説明

オルガノポリシロキサン及びその製造方法並びにフルオロシリコーンゴム組成物

【解決手段】一般式(1)


[R1〜R5は炭素数1〜8の一価炭化水素基、R6は炭素数2〜10の脂肪族不飽和一価炭化水素基、Xは水素原子又は式(2)もしくは(3)
−SiR78(CH=CH2) (2)
−SiR91011 (3)
(R7〜R11は炭素数1〜8の脂肪族不飽和基を除く一価炭化水素基である。)
で示されるシリル基、m=0〜30の整数、n=1〜100の整数、p≧500の整数。]
で示されるオルガノポリシロキサン。
【効果】本発明のポリシロキサンは、シロキサンポリマーの主鎖骨格中に不飽和炭化水素基を含有するシロキサン単位が効率よく分散して導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(3,3,3−トリフルオロプロピルメチル)シロキサン単位の繰り返しからなるシロキサンポリマーの主鎖骨格中に非置換又は置換の不飽和一価炭化水素基を効率よく分散して導入させたオルガノポリシロキサン及び該オルガノポリシロキサンの製造方法に関し、更に該オルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)として用いた熱安定性フルオロシリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロシリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、耐油性、耐燃料油性、圧縮復元性等に優れており、自動車、航空機等の輸送機部品や石油関連機部品として使用されている。
【0003】
近年環境問題への関心から、自動車において過給器を必要とするディーゼル車の比率が高まり、エンジンの高出力化に伴いターボホース用内層材として使用されるフルオロシリコーンゴムに更なる耐熱性、引張り強度、引裂き強度等の機械的強度が求められている。従来、フルオロシリコーンゴムの主成分であるポリフルオロアルキルメチルシロキサンは有機リチウム化合物のシロキサンオリゴマーを重合触媒としてトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンを開環重合する方法(特許文献1:特開昭62−174260号公報)、有機ナトリウム化合物のシロキサンオリゴマーを重合触媒としてトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンを開環重合する方法(特許文献2:特開平5−186699号公報)が示されている。これらをはじめ、従来のポリフルオロアルキルメチルシロキサン中へのビニル基等のアルケニル基の導入方法は、専ら下記式(6)で示されるトリビニルトリメチルシクロトリシロキサンが使用されているため、ポリマー中に架橋基であるビニル基が3シロキサン単位連続のブロックが偏在した構造となっている。そのため、ビニル基量に対し十分な架橋密度を得ることが難しく、フルオロシリコーンゴム組成物の耐熱性及び機械的強度を向上させることが困難であった。
【0004】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−174260号公報
【特許文献2】特開平5−186699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、(3,3,3−トリフルオロプロピルメチル)シロキサン単位の繰り返しからなるシロキサンポリマーの主鎖骨格中に、脂肪族不飽和一価炭化水素基を効率よく分散、導入したオルガノポリシロキサン及びその製造方法、並びにこのオルガノポリシロキサンをベースポリマーとしたフルオロシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、上記アルケニル基の導入源として一分子中に非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基を一つのみ含有する環状トリシロキサンを用いることで、トリビニルトリメチルシクロトリシロキサンによる従来法に比べて、(3,3,3−トリフルオロプロピルメチル)シロキサン単位の繰り返しからなるシロキサンポリマーの主鎖骨格中に、上記脂肪族不飽和炭化水素基を含有するシロキサン単位を効率よく分散して導入することが可能となり、同一の脂肪族不飽和炭化水素基含有量であっても、従来法で製造された(3,3,3−トリフルオロプロピルメチル)ポリシロキサンに比べて本願発明に係る(3,3,3−トリフルオロプロピルメチル)ポリシロキサンのほうが、より架橋間距離が縮まり、架橋密度が高く、強固な架橋構造を構成しうるフルオロシリコーンポリマーが得られることを知見すると共に、該フルオロシリコーンポリマーを主剤(ベースポリマー)とする硬化性フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物が、耐熱性及び機械的強度が向上されたフルオロシリコーンゴムを与えることを確認して、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記オルガノポリシロキサン及びその製造方法並びにフルオロシリコーンゴム組成物を提供するものである。
請求項1:
下記一般式(1)
【化2】


[式中、R1〜R5は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R6は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基、Xは水素原子又は下記一般式(2)もしくは(3)
【化3】


(式中、R7〜R11は炭素数1〜8の脂肪族不飽和基を除く一価炭化水素基である。)
で示されるシリル基、m=0〜30の整数、n=1〜100の整数、p≧500の整数である。
また、
【化4】


で示される単位(B)と、
【化5】


で示される単位(C)の配列はランダムであり、前記単位(B)中において、−SiR34O−で示される単位と−SiR56O−で示される単位は、前者が2個、後者が1個の単位を含有する限りにおいて、これら3個のシロキサン単位の配列はランダムである。]
で示されるオルガノポリシロキサン。
請求項2:
一般式(1)において、少なくとも1個のXが一般式(2)又は(3)で示されるシリル基である請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
請求項3:
一般式(1)において、mが0、Xが水素原子である請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
請求項4:
下記一般式(4)
【化6】


で示される環状三量体のトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと下記一般式(5)
【化7】


(式中、R12〜R14は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R15は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基である。)
で示される環状トリシロキサンとの混合物をアルキルリチウム触媒又はリチウムシラノレート触媒の存在下に共重合させることを特徴とする請求項2記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項5:
下記一般式(4)
【化8】


で示される環状三量体のトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと下記一般式(5)
【化9】


(式中、R12〜R14は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R15は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基である。)
で示される環状トリシロキサンとを、下記一般式(12)
【化10】


(式中、qは0<q≦100で示される整数である。)
で示されるリチウムシラノレート触媒の存在下に、あるいは、下記一般式(13)
【化11】


(式中、qは0<q≦100で示される整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサンとアルキルリチウム触媒又はリチウムシラノレート触媒との混合物の存在下に共重合させることを特徴とする請求項3記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項6:
重合促進剤の存在下で共重合させることを特徴とする請求項4又は5記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項7:
重合促進剤がテトラヒドロフラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項8:
(A)請求項1、2又は3記載のオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)微粉状シリカ系充填材: 2〜100質量部、
(C)硬化触媒: 触媒量
を含有することを特徴とするフルオロシリコーンゴム組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法により製造される(3,3,3−トリフルオロプロピルメチル)ポリシロキサン(フルオロシリコーンポリマー)は、アルケニル基等の導入源として一分子中に非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基を一つのみ含有する環状トリシロキサンを用いることでシロキサンポリマーの主鎖骨格中に上記不飽和炭化水素基を含有するシロキサン単位が効率よく分散して導入され、より架橋間距離が縮まり、架橋密度が高く、強固な架橋構造を構成し得るものであり、該フルオロシリコーンポリマーを主剤として含有する硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物は耐熱性及び機械的強度に優れたフルオロシリコーン成型体を与えるものであることから、ターボエアホース用途等、耐熱性かつ耐油性が求められる部位の構造材料として最適である。この場合、該フルオロシリコーンポリマーを主剤(ベースポリマー)とする硬化性フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物が、少なくとも片方の分子鎖末端あるいは分子鎖両末端が、前記一般式(2)又は(3)で示されるトリオルガノシリル基(特には、ビニル基を有するトリオルガノシリル基)で封鎖されたフルオロシリコーンを主剤とするよりも、分子鎖両末端がシラノール基(即ち、ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖されたフルオロシリコーンを主剤にすることにより、より耐熱性及び機械的強度が向上したフルオロシリコーンゴムを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1,2、比較例1のオルガノポリシロキサンの加硫特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で示されるものである。
【化12】


[式中、R1〜R5は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R6は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基、Xは水素原子又は下記一般式(2)もしくは(3)
【化13】


(式中、R7〜R11は炭素数1〜8の脂肪族不飽和基を除く一価炭化水素基である。)
で示されるシリル基、m=0〜30の整数、n=1〜100の整数、p≧500の整数である。]
【0012】
ここで、R1〜R5は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した、クロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等の、炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、好ましくは脂肪族不飽和基を除く、炭素数1〜6の非置換又は置換の一価炭化水素基である。これらの基の中で、R1、R2としては、好ましくはメチル基であり、R3、R4、R5としては、好ましくはメチル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基である。R6は、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノナニル基等のアルケニル基に代表される、炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜4の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、これらの基の中で好ましくはビニル基である。R7〜R11は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等の、炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜6の、脂肪族不飽和基を除く非置換又は置換の一価炭化水素基である。Xは、水素原子、一般式(2),(3)で示されるシリル基から選択される原子又は基であり、また、mは0〜30の整数で、好ましくは0〜12、より好ましくは3〜8の整数であり、nは1〜100の整数で、好ましくは2〜50、より好ましくは3〜20の整数であり、pは500以上の整数で、好ましくは500〜10,000の整数、より好ましくは1,000〜10,000の整数であり、(m+n+p)は好ましくは1,000〜10,000の整数である。Xとしては分子鎖のそれぞれの末端に存在する2個のXがいずれも水酸基(シラノール基)であることが耐熱性等の点で望ましいものであるが、少なくとも1個のXが上記一般式(2)又は(3)で示されるトリオルガノシリル基である場合には、好ましくは少なくとも分子鎖の1つの末端にビニル基を有するものである。
【0013】
またこの場合、分子鎖のそれぞれの末端に存在する2個のXがいずれも水素原子であり、m=0のオルガノポリシロキサン、即ち下記一般式(1a)
【化14】


(式中、R3〜R6、n、pは上記の通り。)
で示されるオルガノポリシロキサンが、耐熱性の点から好ましい。
【0014】
本発明におけるポリフルオロアルキルメチルシロキサンを示す一般式(1)において、mの値が30を超えると本発明のフルオロシリコーンゴム組成物の耐油性が低下すると共に、ポリフルオロアルキルメチルシロキサン重合時のシロキサンオリゴマーのトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンへの相溶性が低下するので30以下の整数であることが必要であり、好ましくは0〜12の整数である。nの値は、ビニル基等の脂肪族不飽和基の含有量がポリマー中のケイ素原子に結合する置換基全体の約1.5モル%よりも多いと、ゴム硬度が実用以上に上昇したり、脆くなって引張り強度、引裂き強度等の機械的強度が低下したりするといった問題があるため、1〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは3〜20の整数の範囲とされる。またpの値は500未満では本発明のフルオロシリコーンゴム組成物から得られるフルオロシリコーンゴムの機械的強度が低下するので500以上の整数であることが必要である。
【0015】
また、この組成物を硬化して得られるフルオロシリコーンゴムの強度を低下させないために、回転粘度計による測定において、25℃で少なくとも10,000mPa・s以上、好ましくは50,000mPa・s以上、更に好ましくは100,000mPa・s以上の粘度を持つものとする。なお、粘度の上限には特に制限はなく、ガム状であってもよい。
【0016】
なお、式(1)において、下記各単位(A),(B),(C)に関して、
【化15】


単位(B)と単位(C)の配列についてはランダムに共重合されているものである。
【0017】
また、トリシロキサン単位(B)中において、2個の
【化16】


単位と1個の
【化17】


単位とを含有する限りにおいて、上記3個の各シロキサン単位の配列はランダムである。
【0018】
上記式(1)のオルガノポリシロキサンは、下記一般式(4)
【化18】


で示される環状三量体のトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと下記一般式(5)
【化19】


(式中、R12〜R14は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R15は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基である。)
で示される環状トリシロキサンとの混合物をアルキルリチウム触媒又はリチウムシラノレート触媒の存在下に共重合させることにより製造することができる。
【0019】
本発明においては、アルケニル基等の導入源として上記一般式(5)で示される一分子中に非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基を一つのみ含有する環状トリシロキサンを用いることで、3個のジオルガノシロキサン単位の置換基(即ち、3個のケイ素原子に結合した6個の非置換又は置換の一価炭化水素基)当たり脂肪族不飽和基を一つのみ含有する脂肪族不飽和基含有シロキサンブロック中の脂肪族不飽和基として、シロキサンポリマーの主鎖骨格中に脂肪族不飽和基を効率的にかつ規則的に分散した状態で導入することができる。ここでR12〜R14は、前記一般式(1)におけるR3〜R5にそれぞれ対応するものであり、脂肪族不飽和基を含まないものであることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した、クロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等の、炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基で、好ましくはメチル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基である。R15は、前記一般式(1)におけるR6に対応するものであり、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、シクロヘキセニル基、ノナニル基、オクテニル基等のアルケニル基に代表される炭素数2〜8、好ましくは炭素数2〜4の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、これらの基の中で好ましくはビニル基である。
【0020】
本発明における一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンのうち、少なくとも1個のXが一般式(2)又は(3)で示されるシリル基である場合には、例えばブチルリチウム等のアルキルリチウム触媒、又は、例えば、特開昭62−174260号公報に記載されているように、下記式(7)で示される有機リチウム化合物のシロキサンオリゴマー(即ち、分子鎖の片末端がリチウムイオンで封鎖されている、単官能性のリチウムシラレート触媒)を重合触媒として重合促進剤の存在下、一般式(4)で示される環状三量体であるトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと一般式(5)で示される炭素数2〜10の非置換又は置換の不飽和一価炭化水素基を一つのみ含有する環状トリシロキサンをリビング(共)重合することによってポリフルオロアルキルメチルシロキサンを合成し、次いでこれを弱酸で中和処理し、末端を不活性化して得ることができる。
【0021】
【化20】

【0022】
また、得られたポリフルオロアルキルメチルシロキサンのポリマー末端を上記式(2)及び/又は上記式(3)で示される基を含有するシリル化剤で封鎖することにより、生成物中のヒドロキシル基が低減し、フルオロシリコーンゴム組成物の経時によるクリープハードニングが改良され、保存性が向上し、ゴムコンパウンド使用時の作業性が改善されることから好ましい。
【0023】
ここで、式(2),(3)で示される基を含有するシリル化剤としては、通常、公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、例えばトリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、ジメチルビニルクロロシラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジビニルメチルクロロシラン、1,3−ジメチルテトラビニルジシラザン、1,3−ジメチルテトラメチルジシロキサン、トリビニルクロロシラン、ヘキサビニルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン等のオルガノクロロシラン、オルガノジシラザン、オルガノジシロキサン等が例示される。
【0024】
なお、シリル化方法、反応条件としては、公知のシリル化方法、反応条件が採用し得、具体的には、上記クロロシラン、ジシラザン、ジシロキサンから選ばれる1種又は2種以上のシリル化剤を前記ポリフルオロアルキルメチルシロキサンのポリマー末端に存在するシラノール基(即ち、ケイ素原子に結合した水酸基)1モルに対して約1〜50モル量、好ましくは約1〜20モル量程度添加し、室温又は加熱下(例えば60〜150℃、好ましくは80〜120℃)に反応して末端シラノール基をシリル化することができる。
【0025】
ここで、式(1)において、分子鎖のそれぞれの末端に存在する2個のXがいずれも水素原子であり、m=0の上記式(1a)のオルガノポリシロキサンを得る場合は、下記一般式(4)
【化21】


で示される環状三量体のトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと下記一般式(5)
【化22】


(式中、R12〜R14は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R15は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基である。)
で示される環状トリシロキサンとを、下記一般式(12)
【化23】


(式中、qは0<q≦100で示される整数である。)
で示される、ジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる主鎖骨格(分子鎖)の両末端がリチウムイオンで封鎖された、2官能性のリチウムシラノレート触媒の存在下に、あるいは、下記一般式(13)
【化24】


(式中、qは0<q≦100で示される整数である。)
で示される分子鎖両末端がシラノール基(即ち、ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖されたオルガノポリシロキサンとアルキルリチウム触媒又は(単官能性の)リチウムシラノレート触媒との混合物の存在下に共重合させる方法を採用することができる。
【0026】
なお、式(4)のトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、式(5)の環状トリシロキサンの使用割合は、一般式(1)又は(1a)において、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンに由来する繰り返し単位数pと式(5)の環状トリシロキサンに由来する繰り返し単位数nとを満足するモル比率とすればよい。なお、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1モルは繰り返し単位数pの3個に相当する。また、上記触媒類の使用量としては、いわゆる触媒量とすればよく、特に制限されるものではないが、アルキルリチウム触媒や、式(7)等で示される単官能性のリチウムシラノレート触媒の場合、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1モルに対して、通常、0.0001〜0.01モル、好ましくは0.0005〜0.005モル程度とすることができ、一般式(12)で示される2官能性のリチウムシラノレート触媒や、一般式(13)で示される両末端シラノール基封鎖のオルガノポリシロキサンの場合、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1モルに対して、通常、0.0001〜0.005モル、好ましくは0.0002〜0.002モル程度とすることができる。
【0027】
本発明においては、重合促進剤の存在下で共重合させることが好ましい。本発明における重合促進剤は、一般式(4)で示される環状三量体のトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと一般式(5)で示される環状トリシロキサンの開環重合を促進させるために用いられる。重合促進剤の添加量は環状トリシロキサンの量に対し、0.0001〜50質量%が適当である。重合促進剤の添加により、重合は、撹拌下、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンが液体である35〜240℃の温度で5分〜1日間行われる。
【0028】
本発明における重合促進剤は、テトラヒドロフラン、ジグライム(即ち、ビス(2−メトキシエチル)エーテル)、テトラグライム(即ち、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、又はジメチルアセトアミドを用いることができるが、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと相溶性が高く、低分子シロキサン留去時に同時に除去できるためジグライムが好ましい。
【0029】
なお、一般式(1)において、末端基XO−に隣接して存在する
【化25】


は前記式(7)等で示される重合触媒としての単官能性のリチウムシラノレート触媒中のジオルガノシロキサン残基として導入されるものである。
【0030】
上記式(1)のオルガノポリシロキサンはフルオロシリコーンゴム組成物のベースポリマーとして用いられるが、この場合、このフルオロシリコーンゴム組成物は、下記成分を含むことが好ましい。
(A)上記式(1)のオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)微粉状シリカ系充填材: 2〜100質量部、
(C)硬化触媒: 触媒量
【0031】
ここで、本発明における(B)成分の微粉状シリカ系充填材は、フルオロシリコーンゴムに実用上十分な機械的強度を与えるために、そのBET比表面積が50m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは100〜400m2/gである。このようなシリカ系充填材としては、例えばヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ(湿式シリカ)等が挙げられ、これらは単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、それらのシリカ系充填材はその表面を、例えば鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、オルガノクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等によって処理されたものでもよい。本発明における(B)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して2〜100質量部であり、好ましくは10〜50質量部である。配合量が多すぎる場合又は少なすぎる場合には、得られるフルオロシリコーンゴム組成物の加工性が低下し、また、そのフルオロシリコーンゴム組成物を硬化して得られるフルオロシリコーンゴムが、充分な引張り強度、引裂き強度等の機械的強度を有しなくなる。
【0032】
本発明における(C)成分の硬化触媒は、従来公知の硬化触媒、好ましくは有機過酸化物を用いることができる。具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート、オルトメチルベンゾイルパーオキサイド、パラメチルベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキシン等が挙げられる。これらは1種類を単独でも2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0033】
硬化触媒の配合量は、硬化有効量とすることができるが、上記過酸化物の配合量は、上記(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜5質量部とすることが好ましい。
【0034】
また、硬化触媒として、白金系触媒とケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用する付加反応効果を用いることもできる。この場合、白金触媒は、(A)成分に対して白金金属として1〜2,000ppm用いることが好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基を(A)成分のポリフルオロアルキルメチルポリシロキサン中の不飽和一価炭化水素基1個に対して0.5〜5個供給できる量を用いることが好ましい。
【0035】
本発明組成物には、上述した(A)〜(C)成分のほか、他の任意成分としてジメチルシロキサンジオールやメチルトリフルオロプロピルシロキサンジオール等の重合度が100以下の末端シラノール基含有シロキサン、ジフェニルシランジオールやジメチルシランジオール等のシラノール基含有シラン、ビニルトリアルコキシシランやメチルトリアルコキシシラン等のアルコキシ基含有シラン等の分散助剤、けいそう土、石英微粉末、溶融石英粉末、クレー、アルミナ、タルク等の(B)成分の微粉状シリカ系充填材以外の無機充填材、赤ベンガラ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の耐熱・耐油向上剤、カーボンブラック、群青等の着色用顔料、離型剤、その他、通常のフルオロシリコーンゴム組成物に添加される添加剤を用途等に応じて適宜配合することができる。
【0036】
本発明のフルオロシリコーンゴム組成物は、上記各成分を2本ロール、バンバリーミキサー、デューミキサー(ニーダー)等のゴム混練り機を用いて均一に混合することで得ることができる。この場合、(A)成分及び(B)成分を予め混合して、必要により熱処理を行い、ベースコンパウンドを調製した後、これに(C)成分の硬化触媒を添加することが望ましい。
【0037】
フルオロシリコーンゴム組成物の成型方法は特に制限はなく、圧縮成型、移送成型、射出成型、押出成型、カレンダー成型等の一般ゴム成型法に準じて所望の形状に成型でき、O−リング、ダイヤフラム、パッキン、ガスケット等のゴム成型品とすることができる。しかしながら、本発明の目的とするターボホース成型には、押出成型やカレンダー成型によるスチーム加硫、常圧熱気加硫のような加硫方法が好ましく、150〜200℃、5〜60分の硬化条件とすることができる。また、必要に応じ、180〜250℃で1〜10時間程度二次加硫をしてもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例、比較例及び応用例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、平均分子式(9),(10),(11),(14),(15),(16)で示される各ポリフルオロアルキルメチルシロキサンにおいて、一般式(1)のm、n、pに相当する各シロキサン単位の繰り返し数は平均値である。
【0039】
[実施例1]
オルガノポリシロキサン(I)を下記方法で合成した。
オルガノポリシロキサン(I)の合成
2Lのセパラブルフラスコにトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1,197g(2.56モル)を入れて窒素ガス雰囲気下で110℃に加熱し、ここに下記式(8)で示される環状シクロトリシロキサン4.90g(0.021モル)、上述した式(7)で示される有機リチウム化合物のシロキサンオリゴマー1.36g(0.0025モル)とジグライム0.6g(0.05質量%)を撹拌しながら添加し、引き続き110℃で6時間重合反応をさせて、ポリフルオロアルキルメチルシロキサンを生成させ、該ポリフルオロアルキルメチルシロキサンに酢酸2.47g(0.041モル)を添加し、100℃で1時間、次いで150℃で2時間撹拌して中和処理及び低分子シロキサンの除去をしたところ、分子鎖片末端がビニル基(即ち、ビニルジメチルシロキシ基)で他端がシラノール基(即ち、ケイ素原子に結合した水酸基)で封鎖された下記平均分子式(9)で示されるポリフルオロアルキルメチルシロキサン(以下、オルガノポリシロキサン(I)と略記する)が1,139g(収率93%)得られた。
【0040】
【化26】

【0041】
[比較例1]
上記式(8)で示される環状シクロトリシロキサンをトリビニルトリメチルシクロトリシロキサンに変えて、ビニル基量が同一なオルガノポリシロキサン(II)を下記方法で合成した。
オルガノポリシロキサン(II)の合成
下記式(10)で示されるオルガノポリシロキサン(II)は特開昭62−174260号公報に記載の方法に従って、2Lのセパラブルフラスコにトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1,197g(2.56モル)を入れて窒素ガス雰囲気下で150℃に加熱し、ここにトリビニルトリメチルシクロトリシロキサン1.79g(0.0069モル)、上述した式(7)で示される有機リチウム化合物のシロキサンオリゴマー1.35g(0.0024モル)を撹拌しながら添加し、引き続き150℃で6時間重合反応をさせて、オルガノポリシロキサンを生成させ、該オルガノポリシロキサンに酢酸2.45g(0.041モル)を添加し、100℃で1時間、次いで150℃で2時間撹拌して中和処理及び低分子シロキサンの除去をしたところ、分子鎖片末端がビニル基(即ち、ビニルジメチルシロキシ基)で他端がシラノール基で封鎖された下記平均分子式(10)で示されるオルガノポリシロキサン(以下、オルガノポリシロキサン(II)と略記する)が1,073g(収率91%)得られた。
【0042】
【化27】

【0043】
[実施例2]
実施例1のポリマー末端をジメチルビニルクロロシランと1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンの混合液で封鎖したオルガノポリシロキサン(III)を下記方法で合成した。
オルガノポリシロキサン(III)の合成
2Lのセパラブルフラスコにトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1,197g(2.56モル)を入れて窒素ガス雰囲気下で110℃に加熱し、ここに上述した式(8)で示される環状シクロトリシロキサン4.90g(0.021モル)、上述した式(7)で示される有機リチウム化合物のシロキサンオリゴマー1.36g(0.0025モル)とジグライム0.6g(0.05質量%)を撹拌しながら添加し、引き続き110℃で6時間重合反応をさせて、ポリフルオロアルキルメチルシロキサンを生成させ、該ポリフルオロアルキルメチルシロキサンにジメチルビニルクロロシラン3.02g(0.025モル)と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン27.16g(0.15モル)の混合液を添加し、100℃で1時間、次いで150℃で2時間撹拌して中和処理及び低分子シロキサンの除去をしたところ、分子鎖両末端がビニル基(即ち、ビニルジメチルシロキシ基)で封鎖された下記平均分子式(11)で示されるポリフルオロアルキルメチルシロキサン(以下、オルガノポリシロキサン(III)と略記する)が1,164g(収率95%)得られた。
【0044】
【化28】

【0045】
[応用例1]
実施例1のオルガノポリシロキサン(I)、比較例1のオルガノポリシロキサン(II)、及び実施例2のオルガノポリシロキサン(III)に、各オルガノポリシロキサン100質量部に対し2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン80%含有ペースト0.8質量部を2本ロールで配合してからMonsanto社製レオメーターMDR2000を使用し、170℃で6分間の加硫特性を測定した。結果は図1に示したとおりであった。
【0046】
図1の結果より、本発明のポリフルオロアルキルメチルシロキサンを用いた場合、同一ビニル基量及び同一加硫条件において、従来のトリビニルトリメチルシクロトリシロキサンによりビニル基を導入したポリフルオロアルキルメチルシロキサンの加硫特性に比べ加硫トルクが向上した。このことから本発明のポリフルオロアルキルメチルシロキサンは架橋密度が高く、強固な架橋構造を構成しうることが示唆された。
【0047】
[実施例3]
オルガノポリシロキサン(IV)を下記方法で合成した。
オルガノポリシロキサン(IV)の合成
2Lのセパラフルフラスコにトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1,197g(2.56モル)を入れ、窒素ガス雰囲気下で110℃に加熱し、ここに下記式(8)で示される環状シクロトリシロキサン2.7g(0.012モル)、下記式(12)で示される2官能性リチウムシラノレート3.4g(0.0011モル)とビス(2−メトキシエチル)エーテル0.6g(0.05質量%)を撹拌しながら添加し、引き続き110℃で3時間重合反応をさせて、ポリフルオロアルキルメチルシロキサンを生成させ、該ポリフルオロアルキルメチルシロキサンに酢酸2.6g(0.043モル)を添加し、100℃で1時間、次いで150℃で2時間撹拌して中和処理及び低分子シロキサンの除去をしたところ下記平均分子式(14)で示されるポリフルオロアルキルメチルシロキサン(以下、オルガノポリシロキサン(IV)と略記する)が1,111g(収率95%)得られた。
【0048】
【化29】

(但し、q=約20(平均値))
【0049】
【化30】

【0050】
[比較例2]
上記化合物(8)をトリビニルトリメチルシクロトリシロキサンに変えて、ビニル基量同一なオルガノポリシロキサン(V)を下記方法で合成した。
オルガノポリシロキサン(V)の合成
2Lのセパラフルフラスコにトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1,197g(2.56モル)を入れて窒素ガス雰囲気下で150℃に加熱し、ここにトリビニルトリメチルシクロトリシロキサン1.2g(0.0046モル)、上記した式(12)で示される2官能性リチウムシラノレート3.4g(0.0011モル)を撹拌しながら添加し、引き続き150℃で6時間重合反応をさせて、オルガノポリシロキサンを生成させ、該オルガノポリシロキサンに酢酸2.6g(0.043モル)を添加し、100℃で1時間、次いで150℃で2時間撹拌して中和処理及び低分子シロキサンの除去をしたところ、下記平均分子式(15)で示されるポリフルオロアルキルメチルシロキサン(以下、オルガノポリシロキサン(V)と略記する)が1,121g(収率93%)得られた。
【0051】
【化31】

【0052】
[比較例3]
上記式(8)のビニル源をトリビニルトリメチルシクロトリシロキサンに変えて、ビニル基量同一なオルガノポリシロキサン(VI)を下記方法で合成した。
オルガノポリシロキサン(VI)の合成
下記式(16)に示されるオルガノポリシロキサン(VI)は特開昭62−174260号公報に記載の方法に従って、2Lのセパラフルフラスコにトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン1,197g(2.56モル)を入れて窒素ガス雰囲気下で150℃に加熱し、これにトリビニルトリメチルシクロトリシロキサン0.78g(0.0030モル)と上記式(7)で示される有機リチウム化合物のシロキサンオリゴマー1.36g(0.0025モル)を撹拌しながら添加し、引き続き150℃で6時間重合反応をさせて、オルガノポリシロキサンを生成させ、該オルガノポリシロキサンに酢酸2.45g(0.041モル)を添加し、100℃で1時間、次いで150℃で2時間撹拌して中和処理及び低分子シロキサンの除去をしたところ、分子鎖末端基がビニル基(即ち、ビニルジメチルシロキシ基)で他端がシラノール基で封鎖された下記平均構造式(16)で示されるオルガノポリシロキサン(以下、オルガノポリシロキサン(VI)と略記する)が1,108g(収率92%)得られた。
【0053】
【化32】

【0054】
ベースコンパウンドの製造
得られたオルガノポリシロキサン(I)、(II)、(IV)、(V)、(VI)を用いてベースコンパウンド(I)、(II)、(IV)、(V)、(VI)を下記方法で作製した。各実施例及び比較例で製造したオルガノポリシロキサン(I)、(II)、(IV)、(V)、(VI)をそれぞれ100質量部、乾式シリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル200)20質量部、及び分散材としてジフェニルシランジオール4質量部を加えて均一に混練りし、150℃で4時間熱処理した後、2本ロールで釈解、可塑化し、ベースコンパウンド(I)、(II)、(IV)、(V)、(VI)を得た。
【0055】
組成物の調製
次に、上記ベースコンパウンド(I)、(II)、(IV)、(V)、(VI)のそれぞれに、平均粒径1μmの酸化セリウム粉末を表1及び表2に示す量で添加し、2本ロールミルで均一に混合した。得られたコンパウンド100質量部に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン80質量%含有ペースト0.8質量部を添加し、2本ロールミルで均一に混合して5種類のフルオロシリコーンゴム組成物(I)、(II)、(IV)、(V)、(VI)を得た。
【0056】
初期物性測定
物性(硬さ、引張り強さ及び切断時伸び)の測定方法はJIS K 6249に準じた。得られた組成物を165℃で10分間、加圧成型し、硬化させた後、200℃で4時間ポストキュアーして、硬さの測定用には2mm厚のシート状試験片を作製し、引張り強さ及び切断時伸びの測定用には上記JISに規定のダンベル状試験片を作製した。これらの試験片を用いて上記物性を測定した。結果を表2に示した。
【0057】
耐熱性試験後の物性測定
初期物性測定用の試験片を組成物(I)、(II)については225℃に設定した乾燥機に入れて168時間放置し、組成物(IV)、(V)、(VI)については250℃に設定した乾燥機に入れて72時間放置してそれぞれ耐熱性試験を行った。試験終了後、試験片を室温にて12時間空冷して上記物性を測定した。結果をそれぞれ表1、表2に示した。
【0058】
表1の結果より、本発明のフルオロシリコーンゴム組成物は、従来の同一ビニル基量及び同一加硫条件において、従来のトリビニルトリメチルシクロトリシロキサンによりビニル基を導入したポリフルオロアルキルシロキサンからなるフルオロシリコーンゴム組成物に比べ、硬さ変化、引張り強さ変化率が改善された耐熱性に優れたフルオロシリコーンゴム組成物であった。
【0059】
【表1】

【0060】
表2の結果より、本発明のフルオロシリコーンゴム組成物は、同一ビニル基量及び同一加硫条件において、従来のトリビニルトリメチルシクロトリシロキサンによりビニル基を導入したポリフルオロアルキルシロキサンからなるフルオロシリコーンゴム組成物に比べビニル基が分散されている為耐熱性に優れ、更に両分子鎖末端をシラノールで封鎖することで、より耐熱性に優れたフルオロシリコーンゴム組成物であった。
【0061】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】


[式中、R1〜R5は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R6は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基、Xは水素原子又は下記一般式(2)もしくは(3)
【化2】


(式中、R7〜R11は炭素数1〜8の脂肪族不飽和基を除く一価炭化水素基である。)
で示されるシリル基、m=0〜30の整数、n=1〜100の整数、p≧500の整数である。
また、
【化3】


で示される単位(B)と、
【化4】


で示される単位(C)の配列はランダムであり、前記単位(B)中において、−SiR34O−で示される単位と−SiR56O−で示される単位は、前者が2個、後者が1個の単位を含有する限りにおいて、これら3個のシロキサン単位の配列はランダムである。]
で示されるオルガノポリシロキサン。
【請求項2】
一般式(1)において、少なくとも1個のXが一般式(2)又は(3)で示されるシリル基である請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
一般式(1)において、mが0、Xが水素原子である請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項4】
下記一般式(4)
【化5】


で示される環状三量体のトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと下記一般式(5)
【化6】


(式中、R12〜R14は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R15は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基である。)
で示される環状トリシロキサンとの混合物をアルキルリチウム触媒又はリチウムシラノレート触媒の存在下に共重合させることを特徴とする請求項2記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項5】
下記一般式(4)
【化7】


で示される環状三量体のトリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンと下記一般式(5)
【化8】


(式中、R12〜R14は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、R15は炭素数2〜10の非置換又は置換の脂肪族不飽和一価炭化水素基である。)
で示される環状トリシロキサンとを、下記一般式(12)
【化9】


(式中、qは0<q≦100で示される整数である。)
で示されるリチウムシラノレート触媒の存在下に、あるいは、下記一般式(13)
【化10】


(式中、qは0<q≦100で示される整数である。)
で示されるオルガノポリシロキサンとアルキルリチウム触媒又はリチウムシラノレート触媒との混合物の存在下に共重合させることを特徴とする請求項3記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項6】
重合促進剤の存在下で共重合させることを特徴とする請求項4又は5記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項7】
重合促進剤がテトラヒドロフラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項8】
(A)請求項1、2又は3記載のオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)微粉状シリカ系充填材: 2〜100質量部、
(C)硬化触媒: 触媒量
を含有することを特徴とするフルオロシリコーンゴム組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−155961(P2010−155961A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48742(P2009−48742)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】