説明

オートフォーカシング手段を有する分析装置と方法

本発明は、患者の血液のような物体を分析する分析装置、特に、分光分析装置と、関連する分析方法に関する。血管内の共焦点検出体積を得るために、皮膚の毛細血管を突き止める直交偏光スペクトルイメージング(OPSイメージング)が用いられる。イメージ処理手段(ipm)が、物体を映し出すイメージングシステム(img)が、分析される物体(obj)にフォーカスされているかどうかを示すイメージ特性を検出されたイメージから求める。イメージ処理手段(ipm)は、物体(obj)の典型的な特性に対応する空間周波数の大きさを検出されたイメージから求めるか、検出したイメージに存在する最大コントラストを求めるようになっているのが好ましい。求められたイメージ特性にもとづいて、オートフォーカシング手段(afm)が状況に応じてフォーカシングを変えるようにフォーカシング手段(mo)を制御し、その後、物体は映し出され、同じイメージ特性が新しいイメージから再び求められる。これは、フォーカシング手段(mo)がフォーカスされる検出面(dp)に、物体(obj)がほぼ位置するようになるまで、繰り返しなされるのが好ましい。このようにして、高い精度を有する一連のオートフォーカシングが達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液のような物体を分析する分析装置、特に、分光分析装置と、関連する分析方法に関する。また、本発明は、物体のターゲットポイントにフォーカシングする光フォーカシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、分光分析装置のような分析装置は、調べられる物体の組成を調べるために、例えば、生体内の血液に含まれるさまざまな成分の濃度を測定するために用いられる。特に、分析装置は、物体の物質と、可視光、赤外線、または紫外線のような入射電磁波との相互作用にもとづく分光分析のような分析を行っている。
【0003】
励起システムとモニタリングシステムとを有する分光分析装置は、参照することによって本明細書に組み込まれる国際公開02/057759A2号に認められる。励起システムは、励起期間の間、ターゲット領域を励起する励起ビームを発射する。モニタリングシステムは、モニタリング期間の間、ターゲット領域を映し出すモニタリングビームを発射する。励起期間とモニタリング期間とはほぼ重なり合っている。したがって、ターゲット領域は励起されるとともに映し出され、イメージはターゲット領域と励起領域の双方を表示するように形成される。このイメージにもとづいて、励起用ビームをターゲット領域に非常に正確に向けることができる。
【0004】
イメージングと局所的な組成のスペクトル分析を同時に行う、国際公開02/057759A2号に認められる分析方法は、共焦点ビデオイメージングとラマン励起とを行うための別個のレーザによって、または、イメージングとラマン分光分析とを一緒に行うための1個のレーザを使うことによってなされる。国際公開02/057759A2号にも記載されている直交偏光スペクトルイメージング(OPSイメージング)は、器官の表面に近い血管を可視化し、人間の皮膚の毛細血管を可視化するのにも用いることができる、簡単で、安価で、強力な方法である。皮膚の表面に近い毛細血管は、約10μmの直径を有している。共焦点検出のために、集められたラマン信号源は、2×2×8μmよりも小さいサイズのスポット内に、3次元のすべての方向によく閉じ込められる。これにより、もし焦点が毛細血管に位置していれば、皮膚の組織からのバックグラウンド信号を除いて、血液からのラマン信号を集めることが可能になる。このスポット配置は、皮膚の表面の下にある血管の深さばかりではなく血管の横方向の位置が1μmかそれ以上の分解能でわかれば可能である。
【0005】
血管検出のOPSイメージングは、欧州特許出願03100689.3号にも詳細に記載されている。そこに記載されている分析装置は、コントラストの波長範囲でコントラストのイメージを生成し、レファレンスの波長範囲でレファレンスのイメージを生成する。これらのイメージは、ターゲット領域、特に、患者の皮膚の毛細血管を正確に特定するために比較される。
【0006】
血管の効果的なバックイルミネーションのために、OPSイメージングは2次元技術であることが必要である。深さの情報だけが、イメージのフォーカス(デフォーカス)の量の影響によって得られる。もし0.8より高い開口数(NA)の対物レンズを用いれば、皮膚の視野の深さは0.5μmより小さくなる。したがって、イメージ分析にもとづく正確なフォーカシングアルゴリズムを用いれば、血管の深さを求めることが可能である。
【0007】
公知のオートフォーカシング方法は、イメージのフォーカス(デフォーカス)の量を定めるメリット関数の値を測定しながら、イメージングビームと共焦点励起ビームを目的の物体にフォーカスする対物レンズの軸方向の位置を走査することにもとづいている。最適の焦点は、メリット関数の値を最適化することによって求められる。一般的に、焦点の位置を変える多くの可能性がある。例えば、対物レンズ内の1つまたは2つのレンズを動かすことができるし(フォトカメラのように)、システム内の対物レンズ全体または他のレンズを動かすこともできる。また、システム内の光学素子、例えば、エレクトロウェッティング光学素子の形を変えることもできる。しかしながら、もし物体がわからなければ、メリット関数の最大値もまたわからない。つまり、メリット関数は、他の焦点位置に対するフォーカスの量についての情報を与えるだけである。
【0008】
患者は、縦方向ばかりではなく横方向にも動く。したがって、共焦点検出中心の最適な位置の連続的な測定と調整が必要である。イメージ面の縦方向の動きは容易に検出することができるが、軸方向の動き(イメージ面に対して垂直)は検出するのがずっと難しい。軸方向の動きまたはデフォーカスの検出の一般的な方法は、最適な焦点位置の中心のまわりで検出面を連続的に動かすことである(いわゆるウォーブリング法)。これは、イメージングシステム内のイメージング対物レンズまたは他の光学素子を移動させることにより行うことができる。もしフォーカスが中心位置の前後でよりよくなれば、対物レンズの中心位置は変えられる。公知のシステムでは、検出体積はイメージ面に位置している。したがって、この検出体積もまた、最適な測定位置のまわりで連続的に動かされる。これは、共焦点検出体積がほんのわずかの時間しか血管の中に位置しないという欠点があり、皮膚のスペクトルと血液のスペクトルが混ざるのを避けるために、ラマン信号の取得はゲートで制御されなければならない。これは、連続的な記録の場合にはすでに少なくとも30秒となる、十分なラマン信号を集めるのに必要な時間を増やすことになる。
【0009】
他の欠点は、血液の流れの変化のために、毛細血管の形と大きさとが連続的に変化することである。そのため、異なる時間に得られたイメージを比較することにより、最適な焦点位置に誤差が加わる。また、十分なラマン信号を集めるためにより多くの時間が必要になることにより、より多くの暗電流が流れ、または、より多くの読み取りノイズが加わることから、ラマンスペクトルにノイズが加わる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、物体が動いている間であっても、検出体積の位置を連続的に変化させることなく、物体、特に血管に励起ビームを連続的かつ正確にオートフォーカシングすることができる、物体のイメージングと分光分析を行う最適化された分析装置と対応する分析方法を提供することにある。また、例えば、動く物体のターゲットポイントを連続的にトラッキングするトラッキングシステムで用いることができる、物体のターゲットポイントにフォーカシングする光フォーカシングシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、
ターゲット領域を励起する励起ビームを発射する励起システムと、
モニタリングビームを発射するモニタリングビーム源、前記ターゲット領域を映し出すイメージングシステムを有するモニタリングシステムと、
前記励起ビームによって生成される、前記ターゲット領域からの散乱放射を検出する検出システムと、
前記励起システムと、前記モニタリングシステムと、前記検出システムとを前記ターゲット領域の検出面にフォーカシングするフォーカシング手段と、
検出されたイメージから、前記イメージングシステムが分析される前記物体にフォーカスされているかどうかを示すイメージ特性を求めるイメージ処理手段と、
前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記物体が前記検出面にほぼ位置するようになるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御するオートフォーカシング手段とを有する、請求項1に記載の分析装置による本発明にしたがって達成される。
【0012】
また、本発明の目的は、請求項11に記載の対応する分析方法によって達成される。本発明の好ましい実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明は、検出されたイメージを評価し、あるイメージパラメータを求め、そのイメージパラメータから、イメージングシステム、さらに励起システムと検出システムとが分析される物体にフォーカスされているかどうかを結論付けるという技術思想にもとづいている。求められたイメージ特性は、フォーカシングを変える必要があるか否かを決めるのに用いられる。もし物体がまだ検出面にない場合、言い換えれば、フォーカシングがまだ十分でない場合、フォーカシングが変えられ、その後、新しいイメージが検出されて、フォーカシングが十分か否かを再びチェックするために、新しいイメージから新しいイメージ特性が求められる。このような繰り返しの処理は、ラマン共焦点検出体積が(血管のような)目的の物体の中にまさに連続的に位置しているかを確かめるために、物体の分析の間、連続的に実行することができる。
【0014】
他の公知のオートフォーカシング技術と比較すると、本発明は、たとえ物体が測定中に動いても、共焦点検出体積を連続的に目的の物体の中心に配置できるという利点を有している。好ましい実施態様によれば、可動素子はまったく必要ではなく、高開口数を有する1つの顕微鏡対物レンズをフォーカシング手段として用いることができる。最適な焦点位置の中心の周りで検出面を連続的に動かすこと(ウォーブリング)も全く必要ではない。本発明の他の利点は、連続的なトラッキング方法のような、または、1回で血管の正しい深さを見つける(例えば、毛細血管の深さを突き止めるラマン測定の前に)ような多くのフォーカシング方法で必要とされる、簡単で、速くて、強力な(相対的に)焦点測定値が得られることである。
【0015】
イメージングシステムが目的の物体にフォーカスされているか否かを示すさまざまなイメージパラメータを利用できる。請求項2に記載された好ましい実施態様によれば、目的の物体の典型的な特性、例えば、血液の生体内分析における血管の典型的な直径に対応する空間周波数が、検出されたイメージから求められる。フォーカス時にはこのような空間周波数の大きさが最大になるので、求められた大きさが最大になるまでフォーカシングは変えられる。
【0016】
請求項4に記載の他の好ましい実施態様によれば、検出されたイメージ、および/または、物体または物体の一部に対応する1つまたは複数のイメージ部分に存在する最大コントラスト、例えば、血液と周囲の組織の間、特に血管の縁で検出イメージに存在する最大コントラストが、血液の生体内分析の間に求められる。フォーカス時にはコントラストが最大になるので、求められたコントラストが最大になるまでフォーカシングは変えられる。
【0017】
コントラストを最大化にすることにもとづく好ましい実施態様は、従属請求項6から9に記載されている。
【0018】
モニタリングシステムは、上述し、国際公開02/057759A1号と欧州特許出願03100689.3号に記載されているような直交偏光スペクトルイメージングを行うようになっているのが好ましい。
【0019】
本発明は、上述したような分析装置で用いることができるだけではなく、請求項12で記載したような、ターゲットポイントにフォーカスされるターゲットシステムと、モニタリングシステムと、フォーカシング手段と、イメージ処理手段と、オートフォーカシング手段とを有する、物体のターゲットポイントにフォーカシングする光フォーカシングシステムにも関連する。本発明は、イメージングシステムが、動くターゲットの特定の点で3次元方向に連続なターゲットポイント、例えば、レーザビームの焦点または分光システムの検出体積を突き止めて、連続的にトラックするために用いられるどんなシステムにでも用いることができる。例は、(生物医学的)レーザ手術、レーザ切断、レーザ溶接、レーザシェービング、光力学的療法、リモートセンシング、軍事用途におけるターゲットおよびトラッキングを含む。また、上述した分析装置は、このような光フォーカシングシステムを含むものとしてみなすことができる。
【0020】
本発明は、本発明の分析システムの実施態様を図示した図1を参照して、これからより詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の分析システムの好ましい実施形態を図示している。分析システムは、調べられる物体(obj)の光イメージを形成する光モニターシステム(lso)を含む。示された例では、物体(obj)は、調べられる患者の前腕の皮膚の一部である。分析システムは、マルチフォトン、非線形、弾性、非弾性光プロセスによって物体(obj)に生成された光の分光分析を行うマルチフォトン、非線形、弾性、非弾性散乱光検出システム(ods)も含む。図1に示された例は、特に、ラマン分光装置の形で、非弾性ラマン散乱検出システム(dsy)を用いている。光という用語は、可視光のみならず、紫外線、赤外線、特に近赤外線を含む。
【0022】
モニタリングシステム(lso)は、モニタリングビーム(irb)を発射するモニタリングビーム源(ls)と、ターゲット領域、例えば、患者の前腕(obj)の上側の皮膚(D)の血管(V)を映し出すイメージングシステム(img)とを含む。この例におけるモニタリングビーム源(ls)は、白色光源(las)と、レンズ(l1)と、560〜570nmの波長領域の光を生成する干渉フィルタ(不図示)を含む。また、モニタリングビーム(irb)を偏光する偏光子(p)が備えられる。したがって、モニタリングビーム源(ls)は、直交偏光スペクトルイメージング(OPSイメージング)が行えるようになっている。
【0023】
OPSイメージングでは、偏光された光が、顕微鏡対物レンズ(mo)により、偏光ビームスプリッタ(pbs)を通して皮膚(obj)に投射される。光の一部は、表面から直接に反射する(鏡面反射)。他の部分は皮膚に侵入し、吸収されるか、または、皮膚の表面から再放射される前に、1回または複数回散乱する(散漫反射)。これらの散乱現象のいずれにおいても、入射光の偏光は微妙に変化する。直接反射または皮膚にちょっとだけ侵入した光は、再放射される前に1回または数回だけ散乱し、たいていの場合、その初期の偏光を維持する。他方、より深く皮膚に侵入した光は、多重散乱現象を経験し、表面に向かって逆方向に再放射される前に完全に無偏光になる。
【0024】
第1の偏光子(p)の偏光方向に対してちょうど直交するように向けられた第2の偏光子またはアナライザ(a)を通して物体(obj)を見たとき、表面または皮膚の上部から反射された光はかなり抑制される。他方、皮膚に深く侵入した光はほとんどが検出される。その結果、イメージはあたかも後方から照射されているように見える。590nmより下の波長は血液によって強く吸収されるので、血管はOPSイメージでは暗く見える。
【0025】
一般的に、イメージは、単色CCDカメラを用いて取得される。血管は、血液細胞の大きさ、形、動きによって、他の吸収構造から分離される。本実施形態で用いられるイメージングシステム(img)は、偏光されたモニタリングビーム(irb)の光に対して直交する偏光を有し、偏光ビームスプリッタ(pbs)を通して物体(obj)から逆方向に反射された光のみを透過させる上記のアナライザ(a)を有する。この光はさらに、レンズ(l2)によってCCDカメラ(CCD)にフォーカスされる。
【0026】
ラマン分光装置(ods)は、励起ビーム(exb)を発射する励起システム(exs)と、ターゲット領域からのラマン散乱された信号を検出する検出システム(dsy)とを有する。励起システム(exs)は、785nmの赤外ビーム(exb)の形で励起ビームを生成するダイオードレーザとして構築することができる。もちろん、他のレーザを同じように励起システムとして用いることができる。ミラー系と、例えば光ファイバとが、励起ビーム(exb)をダイクロイックミラー(f1)に導き、当該ダイクロイックミラーにより、励起ビーム(exb)をモニタリングビーム(irb)と一緒に、双方のビームを物体(obj)にフォーカスする顕微鏡対物レンズ(mo)に導く。
【0027】
ダイクロイックミラー(f1)はまた、戻ってきた(モニタリング)ビームを散乱されたラマン信号から分離する。反射されたモニタリングビームはイメージングシステム(img)を透過するのに対し、弾性または非弾性に散乱された、物体からのラマン光はダイクロイックミラー(f1)で反射され、励起ビームの光路に沿って逆方向に導かれる。非弾性散乱されたラマン光は、その後、適切なフィルタ(f2)によって反射され、検出システム(dsy)のラマン検出光路に沿って、CCD検出器を備えた分光計の入力に向けられる。CCD検出器を備えた分光計は、800〜1050nmの波長範囲のラマンスペクトルを記録する検出システム(dsy)に組み込まれている。CCD検出器を備えた分光計の出力信号は、ラマン散乱された赤外光のラマンスペクトルを表す。CCD検出器の信号出力は、スペクトル表示ユニット、例えば、記録されたラマンスペクトルをモニター上に表示するワークステーションに接続される。また、ラマンスペクトルを分析し、1つまたは複数の成分の濃度を計算する計算ユニット(例えばワークステーション)が備えられる。
【0028】
分析装置一般とその機能のさらなる詳細については、上記国際公開02/057759A1号と欧州特許出願03100689.3号に言及されている。
【0029】
血管(V)において共焦点ラマンシステム(ods)の連続的なオートフォーカシングを達成するために、イメージ処理手段(ipm)とオートフォーカシング手段(afm)とが備えられる。このようなオートフォーカシングは、血管を突き止め、ラマンシステムをこの血管に向けるために必要である。患者は血液分析中、縦(x,y)方向ばかりではなく、横(z)方向にも動くので、共焦点検出中心の最適な位置の連続的な決定と調節が必要である。縦方向の動きはイメージングシステムによって容易に検出可能であるが、他方、軸方向の動きは検出するのがずっと難しい。
【0030】
本発明によると、イメージ処理手段(ipm)は、物体(obj)の取得されたイメージを処理し、イメージングシステム(img)、さらに、励起システム(exs)と検出システム(dsy)とが、物体(obj)、特に血管(V)にフォーカスされているか否か、すなわち、目的の物体(血管)が、顕微鏡対物レンズ(mo)がフォーカスされる検出面(dp)にほぼ位置しているかどうかを示すイメージ特性を求める。実際、物体がわかっていない場合、相対的な焦点測定値のみを求めることができ、したがって、焦点測定値はいつも異なる位置の焦点測定値と比較される。最も高い(または最も低い)値の焦点測定値を有する位置が、最適な焦点を有する位置である。異なるイメージ特性、好ましくは、血管の典型的な直径に対応する空間周波数の大きさ、または、血液と周囲の組織とのコントラストはこのような示唆を与えることができる。求められたイメージ特性にもとづいて、オートフォーカシング手段(afm)は、状況に応じて顕微鏡対物レンズのフォーカシングを変えるように、すなわち、可能ならフォーカシングを改善するように、顕微鏡対物レンズ(mo)を制御する。この変化の後、モニタリングシステム(lso)は、新しいイメージにおいて今求められた同じイメージ特性にもとづいてフォーカシングが改善したか否かをチェックするために、イメージ処理手段(ipm)によって再び同じように処理される物体の別のイメージを取得するように制御される。この反復の処理が、分析の間患者の動きを補償するように、血液分析の間中、連続的に、または、所定の時間間隔で実行される。他の使用は、ラマン測定が始まる前に最適な焦点の位置を求めることである。
【0031】
上述したように、異なるイメージ特性を用いることができる。次に、血管のOPSイメージングにおける自動フォーカシングで用いられる本発明の好ましいイメージ特性を説明する。
【0032】
(1)第1の好ましいイメージ特性は、血管の典型的なディメンジョンである。皮膚表面近傍の毛細血管は、10μmの典型的な直径と、約50μmの(目に見える)長さを有することが知られている。これらの典型的なディメンジョン以下の波長に対応する空間周波数の大きさを最大化することによって適切な焦点を求めるために、2次元空間フーリエ変換を用いることができる。これは、欧州特許出願03100689.3号に詳細に記載された、コントラスト波長と基準波長とを有するOPSイメージングを意味する二色OPSイメージングばかりではなく、単色OPSイメージングでも用いることができる。
【0033】
(2)第2の好ましいイメージ特性は、血液と周囲の組織のコントラストである。コントラストにもとづくオートフォーカシング方法を説明する前に、2点の一般的な説明を行わなければならない。二色OPSイメージングでは、赤および黄/緑のイメージを差し引いた後に見えるほとんどすべての構造は血管である。したがって、イメージのコントラストを最大化することにもとづくどんな方法も自動的に血管を選択する。しかしながら、単色OPSイメージングは、血管ばかりではなく、皮膚表面近傍の他の構造も見える。したがって、血管にのみフォーカスすることに注意を向けなければならない。他の構造は、多くのピクセルにわたって平均をとることによって、および/または、ハイパス空間フーリエフィルタを用いることによって、抑えることができる。単色OPSイメージングシステムでは、(前処理された)イメージがイメージ分析に用いられ、血管は明るい背景上に暗い構造として現れる。二色OPSイメージングでは、異なるイメージ(黄/緑から赤を引いたもの)が処理に用いられ、血管は暗い背景上に明るい構造として現れる。
【0034】
コントラストに基づくオートフォーカシング方法は、4つのカテゴリに分類することができる。すべての方法において、イメージの平均強度は一定に保たれる。
【0035】
(a)深さの関数として、1つの画素の強度を最大化または最小化する。焦点面(検出面)の外側からくる光は、イメージにおいていくつかの画素にわたって広がる。この広がりによって、明るい領域の強度は減少するのに対し、暗い領域の強度は増加する。単色OPSイメージングでは、血管は周囲の組織に比べて暗くなるので、最も暗い画素を含むイメージが得られれば、血管は焦点が合った状態になる。二色OPSイメージングでは、血管は周囲の組織に比べて明るくなるので、最も明るい画素を含むイメージが得られれば、血管は焦点が合った状態になる。数学的には、これは(Ii,jmax(z)の最大化または(Ii,jmin(z)の最小化として表すことができる。ここで、(Ii,jmax(z)と(Ii,jmin(z)とは、イメージングシステムが皮膚表面下の深さzでフォーカスされたときに最大強度または最小強度を有する画素の強度を表す。
【0036】
(b)深さの関数として画素の強度の広がりを最大化する。焦点面の外側からくる光は、イメージにおいていくつかの画素にわたって広がるので、血管が焦点の外れた状態にあれば、強度分布の広がりは減少する。最適な焦点は、
【数1】

を最大化することによって得ることができる。ここで、(I)i,j(z)は、座標i,jの画素で測定された強度であり、
【数2】

は、イメージングシステムが皮膚表面下の深さzでフォーカスされたときに、すべてのピクセルにわたって平均化された強度である。
【0037】
(c)深さの関数として隣り合う画素の強度差の平均を最大化する。焦点面の外側からくる光は、イメージにおいていくつかの画素にわたって広がるので、血管が焦点面の外側にあると、隣り合う画素の強度差の平均は減少する。最適な焦点は、
【数3】

を最大化することによって得ることができる。
【0038】
(d)深さの関数として隣り合う画素の差の絶対値を最大化する。イメージ全体において隣り合う画素の強度差の平均をみるかわりに、隣り合うピクセルの間で最も大きなコントラストを有するイメージを調べることによって、最適な焦点を求めることができる。数学的には、これは、
【数4】

の最大化として表現することができる。
【0039】
上述した各方法は、それぞれ利点および欠点を有している。方法(2a)は、(1つの血管に属する)1つの画素のみを考慮すればよいという利点を有している。コントラストを最大化することによって、皮膚表面に近い最も厚い血管の中心を自動的に選択する。これは、血液のラマン分光分析にとって最も都合よく用いられる位置でもある。方法(2d)は、単一の血管の縁を調べる。したがって、単一の血管の縁で血管はフォーカスされるが、最適なラマン測定の位置は、血管の中心に位置している。方法(2a)と(2d)では1つまたは2つの画素しか用いられないので、これらの技術はノイズに対して敏感である。
【0040】
方法(1)、(2b)、(2c)は、最適な焦点を求めるためにイメージ全体を用いるので、ノイズに対してあまり敏感ではない。しかしながら、これらは、複数の血管の最適な焦点を求めている。これらの血管は同じ深さにはないので、焦点面は血管の間に存在しうる。この問題は、フォーカシングの際に単一の血管を含む目的の領域を用いることによって解決することができる。
【0041】
コントラストの差は、デフォーカスのために生じる強度の広がりに比べて小さい構造のみ検出可能である。したがって、デフォーカスは、構造の端部近傍で容易に検出することができる。これは、方法(2c)および(2d)でなされる。物体のイメージの中心における強度は、構造のイメージよりも大きい広がりを生じるデフォーカスのために変化するだけである。したがって、最大または最小強度にもとづく方法(2a)は、デフォーカスに対してあまり敏感ではない。
【0042】
他の好ましい実施形態は、オートフォーカシングのアルゴリズムの組み合わせである。
1.血液の吸収によって生じる構造のみを検出する二色OPSイメージングを用いる。
2.隣り合う画素の強度差の平均を最大化することによって、複数の血管の最適な平均焦点を求める(方法2c)。
3.単一の血管(またはその一部)のイメージを含む目的の領域を選択する。
4.
a.隣り合う画素の強度差の平均を最大化する(方法2c)、
または、
b.単一の画素の強度を最小化する
ことによって、この血管の最適な焦点を求める。
【0043】
aまたはbの選択は、絶対強度と強度差とがフォーカス(デフォーカス)の量にどのように依存するかに依存する。
【0044】
完全なイメージをオートフォーカシングに用いることができる。しかしながら、異なる血管またはその一部は、皮膚表面下の異なる深さにある。したがって、オートフォーカシングには、最適なラマン測定位置の周りの目的の領域を用いるのがより正確である。より質の高いイメージを用いた他の用途では、本発明の方法を用いると、焦点の深さの1%の正確性を達成することができる。したがって、ラマン励起ビームの自動フォーカシングでは、1μmのオーダーの正確性を得ることができる。
【0045】
上では、白色光源とフィルタとを有する単色OPSイメージングの実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、他の単色、二色、複数色のOPSイメージングの実施形態を含む多くの異なる実施形態で用いることができる。
【0046】
公知のオートフォーカシング技術と比較して、本発明の方法は、共焦点検出体積が、中の血液が分析される血管の中心に連続的に位置することができるという利点を有している。評価されるイメージは、連続的に測定するのが好ましい。また、本発明は、多くのフォーカシング方法、例えば、1回で血管の正しい深さを求める方法で用いることができ、焦点測定値を得るのに、簡単で、速くて、強力な(相対的に)方法として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の分析システムの実施形態を図示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を分析する分析装置、特に、分光分析装置であって、
ターゲット領域を励起する励起ビームを発射する励起システムと、
モニタリングビームを発射するモニタリングビーム源、前記ターゲット領域を映し出すイメージングシステムを有するモニタリングシステムと、
前記励起ビームによって生成される、前記ターゲット領域からの散乱放射を検出する検出システムと、
前記励起システムと、前記モニタリングシステムと、前記検出システムとを前記ターゲット領域の検出面にフォーカシングするフォーカシング手段と、
検出されたイメージから、前記イメージングシステムが分析される前記物体にフォーカスされているかどうかを示すイメージ特性を求めるイメージ処理手段と、
前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記物体が前記検出面にほぼ位置するようになるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御するオートフォーカシング手段とを有する装置。
【請求項2】
前記イメージ処理手段は、検出されたイメージから前記物体の典型的な特性に対応する空間周波数の大きさを求めるようになっており、前記オートフォーカシング手段は、前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を繰り返し映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記求められた空間周波数の大きさが最大になるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御するようになっている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記分析装置は、血液の生体内分析をするようになっており、前記イメージ処理手段は、検出されたイメージから血管の典型的な直径に対応する空間周波数の大きさを求めるようになっている、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記イメージ処理手段は、検出されたイメージ、および/または、前記物体または物体の一部に対応する1つまたは複数のイメージ部分に存在する最大コントラストを求めるようになっており、前記オートフォーカシング手段は、前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を繰り返し映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記求められたコントラストが最大になるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記分析装置は、血液の生体内分析をするようになっており、前記イメージ処理手段は、血液と周囲の組織との間、特に、血管の縁で、検出されたイメージに存在する最大コントラストを求めるようになっている、請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記オートフォーカシング手段は、前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を繰り返し映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記検出されたイメージ内の、前記求められた1つまたは複数の画素の強度が極値を示すまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御する、請求項4に記載の分析装置。
【請求項7】
前記オートフォーカシング手段は、前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を繰り返し映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記検出されたイメージ内における画素の強度の広がりが最大になるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御する、請求項4に記載の分析装置。
【請求項8】
前記オートフォーカシング手段は、前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を繰り返し映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記検出されたイメージにおける、隣り合う画素の強度差の平均値が最大になるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御する、請求項4に記載の分析装置。
【請求項9】
前記オートフォーカシング手段は、前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を繰り返し映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記検出されたイメージにおける、隣り合う画素の強度差の絶対値が最大になるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御する、請求項4に記載の分析装置。
【請求項10】
前記モニタリングシステムは、直交偏光スペクトルイメージング、特に、二色直交偏光スペクトルイメージングをするようになっている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項11】
物体を分析する分析方法、特に、分光分析方法であって、
励起システムが、ターゲット領域を励起するために、励起ビームを発射するステップと、
モニタリングシステムが、イメージングシステムにより前記ターゲット領域を映し出すように、モニタリングビームを発射するステップと、
検出システムが、前記励起ビームによって生成される、前記ターゲット領域からの散乱放射を検出するステップと、
フォーカシング手段が、前記励起システムと、前記モニタリングシステムと、前記検出システムとを前記ターゲット領域の検出面にフォーカシングするステップと、
検出されたイメージから、前記イメージングシステムが分析される前記物体にフォーカスされているかどうかを示すイメージ特性を求めるステップと、
前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステムと、前記励起システムと、前記検出システムとのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記物体が前記検出面にほぼ位置するようになるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御するステップとを有する方法。
【請求項12】
物体のターゲットポイントにフォーカシングする光フォーカシングシステムであって、
前記ターゲットポイントにフォーカスされるターゲットシステムと、
モニタリングビームを発射するモニタリングビーム源、および、前記ターゲット領域を映し出すイメージングシステムを有するモニタリングシステムと、
前記ターゲットシステム、および、前記モニタリングシステムを前記ターゲット領域の検出面にフォーカシングするフォーカシング手段と、
検出されたイメージから、前記イメージングシステムが分析される前記物体にフォーカスされているかどうかを示すイメージ特性を求めるイメージ処理手段と、
前記求められたイメージ特性にもとづいて、前記モニタリングシステム、および、前記ターゲットシステムのフォーカシングを変えるように前記フォーカシング手段を制御し、前記ターゲット領域を映し出すように前記モニタリングシステムを制御し、前記物体が前記検出面にほぼ位置するようになるまで、検出されたイメージから前記イメージ特性を求めるように前記イメージ処理手段を制御するオートフォーカシング手段とを有するシステム。
【請求項13】
前記ターゲットシステムは、前記物体の前記ターゲットポイントにフォーカスされる光ビームを発射する光ビーム生成手段、特に、レーザビームを発射するレーザを有する、請求項12に記載の光トラッキングシステム。
【請求項14】
レーザ手術、レーザ切断、レーザ溶接、レーザシェービング、光力学的療法、ラジオ療法、リモートセンシング、ターゲットおよびトラッキングの分野で用いられるようになっている、請求項12に記載の光トラッキングシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2006−527852(P2006−527852A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516695(P2006−516695)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050911
【国際公開番号】WO2004/111621
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】