説明

オゾンの作用下で、ウィンドワイパー用のワイパーブレードの表面を変性する方法

本発明は、ワイパーブレードの材料がオレフィン系炭素−炭素二重結合を有するエラストマーを有する、ウィンドワイパー用のワイパーブレードの表面を変性する方法において、人工的に製造されたガス状のオゾンをエラストマーの表面の少なくとも一部に作用させ、かつオゾンが表面に作用するワイパーブレードの部分を、この作用の間に高くても、前記エラストマーのオゾン作用のための臨界の伸び限度にまで伸張させる、ウィンドワイパー用のワイパーブレードの表面を変性する方法に関する。本発明は、更に、このような方法により表面が変性されたウィンドワイパー用のワイパーブレード、並びにウィンドワイパー用のワイパーブレードとしての、この種の表面変性されたエラストマーのストランド形の異形材の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパーブレードの材料がオレフィン系炭素−炭素二重結合を有するエラストマーを有する、ウィンドワイパー用のワイパーブレードの表面を変性する方法に関する。本発明は、更に、このような方法により表面が変性されたウィンドワイパー用のワイパーブレード、並びにウィンドワイパー用のワイパーブレードとしての、この種の表面変性されたエラストマーのストランド形の異形材の使用に関する。
【0002】
先行技術
ウィンドワイパーにおいて使用されるワイパーブレードは、その横断面において、頻繁にベース部分と旋回部分とを有する構造を有する。この旋回部分自体は、三角形の横断面を有することができ、かつ薄い傾動ウェブを介してベース部分と結合されている。この旋回部分の前方領域は、ワイパーリップ領域といわれる、それというのもこのワイパーブレードはこの部分でフロントガラスの上を滑走し、このフロントガラスに存在する水及び汚れを除去するためである。
【0003】
ゴムからなるワイパーブレードは、ガラス又はプラスチックからなるウィンドガラス上でのすべり摩擦を低減し、ワイパーエッジの耐摩耗性を改善し、びびりを抑制するために、完全に又はこのワイパーリップの領域だけに摩擦を低減する被覆を設けることができる。これは、例えば塵又は虫をウィンドガラスから除去するために、ウィンドワイパーが乾燥したウィンドガラス又はほぼ乾燥したウィンドガラスで作動する場合に特に重要である。
【0004】
ウィンドガラス上でのワイパーブレードの摩擦を低減するために、今までに多様な方法が提案されていた。ゴムからなるワイパーをハロゲンで処理することができる。例えば塩素化又は臭素化により、ゴムの硬化が達成され、ガラス上での摩擦が低減される。ワイパーストリップの塩素化は、例えばこのワイパーストリップを、塩素を脱離する水溶液中に浸漬することにより行う。
【0005】
更に、黒鉛粉末を適切な有機キャリア中に微細に分配し、これをワイパーリップの領域に吹き付けることにより、しばしば、このワイパーリップの領域に黒鉛懸濁液が塗布される。このキャリアは蒸発し、黒鉛粉末は微細に分配されてゴム表面に残留する。これにより、ゴムとウィンドガラスとの間の摩擦は更に低減される。この方法により、全ての運転条件下で信頼できる拭き取り挙動が達成され、ウィンドガラス上でのワイパーストリップのびびりは、ウィンドガラスの状態及びウィンドガラス上での水の量とは無関係に回避される。この黒鉛粒子はゴム上で十分な付着を示さないため、その効果はワイパーリップの短い運転時間の後でしばしば弱まる。
【0006】
このワイパーリップ上での被覆の付着の改善のために、結合剤を利用して摩擦を低下する添加剤を塗布することができる。DE 101 32 026 A1は、粒子状の固体潤滑剤と、ゴムワイパーブレード上にこの固体潤滑剤を付着させるための結合剤とを有するゴムワイパーブレード用の被覆剤が開示している。この結合剤は、乾燥又は硬化後に1MPa以上の0.5%モジュラス及び1%以上の破断点伸びを有する。
【0007】
しかしながら、摩擦の低いワイパーブレード、特にワイパーリップを提供するために更に新規の方法が望ましく、この場合、このワイパーブレードはそれ自体摩擦が低くされるか又はワイパーブレード上での摩擦を低減する被覆の付着が改善される。
【0008】
発明の開示
本発明の場合に、ウィンドワイパー用のワイパーブレードの表面を変性する方法が提案され、この場合、このワイパーブレードの材料はオレフィン系炭素−炭素二重結合を有するエラストマーを有する。本発明による方法は、人工的に製造されたガス状のオゾンをエラストマー表面の少なくとも一部に作用させ、かつ、表面にオゾンを作用させるワイパーブレードの部分は、この作用の間に高くても、オゾン作用のために臨界のエラストマーの伸び限度にまで伸張されることを特徴とする。
【0009】
本発明の意味範囲でウィンドワイパー用のワイパーブレードは、ウィンドワイパーに使用することが予定されているエラストマーのストランド形の異形材ともいわれる。このウィンドワイパーは、例えばウィンドガラス又はウィンドウプラスチックから水、汚れ及び虫を清掃するために使用することができる。
【0010】
このワイパーブレードの材料は、オレフィン系炭素−炭素二重結合を有するエラストマーを有することが予定されている。「オレフィン系」とは、一般に芳香族系の一部ではない二重結合であると解釈される。このエラストマーのポリマー鎖に関して、オレフィン系二重結合は主鎖中でも側鎖中にでも存在することができる。エラストマーの例は、エチレン−プロピレン−ジエン−エラストマー、クロロ−ブタジエン−エラストマー、天然ゴム、イソプレン−エラストマー、ブタジエン−エラストマー、スチレン−ブタジエン−エラストマー、アクリルニトリル−ブタジエン−エラストマー及び/又はアクリルニトリル−ブタジエン−エラストマーとポリ塩化ビニルとの混合物を有するグループから選択される。
【0011】
本発明による方法の場合には、人工的に製造されたガス状のオゾンが使用される。従って、これは、天然の、大気中に生じるオゾンではない。有利に、このオゾンは、オゾン発生器中で電気的放電によって酸素から製造される。このオゾンは少なくともエラストマー表面の一部に作用させることができる。このことは、必然的にワイパーブレードの表面全体をオゾンと接触させる必要はないことを意味する。この場合、このエラストマー表面は、上記のエラストマーの材料を有するワイパーブレードの表面である。この場合、つまりこのエラストマーはオゾンと接触される。理論について確認されていないが、オゾンはオレフィン系炭素−炭素二重結合と反応して新規の官能基を形成すると推測される。
【0012】
更に、表面にオゾンを作用させるワイパーブレードの部分を、その作用の間に高くても、オゾン作用のために臨界のエラストマーの伸び限度にまで伸張することが予定される。エラストマーのこの臨界の伸び限度は、この場合、所定の負荷時間で、所定のオゾン濃度、温度及び相対湿度で亀裂が生じない、パーセンテージで示す最大伸び率であると解釈される。この臨界の伸び限度は、各ワイパーブレードに対してその都度のオゾン化パラメータで決定することができる。
【0013】
「亀裂が生じない」とは、この場合、特に、顕微鏡などの他の補助手段なしで視覚的評価で亀裂が確認できないことを意味する。
【0014】
この伸びは、臨界の伸び限度をさらに下回ることもできるため、結果として機械的に負荷がかけられないワイパーブレードが処理される。例えば、この伸びが、臨界の伸び限度の≧0%〜≦50%、臨界の伸び限度の≧10%〜≦40%又は臨界の伸び限度の≧20〜≦40%の範囲内にあることができる。例として、3%の臨界の伸び限度を有する天然ゴムを挙げることができる。この臨界の伸び限度の10%の伸びの場合、この伸びは全体で0.3%である。
【0015】
絶対数で表すと、例えばこの伸びは全体で≧0%〜≦0.5%又は≧0.1%〜≦0.4%の範囲内であることができる。
【0016】
このようにわずかな機械的負荷の場合、エラストマー表面にオゾン化された層が形成され、このオゾン化された層は保護層の機能を果たすことができ、エラストマー体中へのオゾンの更なる侵入を抑制する。理論について確認されていないが、この場合、オゾン分解によるエラストマー鎖の分解は生じないか又は本質的でない程度で生じるだけであると推測される。この層は、更に良好な耐摩擦性を有し、ガラス上でのエラストマーの摩擦が低下し、更に新たに導入された官能基に基づき更なる被覆の良好な付着が提供される。全体として、これらの特性は全てワイパーゴムの機能にとって有利である。
【0017】
大気中でのオゾンによる劣化に対するこの保護は、ワイパーストリップの薄い傾動ウェブにとって特に重要である、それというのもウィンドワイパーの運動によりこの材料は継続的に伸張されるためである。この場合、この保護は、エラストマー表面のオゾン化によって特に有利に作用する。それに対して、ワイパーリップの領域でのエラストマー表面のオゾン化に関して、局所的に塗布された滑り被覆がより良好に付着することが有利である。滑り被覆が剥離する場合であっても、このオゾン化されたワイパーリップは、未処理のものよりもガラス上での低い摩擦を有する。
【0018】
エラストマー表面のオゾンによる処理は、通常のハロゲン化を補足して又は有利にこのハロゲン化に代えて行うことができる。
【0019】
本発明による方法の実施態様の場合に、気相中でのオゾンの濃度は≧9pphm〜≦220pphmの範囲内にある。この場合、「pphm」の記載は、「parts per hundred million」と解釈され、処理されるべきエラストマー表面上に存在する気相中のオゾンの濃度を表す。この濃度は、≧20pphm〜≦150pphm又は≧50pphm〜≦100pphmの範囲内にあることもできる。記載された濃度範囲について、市販のオゾン発生器により達せすることができかつできる限り少ないオゾン供給量で運転できることが有利である。
【0020】
本発明による方法の他の実施態様の場合に、オゾンは≧1分〜≦60分の期間でエラストマー表面に作用される。この作用時間は、≧2分〜≦45分又は≧5分〜≦30分の範囲内にあることもできる。本発明による方法の場合に、このようなサイクル時間が可能であり、この場合に常に冒頭に記載された利点が達成される。オゾンを用いたこの処理は不連続的方法で行うことができ、この場合にワイパーブレードがオゾン庫中に導入される。この処理は、しかしながら連続的に行うこともでき、この場合にストランド状のエラストマー異形材を、所定の滞留時間でオゾン化トンネルを通過するように搬送する。
【0021】
本発明による方法の他の実施態様の場合に、このオゾンの作用は≧45%〜≦65%の相対空気湿度で実施される。この相対空気湿度は、≧50%〜≦60%又は≧52%〜≦58%の範囲内にあることもできる。これらの値は、オゾン庫中で又はオゾントンネル中でも生じさせることができる。制御されたオゾン化を達成するために、この相対空気湿度を上記限界値の間で保持するのが有利である。高い相対湿度、特に80%を越える相対湿度は、高いオゾン化速度を生じさせ、この高いオゾン化速度は最悪の場合に望ましくない表面特性、例えば表面の微小亀裂を引き起こしかねない。低い相対空気湿度(<45%)は、不所望な低いオゾン化速度を生じさせる。
【0022】
本発明による方法の他の実施態様の場合に、このオゾンの作用は≧20℃〜≦40℃の温度で実施される。この温度は、≧22℃〜≦38℃又は≧25℃〜≦35℃の範囲内にあることもできる。制御されたオゾン化を達成するために、この温度を上記限界値の間で保持するのが有利である。高い温度(>40℃)は、高いオゾン化速度を生じさせ、この高いオゾン化速度は最悪の場合に望ましくない表面特性、例えば表面の微小亀裂を引き起こしかねない。低い温度(<20℃)は、不所望な低いオゾン化速度を生じさせる。
【0023】
本発明による方法の他の実施態様の場合には、ワイパーブレードをオゾンの作用の前に≧4時間〜≦24時間の期間で、オゾンの作用が行われる温度及び湿度で貯蔵する。この場合、処理されるべきワイパーブレード又はストランド形のエラストマー異形材はオゾン化の前にプリコンディショニング(vorkonditionieren)される。この時間は、≧5時間〜≦20時間又は≧6時間〜≦8時間の範囲内にあることもできる。ワイパーブレードが予め他の温度で貯蔵されていた場合に、ワイパーブレードをオゾン化の温度にするプリコンディショニングが有利である。
【0024】
本発明の主題は、更に、本発明による方法により得られた変性された表面を有するウィンドワイパー用のワイパーブレードである。これは、ワイパーブレードの材料がオレフィン系炭素−炭素二重結合を有するエラストマーを有し、このエラストマーの表面の少なくとも一部がオゾンで処理されたワイパーブレードである。表面にオゾンを作用させるワイパーブレードの部分は、その作用の間に高くても、オゾン作用のために臨界のエラストマーの伸び限度にまで伸張される。このようなワイパーブレードの利点は既に上記されている。本発明の場合に、本発明による方法の記載された実施態様による方法によって表面が変性されたワイパーブレードも含まれる。
【0025】
本発明によるワイパーブレードの実施態様の場合には、エラストマー表面が≧0.1μm〜≦20μmの深さまでオゾンにより変性される。この深さは、≧0.5μm〜≦15μm又は≧1μm〜≦10μmの範囲内にあることもできる。「深さ」とは、この場合にワイパーブレードの表面に対して垂直方向の深さであると解釈される。このエラストマーの変性は記載された深さで本発明による方法により達成することができる。表面は所望の特性を有し、エラストマーの材料は更に当初の特性を有する変性深さが有利である。
【0026】
本発明によるワイパーブレードの他の実施態様の場合には、ワイパーブレードの材料は、エチレン−プロピレン−ジエン−エラストマー、クロロ−ブタジエン−エラストマー、天然ゴム、イソプレン−エラストマー、ブタジエン−エラストマー、スチレン−ブタジエン−エラストマー、アクリルニトリル−ブタジエン−エラストマー及び/又はアクリルニトリル−ブタジエン−エラストマーとポリ塩化ビニルとの混合物を有するグループから選択されるエラストマーを有する。上記のエラストマーは、EPDM、CR、NR、IR、SBR、NBR及びNBR/PVCの省略形でも公知であり、かつオゾンとの反応のために適した炭素−炭素二重結合を有する。オゾンによるこの反応生成物は、本発明の場合に有利な特性を有する。
【0027】
同様に、本発明の主題は、ウィンドワイパー用のワイパーブレードとしての、変性された表面を有するエラストマーのストランド形の異形材の使用でもあり、この場合、変性された表面は、人工的に製造されたガス状のオゾンを少なくともエラストマー表面の一部に作用させ、その際、表面にオゾンが作用されるこの異形材の部分は、この作用の間に高くても、オゾン作用のために臨界のエラストマーの伸び限度にまで伸張されることにより得られる。
【0028】
本発明の場合に、ウィンドワイパー用のワイパーブレードとしての、エラストマー表面の変性が本発明による方法の記載された実施態様の相応する適用で又は上記の伸び限度により行われた、変性された表面を有するエラストマーのストランド形の異形材の使用も含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーブレードの材料がオレフィン系炭素−炭素二重結合を有するエラストマーを有する、ウィンドワイパー用のワイパーブレードの表面を変性する方法において、人工的に製造されたガス状のオゾンを前記エラストマーの表面の少なくとも一部に作用させ、かつオゾンが表面に作用するワイパーブレードの部分を、前記作用の間に高くても、オゾン作用のための臨界の前記エラストマーの伸び限度にまで伸張させることを特徴とする、ウィンドワイパー用のワイパーブレードの表面を変性する方法。
【請求項2】
気相中でのオゾンの濃度は≧9pphm〜≦220pphmの範囲内にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
オゾンを≧1分〜≦60分の期間で前記エラストマー表面に作用させる、請求項2又は3記載の方法。
【請求項4】
オゾンの作用を、≧45%〜≦65%の相対空気湿度で実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
オゾンの作用を、≧20℃〜≦40℃の温度で実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ワイパーブレードをオゾンの作用の前に≧4時間〜≦24時間の期間で、オゾンの作用が行われる温度及び相対空気湿度で貯蔵する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
変性された表面を、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により得ることを特徴とする、変性された表面を有するウィンドワイパー用のワイパーブレード。
【請求項8】
エラストマー表面が、オゾンにより≧0.1μm〜≦20μmの深さまで変性されている、請求項7記載のワイパーブレード。
【請求項9】
前記ワイパーブレードの材料は、エチレン−プロピレン−ジエン−エラストマー、クロロ−ブタジエン−エラストマー、天然ゴム、イソプレン−エラストマー、ブタジエン−エラストマー、スチレン−ブタジエン−エラストマー、アクリルニトリル−ブタジエン−エラストマー及び/又はアクリルニトリル−ブタジエン−エラストマーとポリ塩化ビニルとの混合物を有するグループから選択されるエラストマーを有する、請求項7又は8記載のワイパーブレード。
【請求項10】
ウィンドワイパー用のワイパーブレードとしての、変性された表面を有するエラストマーのストランド形の異形材の使用において、前記変性された表面は、人工的に製造されたガス状のオゾンを少なくとも前記エラストマー表面の一部に作用させ、かつ表面にオゾンが作用されるこの異形材の前記部分は、前記作用の間に高くても、オゾン作用のために臨界のエラストマーの伸び限度にまで伸張されることにより得られることを特徴とする、変性された表面を有するエラストマーのストランド形の異形材の使用。

【公表番号】特表2011−526860(P2011−526860A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517067(P2011−517067)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057594
【国際公開番号】WO2010/003798
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】