説明

オニウム塩の製造方法

【課題】本発明の目的は高純度が要求されるオニウム塩を少量の溶媒もしくは溶媒を使用せず、高収率で得ることのできる製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明では、合成されたオニウム塩を融点以上の温度で溶融、又は少量の溶媒に溶解させた後、50〜500MPaの圧力を加圧して精製する。
本製造方法は以下の工程を含む。
(工程1)オニウム塩を合成する。
(工程2)オニウム塩を溶融、又は溶解する。
(工程3)高圧を加圧してオニウム塩を再結晶する。
(工程4)降圧しながらオニウム塩結晶を濾別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に高純度が要求されるオニウム塩の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
オニウム塩は医薬品、農薬、電解液等に使用される用途があるが、特に電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタ用の電解液に使用される場合は、高純度(例えば99重量%以上)であることが要求される。オニウム塩を高純度に精製する方法としては、再結晶法等により精製する方法等が挙げられる。(例えば、特許文献1及び2)
【特許文献1】特開2006−32983
【特許文献2】特開2007−106750
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オニウム塩の精製は、主としてオニウム塩のアルコール溶液を冷却して再結晶を生成することにより行なわれている。しかし、冷却による再結晶では、再結晶に使用する溶媒量が多く、また、再結晶によって得られた結晶を洗浄する際に再び溶媒を使用するため、溶媒の使用量がさらに増加する。また、得られた結晶から溶媒を除去するために加熱除去等を行わなければならない。以上の観点から大量の溶媒を使用せず、また加熱工程が不要である、特に高純度が要求されるオニウム塩を高収率で得る工業的な方法は知られていない。
すなわち、本発明の目的は、オニウム塩を少量の溶媒もしくは溶媒を使用せず、高収率で得ることのできるオニウム塩の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、合成されたオニウム塩に50〜500MPa の圧力を加圧して精製する工程を含むことを特徴とするオニウム塩の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法によると、溶媒を使用しないか、もしくは少量の溶媒を使用し、かつ得られた結晶から溶媒を除去する加熱工程必要とせず、高純度のオニウム塩を高収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明では、合成されたオニウム塩を融点以上の温度で溶融させた後、50〜500MPaの圧力を加圧して精製する。
本製造方法は以下の工程を含む。
(工程1)オニウム塩を合成する。
(工程2)オニウム塩を溶融、又は溶解する。
(工程3)高圧を加圧してオニウム塩を再結晶する。
(工程4)降圧しながらオニウム塩結晶を濾別する。
【0007】
(工程1)
オニウム塩の合成は、公知の方法で行なうことができ、特に制限されることはない。
【0008】
(工程2)
溶融温度が合成されたオニウム塩の融点より高すぎると、圧力を加圧して精製する際、オニウム塩の溶解度が高くなり、得られるオニウム塩の収率が低下する。このため、オニウム塩を溶融させる温度は、合成されたオニウム塩の融点に対して0〜30℃高い温度が好ましく、5〜15℃高い温度が特に好ましい。
【0009】
また、合成されたオニウム塩の融点が高い場合や、含有される不純物の融点がオニウム塩の融点と余り差がない場合等の場合は、少量の溶媒に合成されたオニウム塩を溶解させてから、高圧再結晶操作を行なってもよい。この際の溶媒量が多いと、得られるオニウム塩の収率が低くなるため、加える溶媒の重量は、オニウム塩の重量に対して1〜10重量%であることが好ましく、3〜7重量%であることがより好ましい。
加える溶媒は、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、ジエチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸エステル類が挙げられ、それらの中で反応する可能性が低いメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類が好ましい。
【0010】
(工程3)
加圧する圧力が低いと得られるオニウム塩の収率が低下し、逆に圧力が高すぎると得られるオニウム塩の純度が低下する。このため、本発明の製造方法においては、加圧する圧力は50〜500MPaであり、100〜400MPaが好ましく、150MPa〜300MPaが特に好ましい。加圧する圧力が50MPa未満であるとオニウム塩の収率が低下し、500MPaを超えると得られるオニウム塩の純度が低下する。
【0011】
合成されたオニウム塩の溶融液、又は合成されたオニウム塩の溶液に50〜500MPaの圧力を加圧することにより結晶を生成させることができる。
オニウム塩が仕込まれた槽内を大気圧から50〜500MPaの圧力に加圧する加圧速度は20〜50MPa/minにすることが好ましい。加圧速度を50MPa/min以下にすることで結晶の純度を良くすることができる。
槽内が目的の最高圧力に到達した時点で、再結晶工程は終了したものとみなせるが、その
最高圧力で一定時間保持した後に、次の工程に移ってもよい。
【0012】
(工程4)
上記記載の方法により得られたオニウム塩の結晶を降圧しながら濾別する。この濾別する際、降圧を急激に行うとオニウム塩が溶け出し収率が低下する。そのため、降圧を2〜100MPa/minにすることが好ましく、10〜60MPa/minにすることがより好ましく、20〜50MPa/minにすることが特に好ましい。
【0013】
また降圧の際は、いきなり0MPaまで降圧せず、降圧途中で、例えば最高到達圧力の約半分の圧力付近で一定時間保持することでオニウム塩の結晶内部に取り込まれた不純物を取り除くことができ、オニウム塩の純度を高めることができる。保持圧力は50〜200MPaが好ましく、100〜150MPaがより好ましい。保持時間は0〜60分が好ましく、10〜30分がより好ましい。
【0014】
このようにして得られたオニウム塩の結晶に対して、前記晶析操作を2回以上繰り返すことで、より純度の高いオニウム塩の結晶を得ることができる。晶析操作は2〜5回の範囲で繰り返し実施することが好ましい。
【0015】
この方法により、溶媒を使用しないか、もしくは少量の溶媒を使用し、かつ得られた結晶から溶媒を除去する加熱工程を必要とせず、純度が高いオニウム塩を高収率で得ることができる。
【0016】
上記(工程3)、(工程4)は、例えば株式会社神戸製鋼社製の高圧晶析装置を使用して行なうことができる。
【0017】
オニウム塩の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量できる。HPLCの条件は、カラム:ポリマーコート型充填剤を充填したもの、移動相:リン酸緩衝液(pH2〜3)、流速:0.8ml/min、検出器:UV、温度:40℃である(例えば、機器:型名(LC−10A)、メーカー(島津製作所)、カラム:ODS C18−MG(4.6mmφ×25cm)メーカー(資生堂)、移動相:リン酸の濃度10mmol/l、過塩素酸ナトリウムの濃度100mmol/lの水溶液、流速:0.8ml/min、検出器:UV(210nm)、RI(示差屈折率)注入量:20μl、カラム温度:40℃)。1H−NMR(例えば機器:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz)、19F−NMR(例えば機器:XL−300(バリアン製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz)及び13C−NMR(例えば機器:AL−300(日本電子製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz)等によって特定することができる。
【0018】
本発明の製造方法で対象にするオニウム塩のカチオンは、例えば、第2級ヨードニウム、第3級オキソニウムカチオン、第3級スルホニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、又は第4級ホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0019】
第2級ヨードニウムカチオンの主なものは、例えば、ジフェニルヨードニウム、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムカチオン等が挙げられる。
【0020】
第3級オキソニウムカチオンの主なものは、例えば、テトラメチルオキソニウム、エチルトリメチルオキソニウム、ジエチルジメチルオキソニウム、トリエチルメチルオキソニウム、テトラエチルオキソニウムカチオン等が挙げられる。
【0021】
第3級スルホニウムカチオンの主なものは、例えば、テトラメチルスルホニウム、エチルトリメチルスルホニウム、ジエチルジメチルスルホニウム、トリエチルメチルスルホニウム、テトラエチルスルホニウムカチオン等が挙げられる。
【0022】
第4級ホスホニウムカチオンの主なものは、テトラメチルホスホニウム、エチルトリメチルホスホニウム、ジエチルジメチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0023】
第4級アンモニウムカチオンの主なものは、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムカチオン、
N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N,N−ジエチルピロリジニウム、スピロ−(1、1’)−ビピロリジニウム、ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウム等のピロリジンカチオン、
N,N′−ジメチルイミダゾリウム、N−エチル−N′−メチルイミダゾリウム、N,N′−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3ジメチルイミダゾリウム、1,2,3トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウムカチオン、
N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、1,2−ジメチルピリジニウム等のピリジニウムカチオン、N,N−ジメチルピペリジニウム、N−エチル−N−メチルピペリジニウム、N,N−ジエチルピペリジニウム等のピペリジニウムカチオン、
N,N−ジメチルイミダゾリニウム、N−エチル−N’−メチルイミダゾリニウム、N,N−ジエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウムカチオン、
N,N−ジメチルモルホリニウム、N−エチル−N−メチルモルホリニウム、N,N−ジエチルモルホリニウム等のモルホリニウムカチオン、N,N,N’,N’−テトラメチルピペラジニウム、N−エチル−N,N’,N’−トリメチルピペラジニウム、N,N−ジエチル−N’,N’−ジメチルピペラジニウム、N,N,N’−トリエチル−N’−メチルピペラジニウム、N,N,N’,N’−テトラエチルピペラジニウム等のピペラジニウムカチオン等が挙げられる。
【0024】
上記カチオンと組み合わされることでオニウム塩を構成してもよい非反応性のアニオンとしては以下の酸のアニオンが挙げられる。
(1)無機強酸:
フッ酸、塩酸、硫酸、燐酸、HClO4、HBF4、HPF6、HAsF6、HSbF6、フルオロスルホン酸等;
(2)カルボン酸
モノカルボン酸{C1〜30の脂肪族モノカルボン酸[飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸など)および芳香族モノカルボン酸[安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸など]};
ポリカルボン酸(2〜4価のポリカルボン酸){脂肪族ポリカルボン酸[飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など);
芳香族ポリカルボン酸[フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリト酸など];
脂肪族オキシカルボン酸[グリコール酸、乳酸、酒石酸など];
芳香族オキシカルボン酸[サリチル酸、マンデル酸など];
S含有ポリカルボン酸[チオジプロピオン酸];および
その他のポリカルボン酸[シクロブテン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸、フラン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2−エン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−2,5−ジエン−2,3−ジカルボン酸]など]
(3)ハロゲン原子含有アルキル基置換無機強酸(アルキル基の炭素数1〜30):
HBFn(CF34-n、HPFn(CF36-n、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、ペンタクロロプロパンスルホン酸、ヘプタクロロブタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロブタン酸、トリクロロ酢酸、ペンタクロロプロピオン酸およびヘプタクロロブタン酸等;
(4)ハロゲン原子含有スルホニルイミド(炭素数1〜30):
ビス(フルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよびビス(フルオロスルホニル)イミド等;
(5)ハロゲン原子含有スルホニルメチド(炭素数3〜30):
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド等;
(6)ハロゲン原子含有カルボン酸アミド(炭素数2〜30):
ビス(トリフルオロアセト)アミド等;
(7)ニトリル基含有イミド:
HN(CN)2等;
(8)ニトリル含有メチド:
HC(CN)3等;
(9)炭素数1〜30のハロゲン原子含有アルキルアミン:
HN(CF32
(10)チオシアン酸等が挙げられる。
【0025】
上記記載のカチオンとアニオンの組み合わせで構成されるオニウム塩としては、第3級スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、又は第4級ホスホニウム塩が好ましく、第4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0026】
さらに、第4級アンモニウム塩中でもアミジニウム塩が好ましく、一般式(1)で表される化合物がより好ましい。
【化1】

[式中、R、R3はC1〜C6のアルキル基、R、R4、R5はC1〜C6のアルキル基又は水素原子である。
【0027】
上記化合物中でも特に、4級アンモニウム塩のカチオンが1−エチル−2,3ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3メチルイミダゾリウム、1,2,3トリメチルイミダゾリウム、N−エチル−N′−メチルイミダゾリウム、及び1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0028】
一方、Xとしては、ハロゲンの強い電子吸引性によりアニオンの解離度が高くなるため、BF、PF等の弗化物アニオン、Cl、Br等のハロゲン系アニオン等が挙げられる。
これらの中で、低粘度、低融点の観点から弗化物アニオンが好ましい。
弗化物アニオンで例えば、PF6−n1(CFn1[n1は0〜5である]、BF4−n2(CFn2[n2は0〜3である]、AsF6−n3(CFn3[n3は0〜5である]、SbF6−n4(CFn4[n4は0〜5である]、AlF4−n5(CFn5[n5は0〜3である]、SiF5−n6(CFn6[n6は0〜4である]、N(RfSO、C(RfSOおよびRfSO[Rfは炭素数1〜12のフルオロアルキル基]等が挙げられる。
これらの中で、PF、PF5(CF、PF(CF、BF、BF(CF、BF(CF、AsF、SbF、AlF、及びSiFからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
さらに、PF、BFからなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0029】
4級アンモニウムカチオンと弗化物アニオンの組み合わせとしては、1−エチル−2,3ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−2,3ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスホネート、1,2,3トリメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2,3トリメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスホネート、1−エチル−2メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−2メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスホネート、及び1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスホネートが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法で得られる高純度のオニウム塩を使用して、非水溶媒に溶解することで得られる電気化学素子用電解液は、経時的な性能劣化が極めてわずかである。
また、本発明の電気化学素子用電解液を使用して、電気化学キャパシタ等の電気化学素子を製造することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」、%は重量%を意味する。
以下の製造例、実施例において、オニウム塩の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量できる。
HPLCの条件は、カラム:ポリマーコート型充填剤を充填したもの、移動相:リン酸緩衝液(pH2〜3)、流速:0.8ml/min、検出器:UV、温度:40℃である(例えば、機器:型名(LC−10A)、メーカー(島津製作所)、カラム:ODS C18−MG(4.6mmφ×25cm)メーカー(資生堂)、移動相:リン酸の濃度10mmol/l、過塩素酸ナトリウムの濃度100mmol/lの水溶液、流速:0.8ml/min、検出器:UV(210nm)、RI(示差屈折率)注入量:20μl、カラム温度:40℃)。
オニウム塩の構造は、1H−NMR[機器:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz]、19F−NMR[機器:XL−300(バリアン製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz]及び13C−NMR[機器:AL−300(日本電子製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz]等によって特定した。
水分はカールフィシャー電量滴定法により測定した。
残存溶媒量はガスクロマトグラフィー[機器:GC−17A(株式会社島津製作所製)、昇温:50〜220℃まで5℃/min、検出器:FID、カラム:DBWAX(LENGTH:30m、ID:0.53mm、FILM:1.5μm J&W Scientific社製)]により定量した。
【0032】
本実施例においては株式会社神戸製鋼所製小型圧力晶析分離試験装置(以下、圧力晶析装置と記載する。)を用いた。
【0033】
実施例1
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を取り付けた反応フラスコにメチルアミン(70%水溶液)31部とアンモニア(28%水溶液)32部の混合液を仕込み、撹拌しながら均一溶液にした。温度を45℃以下に保ちながら滴下ロートからグリオキザール(40%水溶液)69部、アセトアルデヒド(30%水溶液)107部の混合液を滴下した。グリオキザールとアセトアルデヒドの混合液の滴下は5時間かけて滴下し、滴下終了後、40℃で1時間反応させた。次に、温度80℃、常圧から徐々に5.0kPaまで減圧し脱水を行い、続いて、温度105℃、圧力1.0kPaの条件で単蒸留により粗精製し、1、2−ジメチルイミダゾールを得た。純度は94%であった。
【0034】
次に、還流コンデンサ付きステンレス製のオートクレーブに得られた1、2−ジメチルイミダゾールを100部、ジメチル炭酸135部、及びメタノール192部を仕込み均一に溶解させた。次いで、130℃まで昇温した。圧力0.8MPaで80時間反応を行った。反応物の1H−NMR分析を行ったところ、1、2−ジメチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩が生成していることがわった。得られた反応混合物395部をフラスコにとり、撹拌下においてホウフッ化水素酸水溶液207部(純度42重量%)を室温下約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い炭酸ガスが発生した。泡の発生がおさまった後、反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶剤を全量除去した。フラスコ内には、黄褐色透明の液状の粗1、2、3−トリメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(以下粗TMI・BFと略す)が80部残った。この液を1H−NMR分析したところ、主成分は、1、2、3−トリメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(以下TMI・BFと略す)であった。
【0035】
作成した粗TMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、115℃で溶融した。溶融したTMI・BFを常圧から50MPa/minの速度で250MPaまで加圧した。250MPaで10分間保持した後、20MPa/minの速度で100MPaまで降圧した。100MPaで10分保持した後、50MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は30ppm、残存溶媒量は23ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.36%であった。収率は84%であった。
【0036】
実施例2
実施例1で合成した粗TMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにイソプロピルアルコール(以下、IPAと記載する。)5部投入し、90℃で溶解した。溶解した粗TMI・BFを常圧から30MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで5分間保持した後、50MPa/minの速度で150MPaまで降圧した。150MPaで15分保持した後、50MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は25ppm、残存溶媒量は18ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.61%であった。収率は76%であった。
【0037】
実施例3
スピロ−(1、1’)−ビピロリジニウムクロライド1625部とホウフッ化水素酸水溶液207部(純度42%)を室温下約30分かけて徐々に滴下し、反応させた。反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶剤を全量除去した。フラスコ内には、黄褐色透明の液状の粗スピロ−(1、1’)−ビピロリジニウムテトラフルオロボレート(以下粗SBP・BFと略す)が81部残った。この液をH−NMR分析したところ、主成分は、スピロ−(1、1’)−ビピロリジニウムテトラフルオロボレート(以下SBP・BFと略す)であった。
【0038】
作成した粗SBP・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、150℃で溶融した。溶融した粗SBP・BFを常圧から40MPa/minの速度で280MPaまで加圧した後、30MPa/minの速度で130MPaまで降圧した。130MPaで20分保持した後、30MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は50ppm、残存溶媒量は31ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.62%であった。収率は83%であった。
【0039】
実施例4
実施例3で作成した粗SBP・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにメタノール5部投入し、90℃で溶解した。溶解した粗SBP・BFを常圧から25MPa/minの速度で200MPaまで加圧した。200MPaで8分間保持した後、20MPa/minの速度で100MPaまで降圧した。100MPaで5分保持した後、50MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は30ppm、残存溶媒量は23ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.91%であった。収率は76%であった。
【0040】
実施例5
実施例3で作成した粗SBP・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにメチルエチルケトン(以下、MEKと記載する。)6部投入し、80℃で溶解した。溶解した粗SBP・BFを常圧から25MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで5分間保持した後、20MPa/minの速度で150MPaまで降圧した。150MPaで8分保持した後、40MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は32ppm、残存溶媒量は26ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.69%であった。収率は82%であった。
【0041】
実施例6
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を取り付けた反応フラスコにエチルアミン(70%水溶液)31部とアンモニア(28%水溶液)32部の混合液を仕込み、撹拌しながら均一溶液にした。温度を45℃以下に保ちながら滴下ロートからグリオキザール(40%水溶液)69部、アセトアルデヒド(30%水溶液)71部の混合液を滴下した。グリオキザールとアセトアルデヒドの混合液の滴下は5時間かけて滴下し、滴下終了後、40℃で1時間反応させた。次に、温度80℃、常圧から徐々に5.0kPaまで減圧し脱水を行い、続いて、温度105℃、圧力1.0kPaの条件で単蒸留により粗精製し、1−エチル−2−メチルイミダゾールを得た。純度は95%であった。
【0042】
次に、還流コンデンサ付きステンレス製のオートクレーブに得られた1−エチル−2−メチルイミダゾールを100部、ジメチル炭酸135部、及びメタノール192部を仕込み均一に溶解させた。次いで、130℃まで昇温した。圧力0.8MPaで80時間反応を行った。反応物の1H−NMR分析を行ったところ、1−エチル−2、3−ジメチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩が生成していることがわった。得られた反応混合物427部をフラスコにとり、撹拌下においてホウフッ化水素酸水溶液207部(純度42重量%)を室温下約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い炭酸ガスが発生した。泡の発生がおさまった後、反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶剤を全量除去した。フラスコ内には、黄褐色透明液状の粗1−エチル−2、3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(以下粗EDMI・BFと略す)が83部残った。この液を1H−NMR分析したところ、主成分は、1−エチル−2、3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(以下EDMI・BFと略す)であった。
【0043】
作成した粗EDMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、140℃で溶融した。溶融した粗EDMI・BFを常圧から25MPa/minの速度で200MPaまで加圧した。200MPaで10分間保持した後、50MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は42ppm、残存溶媒量は28ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.49%であった。収率は85%であった。
【0044】
実施例7
実施例6で作成した粗EDMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにアセトン5部投入し、75℃で溶融した。溶融した粗EDMI・BFを常圧から20MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで6分間保持した後、15MPa/minの速度で150MPaまで降圧した。150MPaで20分保持した後、30MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は30ppm、残存溶媒量は23ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.65%であった。収率は80%であった。
【0045】
実施例8
実施例6で作成した粗EDMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにメタノール7部投入し、65℃で溶融した。溶融した粗EDMI・BFを常圧から50MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで10分間保持した後、50MPa/minの速度で150MPaまで降圧した。150MPaで15分保持した後、50MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は15ppm、残存溶媒量は18ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.97%であった。収率は86%であった。
【0046】
実施例9
実施例6で作成した粗EDMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにエタノール5部投入し、80℃で溶解した。溶解した粗EDMI・BFを常圧から30MPa/minの速度で150MPaまで加圧した。150MPaで10分間保持した後、30MPa/minの速度で50MPaまで降圧した。150MPaで5分保持した後、10MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は28ppm、残存溶媒量は15ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.94%であった。収率は78%であった。
【0047】
実施例10
製造例5のホウフッ化水素酸水溶液207部の代わりに、HPF水溶液(純度62%)235部を使用した以外は同一の操作を実施した。黄褐色透明液状の粗1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(以下粗EDMI・PFと略す)が81部残った。この液をH−NMR分析したところ、主成分は、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(以下EDMI・PFと略す)であった。
【0048】
作成した粗EDMI・PFを150℃で溶融した。溶融した粗EDMI・PFを常圧から30MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで5分間保持した後、50MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は39ppm、残存溶媒量は26ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.32%であった。収率は83%であった。
【0049】
実施例11
実施例10で作成した粗EDMI・PF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにIPA6部投入し、70℃で溶解した。溶解した粗EDMI・PFを常圧から35MPa/minの速度で250MPaまで加圧した。250MPaで8分間保持した後、30MPa/minの速度で100MPaまで降圧した。100MPaで15分保持した後、10MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は30ppm、残存溶媒量は23ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.54%であった。収率は79%であった。
【0050】
実施例12
還流コンデンサ付きステンレス製のオートクレーブにトリエチルアミン100部、ジメチル炭酸135部、及びメタノール192部を仕込み均一に溶解させた。次いで、130℃まで昇温した。圧力0.8MPaで80時間反応を行った。反応物のH−NMR分析を行ったところ、トリエチルメチルアンモニウム炭酸塩が生成していることがわかった。得られた反応混合物395部をフラスコにとり、撹拌下においてホウフッ化水素酸水溶液207部(純度42%)を室温下約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い炭酸ガスが発生した。泡の発生がおさまった後、反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶剤を全量除去した。フラスコ内には、黄褐色透明液状の粗トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(以下粗TEMA・BFと略す)が81部残った。この液をH−NMR分析したところ、主成分は、トリエチルメチルアンモニウムテトラフルオロボレート(以下TEMA・BFと略す)であった。
【0051】
作成した粗TEMA・BFを圧力晶析装置に仕込み、そこにエタノール5部投入し、80℃で溶解した。溶融したTEMA・BFを常圧から30MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで15分間保持した後、50MPa/minの速度で150MPaまで降圧した。150MPaで10分保持した後、30MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は21ppm、残存溶媒量は18ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.90%であった。収率は83%であった。
【0052】
実施例13
実施例12で作成した粗TEMA・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、180℃で溶融した。溶融した粗TEMA・BFを常圧から20MPa/minの速度で100MPaまで加圧した。100MPaで10分間保持した後、25MPa/minの速度で50MPaまで降圧した。50MPaで5分保持した後、30MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は21ppm、残存溶媒量は33ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.62%であった。収率は75%であった。
【0053】
実施例14
実施例12で作成した粗TEMA・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにメタノール6部投入し、75℃で溶解した。溶解した粗TEMA・BFを常圧から40MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで10分間保持した後、20MPa/minの速度で150MPaまで降圧した。150MPaで8分保持した後、50MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は25ppm、残存溶媒量は38ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.95%であった。収率は79%であった。
【0054】
実施例15
実施例12で作成した粗TEMA・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにジメチルカーボネート6部投入し、65℃で溶解した。溶解した粗TEMA・BFを常圧から30MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで10分間保持した後、20MPa/minの速度で150MPaまで降圧した。150MPaで10分保持した後、30MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は35ppm、残存溶媒量は36ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.72%であった。収率は84%であった。
【0055】
実施例16
実施例12で作成した粗TEMA・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにアセトン5部投入し、75℃で溶解した。溶解した粗TEMA・BFを常圧から30MPa/minの速度で200MPaまで加圧した。200MPaで10分間保持した後、20MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は35ppm、残存溶媒量は36ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.51%であった。収率は75%であった。
【0056】
実施例17
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を取り付けた反応フラスコにメチルアミン(70%水溶液)31部とアンモニア(28%水溶液)32部の混合液を仕込み、撹拌しながら均一溶液にした。温度を45℃以下に保ちながら滴下ロートからメチルグリオキザール(30%水溶液)114部、アセトアルデヒド(30%水溶液)107部の混合液を滴下した。メチルグリオキザールとアセトアルデヒドの混合液の滴下は5時間かけて行い、滴下終了後、40℃で1時間反応させた。次に、温度80℃、常圧から徐々に5.0kPaまで減圧し脱水を行い、続いて、温度120℃、圧力1.0kPaの条件で精密蒸留により精製し、1,2,4−トリメチルイミダゾールを得た。
【0057】
次に、還流コンデンサ付きステンレス製のオートクレーブに得られた1,2,4−トリメチルイミダゾールを100部、ジメチル炭酸135部、及びメタノール192部を仕込み均一に溶解させた。次いで、130℃まで昇温した。圧力0.8MPaで80時間反応を行った。反応物のH−NMR分析を行ったところ、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩が生成していることがわかった。得られた反応混合物395部をフラスコにとり、撹拌下においてホウフッ化水素酸水溶液207部(純度42%)を室温下約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い炭酸ガスが発生した。泡の発生がおさまった後、反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶剤を全量除去した。フラスコ内には、黄褐色透明液状の粗1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(以下粗TeMI・BFと略す)が81部残った。この液をH−NMR分析したところ、主成分は、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(以下TeMI・BFと略す)であった。
【0058】
作成した粗TeMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにIPA3部投入し、85℃で溶融した。溶融した粗TeMI・BFを常圧から50MPa/minの速度で200MPaまで加圧した。200MPaで10分間保持した後、25MPa/minの速度で130MPaまで降圧した。130MPaで15分保持した後、40MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は35ppm、残存溶媒量は31ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.59%であった。収率は82%であった。
【0059】
実施例18
実施例17で作成した粗TeMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにIPA7部投入し、65℃で溶解した。溶解した粗TeMI・BFを常圧から50MPa/minの速度で400MPaまで加圧した。400MPaで5分間保持した後、40MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は36ppm、残存溶媒量は39ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.42%であった。収率は81%であった。
【0060】
実施例19
還流コンデンサ付きステンレス製のオートクレーブにトリエチルホスフィン100部、ジメチル炭酸114部、及びメタノール162部を仕込み均一に溶解させた。次いで、130℃まで昇温した。圧力0.8MPaで80時間反応を行った。反応物のH−NMR分析を行ったところ、トリエチルメチルホスホニウム炭酸塩が生成していることがわかった。得られた反応混合物350部をフラスコにとり、撹拌下においてホウフッ化水素酸水溶液177部(純度42%)を室温下約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い炭酸ガスが発生した。泡の発生がおさまった後、反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶剤を全量除去した。フラスコ内には、黄褐色透明液状の粗トリエチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート(以下粗TEMP・BFと略す)が86部残った。この液をH−NMR分析したところ、主成分は、トリエチルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート(以下TEMP・BFと略す)であった。
【0061】
作成した粗TEMP・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにMEK5部投入し、80℃で溶解した。溶解した粗TEMP・BFを常圧から30MPa/minの速度で300MPaまで加圧した。300MPaで5分間保持した後、25MPa/minの速度で150MPaまで降圧した。150MPaで20分保持した後、30MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は28ppm、残存溶媒量は24ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.13%であった。収率は77%であった。
【0062】
比較例1
実施例5で作成した粗EDMI・BF100部に200部のメタノールを加えて、30℃で溶解した。−10℃の冷蔵庫に10時間放置し、結晶を析出させた。その後ろ過にて、溶媒を除去した結晶の重量に対して等量のエタノールで撹拌洗浄を25℃で5分間行った。洗浄後の結晶をろ過にて回収した。結晶を125℃で3時間、減圧下、メタノール、エタノール、水分を留去した。乾燥後の水分は45ppm、残存溶媒量は29ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.92%であった。収率は63%であった。
【0063】
比較例2
実施例14で作成した粗TEMA・BF100部に200部のエタノールを加えて、25℃で溶解した。−10℃の冷蔵庫に10時間放置し、結晶を析出させた。その後ろ過にて、溶媒を除去した結晶の重量に対して等量のエタノールで撹拌洗浄を25℃で5分間行った。洗浄後の結晶をろ過にて回収した。結晶を125℃で3時間、減圧下、エタノール、水分を留去した。乾燥後の水分は48ppm、残存溶媒量は31ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.94%であった。収率は60%であった。
【0064】
比較例3
実施例3で作成した粗SBP・BF100部に100部のメタノールを加えて、25℃で溶解した。−10℃の冷蔵庫に10時間放置し、結晶を析出させた。その後ろ過にて、溶媒を除去した結晶の重量に対して等量のエタノールで撹拌洗浄を25℃で1分間行った。洗浄後の結晶をろ過にて回収した。結晶を125℃で3時間、減圧下、メタノール、エタノール、水分を留去した。乾燥後の水分は38ppm、残存溶媒量は36ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.89%であった。収率は63%であった。
【0065】
比較例4
実施例19で作成した粗TEMP・BF100部に100部のメタノール/IPAを加えて、30℃で溶解した。溶媒重量%はメタノール75%、IPA25%であった。−10℃の冷蔵庫に10時間放置し、結晶を析出させた。その後ろ過にて、溶媒を除去した結晶の重量に対して等量のIPAで撹拌洗浄を25℃で5分間行った。洗浄後の結晶をろ過にて回収した。結晶を125℃で3時間、減圧下、メタノール、IPA、水分を留去した。乾燥後の水分は25ppm、残存溶媒量は46ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は99.34%であった。収率は65%であった。
【0066】
比較例5
実施例5で作成した粗EDMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにメタノール3部投入し、85℃で溶解した。溶解した粗EDMI・BFを常圧から50MPa/minの速度で550MPaまで加圧した。550MPaで15分間保持した後、50MPa/minの速度で200MPaまで降圧した。200MPaで10分保持した後、50MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は23ppm、残存溶媒量は22ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は96.88%であった。収率は88%であった。
【0067】
比較例6
実施例1で作成したTMI・BF100部を圧力晶析装置に仕込み、そこにエタノール4部投入し、85℃で溶解した。溶解した粗TMI・BFを常圧から10MPa/minの速度で45MPaまで加圧した。45MPaで15分間保持した後、10MPa/minの速度で20MPaまで降圧した。20MPaで5分保持した後、20MPa/minの速度で常圧まで降圧した。降圧後の水分は49ppm、残存溶媒量は56ppmであった。HPLC、19F−NMR、13C−NMR、H−NMR分析より、得られたオニウム塩の純度は98.21%であった。収率は43%であった。
【0068】
実施例1〜19および比較例1〜6について、オニウム塩の種類、使用溶媒量および使用溶媒、晶析圧力、降圧時の保持圧を表1に記載し、表2に晶析時間、純度、収率を記載した。
表1、2から、本発明の製造方法によると、溶媒を使用しないか、もしくは少量の溶媒を使用し、かつ得られた結晶から溶媒を除去する加熱工程必要とせず、高純度のオニウム塩を高収率で得ることができることがわかった。
【0069】
【表1】

*1晶析仕込みのオニウム塩100部に対する溶媒量
TEMA:トリエチルメチルアンモニウム SBP:スヒ゜ロ-(1,1’)-ヒ゛ヒ゜ロシ゛ニウム
TeMI:1,2,3,4-テトラメチルイミタ゛ソ゛リウム TMI:1,2,3-トリメチルイミタ゛ソ゛リウム
EDMI:1-エチル-2,3-シ゛メチルイミタ゛ソ゛リウム TEMP: トリエチルメチルホスホニウム
【0070】
【表2】

収率:(精製後オニウム塩重量/仕込みオニウム塩中の純分重量)×100
【0071】
実施例1〜19および比較例1〜6の製造方法により製造したオニウム塩をプロピレンカーボネート(PCと略記する。)で1mol/Lに希釈し、電解液1〜19及び比較電解液1〜7を作成した。これらの各種電解液を使用して、コイン型の電気化学キャパシタを作製し、等価直列抵抗の変化率を評価した。これらの結果を表2に示した。
(1)等価直列抵抗の変化率
電気化学キャパシタに80℃で2.5Vの電圧を1000時間印加したときの電気化学キャパシタの1kHzでの等価直列抵抗(RE1000)と電圧印加前の1kHzでの等価直列抵抗(RE0)との比を以下の式で算出し、これを等価直列抵抗の変化率とした。なお、等価直列抵抗はインピーダンスアナライザ(ソーラトロン製SI1253、SI1286)を用いて25℃で測定した。この変化率は、値が小さいほど、経時的な性能劣化が小さく、良好な充放電特性を維持できることを意味する。
(等価直列抵抗変化率)(%)=100×[(RE1000)/(RE0)]
【0072】
表2から、本発明の製造方法により製造されたオニウム塩を電解液として使用した電気化学キャパシタの等価直列抵抗の変化率は、小さいことがわかった。
表2から、本発明の製造方法によると、晶析時間が高圧晶析の方が、冷却晶析よりも晶析時間が短く、溶媒の量も減らせることがわかった。
また、このような高純度のオニウム塩を使用すれば、等価直列抵抗変化率の小さい、すなわち経時的な性能劣化が極めてわずかな電気化学素子用電解液を製造することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の製造方法により得られるオニウム塩は、高純度であることから、電気化学素子用電解液、特に電気化学キャパシタ用電解液、また、医薬、農薬、染料等の製造中間体として、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂硬化剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成されたオニウム塩に50〜500MPa の圧力を加圧して精製する工程を含むことを特徴とするオニウム塩の製造方法。
【請求項2】
合成されたオニウム塩の溶融液、又は合成されたオニウム塩の溶液に50〜500MPaの圧力を加圧して結晶を生成させた後、降圧しながらオニウム塩結晶を濾別する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
合成されたオニウム塩を、融点〜(融点+30)℃の温度範囲で溶融させて溶融液とする
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
合成されたオニウム塩の溶融液、又は合成されたオニウム塩の溶液に50〜500MPaの圧力を加圧して結晶を生成させた後、降圧速度2〜100MPa/minで降圧しながらオニウム塩結晶を濾別する請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
降圧しながらオニウム塩結晶を濾別する途中で、一旦50〜200MPaに保持する請求項2〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
合成されたオニウム塩の溶液が、オニウム塩の重量に対して1〜10重量%の溶媒を加えて調製されたものである請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
オニウム塩が4級アンモニウム塩である請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
4級アンモニウム塩がアミジニウム塩である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法で得られるオニウム塩を非水溶媒に溶解することを特徴とする電気化学素子用電解液の製造方法。





【公開番号】特開2010−37280(P2010−37280A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202744(P2008−202744)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】