説明

オルガノシランエステルの製法

本発明は、式(I)のオルガノシランエステルの製造する特定の方法、及び98質量%を上回る式(I)のオルガノシランエステルと、2質量%未満の炭化水素少なくとも1種とを有する組成物、並びにかかる組成物を誘電率1<κ≦4の層又は皮膜の製造に用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノシランエステルを製造する特定の方法及びオルガノシランエステルを有する組成物並びにその使用に関する。
【0002】
オルガノシランエステルは、広範な用途において使用される物質であり、数例のみを挙げるとすれば、例えば防水表面用か又は構造要素の架橋用の建築物保護組成物中に用いられる。
【0003】
これらの用途の観点から見れば、このオルガノシランエステルの仕様はますます厳格な要求を満たすものでなければならない。
【0004】
オルガノハロシランを通常は過剰なアルコール又はグリコールでエステル化できることは、長きに亘って知られている。しかしながら、製造されたオルガノシランエステルがエステル化するアルコール又はエステル化するグリコールと共沸混合物を形成し、この混合物により、オルガノシランエステルの十分な純度にかつ経済的規模で単離することが極めて困難になるか又は不可能さえになるという問題にしばしば直面する。
【0005】
DE19755597A1号は、エステル化反応においてエステル化するアルコールとの非混和性を示す非極性溶剤が利点をもたらす2相反応を開示しており、これは特に形成されたハロゲン化水素がより良好に除去されること及び反応温度がより低い。不運にも、共沸混合物について又は更には共沸混合物の回避については記載されていない。他の欠点は、この方法においては、上述の反応条件下で反応に使用されるアルコールとの非混和性を示す溶剤のみを使用することが可能であるにすぎないことである。このことは、反応が常に界面反応であることを意味し、これは均質相中での反応と比べて不利である。
【0006】
本発明の課題は、電子工学産業において、所定の誘電率を有する層又は皮膜の製造に前駆物質として好適に使用される製品を提供することである。
【0007】
驚くべきことに、これらの問題は、オルガノハロシランとアルコール又はグリコールとからのオルガノシランエステルの製造において、合成助剤又は蒸留助剤、特に炭化水素の補助を標的とすることにより有利な様式で解決できることを見出した。添加される合成助剤又は蒸留助剤は、エステル化するアルコール又はエステル化するグリコールとの混和性、不混和性又は部分混和性(混和性のギャップ)を示してよい。この合成助剤又は蒸留助剤を使用すると、オルガノハロシランとアルコールとの反応後に、オルガノシランエステルと、アルコールと、合成助剤又は蒸留助剤とを有する混合物が得られ、これは標的となるこの合成助剤又は蒸留助剤の含有率の調節後に続いて蒸留により分離することができ、その際、使用される合成助剤は、蒸留条件下で存在するアルコールとの混合物として実質的に気相中に入り、これにより特に高い割合のオルガノシランエステルと炭化水素少なくとも1種とを有する組成物が得られる。かかる組成物は、皮膜の製造に使用することが有利である。かかる皮膜又は層の誘電率は1<κ≦4であり、従って特に電子工学用途、例えばチップの製造に有利である。
【0008】
これに応じて、本発明は、一般式I
Si(OR4−a−b−c (I)
[式中、Rは、水素、アルキル、好ましくは直鎖状、分枝鎖状、環状又はハロゲン置換されたC−C18−アルキル、特に好ましくはn−プロピル及びイソブチル、アルケニル、好ましくはビニル、アリール、好ましくはフェニルであり、Rは、水素又はアルキル、好ましくは直鎖状、分枝鎖状又は環状のC−C18−アルキルであり、Rは、水素又はアルキル、好ましくは直鎖状、分枝鎖状又は環状のC−C18−アルキルであり、かつRは、アルキル、好ましくは直鎖状、分枝鎖状又は環状のC−C−アルキル、アリール、好ましくはフェニル、又はアルコキシアルキル、好ましくは2−メトキシエチルであり、a、b及びcは、同じか又は異なっていてよく、かつそれぞれ0、1、2又は3であってよいが、但し(a+b+c)≦3である]のオルガノシランエステルを、一般式II
SiX4−a−b−c (II)
[式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル又はアリールであり、Rは、水素又はアルキルであり、Rは、水素又はアルキルであり、かつRは、アルキル、アリール又はアルコキシアルキルであり、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、a、b及びcは同じか又は異なっていてよく、かつそれぞれ0、1、2又は3であってよいが、但し(a+b+c)≦3である]のオルガノハロシランと、一般式III
OH (III)
[式中、Rは、アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はイソブチル、アリール、例えばベンジル又はフェニル、又はアルコキシアルキル、例えばメトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル又はブトキシエチルである]のグリコールを含むアルコールとを反応させることにより製造し、その際、
− ハロシラン、好ましくはクロロシランと、式IIIのアルコールとを液相中で、合成助剤、すなわち溶剤、希釈剤、共留剤又は蒸留助剤少なくとも1種の存在下又は不存在下で反応させ、
− ハロゲン化水素、好ましくは塩化水素をこの系から除去し、
− 金属酸化物を、好ましくは存在するアルコキシに相応のアルコール中での溶液として、特に、Li、Na、K、Mgからなる群からのアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドを、必要であれば、この反応混合物に添加し、エステル化を完了させるか又は依然と存在するハロゲン化水素の残留量の中和し、そして形成された金属塩を濾別し、そして、
− 好ましくは中和されて得られた一般的に澄明な生成混合物を続いて蒸留により後処理する前に又はその間に、それぞれの場合において、合成助剤を、前記条件下で好ましくは分留の間に生成混合物の1種以上の成分と式Iのオルガノシランエステルとの共沸混合物が形成されないような量で少なくとも1回添加する方法を提供する。
【0009】
この反応及び/又は生成混合物に添加される合成助剤の全量は、生成混合物中に存在する過剰のアルコールがこの系から蒸留によりそれ自体で、又は特に沸点が所望のシランエステルの沸点よりも低い合成助剤とアルコールとの共沸混合物として実質的に除去され得るような量が適切である。
【0010】
アルコールと合成助剤との比を調節するために、関係式(1)又は(2)により示される値を決定し、本発明により進行することが好ましい:
【0011】
【数1】

【0012】
この関係式においては:
「mアルコール−合成」は、エステル化後に一般的に残留するアルコールの量であり、
「mアルコール−中和」は、アルコキシド又はアルコール性アルコキシド溶液での中和に添加されるアルコールの量であり、
「mHC−合成」は、エステル化の間に添加された合成助剤の量であり、
「mHC−蒸留」は、蒸留に必要であってよい付加的な合成助剤の量であり、かつ
「x」は、留去されるべき共沸混合物中のアルコールの質量%割合である。
【0013】
この場合、蒸留による後処理に添加されるべき付加的な合成助剤の量は、有利には以下のとおりである:
【0014】
【数2】

【0015】
関係式(1)及び(2)を用いるために、実施例を参照してもよい。
【0016】
本発明の方法においては、アルコールと合成助剤との質量比を好ましくは関係式
【0017】
【数3】

[式中、「mアルコール−合成」は、エステル化後に一般的に残留するアルコールの量であり、
「mアルコール−中和」は、アルコキシド又はアルコール性アルコキシド溶液での中和に添加されたアルコールの量であり、
「mHC−合成」は、エステル化の間に添加された合成助剤の量であり、
「mHC−蒸留」は、蒸留に必要であってよい付加的な合成助剤の量であり、かつ
「x」は、留去されるべき共沸混合物中のアルコールの質量%割合である]により調節して蒸留を実施することが好ましい。
【0018】
考えられる共沸混合物の組成は、一般的には標準的文献、例えば「共沸混合物データ」、L.H.ホースレイ著、(1952年)米国化学会、ワシントン("Azeotropie Data", L.H.Horsley, (1952) American Chemical Society, Washington.)中に見出すことができる。
【0019】
従って、本発明によれば、過剰なアルコールは、有利に、すなわち簡単にかつ経済的に生成混合物から除去され、有利には、実質的に式Iのオルガノシランエステルを有する主留分を出ることができる。この留分は、更なる成分として、炭化水素、例えば式IVa、IVb又はIVcの炭化水素、ことによると式IIIのアルコールを有する組成であり、これは驚くべきことに、これを適用して層か又は皮膜を製造すれば、誘電率が特に小さい、有利には1<κ≦4の層又は皮膜が得られる。
【0020】
本発明の方法に使用することができる式IIのオルガノシハロシラン、特にクロロシランは、例としては、限定されるものではないが、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジクロロシラン、メチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジエチルクロロシラン、エチルジクロロシラン、モノエチルモノクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルエチルトリクロロシランである。
【0021】
エステル化のための式IIIのアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−メトキシエタノール、エトキシエタノール及びフェノールを使用することが可能である。
【0022】
本発明によれば、本方法は、一般式
2n+2 (IVa)[式中、5≦n≦18である]、若しくは
2n (IVb)[式中、5≦n≦8である]、若しくは
(IVc)[式中、4≦n≦8である]で示される炭化水素、又は
相応のアルキル置換された脂環式炭化水素若しくはアルキル置換された芳香族炭化水素又は前記炭化水素のハロゲン化化合物からなる群から選択された合成助剤少なくとも1種を使用して実施することが好ましい。従って、ペンタン、ヘキサン、特にn−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン及びこれらの異性体、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及び脂肪族炭化水素と脂環式炭化水素との混合物、例えば石油エーテル、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びキシレン異性体、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン及び四塩化炭素を有利に使用することができる。特に、式IIIのアルコールとの混和性、不混和性、又は部分混和性を示す炭化水素少なくとも1種を使用する。しかしながら、式IVa、IVb、IVcの炭化水素の混合物を使用してもよい。
【0023】
本発明にかかる方法においては、その反応において形成されたオルガノシランエステルとの混和性を示す炭化水素少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0024】
エステル化段階は、ハロシラン:合成助剤の質量比1:0.25〜1:10、特に好ましくは1:0.5〜1:5であり、特に約1:1から開始することが好ましい。
【0025】
本発明にかかる方法においては、この開始材料の式IIのオルガノハロシランと式IIIのアルコールとの反応は、適切には−40℃〜220℃、好ましくは0〜180℃、有利には40〜150℃、特に好ましくは>60〜120℃、殊に好ましくは65〜100℃、なかんずく好ましくは70〜80℃の範囲内の温度で実施する。
【0026】
更に、本発明の方法における開始材料の反応は、好ましくは0.001〜50バールの絶対圧で、好ましくは0.1〜20バールの絶対圧の範囲で、殊に好ましくは0.25〜10バールの絶対圧の範囲で、なかんずく好ましくは、0.5〜1バールの絶対圧の範囲で実施する。
【0027】
従って、本発明の反応は、均質相中で実施することが好ましい。
【0028】
更に、本発明にかかる方法における反応からの生成混合物の後処理のための蒸留は、適切には、−40℃〜220℃、好ましくは0〜140℃、特に好ましくは20〜85℃の範囲の底部温度で、圧力を0.0001〜10バールの絶対圧に調節しつつ実施する。この蒸留は、好ましくは、0.001〜5バールの絶対圧で、特に好ましくは0.001〜2.5バールの絶対圧で、殊に好ましくは0.001〜1バールの絶対圧で実施する。
【0029】
本発明にかかる方法においては、過剰のアルコールと全合成助剤との質量比を、関係式(1)又は(2)に応じた値に調節し、蒸留を実施し、必要であれば、それを調整してこの値に維持することが好ましい。
【0030】
本発明にかかる方法は、一般的には以下のとおりに実施する:
反応容器としては、反応中に生ずる成分に適切に顕著に耐性を示す加熱式、定圧式又は耐真空性の反応器を使用することが可能である。更に、この反応器は、とりわけ、撹拌器と、温度測定及び調節のための設備とを有してしてよく、かつ蒸留装置に接続させてよい。
【0031】
本発明にかかる反応を実施するために、オルガノハロシラン、例えばオルガノクロロシランと、及びアルコール、例えばメタノール又はエタノールとを、適切に事前に乾燥させた反応器内に装入し、その際、アルコールを一般的には所定の過剰量で使用してよい。オルガノクロロシランを、反応器内に装入し、そしてアルコールを添加することも可能であり、その逆も可能である。
【0032】
更に、所定量の式IVa、IVb、IVcの合成助剤を反応混合物に添加してよく、これは例えば関係式(1)及び(2)を参照のこと。
【0033】
開始材料は、通常、純粋な形ないし高純度の形で使用する。次いで、この反応は、良好に混合しつつ、温度制御して実施してよい。一般的に、この反応についての条件、特に反応混合物の組成及び圧力並びに温度についての条件を調節して、この反応を均質相中で生じさせる。この反応、すなわちエステル化の間に、ハロゲン化水素、特に塩化水素を、気相を介して、例えばわずかに適切な真空に調節することにより、又は有利には水不含の不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンを反応器に導通させることにより、この系から除去することができる。更に、金属アルコキシドを、例えば、アルコール中の溶液として、例えばメタノール中のナトリウムメトキシド又はエタノール中のナトリウムエトキシド、又は相応の金属アルコキシド粉末を使用して、反応を完了させ、かつ塩化水素の残留量を中和することができる。形成された塩は、例えば濾過により分離し、次いでこの生成混合物を蒸留により後処理してよい。この目的のために、生成混合物中の合成助剤の含有率は、本発明によりアルコール含有率の関数として調節する。従って、本方法のこの段階で、所定量の合成助剤(例えば関係式(1)及び(2)を参照のこと)を、この生成混合物に添加してもよい。
【0034】
蒸留は、一般的に分留として、自体公知のように実施する。更に、所定量の合成助剤を、蒸留の間に添加してもよい。従って、最初にアルコール又は合成助剤又は共沸混合物をこの系から除去して、そしてオルガノシランエステル留分を抜き取ることが有利であり得る。更に、オルガノシランエステルに富み、かつこのオルガノシランエステルの他に、所定量の式IVa、IVb又はIVcの炭化水素、ことによると所定量の式IIIのアルコールを有する組成物を、上述のように有利に得ることができる。
【0035】
従って、式Iのオルガノシランエステル、数例を挙げるならば、例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルメトキシシラン、メチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルメトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチルメトキシシラン、エチルエトキシシラン、ビニルジメトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメルエトキシシランを、本発明の方法により比較的簡単かつ経済的に製造することができる。
【0036】
本発明は更に、それぞれ全組成物に対して、98質量%を上回る式Iのオルガノシランエステルと、2質量%未満の式IVa、IVb及びIVcの少なくとも1種の炭化水素とを有する組成物を、請求項1から9までの何れか1項に記載の方法を実施し、そして分留において98質量%を上回るオルガノシランエステルを有する留分を排出することにより製造する方法を提供する。
【0037】
同様に本発明は、それぞれ全組成物に対して、98質量%を上回る式Iのオルガノシランエステルと、2.0質量%未満の式IVa、IVb及びIVcの少なくとも1種の炭化水素少なくとも1種とを有する、請求項10に記載の方法により得られた組成物を提供する。
【0038】
従って本発明は、組成物の成分の合計が100質量%である場合に、全組成物に対して、98質量%を上回る式Iのオルガノシランエステルと、2.0質量%未満の炭化水素少なくとも1種とからなる組成物をも提供する。
【0039】
特に、本発明にかかる組成物は、オルガノシランエステルの含有率の割合が99.0〜99.99質量%であり、特に好ましくは99.4〜99.95質量%であり、殊に好ましくは99.6〜99.9質量%である。
【0040】
本発明にかかる組成物はまた、炭化水素の含有率の割合が、好ましくは、0.001〜1.5質量%であり、特に好ましくは0.005〜1質量%であり、殊に好ましくは0.05〜0.5質量%であり、なかんずく好ましくは0.01〜0.2質量%である。
【0041】
本発明にかかる組成物は同様に、アルコール、好ましくはシランエステルのアルコキシドに相応のアルコールの含有率の割合が、0.0001〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.0005〜0.2質量%であり、殊に好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0042】
更に、本発明は、本発明にかかる組成物を、前駆物質として、誘電率が1<κ≦4、特に好ましくは1.5≦κ≦3.5、殊に好ましくは1.8≦κ≦2.8の層の製造に用いる使用を提供する。
【0043】
従って、本発明の組成物は、例として、但し限定されるものではないが、前駆物質又は蒸発性のケイ素含有出発材料として、CVD又はスピンオン法により稼働する皮膜形成工程に使用することができる。
【0044】
CVD法:
ここでは、ケイ素又は前駆物質の混合物をベースとする前駆物質を、通常、好適な反応器、例えばApplied Centura HAT、 Novellus Concept One 200又はASM Eagleー10内で蒸発させ、そして高温表面、例えばシリコンウェーハ上で反応させ、固体材料の層を形成させる。更に、この方法の発展形は、例えばRPCVD(減圧化学蒸着法)、LPCVD(低圧化学蒸着法)及びPECVD(プラズマ化学蒸着法)が有利であることが判明しており、これらはより迅速な蒸着を時として温度を顕著に低下させることが可能になる。
【0045】
スピンオン法:
この方法においては、液体ケイ素含有化合物、液体ケイ素含有化合物の混合物、ケイ素含有化合物を好適な蒸発性溶剤に溶かした溶液、又はケイ素含有化合物を好適な蒸発性溶剤に溶かした溶液、又は分解性の、孔形成物質、例えば有機ポリマー、例えばPOM、PMMA、PEO、PPOを有する組成物を、シリコンウェーハ表面上に位置させ、そして均一な薄い皮膜をウェーハの回転により製造する。一般的に、このように製造された皮膜は、後続の加熱処理により20〜500℃で硬化させる。
【0046】
本発明を、以下の実施例により説明するが、この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0047】
実施例:
実施例A及びBは、以下に関係式(1)及び(2)の使用を説明するものである:
実施例A
シクロヘキサン中でのエタノールを用いるクロロシランのエステル化:
留去されるべき共沸混合物は、約65℃で沸騰し、適当には30.5質量%のエタノールを含有する(x=30.5)。
【0048】
ナトリウムエトキシドのエタノール溶液での中和の後に、例えば175gのエタノールが生成混合物中に存在する(mアルコール−合成+mアルコール−中和=175g)。エステル化を、300gのシクロヘキサン中で実施した(mHC−合成=300g)。
【0049】
本発明による蒸留の実施に必要とされる付加的なシクロヘキサンの量は、(2)により示される:
【0050】
【数4】

【0051】
この場合、シクロヘキサン量398.8gは最初の装入時に調節して、蒸留を開始すべきである。
【0052】
実施例B
n−ヘキサン中でのメタノールを用いるクロロシランのエステル化:
留去されるべき共沸混合物は、約49℃で沸騰し、29.8質量%のメタノールを含有する。
【0053】
ナトリウムメトキシドのメタノール溶液での中和後に、147gのメタノールが生成混合物中に存在する。このエステル化を、250gのn−ヘキサン中で実施した。
【0054】
本発明による蒸留の実施に必要とされる付加的なn−ヘキサンの量は、(2)により示される:
【0055】
【数5】

【0056】
実施例1(比較例)
500gのジメチルジクロロシランを、還流冷却器、機械的撹拌器、温度計及びテフロン製供給路を備えた4口フラスコ内に位置させる。186gのメタノールを、40〜50℃で5時間にわたって連続的に撹拌しつつ計量供給する。オリゴマー化が開始するので、この混合物を466gのナトリウムメトキシド溶液(メタノール中30%)で中和し、そしてエステル化を完了させる。形成された塩を濾別し、そしてこの濾液(829g)を分留にかける。この蒸留を、セラミック体で充填され、かつ75cmの効率的な高さと、100℃の底部加熱温度を有するガラス塔を介して大気圧下で実施する。最終留分を、150ミリバールに減圧することによって留去する。
【0057】
この蒸留の結果を、第1表に示す。
【0058】
第1表
【0059】
【表1】

【0060】
第1表は、蒸留により純粋な成分に分離することができないことを示している。
【0061】
メタノールは、明らかにジメチルジメトキシシランとの共沸混合物を形成し、この混合物は、62℃で沸騰し、かつ約40GC面積%のメタノールと、約60GC面積%のジメチルジメトキシシランとの組成を有する。
【0062】
実施例2
500gのジメチルジクロロシランを、還流冷却器、機械的撹拌器、温度計及びテフロン製供給路を備えた4口フラスコ内に装入する。186gのメタノールを、40〜50℃で5時間にわたって連続的に撹拌しつつ計量供給する。オリゴマー化が開始するので、この混合物を466gのナトリウムメトキシド溶液(メタノール中30%)で中和し、そしてエステル化を完了させる。形成された塩を濾別し、そして1082gのn−ヘキサンをこの濾液(829g)に添加する。この混合物を、分留にかける。この蒸留を、セラミック体で充填され、かつ75cmの効率的な高さと、100℃の底部加熱温度を有するガラス塔を介して大気圧下で実施する。最終留分を、150ミリバールに減圧することによって留去する。この蒸留の結果を、第2表に示す。
【0063】
第2表
【0064】
【表2】

【0065】
第2表に示されるように、メタノールとDMDMOとの蒸留による分離は、n−ヘキサンの添加後に可能であり、かつ共沸混合物の形成はこれにより解消される。
【0066】
実施例3
500gのジメチルジクロロシランを、500gのn−ヘキサンと一緒に、還流冷却器、機械的撹拌器、温度計及びテフロン製供給路を備えた4口フラスコ内に装入する。248gのメタノールを、45〜55℃で5時間にわたって連続的に撹拌しつつ計量供給する。次いで、この混合物を、259gのナトリウムメトキシド溶液(メタノール中30%)で中和する。形成された塩を濾別し、292gのn−ヘキサンを添加し、そしてこの濾液(1424g)を分留にかけ、その際、パラメータは実施例2と同様にする。この蒸留を、充填塔(セラミック)(油浴温度:100℃)を介して大気圧下で実施する。最終留分を、150ミリバールに減圧することによって留去する。
【0067】
この蒸留の結果を、第3表に示す。
【0068】
第3表
【0069】
【表3】

【0070】
実施例3は、n−ヘキサンを開始材料の反応の間にできるだけ早期に添加すると有利であることを示している。このように、ナトリウムメトキシドの最小消費時にDMDMOの最大収率が得られる。このことは、n−ヘキサンにより影響を受ける反応及び蒸留が、DMDMOの純粋な形での形成及び単離について正の効果を有することを意味する。
【0071】
実施例4
500gのジメチルジクロロシランを、還流冷却器、機械的撹拌器、温度計及びテフロン製供給路を備えた4口フラスコ内に装入する。実施例2において留去された第一の留分の845gのメタノール/n−ヘキサンを、45〜55℃で、5.5時間にわたって連続的に撹拌しつつ計量供給する。次いで、この混合物を、279.5gのナトリウムメトキシド溶液(メタノール中30%)で中和する。形成された塩を濾別する。後処理の完了後に、306gのDMDMOが得られる。実施例4は、第一の留分は本反応に再循環することができることを示している。
【0072】
実施例5
1000gのジメチルジクロロシランを、945gのn−ヘキサンと一緒に、還流冷却器、機械的撹拌器、温度計及びテフロン製供給路を備えた4口フラスコ内に装入する。496gのメタノールを、45〜55℃で5.5時間にわたって連続的に撹拌しつつ計量供給する。次いで、この混合物を、475gのナトリウムメトキシド溶液(メタノール中30%)で中和する。形成された塩を濾別し、そして1989gの濾液が得られる。1372gの濾液を、分留にかける。この蒸留を、金属網充填物を備えた110cmの塔(油浴温度:80〜120℃)を介して大気圧下で実施する。留去された留分1〜3の860gのヘキサンに富む相を、この留分を抜き出した後にそれぞれ蒸留ポットに注ぎ戻す。
【0073】
この蒸留の結果
【0074】
【表4】

【0075】
実施例5は、本方法により、特に上述の電子工学用途において要求されている程の極めて高純度のDMDMOを得ることができることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
Si(OR4−a−b−c (I)
[式中、Rは、水素、アルキル又はアリールであり、Rは、水素又はアルキルであり、Rは、水素又はアルキルであり、かつRは、アルキル、アリール又はアルコキシアルキルであり、a、b及びcは、同じか又は異なっていてよく、かつそれぞれ0、1、2又は3であってよいが、但し(a+b+c)≦3である]のオルガノシランエステルを、一般式II
SiX4−a−b−c (II)
[式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル又はアリールであり、Rは、水素又はアルキルであり、Rは、水素又はアルキルであり、かつRは、アルキル、アリール又はアルコキシアルキルであり、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、a、b及びcは、同じか又は異なっていてよく、かつそれぞれ0、1、2又は3であってよいが、但し(a+b+c)≦3である]のオルガノハロシランと、一般式III
OH (III)
[式中、Rは、アルキル、アリール又はアルコキシアルキルである]のアルコールとを反応させることにより製造し、その際、
− ハロシランとアルコールとを液相中で、合成助剤少なくとも1種の存在下又は不存在下で反応させ、
− ハロゲン化水素をこの系から除去し、
− 場合により、金属アルコキシドをこの反応混合物に添加し、そして形成された金属塩を濾別し、そして
− 得られた生成混合物を続いて蒸留により後処理する前に又はその間に、それぞれの場合において、合成助剤を、前記条件下でこの蒸留の間に生成混合物の1種以上の成分と式Iのオルガノシランエステルとの共沸混合物が形成されないような量で少なくとも1回添加する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、一般式
2n+2 (IVa)[式中、5≦n≦18である]、若しくは
2n (IVb)[式中、5≦n≦8である]、若しくは
(IVc)[式中、4≦n≦8である]で示される炭化水素、又は
相応のアルキル置換された脂環式炭化水素若しくはアルキル置換された芳香族炭化水素又は前記炭化水素のハロゲン化化合物からなる群から選択された合成助剤少なくとも1種を使用する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、式IIIのアルコールとの混和性、不混和性、又は部分混和性を示す炭化水素少なくとも1種を使用する方法。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか1項に記載の方法において、反応において形成されたオルガノシランエステルとの混和性を示す炭化水素少なくとも1種を使用する方法。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか1項に記載の方法において、開始材料の式IIのオルガノハロシランと、式IIIのアルコールとの反応を、−40℃〜220℃の温度で実施する方法。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか1項に記載の方法において、開始材料の反応を、0.001〜50バールの範囲内の絶対圧で実施する方法。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか1項に記載の方法において、反応からの生成混合物の後処理のための蒸留を、−40℃〜220℃の底部温度で実施する方法。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか1項に記載の方法において、反応を均質相中で実施する方法。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか1項に記載の方法において、アルコールと合成助剤との質量比を、関係式
【数1】

[式中、「mアルコール−合成」は、エステル化後に一般的に残留するアルコールの量であり、
「mアルコール−中和」は、アルコキシド又はアルコール性アルコキシド溶液での中和に添加されるアルコールの量であり、
「mHC−合成」は、エステル化の間に添加される合成助剤の量であり、
「mHC−蒸留」は、蒸留に必要であってよい付加的な合成助剤の量であり、かつ
「x」は、留去されるべき共沸混合物中のアルコールの質量%割合である]により調節して蒸留を実施する方法。
【請求項10】
全組成物に対してそれぞれ、98質量%を上回る式Iのオルガノシランエステルと、2質量%未満の式IVa、IVb又はIVcの少なくとも1種の炭化水素とを有する組成物を、請求項1から9までの何れか1項に記載の方法を実施し、そして分留において98質量%を上回るオルガノシランエステルを有する留分を排出することにより製造する方法。
【請求項11】
全組成物に対してそれぞれ、98質量%を上回る式Iのオルガノシランエステルと、2.0質量%未満の式IVa、IVb及びIVcの少なくとも1種の炭化水素少なくとも1種とを有する、請求項10に記載の方法により得られた組成物。
【請求項12】
炭化水素の含有率が、0.001〜1.5質量%である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
オルガノシランエステルの含有率が、99.0〜99.99質量%である、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
アルコールの含有率が、0.0001〜0.5質量%である、請求項11から13までの何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
全組成物に対して、98質量%を上回る式Iのオルガノシランエステルと、2.0質量%未満の式IVa、IVb又はIVcの炭化水素少なくとも1種とを有する組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物又は請求項10から14までの何れか1項に記載の得られた組成物を、前駆物質として、誘電率が1<κ≦4の層又は皮膜の製造に用いる使用。

【公表番号】特表2008−500305(P2008−500305A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513888(P2007−513888)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051494
【国際公開番号】WO2005/118597
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】