説明

オゾンストレス付与酵母溶解物を含有するパーソナルケア用組成物

本発明は、オゾンストレス付与酵母溶解物、並びにオゾンストレス付与酵母溶解物と、アルコール、グリコール、パラベン、ヒダントイン、4級窒素含有化合物、イソチアゾリノン、アルデヒド解除剤、及びハロゲン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の保存料とを含有するパーソナルケア用組成物に関する。本発明はまた、上記オゾンストレス付与酵母溶解物及び上記パーソナルケア用組成物の調製方法及び使用方法に関する。(図1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にパーソナルケア用組成物、及びより詳細にはオゾンストレス付与酵母溶解物を含有するこのような組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、ますます皮膚細胞への有害物質として認識されるようになってきている。オゾンは、脂質、タンパク質、核酸及び糖質に影響を及ぼしうるが、皮膚細胞にある重要な抗酸化物質には特に過酷である。損傷は、皮膚の表層で最も過酷であると思われ、より深い真皮層及び表皮層を調べるに従って減少する。雷などの多くの自然源により生成されるオゾンは、化石燃料の燃焼、及び特に都市のスモッグの主因である自動車からの排気など、様々な産業発生源によっても生成される。オゾンは、次の実験式に見られるように、反応性酸素ラジカルが酸素ガスと結合して3モルの酸素を含有する分子を形成するときに形成される。
+O→O
【0003】
とりわけ、オゾンが角質層の上層中のビタミンC及びEの量を減少させ、且つ角質層の二重層中の重要な脂質を酸化することは現在一般的に認識されている。さらに、オゾンは、タンパク質及び核酸の損傷にもかかわっている。Thiele,JJ.他、「オゾンへのインビボ曝露がマウス表皮層中のビタミンC及びEを激減し脂質の過酸化を誘発する(In−Vivo Exposure to Ozone Depletes Vitamins C and E and Induces Lipid Peroxidation in Epidermal Layers of Murine Skin)」Free Rad.Biol.Med.23、385〜391頁(1997年)。ビタミンC及びEは、オゾンによる皮膚の深層の破壊に対する重要な防護機構を提供する重要な天然の抗酸化物質である。上記脂質二重層は、人体の内部と外部要因の間の最重要な身体的障壁である。この脂質二重層の劣化は、経表皮水分喪失を増大し皮膚の乾燥及びひび割れをもたらす。オゾンストレスのヒト皮膚及びヒト擬似皮膚への影響の測定方法が、Cotovio,J.他、「ヒト皮膚モデルにおけるインビトロオゾン曝露後の酸化ストレスの発生(Generation of oxidative stress in human cutaneous models following in−vitro ozone exposure)」、15、357〜362頁(2001年)及びWeber,SU.他、「マウス皮膚中の親水性及び親油性抗酸化物質のオゾンに誘発された消耗の高速液体クロマトグラフ分析(High−Performance Liquid Chromatography Analysis of Ozone−Induced Depletion of Hydrophilic and Lipophilic Antioxidants in Murine Skin)」、Method Enzy.、319、536〜546頁(2000年)に開示されている。さらに、メラニンは、以前はオゾンによる劣化の標的であることが明らかにされていなかった皮膚及び毛髪中にある、重要な光防護色素である。オゾンが攻撃しうる他の重要な皮膚脂質には、皮膚の脂質二重層を構成する、コレステロール、コレステロールエステル、遊離脂肪酸及びセラミドが含まれる。
【0004】
核酸の損傷は、重要な皮膚細胞の細胞突然変異及びアポトーシスをもたらしうる。このような皮膚細胞には、それだけには限らないが、皮膚の表面にある、繊維芽細胞、ケラチン生成細胞、皮膚乳頭、メラニン細胞、マクロファージ、角質細胞、ランゲルハンス細胞、好中球、含脂肪細胞、脂腺細胞、及び神経細胞が含まれる。同様に、オゾンは皮膚中の細胞外基質及び天然保湿成分を含有するタンパク質及び糖質を劣化しうる。
【0005】
人体、及び特に皮膚をオゾンの損傷効果から防護する化粧品の使用は知られている。例えば、1985年10月に公開された特開昭60−215609号は、皮膚をオゾンから防護するためのメラノイジンの使用を開示している。2000年6月に公開された欧州特許第1108419号は、皮膚を防護するための局所適用のヘスペレチン及びクルクミン誘導体の組合せの使用を開示している。2000年10月に公開された国際公開第0059462号は、大気中の増加したオゾン濃度により引き起こされる損傷から皮膚を防護するための、オキシドレダクターゼ及びプロテイナーゼ阻害剤の組合せの使用を開示している。同様に、2002年1月に公開された国際公開第0202075号は、オゾンに誘発された皮膚病変及び炎症の病徴又は変性皮膚状態の予防法としての、クレアチン及びクレアチン誘導体の使用を開示している。
【0006】
人間の皮膚細胞と同様に、酵母はオゾンの存在に感応する。高濃度のオゾンは一般的に酵母に致命的である。しかし、より低濃度のオゾンは致命的でないばかりか、酵母がグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を含めたある種のタンパク質の産生を増加するように影響を及ぼすかもしれないことが示唆されていた。GAPDHは、グルコース細胞酵素経路(glucose cellular enzymatic pathways)の部分としての、人間の皮膚中でのグリセルアルデヒド−3−リン酸の1,3−ジホスホグリセレートへの酸化的な転換に関与する、重要な「ハウスキーパー」酵素である。GAPDHの酵素活性が、酸化的なストレス及び紫外線により影響されることは周知である。Hinze,H他、「サッカロミセスセレヴィシエ(Saccharornyces cerevisiae)のATP、サイトゾル酵素及び透水性に対するオゾンの影響(Effect of Ozone on ATP,cytosolic enzymes and permeability of Saccharomyces cerevisiae)」、Arch Microbiol.147、105〜108頁1987年。
【0007】
酵母及びその誘導体の使用は、局所用化粧品及び治療用途において極めてよく知られるようになった。例えば、活性酵母溶解物は、何年にもわたってパーソナルケア業界で市販されている。歴史的に、これらの製品は、組織酸素摂取の活性剤として市販されてきた。ストレス付与酵母溶解物が、増殖中の細胞を刺激してその酸素消費量を増加させることが見出された。さらに、酵母組織呼吸因子(yeast tissue respiratory factor)が、皮膚中のコラーゲン産生も刺激することが発見された。
【0008】
例えば、1941年4月に公開された米国特許第2239345号は、酵母に由来する成分の応用による、生きた酵母細胞中の酸素摂取量の改良方法を開示している。1991年10月に公開された米国特許第5057320号は、生きた哺乳類の皮膚細胞中で酸素摂取量を増加させる、ピコリン酸含有の酵母組成物を開示している。さらに、1996年5月に公開された米国特許第5514591号は、酵母抽出物の人間の皮膚細胞中の酸素摂取量を刺激する能力の改良された測定法を開示している。人間の皮膚細胞中の酸素摂取量を増加させる過去の試みにもかかわらず、皮膚のためのオゾン防護の必要性に直接取り組む解決策は皆無である。
【0009】
したがって、当分野で必要とされるものは、それだけには限らないが核酸、細胞外基質タンパク質、ビタミンリザバー(vitamin reservoir)などを含む、皮膚細胞及び皮膚細胞成分にオゾン防護を提供する製品である。
【0010】
パン酵母としてより一般的に知られるサッカロミセスセレヴィシエが、熱衝撃、オゾン、過酸化物及び紫外線などの増殖ストレスに良好に反応することが驚くべきことに見出された。驚くべきことに、ストレスが酵母中のストレス感応物質、又は防護性細胞成分の増加した産生を提供する。これらのストレス感応物質は、人間の皮膚細胞に治療的効果を有する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、増殖中の酵母をオゾンストレス付与酵母を産生するのに十分なオゾン濃度に曝露するステップ;オゾンストレス付与酵母を溶解して水溶性及び不水溶性成分を含有するオゾンストレス付与酵母溶解物を作製するステップ;及び不水溶性成分から水溶性成分を分離して水溶性成分を含有するオゾンストレス付与酵母溶解物を作製するステップを含む方法によって作製されるオゾンストレス付与酵母溶解物に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、オゾンストレス付与酵母溶解物及び保存料を含み、ここでその保存料は、アルコール類、グリコール類、パラベン類、ヒダントイン類、4級窒素含有化合物、イソチアゾリノン類、アルデヒド解除剤、ハロゲン化合物、及びそれらの組合せからなる群から選択されるパーソナルケア用組成物に関する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、上記のオゾンストレス付与酵母溶解物を含有する皮膚の局所処理用組成物及び皮膚への塗布に化粧品用に許容される賦形剤に関する。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、皮膚細胞に使用されたときに、オゾンにより誘発された皮膚劣化の減少又は最小化に有効な、オゾンストレス付与酵母溶解物を含有するパーソナルケア用組成物の調製方法に関する。この方法は、発酵培養液中で酵母を培養するステップ;約5分から約72時間の間、発酵培養液の全量に対して約0.0001ミリモル(mM)から約1.0ミリモル(mM)のオゾン濃度を有する通気ガスを用いて酵母に通気することにより酵母をオゾンに曝露してオゾンストレス付与酵母を産生するステップ;このオゾンストレス付与酵母を溶解してオゾンストレス付与酵母溶解物を作製するステップ;及びこのオゾンストレス付与酵母溶解物をパーソナルケア用組成物中に混合するステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のオゾンストレス付与酵母溶解物が、当分野の技術者に周知の標準の発酵プロセスにより得られた。本発明のために定義される酵母溶解物は、栄養培地で増殖させ、続いて、それだけには限らないがニュートリエントブロス、細胞タンパク質物質、細胞核物質、細胞質物質、細胞原形質物質及び/又は細胞壁成分を含む細胞酵母成分を含む産生物を提供するように死滅させる酵母に由来する組成物である。一般的に、酵母溶解物は本来水溶性である。本開示のために、水溶性とは、1gの水中に溶解した0.1gの酵母成分を意味する。本発明のために定義されるオゾンストレス付与酵母は、別に「オゾン処理」と呼ばれる、オゾンへの曝露を受けた酵母である。オゾンストレス付与酵母溶解物は、オゾンストレス付与酵母の溶解物である。本明細書では、「酵母」という用語は、1個の酵母細胞、複数の酵母細胞、及び/又は酵母細胞の培養物を意味する。
【0016】
本発明の酵母は、それだけには限らないが、アースロアスカス(Arthroascus)、オーレオバシジウム(Aureobasidium)、ボトリオアスクス(Botryoascus)、ブレタノマイセス(Brettanomyces)、カンジダ(Candida)、シテロマイセス(Citeromyces)、クラビスポラ(Clavispora)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、デバリオミセス(Debaryomyces)、デッケラ(Dekkera)、フィロバシディウム(Filobasidium)、ガイラーモンデラ(Guilliermondella)、ハンゼヌラ(Hansenula)、ハンセニアスポラ(Haneseniaspora)、ホルモアスカス(Hormoascus)、クロッケラ(Klockera)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ロイコスポリディウム(Leucosporidium)、リポマイセス(Lipomyces)、マラセジア(Malassezia)、メシェニコビア(Metschnikowia)、ナドソニア(Nadsonia)、ネマトスポラ(Nematospora)、オオスポリディウム(Oosporidium)、パシゾレン(Pachysolen)、パキチコスポラ(Pachytichospora)、ペニシリウム(Penicillium)、ピヒア(Pichia)、プロトテカ(Prototheca)、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)、ロードトルラ(Rhodotorula)、サッカロミセス(Saccharomyces)、サッカロミコデス(Saccharomycodes)、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyce)、シュワニオミセス(Schwanniomyces)、スポロボロミセス(Sporobolomyces)、スポロパキデルミア(Sporopachydermia)、トレメラ(Tremella)、トリコスポロン(Trichosporan)、トリゴノプシス(Trigonopsis)、トルラスポラ(Torulaspora)、トルロプシス(Torulopsis)、ウイリオプシス(Williopsis)、ヤロウィア(Yarrowia)、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)を含めた当分野の技術者に周知の様々な属のものでよい。好ましくは、酵母はサッカロミセス属からのものである。一般的に、酵母はパン酵母としても知られるサッカロミセスセレヴィシエである。
【0017】
酵母は、ペプトン及び他の一般的な培養基成分を有する培養基で培養される。「酵母発酵培地」と呼ばれる好ましい培養基の一例を、CRC Pressより出版された「Handbook of Microbiological Media」中に見出すことができる。
【0018】
酵母の培養方法は、当分野の技術者に周知である。一般的に言えば、開放空気の発酵容器中、又は米国、ニュージャージー州、Edison市、New Brunswick Scientificから市販の密閉された生物学的発酵装置を用いることにより酵母は容易に培養することができる。
【0019】
酵母のオゾン処理に使用される市販のオゾン発生装置は、例えばドイツ、Uetze−Eltze市、Erwin Sander Elektroapparatebau GmbHにおいて見出すことができる。好ましくは、Sanderからのオゾン発生装置Model IVが使用される。殆どの環境において、オゾン検知装置が、オゾン発生装置の他に使用される。適切なオゾン検知装置は、米国、カルフォルニア州、Glandale市、Dasibiから市販されている。
【0020】
本発明のオゾンストレス付与酵母を産生するためには、酵母を有効量のオゾンを含有する環境において培養する。サッカロミセスセレヴィシエは、30℃で通気を用いて培養する。有効量のオゾンは、酵母に感応を生じさせるのに十分でありながら、半致命的である量である。半致命的とは、オゾンに曝露後に少なくとも1%の酵母が生存することを意味する。したがって、酵母に適用されるオゾン量は、少なくとも1%が生存できるようにすべきである。しかし、酵母に適用されるオゾン量は、酵母の少なくとも10%がこの処理を生存できるようにしてもよい。別の実施形態においては、酵母に適用されるオゾン量は、酵母の少なくとも50%がこの処理を生存できるようにすべきである。さらなる実施形態においては、酵母に適用されるオゾン量は、酵母の少なくとも80%がこの処理を生存できるようにすべきである。
【0021】
オゾンは、酵母をオゾンに曝露するのに有効な任意の方法で酵母に導入することができる。例えば、オゾンは、オゾン及び空気又は酸素のいずれかを含有する通気ガスにより酵母に導入することができる。通気ガスは、通常約15℃から約90℃の温度である。
【0022】
酵母は、皮膚細胞成分の劣化に対して有効な細胞成分を産生したことのある、最大量の酵母を得るのに十分な濃度のオゾンに十分な時間曝露される。酵母は、酵母のタイプ、オゾン濃度、通気速度、温度などに応じて数分から数日オゾンに曝露される。一般的に、酵母は、約0.0001ミリモル(mM)から1.0mMのオゾン濃度に5分から72時間曝露される。別の実施例においては、酵母は、約0.01mMから0.8mMのオゾン濃度に約10分から約60時間曝露される。別の実施例においては、酵母は、約0.1mMから0.5mMのオゾン濃度に約15分から約30分曝露される。
【0023】
実例的には、酵母がより長い時間オゾンに曝露されるときには、酵母はより低濃度のオゾンに曝露されることが適切である。別法として、酵母がより短時間オゾンに曝露されるときには、酵母はより高濃度のオゾンに曝露されることが適切である。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、オゾンストレス付与酵母は、オゾンの有害な影響に対抗する防護物質を産生することによりオゾンの存在に感応することが示唆される。
【0024】
オゾンストレス付与酵母を、次いで溶解してオゾンストレス付与酵母溶解物を得る。酵母は、それだけには限らないが酵素、高速度攪拌、培養基の変化、自己分解又はpHの変化を含めた、当分野の技術者に周知の様々な方法により溶解することができる。オゾンストレス付与酵母溶解物は、一般的に水溶性及び不水溶性成分を含有する。不水溶性成分は、水溶性成分から分離することができる。
【0025】
オゾンストレス付与酵母溶解物は、細胞体、悪臭及び他の望ましくない材料を除去するために、ろ過し精製することができる。オゾンストレス付与酵母溶解物は、化粧品用途に適しているかを決定するために試験される。好ましくは、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を実施し、オゾンストレス付与酵母溶解物中に存在するタンパク質が定量される。
【0026】
いかなる理論によっても束縛されることを望むものではないが、オゾンストレス付与酵母は、オゾンの有害な影響に対抗することができる防護物質又は細胞成分を産生することによりオゾンの存在に感応することが示唆される。酵母遺伝子マイクロアレイを行って酵母中のどの遺伝子がオゾン処理の結果としてアップレギュレート又はダウンレギュレートされたかを決定することにより、どのタンパク質がオゾンストレス付与酵母により産生されたかを決定することが可能である。酵母遺伝子マイクロアレイの使用により、過酸化水素、UV及びオゾンなど、様々なストレスが酵母に付与されたときに、酵母に生じる変化の比較が可能になる。酵母遺伝子マイクロアレイは、これらのストレスが持ちうる、培養酵母を刺激することにより発現されたタンパク質の違いを決定するのに有用である。サッカロミセスセレヴィシエ遺伝子マイクロアレイチップは、MWG Biotech(米国、ノースカロライナ州、High Point市)から市販されている。
【0027】
オゾンストレス付与酵母溶解物は、それだけには限らないが、クロマトグラフィー、水蒸気蒸留、溶媒抽出、遠心分離、デカンテーション、ろ過、又は炭素処理を含めた、当分野の技術者に周知の任意のいくつかの方法によりさらに精製することができる。本発明の溶解物は、それだけには限らないが、蒸発、噴霧乾燥、凍結乾燥、水蒸気蒸留、ベルト又はドラム乾燥を含めた、当分野の技術者に周知の任意の方法によりさらに精製することができる。
【0028】
オゾンストレス付与酵母溶解物は、パーソナルケア用組成物に使用することができる。このようなパーソナルケア用組成物は、皮膚細胞にオゾンへの曝露に関係したオゾン汚染又は皮膚細胞成分劣化からの防護を提供することができる。具体的には、オゾンストレス付与酵母溶解物の添加は、皮膚細胞のオゾンへの曝露で生じるビタミンC及びE、DNA、RNA及び二重層脂質の分解を抑制することができる。本発明のパーソナルケア用組成物は、有効量のオゾンストレス付与酵母溶解物及びアルコール、グリコール、パラベン、4級窒素含有化合物、イソチアゾリノン、アルデヒド解除剤、酸化防止剤及びハロゲン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の保存料を含有することができる。実例となるアルコールには、フェノキシエタノール、イソプロピルアルコール、及びベンジルアルコールが含まれ;実例となるグリコールには、プロピレン、ブチレン、及びペンチレングリコールが含まれ;実例となるパラベン(パラヒドロキシ安息香酸としても知られる)には、メチル、プロピル及びブチルパラベンが含まれ;実例となる4級窒素含有化合物には、ベンズアルコニウムクロリド、及びクオータニウム15が含まれ;実例となるイソチアゾリノンには、メチルイソチアゾリノン及びメチルクロロイソチアゾリノンが含まれ;実例となるアルデヒド解除剤には、DMDMヒダントイン、イミダゾリジニルウレア及びジアゾリジニルウレアが含まれ;実例となる酸化防止剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン及びトコフェロールが含まれ、実例となるハロゲン化合物には、トリクロサン、及びクロロヘキシジンジグルコネートが含まれる。本発明の目的に有用な保存料の例は、例えばSteinberg,D.、「Frequency of Use of Preservatives 2001」、Cosmet.Toilet.117、41〜44頁、(2002年)及び「Preservative Encyclopedia」、Cosmet.Toilet.117、80〜96頁(2002年)に見出すことができる。
【0029】
有効量のオゾンストレス付与酵母溶解物は、皮膚細胞にオゾンへの曝露からの十分な防護を提供する量のオゾンストレス付与酵母溶解物である。パーソナルケア用組成物において、環境に存在するオゾンに曝露された皮膚細胞の少なくとも一部に、オゾンによる損傷に対する効力を与えるのに十分な濃度の、オゾンストレス付与酵母溶解物を利用することにより十分な防護を提供することができる。有効量のオゾンストレス付与酵母溶解物は、オゾンストレス付与酵母溶解物をパーソナルケア用組成物に混合することにより提供される。
【0030】
好ましくは、オゾンストレス付与酵母溶解物の量は、パーソナルケア用組成物中にパーソナルケア製品の重量に対して0.001%から100%存在する。より好ましくは、オゾンストレス付与酵母溶解物の量は、パーソナルケア用組成物中にパーソナルケア組成物の合計重量に対して約0.01%から約50%存在する。別法として、オゾンストレス付与酵母溶解物の量は、パーソナルケア用組成物中にパーソナルケア組成物の合計重量に対して約1%から約10%存在しうる。
【0031】
さらに、パーソナルケア用組成物は、場合によっては水、界面活性剤、乳化剤、コンディショナー、皮膚軟化剤、ワックス、油、ポリマー、増粘剤、固定剤、着色剤、保湿剤、モイスチャライザー、安定剤、希釈剤、溶剤、香料などの他の機能成分、並びに例えば植物性薬品、栄養補給食品、薬用化粧品、治療薬、医薬、抗真菌剤、抗菌剤、ステロイド性ホルモン、ふけ予防剤、にきび抑制成分、日焼け止め剤、保存料などの活性成分を含有しうる。
【0032】
オゾンストレス付与酵母溶解物は、それだけには限らないがローション、軟膏、クリーム、スプレー、スプリッツ(spritze)、水性又は水性アルコール混合物、ゲル、ムース、貼付剤、パッド、パック、ウエットクロス及びウエットティッシュ、ソリッドスティック(solid stick)、クリヤースティック(clear stick)、口紅、エアロゾルクリーム(aerosol cream)、無水粉末(anhydrous powder)、タルク、トニック、油、乳化剤、及びバスソルトを含めた様々なタイプの化粧品処方物中に使用することができる。このような化粧品処方物は、皮膚の局所処理剤として使用することができる。
【0033】
本発明のオゾンストレス付与酵母溶解物は、単独の溶解物を含むことがあり、或いはそれらは当分野の技術者に周知の様々な化学薬品の送達賦形剤中にカプセル化した酵母溶解物を含むこともある。このような化粧品用に許容される送達賦形剤には、それだけには限らないがリポソーム、ニオソーム(niosome)、サブミクロン乳化剤、ポリマー性カプセル材料、ゲル、クリーム、ローション、及びそれらの組合せが含まれる。
【0034】
以下の実施例は、本発明の技術を例示するためであり、特許請求の範囲の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0035】
培養されたサッカロミセスからの酵母溶解物の実施例
微生物及び培地
本研究に使用された微生物は、S.セレヴィシエ(Red Star baker’s yeast)であった。保存培養物は、酵母ペプチドデキストロース(YPD)寒天斜面(Difco)で維持した。使用培養物は、YPD培養液中で4℃で維持した。発酵は、10g/L酵母抽出物、8g/L NHSO、3g/L KHPO、2g/L MgSO、及び0.5mL/L Antifoam Aを含有する培地で実施した。別段の記載のないかぎり、発酵の使用体積は2リットル(L)であった。
【0036】
生物反応器
自動pH、温度、攪拌、溶存酸素(DO)及び消泡制御(antifoam control)を備えたNew Brunswick Bioflo 110卓上生物反応器(米国、ニュージャージー州、Edison市)を使用した。この2L容器に、空気取入及び排出ポート、アルカリ及び培地添加ポート、及び溶出液サイドポートを据え付けた。4モルNaOH及び/又は4モルHSOを添加することにより、培地pHを5.5に保った。通気を、1vvm(空気体積/発酵槽の作業体積/分)で保ち、DOレベルはカスケーディング(cascading)により攪拌まで60%に保った。この発酵装置に、250g/Lのグルコース溶液を毎時1.2mLの速度で供給した。
【0037】
オゾン
オゾンは、精製された特に乾燥した空気からオゾン発生装置(米国、ニュージャージー州、Elmwood Park市、Ozonia、Model Lab2B)により発生させた。入口空気流速を、毎分0.5Lで保った。オゾン発生装置は、毎時0.5gのオゾンを発生するように設定した。オゾン発生装置からのオゾン−空気流は、毎分1.5Lの空気と混合された。オゾン及び空気(0.5部/1.5部)の混合物を、発酵培地中に通気した。インジゴ色素(図1参照)及び/又は258nmの周波数のオゾンを示すUV分光法を用いて、オゾン濃度を測定した。オゾンを用いた全ての実験作業は、ドラフト下で実施した。活性炭カラムが余剰オゾンを吸収した。
【0038】
ストレス条件
48時間の発酵(1.0×10細胞/mL)後のS.セレヴィシエの細胞をオゾンで処理した。空気及びオゾンの混合物(1.5部/0.5部)を、15分間及び45分間、発酵培養液に通気した。細胞を、処理前及び処理後に集めた。オゾン濃度は、およそ0.01mg/L(0.002mM)に保った。次の酵母溶解物のサンプルは、非処理(A)、15分(B)、及び45分(C)であった。
【0039】
酵母溶解物の調製
1.0×10細胞/mLにおける48時間後の発酵培養液から、分析試験用のS.セレヴィシエのサンプルを採取した。45ミリリットル(mL)の培養物サンプルを遠心分離機(15000rpmで10分間)にかけ蒸留水で洗浄した。この沈殿物をpH7の10mMリン酸緩衝液45mL中に再懸濁し、フェニルメチルスルホニルフルオライド(米国、ミズーリ州、セントルイス市、Sigma Chemical Co.)を追加して1mMとし、ペプスタチンA(Sigma)を追加して10μMの濃度とした。45mLのガラスビーズ(米国、Biospec Products、0.5mm直径)を、細胞懸濁液に添加した。この懸濁液を90mLの容器中に入れ、Beadbeater(Biospec Products)にはめ込み、均一化速度で3分間振とうした。サンプルチャンバーを、均一化ステップの間は氷浴で冷却した。サンプルのタンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ(Sigma)により定量した。各溶解物のサンプルは下記のとおり分析した。
【0040】
酵母タンパク質発現へのオゾンストレスの影響
二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動法
二次元電気泳動法が、Kendrick Labs,Inc.(Madison,WI)によりO’Farrellの方法(J.Biol.Chem.250:4007〜4021頁、1975年)に従って次のとおり実施された。等電点電気泳動法が、内径2.0mmのガラス管中でpH4〜8、2.0%アンフォライン(米国、ニューヨーク州、Garden City市、Gallard Schlesinger Industries)を用いて9600ボルト時(volt−hr)の間実施された。IEF内部標準のトロポマイシン(tropomycin)50ナノグラムが各サンプルに添加された。トロポマイシンは、類似のpI(イオン電荷)の2つのポリペプチドスポットを示し;分子量33,000及びpI5.2のより低いスポットが染色ゲル上に矢印でマークされた。この組のアンフォライン用のチューブゲルpHグラジエントプロットが、表面pH電極を用いて測定された。
【0041】
緩衝液「0」(10%グリセロール、50mmジチオトレイトール、2.3%SDS及び0.062Mトリス、pH6.8)において10分間の平衡の後、12%アクリルアミドスラブゲル(厚さ0.75mm)の上にある濃縮用ゲルの上に各チューブゲルがシールされた。SDSスラブゲル電気泳動法が4時間12.5mA/ゲルで実施された。Sigmaからのミオシン(220,000)、ホスホリラーゼA(94,000)、カタラーゼ(60,000)、アクチン(43,000)、炭酸脱水酵素(29,000)、及びリゾチーム(14,000)のタンパク質が、分子量標準としてチューブゲルをスラブゲルにシールしたアガロースに添加された。これらの標準は、銀染色された12%アクリルアミドスラブゲルのベーシックエッジ(basic edge)に沿って現れる。
【0042】
限定されたコンピューター利用による比較
二組のゲルが上記のように二次元の手順により得られた。各組からの1つのゲルが、レーザー濃度計(Model PDSI、米国、カルフォルニア州、Sunnyvale市、Molecular Dynamics Inc.)で走査された。このスキャナーは、走査の前に較正したNeutral Density Filter Set(米国、カルフォアルニア州、Irvine市、Melles Griot)を用いて直線性を確かめられた。これらの画像は、全ての主要なスポット及び全ての変化スポットが、輪郭が描かれ、定量化され、すべてのゲルに照合されるようにProgenesis Discovery software(version 2003.3,Nonlinear Technology)を用いて分析された。これらの組のためのコンピューター利用の分析の一般的方法には、スポット検知及び照合機能の詳細な手動確認と共に、自動スポット検知及び定量、自動背景控除(Progenesisアルゴリズム)及び自動スポット照合が含まれていた。
【0043】
コンピューター利用の比較の結果は、非処理サンプル対15分オゾン処理、及び非処理対45分オゾン処理サンプルのポリペプチドの倍増加又は減少(差異)で得られる。差異は、スポット百分率(全ての測定スポットの合計密度で割った個々のスポット密度)から算出される。3倍以上の差異の増加した(アップレギュレートされた)及び減少した(ダウンレギュレートされた)ポリペプチドスポットが考慮された。
【0044】
二次元ゲル電気泳動法のための「アップレギュレートされた」という用語は、タンパク質が過剰発現されたことを意味するが、「ダウンレギュレートされた」という用語は、タンパク質が過少発現されたことを意味する。
【0045】
表の要約
表1 非処理酵母溶解物中にのみ存在し15分間のオゾン処理をした酵母溶解物中に存在しないタンパク質の一覧。
表2 15分間のオゾン処理をした酵母溶解物中にのみ存在し非処理酵母溶解物中に存在しないタンパク質の一覧。
表3 15分間のオゾンストレス付与酵母溶解物中でアップレギュレート(即ち、存在し増加した)したが非処理酵母溶解物中で増加しなかったタンパク質の一覧。
表4 15分間のオゾンストレス付与酵母溶解物中でダウンレギュレート(即ち、存在し減少した)したが非処理酵母溶解物中で減少しなかったタンパク質の一覧。
表5 非処理酵母溶解物中にのみ存在するが45分間のオゾン処理をした酵母溶解物中に存在しないタンパク質の一覧。
表6 45分間のオゾン処理をした酵母溶解物中にのみ存在するが非処理酵母溶解物中に存在しないタンパク質の一覧。
表7 45分間のオゾンストレス付与酵母溶解物中でアップレギュレート(即ち、存在し増加した)したが非処理酵母溶解物中で増加しなかったタンパク質の一覧。
表8 45分間のオゾンストレス付与酵母溶解物中でダウンレギュレート(即ち、存在するが減少した)したが非処理酵母溶解物中で減少しなかったタンパク質の一覧。
【0046】
表1 下表は、非処理サンプル中にのみ存在したタンパク質の分子量(MW)、pI(イオン電荷)及びスポット番号を示している。これらのタンパク質は、15分間のオゾン処理をしたサンプル中に存在しなかった。したがって、下表に示された4種のタンパク質は、15分間のオゾン処理により排除された。(nd=検知されず)
【表1】

【0047】
表2 下表は、15分間のオゾン処理をしたサンプル中にのみ存在したタンパク質の分子量、pI及びスポット番号を示している。これらのタンパク質は、非処理サンプル中に存在しなかった。したがって、下表に示された9種のタンパク質は、15分間のオゾン処理により誘発された。(nd=検知されず)。
【表2】

【0048】
表3 下表は、15分間のオゾン処理をしたサンプル中で増加したタンパク質の分子量、pI及びスポット番号を示している。これらのタンパク質は、非処理サンプル中で増加しなかった。したがって、下表に示された6種のタンパク質は、15分間のオゾン処理により増加又はアップレギュレートされた。
【表3】

【0049】
表4 下表は、15分間のオゾン処理をしたサンプル中で減少したタンパク質の分子量、pI及びスポット番号を示している。これらのタンパク質は、非処理サンプル中で減少しなかった。したがって、下表に示された2種のタンパク質は、15分間のオゾン処理により減少又はダウンレギュレートされた。
【表4】

【0050】
表5 下表は、45分間のオゾン処理をしたサンプルではなく非処理サンプル中にのみ存在するタンパク質の分子量、pI及びスポット番号を示している。13種のタンパク質は、45分間のオゾン処理により消滅した。(nd=検知されず)。
【表5】

【0051】
表6 下表は、45分間のオゾン処理をしたサンプル中にのみ存在したタンパク質の分子量、pI及びスポット番号を示している。これらのタンパク質は、非処理サンプル中に存在しなかった。したがって、下表に示された6種のタンパク質は、45分間のオゾン処理により誘発された。(nd=検知されず)。
【表6】

【0052】
表7 下表は、45分間のオゾン処理をしたサンプル中で増加したタンパク質の分子量、pI及びスポット番号を示している。これらのタンパク質は、非処理サンプル中で増加しなかった。したがって、下表に示された7種のタンパク質は、45分間のオゾン処理により増加又はアップレギュレートされた。
【表7】

【0053】
表8 下表は、45分間のオゾン処理をしたサンプル中で減少したタンパク質の分子量、pI及びスポット番号を示している。これらのタンパク質は、非処理サンプル中で減少しなかった。したがって、下表に示された8種のタンパク質は、45分間のオゾン処理により減少又はダウンレギュレートされた。
【表8】

【実施例2】
【0054】
酵母遺伝子マイクロアレイ解析:遺伝子発現に対するオゾンの影響と過酸化水素の影響の比較
酵母が過酸化水素に感応するのに比べてオゾンが酵母に異なる感応を生じさせるかを測定するために、酵母をオゾン又は過酸化水素のいずれかに同じ時間だけ曝露した。次いで、処理の結果どの遺伝子がアップレギュレートされ、どれがダウンレギュレートされたかを測定するために、酵母をマイクロアレイ解析にかけた。次の試験プロトコルをこの研究に用いた。
【0055】
酵母細胞培養及び処理
S.セレヴィシエの細胞培養物を、上により詳細に記載のとおり培養した。処理後の所望の時間において、酵母培養物の3〜6mlのアリコットを得て、細胞密度を600nmにおいて分光光度法で測定した。1から2の光学濃度(OD)を有する培養物サンプルを、この範囲内にするために必要な培地で希釈し、アリコットの最終体積を記録した。アリコットを、次いで遠心分離機にかけて酵母細胞をペレットにした。遠心分離後、この上澄み液を廃棄した。このペレットを、元の培養物体積(遠心分離前に記録された体積)の1ml当たり100μlの溶解緩衝液の割合を用いて、溶解緩衝液中に再懸濁させた。追加の約200μlの0.4〜0.5mmガラスビーズを、溶解手順を助けるために添加した。
【0056】
酵母細胞は溶解するのが難しいため、核酸が放出されているかを確認するためにプロセスをモニターすることが必要であった。サンプルを簡単に混合後、最初の2μlのアリコットを採取しヌクレアーゼを含まない水1mlで希釈した。このサンプルは、260nmで読まれ、遊離核酸のための「基準」測定値として提供された。残りの未試験のサンプルを、次いで1分の間隔で強くボルテックスした。それぞれの間隔の後、2μlのアリコットが調製され上記のように読まれた。酵母細胞が溶解されるときに、このアリコットの260nmにおける吸収は増加し、次いで溶解プロセスが完了したときに横ばい状態になった。通常2〜5回以内のボルテックスで完全な溶解が生じる。各サンプルの溶解プロセスの完了後、分析までこれらのサンプルをドライアイス(約−75℃)で貯蔵することが可能であった。
【0057】
RNA単離(Ambion RNAqueous Kit)
上記のとおり調製された酵母細胞溶解物のサンプルに等量の64%エタノールを添加し、この試験管をボルテックスした。全ての試験管を1つの容器中に一緒にした後、この混合物の最高700μlを、ガラス繊維フィルターカートリッジに移した。このカートリッジを、1.5mlコレクションチューブに載せ、1分間14,000RPMで遠心分離した。このフロースルー(flow−through)は廃棄し、残りの混合物をフィルターカートリッジ中に入れ、この遠心分離プロセスを、混合物の全てがおわるまで繰り返した。次いで700μlの洗浄溶液1(1回)及び500μlの洗浄液2(2回)をこのフィルターカートリッジにつけ、14,000RPMで1分間遠心分離して各洗浄液をカートリッジに通して、このフィルターを洗浄してガラス繊維に付着したRNAからの残余の細胞破片を除去した。各洗浄後、フロースルーを廃棄した。最終の洗浄後、1回の最終の回転を洗浄溶液なしで実施して、フィルターカートリッジ中の残余の洗浄溶液を除去した。カートリッジ内のガラス繊維に付着したRNAを、次いで30μlのトリス−EDTA緩衝液(70〜80℃に予熱した10mM Tris−HCI、1mM EDTA)をこのカートリッジにつけ、このカートリッジを新しいコレクションチューブ中で14,000RPMで1分間遠心分離することにより溶離した。細胞溶解物及び小さな組織から作られたサンプルについては、さらなる30μlの予熱したTE緩衝液を用いて溶離プロセスを繰り返した。より大きな組織から作られたサンプル(即ち全層組織)については、溶離プロセスをさらに2回繰り返した。RNAを溶離したのち、その濃度をRibogreen評価を用いて定量し、その質をゲル電気泳動法で評価した。
【0058】
RNA濃度評価(米国、オレゴン州、Eugene市、Molecular Probes Ribogreen Assay)
Ribogreen試薬がDMSO中の原液として提供された。使用の前に、この試薬をTE緩衝液で2000倍に希釈した。このRNA評価は、試験対象のサンプル当たり200μlの希釈したRibogreen試薬を必要とし、この試薬1mlを標準として必要とする。調製後、この希釈した試薬を暗所に貯蔵した。一連のRNA標準を、大腸菌(E.coli)に由来する精製したリボソームRNAを2μg/ml、1μg/ml、200ng/ml、40ng/ml及び0ng/ml(ブランク)の濃度に希釈することにより調製した。評価の前に、上記の調製したRNAサンプルを、TE緩衝液で1000倍に希釈した。RNA評価のために、希釈したサンプル又は標準の100μlを、黒色の96ウエルプレートのウエルに移した。サンプル及び標準は二組で評価した。サンプル/標準をプレートに添加した後、希釈したRibogreen評価試薬の100μlをウエルに添加し、このプレートをゆっくりと混合し、5〜10分間、暗所でインキュベートさせた。このインキュベーション後、500nmの励起波長及び525nmの放射波長を用いた蛍光光度計で読んだ。
【0059】
RNAゲル電気泳動法
1%RNAゲルを、ジエチルピロカルボネート(DEPC)で処理した水21.6mlにアガロース0.3gを添加することにより調製した。アガロースを、電子レンジ中で水を沸かすことにより溶解させた。この溶液を約55℃に冷却した後、5.4mlのホルムアルデヒド及び3.0mlの10×MOPS(DEPC HO中で作製しろ過殺菌した0.2M MOPS[pH 7.0]、20mM 酢酸ナトリウム、10mM EDTA)を添加した。混合の後、このアガロースゲルをゲルの負端子に最も近い側に配置されたローディングスロットを備えた水平型ゲル装置に注いだ。このゲルを室温で少なくとも1時間固化させた。このゲルが固化する間、1xMOPSの175mlを10×原液の希釈により調製した。このゲルが固化後、コームを取り除き、ゲル器具の緩衝液チャンバーを1xMOPSの150〜175mlで満たした(このゲルを約3mmの緩衝液で覆うのに十分な緩衝液を添加した)。この装置に覆いをして、電気リード線を電源に接続して、何も含まれていないゲルを40V(4V/cm)において5〜10分間処理した。このゲルを処理している間、約1μgの各サンプルRNAを600μlのPCRチューブに移すことにより、RNAサンプルを調製した。全てのサンプルの総体積を共通レベルにするためにDEPC HOを使用し、次いでゲルローディング緩衝液(即ち5%グリセロール、1mM EDTA、0.025%ブロモフェノールブルー、0.025%キシレンシアノールFF、20%ホルムアルデヒド、50%ホルムアミド、10μg/ml臭化エチジウム)の1〜3体積を添加した。これらのサンプルは、65〜70℃に5〜15分間置き次いで氷上に置いて冷却することにより変性した。これらのサンプルを注意深くレーンに載せて(各ローディングスロットはゲルの厚みに応じてサンプル10〜15μlを保持することができる)、ゲルを40Vで1〜3時間処理した。処理の最後に、RNAはゲルをUVライトボックスに置くことにより目に見えるようにした。18S及び28Sのリボソームバンドの両方がはっきりと見ることができ、18Sのバンドを下回る着色が殆どないか皆無である場合、RNAサンプルを続いてのプロセスに使用した。
【0060】
mRNA増幅(Ambion MessageAmp aRNA kit)
第1ストランドcDNA合成:第1のストランド合成を開始するために、各サンプルのための全RNAの5μgを、600μlのPCRチューブに添加し、チューブの中の液体の総体積をDEPC HOで12μlに調節した。各チューブに、1μlのT7 Oligo(dT)プライマーを添加し、このチューブを70±2℃で10分間インキュベートしてRNAを変性し、次いで氷上に置いてプライマーがmRNAのpoly A末端にアニールするようにした。冷却後、2μlの10×第1ストランド緩衝液、1μlのリボヌクレアーゼ阻害剤及び4μlのdNTP Mixを各チューブに添加し、このチューブを42℃に置いた。このチューブを加熱次第、逆転写酵素の1μlを添加し、このチューブを2時間かけて42±2℃に戻した。2時間の最後に、このチューブを簡単に遠心分離機にかけて全ての流体をチューブの底に集め、次いで氷上に置いた。
【0061】
第2ストランド合成及びcDNAの精製:cDNAの第2のストランドの合成のために、63μlのDEPC HO、10μlの10×第2ストランド緩衝液、4μlのdNTP mix、2μlのDNAポリメラーゼ及び1μlのリボヌクレアーゼHを上記のチューブに添加した(この順番で)。このチューブを混合し、次いで16±2℃で2時間インキュベートした。2時間のインキュベーションの最後に向けて、DEPC HOの十分な量を50±2℃に温め、cDNA精製フィルターカートリッジをcDNAバインディングバッファー(サンプル当たり1カートリッジ)の50μlで少なくとも5分間平衡させた。これらのサンプルのインキュベーションが完了後、250μlのcDNAバインディングバッファーを各チューブに添加し完全に混合した。PCRチューブの中身は、cDNA精製フィルターカートリッジに移した。このカートリッジをコレクションチューブ中に置き、10,000RPMで1分間遠心分離した。このフロースルーは廃棄し、650μlのcDNA洗浄溶液をカートリッジに添加した。このカートリッジを再度遠心分離し、このフロースルーを廃棄し、次いで最後にもう一度だけ遠心分離して洗浄緩衝液がフィルターを完全に空にしたことを確実にした。このcDNAは、予熱したDEPC HOの10μlをフィルターにつけ、このフィルターを新しいコレクションチューブ中で10,000RPMで1分間遠心分離することにより溶離した。この溶離をさらに1度実施して、cDNA溶液の16〜18μlの総量を得た。
【0062】
aRNA合成のためのインビトロ転写及びaRNA精製:各4μlのT7 ATP溶液、T7 CTP溶液、T7 GTP溶液、T7 UTP溶液、4μlの10×反応緩衝液、及び4μlのT7酵素ミックスをcDNA溶液に添加することでインビトロ転写を開始した。このチューブを混合し、次いで37±2℃で6〜14時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに向けて、溶離溶液の十分な量を50〜60℃に温め、aRNAフィルターカートリッジを、100μlのaRNAバインディングバッファーで少なくとも5分間平衡させた。インキュベーション期間の最後に、350μlのaRNAバインディングバッファーをサンプルチューブに添加し完全に混合した。無水エタノールのさらなる250μlを各チューブに添加した。この混合物を、次いでaRNAフィルターカートリッジに移し、このカートリッジをコレクションチューブ中に挿入し10,000RPMで1分間遠心分離した。フロースルーを廃棄し、aRNA洗浄緩衝液の650μlをこのカートリッジに添加した後、10,000RPMで1分間遠心分離した。フロースルーを廃棄した後、洗浄緩衝液の全ての痕跡を除去するために、もう一度最期にこのカートリッジを回転させた。このカートリッジを新しいコレクションチューブに移し、予熱した溶離溶液の25μlをこのカートリッジに添加した。このカートリッジを2分間室温でインキュベートし、次いでaRNAを1分間10,000RPMでの遠心分離により溶離した。この溶離をもう一度実施してaRNA溶液の45〜50μlの総量を得た。aRNAの最終濃度は、上記のようにRibogreen評価により測定した。さらに、aRNAの質は、上記のようにゲル電気泳動法により調べた。RNAのブロードバンドが観察された場合に、aRNAサンプルは続いてのプロセスに使用した。
【0063】
蛍光色素(PerkinElmer ASAP RNA Labeling Kit)によるaRNAのラベリング及び標識aRNAの精製
ラベリング:Cy3ラベリング(緑)用の1本及びCy5ラベリング(赤)用の1本の2本のチューブをラベリングプロセス用に用意した。Cy3管に対して、非処理/対照サンプルから調製したaRNAの2μgを添加し(各サンプル用の実際の色の割り当ては重要ではないが、一貫性を保つためにCy3は一般的に非処理サンプル用に使用することに留意されたい)、十分なDEPC HOを添加して4μlまでの総量を得た。Cy5チューブに対して、試験材料で処理したサンプルから調製したaRNAの2μgを添加し、十分なDEPC HOを添加して4μlまでの総量を得た。両方のチューブに、ASAPラベリングバッファーの5μl及びチューブ(Cy3又はCy5)用の固有の色素の1μlを添加した。これらのチューブを85±2℃で15分間インキュベートした。15分間の最後に、これらのチューブを氷上に置いて冷却し、次いでASAP停止溶液の2.5μlを各チューブに添加した。本明細書で与えられた比は、1つのマイクロアレイチップを評価するのに十分であった。
【0064】
精製:標識aRNAを精製するために、microcon YM−30 フィルターカラムをコレクションチューブ中に挿入し、TE緩衝液の400μlを満たした。Cy3及びCy5プローブを一緒にし(それぞれの12.5μl)、次いでmicroconフィルターに添加しTE緩衝液と完全に混合した。このフィルターを12,000RPMで8分間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。このカラムを、フロースルーを毎回廃棄しながらTE緩衝液の400μlで2度洗浄した。最後の洗浄後、このフィルターカラムを反転させ、新しいコレクションチューブ中に置き12,000RPMで2分間遠心分離してこのプローブを集めた(このプローブは残余のTE緩衝液の20〜30μlの体積に濃縮した)。
【0065】
マイクロアレイハイブリダイゼーション及び洗浄(酵母マイクロアレイチップ)
ハイブリダイゼーションのために、10×対照ターゲットRNAの45μlをDEPC水の160μl及び25×Agilent Fragmentation Bufferの9μlと混合した。この混合物を60℃で約30分間ハイブリダイゼーションオーブン中でインキュベートした。インキュベーションの最後に、Agilent Hybridization Bufferの225μlを上記で調製した蛍光aRNAプローブと一緒に添加した。この混合物を70℃で5〜10分間水浴中でインキュベートした。このインキュベーション期間の間、Agilent SUREHYBハイブリダイゼーションチャンバーを、チャンバーのボトムハーフ(bottom half)にガラスガスケットスライド(glass gasket slide)を挿入することにより作製した。インキュベーション期間の最後に、このハイブリダイゼーション混合物(約450μl)を、ガラスガスケットスライドに塗布し、Yeast Microarray Chip(米国、ノースカロライナ州、High Point市)を、ハイブリダイゼーション溶液がガラスガスケットスライド及びチップのマイクロアレイ面の間で挟まれるように、このガスケットの上面に表を下にして置いた。チャンバーのトップハーフ(top half)を次いで取り付け、接続用つまみねじを締めた。チャンバー中に良好な気泡形成があることを確認後、これをハイブリダイゼーションオーブン中に約17時間(60℃及び4RPMの回転)置いた。ハイブリダイゼーション期間の最後に、このマイクロアレイ/ガラスガスケットを、SUREHYBチャンバーから取り出し、洗浄溶液1(室温、6×SSC、0.005% Triton X−102)の50ml中に置いた。ガスケットがマイクロアレイから脱離した後、このアレイを電磁攪拌プレート上の新たな洗浄溶液の300mlに移した。この溶液を中速で10分間混合しながらこのアレイを洗浄し、次いで300mlの洗浄溶液2(0.1×SSX、0,005% Triton X−102,4℃)に移し5分間洗浄した。最終の洗浄後、このアレイを500RPMで5分間遠心分離してこれを乾燥した。
【0066】
マイクロアレイ走査及び分析
マイクロアレイを、走査解像度を10μmに設定したAxon GenePix4100A Scannerで走査し、GenePix Pro softwareで分析した。最初の走査の間、cy5/cy3イメージカウント比(image count ratio)が0.88から1.12となるようにスキャナー用PMTゲイン(PMT gain)を調節した。
【0067】
計算
RNA Ribogreen評価
Ribogreen評価用の標準曲線を得るために、相対蛍光単位(relative fluorescent unit)対標準用のμg/ml単位の既知のRNA濃度をプロットし、回帰分析にかけてこれらの点に最も適合する線を定めた。試験材料及び非処理サンプルの平均RFU値を使用して各サンプル中に存在するRNAの量を推定した。
【0068】
マイクロアレイ計算
遺伝子発現のレベルは、マイクロアレイ上の探査された遺伝子マーカーの蛍光強度に関係していた。Cy3及びCy5プローブを作製するときにラベリング効率に違いを有することはあり得るので、遺伝子発現の違いを見る前に、2種のそれぞれの色素の間の蛍光測定値を標準化することが一般的である。マイクロアレイの蛍光強度は、広域の標準化にかけられた。両方の色素の総蛍光信号は、両方の色素の総強度の比を1にする補正率で標準化された。蛍光測定値を標準化した後、遺伝子発現の変化を見つけることが可能であった。遺伝子発現の変化の評価基準は研究毎に異なるが、一般的に3つの基準が求められる。
1.Cy3/Cy5(非処理/処理)蛍光強度の比は、1.5を超えているか0.66未満である。これは少なくとも+/−30%の遺伝子発現の変化に関連性がある。
2.遺伝子マーカーの蛍光強度は、背景強度を超えている。
3.遺伝子の特徴は、特異的にaRNAプローブにより明確にマークされ、非特異性の蛍光によらない(即ちSDSストリークは蛍光トレイルを離れる)。
最初の2つの基準のデータは、データのコンピューター分析によりフィルターをかけた。最後の基準は、アレイスポットの確認のための目視検査が必要である。
【0069】
オゾンストレスと過酸化水素ストレスの比較のマイクロアレイ分析の結果
上記に概説されたプロトコルを用いて、2組の酵母細胞にオゾン又は過酸化水素のどちらかを用いてストレス付与した。1組の酵母細胞を、0.002ミリモル(0.01mg/L)のオゾンに約1時間曝露し、別の1組の酵母細胞を、0.002ミリモル(0.01mg/L)の過酸化水素に約1時間曝露した。その後ストレスにより影響を受けた遺伝子の分析を、非処理対照に対して比較し、どの遺伝子がアップレギュレートされ、ダウンレギュレートされたかを上記に定義された基準を用いて測定した。
【0070】
遺伝子マイクロアレイ分析のための、「アップレギュレーション」又は「アップレギュレートされた」という用語は、遺伝子が過剰発現しているRNAであることを意味する。「ダウンレギュレーション」又は「ダウンレギュレートされた」という用語は、RNAが過少発現していることを意味する。
【0071】
非処理酵母と比較した酵母のオゾン及び過酸化水素によるストレス付与の結果
オゾンで処理した酵母は、570遺伝子のアップレギュレーション及び342遺伝子のダウンレギュレーションを示した。過酸化水素で処理した酵母は、502遺伝子のアップレギュレーション及び57遺伝子のダウンレギュレーションを示した。
【0072】
オゾンストレス付与酵母中と過酸化水素ストレス付与酵母中のアップレギュレート及びダウンレギュレートされた遺伝子の比較
マイクロアレイに存在する全体の酵母ゲノムのうち、570遺伝子がオゾンストレス付与酵母のうちでアップレギュレートされ、そのうち148(26%)が過酸化水素によりアップレギュレートされたものと異なった。同様に、502遺伝子が過酸化水素によりアップレギュレートされ、80(15.0%)がオゾンストレス付与酵母でアップレギュレートされたものと異なった。
【0073】
342遺伝子がオゾンストレス付与酵母でダウンレギュレートされ、321(93.8%)が過酸化水素ストレスによりダウンレギュレートされなかった。同様に、57遺伝子が過酸化水素ストレスによりダウンレギュレートされ、36(63%)がオゾンストレスによりダウンレギュレートされなかった。
【0074】
マイクロアレイ分析で観察された遺伝子のうち、上記で議論された早期に公開された科学研究と一致して、GAPDHはオゾンの存在下でアップレギュレートされたが、過酸化水素によって影響を受けなかったことは注目された。
【実施例3】
【0075】
オゾンストレス付与酵母溶解物のカルミン色素酸化へのインビトロ防護効果
インビトロ研究が、オゾンへの曝露でのインジゴトリスルホン酸カリウムの分解により実施された(Wentworth Jr.他、2003年)。オゾンストレス付与(又はオゾン処理)酵母溶解物、非オゾンストレス処理酵母溶解物、及び蒸留水のサンプルを比較した。インジゴ試薬の約36mLを、サンプルの100mLと混合して0.5の吸光度を得た。酵素溶解物サンプルの最終濃度は約2%であった。サンプルを、次いで10mg/Lのオゾンを含有する、1.5L/分のオゾン/空気流で10分間通気した。サンプルの吸光度を、600nmで異なる時間間隔で測定した。オゾンは、インジゴ中の二重結合を開裂して無色のイサチンスルホン酸化合物を生じる特異な能力を有している。下記参照。
【化1】

【0076】
水、非オゾンストレス付与酵母溶解物及びオゾン処理酵母溶解物のオゾン曝露の結果が図1の写真で示されている。オゾンストレス付与酵母溶解物は、インジゴトリスルホン酸カリウムに、水及び非処理酵母溶解物に比べて、オゾンの酸化力に対する増加した防護及びより少ない分解を示した。この研究は、オゾンストレス付与酵母溶解液は、インジゴ色素の分解を遅らせる保護剤を含有していることを示唆している。図1は4種のサンプルの目に見える違いを示している。「対照」とラベルした写真中の最初の広口瓶は、水及びインジゴ色素を含有している。この対照の広口瓶は、酵母又は酵母溶解物を含有しておらず、この広口瓶中の溶液はオゾン処理にかけなかった。「水」とラベルした第2の広口瓶は、水及びインジゴ色素を含有している。この広口瓶も、酵母又は酵母溶解物を含有しておらず、この広口瓶中の溶液は、オゾンがインジゴ色素とどのように反応するかを示すためにオゾン処理にかけた。
【0077】
「オゾン処理酵母」とラベルした第三の広口瓶は、水及びインジゴ色素に加えてオゾンストレス付与酵母溶解物を含有している。この広口瓶中の溶液は、オゾンストレス付与酵母溶解物の存在下でオゾンがインジゴ色素とどのように反応するかを示すためにオゾン処理にかけた。
【0078】
「非処理酵母」とラベルした第4の広口瓶は、水及びインジゴ色素に加えて非オゾンストレス付与酵母溶解物を含有している。この広口瓶中の溶液も、非オゾンストレス付与酵母溶解物の存在下でオゾンがインジゴ色素とどのように反応するかを示すためにオゾン処理にかけた。
【0079】
この試験は、インジゴ試薬はオゾンと反応性であること;水及びインジゴ色素の溶液への酵母溶解物の添加は、インジゴ色素にオゾン分解からのいくらかの防護を提供すること;及び水及びインジゴ色素の溶液へのオゾンストレス付与酵母溶解物の添加は、インジゴ色素にオゾン分解からのさらなる防護を提供することを含めたいくつかの事柄を示唆している。
【実施例4】
【0080】
オゾンストレス付与酵母溶解物のサンプルを、大豆からのリン脂質及びレシチンを含有するリポソームに組み込んだ。この溶解物を、リン脂質及びレシチン成分と一緒にスラリーにし、この混合物を、Hydraulic Engineering Corporation(米国、カルフォルニア州、Brea市)からの高圧ホモジナイザーを用いて均一にした。この乳白色の混合物は、リポソーム成分でカプセル化されたオゾンストレス付与酵母溶解物を含有した。
【実施例5】
【0081】
オゾンストレス付与酵母溶解物のサンプルを、国際公開2003/068161号に概説されたやり方を用いて、マルトデキストリン中にカプセル化し、噴霧乾燥して、マルトデキストリンでカプセル化した酵母溶解物の本質的に無水物の粉末を得た。
【0082】
次の提案例は、実施例1の方法を用いて調製されたオゾンストレス付与酵母溶解物を用いて調製することができる、本発明によるスキンケア組成物を示している。
【0083】
(提案例A)
本実施例は、実施例1の開示のとおりに調製したオゾンストレス付与酵母溶解物を混合した、高分散相油中水乳化液を示している。
成分 重量%
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン 0.2
ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル 5.0
Bentone 38 0.5
MgSO・7HO 0.3
保存料 0.01
オゾンストレス付与酵母溶解物 10.0
水 残量
例えば、Brij 92はポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルである。
アルデヒド解除剤など、例えばDMDMヒダントイン。
【0084】
(提案例B)
本実施例は、実施例1の開示のとおりに調製したオゾンストレス付与酵母溶解物を混合した水中油クリームを示している。
成分 重量%
鉱油 4
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン 1
セチルアルコールPOE(10)
セチルアルコール
トリエタノールアミン 0.75
ブタン−1,3−ジオール 3
キサンタンガム 0.3
メチル、プロピル及びブチルパラベン 0.01
オゾンストレス付与酵母溶解物 10.0
水 残量
例えば、Brij 56はセチルアルコールPOE(10)である。
例えば、Alfol 16RDはセチルアルコールである。
【0085】
(提案例C)
本実施例は、実施例1の開示のとおりに調製したオゾンストレス付与酵母溶解物を混合したアルコールローションを示している。
成分 重量%
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン 0.3
エタノール 40
オゾンストレス付与酵母溶解物 10.0
水 残量
【0086】
(提案例D)
本実施例は、実施例3の開示のとおりに調製したオゾンストレス付与酵母溶解物を含有するサブミクロン乳濁濃縮物を示している。
成分 重量%
トリメチロールプロパントリカプリレート/トリカプレート 18.0
グリセリン 8.0
セテアリルアルコール 2.0
Ceteareth 20 2.0
ステアリン酸グリセリル 2.0
BHT 0.01
オゾンストレス付与酵母溶解物 10.0
水 残量
【0087】
(提案例E)
成分 重量%
水 89
オゾンストレス付与酵母溶解物 10
保存料(即ちオキシエタノール) 1
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】オゾン反応性色素をオゾン分解の指標として用いた、水、非オゾンストレス付与酵母溶解物及びオゾン処理酵母溶解物へのオゾン曝露の結果の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)オゾンストレス付与酵母を産生するのに十分なオゾン濃度に増殖中の酵母を曝露するステップ、
(b)オゾンストレス付与酵母を溶解して水溶性成分及び不水溶性成分を含むオゾンストレス付与酵母溶解物を作製するステップ、及び
(c)水溶性成分を不水溶性成分から分離して水溶性成分を含むオゾンストレス付与酵母を作製するステップを含む方法によって作製されるオゾンストレス付与酵母溶解物。
【請求項2】
前記オゾン濃度が約0.0001ミリモル(mM)から約1.0ミリモル(mM)である、請求項1に記載の方法により作製されるオゾンストレス付与酵母溶解物。
【請求項3】
前記酵母が少なくとも1つの酵素、高速度攪拌、自己分解又はpH変化によって溶解される、請求項1に記載の方法により作製されるオゾンストレス付与酵母溶解物。
【請求項4】
オゾンストレス付与酵母溶解物、及び保存料を含み、
保存料がアルコール類、グリコール類、パラベン類、ヒダントイン類、4級窒素含有化合物、イソチアゾリノン類、アルデヒド解除剤、ハロゲン化合物、及びその組合せからなる群から選択されるパーソナルケア用組成物。
【請求項5】
前記オゾンストレス付与酵母溶解物が、パーソナルケア用組成物の総重量に対して約0.0001%から約100%の濃度で存在する、請求項4に記載のパーソナルケア用組成物。
【請求項6】
前記オゾンストレス付与酵母溶解物が、パーソナルケア用組成物の総重量に対して約0.01%から約50%の濃度で存在する、請求項5に記載のパーソナルケア用組成物。
【請求項7】
前記オゾンストレス付与酵母溶解物が、パーソナルケア用組成物の総重量に対して約1%から約10%の濃度で存在する、請求項6に記載のパーソナルケア用組成物。
【請求項8】
前記保存料が、パーソナルケア用組成物の総重量に対して約0.01%から約10%の濃度で存在する、請求項4に記載のパーソナルケア用組成物。
【請求項9】
前記オゾンストレス付与酵母溶解物が、時限放出性を前記オゾンストレス付与酵母溶解物に提供するために別の成分でカプセル化される、請求項4に記載のパーソナルケア用組成物。
【請求項10】
前記別の成分が、リポソーム、ニオソーム、サブミクロン乳化剤、ポリマー性カプセル材料、ゲル、クリーム、ローション、及びその組合せからなる群から選択される、請求項9に記載のパーソナルケア用組成物。
【請求項11】
前記オゾンストレス付与酵母溶解物が、細胞タンパク質物質、細胞核物質、細胞質材料、細胞原形質物質、細胞壁成分、及びその組合せからなる群から選択される少なくとも1種の細胞成分を含む、請求項4に記載のパーソナルケア用組成物。
【請求項12】
前記オゾンストレス付与酵母溶解物が本質的に水溶性である、請求項4に記載のパーソナルケア用組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のオゾンストレス付与酵母溶解物及び皮膚への塗布用の化粧品用に許容される賦形剤を含む、皮膚の局所処理用組成物。
【請求項14】
皮膚細胞につけたときにオゾンに誘発された皮膚劣化を減少又は最小化するのに有効なオゾンストレス付与酵母溶解物を含有するパーソナルケア用組成物の調製方法であって、
発酵培養液中で酵母を増殖させるステップ、
発酵培養液の総量に対して約0.0001ミリモル(mM)から1.0ミリモル(mM)のオゾン濃度を有する通気ガスを用いて、約5分から約72時間の期間、酵母を通気することにより酵母をオゾンに曝露してオゾンストレス付与酵母を作製するステップ、
オゾンストレス付与酵母を溶解してオゾンストレス付与酵母溶解物を作製するステップ、及び
オゾンストレス付与酵母溶解物をパーソナルケア用組成物中に混合するステップを含む方法。
【請求項15】
前記通気ガスが約15℃から約90℃の温度を有する、請求項14に記載のパーソナルケア用組成物の調製方法。
【請求項16】
前記酵母が約10分から約60分の期間、約0.01mMから約0.8mMのオゾン濃度を有する通気ガスを用いて通気される、請求項14に記載のパーソナルケア用組成物の調製方法。
【請求項17】
前記酵母が約15分から約30分の期間、約0.1mMから約0.5mMのオゾン濃度を有する通気ガスを用いて通気される、請求項16に記載のパーソナルケア用組成物の調製方法。
【請求項18】
パーソナルケア用組成物が、水、界面活性剤、乳化剤、コンディショナー、皮膚軟化剤、ワックス、油、ポリマー、増粘剤、固定剤、着色剤、保湿剤、モイスチャライザー、安定剤、希釈剤、溶剤、香料、植物性薬品、栄養補給食品、薬用化粧品、抗真菌剤、抗菌剤、ステロイド性ホルモン、ふけ予防剤、にきび抑制成分、日焼け止め剤、保存料、及びその組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有する、請求項14に記載のパーソナルケア用組成物の調製方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−520549(P2008−520549A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536849(P2007−536849)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/036717
【国際公開番号】WO2006/044482
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(502075397)アーチ パーソナル ケア プロダクツ、エル.ピー. (6)
【Fターム(参考)】