説明

オートバイの盗難防止具

【課題】コンパクトで且つ使用場所が制限されず、オートバイの盗難を効率的に阻止できるオートバイの盗難防止具の提供。
【解決手段】第1部材1に対して第2部材2が進み対偶状態になっていると共に前記第1・第2部材1,2相互間にラチェット機構3を備えており、第1部材1に対して第2部材2がラチェット機構3を介して移動可能方向に押し込まれたときには第1部材1と第2部材2との協働によりアクセルグリップが支持されると共に、第2部材2に対してブレーキレバーが係止状態となり、アクセルグリップの回動が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オートバイ(原動機付き自転車)の盗難防止具であり、特に、アクセルグリップを回転不能にする態様でオートバイの盗難防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オートバイは、駆動部分や運転部分が剥き出しになっていることから、大きなエンジン音やスピード感を直接得ることができ、非常に刺激的な乗り物である。
【0003】
しかしながら、窃盗犯は剥き出しとなったエンジンをキー無に駆動状態にする方法を熟知しており、このためオートバイの盗難件数は乗用車等に比べて非常に多いという問題があった。
【0004】
上記問題を解決するための手段としては、例えば、特許文献1に示されたオートバイの盗難防止具がある。しかしながら、この手段は非常占有面積が大きく、特定の場所に制限されてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2006−7795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明では、コンパクトで且つ使用場所が制限されず、オートバイの盗難を効率的に阻止できるオートバイの盗難防止具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1記載の発明)
この発明は、アクセルグリップの取付部又はその付近に揺動可能に取付られたブレーキレバーを有するオートバイの盗難防止具であって、第1部材に対して第2部材が進み対偶状態になっていると共に前記第1・第2部材相互間にラチェット機構を備えており、第1部材に対して第2部材がラチェット機構を介して移動可能方向に押し込まれたときには第1部材と第2部材との協働によりアクセルグリップが支持されると共に、第2部材に対してブレーキレバーが係止される状態となり、アクセルグリップの回動が阻止される。
(請求項2記載の発明)
この発明のオートバイの盗難防止具は、上記請求項1記載の発明に関し、第1部材にはシリンダー錠を設けてあり、前記シリンダー錠のキー操作によりラチェット機構が解除状態になるものとしてある。
(請求項3記載の発明)
この発明のオートバイの盗難防止具は、上記請求項1又は2記載の発明に関し、第1部材にはアクセルグリップの断面形状に倣う円弧状部を備えており、第2部材には前記円弧状部側に向ってバネ付勢された押付手段を設けてあり、アクセルグリップは前記円弧状部と押付手段との協働により支持されるようになっている。
【発明の効果】
【0007】
この発明のオートバイの盗難防止具は、コンパクトで且つ使用場所が制限されず、オートバイの盗難を効率的に阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下にこの発明におけるオートバイの盗難防止具を実施するための最良の形態として実施例について詳しく説明する。
【実施例1】
【0009】
図1はオートバイの盗難防止具Aをオートバイに設置した状態を示す斜視図、図2は前記盗難防止具Aをオートバイに設置した状態を示す下面図、図3は前記盗難防止具Aの斜視図、図4は前記盗難防止具Aの断面図、図5は前記盗難防止具Aの分解斜視図を示している。
【0010】
(このオートバイの盗難防止具Aの基本的構成について)
このオートバイの盗難防止具Aは、図1〜図4に示すように、アクセルグリップ90の取付部92(又はその付近)に揺動可能に取付られたブレーキレバー91を有するオートバイ9に使用されるものであり、第1部材1に対して第2部材2が進み対偶状態になっていると共に前記第1・第2部材1,2相互間にラチェット機構3を備えており、第1部材1に対して第2部材2がラチェット機構3を介して移動可能方向に押し込まれたときには第1部材1と第2部材2との協働によりアクセルグリップ90が支持されると共に、第2部材2に対してブレーキレバー91が係止される状態となり、アクセルグリップ90の回動が阻止されるようになっている。
【0011】
上記第1部材1には、図3や図4に示すように、シリンダー錠4を設けてあり、前記シリンダー錠4に対するキー操作によりラチェット機構3が解除状態になるようにしてある。
【0012】
また、第1部材1には、図4に示すように、アクセルグリップ90の断面形状に倣う円弧状部10を備えており、第2部材2には前記円弧状部10側に向ってバネ付勢された押付手段5を設けてあり、アクセルグリップ90は前記円弧状部10と押付手段5との協働により支持されるようになっている。
【0013】
以下に、この盗難防止具Aの主要構成等について詳述する。
【0014】
(第1部材1について)
第1部材1は、図1、図2、図4に示すように、上述した円弧状部10と、前記円弧状部10と一体化されている本体部11とから構成されており、平面視T字状に形成されている。
【0015】
円弧状部10は、図1や図4に示すように、200°程度の円弧を有し且つアクセルグリップ90の長さよりも少し短いものであり、内周面にゴム材14を凹凸ある態様で貼り付けることにより、アクセルグリップ90との摩擦力を高めるようにしてある。
【0016】
本体部11は、図4や図5に示すように、上記円弧状部10の中央から直角に延びる棒状のものであり、長手方向に延びる孔12(奥側で下面側に開放する:この開放部を符号12aで示す)を設けると共に下面側に開放する蟻溝13を設けてある。
【0017】
(第2部材2について)
第2部材2は、図4や図5に示すように、縦部20と、横U字状21とを一体的に成形したものである。
【0018】
縦部20には、図4や図5に示すように、円弧状部10側に向う上記押付手段5を設けてある。
【0019】
横U字状部21には、図4や図5に示すように、上記蟻溝13と蟻嵌合状態となる天板部22を設けてあり、この天板部22には、ラチェット機構3の後述する爪板30が嵌まり込む断面レ状の溝22aを多数配列してある。なお、この横U字状部21の内側R部には、図1に示すようにブレーキレバー91が挿入される。
【0020】
(ラチェット機構3について)
ラチェット機構3は、図4や図5に示すように、爪板30と、区画壁31と、バネ32、カム体33とから構成されている。
【0021】
爪板30は、図4や図5に示すように、中央に開口30aを有し且つ下端部に爪30bを有するものであり、この爪30bの溝22aに対する抜き差しにより円弧状部10側へ向っての移動ができるようになっている。
【0022】
区画壁31は、図4や図5に示すように、断面L字状に形成されたものであり、縦壁には上記開口30aよりも大きな円孔31aを有するものである。
【0023】
バネ32は、図4や図5に示すように、爪板30を下方に付勢し、上記爪30bが常に溝22aと接触する態様で移動するようにしてある。
【0024】
カム体33は、図4や図5に示すように、後述するシリンダー錠4の角芯40と一体的に回動するものであり、上記開口30a内に収められている。なお、図4や図5に示す如く短幅部33bが縦の姿勢になったときには、カム体33と爪板30とのカム機構的対偶はなく、第2部材2は円弧状部10側にのみ移動可能であり、逆方向の移動は溝22aと爪30bとの係止により行なえない。
また、前記状態からシリンダー錠4のキー孔41にキー6を差し込んで90°回すと、長幅部33aが縦の姿勢となる。この状態においては、カム体33と爪板30とのカム機構的対偶により、爪板30は上方に移動して溝22aと爪30bとの係止は解除され、上記逆方向の移動を行なうことができるようになる。
【0025】
(シリンダー錠4について)
シリンダー錠4は、図4や図5に示すように、角芯40及びキー孔41を有するものであれば利用でき、一般的に生産されているもの(例えば自転車の錠に使用されているもの)を利用することができる。このシリンダー錠4は、図5に示した如き、孔12に挿入されており、回り止め具42を使用して孔12の構成壁に対して回動不能に取付られている。
【0026】
(押付部材5について)
押付部材5は、図4に示すように、縦部20の貫通孔に設けられており、棒体51と、これを円弧状部10側に付勢するバネ51と、棒体51を貫通孔から離脱しないようにするピン52とから構成されている。
【0027】
なお、上記棒体51は図4に示すように、縦部20から円弧状部10側に突出しており、その突出端にはアクセルグリップ90との保持力を高めるように凹凸を設けてある。
【0028】
(このオートバイの盗難防止具Aの機能について)
この盗難防止具Aを図1や図2に示す如きオートバイに設置、及び取り外しをする場合以下のようにすればよい。なお、押付部材5が円弧状部10から最も離れた位置にある場合(図3の状態)から説明する。
(1)図3に示した状態にある盗難防止具Aに対して、ブレーキレバー91を第2部材2の横U字状部21に挿入すると共に、円弧状部10をアクセルグリップ90の上方から被せる。
(2)第2部材2を円弧状部10側に移動させる。この移動時においては所謂ラチェット機能を発揮しており、爪30bの溝22aに対する抜き差しにより「カチカチ」という音を発する。棒体50の先端が押し付けられた時点からバネ51の付勢力がアクセルグリップ90に作用し、強固にアクセルグリップ90が棒体50と円弧状部10とにより挟み込まれる。
(3)上記(1)(2)の作業が終了した時点において、アクセルグリップ90を回動しようとすると、ブレーキレバー91が横U字状部21と係止状態となり、アクセルグリップ90の回動は阻止される。つまり運転が不能になる。
(4)次に、盗難防止具Aを外す場合は、キー孔41にキー6を差し込み、キー6を90°回動させる。すると、上述した如く長幅部33aが縦の姿勢となり、カム体33と爪板30とのカム機構的対偶により、爪板30は上方に移動して溝22aと爪30bとの係止は解除される。第2部材2を円弧状部10から引き離すべく移動させる。
(5)ブレーキレバー91を第2部材2の横U字状部21に外すと共に、アクセルグリップ90の上方から円弧状部10を取り去る。運転が可能になる。
(6)以上のことから、この盗難防止具Aはコンパクトであり、または使用場所が制限されず、更に、オートバイの盗難を効率的に阻止できることが明らかである。
(7)その他の機能としては、視認での施錠忘れの防止と視認による盗難防止効果が非常に高い。また、手を汚すことなく盗難防止が簡単にできる。
(その他の事項)
上記実施例にかえて、以下の構成を採用できる。
【0029】
第1部材1において、上記実施例では円弧状部10と本体部11とが一体形成物であったが、本体部11に対して円弧状部10を軸により回動自在とすることができる。この場合、この盗難防止具Aを収納する場合において、本体部11に対して円弧状部を90°回動することにより、平面視T字状からI字状となり、小さな収納スペースに収容可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】オートバイの盗難防止具をオートバイに設置した状態を示す斜視図。
【図2】前記盗難防止具をオートバイに設置した状態を示す下面図。
【図3】前記盗難防止具の斜視図。
【図4】前記盗難防止具の断面図。
【図5】前記盗難防止具の分解斜視図。
【符号の説明】
【0031】
A 盗難防止具
1 第1部材
10 円弧状部
11 本体部
2 第2部材
3 ラチェット機構
4 シリンダー錠
5 押付手段
6 キー
90 アクセルグリップ
91 ブレーキレバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルグリップの取付部又はその付近に揺動可能に取付られたブレーキレバーを有するオートバイの盗難防止具であって、第1部材に対して第2部材が進み対偶状態になっていると共に前記第1・第2部材相互間にラチェット機構を備えており、第1部材に対して第2部材がラチェット機構を介して移動可能方向に押し込まれたときには第1部材と第2部材との協働によりアクセルグリップが支持されると共に、第2部材に対してブレーキレバーが係止される状態となり、アクセルグリップの回動が阻止されることを特徴とするオートバイの盗難防止具。
【請求項2】
第1部材にはシリンダー錠を設けてあり、前記シリンダー錠のキー操作によりラチェット機構が解除状態になることを特徴とする請求項1記載のオートバイの盗難防止具。
【請求項3】
第1部材にはアクセルグリップの断面形状に倣う円弧状部を備えており、第2部材には前記円弧状部側に向ってバネ付勢された押付手段を設けてあり、アクセルグリップは前記円弧状部と押付手段との協働により支持されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2記載のオートバイの盗難防止具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−127757(P2008−127757A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310430(P2006−310430)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000111029)株式会社ニッコー (26)
【Fターム(参考)】