説明

オートリサイクルシステム

【課題】 使用済み自動車を効率的に分別解体し、再利用可能な回収部品を効率的に回収し、最終処理の段階で排出されるシュレッダーダスト(ASR)発生量の低減を図るオートリサイクルシステムを提供し、コスト削減と環境保護を両立すること。
【解決手段】 使用済み自動車を解体処理するオートリサイクルシステムにおいて、エアコン中のフロンを回収し、エアバッグを電気操作して強制的に爆発膨張させた後、そのエアバッグの生地素材を回収する事前準備工程と、小物部品や部材などの回収部品を取り外して回収すると共に車体に残されたハーネスを分離可能となるように切断する前処理解体工程と、燃料・オイルをドレンコックより回収する燃料・オイル回収工程と、ニブラにより車体を大きく解体するニブラ処理工程と、シュレッダーにより車体を細かく破砕して廃棄物処理をする最終処理工程とを順序だてて行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み自動車を効率的に分別解体すると共に、再利用可能な回収部品を効率的に回収し、最終処理の段階で排出されるシュレッダーダスト(ASR)発生量の低減を図ることができるオートリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から行われているオートリサイクルシステムとしては、特許第3752019号公報(特許文献1)に示されるような、鉄スクラップの銅、錫などの非鉄金属の含有量を減らして、シュレッダーダストの鉛の溶出値を低くする目的で、前処理工程、ボディパーツ回収工程、機能パーツ回収工程、非鉄金属部品回収工程、後処理工程とを連続して行うようにしたものや、特開2003−231486号公報(特許文献2)に示されるような、残燃料や廃油や廃液を安全に回収する目的で、電気接点を有する電気品や開閉器などを廃油回収エリア外に配置し、必要な壁またはシャッターで仕切り、さらに廃油回収エリアの壁や屋根に通風口を形成して防爆開放空間を確保するようにしたものなどが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3752019号公報
【特許文献2】特開2003−231486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に説明した従来のオートリサイクルシステムによれば、使用済み自動車を効率的に分別解体するための有効な解決手段を提案するという課題や、再利用可能な部品を効率的に回収するための有効な解決手段を提案するという課題や、最終処理の段階で排出されるシュレッダーダスト(ASR)発生量の低減を図るための有効な解決手段を提案するという課題に対して、格別の対策がとられていないという問題があった。
【0005】
本発明は、使用済み自動車を効率的に分別解体するための有効な解決手段を開発するという課題や、再利用可能な回収部品を効率的に回収するための有効な解決手段を開発するという課題や、最終処理の段階で排出されるシュレッダーダスト(ASR)発生量の低減を図るための有効な解決手段を開発するという課題に対して、きわめて有効に対応できるオートリサイクルシステムを提供し、オートリサイクル事業におけるコスト削減と環境保護を両立せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオートリサイクルシステムの請求項1のものは、使用済み自動車を解体処理するオートリサイクルシステムにおいて、エアコン中のフロンを回収し、エアバッグを電気操作して強制的に爆発膨張させた後、そのエアバッグの生地素材を回収する事前準備工程と、小物部品や部材などの回収部品を取り外して回収すると共に車体に残されたハーネスを分離可能となるように切断する前処理解体工程と、燃料・オイルをドレンコックより回収する燃料・オイル回収工程と、ニブラにより車体を大きく解体するニブラ処理工程と、シュレッダーにより車体を細かく破砕して廃棄物処理をする最終処理工程とを順序だてて行うことを特徴とするオートリサイクルシステムである。
【0007】
また請求項2は、上記回収部品を、自動車メーカー別、排気量別、型式別にコンピュータにデータ管理入力し、このデータ管理入力後のデータを利用して少なくとも回収部品の在庫数量、販売売り上げ予定額をディスプレイ画面に表示できるデータベースを請求項1記載のオートリサイクルシステムと組み合わせたことを特徴とするオートリサイクルシステムである。
【0008】
また請求項3は、上記の前処理解体工程は、4台の自動車を台座に載せて移送することができるベルトコンベアを備えた1ユニットの解体ステージ上で行われ、この台座の進行方向の左右両端に位置する解体ステージ上には、等間隔で複数の作業用アームおよび上記回収部品を収納する複数の回収ボックスを備えたことを特徴とする請求項1または2記載のオートリサイクルシステムである。
【0009】
また請求項4は、上記の作業用アームには、電動ドリルと吸引器が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオートリサイクルシステムである。
【0010】
また請求項5は、解体ステージを複数ユニット備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のオートリサイクルシステムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るオートリサイクルシステムは、ライン化され、上記した工程手順に従って使用済み自動車の分別解体を行うため、精緻な分別解体が可能となり、分別解体時間の短縮が図られると共に、大量処理にも対応でき、再利用可能な回収部品を効率的に付加価値のある状態で回収でき、かつシュレッダーダストの発生量を低減することもできるという効果が達成できる。
【0012】
さらに分業体制が可能となるため、現場に従事する作業員の作業が平準化され、作業ミスの発生を防止し、さらには各作業員に高度な熟練技術を要請する必要もないなどの優れた効果が達成できる。
【0013】
また本発明においては、燃料・オイル回収工程を、前処理解体工程の後に行うため、前処理解体工程を行う解体ステージ上にタンクからこぼれる取り残しの燃料やオイルが落下する心配がなく、そのため特に丁寧で清潔な状態で扱わなければならない回収部品の回収作業を、燃料やオイルで汚されていない床の上で清潔な環境下で行えるという効果が達成できる。
【0014】
加えて本発明では、前処理解体工程を作業効率に優れた解体ステージ上で行い、その解体ステージには電動ドリルや吸引器を備えた作業用アームが設けられており、かつ回収ボックスも設けられているため、回収部品の回収を効率的に行うことができ、再利用可能な回収部品を短時間で多数回収できるという効果も達成できる。
【0015】
さらに、本発明においては、回収部品を、自動車メーカー別、排気量別、型式別にコンピュータにデータ管理入力し、このデータ管理入力後のデータを利用して少なくとも回収部品の在庫数量、販売売り上げ予定額をディスプレイ画面に表示できるデータベースを構築しているため、各作業を行う現場はもとより、その作業を管理監督する場所でも同時に同じデータを共有することができるため、データの蓄積を重ねることでデータベースの価値を高め、使い易いものになるという優れた効果を達成できる。
【0016】
上記のデータベースに、車両情報などを登録するようにすれば、使用済み自動車が適切に処理されたか否かをデータベース上で確実に把握することができ、オートリサイクルシステムの精度の向上が図られ、さらには不法な手段による使用済み自動車の投棄や海外への持ち出しなどを監視できるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明のオートリサイクルシステムの実施の形態を説明する。
図1は、本発明にかかるオートリサイクルシステムの概要を示すフローチャートである。
まず自動車ディーラー、中古車販売店、自動車整備業者などが廃棄処理を望む使用済み自動車を、入荷1する。
入荷1された使用済み自動車は、事前準備工程2に送られる。
【0018】
事前準備工程2においては、自動車用エアコンに充填されているフロン(自動車リサイクル法により、回収・破壊が義務付けられている)を回収したり、エアバッグ生地を回収する。
エアバッグ生地の回収に際しては、エアバッグを電気操作して強制的に爆発膨張させた後、そのエアバッグの生地素材をはさみや刃物などで切断して回収する方法がとられる。ナイロン生地などで構成されるエアバッグ生地素材は、原材料として再利用される。
【0019】
ついで前処理解体工程3においては、一例として下記のものが回収部品として車体より取り外されて回収される。回収部品は、部品としてそのままの状態で、あるいは一部を補修するなどして再利用される。

トランクの中のシート、付属工具、ジャッキアップ、予備タイヤ、三角反射板、トランクモーター、トランクハーネス、キー、シガーボックス、ルームミラー、ラジカセ、CD、タイヤエアー注入口、バランサーウエイト、フロアマット、内装材(樹脂類)、ラジエター液、ウオッシャー液、ドアスピーカー、各種部品のボルト、ウインドウモーター及びスイッチ、アルミ製のいす、コンピュータボックス、フロント・リア部の制御装置、リヤスピーカー、ガラス、リヤハーネス、バッテリー、アンテナ及びモーター、フロントランプ、テールランプ、ウイング類、ワイパー、ワイパーモーター、ウオッシャータンク、ヒューズボックス、タイヤ、タイヤカバー、ブレーキドラム
【0020】
さらにこの前処理解体工程3においては、不要なゴミ類や新聞・雑誌などの不要物の処理も同時に行われ、そのほかにも各種部品のボルト外し、ハーネスを分離可能となるように切断する切断作業が行われる。このボルト外しやハーネスの切断作業は、その後の工程において行われるその他の製品の取り外し作業が、ボルトやほかの障害物に製品やハーネスが引っかかって邪魔されないようにするためであり、その結果円滑な取り外し作業が行えるようになる。
【0021】
前処理解体工程3の次に行われる燃料・オイル回収工程4は、車体に残った燃料やオイルをドレンコックより車体外に取り出して回収する工程であり、ここで回収された燃料やオイルはそのまま再利用される。
【0022】
上記した通り、本発明においては、燃料・オイル回収工程4を、前処理解体工程3の後に行うようにしていることから、前処理解体工程を行う解体ステージ20上やその周辺を、タンクからたれ落ちる燃料やオイルで汚してしまう恐れはまったくない。そのため特に丁寧で清潔な状態で扱われなければならない回収部品の回収作業が、床が燃料やオイルで汚されていない清潔な環境下で行え、回収作業に当たる作業員の手足も燃料やオイルで汚れることもなく、そのため回収した回収部品の品質は良好なものとなる。
【0023】
ニブラ処理工程5においては、ニブラのような重機を使用して、エンジン、マフラー、触媒、足回り(前回り、後回り)、ラジエター、ハーネスなどの、人手では対応することの困難な大形部品の取り外し回収を行う。ニブラなどの重機を使用するため、強力な力で安全かつ効率的に重量物の取り外しが行える。
さらにニブラ処理工程5においては、必要な大形部品を取り外した状態の車体を大きく折り曲げたり、破砕したりという大きな解体を行う。
【0024】
最終処理工程6においては、ニブラ処理工程5で大きく解体された車体(ほとんどが鉄くず)を、シュレッダーなどを用いて細かく裁断して鉄くずを得る工程である。
シュレッダーにかけられる車体からは、銅、スズ、ニッケル、クロムなどの非揮発性不純物元素(トランプエレメント)が、上記した各工程において丁寧に取り除かれているため、鉄くずの純度は高められ(93〜97%程度)、従来のリサイクルシステムで得られる鉄くずの平均純度82〜85%程度と比較して格段に品位向上となる。
【0025】
本発明においては、図2に示すごとく、回収する自動車部品・部材(回収部品)をメーカー別11、排気量別12、型式別13に分けてコード付与し、そのコードに従い各現場(各工程)にて、回収された実績をコンピュータにデータ管理入力7し、これらの蓄積をデータベースとして構築している。このデータベース構築8の利用方法の一例としては、作業現場への情報提供9であり、回収部品単位の在庫数量とか、その在庫を販売した際の販売売り上げ予定額を、各現場ごとにディスプレイ画面に表示できるようにすることが考えられる。
このような利用を行うと、現場作業員にとっては作業情報として有益な情報となり、作業の効率化とミスの防止に役立てることができ、経営者にとっては効率的な経営計画を立てることに役立つ。
さらに、自動車メーカー及び部品メーカーなどと連携して、回収部品にどのような貴金属などの貴重な資源が使われているかを事前分析しておけば、より効率的な分別解体方法が開発できる準備ともなる。
【0026】
図3は、前処理解体工程3で使用する解体ステージ20の一例を示した平面図であり、4台の台座を備えたベルトコンベア21が中央付近に設置され、台座の進行方向(図中の矢印方向)に位置する左右両端位置には、作業用アーム22及び回収ボックス23が備えられている。
この作業用アーム22には、電動ドリルと吸引器が備えられているので、作業員は作業用アーム22の射程距離内で、この電動ドリルと吸引器を自由に移動させながら所定の作業を進めることになる。そこで回収された回収部品は、固定ボックスあるいはネットかごなどで形成される回収ボックス23に、分別して収納される。
図3のなかでは、作業用アーム22を6箇所、回収ボックス23を12箇所設けているが、その数は適宜選択して設計することはもちろん可能である。
【0027】
本発明においては、ベルトコンベアを利用した回収ライン方式で回収部品の集中回収を行うため、各回収部品を収納する回収ボックス23の設置数は、原則として回収ラインにおいては各回収部品ごとに1個設置すれば足り、従来の回収ライン方式でない個別回収方式と比較すると、各回収部品ごとの回収ボックスの設置数を低減できるという特徴がある。
【0028】
図4は、解体ステージ20を3ユニット連接した一例の平面図であり、第1ユニット31と第2ユニット32と第3ユニット33で、それぞれ作業の内容を分けるようにしておくと、各ユニットごとに作業の効率化が図られるようになり、大変使い易い解体ステージ20が得られることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、使用済み自動車を解体する解体業者の作業現場で利用すると、使用済み自動車を効率的に分別解体すると共に、再利用可能な回収部品を効率的に回収でき、最終処理の段階で排出されるシュレッダーダスト(ASR)発生量の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかるオートリサイクルシステムの概要を示すフローチャートである。
【図2】回収する自動車部品・部材(回収部品)をメーカー別11、排気量別12、型式別13に分けてコード付与し、そのコードに従い各現場(各工程)にて、回収された実績をコンピュータにデータ管理入力7し、これらの蓄積をデータベースとして構築する説明図である。
【図3】前処理解体工程3で使用する解体ステージ20の一例を示した平面図である。
【図4】解体ステージ20を3ユニット連接した一例の平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 入荷
2 事前準備工程
3 前処理解体工程
4 燃料・オイル回収工程
5 ニブラ処理工程
6 最終処理工程
7 各工程ごとのデータ管理入力
8 データベース構築
9 作業現場への情報提供
11 自動車メーカー別分類
12 排気量別分類
13 方識別分類
20 解体ステージ
21 ベルトコンベア
22 作業用アーム
23 回収ボックス
31 第1ユニット
32 第2ユニット
33 第3ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み自動車を解体処理するオートリサイクルシステムにおいて、
エアコン中のフロンを回収し、エアバッグを電気操作して強制的に爆発膨張させた後、そのエアバッグの生地素材を回収する事前準備工程と、
小物部品や部材などの回収部品を取り外して回収すると共に車体に残されたハーネスを分離可能となるように切断する前処理解体工程と、
燃料・オイルをドレンコックより回収する燃料・オイル回収工程と、
ニブラにより車体を大きく解体するニブラ処理工程と、
シュレッダーにより車体を細かく破砕して廃棄物処理をする最終処理工程とを順序だてて行うことを特徴とするオートリサイクルシステム。
【請求項2】
上記回収部品を、自動車メーカー別、排気量別、型式別にコンピュータにデータ管理入力し、このデータ管理入力後のデータを利用して少なくとも回収部品の在庫数量、販売売り上げ予定額をディスプレイ画面に表示できるデータベースを請求項1記載のオートリサイクルシステムと組み合わせたことを特徴とするオートリサイクルシステム。
【請求項3】
上記の前処理解体工程は、4台の自動車を台座に載せて移送することができるベルトコンベアを備えた1ユニットの解体ステージ上で行われ、この台座の進行方向の左右両端に位置する解体ステージ上には、等間隔で複数の作業用アームおよび上記回収部品を収納する複数の回収ボックスを備えたことを特徴とする請求項1または2記載のオートリサイクルシステム。
【請求項4】
上記の作業用アームには、電動ドリルと吸引器が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオートリサイクルシステム。
【請求項5】
解体ステージを複数ユニット備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のオートリサイクルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208705(P2009−208705A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55840(P2008−55840)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(594104847)株式会社ツルオカ (1)
【出願人】(508069305)
【Fターム(参考)】