説明

オレフィン多量化用触媒およびエチレン多量体の製造方法

【課題】優れたエチレン多量化活性を有するオレフィン多量化用触媒、および該触媒を用いる1−ヘキセンもしくは1−オクテンの製造方法を提供すること。
【解決手段】[A]一般式(I)で表される遷移金属錯体化合物と、必要に応じて[B](b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物および、(b−3)[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン多量化用触媒並びに、該触媒を用いたエチレンの多量化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン多量化用触媒およびエチレン多量体の製造方法に関し、詳しくは遷移金属錯体化合物を含むオレフィン多量化用触媒および、オレフィン多量化用触媒の存在下でエチレンを多量化し、1−ヘキセンもしくは1−オクテンを製造する方法に関する

【背景技術】
【0002】
工業化されているオレフィンの多量化の大部分は有機アルミニウムや遷移金属化合物を触媒として実施され、特にエチレンの多量化ではα−オレフィン類の混合物が得られる。1−ヘキセンおよび1−オクテンはα−オレフィン類の中でも、ポリオレフィン原料として需要が特に大きく、1−ヘキセンおよび1−オクテンの選択性の高い製造法が望まれているが、そのような選択的製造法として工業化されているのはクロム化合物を用いるエチレン三量化方法のみである(例えば、特許文献1参照)。この場合、100バールのエチレン圧力条件下において1時間・1ミリモルのクロム原子当たり約8kgの1−ヘキセンが得られるが、製造に関わる圧力や触媒の費用を低減させるためにはより低圧力で活性が高い方が好ましい。また、クロム化合物以外の遷移金属化合物を用いるエチレン三量化によって1−ヘキセンを製造する技術の例は非常に少ない(例えば、特許文献2、3、非特
許文献1、2参照)。また、エチレンの四量化によって1−オクテンを得る技術はクロム
化合物を用いた技術が知られているが、工業化には至っていない(例えば、非特許文献3
参照)。
【特許文献1】米国特許第5856257号明細書
【特許文献2】特表2004−524959号公報
【特許文献3】国際公開第01/68572号パンフレット
【非特許文献1】Journal of American Chemical Society誌2001年123巻7423−7424頁
【非特許文献2】Journal of Organometallic Chemistry誌2004年689巻3641−3668頁
【非特許文献3】Journal of American Chemical Society誌2004年126巻14712−14713頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、優れた活性を有するオレフィン多量化触媒を提供することと、該オレフィン多量化触媒存在下での、高い選択率を有するエチレン三量化による1−ヘキセンの製造方法や、エチレン四量化による1−オクテンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する遷移金属錯体化合物を含むオレフィン多量化用触媒が優れた活性を有し、該触媒の存在下でエチレンを原料として多量化反応を行うと、1−ヘキセンもしくは1−オクテンを生成する選択率が高く、1−ヘキセンもしくは1−オクテンの製造に好適であることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[5]に関する。
[1]
[A]下記一般式(I)で表される遷移金属錯体化合物を含むオレフィン多量化用触媒

【0006】
【化2】

【0007】
(一般式(I)中、R1〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結していてもよい。また、R1はZと連結していてもよく、またR5はZと連結していてもよい。
Mは、周期律表第4族の遷移金属原子を示す。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、Xで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される基は互いに結合して環を形成してもよい。
Yは、酸素原子、窒素原子、リン原子または硫黄原子を示す。
Zは、置換基を有していてもよい炭化水素基またはヘテロ環式化合物残基を示す。
式中、YとZとを結ぶ結合は二重結合もしくは三重結合であってもよく、YとR1とを結
ぶ結合は二重結合もしくは三重結合であってもよい。
また式中、点線表示は配位結合を示す。)
[2]
[A]一般式(I)で表わされる遷移金属錯体化合物のYと、Mに配位し、Zと隣接
するNとを結ぶ最短結合数が5または6である[1]に記載のオレフィン多量化用触媒。
【0008】
[3]
[A]一般式(I)で表わされる遷移金属錯体化合物ならびに、
【0009】
[B](b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(b−3)[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載のオレフィン多量化用触媒。
【0010】
[4]
[1]〜[3]のいずれかに記載のオレフィン多量化用触媒の存在下で、エチレンを三量化させる1−ヘキセンの製造方法。
【0011】
[5]
[1]〜[3]のいずれかに記載のオレフィン多量化用触媒の存在下で、エチレンを四量化させる1−オクテンの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高い活性を有するオレフィン多量化用触媒を提供することができる。さらに、本発明に係るエチレン多量化技術によれば、従来の触媒に比べて高活性でかつ選択的に1−ヘキセンもしくは1−オクテンを製造することができ、工業的に極めて価値がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のオレフィン多量化用触媒および、該オレフィン多量化用触媒を用いた1−ヘキセンもしくは1−オクテンの製造方法について具体的に説明する。
なお、本発明において、オレフィンの多量化とは、オレフィンを2〜10量体にすることである。
【0014】
本発明のオレフィン多量化用触媒は、[A]前記一般式(I)で表される遷移金属錯体化合物を含んでいる。また、オレフィン多量化用触媒は通常、[B](b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(b−3)[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいる。
【0015】
なお、(b−3)[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物を「イオン化イオン性化合物」とも記す。
[[A]遷移金属錯体化合物]
本発明のオレフィン多量化触媒に含まれる[A]遷移金属錯体化合物は、下記一般式(I)で表わされる遷移金属錯体化合物である。
【0016】
【化3】

【0017】
上記一般式(I)中、R1〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結していてもよい。また
、R1はZと連結していてもよく、またR5はZと連結していてもよい。
【0018】
より具体的には、R1〜R5が水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、イミド基、アミノ基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基
、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、アルミニウム含有基またはヒドロキシ基であることが好ましい。
【0019】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基として具体的には、メチル、エチル、n−ブロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10、最も好ましくは2〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基; ビニル、アリル (allyl)、
イソプロペニルなどの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基; エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基; シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基; シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニルなどの炭素原子数5〜30の環状不飽和炭化水素基; フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール(aryl)基; トリル、イソプロピルフェニル、t−ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ−t−ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基; ベンジリ
デン、メチリデン、エチリデンなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは5〜10のアルキリデン基などが挙げられる。
【0020】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0021】
また、上記炭化水素基は、水素原子が他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえばベンジル、クミル、ジフェニルエチル、トリチルなどのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0022】
さらに、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基; アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基; アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基; ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基; メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチオシアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基; ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0023】
これらのうち、特に、メチル、エチル、n−ブロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10、より好まし
くは2〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基; フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基; これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基等が好ましい。
【0024】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0025】
酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記炭化水素基に含まれていてもよい置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
ホウ素含有基としては、上記炭化水素基に含まれていてもよい置換基として例示したものと同様のもののほか、アルキル基置換ホウ素、アリール基置換ホウ素、ハロゲン化ホウ素、アルキル基置換ハロゲン化ホウ素等の基が挙げられる。アルキル基置換ホウ素としては、(Et)2B−、(iPr)2B−、(iBu)2B−、(Et)3B、(iPr)3
、(iBu)3B; アリール基置換ホウ素としては、(C652B−、(C653
、(C653B、(3,5−(CF32633B; ハロゲン化ホウ素としては、BCl2−、BCl3; アルキル基置換ハロゲン化ホウ素としては、(Et)BCl−、(iBu)BCl−、(C652BClなどが挙げられる。このうち三置換のホウ素につ
いては、配位結合した状態であることがある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0026】
アルミニウム含有基としては、アルキル基置換アルミニウム、アリール基置換アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、アルキル基置換ハロゲン化アルミニウム等の基が挙げられる。アルキル基置換アルミニウムとしては、(Et)2Al−、(iPr)2Al−、(iBu)2Al−、(Et)3Al、(iPr)3Al、(iBu)3Al; アリール基置換アルミニウムとしては、(C652Al−; ハロゲン化アルミニウムとしては、A
lCl2−、AlCl3; アルキル基置換ハロゲン化アルミニウムとしては、(Et)AlCl−、(iBu)AlCl−などが挙げられる。このうち三置換のアルミニウムについては、配位結合した状態であることがある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。
【0027】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基などが挙げられる。このうち炭化水素置換シリル基として具体的には、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルなどが挙げられる。
これらの中では、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、トリフェニルシリルなどが好ましい。特にトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリルが好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシなどが挙げられる。
【0028】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
窒素含有基のうち、アミド基としては、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−
メチルベンズアミドなどが、アミノ基としては、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジフェニルアミノなどが、イミド基としては、アセトイミド、ベンズイミドなどが、イミノ基としては、メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノなどが好ましく例示される。
【0029】
イオウ含有基のうち、アルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ等が、アリールチオ基としては、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、ナフチルチオ等が、チオエステル基としては、アセチルチオ、ベンゾイルチオ、メチルチオカルボニル、フェニルチオカルボニルなどが、スルホンエステル基としては、スルホン酸メチル、スルホン酸エチル、スルホン酸フェニルなどが、スルホンアミド基としては、フェニルスルホンアミド、N−メチルスルホンアミド、N−メチル−p−トルエンスルホンアミドなどが好ましく挙げられる。
【0030】
1〜R5は、これらのうち2個以上が互いに連結していてもよい。好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0031】
また、R1はZと連結していてもよく、またR5はZと連結していてもよい。R1やR5がZと連結する場合には、R1やR5とZとの連結によって、芳香環、脂肪環、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成してもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0032】
前記一般式(I)において、Mは周期律表第4族の遷移金属原子を示し、好ましくは
、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムであり、より好ましくはチタンである。
【0033】
前記一般式(I)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基
、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。なお、Xで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0034】
ここで、ハロゲン原子としては通常、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
炭化水素基としては、前記一般式(I)のR1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0035】
具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシルなどのアルキル基; シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基; ビニル、プロペニル、シクロヘキセニルなどのアルケニル基; ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどのアリールアルキル基; フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、ナフチル、メチルナフチル、アントリル、フェナントリルなどのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜30の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲン置換した基も含まれる。これらのうち、炭素原子数が1〜20のものが好ましい。
【0036】
また、ヘテロ環式化合物残基としては、前記一般式(I)のR1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられる。
酸素含有基としては、前記一般式(I)のR1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基; メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどの
アルコシキ基; フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリーロキシ基; フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基; アセトキシ基; カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
イオウ含有基としては、前記一般式(I)のR1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p−トルエンスルフォネート、トリメチルベンゼンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p−クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基; メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p−トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基; アルキルチオ基; アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
窒素含有基として具体的には、前記一般式(I)のR1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基; メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基; フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
ホウ素含有基として具体的にはテトラフェニルボレート以外のBR4(Rは水素、アル
キル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン基; トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン基; メチルホスファイト、エチルホスファイト、フェニルホスファイトなどのホスファイト基(ホスフィド基); ホスホン酸基; ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
ケイ素含有基として具体的には、前記一般式(I)のR1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどの炭化水素置換シリル基; トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルエーテル基; トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基; トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0041】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記一般式(I)のR1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
【0042】
スズ含有基としては、前記一般式(I)のR1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、Sb
Cl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有
してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるも
のではない。
【0044】
これらの中では、ハロゲン原子、アルキル基が好ましく、さらには塩素、臭素、メチル基が好ましい。
前記一般式(I)中、Yは酸素原子、窒素原子、リン原子または硫黄原子を表し、エーテル構造、ケトン構造、アミン構造、イミン構造等を構成する原子である。
【0045】
前記一般式(I)中、Zは置換基を有していてもよい炭化水素基またはヘテロ環式化合物残基を示す。
前記一般式(I)中、Yと、Mに配位し、Zと隣接するNとの距離が、Yが金属原子Mに配位するのに適切であることにより、[A]遷移金属錯体化合物を含むオレフィン多量化触媒は、1−ヘキセンや1−オクテンを高い選択性で製造することができる。YとNとを結ぶ最短結合数が5または6であることが、1−ヘキセンや1−オクテンをより高い選択性で製造することができるため好ましい。
【0046】
なお、Yと、Mに配位し、Zと隣接するNとを結ぶ最短結合数とは、下記(A)、(B)のようにして数えることができ、(A)の場合には4であり、(B)の場合には5である。
【0047】
【化4】

【0048】
Zは、Mに配位し、Zと隣接するNと前記Yとを結ぶ基であり、具体例としては化5〜10に示す構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、化5〜10の構造の中で水素原子がR1〜R6で例示した置換基によって置換されていてもよい。
【0049】
なお、下記具体例において、炭素炭素二重結合に接合する波線は、シス体またはトランス体を意味する。
【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
前記一般式(I)中、YとZとを結ぶ結合は二重結合もしくは三重結合であってもよく、YとR1とを結ぶ結合は二重結合もしくは三重結合であってもよい。
また一般式(I)中、点線表示は配位結合を示す。一般式(I)の具体的な構造を以下に挙
げる。
【0057】
【化11】

【0058】
[A]前記一般式(I)で表される遷移金属錯体化合物の合成は、例えばJournal of Organometallic Chemistry誌2003年678巻134〜141頁に記載の方法に準拠して行うことができる。
【0059】
上記文献に記載の方法で得られた反応生成物は反応後、精製操作を行うことなく混合物のままオレフィン多量化触媒として用いることもできるが、再結晶などの精製操作により精製してから用いることが好ましい。
【0060】
本発明のオレフィン多量化触媒は通常上記[A]遷移金属錯体化合物に加えて、[B](b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(b−3)
[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいる。
【0061】
以下、(b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(b−3)[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物について説明する。
【0062】
[(b−1)有機金属化合物]
本発明で必要に応じて用いられる(b−1)有機金属化合物として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物を挙げることができ、例えば以下に説明する(b−1a)、(b−1b)、(b−1c)等が挙げられる。なお、本発明においては、[B]の(b−1)有機金属化合物には後述する(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物は含まれないものとする。
【0063】
(b−1a)一般式RamAl(ORbnpq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物。
【0064】
(b−1b)一般式M2AlRa4(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素
原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0065】
(b−1c)一般式Rab3(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていて
もよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、Zn
またはCdである)で表される周期律表第2族または12族金属のジアルキル化合物。
【0066】
前記の(b−1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物を例示できる。一般式RamAl(ORb3-m(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは、好ましくは1.5≦m≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、一般式RamAlX3-m(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、一般式RamAlH3-m(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3である)で表される有機アルミニウム化合物、一般式RamAl(ORbnq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なって
いてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<33、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物。
【0067】
(b−1a)に属する有機アルミニウム化合物として、より具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(n−ブチル)アルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリ(n−アルキル)アルミニウム; トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ(sec−ブチル)アルミニウム、トリ(tert−ブチル)アルミニウム、トリ(2−メチルブチル)アルミニウム、トリ(3−メチルブチル)アルミニウム、トリ(2−メチルペンチル)アルミニウム、トリ(3−メチルペンチル)アルミニウム、トリ(4−メチルペンチル)アルミニウム、トリ(2−メチルヘキシル)アルミニウム、トリ(3−メチルヘキシル)アルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム; トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム; ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド; (iC49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。iC49はイソブチル基を表す。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド; ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド; エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド; Ra2.5Al(ORb0.5(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム; ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド; ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム; ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド; エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム; エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチル アルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化された
アルキルアルミニウムなどが挙げられる。
【0068】
また(b−1a)に類似する化合物も使用することができ、たとえば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物も挙げられる。このような化合物として、具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などが挙げられる。
【0069】
前記(b−1b)に属する化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などが挙げられる。
また、前記(b−1c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム等が挙げられる。
【0070】
上記(b−1a)〜(b−1c)以外の(b−1)有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0071】
また多量化反応系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウ
ムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを使用することもできる。
【0072】
(b−1)有機金属化合物のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。上記のような(b−1)有機金属化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
[(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物]
本発明で必要に応じて用いられる(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0073】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法 。(2)ベンゼン、トルエン、エチルエ
ーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0074】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0075】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(b−1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0076】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0077】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらに、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0078】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわちベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。
【0079】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物の例としては、下記一般式(i)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げられる。
【0080】
【化12】

【0081】
式中、R6は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。R7は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
前記一般式(i)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(ii)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0082】
6−B(OH)2 (ii)
(式中、R6は上記と同じ基を示す)
前記一般式(ii)で表されるアルキルボロン酸の具体的なものとしては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n−ブロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸等が挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。
【0083】
これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(b−1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物が挙げられる。これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0084】
上記のような(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
[(b−3)イオン化イオン性化合物]
本発明で必要に応じて用いられる、(b−3)[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物は、[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物である。従って、少なくとも[A]遷移金属錯体化合物と接触させてイオン対を形成するものは、この化合物に含まれる。
【0085】
このような化合物としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号 公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−
207703号公報、特開平3−307704号公報、米国特許5321106号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などが挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物もあげることができる。
【0086】
具体的には、ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチ
ル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である)で示される化合物が挙げられ、たとえば、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオ
ロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0087】
イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(III)で表される化合物が挙げら
れる
【0088】
【化13】

【0089】
式中、R8+としては、H+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニ
ウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
【0090】
9〜R12は、互いに同一でも異なっていてもよい有機基、好ましくはアリール基また
は置換アリール基である。
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0091】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n−プロピル)アンモニウムカチオン、トリ(n−ブ
チル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウム カチオン; N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン; ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0092】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0093】
8+としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0094】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリ ニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩なども挙げ
られる。
【0095】
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−プロピル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(
p−トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トリ(n−
ブチル )アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−プロピル)アンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p
−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ボレートなどが挙げられる。
【0096】
N,N−ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0097】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(n−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
【0098】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロ
フェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカ
ルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタ フェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(IV)または(V)で表されるホウ
素化合物なども挙げられる。
【0099】
【化14】

【0100】
【化15】

【0101】
ボラン化合物として具体的には、たとえばデカボラン(14); ビス〔トリ(n−ブ
チル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレー
ト、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウ ム〕デカクロロデ
カボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩; トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレー
ト)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙
げられる。
【0102】
カルボラン化合物として具体的には、たとえば、4−カルバノナボラン(14)、1,3−ジカルバノナボラン(13)、6,9−ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン(13)、2,7−ジカルバウンデカボラン (13)、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウン
デカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム1カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n
−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニ
ウム6−カルバデカボレート(14)、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート(12)、トリ(n−ブチル)アンモニウム7カルバウンデカボレート(13)、トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n−ブ
チル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n−ブチル)アン
モニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(
n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデ
カボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−
ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボ
レートなどのアニオンの塩; トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−
1,3−ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウ
ムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカ
ボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル )アンモニウムビス(ウンデカハイ
ドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)銅酸
塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジ
カルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)
、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−
ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(I
II)、トリス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔ト
リ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレー
ト)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイ
ドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランア
ニオンの塩などが挙げられる。
【0103】
ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素もしくは錫からなる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子からなっている。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジンン酸、ゲルマノタングストバナジンン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、これらの酸の塩、例えば周期律表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、およびトリフェニルエチル塩等の有機塩、およびイソポリ化合物を使用できるが、この限りではない。
【0104】
ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物としては、上記の化合物の中の1種に限らず、2種以上用いることができる。
上記のような (b−3)イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み
合わせて用いられる。
【0105】
本発明のオレフィン多量化触媒を用いれば高い活性でオレフィン多量体が得られ、特にオレフィンとしてエチレンを用いた場合には、1−ヘキセンもしくは1−オクテンの選択性が高い。
【0106】
例えば助触媒成分としてメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)を併用すると、エチレンに対して非常に高い三量化活性もしくは四量化活性を示し、1−ヘキセンもしくは1−オクテンを製造することができる。また助触媒成分としてトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのイオン化イオン性化合物(b−3)を用いても、良好な活性かつ非常に高い選択率でエチレンから1−ヘキセンもしくは1−オクテンが得られる。
【0107】
また、本発明に係るオレフィン多量化用触媒は、[A]遷移金属錯体化合物を含み、必要に応じて[B](b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(b−3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、さらに必要に応じて後述するような[C]担体を含んでいてもよい。
【0108】
[[C]担体]
本発明で必要に応じて用いられる[C]担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0109】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B2
3、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23、SiO2−TiO2−MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl23を主成分とするも
のが好ましい。
【0110】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na
2SO4、Al2(SO43、BaSO4、KNO3、Mg(NO32、Al(NO33、N
2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差
し支えない。
【0111】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmであって
、比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり
、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は
、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0112】
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0113】
本発明で担体として用いられる粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、本発明で担体として用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0114】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0115】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO42・H2O、α−Zr(KPO42・3H2O、α−Ti(HPO42、α−Ti(HAsO42・H2O、α−Sn(HPO42・H2O、γ−Zr(HPO42、γ−Ti(HPO42、γ−Ti(NH4PO42・H2Oなどの多価金属の 結晶性酸性塩な
どが挙げられる。
【0116】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20オングストローム以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3〜5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜3×104オングストロームの範囲について測定され
る。半径20オングストローム以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い二量化活性が得られにくい傾向がある。
【0117】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層
間距離を変えることができる。
【0118】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。
【0119】
これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR
3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解して得た二量化物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また
、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0120】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)二量化体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)二量化体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0122】
本発明に係るオレフィン多量化用触媒は、前記[A]遷移金属錯体化合物を含み、必要に応じて前記[B](b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物および、(b−3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、必要に応じて担体[C]をさらに含むが、さらに必要に応じて後述するような[D]有機化合物成分を含むこともできる。
【0123】
[[D]有機化合物成分]
本発明において、[D]有機化合物成分は、必要に応じて、多量化性能を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類 、フェノール性化合物
、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0124】
アルコール類およびフェノール性化合物としては、通常、R13−OHで表されるものが使用され(ここで、R13は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50の
ハロゲン化炭化水素基を示す)、アルコール類としては、R13がハロゲン化炭化水素の
ものが好ましい。
【0125】
また、フェノール性化合物としては、水酸基のα,α’−位が炭素原子数1〜20の炭
化水素で置換されたものが好ましい。
カルボン酸としては、通常、R14−COOHで表されるものが使用される。R14は炭素原子数1〜50の炭化水素基または炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基を示し、特に炭素原子数1〜50のハロゲン化炭化水素基が好ましい。
【0126】
リン化合物としては、P−O−H結合を有するリン酸類、P−OR、P=O結合を有するホスフェート、ホスフィンオキシド化合物が好ましく使用される。
【0127】
スルホン酸塩としては、下記一般式(VI)で表されるものが使用される。
【0128】
【化16】

【0129】
式(VI)中、M4は周期律表第1〜14族の元素である。R15は水素、炭素原子数1
〜20の炭化水素基または炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基である。mは1〜7の整数であり、nはMの価数であり、1≦n≦7で
ある。
【0130】
本発明のオレフィン多量化触媒は、オレフィンの多量化に用いることができるが、特にエチレンの多量化を好適に行うことができる。以下、オレフィンの多量化方法について、エチレンを例として説明する。
【0131】
[エチレンの多量化方法]
エチレン多量化方法について説明する。
本発明に係るエチレン多量化方法は、上記の触媒の存在下にエチレンを多量化、好ましくは三量化もしくは四量化させることからなる。
【0132】
なお、エチレンの三量化法とは、エチレンから1−ヘキセンを製造する方法であり、エチレンの四量化法とは、エチレンから1−オクテンを製造する方法である。
多量化の際、上記成分[A]を反応器に添加する方法、各成分の使用法、添加方法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
【0133】
(1)成分[A]のみを反応器に添加する方法。
(2)成分[A]と、(b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(b−3)イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の成分[B](以下単に「成分[B]」という)とを任意の順序で反応器に添加する方法。
【0134】
(3)成分[A]と成分[B]とを予め接触させた触媒を反応器に添加する方法。
(4)成分[A]と成分[B]を予め接触させた触媒成分、および成分[B]を任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、成分[B]は、同一でも異なっていてもよい。
【0135】
(5)成分[A]を担体[C]に担持した触媒成分のみを反応器に添加する方法。
(6)成分[A]を担体[C]に担持した触媒成分、および成分[B]を任意の順序で反応器に添加する方法。
【0136】
(7)成分[A]と成分[B]とを担体[C]に担持した触媒を反応器に添加する方法。
(8)成分[A]と成分[B]とを担体[C]に担持した触媒成分、および成分[B]を任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、成分[B]は、同一でも異なっていてもよい。
【0137】
(9)成分[B]を担体[C]に担持した触媒成分、および成分[A]を任意の順序で反応器に添加する方法。
(10)成分[B]を担体[C]に担持した触媒成分、成分[A]、および成分[B]を任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、成分[B]は、同一でも異なっていてもよい。
【0138】
(11)成分[A]を担体[C]に担持した成分、および成分[B]を担体[C]に担持した成分を任意の順序で反応器に添加する方法。
(12)成分[A]を担体[C]に担持した成分、成分[B]を担体[C]に担持した成分、および成分[B]を任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、成分[B]は、同一でも異なっていてもよい。
【0139】
(13)成分[A]および成分[D]を任意の順序で反応器に添加する方法。
(14)成分[A]、成分[B]、および有機化合物成分[D]を任意の順序で反応器に添加する方法。
【0140】
(15)成分[B]と成分[D]をあらかじめ接触させた成分、および成分[A]を任意の順序で反応器に添加する方法。
(16)成分[D]を担体[C]に担持した成分、および成分[A]を任意の順序で反応器に添加する方法。
【0141】
(17)成分[B]と成分[D]を担体[C]に担持した成分、および成分[A]を任意の順序で反応器に添加する方法。
(18)成分[A]と成分[B]を予め接触させた触媒成分、および成分[D]を任意の順序 で反応器に添加する方法。
【0142】
(19)成分[A]と成分[B]を予め接触させた触媒成分、および成分[B]、成分[D]を任意の順序で反応器に添加する方法。
(20)成分[A]と成分[B]を予め接触させた触媒成分、および成分[B]と成分[D]をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で反応器に添加する方法。
【0143】
(21)成分[A]を担体[C]に担持した成分、成分[B]および、成分[D]を任意の順序で反応器に添加する方法。
(22)成分[A]を担体[C]に担持した成分と成分[D]を任意の順序で反応器に添加する方法。
【0144】
(23)成分[A]を担体[C]に担持した成分、および成分[B]と成分[D]をあらかじめ接触させた成分を任意の順序で反応器に添加する方法。
(24)成分[A]と[D]を予め接触させた触媒成分を反応器に添加する方法。
【0145】
(25)成分[A]と成分[B]と成分[D]を予め任意の順序で接触させた触媒成分を反応器に添加する方法。
(26)成分[A]と成分[B]と成分[D]を予め接触させた触媒成分および、成分
[B]を任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、成分[B]は、同一でも異なっていてもよい。
【0146】
(27)成分[A]と成分[D]を担体[C]に担持した触媒を反応器に添加する方法。
(28)成分[A]と成分[B]と成分[D]を担体[C]に担持した触媒を反応器に添加する方法。
【0147】
(29)成分[A]と成分[B]と成分[D]を担体[C]に担持した触媒成分および、成分[B]を任意の順序で反応器に添加する方法。この場合、成分[B]は、同一でも異なっていてもよい。
【0148】
本発明に係る1−ヘキセンもしくは1-オクテンの製造方法では、上記のようなオレフ
ィン多量化用触媒の存在下に、エチレンを多量化することにより1−ヘキセンもしくは1-オクテンを得る。本発明では、多量化は溶解反応、懸濁反応などの液相反応法または気
相反応法のいずれにおいても実施できる。
【0149】
液相三量化法もしくは四量化法においては、不活性炭化水素媒体を用いるが、用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素; シクロペンタン、シクロへキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素; ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素; エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができる。
【0150】
上記のようなオレフィン多量化用触媒を用いて、1−ヘキセンもしくは1−オクテンの製造を行うに際して、成分[A]は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2
ル、好ましくは10-10〜10-3モルとなるような量で用いられる。本発明では、成分[
A]を、比較的薄い濃度で用いた場合であっても、高い多量化活性でエチレンを三量化もしくは四量化することができる。
【0151】
また、成分[B]を用いる場合、成分(b−1)は、成分(b−1)と、成分[A]中の遷移金属錯体原子(M)とのモル比〔(b−1)/M〕が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。
【0152】
成分(b−2)は、成分(b−2)中のアルミニウム原子と、成分[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(b−2)/M〕が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。
【0153】
成分(b−3)は、成分(b−3)と、成分[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(b−3)/M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
成分[C]は、成分[A]中の遷移金属原子(M)のモル当たりに対する成分[C]の比(g/mmol)が通常100〜10000、好ましくは1000〜5000となるよう
な量で用いられる。
【0154】
成分[D]は、成分[B]に対して、成分(b−1)の場合、モル比〔(D)/(b−1)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(b−2)の場合、成分[D]と成分(b−2)中のアルミニウム原子とのモル比〔(D)/(b−2)〕が通常0.001〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で、成分(b−3)の場合、モル比〔(D)/(b−3)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いられる。
【0155】
また、このようなオレフィン多量化用触媒を用いたエチレンの多量化温度は、通常、−50〜200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。反応圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは常圧〜50kg/cm2の条件であり、多量化反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
【0156】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0157】
なお、反応生成物の収量および1−ヘキセン、1−オクテンの選択率は、ガスクロマトグラフィー(島津GC−14A、J&W Scientific DB−5カラム)を用いて分析した。
【0158】
[触媒活性]
単位時間当たりに得られた反応生成物の質量を、重合に使用した遷移金属触媒成分中の遷移金属原子量(ミリモル)で除して求めた。
【0159】
[1−ヘキセンもしくは1−オクテンの選択率]
以下の式に従い1−ヘキセンもしくは1-オクテンの選択率を求めた。
S(%)=Wp/Wr×100
S(%):1−ヘキセンもしくは1-オクテンの選択率(重量分率)
Wr(重量):反応により生成した炭素原子数が4以上からなる生成物の合計重量
Wp(重量):反応により生成した1−ヘキセンもしくは1−オクテンの重量
以下に本発明に係る遷移金属化合物の具体的な合成例を示すとともに、エチレン多量化の具体的な実施例および比較例を示す。
【0160】
[合成例1]
(化合物1の合成)
【0161】
【化17】

【0162】
充分に乾燥した200mL二口ナスフラスコ(コンデンサー、三方コック付、磁気攪拌子入り)に2−methoxyphenylboronic acidを3.44g(20mmol)、2−bromobenzenamineを3.19g(21mmol)、塩化パラジウムを0.355g(2.0mmol)、トリフェニルフォスフィンを1.05g(4.0mmol)、炭酸カリウム(30mmol)加え、トルエン50mLに縣濁
させ、100℃で9.5時間反応させた。この反応液に水50mLを加え、トルエンで抽出後、有機層をMgSO4で乾燥させ濃縮し6.3gの粗生成物を得た。粗生成物をシリ
カゲルカラムクロマトグラフ(溶離液;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)を用いて精製することにより化合物1を1.76g(収率 44%、黄色固体)を得た。
【0163】
得られた生成物を分析した結果は以下のとおりであった。
1H NMR (δ, CDCl3): 7.38-6.98 (m, 6H, Ar-H), 6.85-6.75 (m, 2H, Ar-H), 3.80 (s, 3
H, CH3), 3.67 (br, 2H, NH2).
(化合物2の合成)
【0164】
【化18】

【0165】
充分に乾燥した100mLナスフラスコ(三方コック、磁気攪拌子入り)に化合物1を996mg(5.0mmol)、pyrrole−2−carboxaldehydeを475mg(5.0mmol)加えエタノール20mLに溶解させ、酢酸2mgを加えて室温で48時間反応させた。反応液から溶媒を減圧下で留去することにより化合物2を1.38g(収率 99%、オレンジ色粘性オイル)得た。
【0166】
得られた生成物を分析した結果は以下のとおりであった。
1H NMR (δ, CDCl3): 8.35 (s, 1H), 7.39-7.26 (m, 3H), 7.25-7.21 (m, 2H,), 7.05-6.95 (m, 2H), 6.89-6.83 (m, 2H), 6.60-6.58 (m, 1H), 6.24-6.22 (m, 1H), 3.60 (s, 3H). Pyrrole-NH is missing.
(化合物3の合成)
【0167】
【化19】

【0168】
充分に乾燥した50mL二口ナスフラスコ(三方コック付、磁気攪拌子入り)に水素化ナトリウム96mg(4.0mmol)とテトラヒドロフラン20mLを加え攪拌し、氷冷しながら化合物2のテトラヒドロフラン溶液8.0mL(0.5M、4.0mmol)を滴下し徐々に室温まで上昇させつつ1時間反応させた。この反応液にトリメチルシリルクロライドを1.0mL(8.0mmol)加え室温で2時間反応させた後、溶媒を留去し、ヘキサン20mLを加えた。これをグラスフィルターでろ過し溶媒を留去することにより黄色オイルを得た。
1H NMR (δ, CDCl3): 8.13 (s, 1H), 7.38-6.58, m, 10H), 6.41-6.38 (m, 1H), 3.51 (s, 3H), 0.13 (s, 9H).
このオイルをジクロロメタン10mLに溶解させ、充分に乾燥した50mL二口ナスフラスコ(三方コック付、磁気攪拌子入り)に四塩化チタンの1.0mol/Lジクロロメタン溶液を4.0mL(4.0mmol)、ジクロロメタン20mLを加えたものに−78℃にて滴下した。この反応液を徐々に室温まで昇温させつつ8時間反応させた後、約2mLまで濃縮し、ヘキサン20mLを加えることにより固体を析出させた。この固体をろ取し、ヘキサンで洗浄することにより化合物3を893mg(収率 52%、緑色固体)を得た。
【0169】
得られた生成物を分析した結果は以下のとおりであった。1H NMRスペクトルの測
定結果を図1に示す。
1H NMR (δ, CDCl3): 7.75-6.99 (m, 10H), 6.14-6.12 (m, 1H), 6.46-6.45 (m, 1H), 4.01 (s, 3H).
【実施例1】
【0170】
充分に窒素置換した内容積100mLのオートクレーブにトルエン28mLを入れ、続いて、メチルアルミノキサン(MAO,1Mトルエン溶液)をアルミニウム原子換算で1.0mmol加えた。引き続き、上記化合物3(0.001mmol)をトルエン1.0 mLとともに加え、エチレン(0.8MPa−G)で加圧して反応を開始した。同圧力でエチレンを供給しながら25−28℃で30分間反応させた後、少量のイソプロパノールを添加することにより反応を停止した。反応終了後、0.1規定塩酸水および純水で反応液を洗浄し、減圧下に液体窒素トラップを用いて低沸点成分(炭素原子数10以下)を高沸点成分およびポリエチレンから分離し、ガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った。生成物のうち1−ヘキセンの選択率は40%であった。ポリエチレンの選択率は60%であり、これらの生成物量合計から算出した触媒活性は0.17kg−生成物/(mmol−Ti・h)であった。
【0171】
[比較例1]
充分に窒素置換した内容積100mLのオートクレーブにトルエン28mLを入れ、続いて、メチルアルミノキサン(MAO,1Mトルエン溶液)をアルミニウム原子換算で1.0mmol加えた。引き続き、Organometallics誌2001年20巻4793−4799頁に記載の下記化合物4(1mMトルエン溶液)を0.001mmol加え、エチレン(0.8MPa−G)で加圧して反応を開始した。同圧力でエチレンを供給しながら25−35℃で10分間反応させた後、少量のイソプロパノールを添加することにより反応を停止した。反応終了後、0.1規定塩酸水および純水で反応液を洗浄し、減圧下に液体窒素トラップを用いて低沸点成分(炭素原子数10以下)をポリエチレンから分離し、ガスクロマトグラフィーを用いて分析を行った。生成物としてポリエチレンを2.03g得たが、1−ヘキセンは検出されなかった。
【0172】
【化20】

【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】化合物3の1H NMRスペクトルの測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記一般式(I)で表される遷移金属錯体化合物を含むオレフィン多量化用触媒。
【化1】

(一般式(I)中、R1〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結していてもよい。また、R1はZと連結していてもよく、またR5はZと連結していてもよい。
Mは、周期律表第4族の遷移金属原子を示す。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、Xで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される基は互いに結合して環を形成してもよい。
Yは、酸素原子、窒素原子、リン原子または硫黄原子を示す。
Zは、置換基を有していてもよい炭化水素基またはヘテロ環式化合物残基を示す。
式中、YとZとを結ぶ結合は二重結合もしくは三重結合であってもよく、YとR1とを結
ぶ結合は二重結合もしくは三重結合であってもよい。
また式中、点線表示は配位結合を示す。)
【請求項2】
[A]一般式(I)で表わされる遷移金属錯体化合物のYと、Mに配位し、Zと隣接
するNとを結ぶ最短結合数が、5または6である請求項1に記載のオレフィン多量化用触媒。
【請求項3】
[A]一般式(I)で表わされる遷移金属錯体化合物ならびに、
[B](b−1)有機金属化合物、(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(b−3)[A]遷移金属錯体化合物と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のオレフィン多量化用触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン多量化用触媒の存在下で、エチレンを三量化させる1−ヘキセンの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン多量化用触媒の存在下で、エチレンを四量化させる1−オクテンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−72665(P2009−72665A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242486(P2007−242486)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】