説明

オフライン演算機能を備えた検査機

【課題】予め設定された検査パラメータを用いて検査対象物について検査をしている間に、前記予め設定された検査パラメータとは異なる検査パラメータによって既に検査済の検査対象物の画像を用いて仮想的に検査対象物の良否を判定することができるオフライン演算機能を備えた検査機を提供する。
【解決手段】搬送系路上の検査対象物Wを検査する検査機を実ライン側検査機RISとし、実ライン側検査機RISにおいて検査画像の良否判定に使用される検査パラメータを送受信できるオフライン演算部5を設け、実ライン側検査機RISにおいて予め設定された検査パラメータを用いて検査を行っている間に、オフライン演算部5において実ライン側検査機RISで得た検査画像を用いて良否判定に使用される新たな検査パラメータを作成し、作成された検査パラメータを実ライン側検査機RISに送信するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフライン演算機能を備えた検査機に係り、特にガラス壜やペットボトル等の容器を含む検査対象物をカメラで撮像し、得られた画像を検査パラメータと比較して検査対象物の良否を判定する検査機において、予め設定された検査パラメータを用いて検査対象物を検査している間に、前記予め設定された検査パラメータとは異なる検査パラメータに基づいて既に検査済の画像を用いて仮想的に検査対象物の良否を判定するオフライン演算機能を備えた検査機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤ等の搬送装置により連続的に搬送されてくるガラス壜やペットボトル等の容器を搬送中にカメラで撮像し、得られた画像を予め設定された検査パラメータと比較して容器の良否を判定する検査機が知られている。この検査機においては、検査パラメータは、実容器を検査する前に、予め最適なものを求めておき、求めた最適な検査パラメータを検査機に設定して実容器の検査を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、実容器について、予め設定された検査パラメータを用いて検査を行っていると、検査環境の変化等が生じて検査パラメータを変更したい場合がある。また予め設定された検査パラメータが厳しすぎて良品と判定してもよい品質のものであっても、不良品と判定してしまう場合があり、また逆に、予め設定された検査パラメータが甘すぎて不良品と判定すべき品質のものであっても良品と判定してしまう場合がある。このような場合には、検査パラメータを変更することが必要となる。
【0004】
しかしながら、従来の検査機において、検査パラメータを変更しようとする場合には、実容器の検査をいったん中断して、再度、検査パラメータを演算する必要がある。そのため、検査機が生産ラインに一体に組み込まれているような場合には、生産工程にも影響を与えてしまい、生産効率が低下するという問題点がある。また、検査機が生産ラインとは切り離されて単独で稼働している場合であっても、検査効率が低下するという問題点がある。
一方、従来の検査機において、実容器の検査を中断することなく、検査パラメータを変更してしまうこともできるが、検査パラメータを変更した影響は実容器の良否判定に直接出ることになり、検査精度(品質)に影響する可能性がある。また、その際、良品を誤って不良品と判定してしまう誤検出は、生産性にも影響するという恐れがある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、検査対象物を撮像手段で撮像し、得られた画像を検査パラメータと比較して検査対象物の良否を判定する検査機において、予め設定された検査パラメータを用いて検査対象物について検査をしている間に、前記予め設定された検査パラメータとは異なる検査パラメータによって既に検査済の検査対象物の画像を用いて仮想的に検査対象物の良否を判定することができるオフライン演算機能を備えた検査機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明のオフライン演算装置を備えた検査機は、搬送系路上の検査対象物を撮像手段により撮像し、得られた検査画像を用いて検査対象物の欠陥の有無を検査する検査機において、搬送系路上の検査対象物を検査する検査機を実ライン側検査機とし、前記実ライン側検査機において検査画像の良否判定に使用される検査パラメータを送受信できるオフライン演算部を設け、前記実ライン側検査機において予め設定された検査パラメータを用いて検査を行っている間に、前記オフライン演算部において前記実ライン側検査機で得た検査画像を用いて良否判定に使用される新たな検査パラメータを作成し、前記作成された検査パラメータを前記実ライン側検査機に送信するようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、搬送系路上の検査対象物を撮像手段で撮像し、得られた画像を検査パラメータと比較して検査対象物の良否を判定する実ライン側検査機において、予め設定された検査パラメータを用いて検査対象物について検査をしている間に、オフライン演算部において、前記予め設定された検査パラメータとは異なる検査パラメータによって既に検査済の検査対象物の画像を用いて仮想的に検査対象物の良否を判定し、新たな検査パラメータを作成し、前記作成された検査パラメータを前記実ライン側検査機に送信する。
【0008】
本発明の一態様によれば、前記オフライン演算部では、実ライン側検査機から転送された複数の検査画像を個別に保管し、前記複数の検査画像のうち任意の検査画像を読み込むことにより、既に検査が終了した実ライン側検査機の検査対象物の検査画像を用いて新たな検査パラメータの作成が可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記オフライン演算部から送信された検査パラメータを用いて前記実ライン側検査機において検査対象物を検査し、前記実ライン側検査機に送信された検査パラメータは、前記オフライン演算部に保存された任意の検査パラメータに置き換えることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査対象物を撮像手段で撮像し、得られた画像を検査パラメータと比較して検査対象物の良否を判定する検査機において、予め設定された検査パラメータを用いて検査対象物について検査をしている間に、前記予め設定された検査パラメータとは異なる検査パラメータによって既に検査済の検査対象物の画像を用いて仮想的に検査対象物の良否を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るオフライン演算機能を備えた検査機の一実施形態を図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明に係るオフライン演算機能を備えた検査機の基本構成を示す模式的なブロック図である。図1に示すように、オフライン演算機能を備えた検査機は、コンベヤ等の搬送装置10によって連続的に搬送されてくるガラス壜等の容器からなる検査対象物(ワーク)Wを撮像する複数のCCDカメラ1と、複数のCCDカメラ1で撮影された画像を処理して検査対象物の欠陥の有無を判定する複数の基板2を有した演算処理部3とを備えている。複数のCCDカメラ1は撮像手段を構成し、検査対象物Wの各部位を撮像するようになっている。例えば、検査対象物Wがガラス壜等の容器である場合には、1つのCCDカメラ1は、容器の口部を撮像し、他の1つのCCDカメラ1は容器の胴部を撮像し、更に他の1つのCCDカメラ1は容器の底部を撮像するようになっている。
【0012】
また、各CCDカメラ1に対応して設けられている各基板2には、各CCDカメラ1によって撮像された検査対象物Wの各部位の画像から検査対象物の欠陥の有無を判定するための基準となる多数の検査パラメータP1,P2・・・が予め設定されている。これら検査パラメータP1,P2・・・の例としては、画像における画素毎の明るさの範囲を示す所定の数値範囲などがあげられる。そして、各基板2において、CCDカメラ1によって得た画像を検査パラメータP1,P2・・・と比較し、検査対象物Wの欠陥の有無を判定する。
検査対象物Wは、コンベヤ等の搬送装置10によって搬送系路上を連続的に搬送されてくるため、CCDカメラ1は搬送されてくる検査対象物Wを順次撮像し、画像を基板2に送る。したがって、基板2においては、送られてきた画像を検査パラメータを用いて順次処理して、各検査対象物Wの欠陥の有無を判定する。
【0013】
上述の構成は、従来の検査機と同一であり、本明細書においては、実ライン側検査機RISと称する。本発明の検査機は、予め設定された検査パラメータを用いて検査対象物を検査している間に、前記予め設定された検査パラメータとは異なる検査パラメータに基づいて既に検査済の画像を用いて仮想的に検査対象物の良否を判定するオフライン演算部5を備えている。オフライン演算部5は、パーソナルコンピュータ(PC)によって構成されており、オフライン演算部5と演算処理部3とは通信ケーブル等の通信手段4によって接続されている。オフライン演算部5は、検査パラメータP1,P2・・・を設定することができる設定部6とCCDカメラ1で撮影された検査画像を保存する記憶部7とを有した設定記憶部8と、設定記憶部8に保存された検査パラメータと検出画像を用いて演算を行う演算部9とを備えている。オフライン演算部5と実ライン側検査機RISの演算処理部3とを接続する通信手段4は、通信ケーブルであってもよいし、イーサネット等のLAN(ローカルエリアネットワーク)、WAN(ワイドエリアネットワーク)、インターネット等の通信ネットワークであってもよい。すなわち、オフライン演算部5と実ライン側検査機RISの演算処理部3とを、飲料工場等の現場の近接した位置あるいは離隔した位置に設置して通信ケーブルで結ぶこともできるし、実ライン側検査機RISの演算処理部3を飲料工場等の現場に設置し、オフライン演算部5を現場から遠く離れたサービス管理会社に設置し、上記オフライン演算部5と実ライン側検査機RISの演算処理部3とを上記通信ネットワークを介して結ぶこともできる。
【0014】
図2は、図1に示すように構成されたオフライン演算機能を備えた検査機によって、予め設定された検査パラメータを用いて検査対象物を検査している間に、前記予め設定された検査パラメータとは異なる検査パラメータに基づいて既に検査済の画像を用いて仮想的に検査対象物の良否を判定するオフライン演算の一例を示すフローチャートである。
検査対象物Wについて、CCDカメラ1、基板2および演算処理部3を備えた実ライン側検査機RISにより検査を行う。この場合、予め設定された検査パラメータ(A)のデータは、演算処理部3で保存されるとともに転送されてオフライン演算部5の設定記憶部8に保存される。そして、検査が開始されて検査対象物Wである壜(1)がCCDカメラ1により撮影され、得られた検査画像(1)は基板2に取り込まれ、上書保存される。また、得られた検査画像(1)のデータは転送されてオフライン演算部5の設定記憶部8に保存される。そして、基板2では検査パラメータ(A)の取込を行って検査パラメータ(A)で検査画像(1)を判定し、壜(1)の良否を判定する。
【0015】
次に、検査対象物Wである壜(2)がCCDカメラ1により撮影され、得られた検査画像(2)は基板2に取り込まれ、上書保存される。また、得られた検査画像(2)のデータは転送されてオフライン演算部5の設定記憶部8に保存される。そして、基板2では検査パラメータ(A)の取込を行って検査パラメータ(A)で検査画像(2)を判定し、壜(2)の良否を判定する。
上記行程(ステップ)と併行して、オフライン演算部5の演算部9においては、設定記憶部8に保存された検査画像(1)の読込を行い、検査画像(1)を用いて検査パラメータ(A)を変更した新たな検査パラメータで検査画像(1)を仮想的に判定する。検査パラメータの設定例として、所定の明るさの範囲の設定で検査対象物の良否判定を行う。検査対象物を撮像する場合には、その日の天候や時刻等、あるいは製造工場の照明の明るさ等により同一の検査対象物であっても、画像が微妙に異なることがある。この場合、検査対象物を撮影した画像が、通常よりも若干暗く(明るく)撮影された場合に、設定値がそのままであると、検査の見過ごしや、ムダバネが生じてしまう。ここで、検査パラメータも若干暗い(明るい)方向にシフトするように変更することで、上記問題を解決する。この場合、新たな検査パラメータは、複数個設定して、検査画像(1)を用いて仮想的な判定を試行錯誤的に繰り返す。これにより、次の検査の判定に用いる新たな検査パラメータ(B)を作成し、検査パラメータ(B)を演算処理部3に転送するか否かを判断する。転送する(YES)と判断した場合には、実ライン側検査機RISの演算処理部3に転送する。演算処理部3では、転送された検査パラメータ(B)のデータを保存する。この間、実ライン側検査機RISでは、検査工程を続行している。
【0016】
次に、検査対象物Wである壜(3)がCCDカメラ1により撮影され、得られた検査画像(3)は基板2に取り込まれ、上書保存される。また、得られた検査画像(3)のデータは転送されてオフライン演算部5の設定記憶部8に保存される。そして、基板2では検査パラメータ(B)の取込を行って検査パラメータ(B)で検査画像(3)を判定し、壜(3)の良否を判定する。
その後、壜(4)以降について同様の工程で検査を行う。この間、オフライン演算部5の設定記憶部8には、検査データが順次蓄積される。そして、演算部9では、多数の検査画像に基づいて、新たな検査パラメータを設定して仮想的な検査を行い、次の検査のための新たな検査パラメータの作成を行う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係るオフライン演算機能を備えた検査機の基本構成を示す模式的なブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すように構成されたオフライン演算装置を備えた検査機によって、予め設定された検査パラメータを用いて検査対象物を検査している間に、前記予め設定された検査パラメータとは異なる検査パラメータに基づいて既に検査済の画像を用いて仮想的に検査対象物の良否を判定するオフライン演算の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1 CCDカメラ
2 基板
3 演算処理部
4 通信手段
5 オフライン演算部
6 設定部
7 記憶部
8 設定記憶部
9 演算部
10 搬送装置
RIS 実ライン側検査機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送系路上の検査対象物を撮像手段により撮像し、得られた検査画像を用いて検査対象物の欠陥の有無を検査する検査機において、
搬送系路上の検査対象物を検査する検査機を実ライン側検査機とし、
前記実ライン側検査機において検査画像の良否判定に使用される検査パラメータを送受信できるオフライン演算部を設け、
前記実ライン側検査機において予め設定された検査パラメータを用いて検査を行っている間に、前記オフライン演算部において前記実ライン側検査機で得た検査画像を用いて良否判定に使用される新たな検査パラメータを作成し、
前記作成された検査パラメータを前記実ライン側検査機に送信するようにしたことを特徴とするオフライン演算機能を備えた検査機。
【請求項2】
前記オフライン演算部では、実ライン側検査機から転送された複数の検査画像を個別に保管し、前記複数の検査画像のうち任意の検査画像を読み込むことにより、既に検査が終了した実ライン側検査機の検査対象物の検査画像を用いて新たな検査パラメータの作成が可能であることを特徴とする請求項1記載のオフライン演算機能を備えた検査機。
【請求項3】
前記オフライン演算部から送信された検査パラメータを用いて前記実ライン側検査機において検査対象物を検査し、前記実ライン側検査機に送信された検査パラメータは、前記オフライン演算部に保存された任意の検査パラメータに置き換えることが可能であることを特徴とする請求項1記載のオフライン演算機能を備えた検査機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−151463(P2010−151463A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327208(P2008−327208)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】