説明

オートフォーカス装置及びその制御方法、プログラム、並びに顕微鏡

【課題】簡単、かつ、確実に、対物レンズに関する情報を登録できるようにする。
【解決手段】オートフォーカス装置は、焦点位置における最適な光量値を決定し(S37)、焦点位置からのずれ量に応じて求められる変化量を演算し(S38ないしS42)、決定された光量値、及び、演算された変化量により特定される対物レンズの種類を判別する(S43)ことにより、簡単、かつ、確実に、対物レンズに関する情報を登録できるようになる。本発明は、対物レンズを通過した光を用いて自動焦点調節を行うオートフォーカス装置に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス装置及びその制御方法、プログラム、並びに顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対物レンズを交換可能なオートフォーカス装置が用いられている。このようなオートフォーカス装置において、対物レンズを通って反射してくる検出信号は、対物レンズの倍率と開口数(N.A.(Numerical Aperture))ごとに異なっている。この検出信号のピーク強度が適切でない場合、合焦不可や暴走の原因となるため、各対物レンズに対して、光源の光量を適切に設定する必要がある。
【0003】
また、この検出信号から差分を計算し、オートフォーカスに必要なフィードバック量を計算するために、各対物レンズに対して、フィードバックのゲイン量を設定する必要がある。
【0004】
すなわち、オートフォーカスを行う場合には、対物レンズごとに、パラメータを設定する必要があるため、従来のオートフォーカス装置においては、対物レンズの種類ごとの各パラメータを、あらかじめ外部の入力装置を使って登録しておき、そこから光路に入った対物レンズに合わせてパラメータを設定している。これにより、対物レンズの種類に応じたオートフォーカスを行うことが可能となる。
【0005】
また、対物レンズの判別に関する技術としては、たとえば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平3−37605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、あらかじめ登録された各対物レンズのパラメータのなかから、光路に入った対物レンズのパラメータを設定しているため、使用前に、対物レンズの種類ごとのパラメータを、外部の入力装置を用いて登録しなければならなかった。
【0007】
そのため、登録には多大な労力を必要とし、さらには、登録ミスによる動作不良も発生することとなっていた。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、簡単、かつ、確実に、対物レンズに関する情報を登録できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のオートフォーカス装置は、対物レンズを通過した光を用いて自動焦点調節を行うオートフォーカス装置において、自動焦点調節を行うときに検出される検出信号を用いて、対物レンズの種類を判別する判別手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の制御方法は、対物レンズを通過した光を用いて自動焦点調節を行うオートフォーカス装置の制御方法において、自動焦点調節を行うときに検出される検出信号を用いて、対物レンズの種類を判別するステップを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のプログラムは、上述した本発明の制御方法に対応するプログラムである。
【0012】
本発明の顕微鏡は、自動焦点調節を行うときに検出される検出信号を用いて、対物レンズの種類を判別する判別手段を有するオートフォーカス装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単、かつ、確実に、対物レンズに関する情報を登録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用したオートフォーカス装置を搭載した顕微鏡の一実施の形態の構成を示す図である。
【0016】
顕微鏡1は、観察の対象物である試料Sの拡大像を形成して観察に使用するものである。図1に示すように、顕微鏡1は、対物レンズ14、観察用光源15、ダイクロイックミラー16、カメラ17、AF(Auto Focus)用光源18、センサ19、及びハーフミラー36を含むように構成される倒立顕微鏡である。顕微鏡1にはまた、入力部12からの操作信号等に応じて、顕微鏡1の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)11、及びCPU11からのデータを格納するメモリ13が設けられる。
【0017】
なお、説明を簡略化するため、図1の顕微鏡では、説明に必要な構成部品のみを図示している。また、図1には、図示していないが、試料Sは、たとえば、カバーガラス21やスライドガラスに挟まれて、ステージ上に載置されている。さらに、図中の太線は、光路を表わしている。
【0018】
まず、顕微鏡1の光学系について説明する。顕微鏡1の光学系は、試料Sの上部に配置されている観察光学系と、その側方に配置されているオートフォーカス装置の光学系であるフォーカス光学系から構成される。
【0019】
フォーカス光学系は、その光軸上に、AF用光源18と、ハーフミラー36や図示せぬその他の光学系が配設されて構成されている。また、本実施の形態において、オートフォーカス装置は、スリット投影方式を採用しているので、フォーカス光学系には、スリット開孔が形成されたスリット板が設けられている。そして、AF用光源18からの光をスリットに通してスリット状の照明光を作り、そのスリット状の照明光を光軸から長手方向に延びる中心線に沿って二分し、一方を遮光し、残った他方の照明光を、対物レンズ14を通して試料Sに照射する。
【0020】
フォーカス光学系にはまたAF用のセンサ19が設けられており、このセンサ19は、AF用光源18によりステージ上の試料Sに照射されて反射するスリット状の光を受光するものである。ここで、ステージ上の試料Sは、カバーガラス21により覆われているため、対物レンズ14で結像された光は、カバーガラス21の表面や、カバーガラス21と試料との境界面(試料面)で反射する。カバーガラス21や試料面等で反射した光は、対物レンズ14で平行光に変換され、ダイクロイックミラー16に当たって側方に反射される。このダイクロイックミラー16は、フォーカス光学系と観察光学系の光軸の交差する点に配設されており、後述するように観察光学系でも共用されている。
【0021】
そして、ダイクロイックミラー16により反射された光は、ハーフミラー36や図示せぬ各種の光学系を通った後、AF用のセンサ19に入射する。センサ19は、たとえばラインCCD(Charge Coupled Device)や2分割センサからなり、その受光面に結像した像から得られる情報を、AF信号として、CPU11に供給する。CPU11は、このAF信号からたとえば対物レンズ14を、光軸方向位置へ駆動する制御(上下動位置操作)を行い、対物レンズ14と試料Sとの距離を調整し、合焦位置への制御を行う。すなわち、CPU11は、オートフォーカス制御として、AF用光源18の位置ずれを検出し、フィードバックをかけることで、焦点を合わせる。
【0022】
一方、観察光学系は、試料Sに近い方から順に、対物レンズ14、ダイクロイックミラー16が配設されて構成されており、さらに、ダイクロイックミラー16の先には、ダイクロイックミラー16を透過した光の像を撮像面で結像して撮像するカメラ17が設けられる。また、図1に示すように、顕微鏡1には、ステージ上に載置された試料Sを照明するための観察用光源15が設けられている。観察用光源15は、透過型又は落射型であり、透過型の場合にはステージの下方に配置され、落射型の場合にはステージの上方に配置される。観察用光源15から照射された光は、試料Sを透過して観察光となり、対物レンズ14を経て、ダイクロイックミラー16を透過し、カメラ17の撮像面に試料Sの観察像が結像され、観察に供される。なお、図示はしていないが、観察光学系の光軸上に、観察光の一部を反射して、他の一部を透過するハーフミラーを設け、そのハーフミラーによって反射された観察光を対物レンズ及び接眼レンズにより入射させることで、試料Sの観察像が結像され、観察に供される。
【0023】
なお、本実施の形態では、顕微鏡1は、倒立顕微鏡であるとして説明するが、本発明は、試料を上方から観察する正立顕微鏡にも適用することができる。
【0024】
以上のようにして、顕微鏡1は構成される。
【0025】
次に、図2のフローチャートを参照して、図1のCPU11により実行されるオートフォーカス制御処理について説明する。
【0026】
ステップS11において、CPU11は、メモリ13を参照して、対物レンズ14の種類に関するデータ(以下、対物種類データという)が取得済みであるか否かを判定する。ステップS11において、対物種類データが未取得であると判定された場合、ステップS12において、CPU11によって、対物レンズ種類判別シーケンスが実行される。
【0027】
ここで、ステップS12において実行される、対物レンズ種類判別シーケンスの詳細について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0028】
ステップS31において、観察試料又は対物レンズ判定用の試料などの試料Sがサンプルとして、ステージ上に載置され、たとえば、利用者により入力部12が操作されることで、CPU11は、図3の対物レンズ種類判別シーケンスの実行を開始する。
【0029】
このシーケンスが開始されると、まず、CPU11は、ステップS32において、AF用光源18の光量値を最大に設定し、ステップS33において、それにより得られるセンサ19からのAF信号に基づいて、AF信号強度判定を行う。より具体的には、本実施の形態において、オートフォーカス装置は、スリット投影方式を採用しているので、AF用光源18からの光量値を最大にした光をスリットに通してスリット状の照明光を作り、ダイクロイックミラー16、対物レンズ14を通して試料Sに集光照射する。試料Sに集光照射された照明光は試料Sで反射し、対物レンズ14、ダイクロイックミラー16を通って、センサ19に結像されて検出され、AF信号として、CPU11に入力される。
【0030】
ステップS33において、センサ19により検出されたAF信号のうち、最も信号のレベルの高いところが、センサ出力の最大値の70%以下であると判定された場合、ステップS34において、CPU11は、対物レンズ14を制御して、光軸に沿って駆動させることで、焦点位置を変更する。すなわち、ステップS33及びステップS34の処理によって、AF信号強度の高くなる対物レンズ14の位置が求められ、最終的に、ステップS33において、センサ出力の最大値の70%以上となったと判定されたとき、処理は、ステップS35に進む。
【0031】
ステップS35において、CPU11は、一方向に対物レンズ14をずらしていったときに、最も検出信号強度の高い位置をピークとして検出するピーク判定を行う。その後、CPU11は、ステップS36において、AF用光源18からの光量値が小さくなるように光量設定した後、上述した、ステップS33ないしステップS36の処理を繰り返し実行する。そうすると、ピーク判定によりピークが検出されるので、ステップS37において、CPU11は、ピーク判定の結果に基づいて、焦点位置における最適な光量値を判定し、決定する。すなわち、AF信号強度判定によって、たとえば、図4に示すように、検出信号の波形が、センサ最大出力の70%などのあらかじめ定められたしきい値の範囲内に入った場合において、AF用光源18からの光量値の調節が繰り返されることで、ピークが検出され、焦点位置における最適な光量値が得られることになる。
【0032】
図3のフローチャートに戻り、CPU11は、ステップS38において、対物レンズ14を光軸に沿って駆動して、焦点位置から−1umずらし、ステップS39において、差分信号aを計算した後、メモリ13に記憶する。たとえば、図5に示すように、図中の点線で示す焦点位置での検出信号は、対物レンズ14を光軸に沿って駆動して、焦点位置から−1umずらすことで、図中の実線で示す−1umずらしたときの検出信号に示すように、その信号のレベルが低下することになる。
【0033】
また、図6に示すように、対物レンズ14の上下方向の移動量を水平方向の軸(Z)で表わし、焦点位置からのずれ量を垂直方向の軸で表わしたとき、焦点位置−1umは、原点(0,0)で示される焦点位置から斜め下方向の第3象限の点で表わされる。CPU11は、この第3象限の点で表わされる差分信号aを計算し、その値をメモリ13に記憶させる。
【0034】
その後、CPU11は、ステップS40において、さらに、対物レンズ14を、焦点位置から+1umずらし、ステップS41において、差分信号bを計算した後、メモリ13に記憶する。たとえば、図5に示すように、焦点位置から+1umずらされることで、図中の実線で示す+1umずらしたときの検出信号で示すように、その信号のレベルが低下することになる。また、図6に示すように、焦点位置+1umは、原点(0,0)で示される焦点位置から斜め上方向の第1象限の点で表わされる。CPU11は、この第1象限の点で表わされる差分信号bを計算し、その値をメモリ13に記憶させる。
【0035】
図3のフローチャートに戻り、ステップS42において、CPU11は、メモリ13から差分信号a,bを読み出し、差分信号a,bの変化量(a−b)を計算する。
【0036】
すなわち、図6に示すように、CPU11によって、焦点位置から任意の位置までのずれ量をプロットしていったものが、差分信号計算値(S字)であって、この値から求められる変化量(傾き)が対物レンズ14の種類ごとに異なっているので、本発明においては、その点に着目し、この変化量(傾き)を、対物レンズ14の種類の判別に用いるのである。言い換えれば、本実施の形態において、傾きとは、焦点位置からのずれに応じて求められる変化量であると言える。
【0037】
なお、本実施の形態においては、説明の都合上、ずれ量を±1umとして説明するが、必ずしもその範囲である必要はなく、たとえば、±0.1〜10umの間の範囲であれば、如何なる範囲であってもよい。つまり、ずれ量を変えることで、図6の差分信号計算値のプロットの仕方も変化することになる。また、本実施の形態においては、一定速度で対物レンズ14を駆動したときの差分信号をとることで、図6の対物レンズ14の移動量を示す水平方向の軸を、時間軸とすることも可能である。
【0038】
ステップS43において、CPU11は、判定した光量値及び差分信号の変化量(傾き)から対物レンズ14の種類を決定する。対物レンズ14の決定には、たとえば、図7に示すような、あらかじめ用意された換算表が用いられる。すなわち、図7に示すように、換算表は、光量[mW]と傾き(変化量)[LSB]の値を、対物レンズ14の種類に換算するものである。なお、図7の換算表は、40 mWの光源を使用した場合の値である。また、傾きは、差分量の計算値となるため、単位は存在しない。
【0039】
たとえば、光量が0.7〜0.9[mW]であって、傾きが20〜30[LSB]である場合には、対物レンズ14の種類として、10倍、N.A. 0.45が求められる。同様にして、図7に示すように、光量:0.8〜1.1[mW],傾き:110〜130[LSB]である場合には、20倍、N.A. 0.75、光量:1.8〜2.2[mW],傾き:140〜160[LSB]である場合には、40倍、N.A. 0.95、光量:4.2〜4.6[mW],傾き:410〜450[LSB]である場合には、60倍、N.A. 1.40、光量:26〜28[mW],傾き:750〜800[LSB]である場合には、100倍、N.A. 1.40が、対物レンズ14の種類として、それぞれ求められる。
【0040】
たとえば、ステップS37の処理により求められた光量値が1.0[mW],ステップS42の処理により求められた差分信号の変化量(傾き)が125[LSB]となる場合には、図7の換算表にしたがって、対物レンズ14の種類は、20倍、N.A. 0.75の対物レンズであると決定される。
【0041】
このように、本発明を適用したオートフォーカス装置を搭載した顕微鏡1においては、焦点位置における最適な光量値、焦点位置からのずれ量に応じて求められる変化量などのオートフォーカス制御を行う際に検出される検出信号を用いて、対物レンズの種類が判別される。
【0042】
そして、対物レンズ種類判別シーケンスが終了すると、処理は、図2のステップS12に戻り、ステップS13において、CPU11は、対物レンズ種類判別シーケンスを実行して求められた対物レンズの種類のデータを記憶する。
【0043】
ステップS14において、CPU11は、メモリ13に記憶されている現在の(光路に挿入されている)対物レンズ14の種類に応じたフィードバックのゲイン量などの設定値を読み出し、設定する。なお、このフィードバックのゲイン量は、各対物レンズの種類ごとに異なる設定値の一例であって、ここでは、その他の設定値が設定されるようにしてもよい。
【0044】
そして、CPU11は、ステップS15において、オートフォーカスを開始するか否かを判定し、オートフォーカスを開始する場合には、ステップS16において、上述したような、オートフォーカスの制御を行う。
【0045】
その後、CPU11は、ステップS17において、オートフォーカスを終了するか否かを判定し、オートフォーカスを終了すると判定された場合、オートフォーカス処理は終了する。一方、ステップS15において、オートフォーカスを開始しないと判定された場合、あるいは、ステップS17において、オートフォーカスが終了したと判定された場合、処理は、ステップS15に戻り、ステップS15ないしステップS17の処理が繰り返される。
【0046】
以上のように、顕微鏡1においては、焦点位置における最適な光量値、及び、対物レンズ14を駆動することで得られる焦点位置からのずれ量に応じて求められる変化量を用いて、対物レンズ14の種類を判別できるので、顕微鏡1を使用する前に、外部の入力装置を用いて、あらかじめ対物レンズ14に関する情報を登録しなくてよい。これにより、登録する際の労力を削減できるとともに、登録ミスによる動作不良の発生も、未然に防ぐことが可能となる。
【0047】
次に、図8を参照して、本発明を適用したオートフォーカス装置を搭載した顕微鏡の一実施の形態の他の構成について説明する。
【0048】
なお、図8では、図1と同様の箇所には、同一の符号が付してあり、処理が同じ部分に関しては、その説明は繰り返しになるので省略する。すなわち、この例においては、複数の対物レンズを切り替えることが可能である対物レンズ切り替え部33が設けられており、この対物レンズ切り替え部33は、CPU11からの指示にしたがって、対物レンズ141と対物レンズ142とを適宜切り替える。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するため、対物レンズ141と対物レンズ142の2つの対物レンズを例にして説明するが、対物レンズの数が3つ以上となった場合でも同様に処理される。また、以下、対物レンズ141と対物レンズ142とを、特に区別する必要がない場合には、単に、対物レンズ14と称して説明する。
【0049】
また、対物レンズ141又は対物レンズ142の種類が判別される場合、番地検出センサ34によって、対物レンズ14の番地が読み取られ、CPU11に出力される。これにより、CPU11は、互いに異なる倍率とN.A.を有する対物レンズ141及び対物レンズ142のうちの、どちらの対物レンズ14が現在光路に挿入されているかが認識可能となる。
【0050】
オフセットレンズ35は、ダイクロイックミラー16と、ハーフミラー36との間に設けられ、対物レンズ切り替え部33により光路に挿入された対物レンズ14の焦点位置に試料Sの任意の位置を合わせる。すなわち、オフセットレンズ35は、対物レンズ14で試料Sに集光照射されるスリット像(AF用光源18)の結像位置を光軸に沿って焦点方向にずらし、同時に、試料Sで反射し、センサ19の結像面に再結像するスリット像の結像位置を光軸に沿って、焦点方向にずらす働きをする。このとき、CPU11は、ダイアル31により入力されるオフセット量指示にしたがって、オフセットレンズ35の駆動を制御する。
【0051】
なお、本出願人は、たとえば、特開2004−70276号公報などにおいて、焦点位置調節レンズを用いたオートフォーカス制御を先に提案している。かかる先願の焦点位置調節レンズが、本実施の形態におけるオフセットレンズ35に相当する。
【0052】
CPU11はまた、エンコーダ32から供給されるZ位置読み取り信号に基づいて、対物レンズ14を駆動する制御(上下動位置操作)を行う。
【0053】
図8において、その他の構成は、図1における場合と同様である。
【0054】
次に、図9のフローチャートを参照して、図8のCPU11により実行されるオートフォーカス制御処理について説明する。
【0055】
ステップS51において、番地検出センサ34は、光路に挿入された対物レンズ14の番地を検出し、CPU11に供給する。
【0056】
ステップS52において、CPU11は、番地検出センサ34からの対物レンズ14の番地に関する情報に基づいて、光路に挿入されている対物レンズ14の対物種類データを、メモリ13を参照して確認し、かかる対物種類データが取得済みであるか否かを判定する。ステップS52において、対物種類データが未取得であると判定された場合、ステップS53において、CPU11は、オフセットレンズ35をオフセット0位置へ駆動する(オフセットレンズ制御)。
【0057】
続いて、ステップS54において、CPU11によって、対物レンズ種類判別シーケンスが実行される。ステップS54において実行される対物レンズ種類判別シーケンスは、図2のステップS12の処理、すなわち、図3の対物レンズ種類判別シーケンスと同様である。したがって、ここでは、CPU11によって、ピーク判定が行われることで、焦点位置における最適な光量値が得られ、さらに、対物レンズ14が駆動されることで、差分信号の変化量(傾き)が演算される。そして、CPU11によって、これらの光量値と、差分信号の変化量により特定される対物レンズ14の種類が判別される。
【0058】
ステップS55及びステップS56において、図2のステップS13及びステップS14と同様に、対物レンズ種類判別シーケンスを実行することで得られた対物レンズ14の種類のデータが、メモリ13に記憶され、その対物レンズ14の種類に応じたフィードバック量などの設定値が設定される。
【0059】
そして、CPU11は、ステップS57において、オートフォーカスを開始するか否かを判定し、オートフォーカスを開始する場合には、以下の処理が行われる。すなわち、ステップS58において、対物レンズ14の観察光学系の焦点位置を、試料S中の所望の位置に移動するために、ダイアル31が回動され、ステップS59において、その回動に応じたオフセット量の指示にしたがって、オフセットレンズ35が光軸に沿って駆動される。オフセットレンズ35を移動すると、フォーカス光学系の焦点位置が試料面からずれるため、これを補正するように対物レンズ14が試料方向に、オフセット移動し、フォーカス光学系の焦点位置が試料面に一致することになる。
【0060】
対物レンズ14が試料方向にオフセット移動した結果、観察光学系の焦点位置が試料S中に移動して、所望の位置の光学像が観察可能となり、このようなオートフォーカス制御が、ステップS60において行われることで、焦点位置が維持される。
【0061】
その後、CPU11は、ステップS61において、オートフォーカスを終了するか否かを判定し、オートフォーカスを終了しないと判定した場合、処理は、ステップS57に戻り、上述した、ステップS57ないしステップS61の処理が繰り返される。
【0062】
一方、ステップS61において、オートフォーカスを終了すると判定された場合、ステップS62において、CPU11は、対物レンズ14の切り替えを行うか否かを判定する。ステップS62において、対物レンズ14の切り替えを行うと判定された場合、ステップS51に戻り、対物レンズ切り替え部33により光路に挿入される対物レンズ14が切り替えられた後、ステップS51の対物レンズ14の番地検出の処理以降の処理が、再度実行される。また、ステップS62において、対物レンズ14の切り替えを行わないと判定された場合、処理は終了する。
【0063】
以上のように、互いに異なる倍率を有する複数の対物レンズを切り替える対物レンズ切り替え部33や、焦点位置を維持するために設けられるオフセットレンズ35を有する図8の顕微鏡1であっても、図1の顕微鏡1と同様に、焦点位置における最適な光量値、及び、対物レンズ14を駆動することで得られる焦点位置からのずれ量に応じて求められる変化量を用いて、対物レンズ14の種類を判別することができる。その結果、顕微鏡1を使用する前に、あらかじめ対物レンズ14に関する情報を登録する必要がなくなるので、登録の手間を省くことができるとともに、登録ミスによる動作不良の発生を、未然に防止できる。
【0064】
ところで、図8のCPU11により実行される、図9の対物レンズ種類判別シーケンスにおいては、図3の対物レンズ種類判別シーケンスと同様にして、対物レンズ14を駆動し、差分信号の変化量を得るとして説明したが、対物レンズ14の代わりに、オフセットレンズ35を駆動して、差分信号の変化量を求めることも可能である。
【0065】
そこで、次に、図10のフローチャートを参照して、図8の顕微鏡1において、対物レンズ14の代わりに、オフセットレンズ35を駆動して、差分信号の変化量を求める場合において、CPU11により実行されるオートフォーカス制御処理について説明する。
【0066】
ステップS71ないしステップS73において、図9のステップS51ないしステップS53の処理と同様にして、対物レンズ14の番地が検出され、番地の検出された対物レンズ14の対物種類データが取得済みでない場合には、オフセットレンズ35の制御が行われる。そして、ステップS74において、CPU11によって、対物レンズ種類判別シーケンスが実行される。
【0067】
ここで、ステップS74において実行される、対物レンズ種類判別シーケンスの詳細について、図11のフローチャートを参照して説明する。
【0068】
ステップS91ないしステップS97において、図3のステップS31ないしステップS37と同様に、CPU11によって、ステージ上に載置された試料Sに対する、焦点位置における最適な光量値が求められる。
【0069】
ステップS98において、CPU11は、オフセットレンズ35を光軸に沿って駆動し、オフセット0位置から−1umずらし、ステップS99において、差分信号aを計算した後、メモリ13に記憶する。また、CPU11は、ステップS100において、オフセットレンズ35を光軸に沿って駆動し、オフセット0位置から+1umずらし、ステップS101において、差分信号bを計算した後、メモリ13に記憶する。なお、これらの計算方法は、上記の図5及び図6を参照して説明した通りである。
【0070】
ステップS102及びステップS103において、図3のステップS42及びステップS43と同様に、CPU11によって、差分信号a,bの変化量(a−b)が計算され、判定した光量値及び差分信号の変化量により特定される対物レンズの種類が判別される。なお、この判別の方法は、上記の図7を参照して説明した通りである。
【0071】
そして、図11の対物レンズ種類判別シーケンスが終了すると、処理は、図10のステップS74に戻り、ステップS75及びステップS76において、図9のステップS55及びステップS56と同様に、図11の対物レンズ種類判別シーケンスを実行することで得られた対物レンズ14の種類のデータが、メモリ13に記憶され、対物レンズ14の種類に応じたフィードバック量などの設定値が設定される。
【0072】
続いて、ステップS77ないしステップS82において、図9のステップS57ないしステップS62と同様に、CPU11によって、オフセットレンズ35の駆動により焦点位置が維持されるようなオートフォーカス制御が行われる。
【0073】
以上のように、図8の顕微鏡1においては、対物レンズ14の代わりに、オフセットレンズ35を駆動して得られる焦点位置からのずれ量に応じて求められる変化量を用いて、対物レンズ14の種類を判別することができる。
【0074】
このように、本発明によれば、簡単、かつ、確実に、対物レンズに関する情報を登録することができる。
【0075】
すなわち、本発明によれば、オートフォーカスに使用している検出信号及び上下動作制御を用いて光路に挿入された対物レンズ14の種類を判別することができる。これにより、外部からの対物レンズ14の倍率及び種別を入力する必要なく、光量値及びゲイン量の設定を行う自動焦点装置を備えた顕微鏡を提供することができる。
【0076】
なお、本実施の形態においては、スリット投影方式のオートフォーカス装置を一例にして説明したが、スリット投影方式以外の方式であってもよい。
【0077】
また、顕微鏡1は倒立顕微鏡であるため、試料に焦点を合わせる際に、対物レンズ14を上下動させるとして説明したが、対物レンズ14の代わりにステージを駆動するようにしてもよい。
【0078】
さらに、本実施の形態において、差分信号の変化量を求める際には、対物レンズ14又はオフセットレンズ35のいずれか一方を駆動すればよく、それらを同時に駆動する必要はないが、それらを同時に駆動することは原理的には可能である。
【0079】
ところで、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、又は、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、たとえば汎用のパーソナルコンピュータ等に、記録媒体からインストールされる。
【0080】
この記録媒体は、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc))を含む)、光磁気ディスク、若しくは半導体メモリ等よりなるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM(Read Only Memory)やハードディスク等で構成される。
【0081】
また、上述した一連の処理を実行させるプログラムは、必要に応じてルータ、モデム等のインターフェースを介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線又は無線の通信媒体を介してコンピュータにインストールされるようにしてもよい。
【0082】
なお、本明細書において、記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0083】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0084】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明を適用した顕微鏡の一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】オートフォーカス制御処理について説明するフローチャートである。
【図3】対物レンズ種類判別シーケンスの詳細を説明するフローチャートである。
【図4】光量判定の方法を示す図である。
【図5】差分信号の計算例を示す図である。
【図6】差分信号の計算例を示す図である。
【図7】対物レンズの種類の換算表の例を示す図である。
【図8】本発明を適用した顕微鏡の一実施の形態の他の構成を示す図である。
【図9】オートフォーカス制御処理について説明するフローチャートである。
【図10】オートフォーカス制御処理について説明するフローチャートである。
【図11】対物レンズ種類判別シーケンスの詳細を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
1 顕微鏡, 11 CPU, 12 入力部, 13 メモリ, 14 対物レンズ, 15 観察用光源, 16 ダイクロイックミラー, 17 カメラ, 18 AF用光源, 19 センサ, 31 ダイアル, 32 エンコーダ, 33 対物レンズ切り替え部, 34 番地検出センサ, 35 オフセットレンズ, 36 ハーフミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを通過した光を用いて自動焦点調節を行うオートフォーカス装置において、
前記自動焦点調節を行うときに検出される検出信号を用いて、前記対物レンズの種類を判別する判別手段を備える
ことを特徴とするオートフォーカス装置。
【請求項2】
前記対物レンズを通って反射してくる検出信号の強度のピークを判定することで得られる焦点位置における光量値を決定する決定手段と、
前記焦点位置からのずれ量に応じて求められる変化量を演算する演算手段と
をさらに備え、
前記判別手段は、決定された前記光量値、及び、演算された前記変化量により特定される前記対物レンズの種類を判別する
ことを特徴とする請求項1に記載のオートフォーカス装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記対物レンズを光軸に沿って駆動することで得られる前記変化量を演算し、
前記判別手段は、決定された前記光量値、及び、前記対物レンズの駆動に応じて求められた前記変化量により特定される前記対物レンズの種類を判別する
ことを特徴とする請求項2に記載のオートフォーカス装置。
【請求項4】
互いに異なる倍率と開口数を有する複数の対物レンズを切り替え可能な対物レンズ切り替え手段と、
前記複数の対物レンズのうち、前記対物レンズ切り替え手段により光路に挿入された対物レンズの焦点位置に試料の任意の位置を合わせるための焦点位置調整レンズと
をさらに備え、
前記演算手段は、光路に挿入された前記対物レンズを光軸に沿って駆動することで得られる前記変化量を演算し、
前記判別手段は、決定された前記光量値、及び、光路に挿入された前記対物レンズの駆動に応じて求められた前記変化量により特定される前記対物レンズの種類を判別する
ことを特徴とする請求項2に記載のオートフォーカス装置。
【請求項5】
互いに異なる倍率と開口数を有する複数の対物レンズを切り替え可能な対物レンズ切り替え手段と、
前記複数の対物レンズのうち、前記対物レンズ切り替え手段により光路に挿入された対物レンズの焦点位置に試料の任意の位置を合わせるための焦点位置調整レンズと
をさらに備え、
前記演算手段は、前記焦点位置調節レンズを光軸に沿って駆動することで得られる前記変化量を演算し、
前記判別手段は、決定された前記光量値、及び、前記焦点位置調整レンズの駆動に応じて求められた前記変化量により特定される前記対物レンズの種類を判別する
ことを特徴とする請求項2に記載のオートフォーカス装置。
【請求項6】
対物レンズを通過した光を用いて自動焦点調節を行うオートフォーカス装置の制御方法において、
前記自動焦点調節を行うときに検出される検出信号を用いて、前記対物レンズの種類を判別する
ステップを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
対物レンズを通過した光を用いて自動焦点調節を行う機器を制御するコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記自動焦点調節を行うときに検出される検出信号を用いて、前記対物レンズの種類を判別する
ステップを含むことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項1から5の何れか一項に記載のオートフォーカス装置を有している
ことを特徴とする顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−54870(P2010−54870A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220614(P2008−220614)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】