説明

オフセット作業機

【課題】トラクタに装着して農作業を行う作業部を平行リンクによりオフセット移動する際にコストを抑え、かつ、適切な位置で止めることができるストッパを有するオフセット作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】トラクタ200に装着して農作業を行う作業部150を平行リンクによりオフセット移動可能なオフセット作業機において、平行リンクを構成する2つのアーム20、25には、それぞれ他のアーム25、20に向けて突出する突出部21、26を互いの位置をずらして設け、オフセット移動の一方の位置では、突出部21、26同士が当接してストッパとなり、オフセット移動の他方の位置では、少なくとも一方のアーム20(25)の突出部21(26)が他方のアーム25(20)に当接してストッパとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット作業機に関し、特に、トラクタに装着して農作業を行う作業部を平行リンクによりオフセット移動可能なオフセット作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオフセット作業機について草刈機を一例に説明する。
【0003】
図6は、従来の草刈機の例を示す平面図であり、図7は、従来の草刈機のオフセット移動の状態例を示す平面図である。従来の草刈機100は、装着部110と作業部150とこれらの間を連結するアーム120、125や取付部材130、ジョイント140等によって構成されている。装着部110を図示を省略したトラクタ200の後部に装着して作業部150で草刈作業を行う。
【0004】
2つのアーム120、125により装着部110と作業部150間で平行リンクを形成し、図7に示すように、オフセットシリンダ128を作動させると平行リンクが動き、装着部110に対して、作業部150の位置を横方向に変化させることができる。また、装着部110と作業部150間の動力の伝達は、ジョイント140を介して伝達される。
【0005】
このとき、図7のオフセット移動のそれぞれの端の位置であるPとQは、オフセットシリンダ128の一方のエンドと他方のエンド、すなわち、最小に縮んだ状態と最大に伸びた状態により決定している。
【0006】
一方、特許文献1には、平行リンクを有する畦塗り機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−28903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オフセット移動の端の位置をシリンダのエンドにより決める場合はシリンダによるばらつきにより、作業部の位置が正確に定まらず、ジョイントの折れ角(図6のA)が想定している角度より大きくなる可能性がある。この場合、ジョイントに想定以上の負荷がかかり破損の原因となっていた。また、この他、トラクタに装着する他の農作業機においても、オフセット移動の端の位置を正確に決めたい場合がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラクタに装着して農作業を行う作業部を平行リンクによりオフセット移動する際にコストを抑え、かつ、適切な位置で止めることができるストッパを有するオフセット作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のオフセット作業機は、トラクタに装着して農作業を行う作業部を平行リンクによりオフセット移動可能なオフセット作業機において、前記平行リンクを構成する2つのアームには、それぞれ他のアームに向けて突出する突出部を互いの位置をずらして設け、前記オフセット移動の一方の位置では、前記突出部同士が当接してストッパとなり、前記オフセット移動の他方の位置では、少なくとも一方のアームの前記突出部が他方のアームに当接してストッパとなることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明のオフセット作業機は、前記それぞれの突出部が、前記突出部同士を当接させる第1当接面を有し、前記それぞれの第1当接面は互いに平行に形成されていることを特徴とする。
さらに本発明のオフセット作業機は、前記少なくとも一方のアームの突出部には、他方のアームと当接する第2当接面を有し、前記第2当接面は、他方のアームに当接する部分と平行に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オフセット作業機において、トラクタに装着して農作業を行う作業部を平行リンクによりオフセット移動する作業部を、コストを抑えた構造により適切な位置で止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のオフセット作業機の一方の位置での状態の一例を示す平面図である。
【図2】本発明のオフセット作業機の他方の位置での状態の一例を示す平面図である。
【図3】図1の要部拡大図を示す。
【図4】図2の要部拡大図を示す。
【図5】本発明のオフセット作業機の一実施形態を示す作業部の側面図である。
【図6】従来の草刈機の例を示す平面図である。
【図7】従来の草刈機のオフセット移動の状態例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明のオフセット作業機の一方の位置での状態の一例を示す平面図であり、図2は、本発明のオフセット作業機の他方の位置での状態の一例を示す平面図である。図3は、図1の要部拡大図を示し、図4は、図2の要部拡大図を示す。また、図5は、本発明のオフセット作業機の一実施形態を示す作業部の側面図である。
【0016】
本発明のオフセット作業機は草刈機を例に説明する。草刈機1は、装着部110と作業部150とこれらの間を連結するアーム20、25や取付部材130、ジョイント140等によって構成されている。装着部110を図示を省略したトラクタ200の後部に装着して作業部150で草刈作業を行う。
【0017】
トラクタ200からの動力は、装着部110に取り付けられる第1入力軸115、ジョイント140、作業部150側の第2入力軸161と伝達される。第2入力軸161は、カバー151上のミッションケース165に設置されており、第2入力軸161からの動力は、ミッションケース165内のベベルギア162、163を介して作業部150の側部に送られる。そして、作業部150の側部のベルトカバー152内では、伝達された動力は、第1プーリー170、ベルト171、第2プーリー172を介して、カバー151下部に配置された草刈軸175へ伝達される。草刈軸175には、草刈爪176が取り付けられており、草刈軸175を回転させると、地面上の草をカットしていく。このとき、後方のローラ159を接地して作業機を地面に受けることができる。
【0018】
ジョイント140は、第1入力軸115と第2入力軸161を接続し、継手構造を有する2箇所の折れ部141、142で一定角度の範囲内で角度(折れ角)を変更でき、これらの間の中央部143では、スライド構造により長さ変更が可能となっている。このため、回転中心軸がずれた2つの軸間(第1入力軸115、第2入力軸161)で動力を伝達可能となっている。なお、ジョイント140は、例えば、ユニバーサルジョイントやドライブシャフト等の角度が変化し伸縮が可能な動力伝達部材であればよい。
【0019】
第1アーム20と第2アーム25は、両端がそれぞれ、装着部110の右側(オフセット移動側)に備える取付部111と、作業部150側に取り付けられる取付部材130に、水平方向に回動可能な支点(20a、25a、20b、25b)によって支持される。そして、これら2つのアームは、平行に取り付けられて平行リンクを形成している。なお、第1アーム20をメインアーム、第2アーム25をサブアームとして、力がかかる第1アーム20を太くするなどしてもよい。また、お互いに対向する側の側面20c、25cも平行に形成されている。
【0020】
また、第1アーム20には、アームの途中に第1アーム突出部21が、第2アーム25に向けて突出しており、第1アーム突出部21の周りは、第1面21a、第2面21b、第3面21cで構成されている。同様に、第2アーム25にも、アームの途中に第2アーム突出部26が、第1アーム20に向けて突出しており、第2アーム突出部26の周りは、第1面26a、第2面26b、第3面26cで構成されている。これら、第1アーム突出部21と、第2アーム突出部26の位置は、以下に示す当接がなされるように、互いにずれた位置に備えられている。本実施形態では、第2アーム突出部26の方が、装着部110側に接近して備えられている。
【0021】
第1アーム突出部21の第1面21aと、第2アーム突出部26の第1面26aは、互いに他方のアームの突出部方向に面して備えられている。そして、図1や図3に示すように、作業部150が内側に位置している場合は、第1面21a、26a同士が当接する。これにより、作業部150はこれ以上左側(内側)に移動しなくなる。この場合、第1面21a、26aが当接部となっている。また、第1面21a、26aは、互いに平行に備えられていれば、接触時に面当たりとなり力が分散される。例えば、アーム20、25の側面20c、25cに対して同じ角度α=45°で形成して加工し易くしてもよい。また、アーム20、25の側面20c、25cと溶接等で接続させることもできる。
【0022】
第1アーム突出部21の第2面21bと、第2アーム突出部26の第2面26bは、それぞれ他のアーム25、20の方向に面して備えられている。そして、図2や図4に示すように、作業部150が外側に位置している場合は、第1アーム突出部21の第2面21bは、第2アーム25の側面25cに、第2アーム突出部26の第2面26bは、第1アーム20の側面20cに、それぞれ当接する。これにより、作業部150はこれ以上右側(外側)に移動しなくなる。この場合第2面21b、26bが当接部となっている。なお、第2面21b、26bは、いずれかのアームにのみ備えていてもストッパとしての役目を果たせる。また、第2面21b、26bは、他のアームの当接する部分(側面25c、20c)と平行に備えられていれば、接触時に面当たりとなり力が分散される。また、第1面21a(26a)と第2面21b(26b)は、図でも示されるように折り曲げ部を介してそれぞれ連続した面とすることができる。
【0023】
第1アーム突出部21の第3面21cと、第2アーム突出部26の第3面26cは、必要に応じて、強度や形状を考慮し、適切な形状に形成される。本実施形態では、第3面21c、26cは、それぞれのアーム20、25から傾斜して取り付けられており、突出部21、26は、それぞれ、第1面21a、26aと、第2面21b、26bと、第3面21c、26cにより、全体として台形の形状をしている。第1面21a、26aから第2面21b、26b、第3面21c、26cと連続されることで1つの板材から形成することができ、アーム20、25に溶接等で固定し強度を上げることができる。また、各面の内側は補強板などで補強することができる。
【0024】
このように、作業部150をオフセット移動させるとき、一方では、第1面21a、26a同士を当接させて、他方では、第2面21b(26b)を、対向する他のアーム25(20)に当接させることによりそれぞれのストッパとなる。そして、止める位置は、一方では、第1面21a、26a同士の距離を調節し、他方では、第2面21b(26b)のアーム20(25)からの距離すなわち突出部21、25の高さを調節すれば、両方の止める位置を任意に決めることができる。なお、第1面21a、26a同士を当接させるほうが、第2面21b(26b)が対向するアーム25(20)に当接する場合より、平行リンクの角度は緩い位置で止まる。これらにより、ストッパを簡便な構造とすることができ、コストを抑え、的確な位置で作業部150を止めることができる。また、オフセットの移動の動力については、図6や7で示した従来の実施例で示されるオフセットシリンダ128を平行リンクに適用して作動させることができる。
【0025】
以上の実施形態は、草刈機について示したが、これに限らず、例えば、畦塗り機や溝掘り機等において、トラクタに装着して平行リンクにより農作業を行う作業部をオフセット移動する際に左右の振り角が異なるオフセット作業機であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
20 第1アーム
20c 側面
21 第1アーム突出部
21a 第1面
21b 第2面
21c 第3面
25 第2アーム
25c 側面
26 第2アーム突出部
26a 第1面
26b 第2面
26c 第3面
110 装着部
128 オフセットシリンダ
140 ジョイント
150 作業部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行う作業部を平行リンクによりオフセット移動可能なオフセット作業機において、
前記平行リンクを構成する2つのアームには、それぞれ他のアームに向けて突出する突出部を互いの位置をずらして設け、
前記オフセット移動の一方の位置では、前記突出部同士が当接してストッパとなり、前記オフセット移動の他方の位置では、少なくとも一方のアームの前記突出部が他方のアームに当接してストッパとなることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項2】
請求項1に記載のオフセット作業機において、
前記それぞれの突出部は、前記突出部同士を当接させる第1当接面を有し、前記それぞれの第1当接面は互いに平行に形成されていることを特徴とするオフセット作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のオフセット作業機において、
前記少なくとも一方のアームの突出部には、他方のアームと当接する第2当接面を有し、前記第2当接面は、他方のアームに当接する部分と平行に形成されていることを特徴とするオフセット作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−44884(P2012−44884A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187834(P2010−187834)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】