説明

オルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法および連結型高圧乳化装置

【課題】 高圧乳化装置を用いて、25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンを短時間で効率良く乳化するオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法を提供する。また、複数の高圧乳化装置が直列に連結されたことを特徴とする連結型高圧乳化装置を提供する。
【解決手段】(A)25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンと(B)界面活性剤とを水性媒体中に加え、攪拌してオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンを作り、この一次エマルジョンを原料の供給方向に対して直列に連結された複数の高圧乳化装置に送り込んで乳化処理することを特徴とするオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法。連結型高圧乳化装置およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンを高圧乳化装置を用いて乳化処理してなるオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法および連結型高圧乳化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンエマルジョンは繊維処理剤、化粧品、表面処理剤、エマルジョン塗料、消泡剤、離型剤等の用途に供されており、乳化剤と各種の攪拌機、混合機あるいは分散機を使用してポリオルガノシロキサンを水に乳化することにより製造されている。特に、25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンは、乳化剤および水と混合し、攪拌することによって容易に一次エマルジョンを形成することができ、この一次エマルジョンを分散装置によって処理することにより、平均粒子径が微細なオルガノポリシロキサンエマルジョンを容易に得ることができる。これらの分散装置は、一次エマルジョンに含まれるオルガノポリシロキサンの粒子を、高エネルギーを加えて水性媒体中に分散乳化する装置であり、効率良く短時間で処理が可能であることから、高圧乳化装置が好適に用いられる。例えば、特許文献1には、高圧乳化装置であるナノマイザーまたはマイクロフルイダイザーを用いてオルガノポリシロキサンエマルジョンを製造する方法が開示されている(特許文献1 参照)。
【0003】
しかし、高圧乳化装置を用いてオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンを乳化する場合であっても、一度の乳化処理では得られたオルガノポリシロキサンエマルジョンの平均粒子径が十分に細かくならないという問題があった。平均粒子径をより細かくする目的で、高圧乳化装置の処理圧力を上げることができるが、高圧で処理を行った場合、乳化に伴う発熱により、エマルジョンが破壊されやすく、得られたエマルジョンにオイル分離が発生するという問題を生じる。そこで、転相後の一次エマルジョンを超高圧ガウリンホモジナイザーまたはマイクロフルイダイザーを用いて2回以上処理する方法が知られている(例えば、特許文献2または特許文献3 参照)。しかし、これらの方法を用いた場合、1回目の乳化処理により、エマルジョン全体の温度が上昇し、同一の条件で2回以上乳化処理を行うと、乳化処理によって加熱されたエマルジョンの一部が破壊されてオイル分離の原因になるという問題があった。このため、特にエマルジョンの製造量が多い場合には、処理後のエマルジョンの温度を再調整してから乳化処理を行う、あるいは2回目以降の最適な乳化条件を別途検討して乳化を行わざるをえず、エマルジョンの安定な製造条件を確保するための作業量が著しく増大するという問題があった。さらに、処理回数の増加によって、乳化に要する時間が増大し、オルガノポリシロキサンエマルジョンの製造に要するサイクルタイムの増加をもたらすという問題があった。さらに、1回の処理で、所望の安定性を有するオルガノポリシロキサンエマルジョンを得ることができないため、エマルジョンの製造量が多い場合には、複数回処理する間に、経時的にオルガノポリシロキサンエマルジョンの平均粒子径が粗大化するという問題があった。
【0004】
特許文献4と特許文献5には、剪断攪拌機構を備えた混合装置を2基直列に連結した装置を使用することにより、均質性および保存安定性に優れたオルガノポリシロキサンエマルジョンを連続的に大量生産することのできる方法が開示されている(特許文献5または特許文献6 参照)。しかしながら、これらの方法では、粘度が1万センチストークス未満の低粘度のオルガノポリシロキサンを乳化することは困難であり、また、低粘度のオルガノポリシロキサンを乳化して平均粒子径が1.0μm以下の安定なエマルジョンを得ることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−213005号公報
【特許文献2】特開2001−163981号公報
【特許文献3】特開昭59−51916号公報
【特許文献4】特開平8−198969号公報
【特許文献5】特開平9−67442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を解決すべくなされたものであり、高圧乳化機を用いて、25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンを短時間かつ少ない処理回数で効率良く乳化することができるオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法を提供することを目的とする。また、連結型高圧乳化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、(A)25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンと(B)界面活性剤とを水性媒体中に加え、攪拌してオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンを作り、この一次エマルジョンを原料の供給方向に対して直列に連結された複数の高圧乳化装置に送り込んで乳化処理することを特徴とするオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法である。
また、本発明は、(A)成分が、25℃における粘度が0.65〜10,000csの分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基、ジオルガノモノヒドロキシシロキシ基またはジオルガノモノアルコキシシロキシ基で封鎖された直鎖状もしくは分岐状のジメチルポリシロキサンであり、前記の高圧乳化装置によるオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンの処理回数が1回であり、乳化後に得られたオルガノポリシロキサンエマルジョンの平均粒子径が200〜400nmであることを特徴とするオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法である。
また、本発明は、前記の高圧乳化装置によるオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンの処理圧力を変えることにより、平均粒子径の異なるオルガノポリシロキサンエマルジョンを製造することを特徴とするオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法である。
さらに、本発明は、前記の高圧乳化装置による処理圧力が100〜1000kg/cmであることを特徴とするオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法である。
さらに、本発明は、複数の高圧乳化装置を原料の供給方向に対して直列に連結したことを特徴とする連結型高圧乳化装置およびその使用である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法を用いることにより、高圧乳化機を用いて、25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンを短時間かつ少ない処理回数で効率良く乳化することができるオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法を提供することができる。また、連結型高圧乳化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法は、(A)25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンと(B)界面活性剤とを水性媒体中に加え、攪拌してオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンを作り、この一次エマルジョンを原料の供給方向に対して直列に連結された複数の高圧乳化装置に送り込んで乳化処理することを特徴とするオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法である。
【0010】
本発明において、(A)成分は25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンである。25℃における粘度が前記上限を超えると、本発明に係るオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法では、十分に効率的な乳化処理を行うことができない。(A)成分として好ましくは、25℃における粘度が0.65〜1,000csのオルガノポリシロキサンである。(A)成分として選択されるオルガノポリシロキサンの種類および構造は、求めるオルガノポリシロキサンエマルジョンの本発明の目的に反しない限り、特に限定されるものではないが、25℃における粘度が0.65〜10,000csの環状オルガノポリシロキサン、分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基、ジオルガノモノヒドロキシシロキシ基またはジオルガノモノアルコキシシロキシ基で封鎖された直鎖状もしくは分岐状のオルガノポリシロキサン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0011】
例えば、本発明で(A)成分として用いられるオルガノポリシロキサンは、一般式;
SiO(4−n)/2 ・・・(1)
{式中、Rは置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などの飽和脂肪族炭化水素基;ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などの不飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの飽和脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基および、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が部分的にハロゲン原子、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などを含む有機基で置換された基が例示される。また、このRの一部は、水酸基、アルコキシ基または水素原子であってもよいが、Rの内70モル%以上がメチル基であることが好ましく、80モル%以上がメチル基であることがより好ましい。nは0.1以上3.0未満の数を示し、好ましくは1.0〜2.5であり、より好ましくは1.8〜2.2である。}で表される。
【0012】
さらに詳しくは、(A)成分が環状オルガノポリシロキサンであれば、一般式(2);
【化1】


で示され、上式中、RおよびRは置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。具体的には、前記Rと同様の基が例示される。このRおよびRは同一でも異なっていてもよい。nは一般式(2)で表される環状オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が0.65〜10,000csとなるような数であり、好ましくは平均3〜8の整数である。環状オルガノポリシロキサンとして具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、1,1−ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、フェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1、1−ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラシクロヘキシルテトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−メルカプトプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−アクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−カルボキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−ビニロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(p−ビニルフェニル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ[3−(p−ビニルフェニル)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ[3−(p−イソプロペニルベンゾイルアミノ)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−メタクリロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−ラウロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−アクリロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N,N−ビス(メタクリロイル)−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N,N−ビス(ラウロイル)−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサンが例示される。このような環状シロキサンを単独あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
【0013】
また、(A)成分として用いられる分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基、ジオルガノモノヒドロキシシロキシ基またはジオルガノモノアルコキシシロキシ基で封鎖された直鎖状もしくは分岐状のオルガノポリシロキサンとしては、次の一般式(3)および(4)で示される化合物が挙げられる。
【化2】


【化3】


上式中、RおよびRは置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。具体的には、前記Rと同様の基が例示される。このRとRは同一でも異なっていてもよい。x,y,zは一般式(3)または(4)で表されるオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が0.65〜10,000csとなるような数であり、xおよびzは0〜100の整数であり、0〜50の整数が好ましい。yは1〜100の整数であり、1〜50の整数が好ましい。このような低重合度オルガノポリシロキサンとして具体的には、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジメトキシポリジメチルシロキサン、テトラメチル−1,3−ジヒドロキシジシロキサン、オクタメチル−1,7−ジヒドロキシテトラシロキサン、ヘキサメチル−1,5−ジエトキシトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンが例示される。また、これらの低重合度のオルガノポリシロキサンに、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシランの架橋剤を併用してもよい。
【0014】
本発明で(B)成分として使用される界面活性剤は、本発明の目的を損なわない限り、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、またはアニオン系界面活性剤のいずれも用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレンエーテル,ポリオキシアルキレンアルキルフェノール,ポリオキシアルキレンアルキルエステル,ポリオキシアルキレンアルキルエステル,ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル,ポリプロピレングリコール,ジエチレングリコール等の非イオン系界面活性剤、ラウリン酸ナトリウム,ステアリン酸ナトリウム,オレイン酸ナトリウム,リノレン酸ナトリウム等の脂肪酸塩,ヘキシルベンゼンスルホン酸,トクチルベンゼンスルホン酸,ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩,オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド,ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド,アルキルスルホネート,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム,ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド,ベンジルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、2種類以上を併用しても良い。
【0015】
本発明において、一次エマルジョンは、粘度0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンを、界面活性剤と水に分散することにより調製される。この分散を行うためには、パドル翼付攪拌機,TKホモミクサー(特殊機化工業(株))などの装置が利用される。この一次エマルジョンを調製するにあたっては、粘度0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンが100重量部に対して,界面活性剤が0.1〜50重量部であり,水が10〜300重量部の範囲内にあることが好ましい。前記範囲以外では、一次エマルジョンの調製が困難であったり、調製後の一次懸濁液から短時間でオルガノポリシロキサンが分離して、その後の乳化処理が不可能になるおそれがある。また、粘度0.1〜10,000csのオルガノポリシロキサン、界面活性剤および水は、本発明の目的を損なわない限り、任意の順序で混合することができ、それぞれの一部又は全部を任意の順序で投入することができる。さらに、これらの分散工程は、たとえば、5℃から50℃までの温度で行われ、好ましくは10℃から40℃である。ここで、本発明にかかる一次エマルジョンは、液状であり、その粘度が25℃において1,000cs以下であることが好ましい。一次エマルジョンの粘度が前記の値を超えると、高圧乳化装置による処理が困難となるためである。
【0016】
本発明にかかるオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法は、前記の一次エマルジョンを原料の供給方向に対して直列に連結された複数の高圧乳化装置に送り込んで乳化処理することを特徴とする。
ここで、高圧乳化装置とは、装置内で一次エマルジョンを加圧することにより、高速の液流とし、この液流を液流同士を分岐させて衝突させたり、調節された微小間隙を通じてインパクトリングや回転体に衝突させたりすることにより発生する衝突力,剪断力,キャビテーション,乱流,超音波により一次エマルジョン中に含まれるオルガノポリシロキサンの乳化粒子を粉砕し、均一かつ微細な乳化粒子を形成させることを目的とした装置である。具体的には、超高圧ガウリン型ホモジナイザー(ゴーリン社),高圧ホモゲナイザー((株)イズミフードマシナリー),高圧ホモジナイザー(Rannie製),マイクロフルイダイザー(Microfluidics製),ナノマイザー(ナノマイザー(株))等が例示される。また、これらの高圧乳化装置は連結管によって直列に接続されることが好ましい。連結管はその材質、口径、長さにおいて所望の物を用いることができ、また、必要に応じて連結管を折り曲げて使用することも出来る。折れ曲がりのないステンレス鋼製の単管の連結管を用いることが好ましい。さらに、これらの高圧乳化装置間に、緩和域を設けて接続することもできる。
【0017】
本発明にかかる製造方法は、原料の供給方向に対して直列に連結された複数の乳化装置を用いることを特徴とする。連結された高圧乳化装置は2基以上であり、前記の乳化作用が直列に連続する高圧乳化装置間に少なくとも2段階にわたり繰り返されるため、オルガノポリシロキサン粒子の微細化が短時間に効率良く進行し、均質で微細な平均粒子径を有するエマルジョンを得ることができる。また、1基の高圧乳化装置で複数回の乳化処理を行う場合と異なり、2回目以降の乳化処理において、処理後のエマルジョンの温度を再調整してから乳化処理を行ったり、2回目以降の最適な乳化条件を別途検討して乳化を行う必要がなく、エマルジョンの安定な製造条件を確保するための作業量を抑えることができる。ここで、好ましい複数の高圧乳化装置の配置数は2〜4基であり、より好ましくは2基である。連結された複数の高圧乳化装置の乳化機構、それぞれの高圧乳化装置による乳化時の処理圧力は同一であっても異なるものであっても良いが、連結された複数の高圧乳化装置が同一の乳化機構を有することが好ましく、複数の高圧乳化装置による処理圧力が同一であることが好ましい。
【0018】
本発明において、連結された複数の高圧乳化装置による処理圧力は、好ましくは100〜1,000kg/cmである。乳化時の処理圧力が前記下限未満であると、十分な乳化が困難であり、前記上限を超えると、乳化時の発熱により、エマルジョンの破壊が起こりやすくなるおそれがある。さらに、本発明は、複数の高圧乳化装置が直列に連結されているため、1回の乳化処理で、平均粒子径が200〜400nmのオルガノポリシロキサンエマルジョンを得ることができるという特徴がある。
【0019】
本発明に係る製造方法によって得られたオルガノポリシロキサンエマルジョンは、そのままか或いはこれを水で希釈することにより、それぞれの用途に適したオルガノポリシロキサンエマルジョンとして調製し、繊維処理剤,潤滑剤,離型剤,ガラス繊維処理剤,化粧品用油剤,艶出剤,消泡剤,塗料添加剤等として使用される。
【0020】
さらに、前記の直列に連結した高圧乳化装置を用いて得られたオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンを、酸性触媒または塩基性触媒の存在下、あるいは非存在下において、縮重合反応させることにより、オルガノポリシロキサンエマルジョンを製造することもできる。この場合、(A)成分であるオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が0.65〜1,000csの環状オルガノポリシロキサン、分子鎖末端がジオルガノモノヒドロキシシロキシ基またはジオルガノモノアルコキシシロキシ基で封鎖された直鎖状もしくは分岐状のオルガノポリシロキサン、またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0021】
以下、本発明にかかる連結型高圧乳化装置およびその使用についてさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明にかかる連結型高圧乳化装置とは、複数の高圧乳化装置を原料の供給方向に対して直列に連結したことを特徴とする乳化装置であり、前記の高圧乳化装置および機構間を接続する連結管によって好適に構成されるものである。連結された高圧乳化装置は2基以上であり、好ましい複数の高圧乳化装置の配置数は2〜4基であり、より好ましくは2基である。連結された複数の高圧乳化装置の乳化機構、それぞれの高圧乳化装置による乳化時の処理圧力は同一であっても異なるものであっても良く、連結された複数の高圧乳化装置の乳化機構が同一であっても異なるものであっても良く、複数の高圧乳化装置による処理圧力が同一であっても異なっていても良い。
【0023】
本発明にかかる連結型高圧乳化装置の使用は特に限定されるものではないが、25℃における粘度が10,000cs以下の非水系物質の乳化に好ましく用いることが出来る。ここでいう非水系物質とは、例えば、炭化水素系油状物、炭化水素の変性物等の天然もしくは合成オイル類、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、オレフィン、変性オレフィン等のモノマー類、大豆油 、変性大豆油 、フタル酸エステル等の可塑剤、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン等のアルコキシシラン類、ワックス類、ポリオレフィン類、ポリジエン類、エポキシ樹脂、ウレタンプレポリマー、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、ロジン、ロジン変性物、スチレン樹脂、キシレン樹脂等の粘着付与樹脂類、アクリル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0024】
これらの非水系物質は、必要に応じて界面活性剤と共に水に分散され、一次エマルジョンとして調製された後、連結型乳化装置を用いて乳化することができる。この分散を行うためには、パドル翼付攪拌機,TKホモミクサー(特殊機化工業(株))などの装置が好適に利用される。ここで、調整された一次エマルジョンは、液状であり、25℃における粘度が1,000cs以下であることが好ましい。一次エマルジョンの粘度が前記の値を超えると、高圧乳化装置による処理が困難となるためである。
【0025】
本発明にかかる連結乳化装置を用いた非水系物質の乳化において、界面活性剤は非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、またはアニオン系界面活性剤のいずれも用いることができる。これらの界面活性剤は、2種類以上を併用しても良い。さらに調製後の一次エマルジョンは酸性触媒または塩基性触媒を含有するものであっても良い。
【実施例】
【0026】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において、部は重量部、%は重量%を表し、粘度は25℃において測定した値である。また、調製したエマルジョンは以下の方法により評価した。
<オイル分離発生量>
オルガノポリシロキサンエマルジョンを200ccガラス瓶に計りとり、調製直後に室温でエマルション表面に発生するオイル分離量を目視した。評価結果は以下の4水準とした。
◎ : オイル分離なし
○ : 微量のオイル分離(ごく薄い層が表面に認められる)
△ : 少量のオイル分離(少量のオイルスポットが認められる)
× : 多量のオイル分離(多量のオイルスポットまたはオイル層が認められる)
<エマルジョン粒子の平均粒子径>
COULTER ELECTRONICS社(米国)製の「COULTER MODEL N4」を用いて測定した。
【0027】
[実施例1〜5]
分子鎖両末端がジメチルヒドロキシシロキシ基で封鎖された粘度100csのジメチルポリシロキサン100部,ラウリル硫酸ナトリウム(製品名:エマール2Fニードル、花王株式会社製)1.7部,水60部を均一に混合して一次エマルジョンを調製した。この一次エマルジョンを、2基のナノマイザーJPEM−90036(ナノマイザー(株))をオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316)製の折れ曲がりのない連結管(口径5.2mm,長さ110mm)を用いて連結した装置で、表1に示した圧力で1回処理した。処理圧力は2基のナノマイザーについて共通である。得られたエマルジョンのオイル分離量,エマルジョン粒子の平均粒子径を評価して、それらの結果を表1に示した。
【0028】
[比較例1〜3]
前記の実施例1〜5と同一の組成、方法で一次エマルジョンを調製し、この一次エマルジョンを、1基のナノマイザーJPEM−90036(ナノマイザー(株))を用いて、表1に示した圧力で1回処理した。得られたエマルジョンのオイル分離量,エマルジョン粒子の平均粒子径を評価して、それらの結果を表1に示した。
【0029】
[比較例4〜6]
前記の実施例1〜5と同一の組成、方法で一次エマルジョンを調製し、この一次エマルジョンを、1基のナノマイザーJPEM−90036(ナノマイザー(株))を用いて、表1に示した圧力で2回処理した。得られたエマルジョンのオイル分離量,エマルジョン粒子の平均粒子径を評価して、それらの結果を表1に示した。
【0030】
【表1】


(*)2基連結 : 2基のナノマイザーを連結した装置
1基 : 1基のナノマイザーのみ
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る製造方法により得られたオルガノポリシロキサンエマルジョンは、繊維処理剤,潤滑剤,離型剤,ガラス繊維処理剤,化粧品用油剤,化粧料,艶出剤,消泡剤,塗料,離型剤,撥水剤,表面処理剤などの添加剤として、また、それ自体が離型剤,撥水剤,繊維処理剤,表面処理剤などとして有用である。また、本発明にかかる連結型乳化装置およびその使用は25℃における粘度が10,000cs以下の非水系物質の乳化に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における粘度が0.65〜10,000csのオルガノポリシロキサンと(B)界面活性剤とを水性媒体中に加え、攪拌してオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンを作り、この一次エマルジョンを原料の供給方向に対して直列に連結された複数の高圧乳化装置に送り込んで乳化処理することを特徴とするオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法。
【請求項2】
(A)成分が、25℃における粘度が0.65〜10,000csの分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基、ジオルガノモノヒドロキシシロキシ基またはジオルガノモノアルコキシシロキシ基で封鎖された直鎖状もしくは分岐状のジメチルポリシロキサンであり、原料の供給方向に対して直列に連結された複数の高圧乳化装置によるオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンの処理回数が1回であり、乳化後に得られたオルガノポリシロキサンエマルジョンの平均粒子径が200〜400nmであることを特徴とする請求項1に記載されたオルガノポリシロキサンエマルジョンの製造方法。
【請求項3】
原料の供給方向に対して直列に連結された複数の高圧乳化装置によるオルガノポリシロキサンの一次エマルジョンの処理圧力を変えることにより、平均粒子径の異なる水性エマルジョンを製造することを特徴とする請求項1に記載されたオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項4】
連結された複数の高圧乳化装置による乳化処理時の圧力が100〜1,000kg/cmであることを特徴とする請求項1に記載されたオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項5】
複数の高圧乳化装置を原料の供給方向に対して直列に連結したことを特徴とする連結型高圧乳化装置。
【請求項6】
請求項5に記載された連結型高圧乳化装置の使用。

【公開番号】特開2006−219620(P2006−219620A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35834(P2005−35834)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】