説明

オペアンプのリミッタ回路

【課題】オペアンプに内蔵されるリミッタ回路において、オペアンプの出力電圧を任意の電圧に制限できるようにすることである。
【解決手段】PNPトランジスタQ6のベースには、直列接続されたトランジスタQ8、Q9が接続され、トランジスタQ8のエミッタには上限値Vupと等しい電圧が印加されている。出力段のPNPトランジスタQ7のベース電圧が上昇して、上限値VupからPNPトランジスタのエミッタ・ベース間の電圧降下を引いた電圧より大きくなると、トランジスタQ6がオンし、トランジスタQ7のベース電圧がそれ以上大きくならないように制限される。これにより、トランジスタQ7の出力電圧Voutが上限値Vupに制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペアンプに内蔵されるリミッタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
オペアンプで増幅された信号を出力する場合に、オペアンプに供給されている電源電圧と、出力先の回路の電源電圧が異なる場合があり、そのような場合、オペアンプの出力電圧を出力先の回路の電源電圧範囲に入るように出力電圧を制限するリミッタ回路を設ける必要がある。
【0003】
図4(A)は、従来のリミッタ回路を示す図であり、図4(B)はリミッタ回路の出力電圧特性を示す図である。
オペアンプ21の反転入力端子には、抵抗R1を介して入力電圧Vinが入力し、非反転入力端子には基準電圧が印加されている。オペアンプ21の出力端子と反転入力端子の間には、ツェナーダイオードZD1、ZD2と抵抗R1が接続されている。ツェナーダイオードZD1、ZD2は逆極性に接続されており、正、負の出力電圧を制限している。オペアンプ21の出力電圧が、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧で決まるリミット電圧を超えると、図4(B)に示すように出力電圧が正のリミット電圧に制限される。また、オペアンプ21の出力電圧が、ツェナーダイオードZD2のツェナー電圧で決まる負のリミット電圧以下となると、図4(B)に示すように出力電圧が負のリミット電圧に制限される。
【0004】
上記のリミッタ回路はリミット電圧が市販されているツェナーダイオードの電圧が限られているために、任意のリミット電圧のリミッタ回路を実現できないという問題点があった。
【0005】
特許文献1には、オペアンプ16により駆動される出力トランジスタと、下限クランプ回路を構成するオペアンプ17により駆動される出力トランジスタを直列に接続することで、オペアンプの接続形態や基準電圧に制限されないクランプ回路について記載されている。
【0006】
特許文献2には、リミッタ回路の出力をオペアンプの反転入力端子に負帰還をかけ、入力信号レベルがリミッタ電圧に近いときの信号の歪みを減らすことが記載されている。
特許文献3には、オーディオ信号を増幅する増幅器において、音量設定値に応じて増幅器の増幅率を制御することで、振幅制限の開始及び解除時の際に生じる違和感を軽減することが記載されている。
【特許文献1】特開2005−328151号公報
【特許文献2】特開平11−195943号公報
【特許文献3】特開2003−101359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、オペアンプに内蔵されるリミッタ回路において、オペアンプの出力電圧を任意の電圧に制限できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オペアンプに内蔵されるリミッタ回路であって、オペアンプの出力段の第1のPNPトランジスタのベースに接続された第2のPNPトランジスタと、前記第1のPNPトランジスタの出力電圧の上限値と等しい電圧が印加され、前記上限値と等しい電圧に対して前記第1及び第2のPNPトランジスタのベース・エミッタ間の電圧降下と等しい電圧降下を生じさせた電圧を前記第2のPNPトランジスタのベースに供給する、第3及び第4のPNPトランジスタとからなる上限値回路を有する。
【0009】
この発明によれば、オペアンプの出力電圧を任意の電圧に制限できる。
上記の発明のオペアンプのリミッタ回路において、前記出力電圧の下限値と等しい電圧がベースに印加され、エミッタが前記第1のPNPトランジスタのベースに接続されたNPNトランジスタを有する下限値回路を備える。
【0010】
このように構成することで、オペアンプの出力電圧の上限値と下限値を任意の電圧にすることができる。
上記の発明のオペアンプのリミッタ回路において、前記上限値回路の前記第3及び第4のPNPトランジスタは、ダイオード接続されたPNPトランジスタが直列に接続され、前記上限値と等しい電圧が前記第3のPNPトランジスタのエミッタに印加され、前記第4のPNPトランジスタのエミッタ電圧を前記第2のPNPトランジスタのベースに供給する。
【0011】
このように構成することで、第3及び第4のPNPトランジスタにより第1及び第2のPNPトランジスタのベース・エミッタ間の電圧降下と等しい電圧降下を生じさせることができる。
【0012】
本発明のオペアンプに内蔵されるリミッタ回路の他の態様は、オペアンプの出力段の第1のPMOSトランジスタのゲートに接続された第2のPMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタの出力電圧の上限値と等しい電圧が印加され、前記上限値と等しい電圧に対して第1及び第2のPMOSトランジスタのゲート・ソース間の電圧降下と等しい電圧降下を生じさせた電圧を前記第2のPMOSトランジスタのゲートに供給する、第3及び第4のPMOSトランジスタとからなる上限値回路を有する。
【0013】
この発明によれば、オペアンプの出力電圧を任意の電圧に制限できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オペアンプの出力電圧を任意の電圧に制限できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、実施の形態のオペアンプに内蔵されるリミッタ回路11を示す図である。図1には、入力段(差動増幅器)の回路と増幅段の回路は省略してあるが、差動増幅器で差動増幅され、増幅段で増幅された信号が、図1のNPNトランジスタQ4のベースに入力する。リミッタ回路11は、オペアンプの入力段または増幅段の後段に設けることができる。
【0016】
図1において、リミッタ回路11の前段には、NPNトランジスタQ1と、ダーリントン接続されたPNPトランジスタQ2、Q3と、NPNトランジスタQ4が直列に接続されている。トランジスタQ1のエミッタは正の電源電圧V1(例えば、+7.5V)に接続され、ベースには一定のバイアス電圧Vbが印加されている。トランジスタQ2のエミッタは、トランジスタQ3のベースに接続されると共に、抵抗R12を介してトランジスタQ3のエミッタに接続されている。トランジスタQ4のエミッタは負の電源電圧V2(例えば、−2.5V)に接続されている。
【0017】
NPNトランジスタQ4のコレクタには抵抗R11の一端が接続され、抵抗R11の他端にはNPNトランジスタQ5のエミッタとPNPトランジスタQ6のエミッタが接続されている。NPNトランジスタQ5のエミッタと、PNPトランジスタのエミッタは、出力段のPNPトランジスタQ7(第1のトランジスタに対応する)のベースに接続されている。NPNトランジスタQ5のコレクタは正の電源電圧V1に接続されている。
【0018】
PNPトランジスタQ8のエミッタにはオペアンプの出力電圧Voutの上限値Vupと等しい電圧V4(例えば、3.3V)が印加され、トランジスタQ8と直列にPNPトランジスタQ9が接続されている。PNPトランジスタQ8とQ9は、ベースとコレクタが接続されてダイオードとして機能している。PNPトランジスタQ9のコレクタは、PNPトランジスタQ6のベースとPNPトランジスタQ10のエミッタに接続されている。
【0019】
上記のPNPトランジスタQ6、Q8、Q9は、オペアンプの出力電圧Voutの上限値を決める上限値回路を構成している。PNPトランジスタQ6は、上限値回路の第2のPNPトランジスタに対応し、PNPトランジスタQ8、Q9は、第3及び第4のPNPトランジスタに対応する。
【0020】
NPNトランジスタQ5のコレクタは電源電圧V1に接続され、そのベースは抵抗R13を介して電圧V3(例えば、接地電位)に接続されている。このNPNトランジスタQ5は、オペアンプの出力電圧Voutの下限値を決める下限値回路を構成している。
【0021】
上記の上限値回路と下限値回路はオペアンプの出力電圧を制限するリミッタ回路11を構成している。
オペアンプの出力段は、直列に接続されたNPNトランジスタQ11と抵抗R15と抵抗R16とPNPトランジスタQ7とからなる。NPNトランジスタQ11のコレクタは、正の電源電圧V1に接続され、そのベースはPNPトランジスタQ1のコレクタに接続されている。PNPトランジスタQ7のコレクタは負の電源電圧V2に接続され、そのベースは上述した上限値回路と下限値回路に接続されている。
【0022】
次に、以上のような構成のリミッタ回路11の動作を説明する。以下の説明では、電圧V4が上限値Vupと等しく、電圧V3(接地電位)が下限値Vdownと等しいものとする。
【0023】
最初に、出力段のPNPトランジスタQ7の出力電圧Voutが上限値Vupを超えないように制限するときのリミッタ回路11の動作を説明する。
トランジスタQ4のコレクタ電圧Vcが上昇し、出力段のPNPトランジスタQ7のベース電圧Vs2が、出力電圧Voutの上限値VupからPNPトランジスタのエミッタ・ベース間の電圧降下分(O.6V)を引いた電圧より高くなったとする。このとき、上限値回路のPNPトランジスタQ6のベース電圧は、電圧V4(上限値電圧Vup)から2個のPNPトランジスタのエミッタ・ベース間の電圧降下を引いた電圧、つまり「Vup−2・0.6」となっている。
【0024】
従って、出力段のPNPトランジスタQ7のベース電圧が、上限値VupからPNPトランジスタのエミッタ・ベース間の電圧降下(約0.6V)を引いた値より大きくなると、PNPトランジスタQ6がオンして、トランジスタQ7のベース電圧がそれ以上大きくならないように制限される。これによりトランジスタQ7の出力電圧Voutを上限値Vupに制限することができる。
【0025】
次に、オペアンプの出力電圧Voutが下限値Vdown未満とならないように制限するときのリミット回路11の動作を説明する。
トランジスタQ4のコレクタ電圧Vcが減少して出力電圧Voutの下限値Vdown(=V3)からエミッタ・ベース間の電圧降下(約0.6V)を引いた電圧より低くなったとする。このとき、下限値回路のPNPトランジスタQ5のベース電圧は、電圧V3(接地電位)と等しくなっている。
【0026】
従って、NPNトランジスタQ5のエミッタ電圧(トランジスタQ4のコレクタ電圧Vc)が、下限値VdownからPNPトランジスタのベース・エミッタ間の電圧降下を引いた電圧「Vdown−0.6」より低くなると、トランジスタQ5がオンし、出力段のトランジスタQ7のベース電圧Vs2が「Vdown−0.6」より低くならないように制限される。これにより、出力段のトランジスタQ7の出力電圧Voutが下限値Vdown以上に保たれる。
【0027】
なお、トランジスタQ5がオンすると、電源電圧V1からトランジスタQ5、抵抗R11、トランジスタQ4を経由して電流が流れることになるが、トランジスタQ5のエミッタとトランジスタQ4のコレクタとの間に抵抗R11を挿入してあるので、トランジスタQ5、Q4に流れる電流を制限することができる。抵抗R11の値としては、例えば、2kΩ程度の値である。
【0028】
図2は、オペアンプの入力信号と出力信号の振幅を比較した図である。入力信号が+5Vから−1Vの範囲で変化するときに、リミッタ回路11により出力電圧Voutの上側の値が「+3.2V」に制限され、下側の値が「0V」に制限されていることが分かる。
【0029】
また、図3は、図1のトランジスタQ5とQ4の間の抵抗R11の値を変化させたときに、トランジスタQ4に流れるコレクタ電流の変化を示したものである。抵抗R11の値を、600Ω〜2000Ω程度に設定することで、電流を2mA以下に抑えることができる。
【0030】
上述した実施の形態によれば、出力段のPNPトランジスタQ7のベース・エミッタ間の電圧降下と、上限値回路のPNPトランジスタQ6のベース・エミッタ間の電圧降下を加算した電圧と等しい電圧降下を直列に接続したPNPトランジスタQ8とQ9で生じさせ、PNPトランジスタQ8のエミッタに出力電圧Voutの上限値Vupと等しい電圧を印加することで、出力電圧Voutを上限値Vup以下に制限できる。この上限値回路は、上限値Vupと等しい電圧をPNPトランジスタQ8のエミッタに印加すればよいので、オペアンプの出力電圧Voutを任意の上限値Vupに制限できる。また、下限値回路のNPNトランジスタQ5のベースに下限値Vdownと等しい電圧V3を印加することで、オペアンプの出力電圧Voutが任意の下限値Vdown未満にならないように制御できる。
【0031】
上記のリミッタ回路11によれば、オペアンプの出力先回路(デジタル回路等)の電源電圧とオペアンプの電源電圧と異なり、オペアンプの出力電圧を制限する必要がある場合に、出力先の回路の電源電圧をリミッタ回路11に供給することでオペアンプの出力電圧を出力先の回路の電源電圧範囲を超えないように制限できる。
【0032】
本発明は上述した実施の形態に限らず、例えば、以下のように構成しても良い。
(1)リミッタ回路11のトランジスタは、バイポーラトランジスタに限らず、MOSトランジスタで構成しても良い。例えば、トランジスタQ6、Q7、Q8、Q9をpチャネルMOSトランジスタ、トランジスタQ5をnチャネルMOSトランジスタで構成しても良い。
(2)上限値回路は実施の形態のように1個のPNPトランジスタQ6で構成したものに限らず、PNPトランジスタとNPNトランジスタとを用いて構成しても良い。そして、出力段のトランジスタのベース・エミッタ間の電圧降下を含めて全体のトランジスタのベース・エミッタ間の電圧降下と等しい電圧降下を生じるようにトランジスタを直列接続すれば同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態のオペアンプのリミッタ回路の回路図である。
【図2】入力電圧とリミッタをかけた後の出力電圧を示す図である。
【図3】抵抗R11の値とコレクタ電流の関係を示す図である。
【図4】従来のリミッタ回路の回路図と電圧特性を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
11 リミッタ回路
Q1、Q6、Q7、Q8、Q9、Q10 PNPトランジスタ
Q2、Q3、Q4、Q5、Q11 NPNトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペアンプに内蔵されるリミッタ回路であって、
オペアンプの出力段の第1のPNPトランジスタのベースに接続された第2のPNPトランジスタと、前記第1のPNPトランジスタの出力電圧の上限値と等しい電圧が印加され、前記上限値と等しい電圧に対して前記第1及び第2のPNPトランジスタのベース・エミッタ間の電圧降下と等しい電圧降下を生じさせた電圧を前記第2のPNPトランジスタのベースに供給する、第3及び第4のPNPトランジスタとからなる上限値回路を有するオペアンプのリミッタ回路。
【請求項2】
前記出力電圧の下限値と等しい電圧がベースに印加され、エミッタが前記第1のPNPトランジスタのベースに接続されたNPNトランジスタを有する下限値回路を備える請求項1記載のオペアンプのリミッタ回路。
【請求項3】
前記上限値回路の前記第3及び第4のPNPトランジスタは、ダイオード接続されたPNPトランジスタが直列に接続され、前記上限値と等しい電圧が前記第3のPNPトランジスタのエミッタに印加され、前記第4のPNPトランジスタのエミッタ電圧を前記第2のPNPトランジスタのベースに供給する請求項1または2記載のオペアンプのリミッタ回路。
【請求項4】
オペアンプに内蔵されるリミッタ回路であって、
オペアンプの出力段の第1のPMOSトランジスタのゲートに接続された第2のPMOSトランジスタと、前記第1のPMOSトランジスタの出力電圧の上限値と等しい電圧が印加され、前記上限値と等しい電圧に対して第1及び第2のPMOSトランジスタのゲート・ソース間の電圧降下と等しい電圧降下を生じさせた電圧を前記第2のPMOSトランジスタのゲートに供給する、第3及び第4のPMOSトランジスタとからなる上限値回路を有するオペアンプのリミッタ回路。
【請求項5】
前記出力電圧の下限値と等しい電圧がゲートに印加され、ソースが前記第1のPMOSトランジスタのゲートに接続されたNMOSトランジスタを有する下限値回路を備える請求項4記載のオペアンプのリミッタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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