説明

オートクレーブ及び成形材の加熱硬化方法

【課題】成形材の加熱硬化成形時間の短縮及び不良品発生の抑制を図ることができる、オートクレーブ及び成形材の加熱硬化方法を提供する。
【解決手段】加熱対象となる成形材Wを、空洞15を内部に有する保持治具4で形状保持して高温ガスで加熱硬化させるオートクレーブ1において、当該成形材Wが内部に配置される圧力容器2と、高温ガスを圧力容器2内で成形材Wに供給する高温ガス供給手段5と、高温ガスを空洞15の内部に供給する高温ガス補助供給手段7とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、産業機械等の構成部品としての繊維強化プラスチック(FRP)の成形材を加圧下で加熱硬化成形するオートクレーブと、このオートクレーブを用いた成形材の加熱硬化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化プラスチック(FRP)からなる成形材の成形方法として、多数積層された薄板状を成す繊維強化プラスチックを、高圧化で加熱するオートクレーブ成形が知られている(例えば特許文献1参照)。このオートクレーブ成形は、高圧の高温ガスが内部を循環するオートクレーブによって行われる。
【0003】
このオートクレーブにおいては、外部から高圧・高温のガスが供給された圧力容器内に成形材を配置した状態で、圧力容器内の高圧・高温ガスを加熱循環させる。これにより、多数積層された薄板状を成す繊維強化プラスチックが加熱硬化、接着され、複合材を得ることができる。
なお、成形材の他の加熱成形方法としては、加圧作用のない硬化炉内にて成形する方法や、治具のみを加熱して成形材を硬化させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4109660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記オートクレーブにおいては、例えば航空機の主翼に用いられるようなベント型の大型ストリンガー部材の加熱硬化成形の際には、成形材の形状を保持するための保持治具が必要不可欠であった。そのため、圧力容器内の雰囲気温度が成形材に直接伝達し難くなり、成形材の加熱効率が悪くなる結果、硬化に時間を要していた。
さらに成形材が大型であることに加え、特殊な形状でもあるために加熱ムラが発生し、不均一な加熱硬化や成形材内部の発熱による不良品の発生が懸念されていた。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、成形材の加熱硬化成形時間の短縮及び不良品発生の抑制を図ることができる、オートクレーブ及び成形材の加熱硬化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
即ち本発明に係るオートクレーブは、加熱対象となる成形材を、内部が空洞に形成された保持治具で形状保持して高温ガスにより加熱硬化させるオートクレーブであって、前記成形材が内部に配置される圧力容器と、前記高温ガスを前記圧力容器内で前記成形材に供給する高温ガス供給手段と、前記高温ガスを前記保持治具の前記空洞内に供給する高温ガス補助供給手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような保持治具を備えるオートクレーブによれば、保持治具空洞内への高温ガス補助供給手段によって、これまで圧力容器内の雰囲気温度が伝達しにくかった成形材と保持治具との接触部分に、圧力容器内の雰囲気温度を直接伝達させることができるため、成形材温度の昇温速度が高くすることが可能となる。その結果、例えば従来は加熱硬化に時間を要していたベント型の大型ストリンガー部材において、加熱硬化成形時間の短縮を達成できる。さらにこれまで困難であった成形材の均等加熱が可能となり、不良品の発生を抑制できる。
【0009】
また、例えば成形材と保持治具との接触部分の一部に過度な発熱が生じてしまった場合であっても、保持治具の空洞内に供給される高温ガスによって当該発熱部分の熱を除去することができる。即ち、高温ガス補助供給手段により供給される高温ガスによって上記発熱部分の放熱作用を得ることができるため、当該発熱による不良品の発生を抑制できる。
【0010】
さらに、本発明に係る前記保持治具空洞内への高温ガス補助供給手段においては、オートクレーブの圧力容器内への高温ガス供給手段が供給する前記高温ガスの一部を取り込み、前記保持治具空洞内に案内するガイドパイプを有することが好ましい。
【0011】
このようなガイドパイプを有する保持治具を備えるオートクレーブによれば、圧力容器内の高温ガスをさらに効率的に保持治具空洞内へ供給することができ、この結果、成形材のさらなる加熱硬化成形時間短縮や加熱ムラや成形材内部の発熱による不良品の発生を抑制できる。
【0012】
また、本発明に係るオートクレーブは、前記ガイドパイプが前記保持治具の前記空洞の両端に備えられ、前記空洞内外を連通し、前記ガイドパイプによって前記空洞内に供給される前記高温ガスが流出する流出孔が形成されていてもよい。
【0013】
このような保持治具両端に備えられたガイドパイプを有するオートクレーブによれば、より多くの高温ガスが保持治具内へ流入することとなり、保持治具内面と成形材との間の熱伝達がさらに向上する。この結果、さらなる加熱硬化成形時間短縮や加熱ムラ及や成形材内部の発熱による不良品の発生を抑制できる。
【0014】
さらに、本発明に係るオートクレーブは、前記保持治具の前記空洞を形成する内面に配置された第一フィンを備えることが好ましい。
【0015】
この第一のフィンにより、保持治具の空洞を形成する内面の総伝熱面積が増し、保持治具空洞内へ流入した高温ガスと成形材との間の熱伝達を向上できる。この結果、さらなる加熱硬化成形時間短縮や加熱ムラや成形材内部の発熱よる不良品の発生を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係るオートクレーブは、前記第一のフィンがスパイラル状に配置されていることが好ましい。
【0017】
このようなスパイラル状のフィンにより、高温ガス補助供給手段により保持治具空洞内に供給された高温ガスが旋回流となり、高温ガスと成形材との間の熱伝達をさらに向上することができる。この結果、さらなる加熱硬化成形時間の短縮や加熱ムラや成形材内部の発熱による不良品発生を抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明に係るオートクレーブは、前記保持治具の外面に配置された第二フィンを備えることが好ましい。
【0019】
このような保持治具外面に設けられた第二フィンにより、保持治具外面の総伝熱面積が増し、圧力容器内の高温ガスと成形材との間の熱伝達を向上できる。この結果、さらなる加熱硬化成形時間短縮や加熱ムラや成形材内部の発熱による不良品の発生を抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係るオートクレーブは、記圧力容器内の高温ガス供給手段によって供給される前記高温ガスを、前記保持治具の外面に沿うように案内するフローガイドを備えることが好ましい。
【0021】
このようなフローガイドにより、高温ガスが保持治具に沿うように案内され、圧力容器内の高温ガスと成形材との間の熱伝達が向上し、圧力容器内の雰囲気温度が成形材へ伝達し易くなる。この結果、さらなる加熱硬化成形時間短縮や加熱ムラや成形材内部の発熱による不良品の発生を抑制することができる。
【0022】
さらに、本発明に係るオートクレーブにおいては、前記保持治具の表面に、黒体塗料が塗布されていることが好ましい。
【0023】
このような黒体塗料(例えば通常の白や黒のペイント等)を塗布することにより、圧力容器内の高温ガスと保持治具との間の輻射伝熱が促進され、成形材のさらなる加熱硬化成形時間短縮を達成できる。
【0024】
本発明に係る成形材の加熱硬化方法は、加熱対象となる成形材を、内部が空洞に形成された保持治具で形状保持して高温ガスにより加熱硬化させる成形材の加熱硬化方法であって、圧力容器内に配置される前記成形材に対して高温ガス供給手段により前記高温ガスを供給する際に、前記高温ガスを高温ガス補助手段によって前記保持治具の前記空洞内に供給することを特徴とする。
【0025】
これによって、上記同様、成形材の加熱硬化成形時間短縮と加熱ムラや成形材内部の発熱による不良品の発生とを抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のオートクレーブ及び成形材の加熱硬化方法によれば、保持治具空洞内への高温ガス補助供給手段が設けられていることにより、加熱対象となるベント型の大型成形材への熱伝達の増大と均等加熱を達成することができる。これにより成形材の加熱硬化成形時間の短縮と、また加熱ムラや成形材内部の発熱による不良品発生を抑制することができ、製造コストの上昇についても抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係るオートクレーブを側面から見た際の縦断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るオートクレーブを正面から見た際の縦断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るオートクレーブ内部の成形材及び成形材保持治具を拡大し、正面から見た際の縦断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るオートクレーブ内部の成形材及び成形材保持治具を拡大し、側面から見た際の縦断面図であって、図3のA−A断面を示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るオートクレーブ内部の成形材及び成形材保持治具を拡大し、側面から見た際の縦断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係るオートクレーブ内部の成形材及び成形材保持治具を拡大し、正面から見た際の縦断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係るオートクレーブ内部の成形材及び成形材保持治具を拡大し、側面から見た際の縦断面図であって、図6のB−B断面を示す図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係るオートクレーブを正面から見た際の縦断面図である。
【図9】本発明の第四実施形態に係るオートクレーブ内部の成形材及び成形材保持治具を拡大し、正面から見た際の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1から図4を参照し、本発明の第一実施形態のオートクレーブ1について説明する。
オートクレーブ1は、例えば炭素繊維に樹脂を含浸させた繊維強化プラスチック(FRP)等の複合材のシートを積層してなる成形材Wを、加圧下で加熱硬化成形する際に用いられる。このオートクレーブ1は、圧力容器2と、内側容器3と、保持治具4と、高温ガス供給手段5と、高温ガス補助供給手段7と、循環手段6とを備えている。
【0029】
圧力容器2は、水平方向に延在する円筒形状の両端が密閉された構造となっており、その内部には、図示しないガス導入手段によって導入される高圧のガスが密閉状態で封止される。
【0030】
内側容器3は、上記圧力容器2の内側に当該圧力容器2の内壁面と間隔をあけて配置される容器であって、圧力容器2と同様に、水平方向に延在する円筒形状で両端が密閉された構造となっている。本実施形態においては、圧力容器2と内側容器3とは中心線を一致させた同心円状に配置されており、当該圧力容器2及び当該内側容器3の延在方向両端の少なくとも一方は、開閉可能な扉状の構造となっている。この扉を開放することにより、内側容器3の内部に保持治具4及び成形材Wを導入することが可能となっている。
【0031】
また、上記圧力容器2と上記内側容器3との間の空間は、当該圧力容器2の内部に導入されて加熱された高圧ガスが循環するガス流路Rとなっており、このガス流路Rは当該内側容器3の外周面全周に渡って取り囲むように形成されている。
【0032】
なお、以下では圧力容器2及び内側容器3の延在方向(図1の左右方向、図2の紙面奥行き方向)を奥行き方向と称し、当該奥行き方向に直行する断面の水平方向(図1の紙面奥行き方向、図2の左右方向)を幅方向と称する。
【0033】
保持治具4は、内側容器3の内部に配置され成形材Wを保持する役割を有している。
ここで、この保持治具4に保持される成形材Wは、例えば航空機の主翼に用いられるベント型のストリンガーのような大型で特殊な形状をなしている。具体的には、図2及び図3に示すように、成形材Wは、奥行き方向を長手方向とするとともに幅方向を短手方向とした板状で、幅方向の中央が下方に向かって屈曲している。これによって、成形材Wの下面の幅方向中央が下方に向かって凸状に突出した形状をなし、当該成形材Wの上面の幅方向中央は下方に向かって凹状に窪んだ形状をなしている。
【0034】
保持治具4は、本実施形態での成形対象であるベント型のストリンガーの成形材Wを保持するため、上下二つの部材により構成されている。即ち、この保持治具4は、成形材Wの下側に配置される下部保持治具4aと、当該成形材Wの上側に配置される上部保持治具4bとから構成されている。
【0035】
上記下部保持治具4aは、図3に示すように成形材Wを下側から保持するものであって、成形材Wの下面全域に密着可能なように該成形材W同様のベント型をなしており、その幅方向の両端が、内側容器3の内部のベースプレート12上に立設された支柱11によって支持されている。
また上記上部保持治具4bは、図3に示すように、上側から成形材Wを挟み込むように保持するものであって、その内部には奥行き方向に延在し両端が開口した空洞15を有している。本実施形態においては、成形材Wにおける上面の中央の凹部に当該上部保持治具4bが嵌り込むように配置されている。
【0036】
高温ガス供給手段5は、図2に示すように、上記内側容器3の幅方向両側に配置され、ガス流路Rを循環する当該ガスを加熱するためのヒーター8と、当該内側容器3の下部に形成され内側容器3の内外を連通するガス流入口9と、内側容器3の上部に形成され内側容器3内外を連通するガス流出口10とから形成されている。
【0037】
循環手段6は、内側容器3のガス流出口10の外側のガス流路Rの最上部に備えられたファンであって、このガス流路Rの最上部から当該ガス流路Rに沿って、ガスを下方に向けて循環させる役割を有している。この循環手段6は図1に示すように、奥行き方向に間隔をあけて複数(本実施形態では4つ)設置されている。
【0038】
高温ガス補助供給手段7は、上記高温ガス供給手段5によってガス流入口9を通過し内側容器3内へ供給された高温ガスを上部保持治具4bの空洞15内に供給するものである。
本実施形態においては、高温ガス補助供給手段7として、図1及び図4に示すように、内側容器3内へ供給された高温ガスのうち一部を上記上部保持治具4bの空洞15の内部に導入するガイドパイプ13を採用している。このガイドパイプ13は、例えば図示しない支持構造によって内側容器3内に支持されたパイプ状の部材であって、一端側開口が上部保持治具4bの空洞15内に挿入され、他端側開口が内側容器3内において下方を向くように配置されている。また、ガイドパイプ13の他端側は、その内周面及び外周面が端部に向かうに従って拡径するラッパ状に形成されている。
【0039】
次に、上記構成のオートクレーブ1の作用について説明する。
このオートクレーブ1を用いて、成形材Wにオートクレーブ成形を施す際には、下部保持治具4aに成形材Wを載置した状態で、当該成形材Wの上側から挟み込むように、上部保持治具4bを配置する。同時に、高温ガス供給手段5によって当該高温ガスがガス流入口9から内側容器3内に流入し、成形材Wをその周囲から加熱する。
【0040】
また高温ガス補助供給手段7は、内側容器3内へ流入した高温ガスのうちの一部を、上部保持治具4bの空洞15の内部に送り込み、当該上部保持治具4bの内面から成形材Wを加熱する。
【0041】
このようなオートクレーブ1においては、高温ガス補助供給手段7を備えることによって、上記内側容器3内の高温ガスを上記上部保持治具4bの空洞15の内部に直接送り込むことが可能となるため、熱伝達効率が向上し、即ち、成形材Wの加熱硬化成形時間の短縮につながる。また成形材Wへ供給される熱量の均一化を図ることも可能となり、即ち、加熱ムラや成形材Wの内部発熱による不良品発生を抑制することができる。
【0042】
特に、本実施形態では高温ガス補助供給手段7としてガイドパイプ13を備えているため、内側容器3の内部の高温ガスを上部保持治具4bの空洞15の内部へ容易に取り込むことができる。即ち、このガイドパイプ13によって高温ガスを上部保持治具4bの空洞15の内部へ円滑に送り込むことができるため、さらなる熱伝達の向上と供給熱量の均一化が図ることができ、加熱硬化成形時間の短縮と不良品発生の抑制を実現することができる。
【0043】
なお、ガイドパイプ13の一端側開口は、必ずしも空洞15内に挿入されてなくともよく、当該一端側開口が空洞15の外部から当該空洞15の内部を向くように配置されていてもよい。
また、ガイドパイプ13の他端側開口は、内側容器3内において下方を向くのみならず水平方向や斜め下方を向くように配置されていてもよい。
【0044】
本実施形態のガイドパイプ13はその他端側開口がラッパ状をなしていたが、その延在方向全域にわたって内径及び外径が均一なパイプ状をなしていてもよい。このようなガイドパイプ13の他端側にロート状の装置を取り付けてもよい。これによって、より多くの高温ガスを収集し上部保持治具4bの空洞15の内部に流入させることができるため、上部保持治具4bの空洞15内における熱伝達を促進させることが可能となる。
また、高温ガス補助供給手段7として、ガイドパイプ13への高温ガスの流入を容易にするファンをさらに設けてもよい。
【0045】
次に図5を参照して、第二実施形態のオートクレーブ1について説明する
第二実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細は省略する。
【0046】
即ち、第二実施形態では、高温ガス補助供給手段7として、図5に示すように第一実施形態と同様のガイドパイプ13を上部保持治具4bの両端に備え、さらに当該上部保持治具4bの奥行き方向の中間部に空洞15の内外を連通する流出孔14を備えている。
【0047】
このようなオートクレーブ1においては、内側容器3の内部の高温ガスが、この上部保持治具4bの両端に備えられたガイドパイプ13を通じ当該上部保持治具4bの空洞15の内部へ流入し、中間部の流出孔14から流出する。その結果より多くの高温ガスが当該空洞15の内部へ流入することとなり、さらに効率的に上部保持治具4bの内面と成形材Wとの間の熱伝達を促進できる。
【0048】
従って、上部保持治具4b両端のガイドパイプ13と中間部の流出孔14を有することで、上部保持治具4b内面と成形材Wとの熱伝達を促進し、成形材Wの加熱硬化成形時間の短縮が達成できる。また成形材Wへ供給される熱量の均一化を図ることも可能となるので、即ち、加熱ムラや成形材W内部の発熱による不良品発生を抑制することができる。
【0049】
なお、上記流出孔14は複数設けてもよい。また、流出孔14を空洞15における奥行き方向の中間部のみならず、他の箇所に形成してもよい。
【0050】
次に図6と図7を参照して、第三実施形態のオートクレーブ1について説明する。
第三実施形態においては、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細は省略する。
【0051】
第三実施形態のオートクレーブ1は、図6に示すように、上部保持治具4bの空洞15内に総伝熱面積を増大させる第一のフィン16が設けられている。
この第一のフィン16は、空洞15の内周面から突出するとともに奥行き方向に延在しており、当該内周面の周方向に間隔をあけて複数が設けられている。本実施形態においては、空洞15の内周面における幅方向に対向するように一対が設けられるとともに上下方向に対向するように一対が設けられている。
【0052】
本実施形態においては、高温ガス補助供給手段7によって上記上部保持治具4bの空洞15の内部へ流入した高温ガスと、当該上部保持治具4bと、成形材Wとの熱伝達をさらに向上させることができる。従って、成形材Wの加熱硬化成形時間のさらなる短縮が達成できる。また成形材Wへ供給される熱量の均一化を図ることも可能となり、即ち、加熱ムラや成形材W内部の発熱による不良品発生を抑制することができる。
【0053】
なお、例えば第一フィンは、図7に示すように、空洞15の一端側から他端側に向かうに従って内周面の周方向に漸次捩れるスパイラル状に形成されていてもよい。これによって、当該空洞15内に導入される高温ガスによる旋回流が生成されるため、さらなる熱伝達向上と成形材Wへの供給熱量の均一化の効果が得られる。
【0054】
次に図8及び図9を参照して、第四実施形態のオートクレーブ1について説明する。
第四実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細は省略する。
【0055】
図8及び図9に示すように、本実施形態の下部保持治具4aの下面には、当該下面から突出するとともに奥行き方向に延在する第二のフィン17が複数設けられている。本実施形態においては、下方に向かって凸状をなす下部保持治具4aの下面における当該凸状の幅方向外側を向く面に、複数(本実施形態ではそれぞれ3つ)の第二フィンが上下方向に間隔をあけて設けられている。
【0056】
上記下部保持治具4aに備えられた第二のフィン17の存在によって、総伝熱面積が増大し、高温ガス供給手段5によってガス流入口9を通じて内側容器3に流入した高温ガスから、当該下部保持治具4aへの熱伝達が増大し、さらなる成形材Wの加熱硬化成形時間の短縮が達成できる。また成形材Wへ供給される熱量の均一化を図ることも可能となり、即ち、加熱ムラや成形材W内部の発熱による不良品発生の抑制もできる。
【0057】
なお、第二のフィン17は高温ガスの流入方向に沿うように設けられてもよい。これによって第二のフィン17が高温ガスの流れの妨げにならなることはないため、気流抵抗が減少し、熱伝達をさらに向上させることができる。なお、この第二のフィン17の設置位置、寸法、ピッチ、材質及び肉厚等を適宜変更することが可能である。
【0058】
また、本実施形態のオートクレーブ1には、図8及び図9に示すように、下部保持治具4aの周辺の内側容器3内にはフローガイド18が備えられている。
【0059】
フローガイド18は、高温ガス供給手段5によって内側容器3内へ取り込まれた高温ガスを、下部保持治具4aに備えられた第二のフィン17に沿って流れるよう案内し、当該下部保持治具4aにおける熱伝達効果を増大させるように作用するものである。このフローガイド18は、各保持治具4に対応して一対が設けられている。各フローガイド18は、奥行き方向に延在する板状をなしており、それぞれ保持治具4の下方から上方に向かうに従って幅方向外側に湾曲した形状をなしている。
【0060】
このフローガイド18によって高温ガスが効果的に流れることで熱伝達が向上し、さらなる成形材Wの加熱硬化成形時間の短縮につながる。また成形材Wへ供給される熱量のさらなる均一化を図ることも可能となり、加熱ムラや成形材W内部の発熱による不良品発生の抑制が達成できる。
【0061】
上記フローガイド18については、図8及び図9に示すように下部保持治具4aの周辺だけでなく、上部保持治具4bの周辺にも設置する等、内側容器3の内部の高温ガスからの熱伝達を向上できる設置場所を、様々に選択することが可能である。
【0062】
さらに本実施形態のオートクレーブ1には、図8及び図9に示すように、黒体塗料19が下部保持治具4aの下面に塗布されている。
【0063】
上記黒体塗料19の塗布によって下部保持治具4a表面からの熱放射率が増大することで、輻射伝熱による熱伝達が向上する。
なお、この黒体塗料19は熱的に黒体であれば足り、必ずしも黒色の塗料である必要はない。一般的な白色ペイントであっても効果がある。また、この黒体塗料19は下部保持治具4aの下面だけでなく、当該下部保持治具4aの全面に塗布することや、上部保持治具4bに塗布してもよく、この場合はさらなる熱伝達向上を期待できる。
【0064】
上記黒体塗料19の塗布による輻射熱伝達の向上で、さらに成形材Wの加熱硬化成形時間を短縮できる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、必ずしもこれらに限定されることはなく、多少の設計変更も可能である。
例えば本発明の実施形態においては下部保持治具4aを下側に、上部保持治具4bを上側に配置し、成形材Wの加熱硬化成形を行うこととしている。しかし上部保持治具4bを水平方向に対して右側に、下部保持治具4aを水平方向に対して左側に配置して成形材Wを保持し加熱硬化成形を行う等、成形材Wを保持する方向が変化しても成形可能である。
【0066】
さらに、本発明の実施形態における大型のベント型ストリンガー成形材を成形するという目的によれば、上部保持治具4bは成形材Wの形状を保持でき、かつ高温ガスを流出入させるための内部空洞15を持っていればよく、また下部保持治具4aについては、成形材Wの形状を保持できればよい。
【符号の説明】
【0067】
1…オートクレーブ、2…圧力容器、3…内側容器、4…保持治具、
4a…下部保持治具、4b…上部保持治具、5…高温ガス供給手段、
6…循環手段、7…高温ガス補助供給手段、8…ヒーター、9…ガス流入口、
10…ガス流出口、11…支柱、12…ベースプレート、13…ガイドパイプ、
14…流出孔、15…空洞、16…第一のフィン、17…第二のフィン、
18…フローガイド、19…黒体塗料、W…成形材、R…ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象となる成形材を、内部が空洞に形成された保持治具で形状保持して高温ガスにより加熱硬化させるオートクレーブであって、
前記成形材が内部に配置される圧力容器と、
前記高温ガスを前記圧力容器内で前記成形材に供給する高温ガス供給手段と、
前記高温ガスを前記保持治具の前記空洞内に供給する高温ガス補助供給手段とを備えることを特徴とするオートクレーブ。
【請求項2】
前記高温ガス補助供給手段が、前記圧力容器内への高温ガス供給手段が供給する前記高温ガスの一部を取り込み、前記保持治具の前記空洞内に案内するガイドパイプを有することを特徴とする請求項1に記載のオートクレーブ。
【請求項3】
前記ガイドパイプが前記保持治具の前記空洞の両端に備えられ、
前記保持治具に、前記空洞内外を連通し、前記ガイドパイプによって前記空洞内に供給される前記高温ガスを流出させる流出孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のオートクレーブ
【請求項4】
前記保持治具の前記空洞を形成する内面に配置された第一フィンを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のオートクレーブ。
【請求項5】
前記第一フィンがスパイラル状に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のオートクレーブ。
【請求項6】
前記保持治具の外面に配置された第二フィンを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のオートクレーブ。
【請求項7】
前記圧力容器内の高温ガス供給手段によって供給される前記高温ガスを、前記保持治具の外面に沿うように案内するフローガイドを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のオートクレーブ。
【請求項8】
前記保持治具の表面に黒体塗料が塗布されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のオートクレーブ。
【請求項9】
加熱対象となる成形材を、内部が空洞に形成された保持治具で形状保持して高温ガスにより加熱硬化させる成形材の加熱硬化方法であって、
圧力容器内に配置される前記成形材に対して高温ガス供給手段により前記高温ガスを供給する際に、前記高温ガスを高温ガス補助手段によって前記保持治具の前記空洞内に供給することを特徴とする成形材の加熱硬化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−171173(P2012−171173A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34496(P2011−34496)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】