説明

オプションプログラムの選択方法及びその装置

【課題】搭載したマイクロコンピュータとプログラムによって動作制御を行なう装置において、利用者が動作制御プログラムを任意に選択することができるオプションプログラムの選択方法及びその方法を実行可能な装置を得る。
【解決手段】マイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータが実行可能な複数の動作制御用プログラムを記憶する記憶手段と、複数の動作制御用プログラムのうち、特定のプログラムのみを動作禁止にする動作禁止手段と、動作禁止手段に対して解除指示情報を入力する入力手段と、入力された解除指示情報を解析する解析手段と、解析した解除指示情報によって、動作を禁止されている特定のプログラムの動作禁止を解除する解除手段とを有する装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載したマイクロコンピュータとプログラムによって動作制御を行なう装置において、利用者が動作制御プログラムを任意に選択することができるオプションプログラムの選択方法及び、その方法を実行可能な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロコンピュータを搭載し、このマイクロコンピュータプログラムによって動作を制御される装置は多数知られている。これらの装置は基本機能を制御するためのプログラム(基本プログラム)と、拡張機能を制御するためのプログラム(オプションプログラム)によって、所定の目的を達するために必要となる各種の動作が制御される。例えば、画像を記録する装置であるデジタルカメラは、撮影に係る動作の制御や、撮影した画像をファイルとして記録装置に記録する動作の制御などの基本的な動作制御を基本プロプログラムによって行なう。また、記録装置に記録した画像ファイルを、外部の他の装置に転送する通信機能や転送機能などの、拡張的な機能は、オプションプログラムによって制御する。
【0003】
上記デジタルカメラにおいて、通信ケーブルなどを介した外部装置と接続を行なって、所定の画像ファイルを転送する動作制御を行なう際に適用する、所定の手順(プロトコル)には様々な方式が存在する。各接続動作方式によって特徴が異なるので、利用者は自己の使用態様に適した方式を選択する。従って、当該装置は、動作方式を選択可能なものであることが望ましい。しかし、個々の利用者の要望に合わせて動作方式を搭載するのでは、製造コストが高くなる。よって、使用の要否は無視して、各動作方式を制御するオプションプログラムを、当該装置に搭載すること必要がある。
【0004】
画像ファイルを転送するために、デジタルカメラを外部装置に接続する方式としてUSB(Universal Serial Bus)が一般的である。USBによって画像の転送やカメラの制御などを行なうことができる動作方式(通信プロトコル)の一つにPTP(Picture Transfer Protocol)がある。PTPは、パソコンからカメラコントロール(レリーズ、撮影条件の設定など)を行なうことが出来る。また、PTPのほかに、USBマスストレージクラスがある。USBマスストレージクラスは、デジタルカメラを外部装置の外付け記憶装置(カードリーダなどの外部ドライブ)として扱うことができる。しかし、外部装置側からデジタルカメラのコントロールをすることはできない。このように、デジタルカメラを外部装置と接続した際の動作方式には複数の方式がある。
【0005】
上記2つの動作方式は、それぞれ動作制御を行なうプログラムが異なる。従って、両動作方式を搭載しているデジタルカメラにおいて、利用者は、使用する動作方式を設定により切替えてから使用する。つまり、1つの動作方式を使用する時に、同時に他の動作方式を使用することはできないため、仮に2つの動作方式に対応するオプションプログラムが搭載されていても、利用者が使用する動作方式は1つである。利用者がいずれの動作方式を望むのかを事前に判断することは困難なため、複数のオプションプログラムを予め搭載しておく必要がある。このように、搭載するプログラムモジュールが増えていくと当然ながら製造コストが高くなる。
【0006】
不要なプログラムモジュールの搭載を避けるために当該装置の購入後において、購入者の求めに応じて必要な動作方式を制御するプログラムモジュールを、追加搭載する方法がある。しかし、このような追加搭載方法は、専用装置などを用いて追加操作を行なう必要があるために、利用開始に時間を要することが多い。
【0007】
そこで、専用装置を用いることなく、当該装置の記憶手段に予め複数のプログラムモジュールを記憶しておき、利用者が使用ライセンス情報ファイルを入力することによって、オプションプログラムモジュールを動作可能にする発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2004−213469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記発明は、入力した使用ライセンス情報に応じて、搭載してあるオプションプログラムモジュールの動作を許可するものである。従って、使用ライセンスファイルを入力する手段を設ける必要がある。この入力する手段は、読取り手段や通信手段などによって、外部から当該装置へ使用ライセンスファイルを移動させるためだけに必要な手段であって、当該装置が既に備えている汎用な手段によっては、オプションプログラムの動作を許可することはできなかった。
【0010】
そこで、本発明は、予め記憶した複数の動作方式に対応するプログラムモジュールを、簡易な操作で利用可能にすることができるオプションプログラム動作選択方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、マイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータが実行可能な複数の動作制御用プログラムを記憶する記憶手段とを有する装置であって、上記複数の動作制御用プログラムのうち、特定のプログラムのみを動作禁止にする動作禁止手段と、上記動作禁止手段に対して解除指示情報を入力する入力手段と、上記入力された解除指示情報を解析する解析手段と、解析した解除指示情報によって、動作を禁止されている特定のプログラムの動作禁止を解除する解除手段とを有することを最も主要な特徴とする。
【0012】
上記解除指示情報は、予め別の装置で生成されたパスワードであってもよい。また、当該装置の固有の情報である機器情報を記憶する手段と、上記解析手段が解析した解除指示情報に含まれるデータと上記機器情報とを比較し判定する判定手段とを有し、判定手段によって上記解除指示情報に含まれるデータと上記機器情報が同一であれば、上記解除手段によって動作を禁止されている特定のプログラムの動作禁止を解除するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の動作制御プログラムの中から、利用するプログラムを任意に選択して動作禁止解除を行なうことができるため、利用するプログラムの開発費に相当する対価によってパスワードによる販売をすることができる。また、必要な機能に対する利用料を支払うことで、基本機能の価格を下げることができ、かつ、動作制御プログラムのオプション化が可能であるため、万人に必要ではない機能であっても容易に開発し、選択メニューに加えることが可能となる。
【0014】
また、パスワードによって動作禁止を解除することができるので、パスワードのみを販売する形態でオプションプログラムを提供できる。このため、販売に関して特別な在庫を持つことは不要である。
【0015】
また、当該装置が有する固有の情報として、シリアル番号やネットワークカードのMACアドレスなどをパスワードに含めることによって、その機器固有の情報を有する装置でのみ、パスワードを有効に機能させることができるため、不正利用を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るオプションプログラム動作選択方法について、図を用いて説明する。本発明は、プログラムを用いて動作制御を行なう装置において実施可能である。ここでは装置の例として画像記録装置であるデジタルカメラを例として用いて説明する。図1はデジタルカメラの例を示す機能ブロック図である。
【0017】
図1においてデジタルカメラ1は、撮影した画像を記憶する外部記憶装置21(コンパクトフラッシュ(登録商標)、メモリカード、スマートメディアなど)と、レンズ及びその駆動系、CCD、AD変換器などで構成する撮像装置22と、撮影操作に必要な各種情報やデジタルカメラ1の各種設定情報を表示する表示装置23と、撮影操作や情報設定の操作に使用する操作卓24と、デジタルカメラ1全体を制御するCPU/ROM/RAM/入出力ポート(I/Oポート)及びこれらを結ぶバスラインなどを有する全体制御装置10によって構成されている。尚、全体制御装置10は、周知のマイクロコンピュータにより構成される。
【0018】
上記ROMは、CPUが行う処理手順(プログラム)を記憶する不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ)であって、このROMに記憶しているプログラムが本発明に係る方法によって動作選択される。また、ROMはデジタルカメラ1の動作に必要となる各種設定情報を記憶する。RAMは上記プログラムを実行する際にCPUが使用するワークエリアとして機能する。
【0019】
図2に本発明に係るオプションプログラム動作選択方法に用いるパスワードファイル生成処理を表わしたフローチャートを示す。この処理は、予めパーソナルコンピュータなどの情報処理装置を用いて実行される。先ず、当該処理を実行する情報処理装置が備える入力手段によって、デジタルカメラ1に付与されているシリアル番号を入力する(300)。シリアル番号はデジタルカメラ1の定格銘板などに記載されている。
【0020】
入力されたシリアル番号を、情報処理装置の記憶領域に記憶する(301)。次に、上記入力手段を介して機能番号の入力を行う(302)。機能番号とは、利用者が選択可能な動作方式に対応した番号であって、製造メーカが予め動作方式ごとに付与している。例えば「1」は“PictBridge機能“、「2」は”マスストレージ機能“を選択可能に割り当てる。ここでは、デジタルカメラ1の工場出荷時に上記両方の機能は利用できない状態であって、標準のオリジナル動作方式のみが利用可能な状態である場合の説明をする。
【0021】
入力されたシリアル番号と機能番号に基づいてパスワードを生成する(303)。図3に上記によって生成されるパスワードの例を示す。図3においてパスワードは、バイナリデータに変換されて4バイトで表現される上記シリアル番号と、バイナリデータに変換されて1バイトで表現される上記機能番号、及び1バイトのチェックサムにより構成される。たとえば、シリアル番号が「00123456」、機能番号が「1」の場合、パスワードフォーマット上では、上位桁から0x0001E240、0x01の5バイトとこの5バイトのチェックサムを算出して、最下位に1バイトを付加したデータとして算出される(303)。
【0022】
パスワードの算出方法は、上記のようにチェックサムを用いる他にも複数の方法が使用できる。例えば、HDLCのフレームチェックシーケンスのモジュロを使用する方法、CRC演算による値を用いる方法であってもよい。上記パスワードを用いてオプションプログラムの動作選択処理を行なう装置側で、パスワードの解析方法として同じ方式が用いるように構成すればよい。
【0023】
上記の処理で生成したパスワードを、情報処理装置が有する画面に表示する(304)。
【0024】
図4に上記画面の表示例を示す。図4において、画面41は、シリアル番号入力欄42、機能番号入力欄43、説明表示欄44、パスワード表示欄45を有してなる。説明表示欄44には、上記各欄における表示内容に関して、利用者が理解できるように説明文が表示されている。
【0025】
上記方法によって生成されたパスワードを用いて本願に係るオプションプログラムの動作選択方法について図6のフローチャートを用いて説明する。図2を用いて説明したパスワード生成処理によって生成されたパスワードをデジタルカメラ1の操作卓24を操作して入力する(310)。入力されたパスワードに対してチェックサムを行ない、パスワードが正常なものであるか否かを確認する(311)。
【0026】
チェックサムにより、入力されたパスワードが正常であれば(312のY)、上記のパスワードに含まれる「シリアル番号」と「機能番号」を算出する処理を行う(313)。
【0027】
算出した「シリアル番号」が、デジタルカメラ1の全体制御装置10に記憶されているシリアル番号と同一であるか否かの比較を行い、「同一でない」場合は、エラーとして当該処理は終了する(314のN)。また、算出した機能番号が、全体制御装置10に記憶されている選択可能な機能番号に含まれていなければ、エラーとして当該処理を終了する(314のN)。図4の示したシリアル番号、機能番号の例であれば、シリアル番号が123456でなければエラーによる終了となる。また、機能番号が、1もしくは2でなければエラーによる終了となる。
【0028】
上記処理によって、正常なパスワードから算出された機能番号に基づき、デジタルカメラ1の動作選択制御を行う。具体的には、選択可能な動作モードのうち、上記機能番号で選択されている番号に該当する動作を許可することができるように設定変更を行う(315)。ここで変更された設定は、電源が切れても記憶され続ける不揮発性メモリなどに記憶することで、再度、電源を投入した際に、パスワードを入力する手間を省くことができる。
【0029】
上記の処理によって、デジタルカメラ1が外部装置との接続に用いる通信方式の動作方式を許可された場合の処理の例を図7のフローチャートを用いて示す。操作卓24の操作によって、通信方式設定メニューを選択する(320)。方式選択メニューに初期値の「オリジナル」を設定する(321)。次に、図6の315で設定された動作禁止フラグを参照し、PictBridgeの動作許可を示す機能番号が設定されているか判定する(322)。
【0030】
PictBridgeが動作許可であれば、方式選択メニューに「PTP」を追加する(323)。次に動作禁止フラグを参照し、マスストレージの動作許可を示す機能番号が設定されているか判定する(324)。マスストレージ動作許可であれば、方式選択メニューに「マスストレージ」を追加する(325)。
【0031】
上記追加された方式選択メニューを表示装置23に表示する(326)。図5に前記表示画面の例を示す。図5に示す表示例では、マスストレージ、PTPの両方が動作許可になっている。表示装置23に表示されている方式のいずれかを操作卓24の操作によって選択し(327)、選択した方式を方式フラグに設定する(328)。
【0032】
上記設定処理によって所定の動作方式の設定を行なった画像記録装置において、外部記憶装置21に記憶されている画像ファイルを、図示しない通信手段を介して、外部装置に転送する処理のフローチャートを図8に示す。USBによって外部装置、例えばパソコンやプリンターなどとの接続を行なうと(330)、先の設定処理(図7の328)で設定した方式フラグを参照する。
【0033】
参照した方式フラグにおいて、PictBridgeが選択されていれば(331のY)、PictBridgeによる通信を開始する(335)。マスストレージが選択されていれば(332のY)、マスストレージによる通信を開始する(334)。いずれの方式も選択されていなければ、オリジナル方式として独自モードによる通信を開始する(333)。
【0034】
このように、画像記録装置に予め記憶する複数の動作方式において、パスワードによって、任意に動作方式を設定し、使用することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る動作選択方法を実施する装置の例であるデジタルカメラの例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る動作選択方法に用いるパスワード生成処理の例を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係るパスワード生成処理によるパスワードの構造例を示す図である。
【図4】本発明を実施するデジタルカメラの表示画面例である。
【図5】本発明を実施するデジタルカメラの表示画面例である。
【図6】本発明に係る動作選択方法におけるパスワード入力処理の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る動作選択方法を実施するデジタルカメラにおける通信方式設定処理の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る動作選択方法を実施するデジタルカメラにおける通信処理の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 デジタルカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータが実行可能な複数の動作制御用プログラムを記憶する記憶手段とを有する装置であって、
上記複数の動作制御用プログラムのうち、特定のプログラムのみを動作禁止にする動作禁止手段と、
上記動作禁止手段に対して解除指示情報を入力する入力手段と、
上記入力された解除指示情報を解析する解析手段と、
解析した解除指示情報によって、動作を禁止されている特定のプログラムの動作禁止を解除する解除手段とを有することを特徴とする装置。
【請求項2】
上記解除指示情報は、予め別の装置で生成されたパスワードであることを特徴とする請求1記載の装置。
【請求項3】
当該装置の固有の情報である機器情報を記憶する手段と、
上記解析手段が解析した解除指示情報に含まれるデータと上記機器情報とを比較し判定する判定手段とを有し、
判定手段によって上記解除指示情報に含まれるデータと上記機器情報が同一であれば、上記解除手段によって、動作を禁止されている特定のプログラムの動作禁止を解除することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
複数の動作制御用プログラムを記憶する記憶手段、複数のプログラムのうち特定のプログラムのみを動作禁止にする動作禁止手段、動作禁止手段に対して解除指示情報を入力する入力手段、解除指示情報を解析する解析手段、解析された解除指示情報によって動作を禁止されている特定のプログラムの動作禁止を解除する解除手段を有し、マイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータが実行可能な動作制御用プログラムを用いて動作制御を行なう装置を使用するオプションプログラムの動作選択方法であって、
上記複数のプログラムの中から特定のプログラムのみ動作を禁止する動作禁止ステップと、
上記入力手段によって動作禁止手段に対する解除指示情報を入力する入力ステップと、
上記解析手段によって上記解除指示情報を解析する解析ステップと、
解析した解除指示情報によって、動作を禁止されている特定のプログラムの動作禁止を
解除する解除ステップとを有することを特徴とするオプションプログラムの動作方法。
【請求項5】
上記解除指示情報がパスワードであることを特徴とする請求項4記載のオプションプログラムの動作方法。
【請求項6】
上記装置が、当該装置の固有の情報である機器情報を記憶する手段、上記解析された解除指示情報に含まれるデータと上記機器情報とを比較し判定する判定手段を更に有し、解除指示情報は、当該装置が有する固有の機器情報を含む情報であって、当該装置が記憶している機器情報と入力された前記動作禁止手段を解除する解除指示情報に含まれる機器情報とを比較する判定ステップと、
判定ステップによる比較結果が同一であれば解除手段に対して動作禁止手段の解除指示ステップとを有することを特徴とする請求項4記載のオプションプログラムの動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−46905(P2008−46905A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222478(P2006−222478)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】