説明

オートフォーカス装置

【課題】AFシステムにおいてカメラマンがピントを合わせたい範囲にAF枠を容易に自動で設定する。
【解決手段】カメラの撮影画面内においてピントを合わせるフォーカス操作手段と、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面内におけるベストピント状態の範囲を検出するベストピント範囲検出手段と、前記検出されたベストピント状態の範囲に対して、前記撮影画面のうちオートフォーカスによりピントを合わせる対象範囲であるAFエリアの範囲を示すAF枠の位置を自動で設定するAF枠自動設定手段と、を備えたことを特徴とするオートフォーカス装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカス装置に係り、特に、オートフォーカスシステムにおいて、ピントを合わせたい範囲を示すAF(オートフォーカス)枠の位置を容易に設定するオートフォーカス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オートフォーカス(以下、AFとする。)の方式として、一般的にコントラスト方式がよく用いられている。コントラスト方式は、撮像素子により取り込まれた被写体画像の画像信号(映像信号)から被写体画像のコントラストを検出し、そのコントラストが最も高くなるように撮影レンズのフォーカス(フォーカスレンズ)を制御することによって最良ピント状態に自動でピント合わせを行う方式である。
【0003】
コントラスト方式のAFでは、カメラの撮像範囲(撮影範囲)をAFの対象範囲とするのではなく、撮像範囲のうちの一部の範囲にある被写体のみを対象とすることが多い。例えば、撮像素子によって有効に撮像された被写体画像の画像信号のうち、AFの対象とする所定範囲の画像信号を抽出し、その抽出した範囲の画像信号に基づいてその画像のコントラストが最も高くなるようにフォーカスを制御している。これによってAFの対象が一部の範囲にある被写体に限定される。
【0004】
なお、本明細書では、AFの対象範囲をAFエリアといい、そのAFエリアの範囲を示す枠(AFエリアの輪郭)をAF枠というものとする。
【0005】
従来、AF用にAFエリアの位置やサイズ、形状を設定するシステムにおいては、ジョイスティック等をカメラマンが操作して、AF枠をピントを合わせたい被写体に重ねるように移動して手動で設定していた(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−25595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術のようにAFエリア(AF枠)を手動操作によって設定するのは面倒である。そこでAF枠を自動的に設定することができれば便利であるが、AF枠を自動設定にした場合、なかなかカメラマンの意図するところにAF枠を設定することができず、所望の位置にAF枠を自動で設定することは容易ではないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、AFシステムにおいてカメラマンがピントを合わせたい範囲にAF枠を容易に自動で設定し、さらにその後被写体が画面上で移動した場合にはAF枠の自動追尾をすることのできるオートフォーカス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、カメラの撮影画面内においてピントを合わせるフォーカス操作手段と、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面からベストピント状態の範囲を検出するベストピント範囲検出手段と、前記検出されたベストピント状態の範囲に対して、前記撮影画面のうちオートフォーカスによりピントを合わせる対象範囲であるAFエリアの範囲を示すAF枠の位置を自動で設定するAF枠自動設定手段と、を備えたことを特徴とするオートフォーカス装置を提供する。
【0010】
これにより、AFシステムにおいてカメラマンがピントを合わせたい範囲にAF枠を容易に自動で設定することができる。
【0011】
また、請求項2に示すように、前記ベストピント範囲検出手段は、前記撮影画面を複数の領域に分割し、各領域のピント状態を取得することにより前記ベストピント状態の範囲を検出することを特徴とする。
【0012】
これにより、ベストピント状態の範囲を精度良く検出することができる。
【0013】
また、請求項3に示すように、前記各領域のピント状態は、ベストピント状態、前ピン、後ピン又はボケの状態を含むことを特徴とする。
【0014】
これにより、主要被写体を正確に検出することができる。
【0015】
また、請求項4に示すように、前記ベストピント範囲検出手段は、撮影レンズに入射した被写体光からピント状態検出用に分離された被写体光を撮像素子で撮影して得られた映像信号に基づいて得られた被写体像の焦点評価値に基づいて前記ピント状態を取得することを特徴とする。
【0016】
これにより、主要被写体よりもコントラストが高い被写体がある場合も、主要被写体を正確に検出することができる。
【0017】
また、請求項5に示すように、前記ベストピント範囲検出手段が前記AF枠の位置を自動で設定した後、再度前記フォーカス操作手段が操作された場合には、前記ベストピント範囲検出手段は、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面からベストピント状態の範囲を再度検出し、前記AF枠自動設定手段は、既に設定されていた前記AF枠の位置を、前記再度検出されたベストピント状態の範囲に移動することを特徴とする。
【0018】
これにより、カメラマンが意図したところに容易にAF枠を設定することができる。
【0019】
また、請求項6に示すように、前記AF枠自動設定手段は、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果によりAF枠の位置を設定した後、画面上で被写体が移動した場合に、該被写体に対してAF枠の自動追尾を行うことを特徴とする。
【0020】
これにより、カメラマンがマニュアル操作を停止してAF枠がそこで固定された後、被写体がその画面上で移動した場合には、AF枠の自動追尾を行うようにすることでピント合わせが容易となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、AFシステムにおいてカメラマンがピントを合わせたい範囲にAF枠を容易に自動で設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るオートフォーカス装置を用いたテレビカメラシステムの一実施形態の主要構成を示すブロック図である。
【図2】AF枠の例を示す説明図である。
【図3】AF枠操作部の例を示す説明図である。
【図4】撮影画面を示す説明図である。
【図5】図4の撮影画面内の各被写体のピント状態を模式的に示すグラフである。
【図6】本実施形態の作用を示すものであり、手動フォーカス操作が無い場合にAF動作をするモードの例を示すフローチャートである。
【図7】カメラマンがマニュアル操作を停止した後、画面上で被写体が移動した場合にAF枠の自動追尾をするモードの例を示すフローチャートである。
【図8】AF枠が固定された後、画面内で被写体が移動したときAF枠を自動追尾する例を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るオートフォーカス装置について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るオートフォーカス装置を用いたテレビカメラシステムの一実施形態の主要構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のテレビカメラシステム1は、カメラヘッド(カメラ本体)10、レンズ(レンズ装置)12、AF枠操作部14、フォーカス操作部16、ズーム操作部18及びビューファインダ20を備えている。
【0026】
カメラ本体10は、放映用の映像を撮影し、所定形式の映像信号を出力又は記録媒体に記録するための映像撮像用撮像素子(例えば、CCD)等を含んでいる。撮影レンズ(光学系)を備えたレンズ装置12は、カメラ本体10のレンズマウント部に着脱自在に装着される。
【0027】
カメラ本体10の撮像素子の撮像面にはレンズ装置12の光学系によって被写体像が結像され、その被写体像が撮像素子によって順次光電変換される。そして、信号処理回路によって撮像素子から出力された信号に所要の信号処理が施される。これによって被写体の画像(映像)が撮影されると共にその映像の映像信号が生成される。
【0028】
レンズ装置12の撮影レンズには、図示は省略するが、その構成部としてフォーカスレンズ群、ズームレンズ群、絞りなどの撮影条件を調整するための可動部が設けられており、それらの可動部は、モータ(サーボ機構)によって電動駆動されるようになっている。例えば、フォーカスレンズ群やズームレンズ群は光軸方向に移動し、フォーカスレンズ群が移動することによってフォーカス(被写体距離)調整が行われ、ズームレンズ群が移動することによって焦点距離(ズーム倍率)調整が行われる。
【0029】
なお、本実施形態のようにオートフォーカスに関するシステムにおいては、少なくともフォーカスレンズ群が電動で駆動できればよく、その他の可動部は手動でのみ駆動可能であってもよい。また、所定の可動部を操作者(カメラマン)の操作に従って電動駆動する場合には、図示しない操作手段(レンズ装置12に接続されるコントローラの操作手段等)から操作者の操作に従って出力されるコントロール信号に基づいて可動部の動作が制御されるようになっているがその詳細は省略する。
【0030】
レンズ装置12のコネクタ(図示省略)には、AF枠操作部14、フォーカス操作部16、ズーム操作部18が接続されている。
【0031】
AF枠操作部14は、詳しくは後述するが、AFエリアの位置等を設定、変更するための操作部である。フォーカス操作部16は、フォーカスに関する一般的な操作やAFエリア等に関する操作を行うための操作部である。また、ズーム操作部18は、ズームに関する操作を行うための操作部である。
【0032】
また、レンズ装置12には、図示を省略するが、レンズ装置12全体を統括制御するレンズCPU、オートフォーカス処理を実行するAF処理部及びAF用撮像回路等が搭載されている。AF用撮像回路は、AF処理用の映像信号を取得するためにレンズ装置12に配置されているものであり、撮像素子(CCD等)や撮像素子の出力信号を所定形式の映像信号として出力する処理回路等を備えている。なお、AF用撮像回路の撮像素子をAF用撮像素子という。また、AF用撮像回路から出力される映像信号は輝度信号である。AF用撮像素子の撮像面には、撮影レンズの光路上に配置されたハーフミラー等によってカメラ本体10の撮像素子に入射する被写体光から分岐された被写体光が結像するようになっている。AF用撮像素子の撮像エリアに対する撮影範囲及び被写体距離(ピントが合う被写体の距離)は、カメラ本体10の撮像素子の撮像エリアに対する撮影範囲及び被写体距離に一致するように構成されており、AF用撮像素子により取り込まれる被写体画像は、カメラ本体10の撮像素子により取り込まれる被写体画像と一致している。なお、両者の撮影範囲に関しては完全に一致している必要はなく、例えばAF用撮像素子の撮影範囲の方がカメラ本体10の撮像素子の撮影範囲を包含する大きな範囲であってもよい。
【0033】
レンズ装置12のAF処理部は、AF用撮像回路から映像信号を取得し、その映像信号に基づいて被写体画像のコントラストの高低を示す焦点評価値を算出する。例えば、AF用撮像素子から得られた映像信号の高域周波数成分の信号をハイパスフィルタによって抽出した後、その高域周波数成分の信号のうちAFの対象とするAFエリアに対応する範囲の信号を1画面(1フレーム)分ずつ積算する。このようにして1画面分ごとに得られる積算値は被写体画像のコントラストの高低を示し、焦点評価値としてレンズCPUに与えられる。
【0034】
また、レンズ装置12のレンズCPUは、AFエリアの範囲(輪郭)を示すAF枠の情報(AF枠情報)をAF枠操作部14から取得してそのAF枠情報により指定されたAF枠内の範囲をAFエリアとしてAF処理部に指定する。そして、そのAFエリア内の画像(映像信号)により求められる焦点評価値をAF処理部から取得する。このようにして、AF用撮像回路から1画面分の映像信号が取得される毎に(AF処理部で焦点評価値が求められる毎に)AF処理部から焦点評価値を取得すると共に、取得した焦点評価値が最大(極大)、すなわちAFエリアの被写体画像のコントラストが最大となるようにフォーカスレンズ群を制御をする。例えば、焦点評価値に基づくフォーカスレンズ群の制御方式として山登り方式が一般的に知られており、フォーカスレンズ群を焦点評価値が増加する方向に移動させて行き、焦点評価値が減少し始める点を検出すると、その位置にフォーカスレンズ群を設定する。これにより、AF枠内の被写体に自動でピントが合わせられる。
【0035】
また、カメラ本体10には、ビューファインダ20が取り付けられており、ビューファインダ20には、カメラ本体10からの映像信号が与えられ、カメラ本体10で撮影されているリアルタイムの画像(映像)がビューファインダ20の画面上に表示されるようになっている。また、ビューファインダ20の画面上にはオートフォーカス(AF)の対象となるAFエリアの範囲を示すAF枠22等の情報も表示することができる。
【0036】
図2にAF枠の例を示す。図2において、符号30はレンズ装置12のAF用撮像素子によって有効に撮像する被写体または被写体画像の範囲である撮像範囲を示す。図2に示すように、その撮像範囲30に対してAFの対象範囲とするAFエリアを示すAF枠32が例えば矩形状の範囲内として設定されている。
【0037】
なお、撮像範囲30内におけるAF枠32の位置やサイズあるいは形状は、AF枠操作部14から与えられるAF枠情報によって変更することができる。また、図2の撮像範囲30は、カメラ本体10の撮像素子によって撮像された被写体画像(撮影画像)をビューファインダ20の画面上に再生表示した場合のその撮影映像の画面範囲に相当する。
【0038】
図3にAF枠操作部14の例を示す。図3はAF枠操作部14を示す平面図である。
【0039】
図3に示すように、AF枠操作部14は、ジョイスティック34、AF枠形状設定スイッチ36、AF枠サイズ設定スイッチ38及びマニュアルフォーカス(MF)とオートフォーカス(AF)とを切り換えるMF−AF切り換えスイッチ40を備えている。
【0040】
ジョイスティック34は、撮影画面内においてAF枠の位置を指定するための操作部材である。AF枠形状設定スイッチ36は、AF枠の形状を設定するためのスイッチである。AF枠は、必ずしも図2に示すような矩形形状には限定されない。AF枠形状設定スイッチ36を押す毎に様々な形状のAF枠がビューファインダ20の画面上に表示される。AF枠サイズ設定スイッチ38は、AF枠のサイズを設定するものであり、押す毎にビューファインダ20の画面上に表示されているAF枠のサイズが切り換わるようになっている。
【0041】
また、MF−AF切り換えスイッチ40は、マニュアルフォーカス(MF)とオートフォーカス(AF)とを切り換えるスライドスイッチである。
【0042】
図4は、撮影画面を示す説明図である。
【0043】
図4に示すように、撮影画面50は、複数の領域50aに分割されている。また、符号52の太い矩形は、撮影画面50内においてAFエリアを示すAF枠である。
【0044】
本実施形態のオートフォーカス装置は、撮影画面50内の各領域50a毎にピント状態を検出する。ピント状態は前述したように各領域50a毎の焦点評価値を算出することにょって検出される。
【0045】
なお、図4では、ベストピントの被写体を含む領域50aには、符号「0」、前ピンの被写体を含む領域50aには、符号「+」、後ピンの被写体を含む領域50aには、符号「−」が表示されている。
【0046】
なお、上記の「0」、「+」及び「−」のいずれも表示されていない領域50aは、ピントが合っていない(ボケ)又は被写体が含まれていない領域である。
【0047】
本実施形態におけるオートフォーカス装置の作用については、後述するが、図4において、いま例えば、操作者によるジョイスティック34の操作により、AF枠52が画面中央の主要被写体である人物54の位置に設定されているとする。
【0048】
このとき、AF枠操作部14のMF−AF切り換えスイッチ40をAF側にすると、AF枠52内の主要被写体である人物52がベストピントになるようにオートフォーカスが行われる。
【0049】
そして、AF枠52付近の被写体人物52を含む領域50a群はベストピント状態となり、「0」が表示される。また、撮影画面50の右側奥の被写体である木56を含む領域50a群は後ピンとなり「−」が表示される。また、撮影画面50の左側前の被写体58は、コントラストが高い被写体(例えば、輝度差が大きい複数の色を含む物体など)は前ピンとなり「+」が表示される。撮影画面50の各領域50aのピント状態はレンズ装置12のレンズCPUによって検出され、RAM等の記憶手段に記録される。
【0050】
図5は、図4に示した撮影画面50内の各被写体(人物54、木56、高コントラストの物体58)のピント状態を模式的に示すグラフである。
【0051】
図5において、横軸は、フォーカスレンズ群のフォーカス位置(左が至近(NEAR)、右が無限大∞)であり、縦軸は、焦点評価値である。特に符号Fは、現在のフォーカスレンズ位置を示す。
【0052】
図5では、撮影画面50の各領域50a毎に検出された3つの被写体(人物54、木56、高コントラストの物体58)の焦点評価値がそれぞれグラフG54、G56、G58に示されている。
【0053】
図5に示すように、主要被写体の人物54の焦点評価値は他の被写体(木56、高コントラストの物体58)に比較して低いが、領域50a毎にピント状態(ベストピント、前ピン、後ピン又はボケ等)を検出することにより、主要被写体の人物54がベストピントとなるようにAF枠52を追尾することが可能となる。
【0054】
以下、図6のフローチャートに沿って、本実施形態の作用を説明する。
【0055】
本実施形態は、カメラマンがフォーカスを(手動で)操作して、狙っていた主要被写体にベストピントが合ったとすると、システム側でその合焦した範囲を、前述した撮影範囲を複数に分割した領域から検出し、例えばその検出した領域で構成される範囲の中心とAFエリアの中心とが一致するように、AF枠の位置を自動で設定するようにするものである。またさらに、その自動で設定されたAF枠の位置がカメラマンが意図した位置ではない場合には、意図する位置にAF枠が設定されるまで、カメラマンはフォーカス操作を継続することができるようにしたものである。
【0056】
図6は、手動フォーカス操作が無い場合にAF動作をするモードの例を示すフローチャートである。
【0057】
まず図6のステップS100において初期設定をした後、ステップS102において、AF以外の処理を行う。
【0058】
次に、ステップS104において、カメラマンが手動でフォーカス操作をしているか否か判断する。これはフォーカス操作部16からの信号を受けてレンズ装置12のレンズCPUで判断する。
【0059】
ステップS104において、手動でフォーカス操作が行われていた場合には、次のステップS106でAF枠の設定は自動で行われるように設定されているか判断する。これは、AF枠操作部14のMF−AF切り換えスイッチ40がMFかAFのいずれに設定されているかをレンズ装置12のレンズCPUによって判断する。
【0060】
ここで、AF枠設定が自動の場合には、次のステップS108で、カメラマンのフォーカス操作によってベストピントとなった画面上の位置を検出する。上述したように、撮影範囲を分割した各領域におけるピント状態は、レンズ装置12のレンズCPUで検出される。これによりカメラマンのフォーカス操作によりベストピント状態「0」となった画面上の位置が検出される。
【0061】
次にステップS110において、上で検出された画面上でのベストピントの位置に基づいて、レンズ装置12のレンズCPUにより、例えば図4に示すようにAF枠52が自動的に設定される。このようにして一度設定されたAF枠52はその後ずっと表示され、ベストピント位置が移動するとそれに応じて移動される。その後は再びステップS102に戻る。
【0062】
AF枠のサイズや形状は、ベストピントの領域に応じて自動的に決定しても良いし、予め決まったサイズ、形状とし、ベストピント領域の中心とAF枠の中心とが一致するように移動しても良い。
【0063】
また、ステップS104において、カメラマンによる手動フォーカス操作がないと判断された場合には、ステップS112において、カメラマンが自分でAF枠操作部14のジョイスティック34を操作して(それまで撮影画面に表示されていた)AF枠を自分の意図する位置へ移動する。このとき、AF枠操作部14を介して、AF枠の位置だけでなくAF枠のサイズや形状も変更することができる。
【0064】
このようにカメラマンによってAF枠が移動されて、新たなAF枠の位置が決定されると、次のステップS114において、そのAF枠の範囲(AFエリア)がベストピントとなるようにAFが作動される。その後は、再びステップS102に戻る。
【0065】
また、ステップS106において、カメラマンが手動でフォーカス操作を行い主要被写体に合焦させたが、AF枠の設定が自動でない場合、すなわち、AF枠操作部14のMF−AF切り換えスイッチ40がMF側に設定されている場合には、マニュアルでAF枠を設定する必要があるので、ステップS116において、カメラマンはAF枠操作部14のジョイスティック34を操作して自分でAF枠を設定する。その後は再びステップS102に戻る。
【0066】
このように、本実施形態では、基本的に、ステップS100からステップS110までの流れのように、カメラマンが手動で自分が撮りたい対象にピントを合わせると、システムがそのベストピントの位置を検出して自動的にAF枠を設定するようにしている。
【0067】
結局、カメラマンがフォーカスを操作することは通常の操作であり、容易である。そこでこのカメラマンのフォーカス操作によって合焦した範囲を検出して、その中心とAFエリア(AF枠)の中心を一致させるようにAF枠の位置を設定するように構成するとAF枠の位置設定が容易となる。
【0068】
また、ステップS112のように、たとえAF枠設定が自動モードとなっている場合でも、カメラマンがジョイスティック等でAF枠を操作しようとした場合には、手動操作が優先されるようになっている。
【0069】
これにより、自動で設定されたAF枠の位置が、カメラマンの意図した位置ではなかった場合には、意図するところにAF枠が設定されるまでフォーカス操作を継続して行うことができる。
【0070】
また、AF枠の位置の候補が複数ある場合には、画面の中心に近い方や合焦面積の広い方、またコントラストの高い方にAF枠の位置を自動設定するようにしてもよい。あるいは、その逆の方に自動設定するようにしてもよい。さらに、これらのどれを選ぶかを選択できるようにしてもよい。
【0071】
また、フォーカスの操作方向によって優先順位を付けるようにしてもよい。例えば、同じ条件に近い2つの候補がある場合、無限大(∞)から至近(NEAR)の操作のときと、逆のときでAF枠の位置の候補の選択順位に差を付けるようにしてもよい。
【0072】
また、合焦面積に応じてAFエリアの面積や形状を自動設定できるように構成してもよい。
【0073】
また、カメラマンが手動でAF枠の位置を設定するとき、上述したようにAF枠操作部14のジョイスティック34を操作するもの以外にも、例えば、ビューファインダ20をタッチパネル式にしてもよい。このとき、カメラマンが手動でフォーカスを操作して、ベストピントの合ったところにカメラマンが触れるとそこにAF枠が自動的に表示されるようにしてもよい。
【0074】
フォーカス操作部16は、カメラマンが手動で操作するフォーカス操作部材であり、レンズに対して遠隔でコントロールするフォーカスデマンドや、レンズ鏡胴に設けられたフォーカスリング等を含む。
【0075】
また、カメラマンが手動でピントを合わせた被写体に自動的にAF枠を移動させた後、被写体が移動するとその移動に追従するようにAF枠を自動追尾させても良い。
【0076】
すなわち、カメラマンがマニュアル操作を停止するとAF枠はそこで固定され、その範囲の被写体に対してAF動作が行われるが、もし被写体がその画面上で移動した場合には、AF枠の自動追尾を行うようにするものである。以下、この例について説明する。
【0077】
図7は、カメラマンがマニュアル操作を停止した後、画面上で被写体が移動した場合にAF枠の自動追尾をするモードの例を示すフローチャートである。
【0078】
図7に示すフローチャートは、基本的には図6に示すフローチャートと同様であり、図6のフローチャートに対して、カメラマンがマニュアル操作を停止した後、被写体が画面上で移動した場合にAF枠の自動追尾を行うようにする処理を追加したものである。
【0079】
まず図7のステップS200において初期設定をした後、ステップS202においてAF以外の処理を行い、ステップS204においてカメラマンが手動でフォーカス操作をしているか否か判断する。
【0080】
手動でフォーカス操作が行われていた場合には、次のステップS206においてAF枠の設定が自動で行われるようになっているか判断し、AF枠の設定が自動の場合には、次のステップS208において画面上でベストピントの位置を検出し、次のステップS210においてベストピントの位置にAF枠を設定する。
【0081】
また、AF枠の設定が自動でない場合には、ステップS216においてカメラマンはAF枠操作部14のジョイスティック34を操作て自分でAF枠を設定する。
【0082】
そして、いずれの場合も、その後ステップステップS202にもどる。ここまでの処理は図6における処理と同様である。
【0083】
ステップS204において、カメラマンによる手動フォーカス操作がないと判断された場合の処理が、以下説明するように図6の場合とは若干異なっている。
【0084】
すなわち、ステップS204において、手動フォーカス操作がないと判断された場合には、ステップS211において、カメラマンによるジョイスティック34の操作が有るか否か判断する。
【0085】
そして、カメラマンによるジョイスティック34の操作がないと判断された場合には、カメラマンによるマニュアル操作が停止されたので、そこでAF枠は固定され、ステップS213において、被写体の移動に伴いAF枠を自動で追尾させる処理が開始される。
【0086】
すなわち、例えば図8に示すように、その画面上で被写体が移動した場合には、AF枠をその被写体の移動に合わせて自動追尾する。例えば図8に示すように、被写体の顔にAF枠を設定し、パターンマッチングあるいは予め登録された顔画像に基づいて被写体の顔認証を行い、画面内における被写体の移動に合わせてAF枠を自動追尾させる。そしてステップS214に進み、そのAF枠の範囲がベストピントとなるようにAFが作動される。
【0087】
また、ステップS211において、カメラマンによるジョイスティック34の操作がない場合には、次のステップS212において、カメラマンがジョイスティック34を操作してAF枠を移動する。そして、ステップS214において、そのAF枠の範囲がベストピントとなるようにAFが作動される。
【0088】
その後は再びステップS202に戻り、以上の処理が繰り返される。
【0089】
以上、本発明のオートフォーカス装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0090】
1…テレビカメラシステム、10…カメラヘッド(カメラ本体)、12…レンズ(レンズ装置)、14…AF枠操作部、16…フォーカス操作部、18…ズーム操作部、20…ビューファインダ、22、32、52…AF枠、30…撮像範囲、34…ジョイスティック、36…AF枠形状設定スイッチ、38…AF枠サイズ設定スイッチ、40…MF−AF切り換えスイッチ、50…撮影画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラの撮影画面内においてピントを合わせるフォーカス操作手段と、
前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面からベストピント状態の範囲を検出するベストピント範囲検出手段と、
前記検出されたベストピント状態の範囲に対して、前記撮影画面のうちオートフォーカスによりピントを合わせる対象範囲であるAFエリアの範囲を示すAF枠の位置を自動で設定するAF枠自動設定手段と、
を備えたことを特徴とするオートフォーカス装置。
【請求項2】
前記ベストピント範囲検出手段は、前記撮影画面を複数の領域に分割し、各領域のピント状態を取得することにより前記ベストピント状態の範囲を検出することを特徴とする請求項1に記載のオートフォーカス装置。
【請求項3】
前記各領域のピント状態は、ベストピント状態、前ピン、後ピン又はボケの状態を含むことを特徴とする請求項2に記載のオートフォーカス装置。
【請求項4】
前記ベストピント範囲検出手段は、撮影レンズに入射した被写体光からピント状態検出用に分離された被写体光を撮像素子で撮影して得られた映像信号に基づいて得られた被写体像の焦点評価値に基づいて前記ピント状態を取得することを特徴とする請求項2または3に記載のオートフォーカス装置。
【請求項5】
前記ベストピント範囲検出手段が前記AF枠の位置を自動で設定した後、再度前記フォーカス操作手段が操作された場合には、前記ベストピント範囲検出手段は、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面内からベストピント状態の範囲を再度検出し、
前記AF枠自動設定手段は、既に設定されていた前記AF枠の位置を、前記再度検出されたベストピント状態の範囲に移動することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオートフォーカス装置。
【請求項6】
前記AF枠自動設定手段は、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果によりAF枠の位置を設定した後、画面上で被写体が移動した場合に、該被写体に対してAF枠の自動追尾を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のオートフォーカス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−97167(P2010−97167A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23836(P2009−23836)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】