説明

オレフィンを重合するための多段階プロセス

一連の上流のスラリー反応器及び下流の気相反応器内でのオレフィンの多段階重合方法であって、上流の反応器から下流の反応器へのポリマーの移送が、(a)ポリオレフィン粒子のスラリーを加熱して液体重合媒体を蒸発させ;(b)少なくとも1つの分離室内において得られた気相からポリオレフィン粒子を分離し;(c)並行して断続的に運転される1対のロックホッパーを用いてポリオレフィン粒子を下流の反応器に移送し、ここでロックホッパーの1つには分離室から得られるポリマーを連続的に充填し、一方同時に、他の1つは下流の反応器から得られる反応混合物を含むガスによって連続的に加圧する;工程を含む上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンを重合するための多段階プロセスに関する。本発明は、また、かかる多段階重合プロセスを行うための装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
2つ以上の直列に接続された重合反応器内でオレフィンを重合することにより、改良された機械特性を有するオレフィンポリマーを製造することができる。これは、第1の重合反応器内に存在する反応条件と異なる第2の又は後段の反応器内での重合条件を選択することによって可能になる。通常は、オレフィンポリマーは触媒成分を含む顆粒体上に成長し、これはポリマー粒子を後段の重合反応器に移した際にも触媒活性を発揮し続ける。第1の重合反応器から得られるポリマーは第2の重合反応器に移して、ここで異なる条件下で重合を継続する。したがって、それぞれの反応器内でモノマーの異なる濃度を保持することによって同じ触媒顆粒体上にポリマーの異なるフラクションを成長させることができる。
【0003】
多段階重合プロセスによって製造することのできるポリマーの例としては、それぞれの反応器内において水素のような連鎖停止剤の異なる濃度を保持することによって得られる二峰又は多峰性ポリマー;及びそれぞれの反応器内において異なる(コ)モノマーを重合することによって得られるランダム又はヘテロ相コポリマー;が挙げられる。「ヘテロ相コポリマー」という用語は、反応器内ポリマーブレンドも包含する。
【0004】
また、互いに連続的に接続されている1以上のスラリー重合反応器及び1以上の気相反応器を用いる多段階プロセスを用いてプロピレンのランダム及び/又は耐衝撃性コポリマーを製造し、これによって従来のポリプロピレン製品の幾つかの機械特性及び物理特性を発展及び改変することも公知である。
【0005】
プロピレンホモポリマーをスラリー重合反応器から後段の気相反応器へ移送する際には、ポリプロピレンを含むスラリーを必ずフラッシュ容器内で加熱及びフラッシングして、液体重合媒体を揮発させ、ポリマーを蒸発相から分離しなければならない。分離されたポリマーをフラッシュ容器から下流の気相反応器へ直接移送するのでは、上流の反応器から得られるポリマーに同伴する相当量のガス及び溶解炭化水素のために、下流の反応器内において異なる重合条件を保持することができないであろうことは明らかである。特に上流の反応器内で特定のオレフィンモノマー(例えばプロピレン)を重合し、このモノマーを下流の反応器内には存在させない場合には、このモノマーが少量でさえも下流の重合装置に侵入することを避けることが重要になる。
【0006】
2つの直列に接続されている気相反応器内で行うオレフィン重合の場合において、上記の問題に対する幾つかの技術的解決手段が提案されている。
EP−B−192427によれば、上流の気相反応器から下流の気相反応器へのポリマーの移送を、下流の反応器のガス再循環ラインから得られる気体混合物を含む気体流を用いて行う。かかる気体混合物は、下流の反応器の温度よりも少なくとも20℃低い温度に冷却する。記載されている移送装置は、少なくとも3つの別々の容器:ポリマーが上流の反応器から過剰に排出されることを抑制するバルブを備えた、上流の反応器に接続されている排出容器;バルブを備え、排出容器に接続されている減圧室;バルブを備え、下流の反応器に接続されている加圧室;を有する。この一連の容器並びに関連するバルブ及びパイプを通るポリマーの流路は、かなり蛇行しており、粘着質になるか又は凝集する傾向を有するポリマーの場合には、望ましくないポリマーの凝集体を生成し、最終的にはプラントの運転の障害になるポリマー塊を生成する可能性がある。とりわけ、上記の移送装置は、EP−B−192427の開示(14欄14〜19行)によって指摘されているように、上流の気相反応器から下流の反応器へのポリマーの連続的な移送を与えることができないという大きな欠点を有しており、ポリマーの排出、減圧、圧縮、移送、及び下流の反応器中への導入の全ての運転は周期的に行われる。
【0007】
同様の移送装置がEP−B−050013において開示されている。この特許によれば、移送装置は、ポリマーを排出し、不活性ガスを底部から上向きに通して上流の反応器から得られる反応気体混合物の殆どを置換する不活性ガス区域を画定する容器を有する。その後、ポリマーは、常に上記の不活性ガスの雰囲気中に保持され、下流の反応器から得られる気体反応混合物と連通する小さな室(ポリマー回収区域)に移される。不活性ガスで気体反応混合物を置換することは、移送装置内での重合を減少又は抑止して、これにより移送装置の壁上へのポリマーの堆積及びその閉塞を排除することを助ける。しかしながら、提案されている解決法は、第2の重合反応器内の反応気体混合物が相当に不活性ガスに富むという欠点を有する。これにより、下流の反応器内に相当な更なる量のオレフィンモノマーを導入することが必要になり、反応器の寸法を増加させるか、又はこの反応器内の気体の全圧を増加させることが必要になる可能性がある。更に、EP−B−050013に記載されている移送装置も、ポリマーを上流の反応器から下流の反応器へ連続的に移送することはできない。これは、ポリマーをまずポリマーを回収する小さな室に装填しなければならず、その後でなければ下流の反応器からの気体反応混合物と連通するラインを開放することによってそれからポリマーを排出することができないからである。
【0008】
EP−B−503791は、一連の2つの流動床反応器内で二峰性エチレンポリマーブレンドを製造するための多段階気相プロセスに関する。第1の反応器内において高分子量(HMW)のポリエチレンが製造され、その後第2の反応器中に移され、ここで低分子量(LMW)のポリエチレンが製造される。移送装置は、第1の反応器から排出されるHMWポリマーを回収するための排出タンク、及び第2の気相反応器に接続されている移送ホースを有する。周期的に、十分なHMWポリマーが第1の反応器内で形成されたら、ポリマー及び触媒を排出タンクに移し、ポリマーを連行する反応ガスを排出タンクの頂部から排気する。所望量のポリマーが排出タンク中に導入されたら、好適なバルブを開放して第2の反応器への移送システムを稼働させることによってHMWポリマーを移送ホース中に送入する。したがって、移送ホースは、上流の排出タンクから隔離されており、下流の反応器から得られる反応器循環ガスで加圧される。EP−503791に記載されている移送装置は、上流の反応器の反応ガスが下流の反応器に侵入するのを阻止するのには有効であるが、この移送装置は、ポリマーの排出、脱気、加圧、ポリマー粉末の移送及び下流の反応器中への導入の運転の全てが断続的に行われるので、2つの気相反応器の間のポリマーの連続的で確実な移送を確保することはできない。
【0009】
上記の従来技術の移送システムにおいて開示されているポリマー移送システムには、重大な欠点が伴う。移送システムに属する装置が作動不良を起こすか又は閉塞し始めた場合には、重合プラント全体を停止しなければならない。更に、運転の観点からは、ポリマー移送を不連続的に運転することにより、ポリマー生成物のバッチを下流の反応器中に導入する際に、下流の反応器の内部のポリマー床のレベルの明確な変動が引き起こされる。この変動は、下流の反応器における幾つかの運転パラメーターに影響を与え、生成するポリマーの品質に大きな影響を与える可能性がある。
【0010】
上流のスラリー反応器及び下流の気相反応器での多段階重合の特定の場合においては、上記の技術的問題には適切に向かい合っておらず、特定のオレフィンモノマーを上流の反応器内で重合し、下流の反応器内では重合しないことが求められる場合には、このモノマーが下流の気相反応器に侵入するのを阻止することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第192427号明細書
【特許文献2】欧州特許第050013号明細書
【特許文献3】欧州特許第503791号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
下流の反応器内に存在する気体の組成を望まないように変化させることなく、簡単な信頼できる方法で上流のスラリー反応器から下流の反応器へのポリマーの移送を行う必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の対象は、一連の上流のスラリー反応器及び下流の気相反応器内でのオレフィンの多段階重合方法であって、上流の反応器から下流の反応器へのポリマーの移送が、
(a)上流の反応器から排出されるポリオレフィンのスラリーを加熱して液体重合媒体を蒸発させ;
(b)少なくとも1つの分離室内において蒸発相からポリオレフィン粒子を分離し;
(c)並行して断続的に運転される1対のロックホッパーを用いてポリオレフィン粒子を下流の反応器に移送し、ここでロックホッパーの1つには分離室から得られるポリマーを連続的に充填し、一方同時に、他の1つは下流の反応器から得られる加圧ガスによって連続的に加圧する;
工程を含む上記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましいが非限定的な態様を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるオレフィンの重合方法は、上流のスラリー反応器及び下流の気相反応器内で行う多段階重合を含む。本方法はまた、スラリー反応器の上流か又は気相反応器の下流に、気相中又は液体重合媒体中で重合を行う1つ又は複数の更なる反応器を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の上流の反応器は、1種類以上のオレフィンの液相重合を行ってポリマースラリーを製造する。液体重合媒体は、1種類以上のオレフィンモノマー、分子量調整剤として水素、及び場合によっては重合希釈剤として不活性炭化水素を含む。重合媒体として液体モノマーを用いることにより、高いモノマー濃度を与えることによって重合反応の速度を最大にし、精製して再循環しなければならない溶媒又は希釈剤の使用を排除することによってプロセスを簡単にすることができる。かかる重合は、重合熱を除去するためのジャケット壁を有する撹拌タンク、或いは反応器体積に対する冷却面積の高い比を与えるジャケットループ反応器内で行うことができる。
【0017】
上流の重合反応器は、好ましくはループ反応器であり、22〜50bar,好ましくは30〜45barの圧力で運転する。重合温度は、60〜90℃、好ましくは70〜85℃の範囲である。
【0018】
本発明の多段階プロセスにおいて用いる下流の気相反応器は、任意のタイプの気相反応器、例えば重合触媒の存在下でポリマー床を形成する気相流動床反応器又は撹拌床反応器のいずれかであってよい。本発明方法の目的のためには、反応流体の殆どが気体状態であり、ポリマーが粒子形態であることが重要である。また、EP−B−782587及びEP−B−1012195に記載されているような2つの別個の相互接続重合区域を有する気相重合反応器も、本発明方法において好適に用いることができる。
【0019】
好ましい下流の気相反応器は流動床反応器である。このタイプの反応器には、反応器の底部から固体を排出する装置、並びに圧縮機及び熱交換器が取り付けられている反応気体混合物用の外部再循環ラインが備えられている。かかる再循環ラインによって、ポリマー床を流動状態に保持することが確保される。
【0020】
重合触媒としては、オレフィン重合に好適な全ての公知のタイプの触媒を用いることができる。チーグラー・ナッタ触媒、クロムベースのフィリップス触媒、及びシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を特に言及することができるが、これらに限定されない。
【0021】
上流の反応器から排出されたら、ポリオレフィンスラリーは、減圧し、スラリー反応器内の温度よりも高い温度に加熱し、これらの条件下で液体重合媒体を蒸発させる。気化器を用いて本発明の工程(a)の加熱を行うことができる。好ましくは、ポリオレフィンスラリーは、気化器として蒸気ジャケットパイプを備えたラインに沿って移送する。蒸気ジャケットパイプの内部において、温度を、上流の反応器内の重合温度よりも高く、ポリオレフィンの粘着温度より低い値、好ましくは80〜100℃の範囲の値に上昇させる。
【0022】
工程(a)のジャケットパイプから排出される流出流は、実質的に2つの相:固相及び気相である。かかる2相混合物は、本発明の工程(b)を行うように意図されている分離室の上部に供給される。分離室内への2相流の注入は分離室の壁に対して接線方向に行われ、このため遠心効果によって分離室内部での固/気分離が行われる。固相は重力によって下向きに下降する傾向を有し、一方気相は上向きに流れる傾向を有する。好ましい態様によれば、複数のバッグフィルターが工程(b)の分離室の上部に配置される。バッグフィルターによって、固体微粉が分離室の上部から排出されるのが抑止される。パージシステムを用いて、バッグフィルターを清浄化して、それらの閉塞を抑止することができる。ここで、清浄化ガスは好ましくは流出流内の未反応のモノマーと同じモノマーである。例えば、未反応のモノマーがプロピレンである場合には、パージガスは好ましくはプロピレンである。バッグフィルターの好ましい数は、流出流の流束、分離室の寸法、及び流出流内の固体微粉の量によって定まる。
【0023】
分離容器から回収される気体流は、約0.5重量%未満の微粉、好ましくは約0.1重量%未満の微粉を含む。かかる気体流は一般に熱交換器を用いて凝縮し、凝縮流は上流のスラリー反応器に再循環して戻す。
【0024】
分離容器の下部は、好ましくは固体微粉を含む固体ポリマー粒子の質量流を促進するようにデザインされる。一態様においては、分離容器の下部は、水平から約55°〜約90°、好ましくは水平から約65°〜約90°の間の角度で急勾配で傾斜する側部を有する研磨された金属表面から形成される。更に、分離容器の下部は好ましくは直径が比較的小さく、好ましくは分離容器の下部にレベル検出器を設置して、固体レベルの制御を可能にし、固体微粉と共に容器の底部から排出される未反応のモノマー蒸気の量を最小にするようになっている。
【0025】
本発明の好ましい態様によれば、工程(b)は減少する圧力で運転する2つの直列に接続された分離容器を用いることを包含する。高圧分離容器内の圧力は、10〜28bar、好ましくは14〜24barの範囲であってよく、一方、低圧分離容器は、1.1〜4.0bar、好ましくは1.3〜2.5barの範囲の大気圧に近い圧力で運転する。その結果、高圧分離室の底部から排出される固体ポリマーは、低圧分離室の上部において接線方向の注入方向で供給され、ここで気相からの固体の分離が完了する。また、低圧分離容器には、好ましくは、固体微粉が分離容器の上部から排出されるのを抑止する複数のバッグフィルターが与えられている。
【0026】
工程(b)の分離容器内で有効に脱気した後、ポリオレフィン粒子は低圧分離容器の底部から排出して、並行に断続的に運転する1対のロックホッパー(工程(c))に移す。これらのロックホッパーのそれぞれは、
(1)ホッパーを下流の反応器から隔離して保持しながら、工程(b)から得られるポリマーを装填し;
(2)ホッパーを工程(b)の分離室から隔離して保持しながら、下流の反応器からの反応混合物を含むガスによって加圧する;
一連の運転で連続的に運転する。
【0027】
加圧(2)中においては、また、ポリマーを同時にロックホッパーから排出し、したがって下流の反応器に移送する。
1つのロックホッパーが工程(1)に関与する際は、他の1つは工程(2)に関与し、逆もまた成立する。この並行運転によって、上流のスラリー反応器からの排出流速が最大になり、上流の反応器から下流の気相反応器へのポリマーの実質的に連続の移送が最適になる。更に、下流の反応器から得られる気体混合物を用いて加圧を行うことにより、下流の気相反応器内に存在する反応条件が望まないように変化する危険性が減少する。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、ロックホッパーを加圧する加圧ガスは、下流の反応器の再循環ラインの圧縮機の下流で熱交換器の上流の点から排出される。この形態によれば、ロックホッパーに供給される反応気体混合物の部分はいかなる冷却段階にもかけられず、したがってその温度は実質的に下流の反応器内の反応気体混合物の温度よりも低くはない。
【0029】
更に、下流の反応器の再循環ラインから得られるかかる気体流は、好ましくは、不活性ガス又は補給モノマーを加えることなくロックホッパーに供給する。したがって、その組成は下流の反応器内の反応気体混合物のものと実質的に同じである。
【0030】
本発明の他の形態によれば、本発明の工程(c)のロックホッパーは、一般に下流の反応器内の流動床のレベルよりも上方の点に配置されており、このため下流の気体反応器へのポリマーの移送は圧力及び重力の複合作用によって行われる。
【0031】
本発明の一連の運転工程の結果、上流のスラリー反応器内で反応するオレフィンモノマーは、無視しうる量しか下流の気相に移送されない。
本発明方法の他の有利性は、上流の反応器から下流の反応器へのポリマーの移送に、移送ライン内で不活性ガスを加えることも、ポリマーを下流の反応器中へ移送するのに用いる気体流を冷却することも必要でないことである。
【0032】
また本発明は、上流のスラリー反応器、下流の気相反応器、及びポリマーを上流の反応器から下流の反応器へ移送する移送装置を有し、下流の気相反応器は反応器を通して流動化ガスを連続的に再循環する外部再循環ラインRを有し、移送装置は、
−上流の反応器から排出されるポリオレフィンスラリーを加熱するための気化器;
−蒸発相からポリオレフィン粒子を分離するための少なくとも1つの分離室;
−下流の反応器の再循環ラインRに直接接続され、下流の反応器の重合区域と接続されている、並行配列に配置されている1対のロックホッパー;
を有する重合装置にも関する。
【0033】
上記の重合装置の一態様によれば、ポリオレフィンスラリーを加熱するための気化器は蒸気ジャケットパイプであり、これを通してポリオレフィンスラリーを流す。好ましくは、重合装置は、蒸発相からポリオレフィン粒子を分離するための高圧分離室及び低圧分離室を有する。
【0034】
本発明の好ましいが非限定的な態様を示す簡略図である図1を用いて本発明を更に説明する。
図1に図式的に示す装置において、Aはオレフィンのスラリー重合のためのループ反応器であり、一方、Bはオレフィンの気相重合のための流動床反応器である。本発明の目的の範囲内において、ループ反応器Aは、多段階プロセスの最初の重合反応器であってよく、或いは他の1つ又は複数の反応器をループ反応器Aの上流に配置することができる。例えば、ループ反応器Aは、上流の反応器内で製造されたポリマー又はプレポリマー又は重合触媒をライン1から受容することができる。
【0035】
概略的には、触媒成分、共触媒、及びプロピレンを、矢印1によって示すようにループ反応器A中に導入する。活性MgCl上に担持されている固体成分を含むチーグラー・ナッタ触媒を用いる場合には、固体成分はそのままか又は好ましくは予備重合形態で供給することができる。
【0036】
ループ反応器Aの垂直レッグ部には、重合反応によって発生する熱を除去するための冷却ジャケット2、2’が備えられている。ポリマースラリーの殆どはアキシャルポンプ3によってループ反応器Aの内部で連続的に再循環させるが、そのフラクションをループ反応器Aから連続的に排出して移送ライン4に導入する。
【0037】
下流の気相反応器は、流動ポリマー床を通る流動化ガスを連続的に再循環させる再循環ラインRを取り付けた流動床反応器Bである。スラリーループ反応器Aから気相反応器Bへのポリマー粒子の移送は、本発明の蒸発工程(a)、分離工程(b)、及び工程(c)による移送手段を実質的に含む本発明方法によって行う。
【0038】
図1に示す態様においては、蒸発工程(a)は加熱パイプ内で行い、一方、分離工程(b)は減少する圧力で運転する一連の2つの分離室内で行う。
ループ反応器Aから排出されるポリマースラリーを、蒸気ジャケットパイプ5を取り付けた移送ライン4を通して流す。したがって、ポリマースラリーはジャケットパイプ5内で加熱され、ループ反応器A内の温度よりも高い温度にされる。これらの条件下で、液体重合媒体が蒸発し、固体ポリマー及び蒸発モノマーを含む2相混合物を高圧分離室6の入口に供給し、ここで固体ポリマー粒子を気化した1種類又は複数のモノマーから分離する。固体微粉が気体流に連行されるのを抑止するために、分離室の上部にバッグフィルター7が配置されている。
【0039】
固体ポリマーの粒子は重力によって高圧分離室10の底部に向かって下降し、一方、気体流は室10の上部に上向きに流れて、凝縮手段8、補給モノマーを供給するためのライン、及び圧縮機9を有するモノマー回収区域に送られる。ライン10を通して供給される補給モノマー及び分離室6からの再循環モノマーは、ライン11を通してループ反応器Aに供給される。
【0040】
分離タンク6の底部から排出されるポリオレフィン粒子は、ライン12を通して、その上部に複数のバッグフィルター14を取り付けた低圧分離室13に供給される。低圧分離室13内において、ポリマー粒子が気体成分から更に分離される。固体ポリマーから分離されたガスは、分離室8の上部のバッグフィルター14を通り、続いてライン15及び11を通してループ反応器Aに再循環する。
【0041】
1対のロックホッパー16、16’が低圧分離室13の下流に配置されている。後者は、固体を実質的に重力によってロックホッパー16、16’中に逐次排出することを可能にするのに十分に高い点に配置される。
【0042】
ロックホッパー16、16’のそれぞれは、2つの別々の排出バルブ17及び17’を通して分離室13に接続されている。ロックホッパー16、16’は、ポリマー顆粒の安息角よりも大きい角度で傾斜した壁部を有する円錐形の下部を有する。
【0043】
分離室13の下流に配置されている排出バルブ17を開放し、同時に、ポリマー粒子と共にロックホッパー16中に移送された残留ガスを分離室13中に排出する排気パイプであるライン19上に配置されているバルブ18を開放することによって、ロックホッパー16への充填を促進する。同様に、分離室13の下流に配置されている排出バルブ17’を開放し、同時に、ポリマーと共にロックホッパー16’中に移送された残留ガスを分離室13中に排出する排気パイプであるライン19’上に配置されているバルブ18’を開放することによって、ロックホッパー16’への充填を促進する。
【0044】
ロックホッパー16、16’は、好ましくは、分離室13の下方で、下流の反応器Bのポリマー床22の上方に配置する。
ロックホッパー16、16’には、それぞれ、ポリマー粒子を下流の気相反応器Bのポリマー床22中に交互に移送する移送パイプ21、21’と接続されている底部排出バルブ20、20’が与えられている。パイプ21、21’は、垂直線に対して一定の角度で傾斜している。好ましくはこの角度は45°以下であり、より好ましくはこれは15°〜30°の範囲である。
【0045】
下流の反応器Bのポリマー床22を通る流動化ガスを連続的に再循環するガス再循環ラインRが、ライン23、23’を通してロックホッパー16、16’の上部に接続されている。再循環ガス流は、再循環ラインRの圧縮機24の直ぐ下流で熱交換器25の上流の点で回収される。加圧バルブ26を開放することにより、下流の反応器Bから得られる再循環反応混合物によってロックホッパー16を加圧することができる。同様に、加圧バルブ26’を開放することにより、下流の反応器BのラインRから得られる再循環反応混合物によってロックホッパー16’を加圧することができる。
【0046】
2つのホッパー16、16’は、中央制御ユニットによって制御される通常のシーケンスにしたがって並行に断続的に運転される。ロックホッパー16への充填は、バルブ20を閉止し、バルブ17及び18を開放することによって行い、したがって固体が室13から排出されてホッパー16に充填され、一方、ポリマーを連行するガスはバルブ18を通して排出され、分離室13に戻る。ホッパー16の充填が完了したら、バルブ17及び18を閉止し、一方、バルブ20及び26を開放する。バルブ26を開放することにより、ライン23を通して圧縮機24によってポンプ移送される反応器Bの反応気体混合物の一部によってホッパー16の加圧が引き起こされる。同時に排出バルブ20を開放することにより、圧力及び重力の複合作用によってポリマーがパイプ21を通して下流の反応器Bのポリマー床22中に排出される。再循環ラインRの圧縮機24の直ぐ下流で排出される反応気体混合物の一部を用いることにより、圧縮機24から得られる全圧力ヘッドを利用することができ、これによりポリマーをホッパー16から反応器Bへ高い流速で移送することが可能になる。ホッパー16からのポリマーの排出が完了したら、バルブ20及び26を閉止する。
【0047】
対応するバルブ17’、18’、20’、及び26’を作動させることによって、ホッパー16’により同一のシーケンスであるが異なる相の運転を行う。
ポリマーを分離室13から第1のロックホッパー16中に移送する間は、排出バルブ17’を閉止状態に保持する。一方、ホッパー16の充填中においては、バルブ20’及び26’を開放して、それによってホッパー16’の加圧及びその結果としてパイプ21’を通ってホッパー16’から下流の反応器Bへのポリマー粒子の移送を行う。
【0048】
ホッパー16の充填が完了したら、排出バルブ17を閉止し、同時にバルブ17’及び18’を開放して、第2のホッパー16’の充填を開始し、バルブ20’及び26’を閉止して、それにより分離室13から得られるポリマーをホッパー16’に充填する。ホッパー16’の充填中においては、バルブ20及び26を開放して、それによってホッパー16の加圧及びその結果としてパイプ21を通ってホッパー16から下流の反応器Bへのポリマー粒子の移送を行う。
【0049】
分離室29に至るライン28上に配置されているバルブ27を通してホッパー16’から圧力を解放し、ここで反応器Bから排出されるポリマーから気体混合物を分離する。分離室29は低圧分離室13と同じデザインを有する。分離室29の頂部から排出される気体混合物は、再圧縮した後、ライン30を通して反応器Bの再循環ラインR中に再導入する。圧力が平衡になったら、新しい移送サイクルを行うことができる。
【0050】
流動床22の底部と連通して配置されている制御バルブ31を用いて下流の反応器Bからポリマーを排出し、分離室29に移送して、ここで脱気にかける。脱気したポリマーは、ライン32を通して分離室29の底部から排出し、当業者に公知なような引き続く重合反応器か又は仕上げ処理段階に移送することができる。
【0051】
2つのロックホッパーの一方が分離室13から得られるポリマーで充填され、他のロックホッパーが空にされて、ポリマーが下流の反応器B中に移送されるので、本発明方法によってポリマーをスラリーループ反応器Aから気相反応器Bへ連続移送することが可能である。その結果、ポリマーはパイプ21及び21’によって障害なしに下流の反応器B中に移送される。
【0052】
場合によっては、ライン23から排出される反応気体混合物の一部によってパイプ21、21’を連続的にフラッシングして、それによりパイプ内の固体の堆積を回避することができる。
【0053】
移送装置のデザイン、及び工程(b)の運転シーケンス、及び工程(c)におけるポリマーの装填/加圧−移送は、分離室6及び13内のポリマーのレベルがほぼ一定になるようなものである。通常は、バルブ20、26、及び20’、26’は、分離室13内の固体のレベルによって発信される信号によって作動する。
【0054】
本発明方法によって重合されるオレフィンモノマーは、式:式CH=CHR(式中、Rは、水素、又は1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基である)を有する。得ることのできるポリオレフィンの例は、
−半結晶性ポリプロピレン及び1種類以上のエラストマーエチレン/ブテン−1コポリマーを含むヘテロ相コポリマー;
−プロピレン、並びに30重量%以下のエチレンを含むプロピレンとエチレンとの混合物の逐次重合によって得られる耐衝撃性プロピレンポリマー;
−アイソタクチックポリプロピレン、並びに85重量%より多いプロピレンから誘導される単位の含量を有するプロピレン及びエチレン及び/又は他のα−オレフィンの結晶性コポリマー;
−30重量%以下のα−オレフィン含量を有するプロピレン及び1−ブテンのようなα−オレフィンのアイソタクチックコポリマー;
である。
【0055】
上流のスラリー反応器においてプロピレンを重合する場合には、プロピレン、分子量調整剤として水素、及び場合によっては不活性炭化水素を含む液体混合物を、チーグラー・ナッタ又はメタロセンタイプの高活性触媒の存在下において上流のループ反応器に供給する。好ましくは、重合は不活性炭化水素の低濃度下において行い、したがって液体プロピレンが実質的に反応媒体である(バルク重合)。ループ反応器においては、プロピレン濃度は、反応器内に存在する液体の全量を基準として60〜100重量%、好ましくは75〜95重量%の範囲である。液体の残りの部分は、不活性炭化水素、水素、及び存在する場合には1種類以上のα−オレフィンコモノマーを含む。好ましいコモノマーはエチレンである。
【0056】
ここで記載する多段階オレフィン重合は、いかなる特定の種類の重合触媒の使用にも限定されない。本発明は、担持されているか非担持であるかにかかわらず、且つ予備重合形態であるかどうかにかかわらず、任意の触媒を用いる任意の発熱重合反応において有用である。
【0057】
重合反応は、チーグラー・ナッタ触媒、シングルサイト触媒、クロムベースの触媒、バナジウムベースの触媒のような高活性触媒系の存在下で行うことができる。
チーグラー・ナッタ触媒系は、元素周期律表(新表記法)の第4〜10族の遷移金属化合物と、元素周期律表の第1、2、又は13族の有機金属化合物との反応によって得られる触媒を含む。
【0058】
特に、遷移金属化合物は、Ti、V、Zr、Cr、及びHfの化合物の中から選択することができる。好ましい化合物は、式:Ti(OR)y−n(式中、nは0〜yの範囲であり;yはチタンの価数であり;Xはハロゲンであり;Rは、1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基又はCOR基である)のものである。これらの中で、四ハロゲン化チタン又はハロゲンアルコラートのような少なくとも1つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物が特に好ましい。好ましい特定のチタン化合物は、TiCl、TiCl、Ti(OBu)、Ti(OBu)Cl、Ti(OBu)Cl、Ti(OBu)Clである。
【0059】
好ましい有機金属化合物は、有機Al化合物、特にAl−アルキル化合物である。アルキル−Al化合物は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される。また、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、或いはAlEtCl及びAlEtClのようなアルキルアルミニウムセスキクロリドを、場合によっては該トリアルキルアルミニウム化合物と混合して用いることもできる。
【0060】
特に好適な高収率ZN触媒は、チタン化合物が好ましくは活性形態のMgClである活性形態のハロゲン化マグネシウム上に担持されているものである。特にCHCHR(式中、RはC〜C10炭化水素基である)のオレフィンの結晶性ポリマーを製造するためには、MgCl上に内部電子ドナー化合物を担持させることができる。通常は、これらはエステル、エーテル、アミン、及びケトンの中から選択することができる。特に、1,3−ジエーテル、フタレート、ベンゾエート、及びスクシネートに属する化合物を用いることが好ましい。
【0061】
高度にアイソタクチックの結晶性ポリプロピレンを得ることが所望の場合には、固体触媒成分中に存在する電子ドナーに加えて、アルミニウムアルキル共触媒成分又は重合反応器に外部電子ドナー(ED)を加えて用いることが推奨される。これらの外部電子ドナーは、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、アルコキシシラン、及びエーテルの中から選択することができる。電子ドナー化合物(ED)は、単独か又は互いに混合して用いることができる。好ましくは、ED化合物は、脂肪族エーテル、エステル、及びアルコキシシランの中から選択される。好ましいエーテルは1,3−ジエーテルである。
【0062】
好ましいエステルは、C〜C20芳香族カルボン酸のアルキルエステル、特にフタレート及びベンゾエートである。
好ましいアルコキシシランは、式:RSi(OR(式中、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は4であり;R、R、及びRは、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、又はアリール基である)のものである。aが1であり、bが1であり、cが2であり、R及びRの少なくとも1つが、3〜10個の炭素原子を有する、分岐のアルキル、シクロアルキル、又はアリール基から選択され、Rが、C〜C10アルキル基、特にメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。
【0063】
他の有用な触媒は、フィリップス触媒としても知られているシリカ上の酸化クロムのようなクロム化合物をベースとするもの、及びシングルサイト触媒、例えばメタロセンベースの触媒系である。
【0064】
触媒は、上記に記載の触媒を用いる予備重合段階中に前もって製造したプレポリマー粉末の形態で好適に用いることができる。
予備重合は、任意の好適なプロセス、例えばバッチプロセス、半連続プロセス、又は連続プロセスを用いる液体炭化水素希釈剤中又は気相中での重合によって行うことができる。
【0065】
以下の実施例によってその範囲を限定することなく本発明を更に説明する。
【実施例】
【0066】
特性分析:
メルトインデックスL(MIL)[dg/分]:ISO−1133にしたがって測定した。
【0067】
溶解度指数(XS)[重量%]:25℃においてオルトキシレン中に可溶のコポリマーの割合。
秤量量の試料を135℃においてオルトキシレン中に溶解した。溶液を制御された条件下で冷却し、25℃に保持して不溶の物質を沈殿させた。次に、沈殿物を濾過し、濾過の後に濾液のアリコートを蒸発させ、秤量した(全可溶分)。
【0068】
実施例1:
−触媒成分を予備接触させるための活性化容器(図1には示さず);
−スラリーループ反応器A;
−本発明の工程(a)を行うための蒸気ジャケットパイプ5;
−本発明の工程(b)を行うための一連の2つの分離室6、13;
−本発明の工程(c)を行うための1対のロックホッパー16、16’;
−流動床反応器B;
を含むプロセス設定を用いて、半結晶性ポリプロピレン及びラバー状エチレン/ブテン−1コポリマーを含むヘテロ相コポリマーを製造した。
【0069】
触媒活性化及び予備重合:
重合触媒として、
−EP−395,083の実施例3(これによるとジイソブチルフタレートが内部ドナーである)に記載の手順を用いて製造したチタン固体触媒成分;
−共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL);
−外部ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS);
を含むチーグラー・ナッタ触媒系を用いた。
【0070】
上記の固体触媒成分(以下、「固体触媒」と呼ぶ)を予備接触容器に供給した。TEAL/固体触媒の重量比は14であり、TEAL/DCPMSの重量比は3であった。上記の成分を12℃の温度において22分間予備接触させた。
【0071】
スラリー重合:
活性化容器から排出される活性化触媒をスラリーループ反応器に連続的に供給して、半結晶性ポリプロピレンを製造した。
【0072】
図1に示す態様にしたがって、ループ反応器A内において、分子量調整剤としてHを用いて液体プロピレンを重合した。この反応器にはコモノマーは供給せず、70℃の温度及び40barの圧力においてプロピレンの重合を行った。
【0073】
55重量%のポリマー濃度を有するポリプロピレンスラリーがループ反応器Aから排出され、これを、加熱蒸気を用いて外部から加熱したジャケットパイプ5に移送した。パイプ5を通って流れるポリマースラリーを加熱にかけて85℃の温度に到達させ、その結果として液体モノマーを蒸発させた。
【0074】
パイプ5の出口において得られる固体ポリマー及び蒸発プロピレンの流れを高圧分離室6に送り、ここで蒸発プロピレンをポリマー粒子から分離した。上記の流れを接線方向で導入することにより、遠心効果による気/固分離が確保された。
【0075】
高圧分離室6を18barの圧力で運転し、固体ポリマーの粒子を重力によって室の底部に向かって下降させ、一方、気体状プロピレンは分離室6の上部のバッグフィルター7を通って引き続きループ反応器Aに再循環した。
【0076】
ポリプロピレン粒子を分離室6の底部から排出し、1.6barの圧力で運転する低圧分離室13に移送した。固体ポリマーの粒子を重力によって分離室13の底部に向かって下降させ、これによりポリマー粒子からの気体状プロピレンの更なる除去を行った。
【0077】
次に、脱気されたポリプロピレン粒子を、低圧分離室13の下方で、下流の流動床反応器Bのポリマー床22の上方に配置されている1対のロックホッパー16、16’に移送した。
【0078】
2つのロックホッパー16、16’を、図1の記載に関連して説明した運転工程にしたがって並行に断続的に運転した。ロックホッパーの1つを分離室13から得られるポリマーの充填に関与させる際には、他のホッパーは流動床反応器Bの再循環ラインRから得られる気体混合物によって加圧した。
【0079】
ロックホッパー16、16’には、それぞれ、下流の気相反応器Bの流動床22中にポリマー粒子を交互に移送する移送パイプ21、21’に接続されている底部排出バルブ20、20’が与えられている。
【0080】
特に、ポリマーを重力によって低圧分離室13からロックホッパー16、16’中に下降させ、充填工程中においては、それぞれのロックホッパーの内部の圧力を分離室13内に存在するものと同等の値(即ち1.6bar)に低下させた。他方、それぞれのロックホッパー16又は16’からポリマーを排出し、下流の気相反応器Bに送る際には、それぞれのロックホッパーは気相反応器Bの再循環ラインR内の圧縮機の下流に存在する圧によって加圧した。
【0081】
気相重合:
表1に示す運転条件にしたがって、流動床反応器B内でエチレン/ブテン−1コポリマーを製造した。反応器B内での気相重合は、79℃の温度及び18barの圧力において行った。
【0082】
反応器B内でラバー状のエチレン/ブテン−1コポリマーが得られ、上記の逐次重合から誘導されるヘテロ相コポリマーを流動床反応器Bから連続的に排出した。
本発明の一連の運転工程の結果として、上流のスラリー反応器内で反応するオレフィンモノマー(即ちプロピレン)は無視しうる量しか下流の気相反応器Bに送られず、このため、流動床反応器B内で反応するオレフィンモノマーはエチレン及びブテン−1であった。
【0083】
表2に、製造されたヘテロ相コポリマーの幾つかの構造特性(MIL、XS、結合C、結合C)を示す。
実施例2:
本発明方法を用いて、半結晶性ポリプロピレン及びラバー状エチレン/ブテン−1コポリマーを含むヘテロ相コポリマーを製造した。
【0084】
実施例1と同じチーグラー・ナッタ触媒系を用いた。固体触媒成分を予備接触容器に供給した。TEAL/固体触媒の重量比は17であり、TEAL/DCPMSの重量比は3であった。上記の成分を10℃の温度において22分間予備接触させた。
【0085】
スラリー重合:
活性化容器から排出される活性化触媒をスラリーループ反応器に連続的に供給して、半結晶性ポリプロピレンを製造した。
【0086】
図1に示す態様にしたがって、ループ反応器A内において、分子量調整剤としてHを用いて液体プロピレンを重合した。この反応器にはコモノマーは供給せず、70℃の温度及び43barの圧力においてプロピレンの重合を行った。
【0087】
ポリプロピレンスラリーがループ反応器Aから排出され、これを蒸気ジャケットパイプ5に移送した。パイプ5を通って流れるポリマースラリーを加熱にかけて85℃の温度に到達させ、その結果として液体モノマーを蒸発させた。
【0088】
パイプ5の出口において得られる固体ポリマー及び蒸発プロピレンの流れを高圧分離室6に送り、ここで蒸発プロピレンをポリマー粒子から分離した。上記の流れを接線方向で導入することにより、遠心効果による気/固分離が確保された。
【0089】
高圧分離室6を20barの圧力で運転し、固体ポリマーの粒子を重力によって室の底部に向かって下降させ、一方、気体状プロピレンを分離室6の上部のバッグフィルター7を通って引き続きループ反応器Aに再循環した。
【0090】
ポリプロピレン粒子を分離室6の底部から排出し、1.9barの圧力で運転する低圧分離室13に移送した。固体ポリマーの粒子を重力によって分離室13の底部に向かって下降させ、これによりポリマー粒子からの気体状プロピレンの更なる除去を行った。
【0091】
次に、脱気されたポリプロピレン粒子を、低圧分離室13の下方で、下流の流動床反応器Bのポリマー床22の上方に配置されている1対のロックホッパー16、16’に移送した。
【0092】
2つのロックホッパー16、16’を、図1の記載に関連して説明した運転工程にしたがって並行に断続的に運転した。特に、ポリマーを重力によって低圧分離室13からロックホッパー16又は16’の中に下降させ、充填工程中においては、それぞれのロックホッパーの内部の圧力を分離室13内に存在するものと同等の値(即ち1.9bar)に低下させた。他方、それぞれのロックホッパー16又は16’からポリマーを排出し、下流の気相反応器Bに送る際には、それぞれのロックホッパーは気相反応器Bの再循環ラインR内の圧縮機の下流に存在する圧によって加圧した。
【0093】
気相重合:
表1に示す運転条件にしたがって、流動床反応器B内でエチレン/ブテン−1コポリマーを製造した。反応器B内での気相重合は、79℃の温度及び16.4barの圧力において行った。
【0094】
反応器B内でラバー状のエチレン/ブテン−1コポリマーが得られ、上記の逐次重合から誘導されるヘテロ相コポリマーを流動床反応器Bから連続的に排出した。
本発明の一連の運転工程の結果として、上流のスラリー反応器内で反応するオレフィンモノマー(即ちプロピレン)は無視しうる量しか下流の気相反応器Bに送られず、このため、流動床反応器B内で反応するオレフィンモノマーはエチレン及びブテン−1であった。
【0095】
表2に、製造されたヘテロ相コポリマーの幾つかの構造特性(MIL、XS、結合C、結合C)を示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の上流のスラリー反応器及び下流の気相反応器内でのオレフィンの多段階重合方法であって、上流の反応器から下流の反応器へのポリマーの移送において、
(a)上流の反応器から排出されるポリオレフィンのスラリーを加熱して液体重合媒体を蒸発させ;
(b)少なくとも1つの分離室内において蒸発相からポリオレフィン粒子を分離し;
(c)並行して断続的に運転される1対のロックホッパーを用いてポリオレフィン粒子を下流の反応器に移送し、ここでロックホッパーの1つには分離室から得られるポリマーを連続的に充填し、一方同時に、他の1つは下流の反応器から得られる加圧ガスによって連続的に加圧する;
工程を含む上記方法。
【請求項2】
液体重合媒体が、1種類以上のオレフィンモノマー、分子量調整剤として水素、及び場合によっては不活性炭化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上流の重合反応器がループ反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
下流の気相反応器が、流動床反応器、撹拌床反応器、及び2つの別個の相互接続重合区域を有する重合反応器から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)を蒸気ジャケットパイプ内で80〜100℃の範囲の温度において行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)の分離室がバッグフィルターを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)を高圧分離室及び低圧分離室内で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
高圧分離室を10〜28barの範囲の圧力で運転する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
低圧分離室を1.1bar〜4.0barの範囲の圧力で運転する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)のロックホッパーを、
(1)ホッパーを下流の反応器から隔離して保持しながら、工程(b)から得られるポリマーを装填し;
(2)ホッパーを工程(b)の分離室から隔離して保持しながら、下流の反応器からの反応混合物を含むガスによって加圧する;
一連の運転で連続的に運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
加圧(2)中に、ポリマーをロックホッパーから排出して下流の反応器に移送する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ロックホッパーの1つが工程(1)に関与する際には、他の1つは工程(2)に関与する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)の加圧ガスは、下流の反応器の再循環ラインの圧縮機の下流で熱交換器の上流の点から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上流のスラリー反応器、下流の気相反応器、及びポリマーを上流の反応器から下流の反応器へ移送する移送装置を有し、下流の気相反応器は反応器を通して流動化ガスを連続的に再循環する外部再循環ラインRを有し、移送装置は、
−上流の反応器から排出されるポリオレフィンスラリーを加熱するための気化器;
−蒸発相からポリオレフィン粒子を分離するための少なくとも1つの分離室;
−下流の反応器の再循環ラインRに直接接続され、かつ下流の反応器の重合区域と接続されている、並行配列に配置されている1対のロックホッパー;
を有する重合装置。
【請求項15】
気化器が蒸気ジャケットパイプである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
高圧分離室及び低圧分離室を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
1対のロックホッパーが少なくとも1つの分離室の下方で下流の反応器のポリマー床の上方に配置される、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
ロックホッパーが、ポリマー粒子を下流の反応器のポリマー床中に交互に移送する2つの移送パイプと接続されている底部排出バルブを備える、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
2つの移送パイプが垂直線に対して15°〜30°の範囲の角度で傾斜している、請求項18に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−539307(P2010−539307A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525294(P2010−525294)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061234
【国際公開番号】WO2009/037080
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】