なくとも約2カ月、好ましくは少なくとも約6カ月以上、例えば約2年までの長期におよぶオクトレオチドの放出プロファイルを提供することができる。オクトレオチドは、ヒドロゲルの内部に含有されてよく、例えば、本処方物は、長期間にわたって治療有効量のオクトレオチドを放出する。ヒドロゲルは、メタクリレート系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、およびそれらの組み合わせより選択されるポリマーを含むことができる。治療有効量は、患者または被験体に投与されると、末端肥大症の症状を緩和するオクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドの量である。本処方物は、医薬上許容される補形剤をさらに含むことができる。
【0033】
本発明の組成物が患者に投与されると、その患者の経時的な血漿中のオクトレオチドの濃度(放出プロファイル)は、少なくとも約2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までの期間にわたらせることができる。本組成物は、ヒト患者において約0.1〜約9ng/mL、約5ng/mL〜約1ng/mL、約1〜約2ng/mL、または約1.2〜約1.6ng/mLのオクトレオチドの定常状態平均血漿中濃度を提供することができる。定常状態は、投与間隔にわたって投与される薬物の量が、同一期間にわたって排泄される薬物の量と同等である時点である。
【0034】
オクトレオチド処方物を含む親水性インプラントは、それが容易に水を吸収するようにキセロゲルから形成することができる。水和状態では、キセロゲルはヒドロゲルと呼ばれる。水和もしくは非水和のいずれの形態でも、生体適合性であり、ホストにとって非毒性で、非生分解性である。キセロゲルは、水膨潤性および水不溶性である。ヒドロゲルが水和の最大レベルに達すると、ヒドロゲルの含水率は、「平衡含水率(EWC)」と呼ばれる。ヒドロゲル(水和のいずれの状態でも)の含水率は、以下のように決定される。
【0035】
【数1】
【0036】
ヒドロゲルは、エチレン性不飽和モノマーAおよびエチレン性不飽和モノマーB、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)の混合物の重合によって形成される所定の平衡含水率(EWC)値を有する均質なホモポリマーまたはコポリマーであってよい。所定のEWCは、親水性モノマーA(ホモポリマーA)のヒドロゲルホモポリマーおよび親水性モノマーB(ホモポリマーB)のヒドロゲルホモポリマーのEWC値を測定する工程と;均質なコポリマーABのEWC値対このコポリマーABの化学組成物の関係を得る工程と;目標EWC値を選択して目標EWC値を有するコポリマーABの化学組成物を得る工程と;目標EWC値を有するコポリマーABを得るために十分な量でモノマーAおよびモノマーBの重合可能な混合物を形成する工程と;重合反応に供し目標EWC値によって特徴付けられるコポリマーABを得る工程とによって計算することができる。
【0037】
本明細書で使用する「コポリマーAB」または「本質的にモノマーA単位およびモノマーB単位からなるコポリマーAB」は、モノマーAおよびモノマーBの付加共重合がこれらのモノマーの重合可能なエチレン重合を介して実行されていることを意味する。実例として、モノマーAが2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり、モノマーBがN−メチルアクリルアミドである場合は、コポリマーABは、繰り返しモノマーA単位および繰り返しモノマーB単位を含む。
【0038】
他に記載がない限り、用語「コポリマー」には、少なくとも2つのエチレン性不飽和モノマーの混合物を重合させる工程によって製造されたポリマーが含まれる。
本明細書で使用する「HEMA単位」は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)を含む親水性材料を重合させる工程によって得られたポリマー内で繰り返す構造を意味する。用語「HEMA単位」は、次の構造を意味する。
【0039】
【化2】
【0040】
本明細書で使用する「HPMA単位」は、ヒドロキシプロピルメタクリレート(「HPMA」)を含む親水性材料を重合させる工程によって得られた構造を意味する。用語「HPMA単位」は、次の構造を意味する。
【0041】
【化3】
【0042】
親水性生成物において有用な液体重合可能材料には、極めて広範囲の重合可能な親水性、エチレン性不飽和化合物、特に親水性モノマー、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸と、エステル化可能なヒドロキシル基および少なくとも1つの追加のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物と、のモノエステル、例えば、メタクリル酸とアクリル酸のモノアルキレンおよびポリアルキレンポリオール、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレートとアクリレート、プロピレングリコールメタクリレートとアクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレートとアクリレート、グリシジルメタクリレートとアクリレート、グリセリルメタクリレートとアクリレートなど;2−アルケンアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミドなど;N−アルキルおよびN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類およびメタクリルアミド類、例えばN−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリアミドなど;N−ビニルピロリドン;アルキル置換N−ビニルピロリドン類、例えば、メチル置換N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;アルキル置換N−ビニルカプロラクタム、例えば、N−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタムなどが含まれる。アクリル酸およびメタクリル酸もまた、これらの処方物中で有用となり得る。
【0043】
親水性モノマーの混合物は、重合反応において使用される。モノマーのタイプおよび比率は、均質なポリマー、好ましくは水和すると企図された用途または使用のために所望のEWC値を有する架橋した均質なポリマーを産生するように選択される。この数値は、様々なモノマー比率の一連のコポリマー、例えば様々な比率のHEMAおよびHPMAの混合物、を調製し、コポリマーのEWC値を確認し、HPMA/HEMAコポリマーにおけるHPMA単位のパーセンテージ(または%HEMA)対コポリマーのEWC重量%の関係をプロットすることによって予め決定することができる(図1)。
【0044】
一部の場合には、特定の親水性モノマー混合物の重合が、水性媒体中では様々な程度に溶解する均質な親水性コポリマーを生じさせる。そのような場合には、例えば3%までの少量の共重合可能なポリエチレン性不飽和架橋剤を、水不溶性ならびに水膨潤性である均質な架橋コポリマーを得るためにモノマー混合物中に含めることができる。HEMAのわずかに架橋したホモポリマーは、例えば、約38%のEWC値を有することができる。HEMAおよびHPMAの架橋コポリマーは、約38%未満のEWC値を有する。他方、HEMAおよびアクリルアミドの架橋コポリマーは、38(w/v)%を超える、例えばおよそ75%以上までのEWC値を示す。このため、活性化合物、例えば特定用途のためのヒドロゲル送達系を必要とする薬物の有用または有効溶出速度に依存して、当業者であれば、本明細書に開示した教示に従うことによって、コポリマーヒドロゲル膜を仕立ててその薬物を所望の速度で溶出させることができる。コポリマーは、例えば約15〜約70重量%のHEMA単位および約85〜約30重量%の第2エチレン性モノマー単位を含み、約20%〜約75%の範囲内、好ましくは約25%の既定EWC値を有し得る。均質なコポリマーは、約80重量%のHPMA、および約20重量%のHEMAを含む親水性モノマー混合物から製造されたコポリマーを含むことができる。また別の実施形態では、本混合物は、少量のポリエチレン性不飽和架橋剤、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート(「TMPTMA」)をさらに含むことができる。
【0045】
本発明の様々な態様には、均質なポリマー構造が上記親水性モノマー混合物の重合によって形成される均質な親水性コポリマー;および送達系において均質なポリマーカートリッジを利用する薬物送達デバイスが含まれる。親水性モノマーおよび疎水性モノマーの混合物の重合は、不均質なポリマーを生じる。疎水性セグメントがポリマー内に存在すると、界面自由エネルギーが増加するので、動物の体内への埋め込み後にはタンパク質の吸着および無機化が促進される。例えば、ポリHEMAのヒドロゲルは、ゼロに近い界面自由エネルギーを有すると測定された。界面自由エネルギーに関する解釈によると、厳密に親水性成分によるヒドロゲルは、身体組織と極めて生体適合性であるように見える。わずかに架橋したポリHEMAは、(その中の相対的に少量の重合した架橋剤を無視すると)相対的に固定した特性もしくは数値を備える均質な親水性「ホモポリマー」である。「ホモポリマー」であるポリHEMAを変化させてさらなる特徴もしくは特性を付与する技術は困難であり、莫大な時間がかかり、時として想定外(erratic)の特性挙動が生じる。他方、HEMAと様々な量の他の重合可能な親水性コモノマーとの混合物を重合させると、(所定の)テイラーメイドの特性を有する予測可能な均質な親水性コポリマーを得ることができる。
【0046】
重合可能な反応媒体中に含めることのできる有用な架橋剤には、例えば、少なくとも2つの重合可能なエチレン部位を有するポリエチレン性不飽和化合物、例えば、ジ−、トリ−およびテトラ−エチレン性不飽和化合物、特に、ジ不飽和架橋化合物を伴う/伴わないトリ不飽和架橋剤、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート;ならびに以下のポリオール:トリエタノールアミン、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,1,1−トリメチロールプロパンなど、のジ−、トリ−およびテトラ−アクリレートまたはメタクリレートエステルが含まれる。
【0047】
重合反応は、バルク内で、または不活性溶媒を用いて実施できる。適切な溶媒には、例えば、水;有機溶媒(例えば、水溶性の低級脂肪族一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコール、グリセリン、ジオキサンなど;ならびにそれらの混合物)が含まれる。
【0048】
重合可能なエチレン性不飽和化合物の触媒反応において有用な化合物には、フリーラジカル化合物および/またはビニル重合において一般に使用されるタイプの開始剤、例えば有機過酸化物、過炭酸塩、過酸化水素、およびアルカリ金属硫酸塩が含まれる。具体的な例には、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、過酸化水素、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、および硫酸ナトリウムが含まれる。好ましい触媒は、中等度に低い温度、例えば、約20〜80℃で有効な触媒(例えば、tert−ブチルパーオクトエート、ベンゾイルペルオキシド、およびジ(sec−ブチル)ペルオキシジカーボネート)である。
【0049】
従来のレドックス重合触媒もまた使用できる。エチレン性化合物の重合は、例えば、放射線、例えば紫外線、X線、γ線、マイクロ波または他の周知の形態の放射線を用いて実施することができる。紫外線硬化のために好ましい触媒は、ベンゾインメチルエーテルである。触媒および/または開始剤および/または放射線は、重合反応を最適化する触媒有効量で使用される。
【0050】
本発明は、長期間にわたって制御された速度で生物活性化合物を送達するための埋込可能な薬物デバイスの作製へのポリウレタン系ポリマー、熱可塑性物質もしくは熱硬化性樹脂の適用に焦点を当てている。ポリウレタンポリマーは、好ましくは、使用されるポリウレタンのタイプに応じて、押出成形、(反応)射出成形、圧縮成形、または回転成形法(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,325号明細書および米国特許第5,292,515号明細書)を通して、1つまたは2つの開放端を備える円筒形の中空管に形成される。
【0051】
熱可塑性ポリウレタンは、押出成形、射出成形または圧縮成形を通して加工することができる。熱硬化性ポリウレタンは、反応射出成形、圧縮成形または回転成形を通して加工することができる。円筒形の中空管の寸法は決定可能であり、精確に調整することができる。
【0052】
ポリウレタン系ポリマーは、多官能ポリオール、イソシアネートおよび鎖延長剤から合成される。各ポリウレタンの特徴は、その構造に帰せることができる。
熱可塑性ポリウレタンは、マクロジオール、ジイソシアネートおよび二官能鎖延長剤から製造される(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,523,005号明細書および米国特許第5,254,662号明細書を参照されたい)。マクロジオールは、軟質ドメインを形成する。ジイソシアネートおよび鎖延長剤は、硬質ドメインを形成する。硬質ドメインは、ポリマーのための物理的架橋部位として機能する。これら2つのドメインの比率を変化させると、ポリウレタンの物理的特徴を変化させることができる。
【0053】
熱硬化性ポリウレタンは、多官能(二官能より高次)ポリオールおよび/またはイソシアネートおよび/または鎖延長剤から製造することができる(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,386,039号明細書および米国特許第4,131,604号明細書を参照されたい)。熱硬化性ポリウレタンは、さらにまた化学的に架橋させるためにポリマー鎖および適切な架橋剤および/または開始剤の中に不飽和結合を導入する工程によって製造することができる(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,751,133号明細書を参照されたい)。架橋部位の量およびそれらの分布を制御することによって、活性物質の放出速度を制御することができる。
【0054】
様々な官能基は、所望の特性に応じて、ポリオールの主鎖の修飾を通してポリウレタンポリマー鎖に導入することができる。本デバイスが、水溶性薬物の送達のために使用される場合は、ポリマーの親水性を増加させるために、例えばイオン基、カルボキシル基、エーテル基、およびヒドロキシ基などの親水性ペンダント基が、ポリオール中に組み込まれる(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,743,673号明細書および米国特許第5,354,835号明細書を参照されたい)。本デバイスが、疎水性薬物の送達のために使用される場合は、ポリマーの疎水性を増加させるために、例えばアルキル基、シロキサン基などの疎水性ペンダント基が、ポリオール中に組み込まれる(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,313,254号明細書を参照されたい)。活性物質の放出速度は、ポリウレタンポリマーの親水性/疎水性によっても制御することもできる。
【0055】
本発明の小さな円筒形のインプラントは、そのコア内に、オクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチド、および必要に応じて医薬上許容される担体を含むことができる。本インプラントの膜の厚さ(内面と外面との間)は、実質的に均一であり、含まれた作用物質を放出するための速度制限障壁として機能する。そのようなインプラントは、可塑化もしくは水和させ、様々な医学的用途において使用するための他の幾何学的形状の製品に再形成することができる。
【0056】
埋込可能な処方物の製造においては、いくつかのファクターが検討され得る。放出プロファイル(遅延時間、放出速度、および期間)を決定し、親水性ポリマー材料を特定し、それを(速度制限膜として)通る活性薬剤の拡散性を測定する。所定の活性薬剤についての速度制限膜の水和プロファイルは、選択されたポリマーのフィルムを調製し、当技術分野において周知である2区画垂直ガラス製セルを用いて拡散試験に供することによって容易に決定することができる。
【0057】
拡散係数および拡散が始まる時点の含水率(それ未満では拡散が実質的に発生しない−以下では「%Hd」)が決定される。一連の膜は、様々なポリマーから調製される。これらの膜をその後、それらの最大容量まで水和させ、EWCを測定する。最大限に水和した膜を、2区画垂直ガラス製セル内に配置して測定し、様々なEWCについて膜材料を通しての高分子組成物の拡散をプロットする。拡散が検出されない(例えば、活性薬剤がレセプタセル内に全く拡散しない)最も水和した膜の平衡含水率が、試験した系についての%Hdである。これは、透過性対EWCの曲線をプロットすることによって得られる。
【0058】
透過性試験の結果(拡散係数)は、Fickの拡散の第1法則にしたがって、次式によって得られる。
【0059】
【数2】
【0060】
(式中、dQ/dtは、膜材料を通る流束(μg/時)であり;これは累積移送対時間の曲線の線形部分の傾きとして測定され;Aは、膜の面積(cm2)であり;Pは、膜透過係数(cm2/時)、またはDKd、ここで、Dは膜の拡散性(cm2/時)であり、Kdは膜/ドナー溶液に対する分配係数であり;1は、実験終了時に測定した膜の厚さ(cm)であり;Cdは、ドナー溶液の濃度(μg/cm3)である。)
そして放出遅延プロファイルを決定することができる。また別の一連のポリマー膜を、同様に架橋剤およびモノマーの量を変化させながら調製することができる。これらの膜は、次に、部分的にのみ、水和させることができ、例えば%Hd以下の含水率まで水和させる。部分的に水和した膜を、2区画垂直ガラス製セル内に配置し、時間について膜を通しての活性化合物の拡散を測定しプロットする。ドナーセルおよびレセプタセル用のバッファー溶液は、部分的に水和した膜に接触して、それらが送達環境において水和するであろう速度とほぼ同一速度でさらに水和するように、選択することができる。拡散試験の開始、即ちドナーセルへの活性薬剤の添加と、レセプタセル内における活性薬剤の医薬有効濃度の検出との間の時間は、ポリマーと初期水和率の組み合わせにおいての放出遅延時間である。
【0061】
円筒形のデバイスの物理的寸法を決定するために、送達すべき活性薬剤の総量を決定する。これは、所望の1日量と送達期間の積である。好ましい実施形態では、送達期間は、少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年までである。所望の1日量は、例えば、約10〜約1000μgオクトレオチド/日、好ましくは約20〜約800μgオクトレオチド/日、より好ましくは約30〜約300μgオクトレオチド/日である。
【0062】
円筒形のデバイスの円筒形のリザーバー(コア)の容量は、Πri2h(式中、riはリザーバーの半径であり、hはその高さである)に等しい。円筒形からの定常状態放出についての式は:
【0063】
【数3】
【0064】
(式中、r0は円筒形デバイスの外側半径であり;Cdは、ドナー溶液、すなわち担体、中の薬物濃度である)である。定常状態放出は、Cdが飽和状態で維持される場合に得られる。所望の徐放性のために必要とされる膜の厚さは、このためr0−riである。
【0065】
使用される活性薬剤の量は、所望の1日量だけではなく、用量レベルを維持すべき日数にも依存するであろう。この量は実験によって計算できるが、送達される実際用量は本デバイス内で使用される場合、材料および担体との任意の相互作用の関数である。
【0066】
適切なポリウレタンポリマーが選択されれば、円筒形のインプラントを作製する最善の方法は、本明細書に記載した適切な送達特徴を達成するように当業者が決定することができる。
【0067】
熱可塑性ポリウレタンについては、精密押出成形および射出成形を使用して、一貫した物理的寸法を備え2つの開放端を有する中空管を製造することができる。リザーバーには、活性物質および担体を含有する適切な処方物を自由に装填し、または活性物質の装填量を最大化するために予め作製されたペレットを充填することができる。2つの開放端をシールするために、予め作製された末端プラグを使用できる。シーリング工程は、末端を、好ましくは永久的に、シールするために熱もしくは溶媒または任意のその他の手段を適用して遂行できる。
【0068】
熱硬化性ポリウレタンについては、硬化機構に応じて、好ましくは精密反応射出成形または回転成形が選択される。反応射出成形は、硬化機構が熱によって行われる場合に使用され、回転成形は、硬化機構が光および/または熱によって行われる場合に使用される。好ましくは、1つの開放端を備える中空管は、回転成形によって製造される。好ましくは、2つの開放端を備える中空管が、反応射出成形によって製造される。リザーバーには、熱可塑性ポリウレタンと同一方法で装填することができる。
【0069】
好ましくは、1つの開放端をシールするためには、適切な光開始および/または熱開始熱硬化性ポリウレタン調製物が前記開放端の充填に使用され、光および/または熱を用いて硬化させる。より好ましくは、開放端をシールするために、予め作製された末端プラグを用い、この予め作製された末端プラグと開放端との間の界面に適切な光開始および/または熱開始熱硬化性ポリウレタン調製物を適用し、好ましくは永久的に末端をシールするための光および/または熱または任意のその他の手段を用いて硬化させることができる。固体活性薬剤および任意の担体は、活性物質の装填を最大化するためにペレット形に圧縮することができる。
【0070】
埋め込み前に、埋込可能な処方物を、所定の期間にわたって必要に応じて水和または「プライミング」することができる。プライミングは、インプラントをプライミングする時間量に応じて、有効成分がヒドロゲルの壁に浸潤し始めて飽和し、埋め込み前にヒドロゲルから潜在的に浸出し始めることを可能する。プライミングしたインプラントは、実質的に埋め込み後に有効成分を放出し始め、埋め込み後まもなく薬物放出ピークを生じさせることができる。一方、プライミングをほとんどもしくは全くしないと、埋め込み後の有効成分の放出はインプラントが水和され、有効成分が放出され始められるまでの期間は実質的に行われないが、これらのプライミング特徴は、使用される特定の処方物に左右される。本発明は、例えば、放出制御オクトレオチド処方物を投与する方法であって、非水和オクトレオチド処方物を被験体の体内に埋め込む工程を含む方法に関する。
【0071】
有効成分のタイプ(親水性または疎水性)に応じて、適切なコンディショニングおよびプライミング媒体が選択され得る。親水性活性物質には水性媒体が好ましく、疎水性活性物質には油性媒体が好ましい。また、本発明の特定のインプラントは、埋め込み前にプライミングを必要としない。いくつかの場合には、プライミングは、活性薬剤の送達を調節して改善するが、他の場合には、被験体への埋め込み前のプライミングは、インプラントをプライミングするために必要な追加の時間および煩わしさを正当化するほどには送達に影響を及ぼさない。
【0072】
本発明の実施において有用な水和液は、典型的には活性化合物が放出されることになる環境を模した液体、例えば、体液、滅菌水、涙液、生理的食塩水、リン酸緩衝溶液などである。水以外の液体が水和液として有用であるが、親水性膜の水和の程度は、その「含水率」と呼ばれる。
【0073】
本薬物送達デバイスのプライミングおよびコンディショニングは、リザーバーを取り囲むポリマーの中に活性物質(薬物)を装入し、これによりインプラントを実際に使用する前の活性物質のロスを防ぐことを含んでいる。コンディショニングおよびプライミング工程に使用される条件は、活性薬剤、温度および実施時の媒体に応じて決定される。コンディショニングおよびプライミングの条件は、一部の場合には同一であってよい。
【0074】
薬物送達デバイスの作製プロセスにおけるコンディショニングおよびプライミング工程は、特定の薬物の所定の放出速度を得るために行われる。親水性薬物を含有するインプラントのコンディショニングおよびプライミング工程は、水性媒体中、より好ましくは食塩水中で行われる。疎水性薬物については、媒体は血漿様媒体であってよく、これには、限定はされないが、シクロデキストリンが含まれる。コンディショニングおよびプライミング工程は、3つの具体的なファクター、すなわち温度、媒体および時間を制御することによって実施される。
【0075】
当業者であれば、薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミング工程は、デバイスを配置する媒体によって影響を受けることを理解できるであろう。例えば、ヒストレリンおよびナルトレキソンインプラントは、食塩水中でコンディショニングおよびプライミングすることができ、より詳細には、0.9%のナトリウム含量の食塩水中でコンディショニングし、1.8%の塩化ナトリウム含量の食塩水中でプライミングすることができる。
【0076】
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングに使用される温度は、広い温度範囲にわたって変化させることができるが、一部の場合には37℃が使用される。
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングに使用される時間は、具体的なインプラントまたは薬物に求める放出速度に応じて、約1日〜数週間にわたって変化させ得る。
【0077】
当業者であれば、インプラントをコンディショニングおよびプライミングする工程は、適切または必要な場合に、そのインプラント内に含まれた薬物の放出速度を最適化するためのものであることを理解するであろう。したがって、薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングにかける時間が短いほど、例えば、より長いコンディショニングおよびプライミング工程を受けた同様の薬物送達デバイスと比較して薬物の放出速度を遅くすることができる。しかし、プライミングを行わないと、予想外にも、より長期間(例えば、28週およびそれ以上)にわたって効果的放出が起こることが見いだされ、さらに有効成分のより低い血清中濃度が改善効果を有することが見いだされた。
【0078】
コンディショニングおよびプライミング工程における温度もまた放出速度に影響を及ぼし得て、低い温度の方が、より高い温度で処理した同様の薬物送達デバイスと比較して、薬物送達デバイスに含まれる薬物の放出速度が遅くなる。
【0079】
同様に、水溶液の場合、一部の場合に好ましくは食塩水である場合には、この溶液の塩化ナトリウム含量もまた、薬物送達デバイスについてどのようなタイプの放出速度が得られるかを決定し得る。より詳細には、塩化ナトリウム含量が低いほど、塩化ナトリウム含量が高いコンディショニングおよびプライミング工程を受けた薬物送達デバイスと比較して放出速度が速くなり得る。
【0080】
インプラントの位置を特定するため、放射線不透過性材料をリザーバー内に挿入することによって、またはカートリッジをシールするために使用される末端プラグを放射線不透過性材料で作製することによって、放射線不透過性材料を送達デバイス内に組み込むことができる。
【0081】
本発明の処方物は、医薬上許容される担体を含むことができ、これには例えば、懸濁媒体、溶媒、水性系および固体基質もしくはマトリックスが含まれる。
担体として有用な懸濁媒体および溶媒には、例えば、油類、例えば、シリコーン油(特に医療グレードのもの)、トウモロコシ油、ヒマシ油、落花生油およびゴマ油など;ヒマシ油と酸化エチレンとの縮合生成物;低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル類;低級アルカノール類;グリコール類;およびポリアルキレングリコール類が挙げられる。
【0082】
水性系には、例えば、滅菌水、食塩水、デキストロース、水または食塩水中のデキストロースなどが含まれる。水性系中の電解質の存在は、高分子薬物のそれらへの溶解度を低下させる傾向がある。
【0083】
固体基質もしくはマトリックスには、例えば、デンプン、ゼラチン、糖類(例えば、グルコース)、天然ゴム類(例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース)などが含まれる。好ましい実施形態では、本医薬処方物は、約2%〜約20%、より好ましくは約10%のヒドロキシプロピルセルロースをさらに含んでいる。加えて、本医薬処方物は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、加工デンプンまたは架橋ポリビニルピロリドンをさらに含んでもよい。
【0084】
担体には、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤および乳化剤などのアジュバントをさらに含むことができる。
一実施形態では、本発明の医薬処方物は、HEMAおよびHPMAのコポリマー、好ましくは約20%のHEMAおよび約80%のHPMA、の混合物中に酢酸オクトレオチドの処方物を含んでいる。本医薬処方物は、例えば、約20〜約150mg、好ましくは約40〜約90mgのオクトレオチドを含むことができる。本処方物は、約2〜約20%の補形剤をさらに含むことができる。本処方物は、約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび/または約2%のステアリン酸マグネシウムをさらに含むことができる。
【0085】
本発明の医薬処方物は、HEMAおよびHPMAのコポリマー、好ましくは約20%のHEMAおよび約80%のHPMA、の混合物中に約50gのオクトレオチドの処方物を含むことができる。また別の実施形態では、本処方物は、酢酸オクトレオチドとともに約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび2%のステアリン酸マグネシウムをさらに含んでいる。
【0086】
本発明の医薬処方物は、HEMAおよびHPMAのコポリマー、好ましくは約40%のHEMAおよび約60%のHPMA、の混合物中に約83gのオクトレオチドの処方物を含むこともできる。また別の実施形態では、本処方物は、酢酸オクトレオチドとともに約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび2%のステアリン酸マグネシウムをさらに含んでいる。本医薬処方物は、ステアリン酸、植物性ステアリン、タルクおよびシリカをさらに含んでもよい。
【0087】
本発明の医薬処方物は、キセロゲル、好ましくはヒドロゲルもしくはポリウレタン系ポリマー中に約20mg〜約150mg、より好ましくは約40mg〜約90mgのオクトレオチドの処方物を含むこともできる。
【0088】
ホルモン障害に関連する疾患を治療する方法が提供される。本方法は、オクトレオチドを投与することと、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度を約0.1ng/mL〜約9ng/mLで長期間、好ましくは少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年まで、にわたって維持することとを含むことができる。好ましい実施形態では、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度は、約1ng/mL〜約2ng/mL、より好ましくは約1.2ng/mL〜約1.6ng/mLの間で、長期間にわたって維持される。ホルモン障害には、例えば、末端肥大症が含まれる。
【0089】
本発明は、GHレベルを低下させる方法に関し、この方法は、オクトレオチドを投与することと、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度を約0.1ng/mL〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1ng/mL〜約2ng/mL、または約1.2〜約1.6ng/mLの間で、長期間、好ましくは少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって維持することとを含む。
【0090】
さらに本発明は、IGF−1レベルを低下させる方法に関し、この方法は、オクトレオチドを投与することと、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度を約0.1ng/mL〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1ng/mL〜約2ng/mL、または約1.2〜約1.6ng/mLの間で、長期間、好ましくは少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって維持することとを含む。
【0091】
さらに本発明は、末端肥大症を治療する方法に関し、この方法は、本発明の少なくとも1つのインプラント、好ましくは本発明のインプラント2つを投与することを含む。この方法では、投与される各インプラントは、約20〜約150mgのオクトレオチド、好ましくは約40〜約90mgのオクトレオチド、より好ましくは約50mgのオクトレオチドを含み、治療有効量のオクトレオチドを少なくとも2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって放出することができる。
【0092】
さらに本発明は、カルチノイド腫瘍およびVIP産生腫瘍に関連する症状を治療する方法に関する。治療有効量のオクトレオチドを少なくとも約2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって放出するオクトレオチドの埋込可能な処方物を投与することによって、カルチノイド腫瘍に関連する重症の下痢および紅潮のエピソードを治療する方法もまた本発明に含まれる。治療有効量のオクトレオチドを少なくとも約2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって放出するオクトレオチドの埋込可能な処方物を投与することによって、VIP産生腫瘍に関連する水様下痢を治療する方法もまた本発明に含まれる。
【0093】
本発明の処方物は、本インプラントの不都合な副作用を最小限に抑えながら治療効果を最大化する特定の所望の放出プロファイルを示す。所望の放出プロファイルは、薬物もしくは活性薬剤の最大血漿中濃度(Cmax)および定常状態での薬物もしくは活性薬剤の血漿中濃度(Css)によって説明することができる。
【0094】
さらに本発明は、ヒドロゲルおよびオクトレオチドの治療用組成物であって、埋め込まれると、このオクトレオチドが、約0.1ng/mL〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1ng/mL〜約2ng/mL、または約1.2ng/mL〜約1.6ng/mLのCssを提供するおよび/または維持するような速度で放出される治療用組成物に関する。また別の実施形態は、ヒドロゲルおよびオクトレオチドの治療用組成物であって、埋め込まれると、前記オクトレオチドは長期間にわたって約10μg〜約1000μg/日、より好ましくは約20μg〜約800μg、より好ましくは約30μg〜約300μg/日の速度で放出される治療用組成物である。オクトレオチドは、少なくとも約2カ月、約6カ月、または約2年までにわたって放出させることができる。ヒドロゲルは、メタクリレート系ポリマーまたはポリウレタン系ポリマーを含むことができる。
【0095】
また別の実施形態は、オクトレオチドと、このオクトレオチドを約30μg〜約250μg/日の速度で少なくとも約2カ月、約6カ月、または約2年にわたってインビトロで放出することを許容する親水性ポリマーとを含む放出制御処方物である。一部の実施形態では、送達は、約100μg〜約130μg/日である。また別の実施形態では、本処方物の親水性ポリマーは、インビトロで約100μg/日の平均速度でのオクトレオチドの放出を許容する。親水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択することができる。
【0096】
本発明のまた別の実施形態は、埋め込み用のオクトレオチドを含む放出制御処方物であり、この処方物は、約6週間後には処方物からオクトレオチドの約20%以下がインビトロで放出されること、および約6カ月後には処方物からオクトレオチドの約60%が放出されることを許容するのに有効な親水性ポリマー内に、オクトレオチドを含んでいる。
【0097】
本発明の医薬組成物中に含まれる医薬上許容されるオクトレオチド(例えば、その様々な塩、溶媒和状態またはプロドラッグ)の量は、例えば、使用される具体的なオクトレオチド、所望の用量レベル、使用されるヒドロゲルのタイプおよび量、本組成物中に含まれる追加の材料のタイプおよび量を含む様々な因子に応じて変動するであろう。本処方物中のオクトレオチド、またはその誘導体の量は、効率的薬物送達のために所望の用量、分子量、および本化合物の活性に応じて変動する。使用される薬物の実際量は、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、疾患または任意の他の医学的基準によって決定され得る。実際の薬物量は、当技術分野において公知の技術により、意図する医学的用途にしたがって決定される。本発明によって調製された医薬上の用量を、主治医によって決定されるように、例えば約6カ月毎に1回投与とすることができる。
【0098】
オクトレオチドは、典型的にはインプラントまたは他の医薬組成物中に、約20mg〜約150mg、好ましくは約40mg〜約90mgのオクトレオチド、より好ましく約50〜約85mg、の量で調製される。成人については、末端肥大症を治療するための1日量は、典型的には、約300μg〜約600μg即時放出オクトレオチド/日(100μgまたは200μgのSandostatin(登録商標))である。本組成物中のオクトレオチドの量は、例えば、長期間にわたって約10μg〜約1000μg/日、約20μg〜約800μg/日、または約30μg〜約300/日を放出するように選択することができる。そのような放出速度は、患者の血液中で長期間にわたって約0.1〜約9ng/mLの所望の治療レベルを維持する。
【0099】
オクトレオチドを中に含むヒドロゲルデバイスは、患者の血漿中へのオクトレオチドの放出制御を提供する。本発明の医薬組成物中で使用されるオクトレオチドの放出速度を制御するために適切なヒドロゲルには、親水性モノマーのポリマーが含まれ、これには、限定はされないが、HPMA、HEMAなどが含まれる。そのようなヒドロゲルは、さらにまた本組成物からのオクトレオチドの分解および消失を防止することができる。
【0100】
本発明のIA医薬処方物は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートの親水性コポリマー内に酢酸オクトレオチドを含むことができる。本医薬処方物のコポリマーは、例えば、約20%のHEMAおよび約80%のHPMAを含むことができる。あるいは、本医薬処方物のコポリマーは、例えば約40%のHEMAおよび約60%のHPMAを含むことができる。
【0101】
本インプラントのサイズ、形状および表面積は、本インプラントからのオクトレオチドの放出速度が増加または低下するように修正することができる。
本発明の医薬組成物は、助剤または補形剤、例えば、流動促進剤、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、低温融解結合剤を含む結合剤、崩壊剤および/または潤滑剤をさらに含むことができる。溶解剤は、本処方物からのオクトレオチドの溶解速度を増加させ、オクトレオチドの溶解度を増加させることによって機能することができる。適切な溶解剤には、例えば、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸、およびアジピン酸などの有機酸が含まれ、これらは単独または組み合わせて使用できる。これらの作用物質は、さらにこれらの酸の塩と、例えばクエン酸ナトリウムとクエン酸とのように、組み合わせて、緩衝系を形成してもよい。
【0102】
オクトレオチドの溶解および治療上有効な血漿中濃度プロファイルの確立に影響を及ぼす微細環境のpHを変化させることのできる他の作用物質には、無機酸および水酸化マグネシウムの塩が含まれる。使用できる他の作用物質は、界面活性剤および他の可溶化材料である。本発明の医薬組成物での使用に適した界面活性剤には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリエチレン、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドキュセートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコールおよびソルビタン脂肪酸エステルが含まれる。
【0103】
本発明の医薬組成物での使用に適した希釈剤には、例えば、医薬上許容される不活性充填剤、例えば、微結晶セルロース、ラクトース、スクロース、フルクトース、グルコースデキストロース、もしくは他の糖類、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体、カオリン、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、もしくは他の糖アルコール、乾燥デンプン、サッカリド、デキストリン、マルトデキストリンもしくは他の多糖類、イノシトールまたはそれらの混合物などが含まれる。希釈剤は、水溶性希釈剤であってよい。希釈剤の例には、例えば、FMC Corporation社から入手できるAvicel PH112、Avicel PH101およびAvicel PH102などの微結晶セルロース;例えばラクトース一水和物、ラクトース無水物、およびPharmatose DCL21などのラクトース;例えばPenwest Pharmaceuticals社から入手できるEmcompressなどの第二リン酸カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;およびグルコースが含まれる。希釈剤は、具体的な組成物に合うように、圧縮特性に注意を払って慎重に選択される。希釈剤は、好ましくは、本放出制御組成物の約2重量%〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約50重量%の量で使用される。
【0104】
流動促進剤は、加工処理中に成分の流動性および圧縮性を改善するために使用される。適切な流動促進剤には、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えば、四塩化ケイ素などのケイ素化合物の、例えば気相加水分解によって調製できるサブミクロンサイズのヒュームドシリカが含まれる。コロイド状二酸化ケイ素は、Cabot Corporation社(商品名:Cab−O−Sil(登録商標));Degussa社(商品名:Aerosil(登録商標));およびE.I.DuPont & Co社を含む多数の供給源から市販されているサブミクロンサイズの非晶質粉末である。コロイド状二酸化ケイ素は、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸および溶融した二酸化ケイ素としても公知である。一実施形態では、流動促進剤は、Aerosil(登録商標)200を含む。
【0105】
本発明の医薬組成物での使用に適した崩壊剤には、例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロース、微結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、チラミド(thylamide)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、デンプン誘導体、デキストリン、βシクロデキストリン、デキストリン誘導体、酸化マグネシウム、クレイ、ベントナイトおよびそれらの混合物が含まれる。
【0106】
本発明の有効成分は、医薬上許容され、またその有効成分と適合する補形剤と、本明細書に記載した治療方法での使用に適した量で、混合することができる。様々な補形剤は、当業者には公知であるように、本発明のオクトレオチドと均質に混合することができる。オクトレオチドは、例えば、限定されるものではないが、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリンおよびこれらの組み合わせなどの補形剤と混合または組み合わせることができる。
【0107】
本発明の医薬組成物での使用に適した潤滑剤には、圧縮する粉末の流動性に作用する物質が含まれ、限定されるものではないがこれには、例えば、Aerosil(登録商標)200、タルクなどの二酸化ケイ素;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンカーボワックス、ラウリル硫酸マグネシウム、およびモノステアリン酸グリセリルなどが含まれる。
【0108】
さらに本発明は、埋込可能な放出制御処方物であって、ヒドロゲル中に有効量のオクトレオチドを含み、患者に投与されると、または治療レジメンの一部として、少なくとも約2カ月、約6カ月、または約2年までの期間にわたって(オクトレオチドの治療上有効な血漿中濃度の)放出プロファイルを提供する処方物に関する。
【0109】
本発明の用量処方物は、1以上の医薬上許容される補形剤を含むことができる。好ましい実施形態では、本用量処方物は、オクトレオチド単位用量および速度制御ポリマーに加えて希釈剤および潤滑剤を含むであろう。このためには、ステアリン酸マグネシウムが適切な補形剤である。これらの材料が使用される場合は、ステアリン酸マグネシウム成分は、本用量処方物の約0.5〜約5%w/w(例えば、約2%)を構成することができ、ヒドロゲルおよびオクトレオチドが本処方物の残りを構成する。
【0110】
また別の適切な補形剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。使用される場合、ヒドロキシプロピルセルロース成分は、本処方物の約0.5〜約20%w/w(例えば、約10%)を構成することができ、ヒドロゲルおよびオクトレオチドが本処方物の残りを構成する。
【0111】
一実施形態では、本処方物はステアリン酸マグネシウムおよびヒドロキシプロピルセルロースの両方を、好ましくは約2%のステアリン酸マグネシウムおよび約10%のヒドロキシプロピルセルロースを含み、ヒドロゲルおよびオクトレオチドが、本処方物の残りを構成する。
【0112】
本発明の組成物は、ホルモン疾患、例えば末端肥大症、またはGHおよびIGF−1の増加したレベルを特徴とするそれらの症状の治療に、患者に本発明の埋込可能な処方物を投与することによって使用することができる。本インプラントは、例えば、約6カ月毎に投与することができ、治療有効量のオクトレオチドを放出できる。本埋込可能な組成物は、患者におけるオクトレオチドをホルモン障害が緩和するほぼ最低限の治療有効レベルの濃度であって、最高濃度と比較して相対的に低い濃度で放出して日中の患者にとっての安らかな期間を向上させる。本組成物は、被験体が耐えることができ副作用を示さずにその後有効成分の用量を増加させることもないような用量および期間で投与することができる。本活性薬剤は、オクトレオチドの、例えば、約10μg〜約1000μg、約20μg〜約800μg、または約30μg〜約300μgを毎日、少なくとも約2カ月、約6カ月、または約2年までにわたって投与することができる。
【0113】
本発明の組成物は、オクトレオチドが酢酸オクトレオチドである場合は、増加したGHおよびIGF−1レベルを特徴とするホルモン障害、例えば末端肥大症の治療での使用に好適である。本発明による酢酸オクトレオチド剤は、カルチノイド症候群およびVIP産生腫瘍に関連する症状の治療にも好適である。
【0114】
以下では、限定されない実施例によって、本発明の追加の特徴および実施形態について説明する。
【実施例1】
【0115】
インビトロでのオクトレオチドの放出速度
本実施例では、本発明の埋込可能なオクトレオチド処方物の調製およびオクトレオチドのインビトロ放出について説明する。本試験では、一連のインプラントを、安定性およびヒドロゲル処方物からのオクトレオチドのインビトロ放出特性を得るために、約22週間(第146番)、28週間(第136番)および33週間(他の全処方物)にわたって試験した。各インプラントは、約50mgの酢酸オクトレオチドおよび約2%のステアリン酸を含む一方、ポリマーカートリッジには様々な量のHEMAおよびHPMAを含んでいたので、表1に示したように相違する%EWCを示した。
【0116】
【表1】
【0117】
図2、3および4は、上述した処方物各々についてインプラントからの1日当たりのオクトレオチドの放出を示している。図2に示すように、第136番処方物については、初期放出は相対的に高かったが、相対的に急速に低下した。図3に示すように、第146番処方物の初期放出速度は相対的に低かった。図4は、第145番、第147番、第133番、第144番、第143番および第142番の処方物の放出プロファイルを示している。図4に示すように、初期放出速度は、22.9〜27.6%の%EWCについて20〜450μg/日の範囲内で、%EWCとの良好な関係性を示している。しかし、インプラントおよび溶出媒体内の浸透圧差に関して、問題に遭遇した。オクトレオチド処方物を安定化させるために、「選択的水和」の原理に基づいてより良好な安定性を提供するであろう補形剤を用いて、多数の実験を設計した。
【実施例2】
【0118】
仔ウシ血清での処方物試験
膨潤問題に浸透圧が及ぼす影響を調べるため、処方物第136番および処方物第143番に対応する本発明の2つのインプラントを仔ウシ血清中に溶出した。詳細には、約40%のHEMAおよび60%のHPMAから構成され、酢酸オクトレオチドを2%のステアリン酸とともに含む処方物第136番、ならびに約30%のHEMAおよび70%のHPMAから構成され、20%のPEG3300および80%の酢酸オクトレオチドの混合物を含む処方物第143番を試験した。3カ月後、これらのインプラントは、比較的直線状で、ほんの僅かに膨潤しているだけで、正常な外観を示した。
【実施例3】
【0119】
処方物試験
浸透圧差に起因して、実施例1に記載したインプラントは著しく膨潤し、最終的にはインプラントの崩壊を生じた。本実施例では、オクトレオチドインプラントの安定化に有用な作用物質をスクリーニングするために設計された処方物について記載する。一連のインプラントをモニターして、インプラントの形状および耐久性に補形剤が及ぼす影響を調べた。ポリマーカートリッジの各々は、約28%のHEMA、約66.5%のHPMAおよび5%のグリセリンで構成した。内容物には、酢酸オクトレオチドを、表2に示すように様々な賦形剤と共に含んだ。
【0120】
【表2】
【0121】
例えばゴマ油およびMCCなどの疎水性物質は、本処方物中で分離し、「選択的水和」を提供せず、本発明には余り好ましくなかった。PEG3300のような親水性物質は、浸透圧差を増加させ、膨潤を増加させた。マンニトールおよびグリコール酸のような低分子量添加物は、安定化作用を提供せず、完全性の低下をもたらした。これらの物質はいずれも、本オクトレオチド処方物について満足のいく安定化をもたらさなかった。
【実施例4】
【0122】
処方物試験およびオクトレオチドのインビトロ放出速度
本試験は、表3に示した様々な補形剤を使用したヒドロゲルインプラント内のオクトレオチドの安定性を評価するために実施した。補形剤は、高分子量およびある程度の親水性の性質を有するように選択した。各インプラントは、約20%のHEMAおよび約80%のHPMAから構成されるポリマーカートリッジから製造した。食塩液中のインプラントの外観を9週間の経過にわたってモニターし評価した。結果を表3に示した。
【0123】
【表3】
【0124】
図5に示したように、デキストランを含む処方物は、最大溶出速度を有した。ペクチン、AcDiSolおよびCarbopolを含む処方物は、2週間の水和および9週間の溶出の後に満足度の低い放出を示した。したがって、優れた安定化作用、良好な溶出および外観の組み合わせを有する好ましい実施形態は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いて達成された。
【実施例5】
【0125】
健常なイヌにおける1カ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製およびそれらからのオクトレオチドまたはその医薬上許容される塩の放出について示す。健常なイヌに本発明のオクトレオチド皮下インプラント1つを埋め込んだ。オクトレオチド皮下インプラント処方物は、26.6%の含水率を有し、44mgの酢酸オクトレオチドを含んでいた。インビトロ放出速度は、第1週中は約500μg/日であり、第4週中は約300μg/日に減少し、全試験期間中にわたって約10mgの総放出量と推定された。インプラントは、埋め込みの28日後に取り出した。本試験で使用したインプラントは、長さが約3.5cmであった。酢酸オクトレオチド、IGF−1およびGHの血清中濃度を得るための血液サンプル(1.5mL)を、麻酔をかけず、そして絶食させずに第0、1〜7日、11日、14日、18日、21日、25日および28日に頸静脈穿刺により採取した。
【0126】
臨床観察では、オクトレオチドインプラント処方物が十分に許容され、食物摂取は正常であり、異常な行動は認められなかった。
血清分析からは、酢酸オクトレオチドのピークが第4日にあり、全期間で、検出可能な量の酢酸オクトレオチドが測定されたことが示された。IGF−1濃度は、埋め込み後は第4日まで減少し、その後は第25日までに投与前レベルに戻った。IGF−1レベルは、図6から明らかなように、埋め込み前の40〜90%に低下した。
【実施例6】
【0127】
健常なイヌ6匹における6カ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製およびそれらからのオクトレオチドまたはその医薬上許容される塩の放出について示す。6匹の健常なイヌを2群に分け、本発明のオクトレオチド皮下インプラント1つまたは2つを各々埋め込んだ。オクトレオチド皮下インプラント処方物は、約25.2%の含水率を有し、約60mgの酢酸オクトレオチドを含んでいた。これらのインプラントは埋め込み6カ月後に取り出した。酢酸オクトレオチド、IGF−1およびGHの血清中濃度を得るための血液サンプル(10mL)は、埋め込み後最初の7日間については1日1回、その後は3週間にわたって週2回、その後は6カ月の期間が終了するまで週1回採取した。埋め込みの4日前に、ベースラインの血清サンプルをコントロールとして採取した。
【0128】
結果、オクトレオチドの血清中濃度は、インプラント1つを埋め込まれたイヌでは200〜700μg/mL、インプラント2つを埋め込まれたイヌでは400〜1000μg/mLを示している。IGF−1レベルは、図7および8から明らかなように、両方の治療群において90%も減少した。GHの血清中レベルの測定は、本試験の約1カ月後には中止したが、それは健常動物におけるレベルがそれ以上の減少を検出するには低すぎるためであった。臨床観察では、オクトレオチドインプラント処方物が十分に許容され、食物摂取は正常であり、異常な行動は認められなかった。
【実施例7】
【0129】
ヒトにおける6カ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製およびそれらからのオクトレオチドまたはその医薬上許容される塩の放出について示す。6カ月の試験は、末端肥大症を有する患者11例において実施した。本発明のインプラント1つまたは2つを、末端肥大症であると診断され、以前に市販のオクトレオチドLAR製剤を用いての治療を受けた患者11例の皮下に埋め込んだ。GHおよびIGF−1のレベルを、ベースラインおよびその後は6カ月の期間にわたって毎月測定した。各インプラントは、およそ60mgの酢酸オクトレオチドを20%のHEMAおよび79.5%のHPMAのコポリマー中に含み、EWCは約25.2%であった。本試験に使用したインプラントは、乾燥状態では長さが約44mmであり、水和状態では長さが50mmであった。インプラントの直径は、乾燥状態では約2.8mmであり、水和状態では約3.5〜約3.6mmであった。これらのインプラントは埋め込み前の約1週間にわたって水和させた。
【0130】
GHについての参照範囲は、年齢に関わらず2.5mg/Lまでであった。表4は、本発明のオクトレオチドインプラントの埋め込み後6カ月にわたってのGHの基底レベル(mg/L)を示している。患者番号11は、スクリーニング基準を満たさなかったため、本試験に参加しなかった。
【0131】
【表4】
【0132】
上記のように、6カ月後までに、被験体の89%は正常化された成長ホルモンレベルを示した。IGF−1についての参照範囲は以下の通りである:(i)17〜24歳、約180〜780ng/mL;(ii)25〜39歳、約114〜400ng/mL;(iii)40〜54歳、約90〜360ng/mL;および(iv)>54歳、約70〜290ng/mL。
【0133】
表5は、本発明のオクトレオチドインプラントの埋め込み後6カ月にわたってのIGF−1の基底レベル(ng/mL)を示している。
【0134】
【表5】
【0135】
上記のように、6カ月後までに、被験体の22%は正常化されたIGF−1レベルを示した。
図9Aおよび9Bは、本発明のオクトレオチドインプラントと市販の酢酸オクトレオチド製剤との比較を示している。本インプラントの有効性は、市販のオクトレオチドLAR製剤の有効性と少なくとも同程度に良好であった。これらのインプラントの治療効果は、本試験期間の全6カ月にわたって首尾よく持続した。
【0136】
IGF−1レベルは、全患者において減少し、患者2例においては正常化された。この減少は1カ月の治療で既に観察され、平均IGF−1レベルはその後5カ月にわたって安定であった。市販のオクトレオチドLAR製剤治療を受けていた同一患者において以前に観察された減少との比較は、患者9例中8例において可能であった。これらの患者8例中6例において、埋め込み中のIGF−1の減少率は市販のオクトレオチドLAR製剤を受けていた間より大きかったが、2例では小さかった。本インプラントによる6カ月の治療の後、患者3例のGHレベルは<1ng/mLとなり、他の患者5例では<2.5ng/mLであった。これは市販のオクトレオチドLAR製剤についての結果、すなわち患者2例のGHレベルのみが<1ng/mLであり、他の2例では2.5ng/mL未満であった結果に比して有利であった。
【0137】
患者の血清中オクトレオチドレベルもまた、表6に示したように測定した。
【0138】
【表6】
【0139】
インプラント1つおよび2つを用いて達成されたオクトレオチドレベルの比較は、図10のグラフに示す。全体的に、結果は、本発明のオクトレオチドインプラントは、末端肥大症の患者においてGHレベルおよびIGF−1レベルを低下させることに関して市販のオクトレオチドLAR製剤と少なくとも同程度に有効であることを示した。
【実施例8】
【0140】
乾燥インプラントを使用したインビトロオクトレオチド送達
本実施例は、本発明の処方物の調製およびそれらからのオクトレオチドまたはその医薬上許容される塩の放出について示す。健常なイヌ2匹に本発明のオクトレオチド皮下インプラント1つを埋め込んだ。これらのインプラントは、埋め込み前に水和させなかった。本オクトレオチド皮下インプラントは、約59.5%のHPMAおよび約40%のHEMAから構成され、約27.6%の平衡含水率を有していた。これらのインプラントは、約84mgの酢酸オクトレオチド、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを含んでいた。これらのインプラントは埋め込み6カ月後に取り出した。血液サンプル(10mL)は、酢酸オクトレオチドおよびIGF−1の血清中濃度を得るために、埋め込み後最初の4週間は1日置きに1日1回採取し、その後は4週間にわたり週2回採取し、さらに6カ月の終了時までは週1回サンプリングした。埋め込みの2日前に、ベースラインの血清サンプルをコントロールとして採取した。
【0141】
図11はイヌにおける血清中オクトレオチド濃度を示し、図12はイヌにおけるIGF−1濃度を示している。
【実施例9】
【0142】
インプラント組成物
本発明のインプラントのために考えられる組成物には、例えば、以下の表7に挙げた組成物が含まれる。約3.2〜3.4mm(乾燥)より大きなインプラントカートリッジは、例えばビタミンE TPGSのような離型剤を使用して、形成プロセスを助けた。
【0143】
【表7】
【実施例10】
【0144】
末端肥大症の患者における水和および非水和84mgオクトレオチドインプラントの薬物動態的および薬力学的反応を評価するためのオープンラベル試験
末端肥大症のおよそ30例の患者を、文書によるインフォームドコンセントを得た後に登録した。患者を試験無作為割り付けスケジュールにしたがって2群に分けた。患者15例には水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与し、患者15例には非水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与した。適格患者らには、彼らのスクリーニング来院から7日間以内にインプラントを投与した。オクトレオチドインプラントは、局所麻酔下で利き腕ではない方の腕の内側に皮下挿入した。IGF−1、GHおよびオクトレオチドの血清中濃度を測定するための血液サンプルは、埋め込み後最初の6週間以内の所定の時点に採取した。患者はその後、IGF−1、GHおよびオクトレオチドの血清中濃度を測定するための血液サンプルを採取するため、ならびに安全性評価のために第8、12、16、20および24週に来院する。6カ月(24週)の治療期間の終了時に、インプラントは取り出される。インプラントの取り出し後、患者は最終試験来院(第28週)のために4週間後に来院するように指導される。安全性および有効性は、全試験を通して注意深く監視される。
【0145】
治験製品:
皮下埋め込み用水和オクトレオチドインプラント(84mg酢酸オクトレオチド)
皮下埋め込み用非水和オクトレオチドインプラント(84mg酢酸オクトレオチド)
【0146】
治療期間:
適格患者らに、水和または非水和いずれかのインプラント1つを投与する。6カ月(24週)の治療期間の終了時に、インプラントは取り出される。インプラントの取り出し後、患者は最終試験来院のために4週間後に来院するように指導される。
【0147】
選択基準:
1.末端肥大症の男性および女性患者
2.年齢は18歳以上でなければならない。
3.成長ホルモン産生腫瘍診断の確定(年齢および性別を考慮した正常値の上限を≧20%超えるIGF−1レベルの上昇および≧1.0ng/mLのグルコース負荷後GHまたはMRIで証明可能な下垂体腫瘍)。患者が下垂体手術を受けており、残存腫瘍が存在する場合、その腫瘍は視交叉からの距離が少なくとも3mmなければならず(患者が手術候補者ではない場合)、IGF−1レベルは上記したように上昇していなければならない。残存腫瘍が存在しない、または患者が手術不能である場合は、患者は上記したIGF−1およびGH基準をどちらも満たさなければならない。
4.以下に規定するように、臨床検査値(historical laboratory values)による、オクトレオチドに対する完全応答者または部分応答者のいずれかでなければならない:
a.完全応答者:年齢および性別を考慮した正常レベルへの血清中IGF−1の抑制およびOGTT後に<1.0ng/mLへの血清中GHの抑制。
b.部分応答者:完全応答者についての基準を満たしてはいないが、治療前数値に比較した場合にIGF−1およびGH値の≧30%の減少。
c.OR
d.オクトレオチド治療を受けたことのない患者またはオクトレオチドへの応答が不明である患者については、以下に規定するように、スクリーニング来院中の急性水性試験によって得られた臨床検査値によって明示されたオクトレオチド応答者でなければならない。
e.急性水性試験による応答者:100μgの水性オクトレオチドの皮下注射に応答して4時間の試験期間のいずれかの時点にGH値の≧30%の減少。
5.意思疎通が可能であること、文書によるインフォームドコンセントを提供できること、参加する意志があること、および試験要件を遵守することができること。
6.治験医師の見解において、患者が参加するために適格である。
【0148】
除外基準:
1.妊娠中、授乳中、または医学的に許容される受胎調節方法を実施していない妊娠の可能性がある女性。
2.スクリーニング前の12週間以内に下垂体手術を受けた患者。
3.肝臓疾患(例えば、肝硬変、慢性活動性もしくは持続性肝炎またはALT、AST(正常値の>2×のレベル)、アルカリホスファターゼ(正常値の>2×のレベル)、または直接ビリルビン(正常値の>1.5×のレベル)の持続性異常を備える患者。
4.治験責任医師または治験依頼者が臨床的に有意であると見なした他の臨床検査値
5.不安定狭心症、持続性心室性不整脈、心不全(NYHA IIIおよびIV)、またはスクリーニングから3カ月以内の急性心筋梗塞歴を有する患者
6.症候性胆石症の患者
7.スクリーニングから6カ月以内に薬物もしくはアルコール乱用歴を有する患者
8.スクリーニングから1カ月以内にどのような治験薬でも受けたことのある患者
9.スクリーニングの前のいずれかの時点に彼らの下垂体腫瘍に対する放射線療法を受けていた患者
10.耐容性および有効性の問題に起因してオクトレオチドを中断していた患者。
【0149】
オクトレオチドの血清中濃度を測定した(グラフデータについては図13および14を参照されたい)。
乾燥形態または水和後のいずれかでのオクトレオチドインプラントが挿入された後のサイトカイン濃度調節の有効性は、図15、16、および17に示した。
【実施例11】
【0150】
オクトレオチドを用いた腫瘍の治療
FDAラベル(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に示されているようにSandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、オクトレオチドを含む生分解性グルコース星形ポリマー、D,L−乳酸およびグリコール酸のコポリマーのマイクロスフェアからなる長時間作用型剤形である。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、注射部位からのオクトレオチドの緩徐に放出し頻回な投与の必要性を減少させるという追加の特徴とともに、即時放出型剤形Sandostatin(登録商標)(酢酸オクトレオチド)注射液の全ての臨床的および薬理学的特徴を維持している。この緩徐な放出は、主として加水分解を通して、ポリマーが生分解するにつれて発生する。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、4週毎に1回、筋肉内(臀筋内)注射するように設計されている。
【0151】
オクトレオチドは、天然ホルモンであるソマトスタチンに類似する薬理学的作用を発揮する。オクトレオチドは、ソマトスタチンよりも、成長ホルモンであるグルカゴン、およびインスリンの一層強力な阻害剤である。ソマトスタチンと同様に、オクトレオチドは、GnRHに応答してLHを抑制し、内臓血流量を減少させ、セロトニン、ガストリン、血管作用性小腸ペプチド、セクレチン、モチリン、および膵臓ポリペプチドの放出を阻害する。これらの薬理学的作用によって、オクトレオチドは、例えば、転移性カルチノイド腫瘍(紅潮および下痢)、および血管作用性小腸ペプチド(VIP)産生腺腫(水様下痢)に関連する症状の治療に使用されてきた。オクトレオチドは、末端肥大症の患者における成長ホルモンおよび/またはIGF−1(ソマトメジンC)のレベルを実質的に減少させ、多くの症例では正常化することができる。皮下投与されるSandostatin(登録商標)注射の単回用量は、健常志願者において胆嚢収縮を阻害し、胆汁分泌を減少させることが証明されている。
【0152】
末端肥大症の患者においては、薬物動態は健常志願者における薬物動態とはいくらか相違する。2.8ng/mL(100μgの用量)の平均ピーク濃度は、皮下投与の0.7時間後に達した。分布容量(Vdss)は21.6±8.5Lであると推定され、全身クリアランスは18L/時に増加した。結合した薬物の平均%は41.2%であった。体内動態および排出半減期は健常者に類似していた。
【0153】
これらの腫瘍を治療する方法は、典型的には第一線療法としての手術を含んでいる。手術が上手くいかないと、患者には通常、オクトレオチド注射(S−Larなど)が施される。化学療法もまた有益であることが証明されていて、患者の約30%において行われている。カルチノイド腫瘍の患者は、4週毎に筋肉内注射によって投与された10、20、または30mgでのS−Larの6回の投与で治療された。結果として生じる血清中濃度は、1.2、2.5、および4.2ng/mLであった。定常状態は、20または30mgでの2回の投与後および10mgでの3回の投与後に達成された。
【0154】
S−Lar(登録商標)による治療は1日の排便回数を2〜2.5回/日の排便に減少させ、平均1日紅潮エピソードを0.5〜1回/日に減少させ、さらに24時間尿中5−HIAAレベルを38〜50%まで減少させた。6カ月試験にわたって、本治験を完了した患者の50〜70%は症状の悪化を制御するのに役立つように補助的なSandostatin(登録商標)注射を必要としたことを言及しておかなければならない。
【0155】
本発明は所定の好ましい実施形態を参照しながら相当詳細に記載してきたが、他の変形も可能である。このため、添付の特許請求項の精神および範囲は、本明細書の中に含まれる説明および好ましい形態に限定されてはならない。
【背景技術】
【0001】
末端肥大症は、脳下垂体が過剰な成長ホルモン(GH)を産生した場合に結果として生じるホルモン障害である。末端肥大症は、最も一般的には中年成人に発症し、重篤な疾患および早過ぎる死を生じさせ得る。末端肥大症であると診断されれば大多数の患者では治療可能であるが、その発症は緩徐で潜行性であることが多いために、正しく診断されないことが多い。末端肥大症の最も重篤な健康上の影響は、真性糖尿病、高血圧および心血管疾患のリスク上昇である。末端肥大症の患者は、癌に発達し得る大腸ポリープのリスクも高い。GH産生腫瘍が小児期に発生した場合、結果として生じる疾患は、末端肥大症ではなく巨人症と呼ばれる。長骨の成長板の癒合は思春期以後に発生するので、成人における過剰なGH産生の発達は身長の増加を生じさせない。成長板の癒合前の過剰なGHへの長期間曝露は、長骨の成長の増加および身長の増大を引き起こす。
【0002】
末端肥大症は、脳下垂体による成長ホルモン(GH)の長期間過剰産生によって誘発される。下垂体は、例えば成長および発達、生殖、ならびに代謝などの身体機能を制御するためのいくつかの重要なホルモンを生成する、脳基底部にある小さな分泌腺である。GHは、名称が意味するように、身体の肉体的成長を調節するホルモンのカスケードの一部である。このカスケードは、下垂体を調節するホルモンを生成する、視床下部と呼ばれる脳の一部で開始する。これらの内の1つである成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)は、脳下垂体がGHを産生するように刺激する。また別の視床下部ホルモンであるソマトスタチンは、GHの産生および放出を阻害する。下垂体による血流内へのGHの分泌は、肝臓内でインスリン様成長因子1(IGF−1)と呼ばれるまた別のホルモンの産生を引き起こす。IGF−1は、骨や身体の他の組織の成長を引き起こす因子である。IGF−1は、順に下垂体へGH産生を減少させるように信号する。身体内のGHRH、ソマトスタチン、GHおよびIGF−1のレベルは、相互に緊密に調節され、それらのレベルは、例えば睡眠、運動、ストレス、食物摂取量および血糖値などの環境刺激によって影響を受ける。下垂体が正常調節機構とは無関係にGHを産生する場合は、IGF−1のレベルは上昇し、骨の成長および器官の拡張をもたらすであろう。過剰なGHは、さらにまた糖および脂質代謝の変化もまた引き起こし、糖尿病を誘発することがある。
【0003】
90%を超える末端肥大症患者においては、GHの過剰産生は、腺腫と呼ばれる脳下垂体の良性腫瘍によって引き起こされる。これらの腫瘍は過剰なGHを産生し、腫瘍が拡張するにつれて、例えば視神経などの周囲脳組織を圧迫する。この拡張は、末端肥大症の症状であることが多い頭痛および視覚障害を引き起こす。さらに、周囲の正常下垂体組織の圧迫は、他のホルモンの産生を変化させ、女性における月経変化および乳腺分泌ならびに男性におけるインポテンスをもたらす。
【0004】
一部の患者においては、末端肥大症は、下垂体腫瘍によってではなく、膵臓、肺および副腎の腫瘍によって引き起こされる。これらの腫瘍は、GH自体を産生するため、またはより頻繁には下垂体にGHを生成させるように刺激するホルモンであるGHRHを産生するため、GHの過剰を引き起こす。これらの患者では、過剰なGHRHを血液で測定することができ、末端肥大症の原因が下垂体欠損ではないことが確定される。これらの非下垂体腫瘍は、手術によって除去されるとGHレベルが低下し、末端肥大症の症状は改善される。
【0005】
末端肥大症の治療レジメンには、GH産生を正常レベルへ減少させて、増大中の下垂体腫瘍が周囲脳領域に及ぼす圧力を取り除き、正常下垂体機能を保存し、および末端肥大症の症状を無効にするまたは緩和する工程が含まれる。治療の選択肢には、腫瘍の外科的切除、薬物療法および下垂体の放射線療法が含まれる。
【0006】
オクトレオチドは、末端肥大症の管理において有効であることが示されてきた。GHレベルは、通常はオクトレオチドの皮下注射後2時間以内に減少する。オクトレオチドは、患者の大多数においてGHおよびIGF−1レベルを減少させ、患者の60%までにおいては、IGF−1レベルを正常化させ生化学的寛解を示す。大多数の患者は、オクトレオチド療法の開始直後に、頭痛、関節痛および発汗を含む彼らの末端肥大症の症状の顕著な改善に気付く。オクトレオチドは、現在は、再構成すると酢酸オクトレオチドを含有するミクロスフェアの懸濁液であるSandostatin LAR(登録商標)デポ剤として入手可能である。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、末端肥大症患者における長期維持療法に用いられる唯一の医薬品である。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、さらにまた転移性カルチノイド腫瘍に関連する重症の下痢および紅潮のエピソードならびにVIP産生腫瘍に関連する激しい水様下痢の長期治療にも用いられる。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、用量設定期間後に、4週間毎の筋肉内注射によって投与される。酢酸オクトレオチドは、速効型製剤であるSandostatin(登録商標)注射液としても入手可能であり、これは1日3回の注射によって投与する必要がある。
【0007】
間欠的オクトレオチド注射に対してGHレベルの有意な減少を示さない患者においては、オクトレオチドのより頻回な投与がより大きな臨床反応を生じさせる場合がある。オクトレオチドは、難治性末端肥大症を有する患者に注射間のGHの逸出を防止するために皮下ポンプによって持続的に投与してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
末端肥大症の治療におけるオクトレオチドの有効性ならびにオクトレオチドの放出制御療法および処方物の欠如に鑑み、制御された速度で一定の期間にわたってオクトレオチドを送達し、例えば、複数回の定期的な注射の苦痛に耐えなければならないという患者の面倒を回避できるような、処方物および送達方法が明確に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、概略的に、ホルモン障害に罹患した個人の治療に使用できるオクトレオチド医薬組成物に関する。本発明は、好ましくは、放出制御処方物として調製される。詳細には、本発明は、埋込可能なデバイス、例えば埋め込み前にプライミングを必要としない埋込可能なデバイスを用いて、オクトレオチドを制御された速度で放出できるという予想外の発見に基づいている。
【0010】
一態様は、オクトレオチドを被験体に、実質的にゼロ次放出プロファイルで、約6カ月以上の長期間にわたって送達する方法に関し、この被験体はイヌではない哺乳動物であり、この方法は、被験体に少なくとも1つの埋込可能なデバイスを皮下埋め込みすることを含み、少なくとも1つの埋込可能なデバイスがオクトレオチドを含む組成物を含み、この組成物が親水性ポリマー中に収容され、埋込可能なデバイスが乾燥状態で埋め込まれて、被験体が少なくとも約6カ月の期間にわたって毎日、被験体の治療に有効な投与量のオクトレオチドを受け取る。特定の態様では、親水性ポリマーが、1以上のポリウレタン系ポリマーまたは1以上のメタクリレート系ポリマーを含む。特定の態様では、オクトレオチドが、遊離型、塩形態またはそれらの複合体の形態にあり、例えばこのときオクトレオチドは酢酸オクトレオチドである。特定の態様では、被験体が、GHもしくはIGF−1ホルモン障害またはその症状、例えば末端肥大症を患っている。特定の態様では、被験体が、オクトレオチドを約75μg/日〜約300μg/日の範囲の平均速度で少なくとも約6カ月の期間にわたって受け取る。特定の態様では、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.5ng/mL〜約2ng/mL、約0.5ng/mL〜約1.4ng/mL、約0.6ng/mL〜約1.2ng/mL、約0.8ng/mL〜約1.2ng/mLまたは約0.9ng/mL〜約1.0ng/mLの範囲のオクトレオチドの血清中濃度を生じさせる。特定の態様では、被験体が、少なくとも約12カ月の期間にわたって有効量のオクトレオチドを受け取る。血清中濃度を測定するために、範囲をある期間、例えば、約3日間〜約150日間、約3日間〜約120日間、約5日間〜約100日間、約10日間〜約75日間などにわたる平均値として示すことができる。特定の態様では、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.2ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる。特定の態様では、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約1.0ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる。特定の態様では、オクトレオチドの放出は、埋め込みから少なくとも3〜約10日後に発生する。特定の態様では、被験体は、カルチノイド症候群、VIP産生腫瘍、神経内分泌腫瘍、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵液および腸液瘻、グレーブス・バセドウ(Graves−Basedow)病性眼病、緑内障、ならびに化学療法またはAIDSに関連する症状からなる群より選択される状態を患っている。
【0011】
一態様は、ポリウレタン系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーに実質的に収容されるオクトレオチドを含む放出制御処方物を含む埋込可能なデバイスであって、埋込可能なデバイスがオクトレオチドを被験体に実質的にゼロ次放出プロファイルで約6カ月以上の長期間にわたって送達し、埋込可能なデバイスが被験体に乾燥状態で埋め込まれるとき、この被験体はイヌではない哺乳動物である、埋込可能なデバイスに関する。特定の態様では、親水性ポリマーが、1以上のポリウレタン系ポリマーを含んでいる。特定の態様では、オクトレオチドが、遊離型、塩形態またはそれらの複合体、例えば酢酸オクトレオチドの形態にある。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体がオクトレオチドを約75μg/日〜約300μg/日の範囲の平均速度で少なくとも約6カ月の期間にわたって受け取る。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約0.5ng/mL〜約2ng/mLの範囲のオクトレオチドの血清中濃度を生じさせる。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約0.8ng/mL〜約1.8ng/mLの範囲内のオクトレオチドの血清中濃度を生じさせる。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約1.2ng/mL未満のオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、被験体が受け取るオクトレオチドの投与量は、約1.0ng/mL未満のオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる。特定の態様では、埋込可能なデバイスが被験体に埋め込まれると、オクトレオチドの放出は、埋め込みから少なくとも3〜約10日後に発生する。
【0012】
一態様は、イヌではない哺乳動物被験体を治療する医薬を製造するためのオクトレオチドの使用に関し、この医薬は、ポリウレタン系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーに実質的に収容される放出制御処方物であって、これにより埋込可能なデバイスを形成し、被験体に埋め込まれると、埋込可能なデバイスが、オクトレオチドを被験体に実質的にゼロ次放出プロファイルで約6カ月以上の長期間にわたって送達し、埋込可能なデバイスが乾燥状態で被験体に埋め込まれるとき、この被験体はイヌではない哺乳動物である。
【0013】
本発明は、治療有効量のオクトレオチドを長期間、好ましくは少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって提供する。本発明は、少なくとも約2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までにわたってオクトレオチドの放出制御を提供する組成物もまた提供する。
【0014】
本発明の態様は、オクトレオチドまたはその塩、プロドラッグもしくは誘導体を含む、様々な疾患および状態の効果的治療において使用できる医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】最大水和状態における平衡含水率対架橋HEMA/HPMAポリマー内ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)単位の重量%間の線形関係を示すグラフである。
【図2】本発明のインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図3】本発明のインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図4】本発明の異なる6つのインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図5】本発明の様々なインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図6】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた健常なイヌにおけるオクトレオチドおよびIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図7】6カ月にわたって本発明のオクトレオチドインプラント処方物1つが埋め込まれた3匹の健常なイヌからなる群におけるオクトレオチドおよびIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図8】6カ月にわたって本発明のオクトレオチドインプラント処方物2つが埋め込まれた3匹の健常なイヌからなる群におけるオクトレオチドおよびIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図9A】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、末端肥大症のヒト被験体11例におけるIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図9B】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、末端肥大症のヒト被験体11例におけるIGF−1の変化率(%)を示すグラフである。
【図10】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、末端肥大症のヒト被験体11例におけるオクトレオチドの血清中濃度を示すグラフである。
【図11】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、2匹のイヌにおけるオクトレオチドの血清中濃度を示すグラフである。
【図12】本発明のオクトレオチド処方物が埋め込まれた6カ月にわたる、2匹のイヌにおけるIGF−1の血清中濃度を示すグラフである。
【図13】水和インプラントの送達および乾燥インプラントの送達後のオクトレオチドの血清中濃度を示すグラフである(表6も参照)。
【図14】水和インプラントの送達および乾燥インプラントの送達後のオクトレオチドの血清中濃度を示すグラフである(表6も参照)。
【図15A】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後の成長ホルモンのレベルを示すグラフである(GH濃度)。
【図15B】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後の成長ホルモンのレベルを示すグラフである(GHの減少率(%))。
【図16A】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のインスリン様成長第1因子(IGF−1)のレベルを示すグラフである(IGF−1濃度)。
【図16B】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のインスリン様成長第1因子(IGF−1)のレベルを示すグラフである(標準偏差)。
【図17A】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のインスリン様成長第1因子(IGF−1)のレベルを示すグラフである(試験からのデータを示しており、数値は正常IGF−1レベルのパーセントとして表示されている)。
【図17B】水和および乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のインスリン様成長第1因子(IGF−1)のレベルを示すグラフである(試験からのデータを示しており、数値は正常IGF−1レベルのパーセントとして表示されている)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組成物および方法について記載する前に、本発明は記載した特定の分子、組成物、方法、またはプロトコルに限定されず、変動する可能性があると理解すべきである。さらにまた、本説明において使用する用語は特定のバージョンもしくは実施形態を説明することだけを目的としており、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されると理解すべきである。本明細書で使用する用語は当業者に認識されていて公知である意味を有するが、便宜性および完全性のために、以下では特定の用語およびそれらの意味について記載する。
【0017】
単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明確に他が示されない限り、複数形を含んでいる。他に特に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解している意味と同一の意味を有する。本発明の実施形態の実施もしくは試験においては本明細書に記載したものに類似もしくは同等の任意の方法および材料を使用することができるが、以下では好ましい方法、デバイス、および材料について記載する。本明細書で言及した全ての刊行物は、それらが本発明を支持する範囲で参照により組み入れられる。本明細書に含まれるいかなる事項も、本発明が先行発明によってそのような開示に先行する資格がないという自認であると解釈されるべきではない。
【0018】
本明細書で使用する用語「約」は、それとともに使用される数値の±10%を意味する。例えば、約50%は、45%〜55%の範囲内にあることを意味する。
「放出制御処方物」は、長期間にわたって既定の治療有効量の薬物または、例えばポリペプチドもしくは合成化合物などの他の活性薬剤を一貫して放出するように設計され、その結果として所望の治療効果を達成するために不可欠な治療回数を減少させることができる処方物を示す。放出制御処方物は、成長ホルモンレベルの減少もしくはIGF−1レベルの減少において所望の効果を実現し、または例えば、成長異常、カルチノイド症候群、VIP産生腫瘍(血管作用性小腸ペプチド産生腺腫)、神経内分泌腫瘍(特に、紅潮および下痢の症状の治療)、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵液および腸液瘻、グレーブス・バセドウ病性眼病、緑内障を含むがそれらに限定されない末端肥大症に関連する症状を改善し、または化学療法およびAIDSの症状を治療するために必要な治療回数を減少させる。本発明の放出制御処方物は、被験体における所望の薬物動態プロファイル、好ましくは送達環境への配置の実質的直後に活性薬剤の放出が開始され、その後に前記活性薬剤の一貫した持続性の、好ましくはゼロ次もしくは近ゼロ次放出が続くプロファイルを達成する。
【0019】
本明細書で使用する用語「放出制御」は、活性薬剤の毒性レベル未満の治療的に有益な血中濃度が、少なくとも約2カ月、約6カ月以上(例えば、約2年まで)の期間にわたって維持されるような速度で、投与処方物からの活性薬剤の所定の一貫した放出を含む。
【0020】
用語「患者」および「被験体」は、ヒトを含む全ての動物を意味する。患者または被験体の例には、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、およびブタが含まれる。
本明細書で使用する用語「医薬上許容される塩、エステル、アミド、およびプロドラッグ」は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに患者の組織と接触させて使用するのに好適である、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド、およびプロドラッグを意味する。それらの使用は、妥当なリスク対効果比に見合い、かつ意図する用途に有効である。両性イオン型も、可能であれば、同様に本発明の有用な化合物である。本発明の化合物は、さらに、例えば、非溶媒和形態ならびに例えば、水、エタノールなどの医薬上許容される溶媒を用いた溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的にとって非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0021】
用語「プロドラッグ」は、例えば血液中での加水分解によってインビボで迅速に変換されて上記の式の親化合物を生じる化合物を意味する。完全な考察は、T.HiguchiおよびV.Stella,「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、ならびにBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987の中に提供されており、上記はどちらも全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0022】
用語「塩」は、本発明の化合物の比較的に非毒性の、無機および有機酸付加塩を意味する。これらの塩は、本化合物の最終単離および精製中に現場で、またはその遊離塩基形態にある精製化合物を適切な有機もしくは無機酸を用いて別個に反応させて、そこで形成された塩を単離する工程によって調製することができる。代表的な塩には、酢酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる。これらは、アルカリおよびアルカリ土類金属、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどをベースとするカチオン、ならびに非毒性アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどが含まれ得る(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、S.M.Barge et al.,「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19を参照されたい)。
【0023】
「治療」は、患者が患っている場合に、虚弱もしくは疾病を予防(防止)または治癒するために、患者に対する医薬の投与または医療処置の遂行を意味する。
「治療有効量」は、症状に付随する症候を減少させる、予防する、または緩和するために十分な量である。ホルモン療法の状況では、「治療有効量」は、さらに疾患もしくは不全での身体機能もしくはホルモンレベルを正常化するために十分な量を意味する場合もある。例えば、オクトレオチドの放出制御処方物の治療有効量は、所望の作用を達成するため、例えば患者における成長ホルモンもしくはIGF−1のレベルを効果的に減少させるために計算された所定量である。
【0024】
本発明は、例えば、末端肥大症および巨人症、またはオクトレオチドを用いて効果的に治療される他の疾患、障害もしくは症状を含む様々なホルモン障害、例えば、カルチノイド症候群、VIP産生腫瘍(血管作用性小腸ペプチド産生腺腫)、神経内分泌腫瘍(詳細には紅潮および下痢の症状を治療する)、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵液および腸液瘻、グレーブス・バセドウ病性眼病、緑内障を治療するため、または化学療法もしくはAIDSの症状を治療するために利用できる。
【0025】
末端肥大症は、手や足の拡張、前頭隆起、下顎の拡張および歯の間隔の増加を含む顔面の変化、関節痛、発汗、睡眠時無呼吸、高血圧、真性糖尿病および肥大型心筋症を含む多数の臨床的特徴を特徴とする。末端肥大症を誘発する腫瘍は、局所的解剖学的圧迫を誘発し、例えば視野欠損、頭痛、下垂体機能低下症、および脳神経麻痺を生じさせる。末端肥大症患者においては概して心血管および脳血管疾患に起因して2〜5倍の死亡率の上昇が存在する。さらに、末端肥大症に関連する悪性腫瘍の増加した比率も存在するが、最も明確に特徴付けられるのは大腸癌である。
【0026】
カルチノイド腫瘍は、通常は盲腸、気管支、結腸、または小腸において出現し、例えばセロトニンのような血管の拡張を誘発する化学物質を分泌する。血管拡張もまた、例えば下痢、紅潮および喘息などのカルチノイド腫瘍とともに通常観察される症状の原因となることがある。カルチノイド腫瘍によって分泌されるホルモンおよび生化学物質に依存して、多数の症状が存在する可能性がある。これらは集合的に、「カルチノイド症候群」として公知である。生化学的には、カルチノイド腫瘍を有する人々はより多くのセロトニンを産生する傾向があり、塩基としてアミノ酸トリプトファンを使用すると、セロトニンはさらに身体内で破壊され、そのような患者の大多数の尿中で見られる5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)を産生する。血液および尿を対象とする診断検査では、カルチノイド腫瘍の患者に、尿中5−HIAAの上昇、低血中トリプトファン、高血中クロモグラニンA、およびセロトニンが見られることが示されるであろう。血液検査もまた、ヒスタミン、ブラジキニン、ニューロン特異的エノラーゼ、カルシトニン、サブスタンスP、ニューロキニンA、および膵臓ポリペプチドを測定するために使用される。
【0027】
「OctreoScan(登録商標)」は、カルチノイド腫瘍および神経内分泌腫瘍を同定するために使用されるスキャン試験である。このスキャンは、ペネテトレオチドと呼ばれる放射性オクトレオチド誘導体を利用する。注射後、ペネテトレオチドはソマトスタチン受容体を発現する組織中に集中する。内分泌腫瘍は、この受容体を過剰発現し、この試験によってイメージングされる。
【0028】
本明細書で使用する用語「オクトレオチド」は、一般には様々な塩形態を含む図示した構造を含む全ての化合物を意味する。オクトレオチドは、以下のアミノ酸配列:L−システインアミド、D−フェニルアラニル−L−システイニル−L−フェニルアラニル−D−トリプトフィル−L−リシル−L−トレオニル−−N−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−,環状(2→7)−ジスルフィド;[R−−(R*,R*)]を備えるオクタペプチドを含んでいる。オクトレオチドの構造は以下に示す。
【0029】
【化1】
【0030】
化学式はC49H66N10O10S2であり、その分子量は1019.3Daである。その治療カテゴリーは、胃液分泌抑制薬である。本発明のオクトレオチドは、例えば、遊離型、塩形態、またはそれらの複合体の形態で存在することができる。酸付加塩は、例えば、有機酸、ポリマー酸および無機酸を用いて形成することができる。酸付加塩には、例えば塩酸塩および酢酸塩が含まれる。複合体は、オクトレオチドから、例えば無機物質、例えば無機塩もしくは例えばカルシウム塩および亜鉛塩などの水酸化物を添加して、および/またはポリマー有機物質を添加して形成される。酢酸塩は、本発明の処方物において好ましい塩である。
【0031】
本発明の実施形態は、以下の目的:治療作用を最大化して望ましくない副作用を最小限に抑えるための放出制御速度(ゼロ次もしくは約ゼロ次の放出速度);治療の終了に必要である場合、本デバイスを回収する便宜的方法;および吸収における変動が小さく初回通過代謝を伴わない、バイオアベイラビリティの増加、を達成できる薬物送達デバイスを提供する。
【0032】
酢酸オクトレオチドを含む放出制御医薬組成物は、放出制御ヒドロゲルデバイスの一部であってよい。本発明の組成物は、患者に投与されると、少なくとも約2カ月、好ましくは少なくとも約6カ月以上、例えば約2年までの長期におよぶオクトレオチドの放出プロファイルを提供することができる。オクトレオチドは、ヒドロゲルの内部に含有されてよく、例えば、本処方物は、長期間にわたって治療有効量のオクトレオチドを放出する。ヒドロゲルは、メタクリレート系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、およびそれらの組み合わせより選択されるポリマーを含むことができる。治療有効量は、患者または被験体に投与されると、末端肥大症の症状を緩和するオクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドの量である。本処方物は、医薬上許容される補形剤をさらに含むことができる。
【0033】
本発明の組成物が患者に投与されると、その患者の経時的な血漿中のオクトレオチドの濃度(放出プロファイル)は、少なくとも約2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までの期間にわたらせることができる。本組成物は、ヒト患者において約0.1〜約9ng/mL、約5ng/mL〜約1ng/mL、約1〜約2ng/mL、または約1.2〜約1.6ng/mLのオクトレオチドの定常状態平均血漿中濃度を提供することができる。定常状態は、投与間隔にわたって投与される薬物の量が、同一期間にわたって排泄される薬物の量と同等である時点である。
【0034】
オクトレオチド処方物を含む親水性インプラントは、それが容易に水を吸収するようにキセロゲルから形成することができる。水和状態では、キセロゲルはヒドロゲルと呼ばれる。水和もしくは非水和のいずれの形態でも、生体適合性であり、ホストにとって非毒性で、非生分解性である。キセロゲルは、水膨潤性および水不溶性である。ヒドロゲルが水和の最大レベルに達すると、ヒドロゲルの含水率は、「平衡含水率(EWC)」と呼ばれる。ヒドロゲル(水和のいずれの状態でも)の含水率は、以下のように決定される。
【0035】
【数1】
【0036】
ヒドロゲルは、エチレン性不飽和モノマーAおよびエチレン性不飽和モノマーB、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)およびヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)の混合物の重合によって形成される所定の平衡含水率(EWC)値を有する均質なホモポリマーまたはコポリマーであってよい。所定のEWCは、親水性モノマーA(ホモポリマーA)のヒドロゲルホモポリマーおよび親水性モノマーB(ホモポリマーB)のヒドロゲルホモポリマーのEWC値を測定する工程と;均質なコポリマーABのEWC値対このコポリマーABの化学組成物の関係を得る工程と;目標EWC値を選択して目標EWC値を有するコポリマーABの化学組成物を得る工程と;目標EWC値を有するコポリマーABを得るために十分な量でモノマーAおよびモノマーBの重合可能な混合物を形成する工程と;重合反応に供し目標EWC値によって特徴付けられるコポリマーABを得る工程とによって計算することができる。
【0037】
本明細書で使用する「コポリマーAB」または「本質的にモノマーA単位およびモノマーB単位からなるコポリマーAB」は、モノマーAおよびモノマーBの付加共重合がこれらのモノマーの重合可能なエチレン重合を介して実行されていることを意味する。実例として、モノマーAが2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり、モノマーBがN−メチルアクリルアミドである場合は、コポリマーABは、繰り返しモノマーA単位および繰り返しモノマーB単位を含む。
【0038】
他に記載がない限り、用語「コポリマー」には、少なくとも2つのエチレン性不飽和モノマーの混合物を重合させる工程によって製造されたポリマーが含まれる。
本明細書で使用する「HEMA単位」は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)を含む親水性材料を重合させる工程によって得られたポリマー内で繰り返す構造を意味する。用語「HEMA単位」は、次の構造を意味する。
【0039】
【化2】
【0040】
本明細書で使用する「HPMA単位」は、ヒドロキシプロピルメタクリレート(「HPMA」)を含む親水性材料を重合させる工程によって得られた構造を意味する。用語「HPMA単位」は、次の構造を意味する。
【0041】
【化3】
【0042】
親水性生成物において有用な液体重合可能材料には、極めて広範囲の重合可能な親水性、エチレン性不飽和化合物、特に親水性モノマー、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸と、エステル化可能なヒドロキシル基および少なくとも1つの追加のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物と、のモノエステル、例えば、メタクリル酸とアクリル酸のモノアルキレンおよびポリアルキレンポリオール、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレートとアクリレート、プロピレングリコールメタクリレートとアクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレートとアクリレート、グリシジルメタクリレートとアクリレート、グリセリルメタクリレートとアクリレートなど;2−アルケンアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミドなど;N−アルキルおよびN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類およびメタクリルアミド類、例えばN−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリアミドなど;N−ビニルピロリドン;アルキル置換N−ビニルピロリドン類、例えば、メチル置換N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;アルキル置換N−ビニルカプロラクタム、例えば、N−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタムなどが含まれる。アクリル酸およびメタクリル酸もまた、これらの処方物中で有用となり得る。
【0043】
親水性モノマーの混合物は、重合反応において使用される。モノマーのタイプおよび比率は、均質なポリマー、好ましくは水和すると企図された用途または使用のために所望のEWC値を有する架橋した均質なポリマーを産生するように選択される。この数値は、様々なモノマー比率の一連のコポリマー、例えば様々な比率のHEMAおよびHPMAの混合物、を調製し、コポリマーのEWC値を確認し、HPMA/HEMAコポリマーにおけるHPMA単位のパーセンテージ(または%HEMA)対コポリマーのEWC重量%の関係をプロットすることによって予め決定することができる(図1)。
【0044】
一部の場合には、特定の親水性モノマー混合物の重合が、水性媒体中では様々な程度に溶解する均質な親水性コポリマーを生じさせる。そのような場合には、例えば3%までの少量の共重合可能なポリエチレン性不飽和架橋剤を、水不溶性ならびに水膨潤性である均質な架橋コポリマーを得るためにモノマー混合物中に含めることができる。HEMAのわずかに架橋したホモポリマーは、例えば、約38%のEWC値を有することができる。HEMAおよびHPMAの架橋コポリマーは、約38%未満のEWC値を有する。他方、HEMAおよびアクリルアミドの架橋コポリマーは、38(w/v)%を超える、例えばおよそ75%以上までのEWC値を示す。このため、活性化合物、例えば特定用途のためのヒドロゲル送達系を必要とする薬物の有用または有効溶出速度に依存して、当業者であれば、本明細書に開示した教示に従うことによって、コポリマーヒドロゲル膜を仕立ててその薬物を所望の速度で溶出させることができる。コポリマーは、例えば約15〜約70重量%のHEMA単位および約85〜約30重量%の第2エチレン性モノマー単位を含み、約20%〜約75%の範囲内、好ましくは約25%の既定EWC値を有し得る。均質なコポリマーは、約80重量%のHPMA、および約20重量%のHEMAを含む親水性モノマー混合物から製造されたコポリマーを含むことができる。また別の実施形態では、本混合物は、少量のポリエチレン性不飽和架橋剤、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート(「TMPTMA」)をさらに含むことができる。
【0045】
本発明の様々な態様には、均質なポリマー構造が上記親水性モノマー混合物の重合によって形成される均質な親水性コポリマー;および送達系において均質なポリマーカートリッジを利用する薬物送達デバイスが含まれる。親水性モノマーおよび疎水性モノマーの混合物の重合は、不均質なポリマーを生じる。疎水性セグメントがポリマー内に存在すると、界面自由エネルギーが増加するので、動物の体内への埋め込み後にはタンパク質の吸着および無機化が促進される。例えば、ポリHEMAのヒドロゲルは、ゼロに近い界面自由エネルギーを有すると測定された。界面自由エネルギーに関する解釈によると、厳密に親水性成分によるヒドロゲルは、身体組織と極めて生体適合性であるように見える。わずかに架橋したポリHEMAは、(その中の相対的に少量の重合した架橋剤を無視すると)相対的に固定した特性もしくは数値を備える均質な親水性「ホモポリマー」である。「ホモポリマー」であるポリHEMAを変化させてさらなる特徴もしくは特性を付与する技術は困難であり、莫大な時間がかかり、時として想定外(erratic)の特性挙動が生じる。他方、HEMAと様々な量の他の重合可能な親水性コモノマーとの混合物を重合させると、(所定の)テイラーメイドの特性を有する予測可能な均質な親水性コポリマーを得ることができる。
【0046】
重合可能な反応媒体中に含めることのできる有用な架橋剤には、例えば、少なくとも2つの重合可能なエチレン部位を有するポリエチレン性不飽和化合物、例えば、ジ−、トリ−およびテトラ−エチレン性不飽和化合物、特に、ジ不飽和架橋化合物を伴う/伴わないトリ不飽和架橋剤、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート;ならびに以下のポリオール:トリエタノールアミン、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,1,1−トリメチロールプロパンなど、のジ−、トリ−およびテトラ−アクリレートまたはメタクリレートエステルが含まれる。
【0047】
重合反応は、バルク内で、または不活性溶媒を用いて実施できる。適切な溶媒には、例えば、水;有機溶媒(例えば、水溶性の低級脂肪族一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコール、グリセリン、ジオキサンなど;ならびにそれらの混合物)が含まれる。
【0048】
重合可能なエチレン性不飽和化合物の触媒反応において有用な化合物には、フリーラジカル化合物および/またはビニル重合において一般に使用されるタイプの開始剤、例えば有機過酸化物、過炭酸塩、過酸化水素、およびアルカリ金属硫酸塩が含まれる。具体的な例には、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、過酸化水素、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、および硫酸ナトリウムが含まれる。好ましい触媒は、中等度に低い温度、例えば、約20〜80℃で有効な触媒(例えば、tert−ブチルパーオクトエート、ベンゾイルペルオキシド、およびジ(sec−ブチル)ペルオキシジカーボネート)である。
【0049】
従来のレドックス重合触媒もまた使用できる。エチレン性化合物の重合は、例えば、放射線、例えば紫外線、X線、γ線、マイクロ波または他の周知の形態の放射線を用いて実施することができる。紫外線硬化のために好ましい触媒は、ベンゾインメチルエーテルである。触媒および/または開始剤および/または放射線は、重合反応を最適化する触媒有効量で使用される。
【0050】
本発明は、長期間にわたって制御された速度で生物活性化合物を送達するための埋込可能な薬物デバイスの作製へのポリウレタン系ポリマー、熱可塑性物質もしくは熱硬化性樹脂の適用に焦点を当てている。ポリウレタンポリマーは、好ましくは、使用されるポリウレタンのタイプに応じて、押出成形、(反応)射出成形、圧縮成形、または回転成形法(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,325号明細書および米国特許第5,292,515号明細書)を通して、1つまたは2つの開放端を備える円筒形の中空管に形成される。
【0051】
熱可塑性ポリウレタンは、押出成形、射出成形または圧縮成形を通して加工することができる。熱硬化性ポリウレタンは、反応射出成形、圧縮成形または回転成形を通して加工することができる。円筒形の中空管の寸法は決定可能であり、精確に調整することができる。
【0052】
ポリウレタン系ポリマーは、多官能ポリオール、イソシアネートおよび鎖延長剤から合成される。各ポリウレタンの特徴は、その構造に帰せることができる。
熱可塑性ポリウレタンは、マクロジオール、ジイソシアネートおよび二官能鎖延長剤から製造される(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,523,005号明細書および米国特許第5,254,662号明細書を参照されたい)。マクロジオールは、軟質ドメインを形成する。ジイソシアネートおよび鎖延長剤は、硬質ドメインを形成する。硬質ドメインは、ポリマーのための物理的架橋部位として機能する。これら2つのドメインの比率を変化させると、ポリウレタンの物理的特徴を変化させることができる。
【0053】
熱硬化性ポリウレタンは、多官能(二官能より高次)ポリオールおよび/またはイソシアネートおよび/または鎖延長剤から製造することができる(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,386,039号明細書および米国特許第4,131,604号明細書を参照されたい)。熱硬化性ポリウレタンは、さらにまた化学的に架橋させるためにポリマー鎖および適切な架橋剤および/または開始剤の中に不飽和結合を導入する工程によって製造することができる(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,751,133号明細書を参照されたい)。架橋部位の量およびそれらの分布を制御することによって、活性物質の放出速度を制御することができる。
【0054】
様々な官能基は、所望の特性に応じて、ポリオールの主鎖の修飾を通してポリウレタンポリマー鎖に導入することができる。本デバイスが、水溶性薬物の送達のために使用される場合は、ポリマーの親水性を増加させるために、例えばイオン基、カルボキシル基、エーテル基、およびヒドロキシ基などの親水性ペンダント基が、ポリオール中に組み込まれる(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,743,673号明細書および米国特許第5,354,835号明細書を参照されたい)。本デバイスが、疎水性薬物の送達のために使用される場合は、ポリマーの疎水性を増加させるために、例えばアルキル基、シロキサン基などの疎水性ペンダント基が、ポリオール中に組み込まれる(例えば、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,313,254号明細書を参照されたい)。活性物質の放出速度は、ポリウレタンポリマーの親水性/疎水性によっても制御することもできる。
【0055】
本発明の小さな円筒形のインプラントは、そのコア内に、オクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチド、および必要に応じて医薬上許容される担体を含むことができる。本インプラントの膜の厚さ(内面と外面との間)は、実質的に均一であり、含まれた作用物質を放出するための速度制限障壁として機能する。そのようなインプラントは、可塑化もしくは水和させ、様々な医学的用途において使用するための他の幾何学的形状の製品に再形成することができる。
【0056】
埋込可能な処方物の製造においては、いくつかのファクターが検討され得る。放出プロファイル(遅延時間、放出速度、および期間)を決定し、親水性ポリマー材料を特定し、それを(速度制限膜として)通る活性薬剤の拡散性を測定する。所定の活性薬剤についての速度制限膜の水和プロファイルは、選択されたポリマーのフィルムを調製し、当技術分野において周知である2区画垂直ガラス製セルを用いて拡散試験に供することによって容易に決定することができる。
【0057】
拡散係数および拡散が始まる時点の含水率(それ未満では拡散が実質的に発生しない−以下では「%Hd」)が決定される。一連の膜は、様々なポリマーから調製される。これらの膜をその後、それらの最大容量まで水和させ、EWCを測定する。最大限に水和した膜を、2区画垂直ガラス製セル内に配置して測定し、様々なEWCについて膜材料を通しての高分子組成物の拡散をプロットする。拡散が検出されない(例えば、活性薬剤がレセプタセル内に全く拡散しない)最も水和した膜の平衡含水率が、試験した系についての%Hdである。これは、透過性対EWCの曲線をプロットすることによって得られる。
【0058】
透過性試験の結果(拡散係数)は、Fickの拡散の第1法則にしたがって、次式によって得られる。
【0059】
【数2】
【0060】
(式中、dQ/dtは、膜材料を通る流束(μg/時)であり;これは累積移送対時間の曲線の線形部分の傾きとして測定され;Aは、膜の面積(cm2)であり;Pは、膜透過係数(cm2/時)、またはDKd、ここで、Dは膜の拡散性(cm2/時)であり、Kdは膜/ドナー溶液に対する分配係数であり;1は、実験終了時に測定した膜の厚さ(cm)であり;Cdは、ドナー溶液の濃度(μg/cm3)である。)
そして放出遅延プロファイルを決定することができる。また別の一連のポリマー膜を、同様に架橋剤およびモノマーの量を変化させながら調製することができる。これらの膜は、次に、部分的にのみ、水和させることができ、例えば%Hd以下の含水率まで水和させる。部分的に水和した膜を、2区画垂直ガラス製セル内に配置し、時間について膜を通しての活性化合物の拡散を測定しプロットする。ドナーセルおよびレセプタセル用のバッファー溶液は、部分的に水和した膜に接触して、それらが送達環境において水和するであろう速度とほぼ同一速度でさらに水和するように、選択することができる。拡散試験の開始、即ちドナーセルへの活性薬剤の添加と、レセプタセル内における活性薬剤の医薬有効濃度の検出との間の時間は、ポリマーと初期水和率の組み合わせにおいての放出遅延時間である。
【0061】
円筒形のデバイスの物理的寸法を決定するために、送達すべき活性薬剤の総量を決定する。これは、所望の1日量と送達期間の積である。好ましい実施形態では、送達期間は、少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年までである。所望の1日量は、例えば、約10〜約1000μgオクトレオチド/日、好ましくは約20〜約800μgオクトレオチド/日、より好ましくは約30〜約300μgオクトレオチド/日である。
【0062】
円筒形のデバイスの円筒形のリザーバー(コア)の容量は、Πri2h(式中、riはリザーバーの半径であり、hはその高さである)に等しい。円筒形からの定常状態放出についての式は:
【0063】
【数3】
【0064】
(式中、r0は円筒形デバイスの外側半径であり;Cdは、ドナー溶液、すなわち担体、中の薬物濃度である)である。定常状態放出は、Cdが飽和状態で維持される場合に得られる。所望の徐放性のために必要とされる膜の厚さは、このためr0−riである。
【0065】
使用される活性薬剤の量は、所望の1日量だけではなく、用量レベルを維持すべき日数にも依存するであろう。この量は実験によって計算できるが、送達される実際用量は本デバイス内で使用される場合、材料および担体との任意の相互作用の関数である。
【0066】
適切なポリウレタンポリマーが選択されれば、円筒形のインプラントを作製する最善の方法は、本明細書に記載した適切な送達特徴を達成するように当業者が決定することができる。
【0067】
熱可塑性ポリウレタンについては、精密押出成形および射出成形を使用して、一貫した物理的寸法を備え2つの開放端を有する中空管を製造することができる。リザーバーには、活性物質および担体を含有する適切な処方物を自由に装填し、または活性物質の装填量を最大化するために予め作製されたペレットを充填することができる。2つの開放端をシールするために、予め作製された末端プラグを使用できる。シーリング工程は、末端を、好ましくは永久的に、シールするために熱もしくは溶媒または任意のその他の手段を適用して遂行できる。
【0068】
熱硬化性ポリウレタンについては、硬化機構に応じて、好ましくは精密反応射出成形または回転成形が選択される。反応射出成形は、硬化機構が熱によって行われる場合に使用され、回転成形は、硬化機構が光および/または熱によって行われる場合に使用される。好ましくは、1つの開放端を備える中空管は、回転成形によって製造される。好ましくは、2つの開放端を備える中空管が、反応射出成形によって製造される。リザーバーには、熱可塑性ポリウレタンと同一方法で装填することができる。
【0069】
好ましくは、1つの開放端をシールするためには、適切な光開始および/または熱開始熱硬化性ポリウレタン調製物が前記開放端の充填に使用され、光および/または熱を用いて硬化させる。より好ましくは、開放端をシールするために、予め作製された末端プラグを用い、この予め作製された末端プラグと開放端との間の界面に適切な光開始および/または熱開始熱硬化性ポリウレタン調製物を適用し、好ましくは永久的に末端をシールするための光および/または熱または任意のその他の手段を用いて硬化させることができる。固体活性薬剤および任意の担体は、活性物質の装填を最大化するためにペレット形に圧縮することができる。
【0070】
埋め込み前に、埋込可能な処方物を、所定の期間にわたって必要に応じて水和または「プライミング」することができる。プライミングは、インプラントをプライミングする時間量に応じて、有効成分がヒドロゲルの壁に浸潤し始めて飽和し、埋め込み前にヒドロゲルから潜在的に浸出し始めることを可能する。プライミングしたインプラントは、実質的に埋め込み後に有効成分を放出し始め、埋め込み後まもなく薬物放出ピークを生じさせることができる。一方、プライミングをほとんどもしくは全くしないと、埋め込み後の有効成分の放出はインプラントが水和され、有効成分が放出され始められるまでの期間は実質的に行われないが、これらのプライミング特徴は、使用される特定の処方物に左右される。本発明は、例えば、放出制御オクトレオチド処方物を投与する方法であって、非水和オクトレオチド処方物を被験体の体内に埋め込む工程を含む方法に関する。
【0071】
有効成分のタイプ(親水性または疎水性)に応じて、適切なコンディショニングおよびプライミング媒体が選択され得る。親水性活性物質には水性媒体が好ましく、疎水性活性物質には油性媒体が好ましい。また、本発明の特定のインプラントは、埋め込み前にプライミングを必要としない。いくつかの場合には、プライミングは、活性薬剤の送達を調節して改善するが、他の場合には、被験体への埋め込み前のプライミングは、インプラントをプライミングするために必要な追加の時間および煩わしさを正当化するほどには送達に影響を及ぼさない。
【0072】
本発明の実施において有用な水和液は、典型的には活性化合物が放出されることになる環境を模した液体、例えば、体液、滅菌水、涙液、生理的食塩水、リン酸緩衝溶液などである。水以外の液体が水和液として有用であるが、親水性膜の水和の程度は、その「含水率」と呼ばれる。
【0073】
本薬物送達デバイスのプライミングおよびコンディショニングは、リザーバーを取り囲むポリマーの中に活性物質(薬物)を装入し、これによりインプラントを実際に使用する前の活性物質のロスを防ぐことを含んでいる。コンディショニングおよびプライミング工程に使用される条件は、活性薬剤、温度および実施時の媒体に応じて決定される。コンディショニングおよびプライミングの条件は、一部の場合には同一であってよい。
【0074】
薬物送達デバイスの作製プロセスにおけるコンディショニングおよびプライミング工程は、特定の薬物の所定の放出速度を得るために行われる。親水性薬物を含有するインプラントのコンディショニングおよびプライミング工程は、水性媒体中、より好ましくは食塩水中で行われる。疎水性薬物については、媒体は血漿様媒体であってよく、これには、限定はされないが、シクロデキストリンが含まれる。コンディショニングおよびプライミング工程は、3つの具体的なファクター、すなわち温度、媒体および時間を制御することによって実施される。
【0075】
当業者であれば、薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミング工程は、デバイスを配置する媒体によって影響を受けることを理解できるであろう。例えば、ヒストレリンおよびナルトレキソンインプラントは、食塩水中でコンディショニングおよびプライミングすることができ、より詳細には、0.9%のナトリウム含量の食塩水中でコンディショニングし、1.8%の塩化ナトリウム含量の食塩水中でプライミングすることができる。
【0076】
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングに使用される温度は、広い温度範囲にわたって変化させることができるが、一部の場合には37℃が使用される。
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングに使用される時間は、具体的なインプラントまたは薬物に求める放出速度に応じて、約1日〜数週間にわたって変化させ得る。
【0077】
当業者であれば、インプラントをコンディショニングおよびプライミングする工程は、適切または必要な場合に、そのインプラント内に含まれた薬物の放出速度を最適化するためのものであることを理解するであろう。したがって、薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングにかける時間が短いほど、例えば、より長いコンディショニングおよびプライミング工程を受けた同様の薬物送達デバイスと比較して薬物の放出速度を遅くすることができる。しかし、プライミングを行わないと、予想外にも、より長期間(例えば、28週およびそれ以上)にわたって効果的放出が起こることが見いだされ、さらに有効成分のより低い血清中濃度が改善効果を有することが見いだされた。
【0078】
コンディショニングおよびプライミング工程における温度もまた放出速度に影響を及ぼし得て、低い温度の方が、より高い温度で処理した同様の薬物送達デバイスと比較して、薬物送達デバイスに含まれる薬物の放出速度が遅くなる。
【0079】
同様に、水溶液の場合、一部の場合に好ましくは食塩水である場合には、この溶液の塩化ナトリウム含量もまた、薬物送達デバイスについてどのようなタイプの放出速度が得られるかを決定し得る。より詳細には、塩化ナトリウム含量が低いほど、塩化ナトリウム含量が高いコンディショニングおよびプライミング工程を受けた薬物送達デバイスと比較して放出速度が速くなり得る。
【0080】
インプラントの位置を特定するため、放射線不透過性材料をリザーバー内に挿入することによって、またはカートリッジをシールするために使用される末端プラグを放射線不透過性材料で作製することによって、放射線不透過性材料を送達デバイス内に組み込むことができる。
【0081】
本発明の処方物は、医薬上許容される担体を含むことができ、これには例えば、懸濁媒体、溶媒、水性系および固体基質もしくはマトリックスが含まれる。
担体として有用な懸濁媒体および溶媒には、例えば、油類、例えば、シリコーン油(特に医療グレードのもの)、トウモロコシ油、ヒマシ油、落花生油およびゴマ油など;ヒマシ油と酸化エチレンとの縮合生成物;低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル類;低級アルカノール類;グリコール類;およびポリアルキレングリコール類が挙げられる。
【0082】
水性系には、例えば、滅菌水、食塩水、デキストロース、水または食塩水中のデキストロースなどが含まれる。水性系中の電解質の存在は、高分子薬物のそれらへの溶解度を低下させる傾向がある。
【0083】
固体基質もしくはマトリックスには、例えば、デンプン、ゼラチン、糖類(例えば、グルコース)、天然ゴム類(例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース)などが含まれる。好ましい実施形態では、本医薬処方物は、約2%〜約20%、より好ましくは約10%のヒドロキシプロピルセルロースをさらに含んでいる。加えて、本医薬処方物は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、加工デンプンまたは架橋ポリビニルピロリドンをさらに含んでもよい。
【0084】
担体には、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤および乳化剤などのアジュバントをさらに含むことができる。
一実施形態では、本発明の医薬処方物は、HEMAおよびHPMAのコポリマー、好ましくは約20%のHEMAおよび約80%のHPMA、の混合物中に酢酸オクトレオチドの処方物を含んでいる。本医薬処方物は、例えば、約20〜約150mg、好ましくは約40〜約90mgのオクトレオチドを含むことができる。本処方物は、約2〜約20%の補形剤をさらに含むことができる。本処方物は、約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび/または約2%のステアリン酸マグネシウムをさらに含むことができる。
【0085】
本発明の医薬処方物は、HEMAおよびHPMAのコポリマー、好ましくは約20%のHEMAおよび約80%のHPMA、の混合物中に約50gのオクトレオチドの処方物を含むことができる。また別の実施形態では、本処方物は、酢酸オクトレオチドとともに約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび2%のステアリン酸マグネシウムをさらに含んでいる。
【0086】
本発明の医薬処方物は、HEMAおよびHPMAのコポリマー、好ましくは約40%のHEMAおよび約60%のHPMA、の混合物中に約83gのオクトレオチドの処方物を含むこともできる。また別の実施形態では、本処方物は、酢酸オクトレオチドとともに約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび2%のステアリン酸マグネシウムをさらに含んでいる。本医薬処方物は、ステアリン酸、植物性ステアリン、タルクおよびシリカをさらに含んでもよい。
【0087】
本発明の医薬処方物は、キセロゲル、好ましくはヒドロゲルもしくはポリウレタン系ポリマー中に約20mg〜約150mg、より好ましくは約40mg〜約90mgのオクトレオチドの処方物を含むこともできる。
【0088】
ホルモン障害に関連する疾患を治療する方法が提供される。本方法は、オクトレオチドを投与することと、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度を約0.1ng/mL〜約9ng/mLで長期間、好ましくは少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年まで、にわたって維持することとを含むことができる。好ましい実施形態では、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度は、約1ng/mL〜約2ng/mL、より好ましくは約1.2ng/mL〜約1.6ng/mLの間で、長期間にわたって維持される。ホルモン障害には、例えば、末端肥大症が含まれる。
【0089】
本発明は、GHレベルを低下させる方法に関し、この方法は、オクトレオチドを投与することと、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度を約0.1ng/mL〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1ng/mL〜約2ng/mL、または約1.2〜約1.6ng/mLの間で、長期間、好ましくは少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって維持することとを含む。
【0090】
さらに本発明は、IGF−1レベルを低下させる方法に関し、この方法は、オクトレオチドを投与することと、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度を約0.1ng/mL〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1ng/mL〜約2ng/mL、または約1.2〜約1.6ng/mLの間で、長期間、好ましくは少なくとも約2カ月、より好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって維持することとを含む。
【0091】
さらに本発明は、末端肥大症を治療する方法に関し、この方法は、本発明の少なくとも1つのインプラント、好ましくは本発明のインプラント2つを投与することを含む。この方法では、投与される各インプラントは、約20〜約150mgのオクトレオチド、好ましくは約40〜約90mgのオクトレオチド、より好ましくは約50mgのオクトレオチドを含み、治療有効量のオクトレオチドを少なくとも2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって放出することができる。
【0092】
さらに本発明は、カルチノイド腫瘍およびVIP産生腫瘍に関連する症状を治療する方法に関する。治療有効量のオクトレオチドを少なくとも約2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって放出するオクトレオチドの埋込可能な処方物を投与することによって、カルチノイド腫瘍に関連する重症の下痢および紅潮のエピソードを治療する方法もまた本発明に含まれる。治療有効量のオクトレオチドを少なくとも約2カ月、好ましくは約6カ月、および約2年までにわたって放出するオクトレオチドの埋込可能な処方物を投与することによって、VIP産生腫瘍に関連する水様下痢を治療する方法もまた本発明に含まれる。
【0093】
本発明の処方物は、本インプラントの不都合な副作用を最小限に抑えながら治療効果を最大化する特定の所望の放出プロファイルを示す。所望の放出プロファイルは、薬物もしくは活性薬剤の最大血漿中濃度(Cmax)および定常状態での薬物もしくは活性薬剤の血漿中濃度(Css)によって説明することができる。
【0094】
さらに本発明は、ヒドロゲルおよびオクトレオチドの治療用組成物であって、埋め込まれると、このオクトレオチドが、約0.1ng/mL〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1ng/mL〜約2ng/mL、または約1.2ng/mL〜約1.6ng/mLのCssを提供するおよび/または維持するような速度で放出される治療用組成物に関する。また別の実施形態は、ヒドロゲルおよびオクトレオチドの治療用組成物であって、埋め込まれると、前記オクトレオチドは長期間にわたって約10μg〜約1000μg/日、より好ましくは約20μg〜約800μg、より好ましくは約30μg〜約300μg/日の速度で放出される治療用組成物である。オクトレオチドは、少なくとも約2カ月、約6カ月、または約2年までにわたって放出させることができる。ヒドロゲルは、メタクリレート系ポリマーまたはポリウレタン系ポリマーを含むことができる。
【0095】
また別の実施形態は、オクトレオチドと、このオクトレオチドを約30μg〜約250μg/日の速度で少なくとも約2カ月、約6カ月、または約2年にわたってインビトロで放出することを許容する親水性ポリマーとを含む放出制御処方物である。一部の実施形態では、送達は、約100μg〜約130μg/日である。また別の実施形態では、本処方物の親水性ポリマーは、インビトロで約100μg/日の平均速度でのオクトレオチドの放出を許容する。親水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択することができる。
【0096】
本発明のまた別の実施形態は、埋め込み用のオクトレオチドを含む放出制御処方物であり、この処方物は、約6週間後には処方物からオクトレオチドの約20%以下がインビトロで放出されること、および約6カ月後には処方物からオクトレオチドの約60%が放出されることを許容するのに有効な親水性ポリマー内に、オクトレオチドを含んでいる。
【0097】
本発明の医薬組成物中に含まれる医薬上許容されるオクトレオチド(例えば、その様々な塩、溶媒和状態またはプロドラッグ)の量は、例えば、使用される具体的なオクトレオチド、所望の用量レベル、使用されるヒドロゲルのタイプおよび量、本組成物中に含まれる追加の材料のタイプおよび量を含む様々な因子に応じて変動するであろう。本処方物中のオクトレオチド、またはその誘導体の量は、効率的薬物送達のために所望の用量、分子量、および本化合物の活性に応じて変動する。使用される薬物の実際量は、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、疾患または任意の他の医学的基準によって決定され得る。実際の薬物量は、当技術分野において公知の技術により、意図する医学的用途にしたがって決定される。本発明によって調製された医薬上の用量を、主治医によって決定されるように、例えば約6カ月毎に1回投与とすることができる。
【0098】
オクトレオチドは、典型的にはインプラントまたは他の医薬組成物中に、約20mg〜約150mg、好ましくは約40mg〜約90mgのオクトレオチド、より好ましく約50〜約85mg、の量で調製される。成人については、末端肥大症を治療するための1日量は、典型的には、約300μg〜約600μg即時放出オクトレオチド/日(100μgまたは200μgのSandostatin(登録商標))である。本組成物中のオクトレオチドの量は、例えば、長期間にわたって約10μg〜約1000μg/日、約20μg〜約800μg/日、または約30μg〜約300/日を放出するように選択することができる。そのような放出速度は、患者の血液中で長期間にわたって約0.1〜約9ng/mLの所望の治療レベルを維持する。
【0099】
オクトレオチドを中に含むヒドロゲルデバイスは、患者の血漿中へのオクトレオチドの放出制御を提供する。本発明の医薬組成物中で使用されるオクトレオチドの放出速度を制御するために適切なヒドロゲルには、親水性モノマーのポリマーが含まれ、これには、限定はされないが、HPMA、HEMAなどが含まれる。そのようなヒドロゲルは、さらにまた本組成物からのオクトレオチドの分解および消失を防止することができる。
【0100】
本発明のIA医薬処方物は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートの親水性コポリマー内に酢酸オクトレオチドを含むことができる。本医薬処方物のコポリマーは、例えば、約20%のHEMAおよび約80%のHPMAを含むことができる。あるいは、本医薬処方物のコポリマーは、例えば約40%のHEMAおよび約60%のHPMAを含むことができる。
【0101】
本インプラントのサイズ、形状および表面積は、本インプラントからのオクトレオチドの放出速度が増加または低下するように修正することができる。
本発明の医薬組成物は、助剤または補形剤、例えば、流動促進剤、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、低温融解結合剤を含む結合剤、崩壊剤および/または潤滑剤をさらに含むことができる。溶解剤は、本処方物からのオクトレオチドの溶解速度を増加させ、オクトレオチドの溶解度を増加させることによって機能することができる。適切な溶解剤には、例えば、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸、およびアジピン酸などの有機酸が含まれ、これらは単独または組み合わせて使用できる。これらの作用物質は、さらにこれらの酸の塩と、例えばクエン酸ナトリウムとクエン酸とのように、組み合わせて、緩衝系を形成してもよい。
【0102】
オクトレオチドの溶解および治療上有効な血漿中濃度プロファイルの確立に影響を及ぼす微細環境のpHを変化させることのできる他の作用物質には、無機酸および水酸化マグネシウムの塩が含まれる。使用できる他の作用物質は、界面活性剤および他の可溶化材料である。本発明の医薬組成物での使用に適した界面活性剤には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリエチレン、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドキュセートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコールおよびソルビタン脂肪酸エステルが含まれる。
【0103】
本発明の医薬組成物での使用に適した希釈剤には、例えば、医薬上許容される不活性充填剤、例えば、微結晶セルロース、ラクトース、スクロース、フルクトース、グルコースデキストロース、もしくは他の糖類、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体、カオリン、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、もしくは他の糖アルコール、乾燥デンプン、サッカリド、デキストリン、マルトデキストリンもしくは他の多糖類、イノシトールまたはそれらの混合物などが含まれる。希釈剤は、水溶性希釈剤であってよい。希釈剤の例には、例えば、FMC Corporation社から入手できるAvicel PH112、Avicel PH101およびAvicel PH102などの微結晶セルロース;例えばラクトース一水和物、ラクトース無水物、およびPharmatose DCL21などのラクトース;例えばPenwest Pharmaceuticals社から入手できるEmcompressなどの第二リン酸カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;およびグルコースが含まれる。希釈剤は、具体的な組成物に合うように、圧縮特性に注意を払って慎重に選択される。希釈剤は、好ましくは、本放出制御組成物の約2重量%〜約80重量%、好ましくは約20重量%〜約50重量%の量で使用される。
【0104】
流動促進剤は、加工処理中に成分の流動性および圧縮性を改善するために使用される。適切な流動促進剤には、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えば、四塩化ケイ素などのケイ素化合物の、例えば気相加水分解によって調製できるサブミクロンサイズのヒュームドシリカが含まれる。コロイド状二酸化ケイ素は、Cabot Corporation社(商品名:Cab−O−Sil(登録商標));Degussa社(商品名:Aerosil(登録商標));およびE.I.DuPont & Co社を含む多数の供給源から市販されているサブミクロンサイズの非晶質粉末である。コロイド状二酸化ケイ素は、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸および溶融した二酸化ケイ素としても公知である。一実施形態では、流動促進剤は、Aerosil(登録商標)200を含む。
【0105】
本発明の医薬組成物での使用に適した崩壊剤には、例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロース、微結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、チラミド(thylamide)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、デンプン誘導体、デキストリン、βシクロデキストリン、デキストリン誘導体、酸化マグネシウム、クレイ、ベントナイトおよびそれらの混合物が含まれる。
【0106】
本発明の有効成分は、医薬上許容され、またその有効成分と適合する補形剤と、本明細書に記載した治療方法での使用に適した量で、混合することができる。様々な補形剤は、当業者には公知であるように、本発明のオクトレオチドと均質に混合することができる。オクトレオチドは、例えば、限定されるものではないが、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリンおよびこれらの組み合わせなどの補形剤と混合または組み合わせることができる。
【0107】
本発明の医薬組成物での使用に適した潤滑剤には、圧縮する粉末の流動性に作用する物質が含まれ、限定されるものではないがこれには、例えば、Aerosil(登録商標)200、タルクなどの二酸化ケイ素;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンカーボワックス、ラウリル硫酸マグネシウム、およびモノステアリン酸グリセリルなどが含まれる。
【0108】
さらに本発明は、埋込可能な放出制御処方物であって、ヒドロゲル中に有効量のオクトレオチドを含み、患者に投与されると、または治療レジメンの一部として、少なくとも約2カ月、約6カ月、または約2年までの期間にわたって(オクトレオチドの治療上有効な血漿中濃度の)放出プロファイルを提供する処方物に関する。
【0109】
本発明の用量処方物は、1以上の医薬上許容される補形剤を含むことができる。好ましい実施形態では、本用量処方物は、オクトレオチド単位用量および速度制御ポリマーに加えて希釈剤および潤滑剤を含むであろう。このためには、ステアリン酸マグネシウムが適切な補形剤である。これらの材料が使用される場合は、ステアリン酸マグネシウム成分は、本用量処方物の約0.5〜約5%w/w(例えば、約2%)を構成することができ、ヒドロゲルおよびオクトレオチドが本処方物の残りを構成する。
【0110】
また別の適切な補形剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。使用される場合、ヒドロキシプロピルセルロース成分は、本処方物の約0.5〜約20%w/w(例えば、約10%)を構成することができ、ヒドロゲルおよびオクトレオチドが本処方物の残りを構成する。
【0111】
一実施形態では、本処方物はステアリン酸マグネシウムおよびヒドロキシプロピルセルロースの両方を、好ましくは約2%のステアリン酸マグネシウムおよび約10%のヒドロキシプロピルセルロースを含み、ヒドロゲルおよびオクトレオチドが、本処方物の残りを構成する。
【0112】
本発明の組成物は、ホルモン疾患、例えば末端肥大症、またはGHおよびIGF−1の増加したレベルを特徴とするそれらの症状の治療に、患者に本発明の埋込可能な処方物を投与することによって使用することができる。本インプラントは、例えば、約6カ月毎に投与することができ、治療有効量のオクトレオチドを放出できる。本埋込可能な組成物は、患者におけるオクトレオチドをホルモン障害が緩和するほぼ最低限の治療有効レベルの濃度であって、最高濃度と比較して相対的に低い濃度で放出して日中の患者にとっての安らかな期間を向上させる。本組成物は、被験体が耐えることができ副作用を示さずにその後有効成分の用量を増加させることもないような用量および期間で投与することができる。本活性薬剤は、オクトレオチドの、例えば、約10μg〜約1000μg、約20μg〜約800μg、または約30μg〜約300μgを毎日、少なくとも約2カ月、約6カ月、または約2年までにわたって投与することができる。
【0113】
本発明の組成物は、オクトレオチドが酢酸オクトレオチドである場合は、増加したGHおよびIGF−1レベルを特徴とするホルモン障害、例えば末端肥大症の治療での使用に好適である。本発明による酢酸オクトレオチド剤は、カルチノイド症候群およびVIP産生腫瘍に関連する症状の治療にも好適である。
【0114】
以下では、限定されない実施例によって、本発明の追加の特徴および実施形態について説明する。
【実施例1】
【0115】
インビトロでのオクトレオチドの放出速度
本実施例では、本発明の埋込可能なオクトレオチド処方物の調製およびオクトレオチドのインビトロ放出について説明する。本試験では、一連のインプラントを、安定性およびヒドロゲル処方物からのオクトレオチドのインビトロ放出特性を得るために、約22週間(第146番)、28週間(第136番)および33週間(他の全処方物)にわたって試験した。各インプラントは、約50mgの酢酸オクトレオチドおよび約2%のステアリン酸を含む一方、ポリマーカートリッジには様々な量のHEMAおよびHPMAを含んでいたので、表1に示したように相違する%EWCを示した。
【0116】
【表1】
【0117】
図2、3および4は、上述した処方物各々についてインプラントからの1日当たりのオクトレオチドの放出を示している。図2に示すように、第136番処方物については、初期放出は相対的に高かったが、相対的に急速に低下した。図3に示すように、第146番処方物の初期放出速度は相対的に低かった。図4は、第145番、第147番、第133番、第144番、第143番および第142番の処方物の放出プロファイルを示している。図4に示すように、初期放出速度は、22.9〜27.6%の%EWCについて20〜450μg/日の範囲内で、%EWCとの良好な関係性を示している。しかし、インプラントおよび溶出媒体内の浸透圧差に関して、問題に遭遇した。オクトレオチド処方物を安定化させるために、「選択的水和」の原理に基づいてより良好な安定性を提供するであろう補形剤を用いて、多数の実験を設計した。
【実施例2】
【0118】
仔ウシ血清での処方物試験
膨潤問題に浸透圧が及ぼす影響を調べるため、処方物第136番および処方物第143番に対応する本発明の2つのインプラントを仔ウシ血清中に溶出した。詳細には、約40%のHEMAおよび60%のHPMAから構成され、酢酸オクトレオチドを2%のステアリン酸とともに含む処方物第136番、ならびに約30%のHEMAおよび70%のHPMAから構成され、20%のPEG3300および80%の酢酸オクトレオチドの混合物を含む処方物第143番を試験した。3カ月後、これらのインプラントは、比較的直線状で、ほんの僅かに膨潤しているだけで、正常な外観を示した。
【実施例3】
【0119】
処方物試験
浸透圧差に起因して、実施例1に記載したインプラントは著しく膨潤し、最終的にはインプラントの崩壊を生じた。本実施例では、オクトレオチドインプラントの安定化に有用な作用物質をスクリーニングするために設計された処方物について記載する。一連のインプラントをモニターして、インプラントの形状および耐久性に補形剤が及ぼす影響を調べた。ポリマーカートリッジの各々は、約28%のHEMA、約66.5%のHPMAおよび5%のグリセリンで構成した。内容物には、酢酸オクトレオチドを、表2に示すように様々な賦形剤と共に含んだ。
【0120】
【表2】
【0121】
例えばゴマ油およびMCCなどの疎水性物質は、本処方物中で分離し、「選択的水和」を提供せず、本発明には余り好ましくなかった。PEG3300のような親水性物質は、浸透圧差を増加させ、膨潤を増加させた。マンニトールおよびグリコール酸のような低分子量添加物は、安定化作用を提供せず、完全性の低下をもたらした。これらの物質はいずれも、本オクトレオチド処方物について満足のいく安定化をもたらさなかった。
【実施例4】
【0122】
処方物試験およびオクトレオチドのインビトロ放出速度
本試験は、表3に示した様々な補形剤を使用したヒドロゲルインプラント内のオクトレオチドの安定性を評価するために実施した。補形剤は、高分子量およびある程度の親水性の性質を有するように選択した。各インプラントは、約20%のHEMAおよび約80%のHPMAから構成されるポリマーカートリッジから製造した。食塩液中のインプラントの外観を9週間の経過にわたってモニターし評価した。結果を表3に示した。
【0123】
【表3】
【0124】
図5に示したように、デキストランを含む処方物は、最大溶出速度を有した。ペクチン、AcDiSolおよびCarbopolを含む処方物は、2週間の水和および9週間の溶出の後に満足度の低い放出を示した。したがって、優れた安定化作用、良好な溶出および外観の組み合わせを有する好ましい実施形態は、ヒドロキシプロピルセルロースを用いて達成された。
【実施例5】
【0125】
健常なイヌにおける1カ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製およびそれらからのオクトレオチドまたはその医薬上許容される塩の放出について示す。健常なイヌに本発明のオクトレオチド皮下インプラント1つを埋め込んだ。オクトレオチド皮下インプラント処方物は、26.6%の含水率を有し、44mgの酢酸オクトレオチドを含んでいた。インビトロ放出速度は、第1週中は約500μg/日であり、第4週中は約300μg/日に減少し、全試験期間中にわたって約10mgの総放出量と推定された。インプラントは、埋め込みの28日後に取り出した。本試験で使用したインプラントは、長さが約3.5cmであった。酢酸オクトレオチド、IGF−1およびGHの血清中濃度を得るための血液サンプル(1.5mL)を、麻酔をかけず、そして絶食させずに第0、1〜7日、11日、14日、18日、21日、25日および28日に頸静脈穿刺により採取した。
【0126】
臨床観察では、オクトレオチドインプラント処方物が十分に許容され、食物摂取は正常であり、異常な行動は認められなかった。
血清分析からは、酢酸オクトレオチドのピークが第4日にあり、全期間で、検出可能な量の酢酸オクトレオチドが測定されたことが示された。IGF−1濃度は、埋め込み後は第4日まで減少し、その後は第25日までに投与前レベルに戻った。IGF−1レベルは、図6から明らかなように、埋め込み前の40〜90%に低下した。
【実施例6】
【0127】
健常なイヌ6匹における6カ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製およびそれらからのオクトレオチドまたはその医薬上許容される塩の放出について示す。6匹の健常なイヌを2群に分け、本発明のオクトレオチド皮下インプラント1つまたは2つを各々埋め込んだ。オクトレオチド皮下インプラント処方物は、約25.2%の含水率を有し、約60mgの酢酸オクトレオチドを含んでいた。これらのインプラントは埋め込み6カ月後に取り出した。酢酸オクトレオチド、IGF−1およびGHの血清中濃度を得るための血液サンプル(10mL)は、埋め込み後最初の7日間については1日1回、その後は3週間にわたって週2回、その後は6カ月の期間が終了するまで週1回採取した。埋め込みの4日前に、ベースラインの血清サンプルをコントロールとして採取した。
【0128】
結果、オクトレオチドの血清中濃度は、インプラント1つを埋め込まれたイヌでは200〜700μg/mL、インプラント2つを埋め込まれたイヌでは400〜1000μg/mLを示している。IGF−1レベルは、図7および8から明らかなように、両方の治療群において90%も減少した。GHの血清中レベルの測定は、本試験の約1カ月後には中止したが、それは健常動物におけるレベルがそれ以上の減少を検出するには低すぎるためであった。臨床観察では、オクトレオチドインプラント処方物が十分に許容され、食物摂取は正常であり、異常な行動は認められなかった。
【実施例7】
【0129】
ヒトにおける6カ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製およびそれらからのオクトレオチドまたはその医薬上許容される塩の放出について示す。6カ月の試験は、末端肥大症を有する患者11例において実施した。本発明のインプラント1つまたは2つを、末端肥大症であると診断され、以前に市販のオクトレオチドLAR製剤を用いての治療を受けた患者11例の皮下に埋め込んだ。GHおよびIGF−1のレベルを、ベースラインおよびその後は6カ月の期間にわたって毎月測定した。各インプラントは、およそ60mgの酢酸オクトレオチドを20%のHEMAおよび79.5%のHPMAのコポリマー中に含み、EWCは約25.2%であった。本試験に使用したインプラントは、乾燥状態では長さが約44mmであり、水和状態では長さが50mmであった。インプラントの直径は、乾燥状態では約2.8mmであり、水和状態では約3.5〜約3.6mmであった。これらのインプラントは埋め込み前の約1週間にわたって水和させた。
【0130】
GHについての参照範囲は、年齢に関わらず2.5mg/Lまでであった。表4は、本発明のオクトレオチドインプラントの埋め込み後6カ月にわたってのGHの基底レベル(mg/L)を示している。患者番号11は、スクリーニング基準を満たさなかったため、本試験に参加しなかった。
【0131】
【表4】
【0132】
上記のように、6カ月後までに、被験体の89%は正常化された成長ホルモンレベルを示した。IGF−1についての参照範囲は以下の通りである:(i)17〜24歳、約180〜780ng/mL;(ii)25〜39歳、約114〜400ng/mL;(iii)40〜54歳、約90〜360ng/mL;および(iv)>54歳、約70〜290ng/mL。
【0133】
表5は、本発明のオクトレオチドインプラントの埋め込み後6カ月にわたってのIGF−1の基底レベル(ng/mL)を示している。
【0134】
【表5】
【0135】
上記のように、6カ月後までに、被験体の22%は正常化されたIGF−1レベルを示した。
図9Aおよび9Bは、本発明のオクトレオチドインプラントと市販の酢酸オクトレオチド製剤との比較を示している。本インプラントの有効性は、市販のオクトレオチドLAR製剤の有効性と少なくとも同程度に良好であった。これらのインプラントの治療効果は、本試験期間の全6カ月にわたって首尾よく持続した。
【0136】
IGF−1レベルは、全患者において減少し、患者2例においては正常化された。この減少は1カ月の治療で既に観察され、平均IGF−1レベルはその後5カ月にわたって安定であった。市販のオクトレオチドLAR製剤治療を受けていた同一患者において以前に観察された減少との比較は、患者9例中8例において可能であった。これらの患者8例中6例において、埋め込み中のIGF−1の減少率は市販のオクトレオチドLAR製剤を受けていた間より大きかったが、2例では小さかった。本インプラントによる6カ月の治療の後、患者3例のGHレベルは<1ng/mLとなり、他の患者5例では<2.5ng/mLであった。これは市販のオクトレオチドLAR製剤についての結果、すなわち患者2例のGHレベルのみが<1ng/mLであり、他の2例では2.5ng/mL未満であった結果に比して有利であった。
【0137】
患者の血清中オクトレオチドレベルもまた、表6に示したように測定した。
【0138】
【表6】
【0139】
インプラント1つおよび2つを用いて達成されたオクトレオチドレベルの比較は、図10のグラフに示す。全体的に、結果は、本発明のオクトレオチドインプラントは、末端肥大症の患者においてGHレベルおよびIGF−1レベルを低下させることに関して市販のオクトレオチドLAR製剤と少なくとも同程度に有効であることを示した。
【実施例8】
【0140】
乾燥インプラントを使用したインビトロオクトレオチド送達
本実施例は、本発明の処方物の調製およびそれらからのオクトレオチドまたはその医薬上許容される塩の放出について示す。健常なイヌ2匹に本発明のオクトレオチド皮下インプラント1つを埋め込んだ。これらのインプラントは、埋め込み前に水和させなかった。本オクトレオチド皮下インプラントは、約59.5%のHPMAおよび約40%のHEMAから構成され、約27.6%の平衡含水率を有していた。これらのインプラントは、約84mgの酢酸オクトレオチド、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを含んでいた。これらのインプラントは埋め込み6カ月後に取り出した。血液サンプル(10mL)は、酢酸オクトレオチドおよびIGF−1の血清中濃度を得るために、埋め込み後最初の4週間は1日置きに1日1回採取し、その後は4週間にわたり週2回採取し、さらに6カ月の終了時までは週1回サンプリングした。埋め込みの2日前に、ベースラインの血清サンプルをコントロールとして採取した。
【0141】
図11はイヌにおける血清中オクトレオチド濃度を示し、図12はイヌにおけるIGF−1濃度を示している。
【実施例9】
【0142】
インプラント組成物
本発明のインプラントのために考えられる組成物には、例えば、以下の表7に挙げた組成物が含まれる。約3.2〜3.4mm(乾燥)より大きなインプラントカートリッジは、例えばビタミンE TPGSのような離型剤を使用して、形成プロセスを助けた。
【0143】
【表7】
【実施例10】
【0144】
末端肥大症の患者における水和および非水和84mgオクトレオチドインプラントの薬物動態的および薬力学的反応を評価するためのオープンラベル試験
末端肥大症のおよそ30例の患者を、文書によるインフォームドコンセントを得た後に登録した。患者を試験無作為割り付けスケジュールにしたがって2群に分けた。患者15例には水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与し、患者15例には非水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与した。適格患者らには、彼らのスクリーニング来院から7日間以内にインプラントを投与した。オクトレオチドインプラントは、局所麻酔下で利き腕ではない方の腕の内側に皮下挿入した。IGF−1、GHおよびオクトレオチドの血清中濃度を測定するための血液サンプルは、埋め込み後最初の6週間以内の所定の時点に採取した。患者はその後、IGF−1、GHおよびオクトレオチドの血清中濃度を測定するための血液サンプルを採取するため、ならびに安全性評価のために第8、12、16、20および24週に来院する。6カ月(24週)の治療期間の終了時に、インプラントは取り出される。インプラントの取り出し後、患者は最終試験来院(第28週)のために4週間後に来院するように指導される。安全性および有効性は、全試験を通して注意深く監視される。
【0145】
治験製品:
皮下埋め込み用水和オクトレオチドインプラント(84mg酢酸オクトレオチド)
皮下埋め込み用非水和オクトレオチドインプラント(84mg酢酸オクトレオチド)
【0146】
治療期間:
適格患者らに、水和または非水和いずれかのインプラント1つを投与する。6カ月(24週)の治療期間の終了時に、インプラントは取り出される。インプラントの取り出し後、患者は最終試験来院のために4週間後に来院するように指導される。
【0147】
選択基準:
1.末端肥大症の男性および女性患者
2.年齢は18歳以上でなければならない。
3.成長ホルモン産生腫瘍診断の確定(年齢および性別を考慮した正常値の上限を≧20%超えるIGF−1レベルの上昇および≧1.0ng/mLのグルコース負荷後GHまたはMRIで証明可能な下垂体腫瘍)。患者が下垂体手術を受けており、残存腫瘍が存在する場合、その腫瘍は視交叉からの距離が少なくとも3mmなければならず(患者が手術候補者ではない場合)、IGF−1レベルは上記したように上昇していなければならない。残存腫瘍が存在しない、または患者が手術不能である場合は、患者は上記したIGF−1およびGH基準をどちらも満たさなければならない。
4.以下に規定するように、臨床検査値(historical laboratory values)による、オクトレオチドに対する完全応答者または部分応答者のいずれかでなければならない:
a.完全応答者:年齢および性別を考慮した正常レベルへの血清中IGF−1の抑制およびOGTT後に<1.0ng/mLへの血清中GHの抑制。
b.部分応答者:完全応答者についての基準を満たしてはいないが、治療前数値に比較した場合にIGF−1およびGH値の≧30%の減少。
c.OR
d.オクトレオチド治療を受けたことのない患者またはオクトレオチドへの応答が不明である患者については、以下に規定するように、スクリーニング来院中の急性水性試験によって得られた臨床検査値によって明示されたオクトレオチド応答者でなければならない。
e.急性水性試験による応答者:100μgの水性オクトレオチドの皮下注射に応答して4時間の試験期間のいずれかの時点にGH値の≧30%の減少。
5.意思疎通が可能であること、文書によるインフォームドコンセントを提供できること、参加する意志があること、および試験要件を遵守することができること。
6.治験医師の見解において、患者が参加するために適格である。
【0148】
除外基準:
1.妊娠中、授乳中、または医学的に許容される受胎調節方法を実施していない妊娠の可能性がある女性。
2.スクリーニング前の12週間以内に下垂体手術を受けた患者。
3.肝臓疾患(例えば、肝硬変、慢性活動性もしくは持続性肝炎またはALT、AST(正常値の>2×のレベル)、アルカリホスファターゼ(正常値の>2×のレベル)、または直接ビリルビン(正常値の>1.5×のレベル)の持続性異常を備える患者。
4.治験責任医師または治験依頼者が臨床的に有意であると見なした他の臨床検査値
5.不安定狭心症、持続性心室性不整脈、心不全(NYHA IIIおよびIV)、またはスクリーニングから3カ月以内の急性心筋梗塞歴を有する患者
6.症候性胆石症の患者
7.スクリーニングから6カ月以内に薬物もしくはアルコール乱用歴を有する患者
8.スクリーニングから1カ月以内にどのような治験薬でも受けたことのある患者
9.スクリーニングの前のいずれかの時点に彼らの下垂体腫瘍に対する放射線療法を受けていた患者
10.耐容性および有効性の問題に起因してオクトレオチドを中断していた患者。
【0149】
オクトレオチドの血清中濃度を測定した(グラフデータについては図13および14を参照されたい)。
乾燥形態または水和後のいずれかでのオクトレオチドインプラントが挿入された後のサイトカイン濃度調節の有効性は、図15、16、および17に示した。
【実施例11】
【0150】
オクトレオチドを用いた腫瘍の治療
FDAラベル(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)に示されているようにSandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、オクトレオチドを含む生分解性グルコース星形ポリマー、D,L−乳酸およびグリコール酸のコポリマーのマイクロスフェアからなる長時間作用型剤形である。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、注射部位からのオクトレオチドの緩徐に放出し頻回な投与の必要性を減少させるという追加の特徴とともに、即時放出型剤形Sandostatin(登録商標)(酢酸オクトレオチド)注射液の全ての臨床的および薬理学的特徴を維持している。この緩徐な放出は、主として加水分解を通して、ポリマーが生分解するにつれて発生する。Sandostatin LAR(登録商標)デポ剤は、4週毎に1回、筋肉内(臀筋内)注射するように設計されている。
【0151】
オクトレオチドは、天然ホルモンであるソマトスタチンに類似する薬理学的作用を発揮する。オクトレオチドは、ソマトスタチンよりも、成長ホルモンであるグルカゴン、およびインスリンの一層強力な阻害剤である。ソマトスタチンと同様に、オクトレオチドは、GnRHに応答してLHを抑制し、内臓血流量を減少させ、セロトニン、ガストリン、血管作用性小腸ペプチド、セクレチン、モチリン、および膵臓ポリペプチドの放出を阻害する。これらの薬理学的作用によって、オクトレオチドは、例えば、転移性カルチノイド腫瘍(紅潮および下痢)、および血管作用性小腸ペプチド(VIP)産生腺腫(水様下痢)に関連する症状の治療に使用されてきた。オクトレオチドは、末端肥大症の患者における成長ホルモンおよび/またはIGF−1(ソマトメジンC)のレベルを実質的に減少させ、多くの症例では正常化することができる。皮下投与されるSandostatin(登録商標)注射の単回用量は、健常志願者において胆嚢収縮を阻害し、胆汁分泌を減少させることが証明されている。
【0152】
末端肥大症の患者においては、薬物動態は健常志願者における薬物動態とはいくらか相違する。2.8ng/mL(100μgの用量)の平均ピーク濃度は、皮下投与の0.7時間後に達した。分布容量(Vdss)は21.6±8.5Lであると推定され、全身クリアランスは18L/時に増加した。結合した薬物の平均%は41.2%であった。体内動態および排出半減期は健常者に類似していた。
【0153】
これらの腫瘍を治療する方法は、典型的には第一線療法としての手術を含んでいる。手術が上手くいかないと、患者には通常、オクトレオチド注射(S−Larなど)が施される。化学療法もまた有益であることが証明されていて、患者の約30%において行われている。カルチノイド腫瘍の患者は、4週毎に筋肉内注射によって投与された10、20、または30mgでのS−Larの6回の投与で治療された。結果として生じる血清中濃度は、1.2、2.5、および4.2ng/mLであった。定常状態は、20または30mgでの2回の投与後および10mgでの3回の投与後に達成された。
【0154】
S−Lar(登録商標)による治療は1日の排便回数を2〜2.5回/日の排便に減少させ、平均1日紅潮エピソードを0.5〜1回/日に減少させ、さらに24時間尿中5−HIAAレベルを38〜50%まで減少させた。6カ月試験にわたって、本治験を完了した患者の50〜70%は症状の悪化を制御するのに役立つように補助的なSandostatin(登録商標)注射を必要としたことを言及しておかなければならない。
【0155】
本発明は所定の好ましい実施形態を参照しながら相当詳細に記載してきたが、他の変形も可能である。このため、添付の特許請求項の精神および範囲は、本明細書の中に含まれる説明および好ましい形態に限定されてはならない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オクトレオチドを被験体に、実質的にゼロ次放出プロファイルで、約6カ月以上の長期間にわたり送達する方法であって、
前記被験体が、イヌではない哺乳動物であり、
前記方法が、前記被験体に少なくとも1つの埋込可能なデバイスを皮下埋め込みすることを含み、
前記少なくとも1つの埋込可能なデバイスが、オクトレオチドを含む組成物を含み、
前記組成物が、親水性ポリマー中に収容され、
前記埋込可能なデバイスが、乾燥状態で埋め込まれて、前記被験体は少なくとも約6カ月の期間にわたって毎日、前記被験体の治療に有効な投与量のオクトレオチドを受け取る、
方法。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、1以上のポリウレタン系ポリマーまたは1以上のメタクリレート系ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オクトレオチドが、遊離型、塩形態またはそれらの複合体の形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オクトレオチドが、酢酸オクトレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体が、オクトレオチド感受性疾患または障害を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体が、GHもしくはIGF−1ホルモン障害またはその症状を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記GHまたはIGF−1障害が、末端肥大症である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体が、オクトレオチドを約75μg/日〜約300μg/日の範囲の平均速度で少なくとも約6カ月の期間にわたって受け取る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.5ng/mL〜約1.4ng/mLの範囲のオクトレオチドの平均血清中濃度を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.8ng/mL〜約1.2ng/mLの範囲のオクトレオチドの平均血清中濃度を生じさせる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.2ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.0ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体が、少なくとも約12カ月の期間にわたって有効量のオクトレオチドを受け取る、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
オクトレオチドの放出が、埋め込みから少なくとも3〜約10日後に発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体が、カルチノイド症候群、VIP産生腫瘍、神経内分泌腫瘍、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵液および腸液瘻、グレーブス・バセドウ(Graves−Basedow)病性眼病、緑内障、および化学療法またはAIDSに関連する症状からなる群より選択される状態を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ポリウレタン系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーに実質的に収容されるオクトレオチドを含む放出制御処方物を含む埋込可能なデバイスであって、
前記埋込可能なデバイスが、オクトレオチドを被験体に、実質的にゼロ次放出プロファイルで、約6カ月以上の長期間にわたって送達し、
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に乾燥状態で埋め込まれるとき、前記被験体がイヌではない哺乳動物である、
埋込可能なデバイス。
【請求項17】
前記親水性ポリマーが、1以上のポリウレタン系ポリマーを含む、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項18】
前記オクトレオチドが、遊離型、塩形態またはそれらの複合体の形態にある、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項19】
前記オクトレオチドが、酢酸オクトレオチドである、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項20】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が、オクトレオチドを約75μg/日〜約300μg/日の範囲の平均速度で少なくとも約6カ月の期間にわたって受け取る、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項21】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.5ng/mL〜約1.4ng/mLの範囲のオクトレオチドの平均血清中濃度を生じさせる、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項22】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.8ng/mL〜約1.2ng/mLの範囲のオクトレオチドの平均血清中濃度を生じさせる、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項23】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.2ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項24】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.0ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項25】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、オクトレオチドの放出が、埋め込みから少なくとも3〜約10日後に発生する、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項26】
イヌではない哺乳動物被験体を治療する医薬を製造するためのオクトレオチドの使用であって、
前記医薬が、ポリウレタン系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーに実質的に収容される放出制御処方物であり、これにより埋込可能なデバイスを形成し、
イヌではない哺乳動物被験体に埋め込まれると、前記埋込可能なデバイスが乾燥状態で前記被験体に埋め込まれる場合に、前記埋込可能なデバイスが、オクトレオチドを前記被験体に、実質的にゼロ次放出プロファイルで、約6カ月以上の長期間にわたって送達する、
オクトレオチドの使用。
【請求項1】
オクトレオチドを被験体に、実質的にゼロ次放出プロファイルで、約6カ月以上の長期間にわたり送達する方法であって、
前記被験体が、イヌではない哺乳動物であり、
前記方法が、前記被験体に少なくとも1つの埋込可能なデバイスを皮下埋め込みすることを含み、
前記少なくとも1つの埋込可能なデバイスが、オクトレオチドを含む組成物を含み、
前記組成物が、親水性ポリマー中に収容され、
前記埋込可能なデバイスが、乾燥状態で埋め込まれて、前記被験体は少なくとも約6カ月の期間にわたって毎日、前記被験体の治療に有効な投与量のオクトレオチドを受け取る、
方法。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、1以上のポリウレタン系ポリマーまたは1以上のメタクリレート系ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オクトレオチドが、遊離型、塩形態またはそれらの複合体の形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オクトレオチドが、酢酸オクトレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体が、オクトレオチド感受性疾患または障害を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体が、GHもしくはIGF−1ホルモン障害またはその症状を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記GHまたはIGF−1障害が、末端肥大症である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体が、オクトレオチドを約75μg/日〜約300μg/日の範囲の平均速度で少なくとも約6カ月の期間にわたって受け取る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.5ng/mL〜約1.4ng/mLの範囲のオクトレオチドの平均血清中濃度を生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.8ng/mL〜約1.2ng/mLの範囲のオクトレオチドの平均血清中濃度を生じさせる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.2ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.0ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体が、少なくとも約12カ月の期間にわたって有効量のオクトレオチドを受け取る、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
オクトレオチドの放出が、埋め込みから少なくとも3〜約10日後に発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体が、カルチノイド症候群、VIP産生腫瘍、神経内分泌腫瘍、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵液および腸液瘻、グレーブス・バセドウ(Graves−Basedow)病性眼病、緑内障、および化学療法またはAIDSに関連する症状からなる群より選択される状態を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ポリウレタン系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーに実質的に収容されるオクトレオチドを含む放出制御処方物を含む埋込可能なデバイスであって、
前記埋込可能なデバイスが、オクトレオチドを被験体に、実質的にゼロ次放出プロファイルで、約6カ月以上の長期間にわたって送達し、
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に乾燥状態で埋め込まれるとき、前記被験体がイヌではない哺乳動物である、
埋込可能なデバイス。
【請求項17】
前記親水性ポリマーが、1以上のポリウレタン系ポリマーを含む、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項18】
前記オクトレオチドが、遊離型、塩形態またはそれらの複合体の形態にある、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項19】
前記オクトレオチドが、酢酸オクトレオチドである、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項20】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が、オクトレオチドを約75μg/日〜約300μg/日の範囲の平均速度で少なくとも約6カ月の期間にわたって受け取る、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項21】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.5ng/mL〜約1.4ng/mLの範囲のオクトレオチドの平均血清中濃度を生じさせる、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項22】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約0.8ng/mL〜約1.2ng/mLの範囲のオクトレオチドの平均血清中濃度を生じさせる、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項23】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.2ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項24】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、前記被験体が受け取るオクトレオチドの投与量が、約1.0ng/mL未満であるオクトレオチド血清中濃度のCmaxを生じさせる、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項25】
前記埋込可能なデバイスが前記被験体に埋め込まれると、オクトレオチドの放出が、埋め込みから少なくとも3〜約10日後に発生する、請求項16に記載の埋込可能なデバイス。
【請求項26】
イヌではない哺乳動物被験体を治療する医薬を製造するためのオクトレオチドの使用であって、
前記医薬が、ポリウレタン系ポリマーまたはメタクリレート系ポリマーに実質的に収容される放出制御処方物であり、これにより埋込可能なデバイスを形成し、
イヌではない哺乳動物被験体に埋め込まれると、前記埋込可能なデバイスが乾燥状態で前記被験体に埋め込まれる場合に、前記埋込可能なデバイスが、オクトレオチドを前記被験体に、実質的にゼロ次放出プロファイルで、約6カ月以上の長期間にわたって送達する、
オクトレオチドの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【公表番号】特表2011−527705(P2011−527705A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517647(P2011−517647)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050215
【国際公開番号】WO2010/006236
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(509297680)エンド ファーマスーティカルズ ソリューションズ インコーポレイテッド. (9)
【氏名又は名称原語表記】ENDO PHARMACEUTICALS SOLUTIONS INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/050215
【国際公開番号】WO2010/006236
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(509297680)エンド ファーマスーティカルズ ソリューションズ インコーポレイテッド. (9)
【氏名又は名称原語表記】ENDO PHARMACEUTICALS SOLUTIONS INC.
【Fターム(参考)】
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