説明

オニウム塩開始剤系を含有する機上現像可能なIR感受性印刷版

【課題】本発明は、機上現像可能な印刷版の用途に適した輻射線感受性組成物を提供する。
【解決手段】この輻射線感受性組成物は、オニウム塩およびIR線吸収剤を含む開始剤系を含む。この開始剤系は重合可能な材料と、ポリエチレンオキシド・セグメントを含む高分子バインダーと組み合わされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具体的には、本発明は、開始剤系と、ポリエチレンオキシド(「PEO」)・セグメントを含有する高分子バインダーとを含む輻射線感受性層を有する機上現像可能な印刷版前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版前駆体は典型的には、支持体の親水性表面上に塗布された輻射線感受性塗膜を含む。輻射線感受性塗膜は一般に、有機高分子バインダー中に分散された感光性成分を含む。塗膜の一部を輻射線に当てたあと(一般に像様露光と呼ばれる)、露光された部分は特定の液体中で、塗膜の未露光部分よりも現像性が大きくなるか、または未露光部分よりも現像性が小さくなるかいずれかである。露光された部分または露光された領域が現像液中で現像性が小さくなる場合、印刷版前駆体は一般に、ネガ型前駆体と考えられ、そして未露光部分または未露光領域は現像過程中に除去される。好適な液体中で現像されたあと、画像領域はインクを受理する一方、支持体の親水性表面の露出表面はインクを弾く。
【0003】
輻射線感受性組成物の特性を改善して印刷版性能を高めるいくつかの可能な方法がある。一つの改善法は、輻射線感受性層内の輻射線感受性成分を最適にすることに関係する。例えば、種々の参考文献には、ラジカル開始化合物と輻射線吸収材料との種々の組み合わせを含む開始剤系または開始剤複合体の使用が報告されている。輻射線感受性層に輻射線による露光を施すと、輻射線吸収化合物は輻射線を吸収し、そして熱エネルギーを放出する。ラジカル開始化合物は、重合可能な材料の重合または硬化を促進することにより、画像領域を生成する。
【0004】
例えば、Shimada他の米国特許出願公開第2002/0025489号明細書に報告されている感熱性組成物は、加熱されると酸またはラジカルを生成する化合物(例えばオニウム塩)と、酸またはラジカルによって不可逆変化させられる物理特性を有する化合物とを含む。この組成物はさらにIR色素を含んでよい。Shimada他の米国特許出願公開第2003/0054288号明細書に報告されている感受性組成物は、カチオン性オニウム塩と、重合可能な不飽和基を有する化合物と、光熱変換剤、例えばIR色素とを含む。米国特許出願公開第2003/0068575号明細書に報告されている印刷版用感光性層は、IR吸収剤、オニウム塩、ラジカル重合可能な化合物、高分子バインダー、および有機色素を含む。
【0005】
加えて、Adair他の米国特許第4,751,102号明細書、およびGottshalk他の同第4,937,159号明細書に報告されている光硬化可能な組成物は、ラジカル重合可能または架橋可能な化合物と、イオン性色素対イオン化合物とを含み、イオン性色素対イオン化合物は、輻射線を吸収してラジカルを生成することにより、重合可能または架橋可能な化合物の重合または架橋を開始することができる。Kawabata他の米国特許第5,368,990号明細書に報告されている光重合可能な組成物は、付加重合化合物と光重合開始化合物とを含み、この光重合開始化合物は、特定のアニオン性色素と、重合開始剤としてのジアリールヨードニウム塩とを含む。Patel他の米国特許第5,208,135号明細書には、アニオン性感光性色素、ヨードニウム塩およびラジカル硬化性樹脂が報告されている。
【0006】
最近では、開始剤系または開始剤複合体が、「プロセスレス」または「機上現像可能な」印刷版に利用できることが突き止められている。本明細書中に使用される「プロセスレス」および/または「機上現像可能」という用語は、印刷機上に取り付ける前に、1つまたは2つ以上のコンベンショナルな処理工程(例えば現像)を必要としない印刷版前駆体を意味する。例えば、Tengの米国特許第6,482,571号明細書、および同第6,548,222号明細書に報告されている機上現像可能な印刷版は感熱性層を有し、この感熱性層は、ラジカル開始剤と、輻射線吸収材料と、重合可能なモノマーとを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プロセスレス印刷版における最近の進歩にもかかわらず、製造効率の改善を促進する開始剤系を内蔵するプロセスレス印刷版前駆体を調製するのが有益である。この製造効率の改善には、画像形成速度の上昇、取扱い特性および評価特性(例えば肉眼で見えるプリントアウト)の改善、並びに機上における耐久性および印刷部数の著しい増大を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様では、本発明は、ポリエチレンオキシド(「PEO」)・セグメントを含む高分子バインダー、および重合可能な材料と組み合わされた、オニウム塩およびIR線吸収剤を含む開始剤系または開始剤複合体を含む、輻射線感受性組成物を提供する。
【0009】
好適なオニウム塩は、例えば、スルホニウム塩、オキシスルホキソニウム塩、オキシスルホニウム塩、スルホキソニウム塩、アンモニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、および/またはハロニウム塩、例えばヨードニウム塩を含んでよい。一つの態様では、オニウム塩はヨードニウム塩である。
【0010】
好適なIR輻射線吸収剤は、アニオン性発色団を有するIR輻射線吸収剤を含む。本明細書中に使用される「アニオン性発色団」という用語は、1つ以上のアニオン性基を有し、全体として負の電荷を有する発色団を意味する。一つの態様では、IR輻射線吸収剤はIR色素である。好適なIR色素は一般に、アゾ色素、スクアリリウム色素、クロコネート色素、トリアリールアミン色素、チアゾリウム色素、インドリウム色素、オキソノール色素、オキサキソリウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、インドシアニン色素、インドトリカルボシアニン色素、オキサトリカルボシアニン色素、フタロシアニン色素、チオシアニン色素、チアトリカルボシアニン色素、メロシアニン色素、クリプトシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリアニリン色素、ポリピロール色素、ポリチオフェン色素、カルコゲノピリロアリーリデンおよびビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン色素、オキシインドリジン色素、ピリリウム色素、ピラゾリンアゾ色素、オキサジン色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、キノネイミン色素、メチン色素、アリールメチン色素、スクアリン色素、オキサゾール色素、クロコニン色素、ポルフィリン色素を含む。アニオン性発色団を有するIR色素が、本発明の態様において使用するのに特に好ましい。
【0011】
本発明の輻射線感受性組成物中に使用するのに好適な重合可能な材料は、付加重合可能なエチレン系不飽和基、架橋可能なエチレン系不飽和基、開環重合可能な基、アジド基、アリールジアゾニウム塩基、アリールジアゾスルホネート基またはこれらの組み合わせを含む。
【0012】
PEOセグメントを有する好適な高分子バインダーは、コポリマー、例えば主鎖ポリマーとPEO側鎖とを有するグラフト・コポリマー、PEOブロックと非PEOブロックとを有するブロック・コポリマー、またはこれらのグラフト・コポリマーとブロック・コポリマーとの組み合わせを含むことができる。
【0013】
本発明の態様に従って形成される輻射線感受性組成物は、水中およびその他の水溶液中に可溶性および/または分散性となることができる。より具体的には、輻射線感受性組成物は、平版印刷機に共通して使用される湿し水および/またはインク中に可溶性および/または分散性となることができる。
【0014】
別の態様の場合、本発明は、支持体と輻射線感受性層とを含む画像形成性要素を提供する。輻射線感受性層は、オニウム塩およびIR線吸収剤を含む開始剤系と、重合可能な材料と、PEOセグメントを含む高分子バインダーとを含む。この態様に好適な支持体は、アルミニウム支持体を含む。アルミニウム支持体は、砂目立て、陽極酸化することができ、そして/または例えば中間層を形成するためにポリアクリル酸で後処理することができる。輻射線感受性層は水中、並びに湿し水および/またはインク中で現像可能となることができる。
【0015】
別の態様の場合、本発明は、支持体と輻射線感受性層とを含み、該輻射線感受性層が、UV線感受性オニウム塩を含む開始剤系と、重合可能な材料と、PEOセグメントを含む高分子バインダーとを含む、画像形成性要素を提供する。この態様は、UV線で画像形成するのに特に適している。
【0016】
さらに別の態様の場合、本発明は、印刷版前駆体を形成する方法であって、本明細書中に記載された開始剤系、重合可能な材料、および高分子バインダーを好適なキャリヤと組み合わせることにより、塗膜混合物を形成する、印刷版前駆体を形成する方法を提供する。塗膜混合物を支持体上に塗布し、次いで乾燥させることにより、輻射線感受性層を形成する。次いで、輻射線感受性層に、IR輻射線による像様露光を施すことにより、画像形成された印刷版前駆体を作製し、この画像形成された印刷版前駆体において、該輻射線感受性層の露光された部分は好適な現像液(例えば水、湿し水および/またはインク)中で、該輻射線感受性層の未露光部分よりも現像性が低い。その後、画像形成された印刷版前駆体を、湿し水および/またはインクを使用して機上現像することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来の印刷版を凌ぐいくつかの利点をもたらす。第1に、本発明の印刷版前駆体は、多くの機上現像可能な印刷版よりも高い画像形成速度で画像形成することができる。このことは結果として、処理量を増大させ、また製造効率全体を改善することができる。第2には、本発明に従って形成された印刷版前駆体は、別個の現像工程を必要とすることなしに、機上現像することができる。第3には、本発明の態様に従って形成された印刷版は、本発明の輻射線感受性層を含まない印刷版と比較して、著しく改善された印刷部数および耐久性を有する。第4に、印刷版上の画像領域は、非画像形成領域と肉眼で識別可能である。このことは、印刷機外(オフ・プレス)の、および/または印刷機への取り付け前(プレ・プレス)の印刷版の取扱いおよび評価を改善可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の輻射線感受性組成物は、重合可能な材料、およびPEO基またはセグメントを含む高分子バインダーと組み合わされた、開始剤系を含む。
【0019】
本発明の輻射線感受性組成物中に使用される開始剤系は、好適なオニウム塩を含むことができる。好適なオニウム塩は、スルホニウム塩、オキシスルホキソニウム塩、オキシスルホニウム塩、スルホキソニウム塩、アンモニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、および/またはハロニウム塩、例えばヨードニウム塩を含んでよい。
【0020】
好適なホスホニウム塩は、4つの有機置換基を備えた正荷電型超原子価リン原子を含む。好ましいスルホニウム塩、例えばトリフェニルスルホニウム塩は、3つの有機置換基を備えた正荷電型超原子価イオウを有することができる。好適なジアゾニウム塩は、正荷電型アゾ基(すなわち-N=N+)を有することができる。好適なアンモニウム塩は、正荷電型窒素原子、例えば4つの置換基を備えた置換型第4級アンモニウム塩、およびN-アルコキシピリジニウム塩を含む。好適なヨードニウム塩、例えばジアリールヨードニウム(Ar1-I+-Ar2; Ar=アリール基)塩、例えばジフェニルヨードニウム塩は、2つの置換基を備えた正荷電型超原子価ヨウ素原子を有することができる。
【0021】
好適なオニウム塩の具体例は、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムオクチルスルフェート、ジフェニルヨードニウムオクチルチオスルフェート、ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシレート、4,4'-ジクミルヨードニウムクロリド、4,4'-ジクミルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4'-ジクミルヨードニウムp-トリルスルフェート、[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル-オキシ]-フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、N-メトキシ-α-ピシノリニウム-p-トルエンスルホネート、4-メトキシベンゼン-ジアゾニウムテトラフルオロボレート、4,4'-ビス-ドデシルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、2-シアノエチル-トリフェニルホスホニウムクロリド、ビス-[4-ジフェニルスルホニウムフェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、ビス-4-ドデシルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムオクチルスルフェート、2-メトキシ-4-(フェニルアミノ)-ベンゼンジアゾニウムヘキサデシルスルフェート、2-メトキシ-4-(フェニルアミノ)-ベンゼンジアゾニウムビニルベンジルチオスルフェート、2-メトキシ-4-(フェニルアミノ)-ベンゼンジアゾニウムオクチルスルフェート、2-メトキシ-4-アミノフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェノキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、およびアニリノフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネートを含むことができる。
【0022】
本発明の態様において使用するのに適した付加的なオニウム塩が、Brown-Wensley他の米国特許第5,086,086号明細書、Kobayashiの米国特許第5,965,319号明細書、Baumann他の米国特許第6,051,366号明細書、およびOohashi他の米国特許出願公開第2002/0068241号明細書に報告されている。これらを本発明による好適なオニウム塩を例示する目的で、引用することにより本明細書中に導入する。
【0023】
ヨードニウム塩が本発明の態様に使用するのに特に適している。一つの態様では、例えばオニウム塩は、好適な負荷電型対イオンを有する、正荷電型ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-部分である。この塩の具体例は、Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, NYから入手可能なIgracure 250である。Igracure 250の化学式は、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル],-ヘキサフルオロホスフェートであり、これは、75w/w%炭酸プロピレン溶液中で供給される。
【0024】
本発明の開始系において使用するのに適した輻射線吸収剤は、約600〜約1200nmの範囲の輻射線を吸収するIR輻射線吸収剤を含んでよい。好適なIR輻射線吸収剤は、アニオン性発色団を有することができる。
【0025】
一つの態様では、輻射線吸収剤は、IR色素、より具体的にはアニオン性発色団を有するIR色素を含む。好適なIR色素の例は、アゾ色素、スクアリリウム色素、クロコネート色素、トリアリールアミン色素、チアゾリウム色素、インドリウム色素、オキソノール色素、オキサキソリウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、インドシアニン色素、インドトリカルボシアニン色素、オキサトリカルボシアニン色素、フタロシアニン色素、チオシアニン色素、チアトリカルボシアニン色素、メロシアニン色素、クリプトシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリアニリン色素、ポリピロール色素、ポリチオフェン色素、カルコゲノピリロアリーリデンおよびビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン色素、オキシインドリジン色素、ピリリウム色素、ピラゾリンアゾ色素、オキサジン色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、キノネイミン色素、メチン色素、アリールメチン色素、スクアリン色素、オキサゾール色素、クロコニン色素、ポルフィリン色素、前記色素のいずれかの置換形、または前記色素のいずれかのイオン形を含むことができる。好適な色素はまた、Patel他の米国特許第5,208,135号明細書に開示されている。これを参考のため本明細書中に引用する。
【0026】
アニオン性発色団を有するシアニン色素が、本発明の態様において使用するのに特に適している場合がある。一つの態様では、シアニン色素は2つの複素環式基を有する発色団を含有することができる。別の態様の場合、シアニン色素は、2つ以上のスルホン酸基、より具体的には2つ以上のスルホン酸基および2つのインドレニン基を有することができる。シアニン色素の混合物も好適である場合がある。好適なシアニン色素の一般例は、下記式:
【0027】
【化1】

【0028】
によって表され、
上記式中、Arは置換型または無置換型アリールであり、Eは正荷電型対イオンであり、そしてn=1または2である(これにより、炭素原子数5または6の環を形成する)。
【0029】
一つの態様では、IR色素は式:
【0030】
【化2】

【0031】
によって表される。
【0032】
近赤外吸収シアニン色素はまた、例えばHauckの米国特許第6,309,792号明細書、Achilefu他の米国特許第6,264,920号明細書、Urano他の米国特許第6,153,356号明細書、Watanabe他の米国特許第5,496,903号明細書に開示されている。好適な色素はコンベンショナルな方法によって生成することができ、そして/または例えばAmerican Dye Source, Baie D'Urfe(カナダ国Quebec)およびFEW Chemicals(ドイツ国)から得ることができる。乾燥塗膜における輻射線吸収剤の濃度は、約0.05〜約20w/w%、より具体的には、約0.1〜約5w/w%の範囲にあってよい。
【0033】
輻射線感受性組成物は、UV線に対して感受性であってもよい。一つの態様では、開始剤系の1種または2種以上の成分、例えばオニウム塩はUV感受性である。別の態様の場合、輻射線感受性組成物に、付加的なUV輻射線吸収剤を添加することができる。本発明のUV感受性の態様の場合、IR線吸収剤は必要とされないが、所望の場合には含まれてよい。
【0034】
本明細書に報告された開始剤系は、輻射線による露光を施されると、好適な現像液中での輻射線感受性層の可溶性に影響を与えることがある。より具体的には、輻射線露光時に、オニウム塩は、重合可能な材料の重合を引き起こすかまたは誘発することがある。この重合はさらに、輻射線吸収剤の存在によって促進することができる。輻射線吸収剤は輻射線を吸収することにより、熱エネルギーを生成することができる。本明細書中に報告したようなオニウム塩とIR線吸収剤とを含む開始系は、この重合プロセスを最適化することにより、高耐久性の印刷版をより効率的に製造することができる。
【0035】
本発明の輻射線感受性組成物中に使用するのに適した重合可能な材料は、付加重合可能なエチレン系不飽和基、架橋可能なエチレン系不飽和基、開環重合可能な基、アジド基、アリールジアゾニウム塩基、アリールジアゾスルホネート基またはこれらの組み合わせを含む。好適な重合可能な材料はまた、米国特許出願公開第2003/0064318号明細書に報告されている。これを引用することにより本明細書中に導入する。
【0036】
好適な付加重合可能なエチレン系不飽和基は、ラジカル重合、カチオン重合、またはこれらの組み合わせによって重合可能となることができる。好適なラジカル付加重合可能なエチレン系不飽和基は、メタクリレート基、アクリレート基、またはこれらの組み合わせを含むことができる。好適なカチオン重合可能なエチレン系不飽和基は、ビニルエーテル、アリール置換型ビニル化合物(スチレンおよびアルコキシスチレン誘導体を含む)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。好適な架橋可能なエチレン系不飽和基は、ジメチルマレイミド基、カルコン基、またはシナメート基を含むことができる。好適な開環重合可能な基は、エポキシド、オキセタン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0037】
一つの態様では、本発明において使用される重合可能な材料は、アクリレート部分、メタクリレート部分またはこれらの組み合わせを含む。別の態様の場合、重合可能な材料は、ウレタンアクリレート、ウレタン(メト)アクリレートまたはこれらの組み合わせを含む。例えば、重合可能な材料は、ヘキサメチレンジイソシアネート(Bayer Corp、Milford, CTから入手可能)を基剤とする脂肪族ポリイソシアネート樹脂を、ヒドロキシアクリレートおよびペンタエリトリトールと反応させることにより調製されたウレタンアクリレート・モノマーを含むことができる。
【0038】
本発明の重合可能な材料は、輻射線感受性層の輻射線露光済部分を、水溶液または現像液、例えば湿し水および/またはインク中に実質的に不溶性にするのに十分な量で含まれてよい。重合可能な材料と高分子バインダーとの重量比は約5:95〜約95:5、具体的には約10:90〜約90:10、より具体的には約20:80〜約80:20、およびさらにより具体的には約30:70〜約70:30となることができる。
【0039】
本発明の輻射線感受性層中に使用される好適な高分子バインダーは、PEOセグメントを有するポリマーを含み、そして、米国特許出願公開第2003/0064318号明細書に報告されたポリマーを含んでよい。前記明細書を参考のため本明細書中に引用する。一つの態様では、本発明の高分子バインダーは、主鎖ポリマーとPEO側鎖とを有するグラフト・コポリマーを含んでよい。
【0040】
本発明との関連における「グラフト」ポリマーまたはコポリマーという用語は、分子量200以上の基を側鎖として有するポリマーを意味する。このようなグラフト・コポリマーは、例えばアニオン、カチオン、非イオンまたはラジカル・グラフト法によって得ることができ、或いは、このような基を含有するモノマーを重合または共重合することにより得ることができる。本発明との関連における「ポリマー」は、オリゴマーを含む、高分子量ポリマーおよび低分子量ポリマーを意味し、そしてホモポリマーおよびコポリマーを含む。「コポリマー」という用語は、2種または3種以上の異なるモノマーまたはオリゴマーに由来するポリマーを意味する。本発明との関連における「主鎖」という用語は、複数のペンダント基が結合されたポリマー中の原子鎖を意味する。
【0041】
グラフト・コポリマーは、両親媒性となることができる(すなわち親水性セグメントおよび疎水性セグメントの両方を含むことができる)。このような両親媒性コポリマーは、界面活性である傾向を有してもよい。PEOセグメントは親水性である。疎水性セグメントと親水性セグメントとの組み合わせは、露光済領域と未露光領域との差別化を高めることができる。
【0042】
本発明の態様において使用されるグラフト・コポリマーのガラス転移温度Tgは、約35〜約220℃、より具体的には約45〜約140℃、さらにより具体的には約50〜約130℃となることができる。上記に特定された範囲内のTg値を有する高分子バインダーは、非弾性的でありかつ架橋されない固体となることができる。グラフト・コポリマーの主鎖ポリマーのガラス転移温度Tgは、約40〜約220℃、より具体的には約50〜約140℃、さらにより具体的には約60〜約130℃となることができる。
【0043】
グラフト・コポリマーの数平均分子量は約2,000〜約2,000,000となることができる。PEOセグメントの数平均分子量(Mn)は、約500〜約10,000、より具体的には約600〜約8,000、さらにより具体的には約750〜約4,000となることができる。Mn値が約500未満の場合、水性現像性を適切に促進するには親水性セグメントが不十分になるおそれがある。他面において、PEOセグメントのMn値が増大して10,000に接近し、そして/または10,000を上回るのに伴って、画像領域のインク受理性は減少する傾向がある。グラフト・コポリマー中のPEOセグメントの量は、約0.5〜約60重量%、より具体的には約2〜約50重量%、さらにより具体的には約5〜約40重量%となることができる。
【0044】
一つの態様では、グラフト・コポリマーは、疎水性ポリマー主鎖と、式:
【0045】
【化3】

【0046】
によって表される複数のペンダント基とを含むことができ、
上記式中、Qは二官能性結合基であり;Wは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;Yは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;但し、Wが親水性セグメントのときには、Yは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであるものとし;さらに、Wが疎水性セグメントのときには、Yは親水性セグメントであるものとする。
【0047】
別の態様の場合、グラフト・コポリマーは、各単位が式:
【0048】
【化4】

【0049】
によって表される反復単位を含むことができ、
上記式中、R1およびR2のそれぞれは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、COOR5、R6CO、ハロゲンまたはシアノであり、前記式中、R5およびR6のそれぞれは独立してアルキル、アリール、アラルキルまたはアルカリールであり;
Qは:
【0050】
【化5】

【0051】
であり、
上記式中、R3は水素またはアルキルであり;R4は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アシルまたはこれらの組み合わせであり;
Wは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;
Yは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;
Zは水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、アシルオキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル、アシル、アミノカルボニル、アリールまたは置換型アリールであり;但し、Wが親水性セグメントのときには、Yは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであるものとし;さらに、Wが疎水性セグメントのときには、Yは親水性セグメントであるものとする。
【0052】
一つの態様では、本発明のグラフト・コポリマーは、大部分が疎水性である主鎖セグメントと、大部分が親水性である分枝セグメントとを含む。別の態様の場合、グラフト・コポリマーは、大部分が疎水性である主鎖セグメントと、疎水性セグメントおよび親水性セグメントの両方を含む分枝セグメントとを含む。
【0053】
本発明のグラフト・コポリマー内のWにおける親水性セグメントは、式:
【0054】
【化6】

【0055】
または
【0056】
【化7】

【0057】
によって表されるセグメントであってよく、
上記式中、R7、R8、R9およびR10のそれぞれは水素であり;R3は水素またはアルキルであり;そしてnは約12〜約250である。W内の疎水性セグメントは、-R12-、-O-R12-O-、-R3N-R12-NR3-、-OOC-R12-O-または-OOC-R12-O-であり、前記式中、各R12は独立して、炭素原子数6〜120の線状、分枝状または環状アルキレン、炭素原子数6〜120のハロアルキレン、炭素原子数6〜120のアリーレン、炭素原子数6〜120のアルカリレン、または炭素原子数6〜120のアラルキレンであることが可能であり;そしてR3は水素またはアルキルである。
【0058】
Y内の疎水性セグメントは水素、R15、OH、OR16、COOH、COOR16、O2CR16、式:
【0059】
【化8】

【0060】
または
【化9】

【0061】
によって表されるセグメントであり、
上記式中、R7、R8、R9およびR10のそれぞれは水素原子であり;R3は水素またはアルキルであり;上記式中、R13、R14、R15およびR16のそれぞれは水素、または炭素原子数1〜5のアルキルであり、そしてnは約12〜約250である。Y内の疎水性セグメントは、炭素原子数6〜120の線状、分枝状または環状アルキル、炭素原子数6〜120のハロアルキル、炭素原子数6〜120のアリール、炭素原子数6〜120のアルカリール、炭素原子数6〜120のアラルキル、OR17、COOR17、またはO2CR17であり、前記式中、R17は炭素原子数6〜20のアルキルである。
【0062】
別の態様の場合、セグメントW-Yは式:
【0063】
【化10】

【0064】
によって表され、
上記式中、nは約12〜約75である。この態様の場合、グラフト・コポリマーは例えば、式:
【0065】
【化11】

【0066】
によって表される反復単位を有し、
上記式中、nは約12〜約75である。より具体的には、nの平均値は約45である。
【0067】
さらに別の態様の場合、グラフト・コポリマーは式:
【0068】
【化12】

【0069】
によって表される反復単位を含み、
上記式中、nは約12〜約75である。より好ましくは、nの平均値は約45である。
【0070】
更なる態様の場合、本発明のグラフト・コポリマーの主鎖ポリマーは、アクリレート・エステル、メタクリレート・エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの組み合わせを含むモノマー単位を含む。より具体的には、モノマー単位は、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート、またはこれらの組み合わせである。
【0071】
疎水性セグメントおよび/または親水性セグメントを有するグラフト・コポリマーは、下記工程(A)(B)を含む方法によって調製することができる:
(A) 重合可能なグラフト・コポリマーを生成するために、下記成分(i)と(ii)とを接触させる工程:
(i)下式によって表される化合物:
【0072】
【化13】

【0073】
(上記式中、W'は親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;そしてY'は親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;但し、W'が親水性セグメントのときには、Y'は親水性セグメントまたは疎水性セグメントであるものとし;さらに、W'が疎水性セグメントのときには、Y'は親水性セグメントであるものとする)、および、
【0074】
(ii)下式によって表される化合物から選択された重合可能な材料
【0075】
【化14】

【0076】
(上記式中、各R1は水素、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、COOR5、R6CO、ハロゲンまたはシアノであり、前記式中、R5およびR6のそれぞれは独立してアルキル、アリール、アラルキルまたはアルカリールであり;R4は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アシルまたはこれらの組み合わせであり;そしてXはグリシジルオキシ、または、ハロゲン、アルコキシまたはアリールオキシから選択された離脱基である);そして
【0077】
(B) 重合可能なグラフト・モノマーと1種または2種以上のコモノマーとを、グラフト・コポリマーを生成するのに十分な温度で、そして十分な時間にわたって共重合させる工程。必要な場合には、接触工程は触媒の存在において行われる。
【0078】
コモノマーは、スチレン、置換型スチレン、アルファ-メチルスチレン、アクリレート・エステル、メタクリレート・エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ハロゲン化ビニル、ビニル・エステル、ビニルエーテルおよびアルファ-オレフィンとなることができる。
【0079】
重合可能なモノマーは、W'-Y'と反応することができる任意のモノマーであってよく、重合可能なモノマー、例えばm-イソプロペニル-α,α,-ジメチルベンジルイソシアネート、アクリロイルクロリドおよびメタクリロイルクロリドを含む。反応は典型的には、触媒の存在において実施される。触媒は塩基、錫化合物、またはこれらの混合物となることができる。酸触媒を含む反応において、酸触媒、例えばルイス酸またはプロトン酸を使用することができる。
【0080】
式W'-Y'によって表される化合物は、式:
【0081】
【化15】

【0082】
によって表される化合物のうちの1種または2種以上であってよく、
上記式中、R7、R8、R9およびR10のそれぞれは水素であり;R3は水素またはアルキルであり;Yはアルキル、アシルオキシ、アルコキシまたはカルボキシレートであり;そしてnは約12〜約250である。
【0083】
グラフト・コポリマーは、約99:1〜約45:55のコモノマー:グラフト・モノマーとの重量比で、グラフト・モノマーとコモノマーとをラジカル共重合することによって得ることができる。
【0084】
或いは、グラフト・コポリマーは、本発明による重合可能なモノマーと1種または2種以上のコモノマーとを、重合可能なコポリマーを生成するのに十分な温度で、そして十分な時間にわたって先ず共重合し、その後グラフト可能なコポリマー上に基W'-Y'をグラフトすることにより、調製することができる。このようなグラフティングは、触媒の存在において、上記グラフト可能なコポリマーと、式:
【0085】
【化16】

【0086】
によって表される化合物とを接触させることにより達成することができ、
上記式中、W'は親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;Y'は親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;但し、W'が親水性セグメントのときには、Y'は親水性セグメントまたは疎水性セグメントであるものとし;さらに、W'が疎水性セグメントのときには、Y'は親水性セグメントであるものとする。
【0087】
本発明のグラフト・コポリマーは、ヒドロキシ官能性またはアミン官能性ポリエチレングリコール・モノアルキルエーテルを、酸塩化物、イソシアネートおよび無水物基を含む共反応性基を有するポリマーと反応させることによって、調製することができる。側鎖はさらに、PEOセグメントと主鎖との間に疎水性セグメントを、またPEO側鎖の末端に疎水性セグメントを含むことができる。本発明のグラフト・コポリマーの他の調製方法は、米国特許出願公開第2002/0155375号明細書、同第2002/0172888号明細書に記載された方法を含む。これら両方の明細書を参考のため本明細書中に引用する。
【0088】
グラフト・コポリマーの主鎖ポリマーは、付加ポリマーまたは縮合ポリマーとなることができる。付加ポリマーは、アクリレートおよびメタクリレート・エステル、アクリル酸およびメタクリル酸、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、スチレン、ビニルフェノールおよびこれらの組み合わせから調製することができる。付加ポリマーは、スチレン、メチルメタクリレート、アリルアクリレートおよびメタクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸、およびこれらの組み合わせから調製することもできる。縮合ポリマーは、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、並びにフェノール/ホルムアルデヒド・ポリマーおよびピロガロール/アセトン・ポリマーを含むフェノール系ポリマーから調製することもできる。グラフト・コポリマーの好適な混合物はそれぞれ、主鎖ポリマーとPEO側鎖とを含むことができる。
【0089】
別の態様の場合、高分子バインダーは、PEOブロックおよび非PEOブロックを有するブロック・コポリマーを含む。本発明のブロック・コポリマーは、アニオン、カチオンおよびラジカル重合を含むコンベンショナルな手順によって形成することができる。原子移動ラジカル重合(ATRP)と、可逆付加断片化連鎖移動(RAFT)重合が特に好適な方法であることがある。PEOブロック・コポリマーは、M. Ranger他の「From well-defined diblock copolymers prepared by a versatile atom transfer radical polymerization method to supramolecular assemblies」(Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry, 第39(2001), 第3861-74頁)に報告されているような、ATRP法によって調製することもできる。
【0090】
ブロック・コポリマーは、数平均分子量約2,000〜約2,000,000を有することができる。PEOセグメントの数平均分子量(Mn)は、約500〜約10,000、より具体的には約600〜約8,000、さらにより具体的には約750〜約4,000となることができる。ブロック・コポリマー中のPEOセグメントの量は、約5〜約60重量%、より具体的には約10〜約50重量%、さらにより具体的には約10〜約30重量%となることができる。
【0091】
ブロック・コポリマーの非PEOブロックは、付加ブロック・ポリマーまたは縮合ブロック・ポリマーとなることができる。付加ブロック・ポリマーは、アリルアクリレートおよびメタクリレートを含むアクリレートおよびメタクリレート・エステル、アクリル酸およびメタクリル酸、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、スチレン、ビニルフェノールから選択されたモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む。好ましい縮合ブロック・ポリマーは、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミドおよびポリ尿素を含む。
【0092】
本発明の一つの態様では、ブロック・コポリマーの非PEOブロックは、ポリアルキレンオキシド・セグメントを有していない。別の態様の場合、非PEOブロックは、モノマー、例えばメチルメタクリレート、アリルアクリレートおよびメタクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸、スチレン、ビニルフェノールおよびこれらの組み合わせから成る、ホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【0093】
本発明の態様に含まれるブロック・コポリマーは、それぞれが1種以上のPEOブロックと1種以上の非PEOブロックとを含有するブロック・コポリマーの混合物を含んでよい。或いは、高分子バインダーは、本明細書中に報告したグラフト・コポリマーとブロック・コポリマーとの混合物を含んでもよい。
【0094】
高分子バインダーは、輻射線感受性層を、水性現像液中に可溶性または分散性にするのに十分な量で存在することができる。高分子バインダーの量は、組成物の約10〜約90乾燥重量%、より具体的には約30〜約70乾燥重量%となることができる。
【0095】
任意には、輻射線感受性組成物は離散粒子を含んでよい。例えば、これらの粒子はコポリマーの混合物を含むことができる。コポリマーは、モノマー単位の種々の可能な組み合わせを含有する。加えて、離散粒子は、重合可能な材料中に懸濁された高分子バインダー粒子となることができる。懸濁液中の粒子の主要寸法は、直径約60nm〜約300nmとなることができる。このような離散粒子の存在は、輻射線に当てられていない領域の現像性を促進することができる。
【0096】
輻射線感受性組成物は、分散剤、湿潤剤、殺生剤、可塑剤、界面活性剤、粘度上昇剤、着色剤、pH調整剤、乾燥剤、脱泡剤、保存剤、抗酸化剤、現像助剤、レオロジー改質剤、またはこれらの組み合わせを含む種々の添加剤を含んでもよい。一つの態様では、輻射線感受性組成物は、メルカプタン誘導体、例えばメルカプトトリアゾール、例えば3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、5-メルカプト-1-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾールおよび5-(p-アミノフェニル)-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾールを含む。種々のメルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンズチアゾール、およびメルカプトベンゾオキサゾールが好適となることができる。別の態様の場合、輻射線吸収剤は、粘度上昇剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含む。
【0097】
本発明の好適な支持体は、所望の用途、および採用された特定の組成物に応じて種々様々となることができる。支持体は、印刷またはその他の所望の用途から生じる磨耗に耐えるのに十分な厚さを有していてよく、そして印刷フォームに巻き付くのに十分に薄く、典型的には約100〜約600μmの厚さを有してよい。好適な支持体または支持体表面は水性であってよく、そして、金属、ポリマー、セラミック、剛性の紙、またはラミネート、またはこれらの材料の複合材料から形成されていてよい。好適な金属支持体は、アルミニウム、亜鉛、チタニウムおよびこれらの合金を含む。
【0098】
一つの態様では、支持体はアルミニウムを含む。アルミニウムには1つまたは2つ以上の処理工程を施すことができる。例えば、アルミニウム支持体は、例えばブラシ研磨、石英研磨、または電解研磨によって砂目立てすることができる。アルミニウム支持体は、硫酸またはリン酸の存在において電流を供給することにより、陽極酸化することもできる。付加的に、アルミニウム支持体に後処理を施すことにより、アルミニウム表面上に中間層を形成することができる。中間層処理に適した材料は、ポリアクリル酸、ポリビニルホスホン酸、リン酸二水素ナトリウム/フッ化ナトリウム、およびビニルホスホン酸/アクリルアミド・コポリマーを含む。
【0099】
一つの態様では、支持体は、ブラシ研磨され、リン酸で陽極酸化され、次いでポリアクリル酸を用いた後処理によって中間層を形成されたアルミニウム支持体である。
【0100】
リン酸で陽極酸化された支持体は、硫酸で陽極酸化された支持体を凌ぐ利点をもたらすことができる。なぜならば、硫酸陽極酸化から生じる陽極孔サイズは典型的には20nm未満であり、これに対してリン酸陽極酸化から生じる陽極孔サイズは典型的には30nmよりも大きいからである。本発明の陽極酸化された支持体の調製において、その他のコンベンショナルな陽極酸化法を用いることもできる。これらの方法は、硫酸陽極酸化によって生成される陽極孔サイズよりも大きい陽極孔サイズを生成する方法を含む。
【0101】
本明細書中で報告される輻射線感受性組成物は一般に、塗膜混合物として支持体に塗布される。塗膜混合物のための好適なキャリヤは、有機液体および水性液体の両方を含んでよい。より具体的には、好適なキャリヤは水性キャリヤ、および水性キャリヤ中の水混和性有機液体の混合物を含んでよい。本発明のキャリヤ中には多種多様の水混和性液体を使用することができる。好適な水混和性有機液体の例はアルコールおよびケトンを含む。
【0102】
適量の高分子バインダー、重合可能な材料、開始剤システム、および任意の添加剤をキャリヤと合体させることにより、塗膜混合物を形成することができる。一つの態様では、本発明の態様によるグラフト・コポリマーは、水混和性有機液体、例えばn-プロパノールまたはメチルエチルケトン中に先ず分散され、次いで塗膜混合物と混合される。
【0103】
塗膜混合物は、コンベンショナルな方法、例えばスピン塗布、バー塗布、グラビア塗布、ナイフ塗布、またはローラ塗布によって、好適な支持体の表面に塗布することができる。次いで、塗膜混合物を空気乾燥、オーブン乾燥、または輻射線硬化することによって、輻射線感受性層を形成することができる。この乾燥工程はキャリヤの一部および/または或る任意の成分、例えば分散剤を、除去および/または蒸発させることができる。輻射線感受性層の乾燥重量は、約0.2〜約5g/cm2、より具体的には約0.7〜約2.5g/cm2となることができる。
【0104】
任意には、得られた印刷版前駆体はさらに、上層を含んでよい。上層は、酸素不透過性化合物を含むことにより、酸素バリヤ層として役立つことができる。「酸素不透過性化合物」という用語は、IR露光によって生成されたラジカルの寿命存続中に、酸素が大気から層内に拡散するのを防止する化合物を意味する。上層は、像様露光前の取り扱い中の表面層の損傷、例えば引掻き傷を防止し、例えば部分アブレーションをもたらすおそれのある過剰露光による、像様露光済領域の表面への損傷を防止し、そして/または未露光領域の現像性を高めることもできる。
【0105】
任意には、画像形成性要素は下層を含んでもよい。下層は、像様未露光領域の現像性を高め、そして/または像様露光済領域のための断熱層として作用することができる。このような断熱高分子層は、その他の形式の急速放熱、例えば熱伝導性アルミニウム支持体を通した急速放熱を防止することができる。このことは、輻射線感受性層全体にわたって、具体的には輻射線感受性層の下側区分において、より効率的な熱画像形成を可能にする。これらの機能に基づいて、下層は現像液中に可溶性または分散性であってよく、また、比較的低い熱伝導率を有することができる。
【0106】
得られた印刷版前駆体に、輻射線、例えばIR線による像様露光を施すことにより、輻射線感受性層の露光された部分が好適な現像液中で、未露光部分よりも低い現像性を有するようにすることができる。好適な輻射線源の一例は、Creo Trendsetter 3230であり、これは約830nmの波長の近赤外線を発光するレーザ・ダイオードを含有し、Creo Products Inc.(カナダ国BC,Burnab)から入手可能である。その他の好適な輻射線源は、Crescent 42T Plate setter(1064nmの波長で作動する内部ドラム・プレートセッター)(Gerber Scientific(米国CT, South Windsor)、およびScreen PlatRite 4300シリーズまたは8600シリーズ(Scree, Chicago, Illinois)を含む。追加の有用な輻射線源は、直接画像形成印刷機を含む。これらは、印刷機胴に取り付けられている間に、印刷版に画像を形成することができる。好適な直接画像形成用印刷機の一例は、Heidelberg, Dayton, Ohioから入手可能なHeidelberg SM74-DI印刷機を含む。一つの態様では、像様露光は、約300〜約1200nm、より具体的には約600〜約1200nmの輻射線で行うことができる。本発明の態様の画像形成速度は、約50〜約1500mJ/cm2、より具体的には約75〜約400mJ/cm2、さらにより具体的には約150〜約300mJ/cm2となることができる。
【0107】
画像形成後、印刷版前駆体の未露光部分は、これらの部分と好適な現像液とを接触させることにより除去することができる。好適な現像液は性質上酸性、中性またはアルカリ性であってよく、そして水性液体、有機液体の両方、およびこれらの混合物を含むことができる。
【0108】
画像形成された印刷版前駆体は、アルカリ性現像液を使用して別個の処理工程を先ず施すことなしに、印刷機内に取り付けることができるので有利である。それどころか、画像形成された印刷版前駆体を、コンベンショナルな印刷機で使用される湿し水および/またはインクによって、「機上」現像することができる。或いは、直接画像形成印刷機を利用する態様の場合、印刷版前駆体は直接画像形成印刷機上に取り付けることができ、次いで赤外線に当て、そして機上現像することができる。
【0109】
画像形成された印刷版前駆体を現像するのに適した湿し水は、実質的に水性の溶剤を含むが、しかし、水混和性有機液体、例えば好適なアルコールおよびアルコール代替物を含むこともできる。好適な湿し水の具体例は、水中の下記材料の混合物を含む:
・Varn Litho Etch 142W + Varn PAR(アルコール代替物)それぞれ3 oz/gal H2O (Varn International ,Addison, IL);
・Varn Crystal 2500(1工程) 4.5 oz/gal H2O (Varn International);
・Varn Total Chromefree(3.2 oz/gal H2O)(Varn International) + Anchor ARS-F(1.2 oz/gal H2O)(Anchor, Orange Park, FL);
・Anchor Emerald JRZ(3 oz/gal H2O) + Anchor ARS-ML(3.5 oz/gal H2O)(Anchor);
・Rosos Plain KSP(3-4 oz/gal H2O) + Varn PARそれぞれ3 oz/gal H2O (Rosos Research Laboratories, Inc.);
・Rosos KSP 500(5 oz/gal H2O) + RV1000(4 oz/gal H2O)(Rosos Research Laboratories, Inc.);
・Prisco 3451U(4 oz/gal H2O) + Alkaless 3000(3 oz/gal H2O)(Prisco, Newark, NJ);
・Prisco 4451 FK(3 oz/gal H2O) + Alkaless 6000(2 oz/gal H2O)(Prisco);
・Prisco Webfount 300 (2 oz/gal H2O) + Alkaless 6000(3 oz/gal H2O)(Prisco);
・Rycoline Green Diamond 251TW(3 oz/gal H2O) + Rycoline Green Diamond アルコール代替物(2 oz/gal H2O)(Rycoline, Chicago, IL);
・Allied PressControl EWS(5 oz/gal H2O) + HydroPlus(1.5 oz/gal H2O)(Allied Pressroom Chemistry, Hollywood, FL);
・RBP 910H (3 oz/gal H2O) + Aquanol 600 (2 oz/gal H2O)(RBP Chemical Technology, Milwaukee, WI);
・Allied Compliance ES(3 oz/gal H2O) + HydroPlus(3 oz/gal H2O)(Allied Pressroom Chemicals)
【0110】
或いは、前駆体を、コンベンショナルな水性現像液組成物を使用して現像してもよい。コンベンショナルな水性現像液の共通の成分は、界面活性剤、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸の塩、有機溶剤、例えばベンジルアルコールおよびフェノキシエタノール、およびアルカリン成分、例えば無機メタシリケート、有機メタシリケート、水酸化物および重炭酸塩を含む。水性現像液のpHは好ましくは、輻射線感受性組成物の性質に応じて約5〜約14である。
【0111】
輻射線感受性層の未露光領域は、通常の印刷プロセスの一部として湿し水および/またはインクと接触させたあとで除去されるのに対して、露光済領域は、インク受理性画像領域を形成するために、支持体に付着されたままである。
【0112】
画像形成工程前に、前駆体には、熱処理およびUV露光を含む1つまたは2つ以上の処理工程を施してもよい。同様に、現像に続いて、印刷版を例えば加熱またはUV露光によって処理することもできる。
【0113】
次いで、画像領域に塗布されたインクを、好適な受理材料(例えば布地、紙、金属、ガラスまたはプラスチック)に像様転移することにより、1つまたは2つ以上の所望の刷りを提供することができる。所望の場合には、中間ブランケット・ローラを使用することにより、印刷版から受理材料へインクを移すことができる。印刷版は、所望の場合、コンベンショナルな洗浄法を用いて、刷りと刷りとの間に洗浄することができる。
【0114】
本発明の態様に従って形成された印刷版前駆体は、従来の機上現像可能な印刷版と比較すると、いくつかの利点を有している。第1に、本発明の輻射線感受性層は、高い画像形成速度で画像形成することができる。例えば、本発明の態様は、約75〜約400mJ/cm2で画像形成することができる。加えて、画像形成後、前駆体の画像形成済部分は、画像形成中の色変化により、前駆体の画像形成されていない部分と、容易に肉眼で識別することができる。肉眼で見えるこの「プリントアウト」は、オフ・プレスおよび/またはプレ・プレスにおける取り扱いを改善することができる。さらに、本発明の態様に従って形成された印刷版は、著しく改善された印刷部数および/または印刷機耐久性を示す。
【実施例】
【0115】
本発明を以下の例においてさらに説明する。
例1
アルミニウム支持体を、ブラシ研磨し、そしてリン酸で陽極酸化することにより処理し、次いでポリアクリル酸で後処理した。次いで、表1の成分を含む塗膜混合物を、巻線付きバーを用いて支持体に塗布し、そしてRanarコンベヤ炉(Ranar Manufacturing Co, Inc., El Segundo, CAから入手可能)内で60秒間の滞留時間にわたって94℃で乾燥させることにより、輻射線感受性層を形成した。輻射線感受性層の結果として生じた重さは、1.5g/m2であった。
【0116】
【表1】

【0117】
Desmodur N100(Bayer Corp., Milford, CTから入手可能な、ヘキサメチレンジイソシアネートを主剤とする脂肪族ポリイソシアネート樹脂)を、ヒドロキシエチルアクリレートおよびペンタエリトリトールトリアクリレートと反応することにより、ウレタンアクリレートを調製した。
【0118】
グラフト・コポリマー1はポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),α-(2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル)-ω-メトキシ-,エテニルベンゼンでグラフトされたポリマーであり、これを、80%n-プロパノール/20%水の溶剤中25%の分散体として、表1の成分と合体させる。グラフト・コポリマー2は、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート-アリルメタクリレート・グラフト・コポリマーであり、これを、メチルエチルケトン中10%の分散体として、表1の成分に添加する。
【0119】
Irgacure 250は、75%プロピレンカーボネート溶液として、Ciba specialty Chemicals, Tarrytown, NYから入手可能なヨードニウム塩であり、そして式、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル],-ヘキサフルオロホスフェートを有する。
【0120】
IR吸収色素1は、次式によって表される:
【0121】
【化17】

【0122】
Byk 336は、25%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液中の、Byk Chemie, Wallingford, Connecticutから入手可能な改質ジメチルポリシロキサン・コポリマーである。
【0123】
得られた印刷版前駆体に、画像形成速度350mJ/cm2で、Creo Trendsetter 3244x上で画像を形成し、次いでこの印刷版前駆体を小森製印刷機(小森(東京都墨田区吾妻橋)から入手可能)上に取り付けた。この印刷機には、Graphics Equinox Inkと、Varn Litho Etch 142W(ファウンテン)およびVarn PAR(アルコール代替物)(Varn International ,Addison, ILから入手可能)をそれぞれ3 oz/gal H2Oで含む湿し水とを装入した。画像形成された印刷版前駆体の画像領域は青色であり、そして非画像領域とは容易に肉眼により識別可能であった。印刷版の磨耗速度を高めるために、小森製印刷機には、目標(指定の目標は0.004インチ)を0.001インチだけ上回って過剰パッキングされた硬質ブランケットを設けた。印刷版は、この環境において、50,000部を上回る部数の印刷版画像を申し分なく印刷した。
【0124】
比較例2
例1で報告された処理済支持体に、巻線付きロッドを介して、表2に提供された塗膜混合物を塗布し、次いで、例1で使用されたRanarコンベヤ炉内で約60秒間の滞留時間にわたって94℃で乾燥させることにより、輻射線感受性層を形成した。輻射線感受性層の結果として生じた塗膜重量は、1.5g/m2であった。
【0125】
【表2】

【0126】
SR399は、50%1-メトキシ-2-プロパノール溶液中の、Sartomer CO, Exton, PAから入手可能なジペンタエリトリトールペンタアクリレートである。2,4-トリクロロメチル(エトキシエチルナフチル)-6-トリアジンは、フランス国Panchimから入手可能である。N-フェニルイミノ二酢酸は、Lancaster Synthesis Inc., Windham NHから入手可能である。IR吸収色素は、2-[2-[2-[フェニルチオ-3-[(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドル-2-イリデン)エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリドである。結果として得られた印刷版前駆体に、画像形成速度400mJ/cm2で、Creo Trendsetter 3244x上で画像を形成したが、画像領域は、非画像領域と比較して、画像形成後に色変化を示さなかった。次いで、この印刷版前駆体を小森製印刷機上に取り付けた。この印刷機には、Graphics Equinox Inkと、例1の湿し水とを装入した。印刷版の磨耗速度を高めるために、小森製印刷機には、目標(指定の目標は0.004インチ)を0.001インチだけ上回って過剰パッキングされた硬質ブランケットを設けた。固形画像領域に磨耗が観察される前に、印刷版が申し分なく印刷した部数は5,000部にすぎなかった。
【0127】
こうして、画像形成中に使用されるエネルギーが増大したにもかかわらず、比較例2の印刷版(開始剤系を含まない)が申し分なく印刷した部数は、例1に従って形成された印刷版よりも著しく少なかった。
【0128】
例3
支持体を電気化学的に砂目立てし、そして硫酸で陽極酸化し、次いで、この支持体をポリビニルホスホン酸で後処理した。次いで、表1に報告された塗膜混合物を例1のように塗布し、乾燥させ、画像形成し、そして現像した。画像形成後、画像領域は色変化を示し、このことは、画像領域と非画像領域とを肉眼によって容易に識別することを可能にした。得られた印刷版は、印刷版画像を3,000部申し分なく印刷した。
【0129】
比較例4
支持体を例3のように、電気化学的に砂目立てし、そして硫酸で陽極酸化し、次いで、この支持体をポリビニルホスホン酸で後処理した。次いで、表2で報告された塗膜混合物を比較例2のように塗布し、乾燥させ、画像形成し、そして現像した。画像形成後、画像領域は非画像領域と比較して、色変化を示さなかった。得られた印刷版が申し分なく印刷した印刷版画像の部数は、250部未満であった。
【0130】
こうして、画像形成中に使用されるエネルギーが増大したにもかかわらず、比較例4の印刷版が申し分なく印刷した部数は、例3に従って形成された印刷版よりも著しく少なかった。
【0131】
例5
アルミニウム支持体を、ブラシ研磨し、そしてリン酸で陽極酸化することにより処理し、次いで、この支持体をポリアクリル酸で後処理した。次いで、表3の成分を含む塗膜混合物を、巻線付きバーを用いて支持体に塗布し、そしてRanarコンベヤ炉(Ranar Manufacturing Co, Inc., El Segundo, CAから入手可能)内で60秒間の滞留時間にわたって94℃で乾燥させることにより、輻射線感受性層を形成した。溶液の結果として生じた塗膜重量は、1.5g/m2であった。
【0132】
【表3】

【0133】
メルカプト-3-トリアゾールは、PCAS(フランス国パリ)から入手可能なメルカプト-3-トリアゾール-1H,2,4,を意味する。Klucel 99Mは、Hercules(ベルギー国Heverlee)から入手可能な、1%水溶液として使用されるヒドロキシプロピルセルロース増粘剤である。
【0134】
得られた印刷版前駆体に、画像形成速度350mJ/cm2で、Creo Trendsetter 3244x上で画像を形成し、次いでこの印刷版前駆体を小森製印刷機(小森(東京都墨田区吾妻橋)から入手可能)上に取り付けた。この印刷機には、Graphics Equinox Inkと、例1の湿し水とを装入した。画像形成された印刷版前駆体の画像領域は青色であり、そして非画像領域とは容易に肉眼により識別可能であった。印刷版の磨耗速度を高めるために、小森製印刷機には、目標(指定の目標は0.004インチ)を0.001インチだけ上回って過剰パッキングされた硬質ブランケットを設けた。印刷版は、この環境において、50,000部を上回る部数の印刷版画像を申し分なく印刷した。
【0135】
上に報告したように形成された別の印刷版前駆体に、Olec Corp, Irvine, CAから入手可能なOlec 真空フレーム(5kW バルブ)を使用して、パターン形成されたマスクを通して中程度の照度で50単位にわたって、UV線で画像を形成した。その結果得られた画像形成された印刷版前駆体を、上に報告した条件下で小森製印刷機上に配置した。印刷版は、印刷運転が終了した時点において、パターンを50,000部以上印刷することに成功した。
【0136】
例6
IR吸収色素Iが省かれていることを除いて、例5に従って、印刷版前駆体を形成する。その結果得られた印刷版前駆体に、Olec 真空フレーム(5kWバルブ)を使用して、パターン形成されたマスクを通して中程度の照度で100単位にわたって画像を形成した。次いで、得られた画像形成された印刷版前駆体を、A.B. Dick(Chicago, IL)印刷機上に取り付ける。この印刷版は、パターンを複数部印刷することに成功する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オニウム塩およびIR線吸収剤を含む開始剤系と;
重合可能な材料と;
ポリエチレンオキシド・セグメントを含む高分子バインダーと
を含む輻射線感受性組成物。
【請求項2】
該オニウム塩が、スルホニウム、オキシスルホキソニウム、オキシスルホニウム、スルホキソニウム、アンモニウム、セレノニウム、アルソニウム、ホスホニウム、ジアゾニウムまたはハロニウム塩を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該ハロニウム塩がヨードニウム塩を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
該ヨードニウム塩が、2つの同一のまたは異なる有機置換基を備えた正荷電型超原子価ヨウ素原子を有するヨードニウム塩を含む請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該ヨードニウム塩が、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]および対イオンを含む請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
該ヨードニウム塩が、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-,ヘキサフルオロホスフェートを含む請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
該オニウム塩が、4つの有機置換基を備えた正荷電型超原子価リン原子を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該オニウム塩が、トリフェニルスルホニウム塩を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
該オニウム塩が、4つの有機置換基で置換された第4級アンモニウム塩を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該オニウム塩が、N-アルコキシピリジニウム塩を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
該オニウム塩が、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムオクチルスルフェート、ジフェニルヨードニウムオクチルチオスルフェート、ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシレート、4,4'-ジクミルヨードニウムクロリド、4,4'-ジクミルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4'-ジクミルヨードニウムp-トリルスルフェート、[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル-オキシ]-フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、N-メトキシ-α-ピシノリニウム-p-トルエンスルホネート、4-メトキシベンゼン-ジアゾニウムテトラフルオロボレート、4,4'-ビス-ドデシルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、2-シアノエチル-トリフェニルホスホニウムクロリド、ビス-[4-ジフェニルスルホニウムフェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、ビス-4-ドデシルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムオクチルスルフェート、2-メトキシ-4-(フェニルアミノ)-ベンゼンジアゾニウムヘキサデシルスルフェート、2-メトキシ-4-(フェニルアミノ)-ベンゼンジアゾニウムビニルベンジルチオスルフェート、2-メトキシ-4-(フェニルアミノ)-ベンゼンジアゾニウムオクチルスルフェート、2-メトキシ-4-アミノフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェノキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、またはアニリノフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネートを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
該輻射線感受性組成物が、UV線吸収剤を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
該輻射線吸収剤がアニオン性発色団を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
アニオン性発色団を含む該輻射線吸収剤が、約600〜約1200nmの輻射線を吸収する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
該輻射線吸収剤が、アゾ色素、スクアリリウム色素、クロコネート色素、トリアリールアミン色素、チアゾリウム色素、インドリウム色素、オキソノール色素、オキサキソリウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、インドシアニン色素、インドトリカルボシアニン色素、オキサトリカルボシアニン色素、フタロシアニン色素、チオシアニン色素、チアトリカルボシアニン色素、メロシアニン色素、クリプトシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリアニリン色素、ポリピロール色素、ポリチオフェン色素、カルコゲノピリロアリーリデンおよびビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン色素、オキシインドリジン色素、ピリリウム色素、ピラゾリンアゾ色素、オキサジン色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、キノネイミン色素、メチン色素、アリールメチン色素、スクアリン色素、オキサゾール色素、クロコニン色素、ポルフィリン色素、またはこれらの誘導体もしくは組み合わせを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
該IR線吸収剤がシアニン色素を含む請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
該輻射線吸収剤が
【化1】

(上記式中、Arは置換型または無置換型アリールであり、Eは正荷電型対イオンであり、そしてn=1または2である)
を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
該輻射線吸収剤が式:
【化2】

によって表される化合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
該開始剤系が、ヨードニウム塩と、アニオン性発色団を有する輻射線吸収剤とを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
該開始剤系が、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]および対イオン、並びに
式:
【化3】

(上記式中、Arは置換型または無置換型アリールであり、Eは正荷電型対イオンであり、そしてn=1または2である)
によって表される輻射線吸収剤を含む
請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
該開始剤系が、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロホスフェート;および
式:
【化4】

によって表される化合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
該重合可能な材料が、付加重合可能なエチレン系不飽和基または架橋可能なエチレン系不飽和基を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
該付加重合可能なエチレン系不飽和基が、ラジカル重合、カチオン重合、またはこれらの組み合わせによって重合可能である請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
該重合可能な材料が、アクリレート部分、メタクリレート部分またはこれらの組み合わせを有するモノマーを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
該重合可能な材料が、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレートまたはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
該重合可能な材料が、アリール置換型ビニル部分を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
該高分子バインダーが、疎水性ポリマー主鎖と、
式:
【化5】

(上記式中、Qは二官能性結合基であり;Wは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;Yは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;但し、Wが親水性セグメントのときには、Yは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;さらに、Wが疎水性セグメントのときには、Yは親水性セグメントである)
によって表される複数のペンダント基とを含むグラフト・コポリマーである
請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
Wが、式:
【化6】

(上記式中、R7、R8、R9およびR10のそれぞれは水素であり;R3は水素またはアルキルである)によって表され、そして
Yの親水性セグメントが、水素、R15、OH、OR16、COOH、COOR16、O2CR16、式:
【化7】

(上記式中、R7、R8、R9およびR10のそれぞれは水素原子であり;R3は水素またはアルキルであり;上記式中、R13、R14、R15およびR16のそれぞれは水素、または炭素原子数1〜5のアルキルである)
によって表されるセグメントであり、そして該疎水性セグメントは、炭素原子数6〜120の線状、分枝状または環状アルキル、炭素原子数6〜120のハロアルキル、炭素原子数6〜120のアリール、炭素原子数6〜120のアルカリール、炭素原子数6〜120のアラルキル、OR17、COOR17、またはO2CR17(ここで、R17は炭素原子数6〜20のアルキルである)であり;そして上記式中、nは約12〜約250である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
該高分子バインダーが、式:
【化8】

[上記式中、R1およびR2のそれぞれは独立して水素、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、COOR5、R6CO、ハロゲンまたはシアノ(ここで、R5およびR6のそれぞれは独立してアルキル、アリール、アラルキルまたはアルカリール)であり;
Qは:
【化9】

(上記式中、R3は水素またはアルキルであり;R4は水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アシルまたはこれらの組み合わせである)であり;
Wは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;
Yは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;
Zは水素、アルキル、ハロゲン、シアノ、アシルオキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル、アシル、アミノカルボニル、アリールまたは置換型アリールであり;
但し、Wが親水性セグメントのときには、Yは親水性セグメントまたは疎水性セグメントであり;さらに、Wが疎水性セグメントのときには、Yは親水性セグメントである]
によって表される反復単位を含むグラフト・コポリマーである
請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
該ポリエチレンオキシド・セグメントが、約0.5〜約60重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
該高分子バインダーがブロック・コポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
該輻射線感受性組成物が離散粒子を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
さらに、1種以上の、分散剤、湿潤剤、殺生剤、可塑剤、界面活性剤、粘度上昇剤、着色剤、pH調整剤、乾燥剤、脱泡剤、保存剤、抗酸化剤、現像助剤、レオロジー改質剤、またはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
さらにメルカプタン誘導体を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
さらにメルカプトトリアゾール化合物を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
さらに、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリドン材料を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
該組成物が、水溶液または現像液中に可溶性または分散性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項38】
該組成物が、水中に可溶性または分散性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項39】
支持体と;
該支持体に塗布された、
オニウム塩およびIR線吸収剤を含む開始剤系と、
重合可能な材料と、
ポリエチレンオキシド・セグメントを含む高分子バインダーと
を含む輻射線感受性層と
を含んで成る画像形成性要素。
【請求項40】
該開始剤系が、ヨードニウム塩と、アニオン性発色団を含むIR線吸収剤とを含む請求項39に記載の画像形成性要素。
【請求項41】
該支持体がアルミニウムを含む請求項39に記載の画像形成性要素。
【請求項42】
該アルミニウムが、砂目立て、陽極酸化またはこれらの組み合わせによって処理される、請求項41に記載の画像形成性要素。
【請求項43】
該支持体が、ポリアクリル酸で後処理される、請求項42に記載の画像形成性要素。
【請求項44】
該輻射線感受性層が、水溶液または現像液中で現像可能である、請求項39に記載の画像形成性要素。
【請求項45】
該輻射線感受性層が水中で現像可能である、請求項39に記載の画像形成性要素。
【請求項46】
該輻射線感受性層が、湿し水、インクまたはその両方の中で現像可能である、請求項39に記載の画像形成性要素。
【請求項47】
該画像形成性要素が印刷版前駆体である、請求項39に記載の画像形成性要素。
【請求項48】
該印刷版前駆体が、機上現像可能である、請求項47に記載の画像形成性要素。
【請求項49】
支持体と;
該支持体に塗布された、
UV線感受性オニウム塩を含む開始剤系と、
重合可能な材料と、
ポリエチレンオキシド・セグメントを含む高分子バインダーと
を含む輻射線感受性層と
を含んで成る画像形成性要素。
【請求項50】
該開始剤系がさらにIR輻射線吸収剤を含む請求項49に記載の画像形成性要素。
【請求項51】
支持体を準備し;
該支持体上に、
キャリヤと、
オニウム塩およびIR線吸収剤を含む開始剤系と、
重合可能な材料と
ポリエチレンオキシド・セグメントを含むポリマーを含む高分子バインダーと
を含む塗膜混合物を塗布し;そして
該塗膜混合物を乾燥させることにより、該支持体上に輻射線感受性層を形成する
ことを含む
印刷版前駆体を作製する方法。
【請求項52】
該キャリヤが水性キャリヤを含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
該キャリヤが、水と水混和性有機液体との混合物を含む請求項51に記載の方法。
【請求項54】
該塗膜混合物がさらに1種以上の界面活性剤を含む請求項51に記載の方法。
【請求項55】
さらに、該輻射線感受性層をIR線に当てることを含む請求項51に記載の方法。
【請求項56】
該露光工程が、約600〜約1200nmの波長の輻射線を放出するレーザで実施される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
該輻射線感受性層を、約75〜約400mJ/cm2でIR輻射線に当てる、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
支持体と、
該支持体に塗布された、
オニウム塩とIR線吸収剤とを含む開始剤系、
重合可能な材料、および
ポリエチレンオキシド・セグメントを含む高分子バインダー
を含む輻射線感受性層と
を含む印刷版前駆体を準備し、
該輻射線感受性層の露光済部分が該輻射線感受性層の未露光部分よりも現像剤中で現像性が低くなるように、輻射線に該輻射線感受性層を像様露光し;そして、
該輻射線感受性層の未露光部分が印刷版前駆体から除去されるように、該像様露光済輻射線感受性層と現像剤とを接触させる
ことを含んで成る印刷版を作製する方法。
【請求項59】
該像様露光工程および該接触工程のうちの少なくとも一方が、印刷機上で行われる請求項58に記載の方法。
【請求項60】
該画像形成工程が印刷機外で行われ、そして該接触工程が印刷機上で行われる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
該現像剤が水溶液または現像液を含む請求項58に記載の方法。
【請求項62】
該現像剤が水を含む請求項58に記載の方法。
【請求項63】
該現像剤が、湿し水、インクまたはその両方を含む請求項58に記載の方法。
【請求項64】
さらに、該接触工程後に該印刷版を処理することを含む請求項58に記載の方法。
【請求項65】
該処理工程が、該印刷版を加熱すること、該印刷版をUV線に当てること、またはその両方を含む請求項64に記載の方法。
【請求項66】
さらに、該接触工程前に、該印刷版を処理することを含む請求項58に記載の方法。
【請求項67】
該処理工程が、該印刷版を加熱すること、該印刷版をUV線に当てること、またはその両方を含む請求項66に記載の方法。

【公開番号】特開2011−51350(P2011−51350A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−249754(P2010−249754)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2006−532953(P2006−532953)の分割
【原出願日】平成16年5月11日(2004.5.11)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】