説明

オートテンショナ

【課題】エンジンへの組み付け作業性に優れ、コストの低いオートテンショナを提供する。
【解決手段】下部が閉塞したシリンダ9と、シリンダ9内に軸方向に移動可能に挿入されたロッド10と、ロッド10に付与される押し込み力を緩衝する油圧ダンパ機構11と、ロッド10のシリンダ9からの突出端に固定されたばね座12と、ばね座12を介してロッド10をシリンダ9から突出する方向に付勢するリターンスプリング13とを有するオートテンショナ6において、ロッド10がシリンダ9から突出する方向に移動するのを規制するようにばね座12とシリンダ9に環状の金属バンド31を巻き掛ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オルタネータ等の自動車補機を駆動する補機ベルトの張力保持に用いられるオートテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の補機、たとえばオルタネータやカーエアコンやウォータポンプなどは、その回転軸がエンジンのクランクシャフトに補機ベルトで連結され、その補機ベルトを介して駆動される。この補機ベルトの張力を適正範囲に保つために、一般に、支点軸を中心として揺動可能に設けたプーリアームと、そのプーリアームに回転可能に取り付けたテンションプーリと、そのテンションプーリを補機ベルトに押さえ付ける方向にプーリアームを付勢するオートテンショナとからなる張力調整装置が使用される。
【0003】
この張力調整装置に組み込まれるオートテンショナとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1のオートテンショナは、下部が閉塞したシリンダと、そのシリンダ内に軸方向に移動可能に挿入されたロッドと、そのロッドに付与される押し込み力を緩衝する油圧ダンパ機構と、前記ロッドのシリンダからの突出端に固定されたばね座と、そのばね座を介して前記ロッドをシリンダから突出する方向に付勢するリターンスプリングとを有する。
【0004】
このオートテンショナは、ばね座に設けられた上側連結片をプーリアームに連結し、シリンダの閉塞端に設けられた下側連結片をエンジンブロックに連結して使用される。そして、補機ベルトの張力が変動すると、その補機ベルトの張力とリターンスプリングの付勢力がつりあう位置までロッドが移動して補機ベルトの張力変動を吸収するとともに、補機ベルトからロッドに付与される押し込み力を油圧ダンパ機構で緩衝して、補機ベルトの張力を安定させる。
【0005】
ところで、エンジンを組み立てるにあたっては、補機やオートテンショナを予めエンジンに取り付けた後、各補機を駆動するプーリやクランクプーリやテンションプーリに補機ベルトを巻き掛ける。ここで、補機ベルトを巻き掛けるときに、オートテンショナがリターンスプリングの付勢力で伸張状態となっていると、補機ベルトが突っ張ってしまい、補機ベルトを取り付けることができない。
【0006】
そのため、補機ベルトを巻き掛けるにあたっては、リターンスプリングに抗してオートテンショナを押し縮め、オートテンショナの収縮状態を保持しながら補機ベルトを巻き掛ける必要があるが、オートテンショナの収縮状態を保持しながら補機ベルトを巻き掛ける作業は煩雑である。
【0007】
そこで、補機ベルトを巻き掛ける作業性を向上させるために、特許文献2に記載のオートテンショナが提案されている。特許文献2のオートテンショナは、ばね座とシリンダを間にして左右に対向する対向一対の側壁と、その一対の側壁の前縁同士を連結する前壁とからなる断面コ字状の金属製のカバーを有し、そのカバーの各側壁の上端と下端には内向きに折り曲げられた突片が設けられ、その各突片で、ばね座のフランジ部とシリンダの閉塞端とを上下に挟み込むことによって、ロッドがシリンダから突出する方向に移動するのを規制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平2−500210号公報
【特許文献2】特開平10−306859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2のオートテンショナは、プーリアームに連結するにあたって、オートテンショナの前後を区別して連結する必要があり、プーリアームに連結する作業性が悪かった。すなわち、断面コ字状のカバーは取り外すときに、断面コ字の開放している側からしか取り外せないので、誤ってオートテンショナの前後を逆にしてプーリアームに連結した場合、オートテンショナとプーリアームをエンジンに取り付けた後、カバーを取り外そうとしてもエンジンブロック等にカバーが干渉して、カバーを取り外すことができない可能性がある。そのため、オートテンショナをプーリアームに連結するにあたって、オートテンショナの前後を区別して連結する必要があった。
【0010】
また、特許文献2のオートテンショナは、補機ベルトを巻き掛ける作業が完了した後、補機ベルトに張力を付与するために、カバーを取り外してオートテンショナを伸張させる必要があるが、カバーを取り外すためには、カバーの突片との接触を解除するために、収縮状態のオートテンショナをリターンスプリングの付勢力に抗して更に収縮させる必要があり、煩雑であった。
【0011】
また、特許文献2のオートテンショナは、カバーの形状が複雑であり、カバーの製作コストが高かった。
【0012】
この発明が解決しようとする課題は、エンジンへの組み付け作業性に優れ、コストの低いオートテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、下部が閉塞したシリンダと、そのシリンダ内に軸方向に移動可能に挿入されたロッドと、そのロッドに付与される押し込み力を緩衝する油圧ダンパ機構と、前記ロッドのシリンダからの突出端に固定されたばね座と、そのばね座を介して前記ロッドをシリンダから突出する方向に付勢するリターンスプリングとを有し、前記ばね座は、前記リターンスプリングの上端を支持する端板と、その端板から上方に突出する上側連結片とを有し、前記シリンダの閉塞端に下側連結片が設けられたオートテンショナにおいて、前記ロッドがシリンダから突出する方向に移動するのを規制するように前記ばね座とシリンダに巻き掛けられる環状固定具を設けた。
【0014】
このようにすると、環状固定具は、オートテンショナの前側からでも後側からでも切断して取り外すことができるので、オートテンショナをプーリアームに連結するにあたって、オートテンショナの前後を区別する必要がない。そのため、エンジンへの組み付け作業性に優れる。また、環状固定具を切断して取り外すと、固定具を取り外すために収縮状態のオートテンショナを更に収縮させる作業が不要である。また、固定具の形状が単純なので、固定具の製作コストが低い。
【0015】
前記環状固定具を前記上側連結片と下側連結片に外接するように巻き掛け、その環状固定具と前記上側連結片の間に切断工具挿入空間を形成すると好ましい。このようにすると、環状固定具を切断する作業が極めて容易となる。
【0016】
前記環状固定具としては金属バンドを使用すると好ましい。金属バンドは、リターンスプリングの付勢力が負荷されたときに樹脂バンドのようにクリープ伸びが生じることがなく、高い強度を有する。
【0017】
前記金属バンドは、前記ばね座とシリンダの形状に合わせて予め湾曲して形成すると好ましい。このようにすると、環状固定具を装着する作業が極めて容易となる。この場合、金属バンドの形状を上下対称とすると、金属バンドをばね座とシリンダに巻き掛ける際に金属バンドの上下を区別する必要がなくなり、オートテンショナの組み立ての作業性を向上させることが可能となる。
【0018】
前記金属バンドは、接続部をもたないシームレスのものを採用することもできるが、細長い断面扁平形状の帯部と、その帯部の両端を接続する接続部とからなるものを採用すると、金属バンドの製作コストを抑えることができる。前記帯部の両端をスポット溶接で接続し、その接続部分を前記接続部とすると、金属バンドの製作コストを特に低減することが可能である。また、接続部として、前記帯部の一端に取り付けられたウォームねじと、前記帯部の他端に設けられたねじ溝とからなるものを採用すると、金属バンドの周長が長くなる方向にウォームねじを回転操作することにより、金属バンドを切断せずに取り外すことができ、その取り外した金属バンドを環状固定具として再利用することができる。
【0019】
また、前記環状固定具としては、例えば、繊維を含有する樹脂で成形された樹脂バンドや、合成繊維糸からなる織物ベルトや、合成樹脂製の心線の外側をゴム材で覆ったゴムベルトを使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明のオートテンショナは、オートテンショナの前側からでも後側からでも環状固定具を切断して取り外すことができるので、オートテンショナの前後を区別せずにプーリアームに連結することができ、エンジンへの組み付け作業性に優れる。また、環状固定具は、切断して取り外すことができるので、固定具を取り外すために収縮状態のオートテンショナを更に収縮させる作業が不要である。また、固定具の形状が単純なので、固定具の製作コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態のオートテンショナを組み込んだ張力調整装置を示す正面図
【図2】図1に示すオートテンショナの拡大断面図
【図3】図2に示すオートテンショナの側面図
【図4】図2に示すオートテンショナの上側連結片の近傍の拡大図
【図5】図4に示す接続部の他の例を示す図
【図6】図4に示す接続部の更に他の例を示す図
【図7】図6に示す接続部の拡大断面図
【図8】図3に示す環状固定具の他の例を示す図
【図9】図3に示す環状固定具の更に他の例を示す図
【図10】図3に示す環状固定具の更に他の例を示す図
【図11】図10のXI−XI線に沿った拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、自動車補機を駆動する補機ベルト1の張力調整装置を示す。この張力調整装置は、エンジンブロック2(図3参照)に固定された支点軸3を中心として揺動可能に支持されたプーリアーム4と、プーリアーム4に回転可能に取り付けたテンションプーリ5とを有する。プーリアーム4には、この発明の実施形態に係るオートテンショナ6の一端が連結軸7を介して回転可能に連結され、オートテンショナ6の他端が、エンジンブロック2に固定された支点軸8で支持されている。
【0023】
図2に示すように、オートテンショナ6は、シリンダ9と、シリンダ9内に軸方向に移動可能に挿入されたロッド10と、ロッド10に付与される押し込み力を緩衝する油圧ダンパ機構11と、ロッド10のシリンダ9からの突出端に固定されたばね座12と、ばね座12を介してロッド10をシリンダ9から突出する方向に付勢するリターンスプリング13とを有する。
【0024】
シリンダ9は、下部が閉塞し、上端が開放した筒状に形成されている。シリンダ9の閉塞端には、支点軸8が挿通する前後方向の貫通孔14を有する下側連結片15が一体に設けられている。このようなシリンダ9は、アルミの冷間鍛造で形成することができる。シリンダ9内には、空気と作動油が上下二層に収容されている。
【0025】
油圧ダンパ機構11は、ロッド10の外周に摺接するようにシリンダ9内に固定されたスリーブ16と、スリーブ16の内側に形成された圧力室17と、スリーブ16とシリンダ9の間に形成されたリザーバ室18と、圧力室17の下部とリザーバ室18の下部を連通する油通路19と、その油通路19のリザーバ室18側から圧力室17側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブ20と、スリーブ16とシリンダ9の摺動面間に形成されたリーク隙間21とからなる。
【0026】
スリーブ16はシリンダ9内に同軸に挿入され、そのスリーブ16の下部外周が、シリンダ9の閉塞端の内面に形成されたスリーブ嵌合凹部22に嵌め合わされている。油通路19は、スリーブ嵌合凹部22とスリーブ16の嵌合面間に形成されている。チェックバルブ20は、油通路19の圧力室17側の端部に設けられている。
【0027】
ばね座12は、合成樹脂で形成されている。ロッド10のシリンダ9からの突出端は、ばね座12の成形金型内にセットした状態でばね座12の成形(インサート成形)を行なうことによって、ばね座12に固定されている。
【0028】
ばね座12は、リターンスプリング13の上端を支持する端板23と、端板23から上方に突出する上側連結片24と、端板23から下方に延びる筒状の内スカート25および外スカート26とからなる。上側連結片24は、連結軸7が挿通する前後方向の貫通孔27を有する。内スカート25は、シリンダ9の上部内周に対向して配置され、シリンダ9の上部内周に取り付けた環状のオイルシール28に摺接している。オイルシール28はシリンダ9内の作動油を密封している。外スカート26は、シリンダ9の上部外周に対向して配置され、オイルシール28が外部にさらされるのを防止している。
【0029】
リターンスプリング13は、螺旋状に延びる線材からなるコイルばねであり、シリンダ9の内周とスリーブ16の外周との間に組み込まれている。リターンスプリング13の下端は、座金29を介してシリンダ9の閉塞端で支持され、リターンスプリング13の上端は、ばね座12の端板23を上方に押圧しており、その押圧によってロッド10はシリンダ9から突出する方向に付勢されている。リターンスプリング13の下端を受ける座金29は、スリーブ16の外周に形成された係止溝30に係止しており、リターンスプリング13から座金29を介して係止溝30に作用する下向きの力によってスリーブ16の上方への移動を規制している。
【0030】
図2、図3に示すように、ばね座12とシリンダ9には、環状の金属バンド31が上側連結片24と下側連結片15に外接するように巻き掛けられている。ここで、金属バンド31は、外力が作用していない自然状態でのオートテンショナ6をリターンスプリング13に抗して押し縮めた状態で巻き掛けられており、ロッド10がシリンダ9から突出する方向に移動するのを規制している。
【0031】
なお、金属バンド31の幅は8〜12mm程度であり、オートテンショナ6を押し縮めた状態でのリターンスプリング13の付勢力は1000〜2000N程度である。そして、金属バンド31の破断荷重は、スプリング13の付勢力の1.5倍以上に設定されている。
【0032】
図2に示すように、金属バンド31は、上側連結片24の根元から左右に張り出すように形成された端板23の左右の縁と、上側連結片24の頂部との間を直線的に結ぶように架け渡され、これにより、金属バンド31と上側連結片24の間には、ニッパ等の切断工具Nを挿入可能な切断工具挿入空間32が形成されている。
【0033】
金属バンド31は、断面扁平形状の細長い帯部33と、その帯部33の両端を接続する接続部34とからなる。接続部34は、帯部33の両端をスポット溶接で接続した部分である。金属バンド31の材質としては、例えばスチールやアルミを使用することができるが、スチールを使用すると安価である。金属バンド31は、ばね座12とシリンダ9の形状に合わせて予め湾曲して形成されている。ここで、金属バンド31は、ばね座12とシリンダ9の輪郭形状に完全に一致するように形成してもよいが、図2に示すように、ばね座12とシリンダ9の輪郭形状に外接する多角形状に形成すると、曲げ加工部35の数を抑えることができ、低コストである。
【0034】
このオートテンショナ6のエンジンブロック2への組み付けは、例えば、次のようにして行なう。
【0035】
まず、図1に示すように、金属バンド31を巻掛けることによって収縮状態に保持されたオートテンショナ6と、テンションプーリ5が取り付けられたプーリアーム4とを準備する。次に、オートテンショナ6の上側連結片24を、連結軸7を介してプーリアーム4に連結する。続いて、オートテンショナ6の下側連結片15とプーリアーム4とをそれぞれ支点軸3,8を介してエンジンブロック2に取り付ける。その後、各補機を駆動するプーリ(図示せず)とテンションプーリ5に補機ベルト1を巻き掛ける。この段階ではオートテンショナ6が収縮状態に保持されているので、補機ベルト1には張力が付与されていない。その後、図4に示すように、切断工具挿入空間32にニッパ等の切断工具Nを挿入し、金属バンド31を切断して取り外す。これにより、ロッド10がシリンダ9から突出する方向に移動し、オートテンショナ6が伸張するので、補機ベルト1に張力が付与される。
【0036】
次に、このオートテンショナ6の動作例を説明する。
【0037】
エンジン作動中、補機ベルト1の張力が小さくなると、補機ベルト1の張力とリターンスプリング13の付勢力がつり合う位置までロッド10がシリンダ9から突出し、補機ベルト1の弛みを吸収する。このとき、圧力室17内の圧力が低下してチェックバルブ20が開き、油通路19を通ってリザーバ室18から圧力室17に作動油が流れるので、ロッド10は速やかに移動する。
【0038】
一方、エンジン作動中に、補機ベルト1の張力が大きくなると、補機ベルト1の張力とリターンスプリング13の付勢力がつり合う位置までロッド10がシリンダ9内に押し込まれ、補機ベルト1の緊張を吸収する。このとき、圧力室17内の圧力が上昇してチェックバルブ20が閉じ、圧力室17内の作動油がリーク隙間21を通ってリザーバ室18に流出し、その作動油の粘性抵抗によってダンパ力が生じるので、ロッド10はゆっくりと移動する。
【0039】
このオートテンショナ6は、オートテンショナ6の前側からでも後側からでも金属バンド31を切断して取り外すことができるので、オートテンショナ6をプーリアーム4に連結するにあたって、オートテンショナ6の前後を区別する必要がない。そのため、エンジンへの組み付け作業性に優れる。
【0040】
また、このオートテンショナ6は、金属バンド31を切断して取り外すことができるので、従来のように固定具を取り外すために収縮状態のオートテンショナ6を更に収縮させる作業が不要であり、エンジンへの組み付け作業性に優れる。また、金属バンド31の形状は単純なので、製作コストを低く抑えられる。また、環状固定具としての金属バンド31が断面扁平の帯状なので、断面丸形の線材を環状固定具として採用した場合よりも、ばね座12やシリンダ9への環状固定具の接触面積が広く、オートテンショナ6の搬送中の振動による金属バンド31の脱落が生じにくい。
【0041】
また、このオートテンショナ6は、ばね座12とシリンダ9の形状に合わせて金属バンド31を予め湾曲して形成しているので、金属バンド31を装着する作業が極めて容易である。図2では、金属バンド31の形状が上下非対称であるが、金属バンド31の形状を、ばね座12とシリンダ9の輪郭形状に外接する上下対称の多角形状としてもよい。このようにすると、金属バンド31をばね座12とシリンダ9に巻き掛ける際に金属バンド31の上下を区別する必要がなくなり、オートテンショナ6の組み立ての作業性を向上させることが可能となる。
【0042】
金属バンド31は、接続部34をもたないシームレスのものを採用することもできるが、上記実施形態に示すように、帯部33と、帯部33の両端を接続する接続部34とからなるものを採用すると、金属バンド31の製作コストを抑えることができる。
【0043】
上記実施形態では、金属バンド31の製作コストを特に低減するために、帯部33の両端をスポット溶接で接続した部分を接続部34としているが、図5に示すように、帯部33の両端を重ねて折り曲げた部分を接続部34とすることも可能である。
【0044】
また、図6、図7に示すように、帯部33の両端を接続する接続部34として、帯部33の一端に取り付けられたウォームねじ36と、帯部33の他端に設けられたねじ溝37とからなるものを採用することも可能である。このようにすると、金属バンド31の周長が長くなる方向にウォームねじ36を回転操作することにより、金属バンド31を切断せずに取り外すことができ、その取り外した金属バンド31を環状固定具として再利用することができる。なお、図7において、ウォームねじ36は、帯部33の一端に固定されたケース38内に収容されており、回転可能かつウォームねじ36の軸方向には非可動に支持されている。
【0045】
上記実施形態では、ばね座12とシリンダ9に巻き掛ける環状固定具として金属バンド31を例に挙げて説明したが、図9に示すように、金属バンド31にかえて樹脂バンド40を使用してもよい。樹脂バンド40を使用する場合、リターンスプリング13の付勢力が負荷されることによって、樹脂バンド40にクリープ伸びが生じる可能性があるので、このクリープ伸びを防止するために、繊維を含有する樹脂で樹脂バンド40を成形すると好ましい。樹脂に配合する繊維としては、ガラス繊維やアラミド繊維が挙げられる。
【0046】
また、図8に示すように、環状固定具として合成繊維糸からなる織物ベルト39を使用することも可能であり、図10に示すように、環状固定具としてゴムベルト41を使用することも可能である。ゴムベルト41は、リターンスプリング13の付勢力でゴムベルト41が弾性的に伸張するのを防止するため、図10、図11に示すように、合成樹脂製の心線42の外側をゴム材43で覆ったものを使用すると好ましい。
【符号の説明】
【0047】
6 オートテンショナ
9 シリンダ
10 ロッド
11 油圧ダンパ機構
12 ばね座
13 リターンスプリング
15 下側連結片
23 端板
24 上側連結片
31 金属バンド
32 切断工具挿入空間
33 帯部
34 接続部
36 ウォームねじ
37 ねじ溝
39 織物ベルト
40 樹脂バンド
41 ゴムベルト
42 心線
43 ゴム材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部が閉塞したシリンダ(9)と、そのシリンダ(9)内に軸方向に移動可能に挿入されたロッド(10)と、そのロッド(10)に付与される押し込み力を緩衝する油圧ダンパ機構(11)と、前記ロッド(10)のシリンダ(9)からの突出端に固定されたばね座(12)と、そのばね座(12)を介して前記ロッド(10)をシリンダ(9)から突出する方向に付勢するリターンスプリング(13)とを有し、前記ばね座(12)は、前記リターンスプリング(13)の上端を支持する端板(23)と、その端板(23)から上方に突出する上側連結片(24)とを有し、前記シリンダ(9)の閉塞端に下側連結片(15)が設けられたオートテンショナにおいて、
前記ロッド(10)がシリンダ(9)から突出する方向に移動するのを規制するように前記ばね座(12)とシリンダ(9)に巻き掛けられる環状固定具(31)を設けたことを特徴とするオートテンショナ。
【請求項2】
前記環状固定具(31)を前記上側連結片(24)と下側連結片(15)に外接するように巻き掛け、その環状固定具(31)と前記上側連結片(24)の間に切断工具挿入空間(32)を形成した請求項1に記載のオートテンショナ。
【請求項3】
前記環状固定具として金属バンド(31)を使用した請求項1または2に記載のオートテンショナ。
【請求項4】
前記金属バンド(31)は、前記ばね座(12)とシリンダ(9)の形状に合わせて予め湾曲して形成されている請求項3に記載のオートテンショナ。
【請求項5】
前記金属バンド(31)の形状が上下対称である請求項4に記載のオートテンショナ。
【請求項6】
前記金属バンド(31)が、断面扁平形状の細長い帯部(33)と、その帯部(33)の両端を接続する接続部(34)とからなる請求項3から5のいずれかに記載のオートテンショナ。
【請求項7】
前記接続部(34)が、前記帯部(33)の両端をスポット溶接で接続した部分である請求項6に記載のオートテンショナ。
【請求項8】
前記接続部(34)が、前記帯部(33)の一端に取り付けられたウォームねじ(36)と、前記帯部(33)の他端に設けられたねじ溝(37)とからなる請求項6に記載のオートテンショナ。
【請求項9】
前記環状固定具として、繊維を含有する樹脂で成形された樹脂バンド(40)を使用した請求項1または2に記載のオートテンショナ。
【請求項10】
前記環状固定具として、合成繊維糸からなる織物ベルト(39)を使用した請求項1または2に記載のオートテンショナ。
【請求項11】
前記環状固定具として、合成樹脂製の心線(42)の外側をゴム材(43)で覆ったゴムベルト(41)を使用した請求項1または2に記載のオートテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−225447(P2012−225447A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94787(P2011−94787)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】