説明

オレフィンを重合するためのポリマー担持型メタロセン触媒組成物

オレフィンを、二峰性の分子量分布を有するポリマーに重合させるための触媒組成物は、2種類の遷移金属含有するメタロセン化合物、マグネシウム化合物、アルコール、アルミニウム含有助触媒および高分子担体を有してなる。メタロセン化合物の内の一方における遷移金属はジルコニウムであり、第2のメタロセン化合物における遷移金属は、チタン、バナジウムおよびハフニウムからなる群より選択される。この触媒組成物を用いて製造されたポリオレフィンポリマーは、広い分子量分布を有し、フイルムおよびブロー成形用途において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球形態学が優れ、嵩密度が十分であり、微粉が低レベルである、多峰性または広い分子量分布を有するポリマーを形成するための、オレフィン重合用の新規のポリマー担持型触媒系、そのような触媒の製造方法および高い触媒活性でアルファオレフィンを重合する方法に関する。より詳しくは、本発明は、その内の一方がジルコニウムを含有する、遷移金属を含有する少なくとも2種類のメタロセン化合物から構成された触媒組成物に関する。本発明の触媒組成物は、マグネシウム含有化合物、アルコール、随意的なアルミニウム化合物およびポリ塩化ビニルであることが好ましい高分子担体も含有する。
【背景技術】
【0002】
ある樹脂の二峰性または多峰性の分子量分布は、その樹脂が、異なる分子量の少なくとも2種類のポリマー、より詳しくは、比較的高い分子量と比較的低い分子量の複数のポリマーからなることを示している。特許文献1では、高分子量と低分子量を有する異なるポリマーの物理的混合によって、ゲルを形成できることが発見された。二峰性または多峰性の分子量分布を有する樹脂は、特許文献2においてコゼウィズ(Cozewith)等により記載された溶融物ブレンド技法を用いても製造できる。しかしながら、そのような方法は、費用がかかり、面倒であり、時間もかかる。
【0003】
特許文献3におけるクロダ(Kuroda)等、特許文献4におけるカトウ(Kato)等、および特許文献5におけるローファスト(Raufast)は、異なる水素濃度で連続して動作する2つの反応装置を用いて、高分子量と低分子量のポリマー両方を含有する樹脂を生成するプロセスを記載している。高分子量(HMW)と低分子量(LMW)の樹脂の物理的混合によって生成される二峰性樹脂と比較して、これらのタンデムプロセスにおいて生成されるブレンドでは、膜の外観が改善されることが分かった。
【0004】
広いまたは多峰性の分子量分布を有するポリマーの製造のためのエチレン重合に、生長反応速度定数および停止反応速度定数が異なる触媒のブレンドを収容する1つの反応装置を使用することも知られている。特許文献6には、広い分子量分布および/または多峰性分子量分布のポリオレフィンの製造のための2種類の異なるメタロセンからなる均一触媒系の使用が記載されている。特許文献7および8にも、異なる分子量を有するポリマーのブレンドを生成するための2種類以上のメタロセンを含有する均一触媒系が記載されている。
【0005】
特許文献9から16には、異なる活性中心を有するシリカ担持型触媒系が記載されている。これらの特許文献に記載された触媒系は複雑かつ高価であり、例えば、その調製には高価で取扱いの煩わしいアルミノキサンが必要である。さらに、これらの触媒に適しているシリカ担体は、複雑なおよび/または費用のかかる、噴霧乾燥法または再結晶化法および高か焼温度を用いて調製される。さらに、シリカを担体として使用すると、担体が生成物中に残留し、これは、光学的性質などの生成物の性質、および加工に影響を与え得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4461873号明細書
【特許文献2】国際公開第86/03756号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4414369号明細書
【特許文献4】米国特許第4420592号明細書
【特許文献5】米国特許第4703094号明細書
【特許文献6】米国特許第4530914号明細書
【特許文献7】米国特許第4937299号明細書
【特許文献8】米国特許第4522982号明細書
【特許文献9】米国特許第4701432号明細書
【特許文献10】米国特許第5070055号明細書
【特許文献11】米国特許第5032562号明細書
【特許文献12】米国特許第5183867号明細書
【特許文献13】米国特許第5525678号明細書
【特許文献14】米国特許第5539076号明細書
【特許文献15】米国特許第5614456号明細書
【特許文献16】米国特許第5882750号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の内の1つは、二峰性および多峰性の樹脂を製造するための従来技術の触媒系に関する上述した問題を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の触媒組成物は、少なくとも1種類のジルコニウム系メタロセン化合物、少なくとも1種類のチタン、バナジウムまたはハフニウム系のメタロセン化合物、マグネシウム化合物、アルコール、随意的なアルミニウム化合物およびポリ塩化ビニルであることが好ましい高分子担持材料を含有する。この触媒組成物は、有機アルミニウム化合物または有機アルミニウム化合物の混合物と共に使用した場合、オレフィン重合に効果的である。この触媒組成物によるオレフィン重合の好ましい生成物は、中密度と高密度のポリエチレンおよびエチレンの3から18の炭素原子を有するアルファオレフィンとのコポリマーである。本発明の触媒系は、幅広い分子量分布、すなわち、中程度の分子量分布から広い分子量分布および/または5と100の間のMw/Mnの二峰性から多峰性の分子量分布を有するポリマーを製造する能力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例2による触媒A(Cp2ZrCl2−Cp2TiCl2)を用いて製造したHDPE樹脂の二峰性MWDを示すゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析
【図2】実施例4による触媒B(nBu−Cp2ZrCl2−Cp2TiCl2)を用いて製造したHDPE樹脂の二峰性MWDを示すGPC分析
【図3】実施例6による触媒C(Cp2ZrCl2−Cp2VCl2)を用いて製造したHDPE樹脂の二峰性MWDを示すGPC分析
【図4】実施例8による触媒D(nBu−Cp2ZrCl2−Cp2HfCl2)を用いて製造したHDPE樹脂の二峰性MWDを示すGPC分析
【図5】実施例12による触媒F(nBu−Cp2ZrCl2−Cp2TiCl2−MMAO)を用いて製造したHDPE樹脂の二峰性MWDを示すGPC分析
【図6】本発明によるバイメタル触媒により製造された、微粒子のレベルが低い、球状HDPEの二峰性ポリマー粒子の斜視図を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられる固体触媒成分は、少なくとも2種類のメタロセン化合物、マグネシウム化合物、アルコールおよび高分子担持材料を含有する。得られる生成物は、オレフィン重合に用いられる。
【0011】
本発明の触媒には、少なくとも2種類のメタロセン化合物が用いられる。メタロセンの内の1つはジルコニウム系のメタロセンでなければならず、第2のメタロセンは、チタン、バナジウムまたはハフニウムの遷移金属を含有しなければならない。使用されるメタロセンは、一般化学式(Cp)zMRwyにより表され、ここで、Cpは、未置換のまたは置換されたシクロペンタジエニル環を表し、Mは、IVBまたはVB族の遷移金属を表し、Rはヒドロカルビル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、1≦z≦3、0≦w≦3および0≦y≦3である。シクロペンタジエニル環は、1から20の炭素原子を含有するアルキル、アルケニル、またはアリール基、例えば、メチル、エチル、プロピル、アミル、イソアミル、イソブチル、またはフェニルなどの、ヒドロカルビル基Rにより置換されていても、未置換であってよい。上述したメタロセン化合物の好ましい例としては、以下のもの:ビス(シクロペンタジエニル)チタンジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、塩化ビス(シクロペンタジエニル)チタンメチル、塩化ビス(シクロペンタジエニル)チタンエチル、二塩化ビス(シクロペンタジエニル)チタン、塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメチル、塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエチルおよび二塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムが挙げられる。
【0012】
本発明のジルコニウム系メタロセン化合物は、高い水素応答(高い水素連鎖移動率)を有し、チタン、バナジウム、またはハフニウムを含有する第2のメタロセン金属化合物は、低い水素応答(低い水素連鎖移動率)を有する。
【0013】
本発明の触媒組成物において好ましいマグネシウム化合物としては、一般化学式R2MgXにより表されるグリニャール化合物が挙げられ、ここで、R2は、1から20の炭素原子を有する、炭化水素基、好ましくはアルキル基であり、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素である。他の好ましいマグネシウム化合物は、一般化学式R34Mgにより表され、ここで、R3およびR4は各々、1から20の炭素原子を有する炭化水素基である。好ましいマグネシウム化合物の例としては、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジイソブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジオクチルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウム化合物;塩化エチルマグネシウム、塩化ブチルマグネシウム、塩化ヘキシルマグネシウムなどの塩化アルキルマグネシウム等が挙げられる。
【0014】
本発明の触媒組成物において有用なアルコール化合物は、一般化学式ROHにより表され、ここで、Rは、1から20の炭素原子を有するアルキル基、アリール基またはシクロアルキル基を表す。アルコール化合物は、触媒組成物のメタロセン前駆体の固着にとって重要であると考えられる。好ましいアルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールが挙げられる。
【0015】
本発明のアルミニウム化合物としては、一般化学式:
線状アルミノキサンについては、
【化1】

【0016】
ここで、qは0≦q≦50を満たす数を表す、および/または
環状アルミノキサンについては、
【化2】

【0017】
ここで、sは3≦s≦50を満たす数を表す、
により表されるアルミノキサン化合物または修飾アルミノキサン化合物が挙げられ、ここで、R7、R8、R9およびR10は、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチルなどの、1から12の炭素原子を有する、同じか異なる、線状、分岐または環状アルキル基である。好ましいアルミニウム化合物は、メチルアルミノキサンなどの、ジルコニウム部位のための活性化剤である。トリメチルアルミニウムを含有する、工業的に製造されたメチルアルミノキサンが最も好ましい。
【0018】
本発明に用いられる高分子担体粒子は、平均粒径が5から1000μm、好ましくは10から600μm、より好ましくは15から100μmであり、細孔半径が10から1000Åであり、表面積が0.5から50m2/g、好ましくは1.0から10m2/gであり、細孔体積が少なくとも0.02cm3/g、好ましくは少なくとも0.1cm3/gである、略球形状を有する。本発明の触媒に有用な高分子材料の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコールコポリマー、ポリエチレンアクリレートおよびポリメチルメタクリレートなどのポリマーのビーズが挙げられる。これらの高分子材料の中でも、ビニルポリマーが好ましく、ポリ塩化ビニルが最も好ましい。本発明に用いられる高分子材料は、不安定塩素原子などの表面活性部位および/またはポリビニルアルコール部位を有する。
【0019】
本発明における高分子担体の使用により、シリカまたは塩化マグネシウムなどの担体を使用する従来のオレフィン重合触媒よりも優れた著しい利点が提供される。シリカ担持触媒と比較して、本発明の高分子担体には、触媒合成にそれらを使用する前に、高温および長期間の脱水工程が必要なく、そのため、合成プロセスが簡単になり、触媒調製の総費用が減少する。さらに、本発明に用いられる高分子担体は、シリカまたは塩化マグネシウム担体よりも、著しく安い。その上、本発明の触媒では、触媒調製のために、シリカまたは塩化マグネシウム担持触媒よりも、著しく少量の触媒前駆体しか使用しない。また、本発明における触媒は、従来のシリカまたはマグネシウムに担持されたチーグラー・ナッタ触媒およびある種の担持メタロセン触媒よりも、一層活性である。本発明の好ましい実施の形態において、ポリ塩化ビニル担体が用いられる。
【0020】
本発明の固体触媒成分の合成は、上述した高分子材料を容器中に導入し、次いで、希釈剤を添加する各工程を含む。適切な希釈剤としては、イソペンタンなどのアルカン、およびジエチルエーテルやジブチルエーテルなどのエーテルが挙げられる。次いで、高分子材料を、約20℃から90℃の範囲の温度で上述したマグネシウム化合物により処理する。マグネシウム化合物の高分子担体に対する比は、高分子1グラム当たり、0.1ミリモルから10ミリモルの範囲であり得る。次いで、高分子材料1グラム当たり0.01から0.1cm3の純粋なアルコールを加え、約20℃から90℃の範囲の温度で約5分間に亘り混合する。次いで、約20℃から80℃の範囲の温度で窒素パージを用いて、溶媒を蒸発させる。次いで、真空に引いて、100%乾燥した固体混合物を確実に得る。
【0021】
次いで、生成されたすなわち上述したマグネシウムで処理した高分子担体を、少なくとも60分間に亘り約20℃から100℃の範囲の温度で混合することによって、トルエンまたは他の溶媒中に溶解した、処理済み担体1グラム当たり、0.01から0.1gのジルコニウム系メタロセン化合物で処理する。二塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム、二塩化ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムおよび二塩化ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、エチレンまたはジアルキルケイ素架橋を有する二塩化ビス(インデニル)ジルコニウムが、好ましいメタロセン化合物である。この工程の後に、第2のメタロセン前駆体の添加前に、このスラリーを約40〜90℃で過剰の窒素によりパージして、混合物からトルエンを蒸発させる工程を行う。
【0022】
この触媒合成に関する第2のメタロセン化合物は、チタン、バナジウムまたはハフニウム系のメタロセンであり、これは、ジルコニウム系メタロセンよりも高い分子量のポリマーを生成する傾向にあると考えられている。この工程において、二塩化ビスシクロペンタジエニルチタン、三塩化シクロペンタジエニルチタン、二塩化バナドセンおよび二塩化ハフノセンが、最も好ましいメタロセンである。この工程において、マグネシウム処理済み担体1グラム当たり、0.01から0.1gのチタン、バナジウムまたはハフニウム系のメタロセンをトルエン、または他の溶媒中に溶解させ、少なくとも10分間に亘り約20℃から90℃の温度で上述した触媒混合物と混合する。
【0023】
最終的な固体触媒成分は、約1:1から約20:1の、好ましくは約3:1から約10:1のM:Zrのモル比を有する。このように形成された触媒成分を、オレフィン重合のために、助触媒としても知られている適切な活性化剤により活性化させる。固体触媒成分の活性化のための好ましい化合物は、有機アルミニウム化合物、好ましくは、メチルアルミノキサン、最も好ましくは、修飾アルミノキサンである。活性化剤は、要求されるAl:金属モル比で触媒と混合され、次いで、洗浄され、乾燥される。このように調製された触媒組成物は、アルミニウム助触媒と共に用いられたときに、二峰性分布ポリマーの生成にとって効果的である。
【0024】
好ましい助触媒は、チタン、バナジウムおよび/またはハフニウム部位に関する活性化剤と、ジルコニウム部位に関する活性化剤との混合物である。修飾された脂肪族可溶性MAOが、両方の部位を効率的に活性化できるので、最も好ましい。これらの活性化剤を含むアルミニウム化合物を1種類以上、必要に応じて、触媒前駆体中に含ませても、または重合反応中に単独で加えても差し支えない。チタン、バナジウムおよび/またはハフニウム部位を活性化させるのに適した活性化剤は、一般化学式R5nAlX3-nにより表され、ここで、R5は、1から10の炭素原子を有する炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子またはアルコキシ基を表し、nは1、2または3である。制限するものではなく、説明のための例としては、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリ−n−ヘキシルアルミニウム(TnHAL)などのトリアルキルアルミニウム;塩化ジメチルアルミニウムおよび塩化ジエチルアルミニウムなどの塩化ジアルキルアルミニウム;二塩化メチルアルミニウムおよび二塩化エチルアルミニウムなどの二塩化アルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムメトキシドおよびジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムメトキシ度が挙げられる。チタン、バナジウムおよび/またはハフニウム部位の好ましい活性化剤は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリ−n−ヘキシルアルミニウムである。好ましいジルコニウム部位の活性化剤は、一般化学式
線状アルミノキサンの場合には、
【化3】

【0025】
ここで、qは、0≦1≦50を満たす数である、および/または
環状アルミノキサン化合物の場合、
【化4】

【0026】
ここで、sは、3≦S≦50を満たす数をあらわす、
により示されるアルミノキサンである。R6、R7、R8およびR9は、メチル、エチル、プロピルまたはイソブチルなどの、1から12の炭素原子を有する、同じか異なる、線状、分岐または環状アルキル基である。ジルコニウム部位にとって最も好ましい活性化剤は、メチルアルミノキサンである。商業的に製造されたメチルアルミノキサンはトリメチルアルミニウムを含有するので、それを都合よく用いて、本発明の両方のメタロセン化合物を活性化させることができる。
【0027】
本発明のアルミニウム化合物助触媒は、触媒中に、ZrとTi、VまたはHfの全遷移金属1モル当たり、約1から1500モルのアルミニウムの範囲で用いられることが好ましくは、全遷移金属1モル当たり約50から500モルのアルミニウムの範囲がより好ましい。
【0028】
本発明の触媒系は、スラリーおよび気相プロセスにおいてアルファオレフィンの合成において働くことができる。気相重合は、撹拌床反応装置内および流動床反応装置内において実施できる。スラリー重合の場合には、液体重合媒質は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、またはシクロヘキサンなどのアルカンまたはシクロアルカン、もしくはトルエンまたはエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素であって差し支えない。
【0029】
水素は、ポリマー生成物の分子量を調節するために、本発明の触媒による重合中に非常に都合よく使用できる。本発明の触媒を用いて、オレフィン、特にエチレンを重合する場合、気相反応装置中の水素のオレフィンに対する好ましいモル比は、C21モル当たりのH2で、0.01および0.9の間である。
【0030】
エチレン重合に関して、約70から350psi(約0.48から2.4MPa)の範囲のエチレン分圧および約60℃から110℃の範囲の重合温度が好ましい。重合プロセスがそのような条件下で動作される場合、ゲル透過クロマトグラフィーにより実証されるように、多峰性、好ましくは二峰性の分子量分布を有するポリマーが得られる。一般に、二峰性分子量分布のポリマーが、優れた機械的性質を有し、加工が容易である。
【0031】
本発明の触媒系を用いて生成されたポリマーは、約500から2,000,000の範囲、好ましくは約1000から500,000の範囲の分子量を有する。Mw/Mnとして表される多分散性(分子量分布)は、一般に、約5から100までである。本発明の触媒系は、毎時金属1ミリモル当たり少なくとも約20から100キログラムの高い活性も有する。
【0032】
本発明の触媒系により製造された中密度のポリエチレンのメルトフローレイト(MFR)値は、約40から約200、好ましくは約70から約100に及び、メルトフローインデックス(I21)値は、約5から約100、好ましくは約7から30である。これらのフローインデックス値およびMFR値は、本発明の触媒系により製造された樹脂が、広い分子量分布のポリマーであることを示している。それはまた、これらの樹脂が、高密度ポリエチレンフイルムおよびブロー成形グレードの樹脂にとって適していることを示している。本発明の触媒系により製造されたポリマーのゲル透過クロマトグラフィーは、広い二峰性の分子量分布を示す。本発明による触媒系では、シリカ上に担持された従来技術のバイメタル触媒系により生成された二峰性MWDのPEポリマーに関する180℃での約0.8から約2.1分と比較して、180℃での約3.1分から約5.5分に及ぶ酸素導入時間を有する高い熱安定性のポリマーが生成される。ポリ塩化ビニル高分子担体を用いた本発明により調製された触媒系は、約350ppmから約650ppmの灰レベル(ash level)を有するポリマーおよび透明度の低いポリマーを生成する、シリカ上に担持された従来技術のバイメタル触媒系により生成されたものと比較して、約50から約250ppmの低い灰分量を有するポリマーおよび透明度の高いポリマーを生成する。
【0033】
本発明の触媒系を用いて生成された直鎖状ポリエチレンポリマーは、エチレンのホモポリマーまたは1種類以上のC3〜C10アルファオレフィンを有するエチレンのコポリマーである。これらのコポリマーの特別な例には、エチレン/1−ブテンコポリマー、エチレン/1−ヘキセンコポリマー、エチレン/1−オクテンコポリマー、およびエチレン/4−メチル−1−ペンテンコポリマーがある。エチレン/1−ヘキセンおよびエチレン/1−ブテンが、本発明の触媒系により製造された最も好ましいコポリマーである。
【0034】
ポリエチレンホモポリマーに加え、エチレンを、本発明によるアルファオレフィンと容易に共重合させて、多峰性分子量分布を有するコポリマーを生成することができる。そのようなコポリマーの好ましい例としては、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ヘキセンが挙げられる。本発明の触媒系、好ましくは、Cp2ZrCl2−CpTiCl3触媒系を用いると、0.5モル%より多くスチレンを含ませて、エチレンをスチレンと共重合させることができる。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、本発明の説明を意図したものであり、本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。本発明の精神から逸脱せずに、数多くの変更および改変を本発明に行うことができる。
【0036】
実施例1
触媒(A)の合成
凝縮器および磁気撹拌子を備えた三首の丸底フラスコに、30μmの平均粒径を有するポリ塩化ビニル球10gを加えた。ポリ塩化ビニル球を収容するフラスコを、油浴を用いて70℃まで加熱し、次いで、30分間に亘り30mmのHg圧で排気した。次いで、フラスコとその内容物を乾燥窒素でパージし、次いで、30cm3のイソペンタンを用いて、ポリ塩化ビニル球をスラリーにした。次いで、3cm3の塩化ブチルマグネシウム(2M)を45℃でスラリーに加え、得られた混合物を室温で30分間に亘り撹拌した。次いで、0.025cm3の100質量%の純粋なエタノールを、ゴム製シュバシール(suba-seal)を介してそのフラスコ中に注射器で計り取り、内容物を室温で約5分間に亘り撹拌した。このフラスコを収容している油浴の温度を55℃まで上昇させ、約15分間に亘り連続して撹拌しながら窒素パージを施して、その混合物からイソペンタン溶媒を蒸発させた。その後、撹拌しながら同じ温度(55℃)でさらに10分間に亘り混合物を真空に引いて、確実に触媒混合物が100%乾燥しており、溶媒を全く含まないようにした。次いで、二塩化ジルコノセン溶液(30cm3のトルエン中の0.11gのCp2ZrCl2)を加え、65℃で65分間に亘り混合した。この後に、三塩化シクロペンタジエニルチタン溶液(15cm3のトルエン中の0.075gのCpTiCl3)を加えた。次いで、触媒混合物を30分間に亘り同じ温度(65℃)で混合した。次いで、油浴の温度を75℃まで上昇させ、約25分間に亘り連続して撹拌しながら、混合物を窒素パージして、混合物からトルエンを蒸発させた。得られた固体を、触媒混合物を50cm3のアリコートのn−ヘキサンと共に撹拌することによって一度洗浄し、65℃での窒素パージによりこの溶媒を除去した。最後に、20分間に亘り窒素パージと真空を用いて、固体触媒を乾燥させ、さらさらした黄土色の固体生成物を生成した。この固体触媒成分を原子吸光分光法により分析し、0.31質量%のチタン原子、0.055質量%のジルコニウム原子および0.97質量%のマグネシウム原子を含有することが分かった。
【0037】
実施例2
エチレンの単独重合
2リットルの容積を有するオートクレーブを30分間に亘り130℃で窒素によりパージした。オートクレーブを80℃まで冷却した後、1リットルのn−ヘキサンをこの反応装置中に導入した。次いで、反応装置を水素で0.4バールに、次いで、エチレンで15バールに加圧した。その後、アクゾ・ノベル社(Akzo-Nobel)からの4cm3のM−MAOタイプ3A(7質量%のAl)を、触媒注入ポンプにより反応装置中に注入した。次に、実施例1に記載された固体触媒A0.08gを、20cm3のn−ヘキサン中でスラリーにした後に、反応装置中に注入した。反応装置の温度を95℃に上昇させた。反応装置の全圧を15バールに維持するために、必要に応じてエチレンを供給しながら、エチレン重合を60分間に亘り行った。反応において、335リットルのエチレンが消費され、432.5グラムのポリエチレンが回収されて、ゲージ圧で200psi(約1.38MPa)で、5,406g PE/g触媒毎時の触媒生産性が得られた。このポリマーは、0.301g/cm3の嵩密度および2.1%で測定された微粒子レベルを有した。生成されたポリエチレンは、GPCにより試験し、341,211の重量平均分子量、10,822の数平均分子量、および31.5の広い分子量分布を有することが分かった。このポリマーのMWD曲線は、図1に示されているように、二峰性MWDを有するポリマーの証拠となった。
【0038】
実施例3
触媒(B)の合成
凝縮器および磁気撹拌子を備えた三首の丸底フラスコに、30μmの平均粒径を有するポリ塩化ビニル球10gを加えた。ポリ塩化ビニル球を収容するフラスコを、油浴を用いて70℃まで加熱し、次いで、30分間に亘り30mmのHg圧で排気した。次いで、フラスコとその内容物を乾燥窒素でパージし、次いで、30cm3のイソペンタンを用いて、ポリ塩化ビニル球をスラリーにした。次いで、3cm3の塩化ブチルマグネシウム(2M)を45℃でスラリーに加え、得られた混合物を室温で30分間に亘り撹拌した。次いで、0.025cm3の100質量%の純粋なエタノールを、ゴム製シュバシールを介してそのフラスコ中に注射器で計り取り、内容物を室温で約5分間に亘り撹拌した。次いで、このフラスコを収容している油浴の温度を55℃まで上昇させ、約15分間に亘り連続して撹拌しながら窒素パージを施して、その混合物からイソペンタンを蒸発させた。その後、撹拌しながら同じ温度(65℃)でさらに10分間に亘り混合物を真空に引いて、確実に触媒混合物が100%乾燥しており、溶媒を全く含まないようにした。次いで、二塩化n−ブチルジルコノセン溶液(20cm3のトルエン中の0.075gのnBu−Cp2ZrCl2)を加え、65℃で50分間に亘り混合した。この後に、二塩化ビスシクロペンタジエニルチタン溶液(20cm3のトルエン中の0.09gのCp2TiCl2)を加えた。次いで、触媒混合物を30分間に亘り同じ温度(65℃)で混合した。次いで、油浴の温度を75℃まで上昇させ、約25分間に亘り連続して撹拌しながら、混合物を窒素パージして、混合物からトルエンを蒸発させた。得られた固体を、触媒混合物を50cm3のアリコートのn−ヘキサンと共に撹拌することによって一度洗浄し、65℃での窒素パージによりこの溶媒を除去した。最後に、20分間に亘り窒素パージと真空を用いて、固体触媒を乾燥させ、さらさらした黄土色の固体生成物を生成した。この固体触媒成分を原子吸光分光法により分析し、0.43質量%のチタン原子、0.051質量%のジルコニウム原子および0.99質量%のマグネシウム原子を含有することが分かった。
【0039】
実施例4
エチレンの単独重合
2リットルの容積を有するオートクレーブを30分間に亘り130℃で窒素によりパージした。オートクレーブを80℃まで冷却した後、1リットルのn−ヘキサンをこの反応装置中に導入した。次いで、反応装置を水素で0.9バールに、次いで、エチレンで15バールに加圧した。その後、アクゾ・ノベル社からの4cm3のM−MAOタイプ3A(7質量%のAl)を、触媒注入ポンプにより反応装置中に注入した。次に、20cm3のn−ヘキサン中でスラリーにされた、実施例3に記載された固体触媒B0.085gを反応装置中に注入した。反応装置の温度を95℃に上昇させた。反応装置の全圧を15バールに維持するために、必要に応じてエチレンを供給しながら、エチレン重合を45分間に亘り行った。反応において、273リットルのエチレンが消費され、340グラムのポリエチレンが回収されて、ゲージ圧で200psi(約1.38MPa)で、4,000g PE/g触媒毎時の触媒生産性が得られた。このポリマーは、0.311g/cm3の嵩密度および2.3%で測定された微粒子レベルを有した。ポリエチレンは、GPCにより試験し、244,600の重量平均分子量、8,181の数平均分子量、および29.9の広い分子量分布を有することが分かった。このポリマーのMWD曲線は、図2に示されているように、二峰性MWDを有するポリマーの証拠となった。
【0040】
実施例5
触媒(C)の合成
凝縮器および磁気撹拌子を備えた三首の丸底フラスコに、30μmの平均粒径を有するポリ塩化ビニル球10gを加えた。ポリ塩化ビニル球を収容するフラスコを、油浴を用いて70℃まで加熱し、次いで、30分間に亘り30mmのHg圧で排気した。次いで、フラスコとその内容物を乾燥窒素でパージし、次いで、30cm3のイソペンタンを用いて、ポリ塩化ビニル球をスラリーにした。次いで、3cm3の塩化ブチルマグネシウム(2M)を45℃でスラリーに加え、得られた混合物を室温で30分間に亘り撹拌した。次いで、0.025cm3の100質量%の純粋なエタノールを、ゴム製シュバシールを介してその混合物中に注射器で計り取り、室温で約5分間に亘り撹拌した。その後、油浴の温度を55℃まで上昇させ、混合物を約15分間に亘り連続して撹拌しながら窒素パージを施して、その混合物からイソペンタンを蒸発させた。その後、撹拌しながら同じ温度(55℃)でさらに10分間に亘り真空に引いて、確実に触媒混合物が100%乾燥しており、溶媒を全く含まないようにした。次いで、二塩化ジルコノセン溶液(30cm3のトルエン中の0.1gのCp2ZrCl2)を加え、65℃で50分間に亘り混合した。この後に、二塩化ビスシクロペンタジエニルバナジウム溶液(30cm3のトルエン中の0.1gのCp2VCl2)を加えた。次いで、この触媒混合物をさらに60分間に亘り同じ温度(65℃)で混合した。次いで、油浴の温度を75℃まで上昇させ、約25分間に亘り連続して撹拌しながら、混合物を窒素パージして、混合物からトルエンを蒸発させた。得られた固体を、触媒混合物を50cm3のアリコートのn−ヘキサンと共に撹拌することによって一度洗浄し、次いで、65℃での窒素パージによりこの溶媒を除去した。最後に、20分間に亘り窒素パージと真空を用いて、固体触媒を乾燥させ、さらさらした黄土色の固体生成物を生成した。この固体触媒成分を原子吸光分光法により分析し、0.15質量%のバナジウム原子、0.085質量%のジルコニウム原子および1.1質量%のマグネシウム原子を含有することが分かった。
【0041】
実施例6
エチレンの単独重合
2リットルの容積を有するオートクレーブを30分間に亘り130℃で窒素によりパージした。オートクレーブを80℃まで冷却した後、1リットルのn−ヘキサンをこの反応装置中に導入した。次いで、反応装置を水素で0.8バールに、次いで、エチレンで15バールに加圧した。次いで、アクゾ・ノベル社からの3cm3のM−MAOタイプ3A(7質量%のAl)を、触媒注入ポンプにより反応装置中に注入した。次に、20cm3のn−ヘキサン中でスラリーにされた、実施例5に記載された固体触媒C0.09gを反応装置中に注入した。反応装置の温度を97℃に上昇させた。反応装置の全圧を15バールに維持するために、必要に応じてエチレンを供給しながら、エチレン重合を60分間に亘り行った。反応において、299リットルのエチレンが消費され、397.4グラムのポリエチレンが回収されて、ゲージ圧で200psi(約1.38MPa)で、3,974g PE/g触媒毎時の触媒生産性が得られた。このポリマーは、0.313g/cm3の嵩密度を有し、微粒子レベルは1.1%と測定された。ポリエチレンは、GPCにより試験し、189,756の重量平均分子量、9,123の数平均分子量、および20.7の広い分子量分布を有することが分かった。このポリマーのMWD曲線は、図3に示されているように、二峰性MWDを有するポリマーの証拠となった。
【0042】
実施例7
触媒(D)の合成
凝縮器および磁気撹拌子を備えた三首の丸底フラスコに、30μmの平均粒径を有するポリ塩化ビニル球10gを加えた。ポリ塩化ビニル球を収容するフラスコを、油浴を用いて70℃まで加熱し、次いで、30分間に亘り30mmのHg圧で排気した。次いで、フラスコとその内容物を乾燥窒素でパージし、次いで、30cm3のイソペンタンを用いて、ポリ塩化ビニル球をスラリーにした。次いで、3cm3の塩化ブチルマグネシウム(2M)を45℃でスラリーに加え、得られた混合物を室温で30分間に亘り撹拌した。次いで、0.025cm3の100質量%の純粋なエタノールを、ゴム製シュバシールを介してその混合物中に注射器で計り取り、室温で約5分間に亘り撹拌した。その後、油浴の温度を55℃まで上昇させ、混合物を約15分間に亘り連続して撹拌しながら窒素パージを施して、その混合物からイソペンタン溶媒を蒸発させた。最後に、撹拌しながら同じ温度(55℃)でさらに10分間に亘り真空に引いて、確実に触媒混合物が100%乾燥しており、溶媒を全く含まないようにした。次いで、二塩化ビス−n−ブチルジルコニウム溶液(30cm3のトルエン中の0.1gのnBu−Cp2ZrCl2)を加え、65℃で50分間に亘り混合した。この後に、三塩化シクロペンタジエニルハフニウム溶液(30cm3のトルエン中の0.1gのCpHfCl3)を加えた。次いで、この触媒混合物をさらに60分間に亘り同じ温度(65℃)で混合した。この後、油浴の温度を75℃まで上昇させ、約25分間に亘り連続して撹拌しながら、混合物を窒素パージして、混合物からトルエンを蒸発させた。得られた固体を、触媒混合物を50cm3のアリコートのn−ヘキサンと共に撹拌することによって一度洗浄し、次いで、65℃での窒素パージによりこの溶媒を除去した。最後に、20分間に亘り窒素パージと真空を用いて、固体触媒を乾燥させ、さらさらした灰色がかった茶色の固体生成物を生成した。この固体触媒成分を原子吸光分光法により分析し、0.097質量%のハフニウム原子、0.059質量%のジルコニウム原子および1.2質量%のマグネシウム原子を含有することが分かった。
【0043】
実施例8
エチレンの単独重合
2リットルの容積を有するオートクレーブを30分間に亘り130℃で窒素によりパージした。オートクレーブを80℃まで冷却した後、1リットルのn−ヘキサンをこの反応装置中に導入した。次いで、反応装置を水素で0.6バールに、次いで、エチレンで15バールに加圧した。次いで、アクゾ・ノベル社からの4cm3のM−MAOタイプ3A(7質量%のAl)を、触媒注入ポンプにより反応装置中に注入した。次に、20cm3のn−ヘキサン中でスラリーにされた、実施例7に記載された固体触媒D0.09gを反応装置中に注入した。反応装置の温度を98℃に上昇させた。反応装置の全圧を15バールに維持するために、必要に応じてエチレンを供給しながら、エチレン重合を60分間に亘り行った。反応において、313リットルのエチレンが消費され、427.6グラムのポリエチレンが回収されて、ゲージ圧で200psi(約1.38MPa)で、4,276g PE/g触媒毎時の触媒生産性が得られた。このポリマーは、0.312g/cm3の嵩密度を有し、微粒子レベルは2.3%と測定された。ポリエチレンは、GPCにより試験し、195,833の重量平均分子量、7,924の数平均分子量、および24.7の広い分子量分布を有することが分かった。このポリマーのMWD曲線は、図4に示されているように、二峰性MWDを有するポリマーの証拠となった。
【0044】
実施例9
触媒(E)の合成
凝縮器および磁気撹拌子を備えた三首の丸底フラスコに、30μmの平均粒径を有するポリ塩化ビニル球10gを加えた。ポリ塩化ビニル球を収容するフラスコを、油浴を用いて70℃まで加熱し、次いで、30分間に亘り30mmのHg圧で排気した。次いで、フラスコとその内容物を乾燥窒素でパージし、次いで、30cm3のイソペンタンを用いて、ポリ塩化ビニル球をスラリーにした。次いで、3cm3の塩化ブチルマグネシウム(2M)を45℃でスラリーに加え、得られた混合物を室温で30分間に亘り撹拌した。次いで、0.025cm3の100質量%の純粋なエタノールを、ゴム製シュバシールを介してその混合物中に注射器で計り取り、室温で約5分間に亘り撹拌した。その後、油浴の温度を55℃まで上昇させ、混合物を約15分間に亘り連続して撹拌しながら窒素パージを施して、その混合物からイソペンタン溶媒を蒸発させた。その後、撹拌しながら同じ温度(55℃)でさらに10分間に亘り真空に引いて、確実に触媒混合物が100%乾燥しており、溶媒を全く含まないようにした。次いで、二塩化rac−ジメチルシリルビスインデニルジルコノセン溶液(30cm3のトルエン中の0.075gの(CH32Si−Ind2ZrCl2)を加え、65℃で50分間に亘り混合した。この後に、三塩化シクロペンタジエニルチタン溶液(30cm3のトルエン中の0.05gのCpTiCl3)を加えた。次いで、この触媒混合物を30分間に亘り同じ温度(65℃)で混合した。次いで、油浴の温度を75℃まで上昇させ、約25分間に亘り連続して撹拌しながら、混合物を窒素パージして、混合物からトルエンを蒸発させた。得られた固体を、触媒混合物を50cm3のアリコートのn−ヘキサンと共に撹拌することによって一度洗浄し、次いで、65℃での窒素パージによりこの溶媒を除去した。最後に、20分間に亘り窒素パージと真空を用いて、固体触媒を乾燥させ、さらさらした黄土色の固体生成物を生成した。この固体触媒成分を原子吸光分光法により分析し、0.27質量%のチタン原子、0.065質量%のジルコニウム原子および0.99質量%のマグネシウム原子を含有することが分かった。
【0045】
実施例10
エチレンの単独重合
2リットルの容積を有するオートクレーブを30分間に亘り130℃で窒素によりパージした。オートクレーブを80℃まで冷却した後、1リットルのn−ヘキサンをこの反応装置中に導入した。次いで、反応装置を水素で0.5バールに、次いで、エチレンで15バールに加圧した。次いで、アクゾ・ノベル社からの4cm3のM−MAOタイプ3A(7質量%のAl)を、触媒注入ポンプにより反応装置中に注入した。次に、20cm3のn−ヘキサン中でスラリーにされた、実施例9に記載された固体触媒E0.075gを反応装置中に注入した。反応装置の温度を95℃に上昇させた。反応装置の全圧を15バールに維持するために、必要に応じてエチレンを供給しながら、エチレン重合を50分間に亘り行った。反応において、355リットルのエチレンが消費され、499グラムのポリエチレンが回収されて、ゲージ圧で200psi(約1.38MPa)で、6,653g PE/g触媒毎時の触媒生産性が得られた。このポリマーは、0.323g/cm3の嵩密度を有し、微粒子レベルは1.3%と測定された。ポリエチレンは、GPCにより試験し、195,833の重量平均分子量、7,924の数平均分子量、および24.7の広い分子量分布を有することが分かった。このポリマーのMWD曲線は、二峰性MWDを有するポリマーの証拠となった。
【0046】
実施例11
触媒(F)の合成 − MMAOにより予め活性化された
凝縮器および磁気撹拌子を備えた三首の丸底フラスコに、30μmの平均粒径を有するポリ塩化ビニル球10gを加えた。ポリ塩化ビニル球を収容するフラスコを、油浴を用いて70℃まで加熱し、次いで、30分間に亘り30mmのHg圧で排気した。次いで、フラスコとその内容物を乾燥窒素でパージし、次いで、30cm3のイソペンタンを用いて、ポリ塩化ビニル球をスラリーにした。次いで、3cm3の塩化ブチルマグネシウム(2M)を45℃でスラリーに加え、得られた混合物を室温で30分間に亘り撹拌した。次いで、0.025cm3の100質量%の純粋なエタノールを、ゴム製シュバシールを介してその混合物中に注射器で計り取り、室温で約5分間に亘り撹拌した。その後、油浴の温度を55℃まで上昇させ、混合物を約15分間に亘り連続して撹拌しながら窒素パージを施して、その混合物からイソペンタン溶媒を蒸発させた。最後に、撹拌しながら同じ温度(55℃)でさらに10分間に亘り真空に引いて、確実に触媒混合物が100%乾燥しており、溶媒を全く含まないようにした。次いで、二塩化nBu−ジルコノセン溶液(30cm3のトルエン中の0.07gのnBu−Cp2ZrCl2)を加え、65℃で40分間に亘り混合した。この後に、二塩化チタノセン溶液(30cm3のトルエン中の0.05gのCp2TiCl2)を加えた。次いで、この触媒混合物を30分間に亘り同じ温度(65℃)で混合した。この後、75℃での窒素パージにより、トルエンを蒸発させた。次いで、触媒をイソペンタンで一度洗浄して、トルエンを除去した。触媒混合物を、少量のイソペンタンおよびアクゾ・ノベル社からの3.5cm3のM−MAOタイプ3A(7質量%のAl)により再度スラリーにして、触媒を予め活性化させた。この混合物を35℃で60分間に亘り撹拌し、その後、65℃での窒素パージにより、イソペンタンを蒸発させた。最後に、20分間に亘り窒素パージと真空を用いて、固体触媒を乾燥させ、さらさらした灰色がかった茶色の固体生成物を生成した。この固体触媒成分を原子吸光分光法により分析し、0.31質量%のチタン原子、0.065質量%のジルコニウム原子、1.1質量%のマグネシウム原子および1.2質量%のアルミニウム原子を含有することが分かった。
【0047】
実施例12
エチレンの単独重合
2リットルの容積を有するオートクレーブを30分間に亘り130℃で窒素によりパージした。オートクレーブを80℃まで冷却した後、1リットルのn−ヘキサンをこの反応装置中に導入した。次いで、反応装置を水素で0.5バールに、次いで、エチレンで15バールに加圧した。次いで、2cm3の2Mのトリメチルアルミニウム(TMA)を、触媒注入ポンプにより反応装置中に注入した。次に、20cm3のn−ヘキサン中でスラリーにされた、実施例11に記載された固体触媒F0.075gを反応装置中に注入した。反応装置の温度を95℃に上昇させた。反応装置の全圧を15バールに維持するために、必要に応じてエチレンを供給しながら、エチレン重合を60分間に亘り行った。反応において、30分間で453リットルのエチレンが消費され、585.5グラムのポリエチレンが回収されて、ゲージ圧で200psi(約1.38MPa)で、7,806g PE/g触媒毎時の触媒生産性が得られた。このポリマーは、0.353g/cm3の嵩密度を有し、微粒子レベルは2.1%と測定された。ポリエチレンは、GPCにより試験し、333,489の重量平均分子量、11,569の数平均分子量、および28.8の広い分子量分布を有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンの重合のための触媒組成物であって、
A) Cpは未置換のまたは置換されたシクロペンタジエニル環を表し、Rはヒドロカルビル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、1≦z≦3、0≦w≦3、および0≦y≦3である、化学式(Cp)zZrRwyにより表される第1のメタロセン化合物;Cp’は未置換のまたは置換されたシクロペンタジエニル環を表し、Mはチタン、バナジウムまたはハフニウムを表し、R’はヒドロカルビル基を表し、X’はハロゲン原子を表し、1≦z≦3、0≦w≦3、および0≦y≦3である、化学式(Cp’)zMR’wX’yにより表される第2のメタロセン化合物;随意的なアルミニウム化合物を含むメタロセン活性化剤;マグネシウム化合物;Rが、1から20の炭素原子を有するアルキル、アリールまたはシクロアルキル基である、化学式ROHにより表されるアルコール化合物;および高分子担体から実質的になる固体触媒、および
B) アルミニウム化合物を含む助触媒、
を有してなる触媒組成物。
【請求項2】
前記高分子担体が、平均粒径が5μmから約1000μmであり、細孔体積が少なくとも0.02cm3/gであり、細孔半径が10から1000Åであり、表面積が0.5から50m2/gである、略球形状を有するポリマー粒子からなることを特徴とする請求項1記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記ポリマー粒子が、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールまたはポリカーボネートからなることを特徴とする請求項2記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記ポリマー粒子が、5,000から200,000g/モルの範囲にある分子量、約15μmから100μmの直径、約1.0m2/gから約10m2/gの表面積、および少なくとも0.1cm3/gの細孔体積を有するポリ塩化ビニルからなることを特徴とする請求項3記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記マグネシウム化合物が、一般化学式R2MgXまたはR34Mgにより表され、ここで、R2、R3およびR4は1から20の炭素原子を有する同じかまたは異なる炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であることを特徴とする請求項4記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記マグネシウム化合物が、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、塩化ブチルマグネシウムまたは塩化ヘキシルマグネシウムからなることを特徴とする請求項4記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記第1のメタロセン化合物が、二塩化ビスシクロペンタジエニルチタン、三塩化シクロペンタジエニルチタン、二塩化ビスシクロペンタジエニルバナジウム、三塩化シクロペンタジエニルバナジウム、二塩化ビスシクロペンタジエニルハフニウムまたは三塩化シクロペンタジエニルハフニウムからなり、前記第2のメタロセン化合物が、二塩化ジルコノセン、二塩化ビスメチルシクロペンタジエニルジルコニウム、二塩化ビスn−ブチルシクロペンタジエニルジルコニウム、二塩化ビスインデニルジルコニウムまたは二塩化ビスフルオレニルジルコニウムからなることを特徴とする請求項6記載の触媒組成物。
【請求項8】
M:Zrのモル比が1:1から20:1であることを特徴とする請求項1記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記随意的なメタロセン活性化剤および/または前記助触媒が、
A) R5は、1から10の炭素原子を有する炭化水素基であり、Xはハロゲン原子またはアルコキシ基であり、n=1、2または3である、一般化学式R5nAlX3-nにより表されるアルミニウム化合物、および/または
B) 一般化学式:
線状アルミノキサンについては、
【化1】

ここで、qは0≦q≦50を満たす数を表す、および/または
環状アルミノキサンについては、
【化2】

ここで、sは3≦s≦50を満たす数を表す、
により表されるアルミノキサンであって、R6、R7、R8およびR9は、1から12の炭素原子を有する、同じか異なる、線状、分岐または環状アルキル基であるアルミノキサン、
からなることを特徴とする請求項5記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記アルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウムおよびアルキルアルミノキサンまたは修飾アルミノキサンの両方を含むことを特徴とする請求項9記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記触媒前駆体における、前記活性化剤および助触媒中のアルミニウムのモル数の、遷移金属ZrおよびMのモル数に対する比が、約50対1から約500対1であることを特徴とする請求項9記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記アルコール化合物が、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールからなる群より選択されることを特徴とする請求項5記載の触媒組成物。
【請求項13】
オレフィン重合の条件下でオレフィンを請求項1記載の触媒組成物に接触させる工程を有してなるオレフィンの重合方法。
【請求項14】
前記重合が、アルファオレフィンの単独重合または共重合であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記アルファオレフィンがエチレンであることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
オレフィン重合の条件下でオレフィンを請求項5記載の触媒組成物に接触させる工程を有してなるオレフィンの重合方法。
【請求項17】
オレフィン重合の条件下でオレフィンを請求項7記載の触媒組成物に接触させる工程を有してなるオレフィンの重合方法。
【請求項18】
オレフィン重合の条件下でオレフィンを請求項9記載の触媒組成物に接触させる工程を有してなるオレフィンの重合方法。
【請求項19】
オレフィン重合の条件下でオレフィンを請求項10記載の触媒組成物に接触させる工程を有してなるオレフィンの重合方法。
【請求項20】
オレフィン重合の条件下でオレフィンを請求項11記載の触媒組成物に接触させる工程を有してなるオレフィンの重合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−513651(P2010−513651A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542271(P2009−542271)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004396
【国際公開番号】WO2008/075202
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】