説明

オーバーコートを有するフォトポリマー印刷版の処理方法

ラジカル重合性コーティングと酸素不透過性オーバーコートを含む前駆体から画像形成済平版印刷版を製造する方法であって、オーバーコートを除去し、現像及びガム引きを単一工程で行うことを特徴とする方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーコートを有する像様露光済の平版印刷版を処理する方法、具体的には、オーバーコートの除去、現像及びガム引きが、中間洗浄工程を伴わずに、単一工程で行われる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版技術は、油と水との非混和性に基づき、油性材料または印刷インクは好ましくは画像領域によって受理され、水または浸し水は好ましくは非画像領域によって受理される。適切に生じさせた表面を水でぬらし、そして印刷インクを適用すると、バックグラウンドまたは非画像領域は水を受理し、印刷インクをはじくのに対して、画像領域は印刷インクを受理し、水をはじく。画像領域内の印刷インクを、次いで、画像形成すべき材料、例えば紙や布地などの表面に転移させる。しかし、一般的には、印刷インクは先ずブランケットと呼ばれる中間材料に転移させ、この中間材料は次いで印刷インクを、画像形成すべき材料の表面上に転移させる。この技術はオフセット平版印刷と呼ばれる。
【0003】
よく使用されるタイプの平版印刷版前駆体は、アルミニウムを基にする基材上に適用された感光性コーティングを含む。コーティングは輻射線に対して反応することができ、これにより露光部分は可溶性になるので、この部分は現像プロセス中に除去される。このような版はポジ型と呼ばれる。他方、コーティングの露光部分が輻射線によって硬化される場合には、版はネガ型と呼ばれる。両方の場合において、残りの画像領域は印刷インクを受理し、すなわち親油性であり、そして非画像領域(バックグラウンド)は水を受理する、すなわち親水性である。画像領域と非画像領域との分化(differentiation)は、露光中に起こる。この露光に際して、良好な接触を保証するために、印刷版前駆体にフィルムを真空下で取り付けられる。その後、一部が紫外(UV)線からなる輻射線源に版を露光する。ポジ型版が使用される場合、版上の画像に対応するフィルム上の領域は不透明なので、光が版に到達しないのに対し、非画像領域に対応するフィルム上の領域は透明であり、光がコーティングを透過するのを可能にし、その溶解性が高まる。ネガ型版の場合には、その反対のことが起こる。すなわち、版上の画像に対応するフィルム上の領域が透明であるのに対して、非画像領域は不透明である。透明フィルム領域の下側に位置するコーティングは、入射光により硬化(例えば光重合により)されるのに対し、光による影響を受けない領域は、現像中に除去される。ネガ型版の光硬化された表面は、従って親油性であり、印刷インクを受理するのに対して、現像剤によって除去されるコーティングで被覆された非画像領域は不感脂化されるため、親水性である。
【0004】
あるいは、版を、フィルムなしでデジタル像様露光することもできる。最近の開発によれば、感熱層を有する版前駆体が使用され、像様に直接加熱すること又は熱に変換される赤外(IR)線を像様に照射することにより、コーティングの加熱された領域と加熱されない領域との現像剤溶解度の差が生じる。
【0005】
光重合性コーティングのような酸素感受性コーティングを有する平版印刷版前駆体上の一時的なコーティング(「オーバーコート」(overcoat)と呼ばれることがある)として、水溶性ポリマーが使用されることがある。水溶性ポリマーは、貯蔵中、露光中、及び具体的には露光と更なる処理(現像など)との間の時間中、大気中の酸素からコーティングを保護する機能を有する。その時間中、一時的なコーティングは、層の裂断なしに安全な取り扱い(製造、包装、輸送、露光など)が保証されるのに十分な、感光性基材に対する付着力を示さなければならない。現像前に、オーバーコートは、好ましくは水による洗浄によって取り除かれる。
【0006】
クリーンな印刷画像のために、画像領域(すなわち像様に残っているコーティング)は印刷インクをよく受容し、これに対して非画像領域(すなわち、像様露光された基材、例えばアルミニウム基材)は印刷インクを受容しないことが必要である。像様露光された基材、例えばアルミニウム基材を、印刷版を印刷機内に装着するときの指紋、酸化アルミニウムの形成、腐食及び機械的な攻撃、例えば引掻き傷から保護するために、すなわち、非画像領域の親水特性を維持し、場合によっては改善するために、現像済印刷版は、通常「ガム引き(gumming)」処理(「仕上げ(finishing)」とも呼ばれる)を施される。版の貯蔵前、又は印刷機の長い停止時間前に版をガム引き処理することにより、非画像領域が親水性を保つことが保証される。印刷が開始されるときには、画像領域がインクを即座に受容できるように、ガム引き用溶液を湿し水で素早く版から洗い落とすことができなければならない。ガム引き用溶液は以前から知られており、例えば独国特許第29 26 645号明細書、独国特許出願公開第20 42 217号明細書、米国特許第4,880,555号、第4,033,919号及び第4,162,920号明細書に開示されている。
【0007】
従来技術において記載されたガム引き用組成物は全て、水溶性コロイド又はバインダー、例えばアラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ソルビット、又はポリアクリルアミドを含み、それらは通常pH値<6に調節されるという共通点を有する。好ましくは四ホウ酸塩を含有する水溶性澱粉又は澱粉誘導体のアルカリ性溶液によるガム引き処理が、独国特許出願公開10345388号明細書に開示されており、ガム引き工程前に、オーバーコートを洗い落とし、そして現像するための別個の工程が実施される。
【0008】
オーバーコートを有する平版印刷版前駆体の処理は多大な時間がかかり、露光及び任意の予熱工程後に下記工程が通常必要となるため、結果として大量の廃水をもたらすことになる:
(1)水で洗浄することによりオーバーコートを除去し、
(2)水性アルカリ性現像剤で処理することにより、非画像領域を除去し、
(3)水で濯ぎ、
(4)通常は酸性ガム引き用組成物でガム引き処理する。
【0009】
米国特許第6,482,578号明細書、米国特許第6,383,717号明細書、及び国際公開第02/31599号には、ネガ型前駆体のための水性現像剤が記載されているが、現像前に処理装置の予備洗浄セクションにおいてオーバーコートが洗い落とされ、そして現像済版をすすいだ後にガム引きが行われる。
【0010】
米国特許第4,370,406号明細書及び米国特許第4,350,756号明細書にもネガ型前駆体に適した現像剤が記載されているが、しかし、これらの特許明細書は、オーバーコートを有する前駆体を取り扱ってはいない。米国特許第5,155,011号明細書には、オーバーコートを有する再生層のための水性現像剤が記載されており、これらの水性現像剤は、有機溶剤、アルカリ剤、アニオン界面活性剤、アルカン酸、乳化剤、錯化剤、及び緩衝物質を含むが、この特許明細書はガム引きを扱ってはいない。
【0011】
英国特許第1,148,362号明細書には、オーバーコートを有する光重合性要素が開示されており、露光済要素を現像剤で処理し、水で濯ぎ、そして任意選択的に、ガム引きすることにより、要素が処理される。米国特許出願公開第2003/0165777号明細書及び米国特許出願公開第2004/0013968号明細書には、ネガ型前駆体のための非アルカリ性の水性現像剤が開示されている。
【0012】
オーバーコートプロセスなしの前駆体に関しては、現像及びガム引きを同時に行うための従来技術において記載されている。例えば独国特許出願公開第25 30 502号明細書には、光硬化性層を同時に現像してガム引きする方法及び装置が開示されており、使用される液体は、水、有機溶剤、及び水溶性コロイドを含む。ネガ型前駆体をオーバーコートで処理することは、上記明細書に開示されてはいない。米国特許第4,200,688号明細書は、非画像領域を除去するため、そして現像後に非画像部分を保存するために使用することができる水性相及び水不混和性相を有するエマルジョンを扱っており、これらのエマルジョンは添加中に不安定になる傾向があり、また、オーバーコートを有するネガ型前駆体は記載されてはいない。米国特許第4,381,340号明細書には、2−プロポキシエタノール、HLB値が17を上回る非イオン性界面活性剤、無機塩、及び高分子皮膜形成剤を含む、現像及び仕上げを同時に行うために使用することができる組成物が記載されており、オーバーコートで前駆体を処理することは記載されてはいない。国際公開第02/101469号には、特定のポリヒドロキシ化合物を含む水性アルカリ現像・ガム引き用溶液で前駆体を処理することが記載されており、オーバーコートを有するネガ型前駆体は記載されてはいない。特定のアルコール、リン酸塩、特定のポリマー、クエン酸又は安息香酸、オクチル硫酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、及び溶媒和物を必須成分として含有する現像用・仕上げ用組成物が、米国特許第4,873,174号明細書に開示されており、オーバーコートを有する前駆体は記載されてはいない。pHが最大9のガム溶液で光重合性相を有する前駆体を現像することが、国際公開第2005/111727号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、オーバーコートを有するネガ型前駆体の処理を単純化し、これにより(小さく低廉な処理装置を使用することにより)時間及びコストを削減し、また廃水量を低減すると同時に現像性、感光性、及びロールアップ(roll up)(スタートアップ(start up)としても知られる)に影響を及ぼさない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、驚くべきことに、
(a)(i)親水性表面を有する基材と、
(ii)ラジカル重合性コーティングと、
(iii)酸素不透過性の水溶性又は水分散性オーバーコートと、
を含むネガ型平版印刷版前駆体を、ラジカル重合性コーティングが感光する輻射線に像様露光し、
(b)(i)水と、
(ii)少なくとも1種の界面活性剤と、
(iii)少なくとも1種の水溶性で皮膜形成性の親水性ポリマーと、
(iv)pH9.5〜14を得るのに十分な量の少なくとも1種のアルカリ性試薬と、
(v)任意選択的に、有機溶剤、殺生物剤、錯化剤、緩衝剤物質、フィルタ染料、消泡剤、防食剤、及びラジカル阻害剤から選択された1種又は2種以上の添加剤と、
を含む水性アルカリ性処理液で、像様露光済前駆体を処理し、
(c)工程(b)で得られた処理済前駆体から過剰の処理液を除去し、
(d)任意選択的に、乾燥させ、
(e)任意選択的に、ベーキングし、
(f)工程(c)、(d)又は(e)で得られた前駆体を印刷機上に載置し、次いで、これを湿し水及び印刷インクに同時又は順次に接触させることを含み、但し、工程(a)〜(f)のうちのいずれかの工程間にも洗浄工程がないことを条件とし、さらに、工程(c)が洗浄工程ではないことを条件とし、そしてさらに、工程(b)の後にガム引き工程がないことを条件とする、方法によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ネガ型平版印刷版前駆体
本発明の方法に従って画像形成された前駆体は、ネガ型であり、そして親水性表面を有する基材と、ラジカル重合性コーティングと、酸素不透過性オーバーコートとを含む。
【0016】
基材
前駆体のために使用される基材は好ましくは、印刷物のための基材として既に使用されているもののような、寸法安定性を有するプレート状又は箔状材料である。このような基材の例としては、紙、プラスチック材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン)でコーティングされた紙、金属プレート又は箔、例えばアルミニウム(アルミニウム合金を包含)、亜鉛及び銅プレート、プラスチックフィルム、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースニトレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリビニルアセテートから形成されたプラスチックフィルム、及び紙又はプラスチックフィルムと上述の金属のうちの1種とから形成された積層材料、又は蒸着により金属化された紙/プラスチックフィルムが挙げられる。これらの基材の中では、アルミニウムプレート又は箔が特に好ましい。それというのは、アルミニウムプレート又は箔は卓越した寸法安定度を示し、低廉であり、そしてさらに輻射線感受性コーティングに対する優れた付着力を呈するからである。さらに、複合フィルムを使用することもでき、この複合フィルムの場合、アルミニウム箔が、プラスチックフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、又は紙、あるいは、アルミニウムが蒸着によって適用されたプラスチックフィルム上に積層される。
【0017】
金属基材、具体的にはアルミニウム基材には、表面処理、例えば、乾燥状態でのブラッシング、又は研摩剤懸濁液を用いたブラッシング、あるいは、例えば塩酸電解質又はHNO3を用いた電気化学的な粗面化による粗面化処理、及び任意選択的に、例えば硫酸又はリン酸中の陽極酸化処理が施されるのが好ましい。
【0018】
好ましくは厚さ0.1〜0.7mm、より好ましくは0.15〜0.5mmのアルミニウム箔が特に好ましい基材である。箔は、粗面化処理(好ましくは電気化学的)されると、平均粗さ0.2〜1μm、特に好ましくは0.3〜0.8μmを示すことが好ましい。
【0019】
特に好ましい実施態様によれば、粗面化されたアルミニウム箔をさらに陽極酸化処理した。その結果として生じる酸化アルミニウムの層質量は好ましくは1.5〜5g/m2、特に好ましくは2〜4g/m2である。
【0020】
さらに、粗面化処理、及び任意選択的に、陽極酸化処理を施された金属基材の表面の親水特性を改善するために、例えばケイ酸ナトリウム、フッ化カルシウムジルコニウム、ポリビニルホスホン酸又はリン酸の水溶液による後処理を金属基材に施すことができる。
上記基材処理の詳細は当業者によく知られている。
【0021】
ラジカル重合性コーティング(UV/VIS及びIR)
ネガ型コーティングは、主要な特徴として、(a)波長250〜1,200nmの輻射線を吸収し、そしてラジカル重合を開始することができる光開始剤及び増感剤/共開始剤系から選択された少なくとも1種の吸収剤成分、及び(b)少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマー、を含む。
【0022】
吸収剤成分
吸収剤成分は、光開始剤及び増感剤/共開始剤系から選択される。
吸収剤成分は、後で画像形成中に使用されるべき輻射線源が発光する範囲において有意な吸収を行うことができるように選択され、好ましくは、吸収剤は、その範囲内で吸収極大値を示す。こうして、輻射線感受性要素がIRレーザーによって画像形成されるようになっている場合には、吸収剤は本質的に、約750〜1,200nmの輻射線を吸収し、そして好ましくは、その範囲において吸収極大値を示すべきである。他方において、画像形成がUV/VIS線によって行われるようになっている場合、吸収剤は本質的に、約250〜750nmの輻射線を吸収し、そして好ましくは、その範囲において吸収極大値を示すべきである。好適な光開始剤及び/又は増感剤が当業者に知られており、或いは、有意な吸収が所期波長範囲内で生じるかどうかを、単純な試験(例えば吸収スペクトルの記録)によって容易に見極めることができる。
【0023】
本発明において、光開始剤は、露光されると輻射線を吸収することができ、そしてそれ自体で、すなわち共開始剤の添加無しにフリーラジカルを形成することができる化合物である。UV又はVIS線を吸収する好適な光開始剤の例としては、1〜3つのCX3基を有するトリアジン誘導体(いずれのXも独立に塩素又は臭素原子から選択され、好ましくは塩素原子である)、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、オキシムエーテル類、オキシムエステル類、α−ヒドロキシ−又はα−アミノ−アセトフェノン類、アシルホスフィン類、アシルホスフィンオキシド類、アシルホスフィンスルフィド類、メタロセン類、過酸化物などが挙げられる。好適なトリアジン誘導体の例としては、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン及び2−[4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが挙げられる。好適なオキシムエーテル及びオキシムエステルは、例えばベンゾインから誘導されたものである。好ましいメタロセンは、例えば2つの5員シクロジエニル基、例えばシクロペンタジエニル基と、少なくとも1つのオルト−フッ素原子及び任意選択的に1つのピリル基をも有する1つ又は2つの6員芳香族基とを含むチタノセン類であり;最も好ましいメタロセン類は、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス−[2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニル]チタニウム及びジシクロペンタジエン−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニル−チタニウム又はジルコニウムである。
【0024】
本発明において、単一の光開始剤、或いは2種又は3種以上のものの混合物を使用することができる。
光開始剤は、単独で、又は1種又は2種以上の共開始剤との組み合わせで使用することができ、共開始剤が添加されると、光開始の効果を増大させることができる。
【0025】
光開始剤の量に特に制限はないが、光開始剤が存在する場合、これは乾燥層質量を基準として、好ましくは0.2〜25質量%、特に好ましくは0.5〜15質量%である。
【0026】
本発明において言及される増感剤は、露光されると輻射線を吸収することができるが、それ自体では、すなわち共開始剤の添加無しではフリーラジカルを形成することはできない化合物である。
【0027】
光酸化性又は光還元性であるか、或いは、それらの励起エネルギーを受容体分子に転移することができる全ての光吸収性化合物が、本発明における使用に適した増感剤である。かかる染料の例としては、シアニン染料、メロシアニン染料、オキソノール染料、ジアリールメタン染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、クマリン誘導体、ケトクマリン染料、アクリジン染料、フェナジン染料、キノキサリン染料、ピリリウム染料又はチアピリリウム染料、アザアヌレン染料(例えばフタロシアニン類及びポルフィリン類)、インディゴ染料、アントラキノン染料、ポリアリーレン類、ポリアリールポリエン類、2,5−ジフェニルイソベンゾフラン類、2,5−ジアリールフラン類、2,5−ジアリールチオフラン類、2,5−ジジアリールピロール類、2,5−ジアリールシクロペンタジエン類、ポリアリールフェニレン類、ポリアリール−2−ピラゾリン類、カルボニル化合物、例えば芳香族ケトン又はキノン、例えばベンゾフェノン誘導体、ミヒラー(Michler)ケトン、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体及びフルオレノン誘導体が挙げられる。
【0028】
例えば、式(I)
【0029】
【化1】

【0030】
のクマリン増感剤は電磁スペクトルの赤外領域に適する。ここで、R1、R16、R17及びR18は独立に、−H、ハロゲン原子、C1−C20アルキル、−OH、−O−R4及び−NR56(ここで、R4は、C1−C20アルキル、C5−C10アリール、又はC6−C30アラルキル(好ましくはC1−C6アルキル)であり、R5及びR6は独立に水素原子及びC1−C20アルキルから選択される)から選択されるか、
又は、R1とR16、R16とR17、もしくはR17とR18は、一緒になって、式(I)に示したフェニル環に隣接する一方又は両方の位置において、N及びOから選択されたヘテロ原子を有する5又は6員複素環を形成するか、
或いは、R16及びR17は、その2つの隣接する置換基のそれぞれと一緒に、式(I)に示したフェニル環に隣接する一方又は両方の位置において、N及びOから選択されたヘテロ原子を有する5又は6員複素環を形成し、
形成されたそれぞれの5又は6員複素環が独立に1つ又は2つ以上のC1−C6アルキル基で置換することができ、
但し、R1、R16、R17及びR18のうちの少なくとも1つが、水素及びC1−C20アルキルとは異なっており、
2は、水素原子、C1−C20アルキル、C5−C10アリール又はC6−C30アラルキルであり、
3は、水素原子、又は−COOH、−COOR7、−COR8、−CONR910、−CN、C5−C10アリール、C6−C30アラルキル、5もしくは6員複素環式の任意選択的にベンゾ縮合していてもよい基、基−CH=CH−R12、及び
【0031】
【化2】

【0032】
から選択された置換基(ここで、R7はC1−C20アルキルであり、R8はC1−C20アルキル又は5又は6員複素環式基であり、R9及びR10は独立に水素原子及びC1−C20アルキルから選択され、R11はC1−C12アルキルもしくはアルケニル、複素環式非芳香族環、又は任意選択的にO、S及びNから選択されたヘテロ原子を有していてもよいC5−C20アリールであり、R12は、C5−C10アリール、又は5又は6員複素環式の、任意選択的に芳香族であってもよい環である)であり;
或いは、R2及びR3は、これらが結合された炭素原子と結合することにより、5又は6員の、任意選択的に芳香族であってもよい環である。これらは、例えば国際公開第2004/049068号に、より詳細に記載されている。
【0033】
さらに、国際公開第2004/074929号により詳細に記載されているような式(II):
【0034】
【化3】

【0035】
(上記式中、Xは、複素環と共役した少なくとも1つのC−C二重結合を含むスペーサ基であり、
Y及びZは独立に、任意選択的に置換されていてもよい縮合芳香環を表し、そして
V及びWは独立にO、S及びNRから選択され、Rは、任意選択的にモノ置換又はポリ置換型のものであってもよいアルキル、アリール及びアラルキル基である)のビスオキサゾール誘導体及び類似体、及び国際公開第2004/074930号により詳細に記載されているような式(III):
【0036】
【化4】

【0037】
(上記式中、各R1、R2及びR3は独立に、ハロゲン原子、任意選択的に置換されていてもよいアルキル基、任意選択的に置換されていてもよいアリール基(これは縮合体でもよい)、任意選択的に置換されていてもよいアラルキル基、基−NR45及び基−OR6から選択され、ここで、R4及びR5は独立に、水素原子、アルキル、アリール又はアラルキル基から選択され、
6は、任意選択的に置換されていてもよいアルキル、アリールもしくはアラルキル基又は水素原子であり、そしてk、m及びnは独立に0又は1〜5の整数である)
のオキサゾール化合物が紫外領域に適する。
【0038】
国際公開第2004/111731号に記載された式(IV):
【0039】
【化5】

【0040】
の1,4−ジヒドロピリジン化合物は、紫外領域に適する別の部類の増感剤の例である。ここで、R1は、水素原子、−C(O)OR7、任意選択的に置換されていてもよいアルキル基、任意選択的に置換されていてもよいアリール基、及び任意選択的に置換されていてもよいアラルキル基から選択され、
2及びR3は独立に、任意選択的に置換されていてもよいアルキル基、任意選択的に置換されていてもよいアリール基、CN及び水素原子から選択され、
4及びR5は独立に、−C(O)OR7、−C(O)R7、−C(O)NR89、及びCNから選択されるか、
又は、R2とR4とが一緒になって、任意選択的に置換されていてもよいフェニル環又は5〜7員炭素環もしくは複素環を形成し、その場合に、単位:
【0041】
【化6】

【0042】
は、ジヒドロピリジン環の5位に隣接する炭素環又は複素環内に存在し、炭素環又は複素環は任意選択的にさらなる置換基を含んでいてもよい、
又は、R2及びR4、並びにR3及びR5の両方は、任意選択的に置換されていてもよいフェニル環又は5〜7員炭素環もしくは複素環を形成し、その場合に、単位:
【0043】
【化7】

【0044】
は、ジヒドロピリジン環の3位及び5位に隣接する炭素環又は複素環内に存在し、炭素環又は複素環は任意選択的にさらなる置換基を含んでいてもよく、
又は、R2/R4対、及びR3/R5対のうちの一方が、5〜7員炭素環又は複素環を形成し、その場合に、単位:
【0045】
【化8】

【0046】
は、ジヒドロピリジン環の5位又は3位に隣接する炭素環又は複素環内に存在し、炭素環又は複素環は任意選択的にさらなる置換基を含んでいてもよく、そして他方の対は、任意選択的に置換されていてもよいフェニル環を形成し、
或いは、R2とR1、又はR3とR1が、任意選択的に1つ又は2つ以上の置換基を含んでいてもよい5〜7員複素環を形成し、当該複素環は、1,4−ジヒドロピリジン環と共有する窒素原子に加えて、任意選択的にさらなる窒素原子、−NR13基、−S−又は−O−を含んでいてもよく、
13は、水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基から選択され、
6は、任意選択的にハロゲン原子又は−C(O)基で置換されていてもよいアルキル基、任意選択的に置換されていてもよいアリール基、任意選択的に置換されていてもよいアラルキル基、任意選択的に置換されていてもよい複素環式基、及び基:
【0047】
【化9】

【0048】
(Yはアルキレン又はアリーレン基である)から選択され、
7は、水素原子、アリール基、アラルキル基又はアルキル基であり、ここでアルキル基及びアラルキル基のアルキル単位は任意選択的に1つ又は2つ以上のC−C二重結合及び/又はC−C三重結合を含んでいてもよく、
8及びR9は独立に、水素原子、任意選択的に置換されていてもよいアルキル基、任意選択的に置換されていてもよいアリール基、及び任意選択的に置換されていてもよいアラルキル基から選択される。
【0049】
DE 10 2004 051 810により詳細に記載された式(V):
【0050】
【化10】

【0051】
(上記式中、
【0052】
【化11】

【0053】
及び各
【0054】
【化12】

【0055】
は、独立に芳香族又は複素芳香族単位を表し、
各R1及びR2は独立に、ハロゲン原子、アルキル、アリールもしくはアラルキル基、基−NR45又は基−OR6から選択され、
4、R5及びR6は独立に、アルキル、アリール及びアラルキル基から選択され、
nは少なくとも2の整数であり、
k及びmは独立に0又は1〜5の整数を表す)
の増感剤、
並びに、DE 10 2004 055 733により詳細に記載された、式(VI):
【0056】
【化13】

【0057】
(上記式中、
【0058】
【化14】

【0059】
は、共役π系が構造(I)内の2つの基Zの間に存在するような芳香族又は複素芳香族単位、又は、これら2つの単位の組み合わせであり、
各Zは独立に、スペーサASと共役系とを結合するヘテロ原子を表し、
各R1及びR2は独立に、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アルキルアリールもしくはアラルキル基、基−NR34又は基−OR5から選択され、
各R3、R4及びR5は独立に、アルキル、アリール、アルキルアリール及びアラルキル基から選択され、
a及びbは独立に0又は1〜4の整数を表し、
nは値>1を有し、そして
ASは脂肪族スペーサである)
のオリゴマー又はポリマー化合物も、UV感受性要素に適する。
【0060】
輻射線感受性要素をVISレーザーダイオードにより露光する場合、国際公開第03/069411号に記載されたシアノピリドン誘導体が、例えば増感剤として適する。
【0061】
赤外線感受性要素の場合、増感剤は、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン顔料/染料、及びポリチオフェン、スクアリリウム、チアゾリウム、クロコネート、メロシアニン、シアニン、インドリジン、ピリリウム又は金属ジチオリンの部類の顔料/染料から、特に好ましくはシアニン部類から選択される。例えば米国特許第6,326,122号明細書の表1において述べられた化合物が、好適なIR吸収剤である。更なる例は、米国特許第4,327,169号明細書、同第4,756,993号明細書、同第5,156,938号明細書、国際公開第00/29214号、米国特許第6,410,207号明細書、及び欧州特許出願公開第1 176 007号明細書に見いだすことができる。
【0062】
一実施態様によれば、式(VII):
【0063】
【化15】

【0064】
のシアニン染料が使用される。ここで、
各Z1は独立に、S、O、NRa又はC(アルキル)2を表し;
各R’は独立に、アルキル基、アルキルスルホネート基、又はアルキルアンモニウム基を表し;
R’’はハロゲン原子、SRa、ORa、SO2a又はNRa2(好ましくはハロゲン原子、SRa、NRa2)を表し;
各R’’’は独立に、水素原子、アルキル基、−COORa、−ORa、−SRa、−NRa2、又はハロゲン原子を表し;R’’’はベンゾ縮合環であってもよく;
- はアニオンを表し;
b及びRcは両方とも水素原子を表すか、或いはそれらが結合している炭素原子と一緒に炭素環式5員又は6員環を形成し;
aは、水素原子、アルキル又はアリール基(SRaにおいて、Raは好ましくは、Sがアリール環の一構成要素であるアリール基であり;−NRa2において、各Raは好ましくはアリール基である)を表し;
各bは独立に、0、1、2又は3である。
【0065】
R’がアルキルスルホネート基を表す場合、アニオンA- が必要でないように内部塩を形成することができる。R’がアルキルアンモニウム基を表す場合、A- と同じ又はA- とは異なる第2の対イオンが必要とされる。
【0066】
式(VII)のIR染料のうち、対称的な構造を有する染料が特に好ましい。
特に好ましい染料の例としては:
2−[2−[2−フェニルスルホニル−3−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]−エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムクロリド、
2−[2−[2−チオフェニル−3−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]−エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムクロリド、
2−[2−[2−チオフェニル−3−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロペンテン−1−イル]−エテニル]−1,3,3−トリメチル−3H−インドリウムトシレート、
2−[2−[2−クロロ−3−[2−(1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−2H−ベンゾ[e]−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]−エテニル]−1,3,3−トリメチル−1H−ベンゾ[e]−インドリウムトシレート、
5−クロロ−2−(2−{3−[2−(5−クロロ−1−エチル−3,3−ジメチル−1,3−ジヒドロ−インドール−2−イリデン)−エチリデン]−2−ジフェニルアミノ−シクロペント−1−エニル}−ビニル)−1−エチル−3,3−ジメチル−3H−インドリウム塩(例えばテトラフルオロボレート)、及び、
2−[2−[2−クロロ−3−[2−エチル−(3H−ベンゾチアゾル−2−イリデン)−エチリデン]−1−シクロヘキセン−1−イル]−エテニル]−3−エチル−ベンゾチアゾリウムトシレート、
が挙げられる。
【0067】
下記化合物も、本発明に適したIR吸収剤である:
【0068】
【化16】

【0069】
【化17】

【0070】
【化18】

【0071】
【化19】

【0072】
【化20】

【0073】
【化21】

【0074】
【化22】

【0075】
【化23】

【0076】
本発明において、1種の増感剤、或いは2種又は3種以上のものの混合物を使用することができる。
増感剤は1種又は2種以上の共開始剤と組み合わせて使用される。加えて、光開始剤を使用することができるが、これは好ましくない。
増感剤の量に特に制限はないが、増感剤が存在する場合には、増感剤は乾燥層質量を基準として、好ましくは0.2〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%である。光開始剤及び増感剤の両方がコーティング中に存在する場合には、これらの総量は、乾燥層質量を基準として、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜15質量%である。
【0077】
本発明において言及される共開始剤は、照射されると本質的に吸収することができないが、しかし、本発明において使用される輻射線吸収増感剤と一緒にフリーラジカルを形成する化合物である。共開始剤は、例えば、オニウム化合物、例えばオニウムカチオンがヨードニウム(例えばトリアリールヨードニウム塩)、スルホニウム(例えばトリアリールスルホニウム塩)、ホスホニウム、オキシスルホキソニウム、オキシスルホニウム、スルホキソニウム、アンモニウム、ジアゾニウム、セレノニウム、アルセノニウム、及びN−置換N−複素環式オニウムカチオン(Nは、任意選択的に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールで置換されている);N−アリールグリシン類及びこれらの誘導体(例えばN−フェニルグリシン);芳香族スルホニルハロゲン化物;トリハロメチルアリールスルホン類;イミド類、例えばN−ベンゾイルオキシフタルイミド;ジアゾスルホネート類;9,10−ジヒドロアントラセン誘導体;少なくとも2つのカルボキシ基を有し、アリール単位の窒素、酸素又は硫黄原子に当該カルボキシ基のうちの少なくとも1つが結合されたN−アリール、S−アリール又はO−アリールポリカルボン酸(例えばアニリン二酢酸及びその誘導体、及び米国特許第5,629,354号明細書に記載された他の共開始剤);ヘキサアリールビイミダゾール類;チオール化合物(例えばメルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、及びメルカプトトリアゾール);1〜3つのCX3基を有する1,3,5−トリアジン誘導体(いずれのXも独立に塩素又は臭素原子から選択され、好ましくは塩素原子である)、例えば2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、及び2−[4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン;オキシムエーテル類及びオキシムエステル類、例えばベンゾインから誘導されたもの;メタロセン類(好ましくはチタノセン類、特に好ましくは、2つの5員シクロジエニル基、例えばシクロペンタジエニル基と、少なくとも1つのオルトフッ素原子を有し、任意選択的にピリル基をも有してよい1つ又は2つの6員芳香族基とを含むチタノセン類、例えばビス(シクロペンタジエニル)−ビス−[2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニル]チタニウム及びジシクロペンタジエン−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニル−チタニウム又はジルコニウム);アシルホスフィンオキシド類、ジアシルホスフィンオキシド類、及びジアシルホスフィンペルオキシド類(例えば有機過酸化物のタイプのアクチベータとして欧州特許出願公開第1 035 435号明細書に挙げたもの)、α−ヒドロキシ又はα−アミノアセトフェノン類、アシルホスフィン類、アシルホスフィンスルフィド類、カルボニル化合物、例えば芳香族ケトン又はキノン、例えばベンゾフェノン誘導体、ミヒラー(Michler)ケトン、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、及びフルオレノン誘導体から選択される。
【0078】
好適な2,2’,4,4’,5,5’−ヘキサアリールビイミダゾール(以下、単にヘキサアリールビイミダゾールと呼ぶ)が、下記式(VIII):
【0079】
【化24】

【0080】
によって表される。ここで、A1〜A6は、互いに同一の又は異なる置換又は非置換のC5−C20アリール基であって、環内の1つ又は2つ以上の炭素原子が任意選択的にO、N及びSから選択されたヘテロ原子によって置換されていてもよい基である。アリール基のための好適な置換基は、トリアリールイミダゾリルラジカルへの光誘起解離を阻止することのない置換基、例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、−CN、C1−C6アルキル(任意選択的にハロゲン原子、−CN及び−OHから選択された1つ又は2つ以上の置換基を有していてもよい)、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルキルチオ、(C1−C6アルキル)スルホニルである。
好ましいアリール基は、置換及び非置換フェニル、ビフェニル、ナフチル、ピリジル、フリル及びチエニル基である。特に好ましいのは、置換及び非置換フェニル基であり、特に好ましいのは、ハロゲン置換フェニル基である。
【0081】
例としては、
2,2’−ビス(ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(p−カルボキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(p−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(p−シアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−エトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(m−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(p−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−ヘキソキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−ヘキシルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス[m−(ベータフェノキシ−エトキシフェニル)]ビイミダゾール、
2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−メトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(p−メトキシフェニル)−4,4’−ビス(o−メトキシフェニル)−5,5’−ジフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(p−フェニルスルホニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(p−スルファモイルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(2,4,5−トリメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ジ−4−ビフェニリル−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ジ−1−ナフチル−4,4’,5,5’−テトラキス(p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ジ−9−フェナントリル−4,4’,5,5’−テトラキス(p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ジフェニル−4,4’,5,5’−テトラ−4−ビフェニリルビイミダゾール、
2,2’−ジフェニル−4,4’,5,5’−テトラ−2,4−キシリルビイミダゾール、
2,2’−ジ−3−ピリジル−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ジ−3−チエニル−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ジ−o−トリル−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ジ−p−トリル−4,4‘−ジ−o−トリル−5,5’−ジフェニルビイミダゾール、
2,2’−ジ−2,4−キシリル−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’,4,4’,5,5’−ヘキサキス(p−フェニルチオフェニル)ビイミダゾール、
2,2’,4,4’,5,5’−ヘキサ−1−ナフチルビイミダゾール、
2,2’,4,4’,5,5’−ヘキサフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(2−ニトロ−5−メトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、及び
2,2’−ビス(2−クロロ−5−スルホフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾールが挙げられ、特に好ましいのは、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−フルオロフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−ヨードフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロロナフチル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロロフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロロ−p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジブロモフェニル)ビイミダゾール、
2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)ビイミダゾール、又は
2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)ビイミダゾールであるが、本発明は、これらの化合物に限定されない。
【0082】
好適なヘキサアリールビイミダゾールは、周知の方法(例えば米国特許第3,445,232号明細書参照)に従って調製することができる。好ましい方法は、アルカリ溶液中で、相応のトリアリールイミダゾールを、鉄(III)−ヘキサシアノフェレート(II)で酸化的二量化することである。
ヘキサアリールビイミダゾール異性体(又は異性体の混合物)を使用する(例えば1,2’−、1,1’−、1,4’−、2,2’−、2,4’−及び4,4’−異性体)ことは、これが光解離性であり、当該プロセスにおいてトリアリールイミダゾリルラジカルを提供する限り、本発明の目的とは関係ない。
【0083】
共開始剤として適したトリハロゲンメチル化合物は、フリーラジカルを形成することができる。トリハロゲンメチル置換型トリアジン及びトリハロゲンメチル−アリールスルホンが好ましい。下記のものを例として挙げることができる(本発明をこれらの化合物に限定されない):
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
2,4,6−トリス−(トリクロロメチル)−s−トリアジン、
2,4,6−トリス−(トリブロモメチル)−s−トリアジン、及び
トリブロモメチルフェニルスルホン。
【0084】
多くの共開始剤が、吸収帯内で露光されたときに光開始剤として機能することもできる。このように、光開始剤又は増感剤は長波長スペクトル範囲(IR及び/又は可視範囲)を対象とし、そして共開始剤は短波長スペクトル範囲(例えばUV範囲)を対象とするので、例えば幅広いスペクトル範囲にわたって感受性である感光性層を得ることができる。この効果は、消費者が種々異なる輻射線源で同じ材料を照射することを望む場合には、有利であり得る。この場合、共開始剤は、IR又は可視範囲に対しては、上記定義の意味における実際の共開始剤として機能する一方、UV範囲に対しては光開始剤として機能する。
本発明において、1種の共開始剤、又は共開始剤の混合物を使用することができる。
【0085】
共開始剤の量に特に制限はないが、乾燥層質量を基準として、好ましくは0.2〜25質量%、特に好ましくは0.5〜15質量%である。
赤外線感受性コーティングのための好適な増感剤、及び共開始剤の更なる例は、国際公開第2004/041544号、国際公開第2000/48836号、及びDE 10 2004 003143にも記載されている。
【0086】
ラジカル重合性成分
少なくとも1つのC−C二重結合を含む全てのモノマー、オリゴマー、及びポリマーを、ラジカル重合性モノマー、オリゴマー、及びポリマーとして使用することができる。C−C三重結合を有するモノマー/オリゴマー/ポリマーを使用することもできるが、しかしこれらは好ましくない。当業者には好適な化合物がよく知られており、これらを本発明において、いかなる特定の制限なしに使用することができる。モノマー、オリゴマー又はプレポリマーの形態の、1つ又は2つ以上の不飽和基を有するアクリル酸及びメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸及びフマル酸のエステルが好ましい。これらは固体又は液体の形態で存在してよく、固体及び高粘性形態が好ましい。モノマーとして適する化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート及びトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート及びペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート及びヘキサメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びテトラメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、又はテトラエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレートを挙げることができる。好適なオリゴマー及び/又はプレポリマーは、例えばウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレート、又は不飽和ポリエステル樹脂である。
【0087】
モノマー及び/又はオリゴマーに加えて、主鎖又は側鎖にラジカル重合性のC−C二重結合を含むポリマーを使用することもできる。その例としては、無水マレイン酸オレフィンコポリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応生成物(例えば独国特許第4 311 738号明細書参照);アリルアルコールで部分又は完全エステル化された(メタ)アクリル酸ポリマー(例えば独国出願公開第3 332 640号明細書参照;高分子ポリアルコールとイソシアナト(メタ)アクリレートとの反応生成物;不飽和ポリエステル;(メタ)アクリレートを末端基とするポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド;ラジカル重合性基を含むエポキシドで部分又は完全エステル化された(メタ)アクリル酸ポリマー;例えば、アリル(メタ)アクリレートと、任意選択的に、更なるコモノマーとの重合により得ることができるアリル側鎖を有するポリマー;ビニルアルコールと部分エステル化された(メタ)アクリル酸のポリマー;及びエチレングリコール(メタ)アクリレートと部分エステル化された(メタ)アクリル酸のポリマーが挙げられる。
【0088】
本発明において使用することができるラジカル重合性化合物としては、分子量3,000以下であり、そしてジイソシアネートを、(i)1つのヒドロキシ基を有するエチレン系不飽和型化合物と、そして同時に(ii)1つのNH基及び1つのOH基を有する飽和型有機化合物と反応させることにより得られる反応生成物である化合物も挙げられる。反応物は下記条件:
イソシアネート基のモル数≦OH基のモル数とNH基のモル数の和
に基づく量で使用される。
【0089】
ジイソシアネートの例は下記式:
O=C=N−(CR92a−D−(CR92b−N=C=O (IX)
によって表される。ここで、a及びbは独立に0又は整数1〜3を表し、各R9は独立にH及びC1−C3アルキルから選択され、Dは2つのイソシアネート基に加えて任意選択的に更なる置換基を含んでいてもよい飽和又は不飽和スペーサである。Dは鎖状又は環状の単位であることが可能である。本発明において使用される「ジイソシアネート」という用語は、2つのイソシアネート基を含むがOH基を含まず、第2級及び第1級アミノ基も含まない有機化合物を意味する。
Dは例えばアルキレン基(CH2wであることが可能であり、wは整数1〜12、好ましくは1〜6であり、そして1つ又は2つ以上の水素原子は任意選択的に置換基、例えばアルキル基(好ましくはC1−C6)、シクロアルキレン基、アリーレン基又は飽和もしくは不飽和複素環式基で置換されていてもよい。
【0090】
ヒドロキシ基を含むエチレン系不飽和化合物(i)は、末端にあることが好ましい少なくとも1つの非芳香族C−C二重結合を含む。ヒドロキシ基は好ましくは、二重結合された炭素原子に結合されておらず、ヒドロキシ基はカルボキシ基の部分ではない。1つのOH基に加えて、エチレン系不飽和化合物(i)は、イソシアネートと反応することができる更なる官能基、例えばNHを含まない。
【0091】
エチレン系不飽和化合物(i)の例としては、ヒドロキシ(C1−C12)アルキル(メタ)アクリレート(例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−、3−又は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシ(C1−C12)アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、2−、3−又は4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド)、オリゴマー又はポリマーのエチレングリコール又はプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート(例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート)、アリルアルコール、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシ(C1−C12)アルキルスチレン(例えば4−ヒドロキシメチルスチレン)、4−ヒドロキシスチレン、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
本発明全体を通して使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方などを意味することを示す。
飽和有機化合物(ii)は、1つのOH基及び1つのNH基を有する化合物である。
【0092】
飽和有機化合物(ii)は、例えば下記式(X)又は(XI)
【0093】
【化25】

【0094】
によって表すことができる。ここで、R10は直鎖状(好ましくはC1−C12、特に好ましくはC1−C4)、分枝状(好ましくはC3−C12、特に好ましくはC3−C6)、又は環状(好ましくはC3−C8、特に好ましくはC5−C6)アルキル基であり、
Eは、直鎖状(好ましくはC1−C6、特に好ましくはC1−C2)、分枝状(好ましくはC3−C12、特に好ましくはC3−C6)、又は環状(好ましくはC3−C8、特に好ましくはC5−C6)アルキレン基であり、
【0095】
【化26】

【0096】
は、上記窒素原子に加えて任意選択的にS、O及びNR12から選択された別のヘテロ原子を含んでいてもよい環原子数5〜7の飽和複素環を表し、R12は、任意選択的にOH基で置換されていてもよいアルキル基であり、
11は、OH、又はOH基で置換された直鎖状、分枝状又は環状アルキル基であり、そして複素環がNR12を含み、かつ、R12がOHで置換されたアルキル基である場合には、z=0であり、そして飽和複素環がNR12を含んでいない場合、又は飽和複素環がNR12を含み、かつ、R12が非置換アルキル基である場合には、z=1である。
【0097】
イソシアネート基のモル数は、組み合わされたOH基とNH基との合計モル数を超えてはならない。それというのも、生成物は、これ以上遊離イソシアネート基を含むべきではないからである。
さらなる好適なC−C不飽和型ラジカル重合性化合物は、欧州特許出願公開第1 176 007号明細書に記載されている。
【0098】
種々のモノマー、オリゴマー、又はポリマーを混合物中で使用することがもちろん可能であり、さらに、モノマー及びオリゴマー及び/又はポリマーの混合物、並びにオリゴマーとポリマーとの混合物を、本発明において使用することもできる。
ラジカル重合性成分は好ましくは、乾燥層質量を基準として、5〜95質量%、特に好ましくは10〜85質量%の量で使用される。
【0099】
ラジカル重合性コーティングの任意成分
要素がUV/VIS感受性であるか赤外線感受性であるかとは無関係に、必須成分に加えて、下記任意成分のうちの1種又は2種以上を含むことができる。コーティングがいくつかの層から成る場合、任意成分は、層のうちの1つ、いくつか、又は全てに存在することができる。コントラストを高めるために、可視スペクトル範囲において高吸収率を有する染料又は顔料が存在することができる(「コントラスト染料及び顔料」)。特に好適な染料及び顔料は、溶剤又は溶剤混合物中によく溶けるか又は顔料の分散形態中に容易に導入される染料及び顔料である。
【0100】
好適なコントラスト染料はとりわけ、ローダミン染料、トリアリールメタン染料、例えばビクトリアブルーR及びビクトリアブルーBO、クリスタルバイオレット及びメチルバイオレット、アントラキノン顔料、アゾ顔料、及びフタロシアニン染料及び/又は顔料を含む。これらの着色剤は好ましくは、乾燥層質量を基準として、0〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1.5〜7質量%の量で存在する。
さらに、層は界面活性剤(例えばアニオン、カチオン、両性又は非イオン界面活性剤及びこれらの混合物)を含むことができる。好適な例としては、フッ素含有ポリマー、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド基を有するポリマー、ソルビトール−トリ−ステアレート及びアルキル−ジ−(アミノエチル)−グリシンが挙げられる。これらは好ましくは、乾燥層質量を基準として、0〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜1質量%の量で存在する。
【0101】
層はさらに、プリントアウト(print-out)染料、例えばクリスタルバイオレットラクトン又はフォトクロミック染料(例えばスピロピラン類など)を含むこともできる。これらは好ましくは、乾燥層質量を基準として、0〜15質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%の量で存在する。
また、流動性向上剤、例えばポリ(グリコール)エーテル変性シロキサンが層内に存在することができ、これらは好ましくは、乾燥層質量を基準として、0〜1質量%の量で存在する。
【0102】
層はさらに、酸化防止剤、例えばメルカプト化合物(2−メルカプト−ベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、及び3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール)、及びトリフェニルホスフェートを含むこともできる。これらは好ましくは、乾燥層質量を基準として、0〜15質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%の量で使用される。
他のコーティング添加物ももちろん存在してよい。
【0103】
オーバーコート
貯蔵中、露光中、及び具体的には露光と更なる処理との間の時間中、大気中の酸素からコーティングを保護するために、光重合性コーティング全体にわたってオーバーコートが適用される。その時間中、オーバーコートは、層の引き裂けなしに安全な取り扱い(製造、包装、輸送、露光など)が保証されるのに十分な、感光性コーティングに対する付着力を示さなければならない。酸素バリヤ層としてのその機能に加えて、オーバーコートはまた、指紋及び機械的損傷、例えば引掻き傷から光重合性コーティングを保護する。
【0104】
数多くの水溶性ポリマーが、このようなオーバーコートに適するものとして文献に記載されている。好適な例は、ポリビニルビニルアルコール、ビニルエーテル単位及びビニルアセタール単位を含有することもできる部分鹸化ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン及びビニルエーテルとビニルアセタールとのそのコポリマー、ヒドロキシアルキルセルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸、アラビアゴム、ポリアクリルアミド、デキストリン、シクロデキストリン、アルキルビニルエーテル及び無水マレイン酸のコポリマーであり、5,000超の分子量を有するエチレンオキシドの水溶性高分子ポリマーが特に好適である。ポリビニルアルコールが好ましいオーバーコートポリマーである。ポリ(1−ビニルイミダゾール)と組み合わされたポリビニルアルコール、又は1−ビニル−イミダゾールと、国際公開第99/06890号に記載されているような少なくとも1種の別のモノマーとのコポリマーを使用することができる。
【0105】
ポリビニルアルコールを接着剤としてポリビニルピロリドンと組み合わせて使用することもできる。
オーバーコートは、米国特許第3,458,311号、米国特許第4,072,527号、米国特許第4,072,528号、欧州特許出願公開第275 147号、欧州特許出願公開第403 096号、欧州特許出願公開第354 475号、欧州特許出願公開第465 034号及び欧州特許出願公開第352 630号の各明細書にも記載されている。
【0106】
好ましい実施態様において、オーバーコートは、ポリビニルアルコール、又はポリ(1−ビニルイミダゾール)と組み合わされたポリビニルアルコール(又はこれらのコポリマー)を含む。
【0107】
好適なポリビニルアルコールは、低廉な価格で商業的に入手可能である。これらは通常アセテート基の残留含量が0.1〜30質量%の範囲である。特に好ましいのは、残留アセテート含量1.5〜22質量%を有するポリビニルアセテートから得られるポリビニルアルコールである。使用されるポリビニルアセテートの分子量によって、本発明によるオーバーコートの付着力及び水溶性を制御することができる。分子量が低いほど、水溶液によるオーバーコートの除去を促進する。
【0108】
水溶性オーバーコートは、当業者に知られている表面コーティング法、例えばドクターブレードコーティング、ローラコーティング、スロットコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、又は浸漬コーティングの方法によって適用することができる。0.05〜10g/m2、より好ましくは0.2〜3g/m2、最も好ましくは0.3〜1g/m2の乾燥層質量が好適である。
【0109】
多くの場合、水溶性オーバーコートを水溶液で適用することが好ましい。環境及び人体に対するその影響は最小限である。
【0110】
しかしながら、適用法によっては、有機溶剤を使用することも好ましい。基材によっては、水性コーティング用溶液に0.5〜60質量%の有機溶剤を添加すると、付着力が改善される。上塗りされるべき表面を僅かに溶媒和することにより、本発明によるオーバーコートのポリマーの付着効果はさらに高められる。溶剤に対するこのような添加剤は例えばアルコール又はケトンであってよい。
【0111】
コーティングされるべき表面の均一且つ迅速な濡れのために、コーティング用溶液にアニオン性、カチオン性、非イオン性湿潤剤を添加してもよい。オーバーコートはさらに、安定剤、保存剤、染色剤、泡沫分離剤、及びレオロジー添加剤を含んでもよい。
【0112】
処理液
本発明の方法に使用される処理液は、pH値が9.5〜14の水性アルカリ溶液である。

水道水、脱イオン水又は蒸留水を使用することができる。水の量は好ましくは、処理液の総質量を基準として、45〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%、より好ましくは55〜85質量%である。
【0113】
アルカリ性成分
アルカリ性成分は、アルカリケイ酸塩、アルカリ水酸化物、Na3PO4、K3PO4、NR4OHから選択される。ここで、各Rは独立に、C1−C4アルキル基及びC1−C4ヒドロキシアルキル基、及びこれらのうちの2種又は3種以上の混合物から選択される。
【0114】
アルカリ性成分の量、又は混合物の場合にはアルカリ性成分の総量は、処理液のpH値が9.5〜14になるように、好ましくはpHが10.5〜13になるように選択される。
【0115】
本発明で使用される場合に、「アルカリケイ酸塩」という用語は、メタケイ酸塩及び水ガラスをも包含する。ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムが好ましいケイ酸塩である。アルカリケイ酸塩が使用される場合、ケイ酸塩の量は好ましくは、処理液を基準として少なくとも1質量%(SiO2として計算)である。
アルカリ水酸化物のうち、NaOH及びKOHが特に好ましい。
【0116】
通常、アルカリメタケイ酸塩を使用することにより、更なるアルカリ添加物、例えばアルカリ水酸化物なしで、12を上回るpH値が容易に提供される。水ガラスが使用される場合、12を上回るpH値が所望される場合、アルカリ水酸化物が付加的に使用される。
【0117】
好ましい水酸化第四アンモニウムNR4OHは、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルエタノールアンモニウム、水酸化メチルトリエタノールアンモニウム、及びこれらの混合物を含み、特に好ましい水酸化アンモニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウムである。
【0118】
界面活性剤
界面活性剤は、これが処理液の他の成分と適合性があり、またpH9.5〜14の水性アルカリ溶液中に可溶性である限り、特に制限されない。界面活性剤は、カチオン、アニオン、両性又は非イオン界面活性剤であってよい。
【0119】
アニオン界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アビエテート、ヒドロキシアルカンスルホネート、アルキルスルホネート、ジアルキルスルホスクシネート、直鎖状アルキルベンゼンスルホネート、分枝状アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテルの塩、ナトリウムN−メチル−N−オレイルタウレート、モノアミドジナトリウムN−アルキルスルホスクシネート、石油スルホネート、硫酸化ひまし油、硫酸化タロー油、脂肪族アルキルエステルの硫酸エステルの塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル、脂肪族モノグリセリドの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、アルキルリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステルの塩、無水スチレンマレイン酸コポリマーの部分鹸化化合物、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーの部分鹸化化合物、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、ナトリウムドデシルフェノキシベンゼンジスルホネート、アルキル化ナフタレンスルホネートのナトリウム塩、ジナトリウムメチレン−ジナフタレン−ジスルホネート、ナトリウムドデシル−ベンゼンスルホネート、(ジ)スルホン化アルキルジフェニルオキシド、アンモニウム又はカリウムペルフルオロアルキルスルホネート、及びナトリウムジオクチル−スルホスクシネートが挙げられる。
【0120】
これらのアニオン界面活性剤の中で特に好ましいのは、アルキルナフタレンスルホネート、ジスルホン化アルキルジフェニルオキシド、及びアルキルスルホネートである。
【0121】
非イオン界面活性剤の好適な例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、グリセリン脂肪酸の部分エステル、ソルビタン脂肪酸の部分エステル、ペンタエリトリトール脂肪酸の部分エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸の部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸の部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸の部分エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸の部分エステル、ポリオキシエチレン化ひまし油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸の部分エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、及びトリアルキルアミンオキシドが挙げられる。これらの非イオン界面活性剤の中で特に好ましいのは、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーである。
さらに、フッ素系及びケイ素系のアニオン性及び非イオン性界面活性剤を同様に使用することもできる。
好ましい非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルである。
【0122】
両性界面活性剤は例えばN−アルキルアミノ酸トリエタノールアンモニウム塩、コカミドプロピルベタイン、コカミドアルキルグリシアネート、単鎖アルキルアミノカルボキシレートのナトリウム塩、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−カルボキシエチル脂肪酸アミドエチルアミンナトリウム塩、及びカルボン酸アミドエーテルプロピオネートであり、好ましくはコカミドプロピルベタインである。
【0123】
カチオン界面活性剤の例は、塩化テトラブチルアンモニウム及び塩化テトラメチルアンモニウムのような塩化テトラアルキルアンモニウム、及びプリプロポキシル化塩化第四アンモニウムである。
非イオン、アニオン及び両性界面活性剤並びにこれらの混合物が好ましい。
【0124】
上記界面活性剤のうちの2種又は3種以上を組み合わせて使用することができる。界面活性剤の量(2種以上を使用する場合には界面活性剤の総量)は、特に制限はないが、処理液の総量を基準として好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは2〜8質量%である。
【0125】
皮膜形成性ポリマー
処理液の別の必須成分は水溶性で皮膜形成性の親水性ポリマーである。
好適なポリマーの例は、アラビアゴム、プルラン、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、又はメチルセルロース、(シクロ)デキストリンのような澱粉誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、多糖のようなポリヒドロキシ化合物、アクリル酸のホモポリマー及びコポリマー、メタクリル酸又はアクリルアミド、ビニルメチルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、ビニルアセテートと無水マレイン酸とのコポリマー、又はスチレンと無水マレイン酸とのコポリマーである。好ましいポリマーは、カルボン酸、スルホン酸又はホスホン酸基又はこれらの塩、例えば(メタ)アクリル酸、ビニルアセテート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸及びアクリルアミドプロパンスルホン酸、ポリヒドロキシ化合物及び澱粉誘導体を含有するモノマーのホモポリマー又はコポリマーである。
【0126】
ポリヒドロキシ化合物及び澱粉誘導体が特に好ましい。澱粉誘導体は、水溶性、好ましくは冷水可溶性であり、そして澱粉加水分解生成物、例えばデキストリン及びシクロデキストリン、澱粉エステル、例えばリン酸エステル及びカルバミン酸エステル、澱粉エーテル、例えばカチオン性澱粉エーテル及びヒドロキシプロピルエーテル、カルボキシメチル澱粉、及びアセチル化澱粉から選択され、上記誘導体の中では、デキストリン(四ホウ酸ナトリウムを含みEmsland Staerke GmbHからホウ砂デキストリンとして入手可能なデキストリンを包含する)が好ましい。
【0127】
澱粉誘導体のための原料として使用される澱粉は、種々の起源のものであることができ、例えばトウモロコシ、ジャガイモ、ライ麦、小麦、米、マニオカ、タピオカ、クリ又はドングリから得ることができ、トウモロコシ澱粉及びジャガイモ澱粉が好ましい。
【0128】
好適な水溶性ポリヒドロキシ化合物は、下記構造:
1(CHOH)n2
により表すことができる。ここで、nは4〜7であり;そして
(i)R1は水素、アリール、又はCH2OHであり;そしてR2は水素、炭素原子数1〜4のアルキル基、CH2OR3(R3は水素、又は炭素原子1〜4のアルキル基である)、CH2N(R45)(R4及びR5はそれぞれ独立に、水素、又は炭素原子1〜4のアルキル基である)、又はCO2Hであるか、或いは
(ii)R1及びR2が一緒に炭素−炭素単結合を形成する。
【0129】
1つのポリヒドロキシ化合物群において、R1は水素又はCH2OHであり、R2は水素である。これらのポリヒドロキシ化合物の好ましい群において、nは5又は6である。この群は糖アルコール、構造H(CHOH)nHの化合物であり、これらの化合物は遊離アルデヒド又はケトン基を持たず、還元性を示さない。糖アルコールは、天然源から得るか、又は還元糖の水素化によって調製することができる。好ましい糖アルコールとしてはマンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、及びアラビトールが挙げられる。他の糖アルコールとしては、例えばタリトール、ズルシトール及びアロズルシトールが挙げられる。
【0130】
別のポリヒドロキシ化合物群において、R1とR2とが一緒になって炭素−炭素単結合を形成する。構造(CHOH)nの炭素環式化合物(式中nは4〜7である)が挙げられる。これらのポリヒドロキシ化合物の好ましい群において、nは5又は6、より好ましくは6である。1,2,3,4,5,6−ヘキサヒドロキシシクロヘキサンの9種の立体異性体が考えられ、これらのうちのいくつかが天然由来のものである。好ましいポリヒドロキシ化合物はメソイノシトール(シス−1,2,3,5−トランス−4,6−ヘキサヒドロキシシクロヘキサン)である。メソイノシトールはトウモロコシ浸漬液から単離することができる。
【0131】
別のポリヒドロキシ化合物群において、R1は水素、アリール、又はCH2OHであり、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基、CH2OR3(R3は炭素原子1〜4のアルキル基である)、CH2N(R45)(R4及びR5はそれぞれ独立に、H、又は炭素原子1〜4のアルキル基である)、又はCO2Hである。
【0132】
別のポリヒドロキシ化合物群において、R1は水素、又はCH2OHであり、そしてR2はCO2Hである。より好ましくは、R1はHであり、そしてnは4又は5である。この群には、構造H(CHOH)nCO2H(nは4又は5である)のポリヒドロキシ化合物が含まれる。概念的には、これらのポリヒドロキシ化合物は、対応するヘキソース又はペントース糖の酸化、すなわちヘキソース糖、例えばグルコース、ガラクトース、アロース、マンノースなどのアルデヒド基の酸化、又はペントース糖、例えばアラビノース、リボース、キシロースなどのアルデヒドの酸化によって生成することができる。
特に好ましいポリヒドロキシ化合物は、ソルビトールなどの上記糖アルコールである。
皮膜形成性ポリマーの量に特に制限はなく、好ましくは、処理液の総質量を基準として1〜30質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。
【0133】
処理液の任意成分
必須成分(すなわち界面活性剤、皮膜形成性親水性ポリマー、及びアルカリ性化合物)の他に、本発明において使用される処理液は、さらに添加剤、例えば有機溶剤、殺生物剤、錯化剤、緩衝剤物質、染料、消泡剤、着臭剤、防食剤、及びラジカル阻害剤を含有してよい。
【0134】
好適な消泡剤としては、例えば商業的に入手可能なSilicone Antifoam Emulsion SE57 (Wacker)、TRITON(登録商標)CF32 (Rohm & Haas)、AKYPO(登録商標)LF (エーテルカルボン酸Chem Y)、Agitan 190 (Muenzing Chemie)、TEGO(登録商標)Foamese 825 (変性ポリシロキサン、TEGO Chemie Service GmbH、ドイツ国)が挙げられる。シリコーン系消泡剤が好ましい。これらは水中に分散性又は可溶性である。処理液中の消泡剤の量は、処理液の質量を基準として、好ましくは0〜1質量%であり、特に好ましくは0.01〜0.5質量%である。1種の消泡剤、又は2種又は3種以上から成る混合物を使用することができる。
【0135】
好適な緩衝剤物質としては、例えばトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(TRIS)、リン酸水素塩、グリシン、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸(CAPS)、炭酸水素塩、ホウ砂などのホウ酸塩、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、3−(シクロヘキシルアミノ)−2−ヒドロキシ−1−プロパン−スルホン酸(CAPSO)、及び2−(N−シクロヘキシルアミノ)エタン−スルホン酸(CHES)が挙げられる。
【0136】
殺生物剤は、バクテリア、真菌及び/又は酵母に対して効果であるべきである。好適な殺生物剤としては、例えばN−メチロール−クロロアセトアミド、安息香酸、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、イソチアゾリノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、アミジン、グアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩、ピリジン、キノリン誘導体、ジアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール及びオキサジン誘導体、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの量に特に制限はないが、溶液の総質量を基準として、好ましくは処理液中0〜10質量%、特に好ましくは0.1〜1質量%を占める。1種の殺生物剤、又は2種又は3種以上から成る混合物を使用することができる。
【0137】
好適な錯化剤の例としては、アミノポリカルボン酸及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ニトリロ三酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、1,2−ジアミノシクロヘキサン−四酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、及び1,3−ジアミノ−2−プロパノール−四酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、及び有機ホスホン酸、ホスホノアルカントリカルボン酸又はその塩、例えば2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ホスホノエタン−2,2,2−トリカルボン酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、アミノトリス−(メチレン−ホスホン酸)及びそのカリウム又はナトリウム塩、及びナトリウムグルコネートが挙げられる。錯化剤は個別に又は2種又は3種の組み合わせとして使用することができる。上記錯化剤の有機アミン塩を、そのカリウム又はナトリウム塩の代わりに使用することができる。錯化剤の量は、溶液の総質量を基準として、好ましくは処理液中0〜5質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%を占める。
【0138】
処理液は、有機溶剤又は有機溶剤の混合物を含んでもよい。処理液は単一相である。結果として、有機溶剤は、水と混和可能であるか、又は少なくとも相分離が発生しないように処理液に添加される程度に処理液中に可溶性でなければならない。下記溶剤及びこれらの溶剤の混合物が、処理液で使用するのに適する:フェノールとエチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの反応生成物、例えばエチレングリコールフェニルエーテル;ベンジルアルコール;エチレングリコール及びプロピレングリコールと炭素原子数6以下の酸とのエステル、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコールと、炭素原子数6以下のアルキル基とのエーテル、例えば2−エチルエタノール及び2−ブトキシエタノール。単一の有機溶剤又は有機溶剤の混合物を使用することができる。有機溶剤は典型的には、処理溶液の質量を基準として約0質量%〜約15質量%の濃度で、好ましくは処理溶液の質量を基準として約3質量%〜約5質量%で処理液中に存在する。
【0139】
米国特許第6,383,717号及び同第6,482,578号明細書に詳細に記載されているように、ラジカル重合性材料の増加により、スラッジが現像剤浴中に形成されるおそれがある。スラッジ形成は、処理液中のフィルタ染料及びラジカル阻害剤から選択された少なくとも1種の材料の存在によって防止することができる。フィルタ染料は周囲の紫外線及び可視線を吸収し、そして配合済処理液中に存在する輻射線感受性開始剤系によって吸収される量を低減する。ラジカル阻害剤は、配合済処理液中のモノマーのラジカル重合を阻害する。
【0140】
フィルタ染料の吸収は、輻射線感受性開始剤系の吸収に適合され、さらに、フィルタ染料は、処理液中に安定であるべきであり、そして処理液の成分、又は輻射線感受性層とのいかなる化学反応又は相互反応もするべきではない。
【0141】
日光又は同様な条件下で安定化効果をもたらすために必要となるフィルタ染料の濃度は、多くのファクターに依存することになるが、フィルタ染料の濃度は好ましくは、処理液の質量を基準として約0〜2質量%であり、より好ましくは処理液の質量を基準として約0.4〜2質量%である。
【0142】
約350nm〜約650nmのスペクトル領域内の輻射線を吸収するのに十分なフィルタ染料を処理液中に溶解させることができるように、フィルタ染料は処理液中に十分に可溶性でなければならない。1つ又は2つ以上のスルホン酸基で置換された染料は、典型的には現像液中で十分な溶解度を有する。好ましい染料としては、スルホン酸基で置換された、黄色を帯びた染料、黄色、オレンジ及び赤の染料が挙げられる。特に好ましいものはスルホン化アゾ染料である。
【0143】
好ましい染料としては、例えばメタニルイエロー(C.I.13065)及び同様の水溶性アゾ染料、例えばメチルオレンジ(C.I.13025)、トロペオリンO(C.I.14270)、トロペオリンOO(C.I.13080)、タルトラジン(C.I.19140);オキソノールイエローK(Riedel−de−Haen);アシッドイエロータイプの染料、例えばC.I.13900、C.I.14170、C.I.18835、C.I.18965、C.I.18890、C.I.18900、C.I.18950(ポーラーイエロー)、C.I.22910、及びC.I.25135;及びアシッドレッドタイプの染料、例えばC.I.14710、C.I.14900、C.I.17045、C.I.18050、C.I.18070、C.I.22890が挙げられる。他の好適な染料が当業者には容易に明らかである。単一のフィルタ染料又はフィルタ染料の混合物を使用することができる。
【0144】
ポリマー安定剤又はラジカル捕捉剤としても知られている好適なラジカル阻害剤は、モノマー及びポリマーの安定化の技術分野では良く知られている。
【0145】
モノマーの重合を開始しない生成物を形成するためにラジカルと反応することができ、処理液中の所要の溶解度及び安定性を有し、及び処理液又は印刷版の特性に不都合な影響を及ぼすことのないいずれの材料も場合によっては使用することができる。これらとしては、例えば、キノン又はヒドロキノン部分を含有する化合物、特にベンゾキノン及び置換ベンゾキノン、及びヒドロキノン及び置換ヒドロキノン、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)、t−ブチルヒドロキノン(4−t−ブチルフェノール、TBHQ)、及びt−ブチルヒドロキシアニソール(BHA);レコルシノール、ピロガロール、リン酸エステル;及びヒンダードフェノール及びビスフェノール、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール;安定なラジカル、例えばジ−t−ブチルニトロキシド及び2,2,6,6−テトラメチル−4−ピリドンニトロキシド;ニトロ置換型芳香族化合物;アミノフェノール;フェノチアジン;及び第二級ジアリールアミン、例えば置換型ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、及びN−フェニル−ナフチルアミンが挙げられる。好ましいラジカル阻害剤は、キノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンのエーテル、及びヒンダードフェノールである。より好ましくは、ヒドロキノンのエーテル、特にヒドロキノンのエーテル、及びヒンダードフェノールである。好ましい化合物は、ヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、及び2,4,6−トリ−t−ブチルフェノールである。単一のラジカル阻害剤又はラジカル阻害剤の混合物を使用することができる。ラジカル阻害剤又はラジカル阻害剤の混合物は典型的には、処理溶液の質量を基準として約0質量%〜約3.0質量%の濃度で、好ましくは処理溶液の質量を基準として約0.5質量%〜約1.5質量%で処理液中に存在する。
【0146】
防食剤の例は、ホスホン酸及びこれらの塩、例えばヒドロキシエチルホスホン酸及びその塩、アミノトリメチレンホスホン酸及びその塩、及びジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸及びその塩;リン酸塩、例えばリン酸三ナトリウム;ホウ酸塩、例えばホウ砂;並びにグリセロール、及び式:
【0147】
【化27】

【0148】
(上記式中、zは0,1又は2であり、そしてR20及びR21は独立に水素又はC1−C3アルキルである)により表されるグリコールである。
【0149】
防食剤又はこのような防食剤の混合物は、典型的には、処理溶液の質量を基準として約0質量%〜10.0質量%の濃度で、好ましくは0.1〜5質量%、グリセロール又はグリコールの場合には5〜10質量%で処理液中に存在する。
【0150】
像様露光
光重合性コーティング内に使用される吸収剤成分がUV/VIS線を吸収する場合、前駆体は、波長250〜750nmのUV/VIS線で、当業者に知られた形式で像様露光される。これを目的として、一般的なランプ、例えば炭素アークランプ、水銀ランプ、キセノンランプ及び金属ハロゲン化物ランプ、又はレーザー又はレーザーダイオードを使用することができる。約405nm(例えば405±10nm)の範囲のUV線を放射するUVレーザーダイオード、可視範囲(488nm又は514nm)で発光するアルゴンイオンレーザー、及びほぼ532nmで発光する周波数二重化fd:Nd:YAGレーザーが、輻射線源として特に重要である。レーザー線は、コンピュータを介してデジタル制御することができ、すなわち、レーザー線は、コンピュータ内に記憶されたデジタル化情報を介して版の像様露光を行うことができるように、オン又はオフすることができ、こうしていわゆるコンピュータ・トゥ・プレート(ctp)印刷版を得ることができる。
【0151】
増感剤がIR線を吸収する場合、すなわち、波長750超から1,200nmの輻射線を著しく吸収し、そして好ましくは、吸収スペクトルのこの範囲内で吸収極大値を示す場合、像様露光はIR線源によって実施することができる。好適な輻射線源は、例えば750〜1,200nmで発光する半導体レーザー又はレーザーダイオード、例えばNd:YAGレーザー(1,064nm)、790〜990nmで発光するレーザーダイオード、及びTi:サファイヤレーザーである。レーザー線は、コンピュータを介してデジタル制御することができ、すなわち、レーザー線は、コンピュータ内に記憶されたデジタル化情報を介して版の像様露光を行うことができるように、オン又はオフすることができ、こうしていわゆるコンピュータ・トゥ・プレート(ctp)印刷版を得ることができる。当業者に知られたIRレーザーを備えたいかなるイメージセッターをも使用することができる。
像様露光済前駆体は、露光済のコーティング領域と、未露光コーティング領域とを含む。
【0152】
露光済前駆体の処理
露光後に、通常はオーバーコートを除去するために実施される予備洗浄工程なしで、前駆体を処理液で処理する。一実施態様によれば、露光と処理液による処理との間に予熱工程を実施する。処理液で露光済前駆体を処理することにより、オーバーコートを露光済領域及び非露光領域において除去し、輻射線感受性コーティングの非露光領域を除去し、現像済前駆体には1つの単独工程で保護ガム引きが提供される。
【0153】
アルカリ性現像液による処理後に、通常は酸性ガム引き用溶液が適用される前に、前駆体を水で濯ぐのに対して、このような濯ぎ工程は、本発明の方法によれば行われない。さらに、本発明の方法によれば、露光済前駆体を処理液で処理した後、ガム引き工程は行われない。
【0154】
典型的には、この液を含有するアプリケータにより画像形成性層を擦るか又は拭うことにより、露光済前駆体を処理液と接触させる。あるいは、露光済前駆体を処理液でブラッシングしてもよく、又は処理液を噴霧により前駆体に適用してもよい。露光済前駆体を処理液浴内に浸すことにより、処理液による処理を実施することもできる。いずれの場合においても、オーバーコートを有しない現像されガム引きされた版が生成される。好ましくは、処理は、商業的に入手可能な処理装置、例えば、唯1つの処理液用浴及び乾燥セクションだけを含むTDP 60(Kodak Polychrome Graphics)内で実施することができる。加えて、この処理装置内に導電率測定ユニットを組み込むことができる。
【0155】
浸漬タイプの現像浴と、水で濯ぐためのセクションと、ガム引きセクションと、乾燥セクションとを備えた従来の処理装置を使用することはできるものの、本発明の方法によれば、濯ぎ工程及びガム引き工程は行われない。本発明の利点は、唯1つの浴及び乾燥セクションだけを含むシンプルな処理装置を使用することである。それというのは、このような処理装置は、濯ぎセクション及びガム引きセクションを備えた処理装置よりも著しく小さく、かつ、低廉であり、従ってスペース及びコストを節減するからである。加えて、処理液の現像剤活性を制御するために、処理装置内に導電率測定ユニットを組み込みことができる。
【0156】
露光済前駆体は典型的には、約5秒〜約60秒間の時間で18℃〜約28℃の温度の処理液で処理される。
【0157】
或る程度の数の露光済前駆体を処理した後、処理液浴の現像活性(例えば滴定又は導電率測定により測定する)は所定のレベルを下回る。そのときは、処理浴に新鮮な処理液を追加する(「トップアップ(top-up)」プロセスとも呼ばれる)。処理液の容積及びその活性/導電率値の両方を一定に保つために、処理される前駆体1m2当たり、通常約30mL〜約100mL、典型的には約50〜80mLの新鮮な処理液が必要である。処理された平版印刷版は、除去されて下側の親水性基材表面を露出した画像形成性層領域と、除去されていない相補的な画像形成性層領域とを含む。除去されていない画像形成性層領域がインク受理性である。
【0158】
処理浴の活性を一定に保つために新鮮な処理液を追加する代わりに、補充液を添加することができる。補充液は好適には、アルカリ性試薬の濃度が、使用される新鮮な処理液中のアルカリ性試薬の濃度と比較して高いこと、また、他の成分の濃度が新鮮な処理液中の濃度と同じであるかこれよりも高くてよい点で、新鮮な処理液とは異なる。
【0159】
前駆体を処理液と接触させた後、前駆体上に残った過剰な前記処理液を除去し(例えば絞りローラによって)、この除去工程は、液体(例えば水など)で前駆体を洗浄する/濯ぐことから成るのではなく、またこのような洗浄/濯ぎを含むのでもない。後続の任意の乾燥工程後、処理済前駆体を印刷機に移す。印刷機上では、処理済前駆体を、湿し水及び印刷インクに同時又は順次に(任意の順序、しかし好ましくは最初に湿し水、そのあとにインク)接触させる。前駆体を湿し水及びインクと接触させ、そのあとに紙と接触させることにより、処理液を用いた処理によってまだ除去されていない不所望のコーティング(非画像領域内の輻射線感受性コーティング及び/又はオーバーコート)の残りを除去する。従って、本発明の方法は、処理液を用いた処理による「コンベンショナルな現像」(すなわち、水性現像剤溶液によって輻射線感受性コーティングの非露光領域を除去する)と、印刷機上現像とを組み合わせたものと解釈することができ、本発明の場合、処理液を用いた処理は、輻射線感受性コーティングの非露光領域を除去するだけではなく、単一工程でオーバーコートを除去し、しかもガム引きをも提供するので、オーバーコートの洗い落とし、濯ぎ及び個別のガム引きという個別の工程が回避される。
本発明を下記例においてより詳細に説明するが、これらの例は本発明を限定するものでは決してない。
【実施例】
【0160】
以後使用する略語を以下のように説明する:
Desmodur(登録商標)100 三官能性イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシネートのビウレット)、Bayerから入手可能、
Basonyl Violet 610 Bayerのトリアリールメタン染料、
HEA (2−ヒドロキシエチル)アクリレート、
HEMA (2−ヒドロキシエチル)メタクリレート、
HEPi 2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン、
HMDI ヘキサメチレンジイソシアネート、
Ioncryl 683 SC Johnson & Son Inc. USA製のアクリル樹脂、酸価=162mg KOH/g、
IR染料66e FEW Chemicals GmbHから入手可能なIR吸収シアニン染料、
【0161】
【化28】

【0162】
Kayamer PM-2 1モルのリン酸と1.5モルのヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル)、Nippon Kayakuから入手可能、
NEKAL(登録商標)ペースト アニオン界面活性剤(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩)、BASFから入手可能、
NK Ester BPE 500 エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、Shin Nakamura Ltd.から入手可能、
NK Ester BPE-200 エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、Shin Nakamura Ltd.から入手可能、
PETA ペンタエリトリトールトリアクリレート、
PC1199 非イオン界面活性剤(エトキシル化/プロポキシル化C10−C12アルコール)、Polygon社から入手可能、
Renolblue B2G-HW(登録商標) ポリビニルブチラール中に分散された銅フタロシアニン顔料、Clariantから入手可能、
REWOPOL(登録商標)NLS 28 アニオン界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)、REWOから入手可能、
TEXAPON(登録商標)842 アニオン界面活性剤(オクチル硫酸ナトリウム)、Henkelから入手可能、
Amphotensid B5 両性界面活性剤(コカミドプロピルベタイン)、Zschimmer & Schwarz GmbHから入手可能、
Dowfax 2A1 アニオン界面活性剤(ナトリウムドデシルジフェニルオキシドジスルホネート、45%)、Dow Chemicalsから入手可能、
Surfynol 465 非イオン界面活性剤(エトキシル化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)、Airproductsから入手可能、
Dowfax 8390 アニオン界面活性剤(ナトリウムn−ヘキサデシルジフェニルオキシドジスルホネート、35%)、Dow Chemicalsから入手可能、
Mergal K7 保存剤(メチルクロロ−イソチアゾリノン)、Troyから入手可能
Sorbidex 200 99%D−ソルビトール、Ceresdaから入手可能、
Emdex 30 AN 45 冷水中に可溶性の、ジャガイモ澱粉由来のデキストリン、Emsland Staerke GmbHから入手可能
【0163】
例1〜10及び比較例1〜15
ポリビニルホスホン酸(PVPA)の水溶液を使用して後処理された、電気化学的に粗面化され陽極酸化されたアルミニウム箔に、溶液の濾過後、表1〜6のうちのいずれかに示す組成物をコーティングした。版を90℃で4分間乾燥させ、得られた乾燥コーティング量を表1に示す。
【0164】
得られた試料に、ポリ(ビニルアルコール)(加水分解度88%の、Airproducts製のCelvol 203)の水溶液をオーバーコートすることにより、90℃で4分間乾燥後、表1にまとめたようなオーバーコートの乾燥コーティング量を有する印刷版前駆体を得た。
【0165】
版1〜5の露光を下記のように行った:
コピーの品質を評価する種々異なる要素を含有するUGRA/FOGRA Postscript Stripバージョン2.0 EPS(UGRAから入手可能)を、Creo製のTrendsetter 3244(830nm)を用いて版#2及び#3を画像形成するために使用した。
【0166】
印刷版#1及び#4に、405nmで発光するレーザーダイオード(P=30mW,cw)を備えたイメージセッター(Lithotechから入手したAndromeda(登録商標)A750M)によって露光した。規定のトーン値を有するUGRAグレースケールV2.4(所期トーン値をほぼ得るために全てのデータを線形化した)を、上記版前駆体上に曝露した。さらに、全露光によりUGRA Offset試験スケール1982を使用して、版の感度を測定した。
印刷版#5に、UGRA Offset試験スケール1982を使用して、GaドープHgランプを備えたTheimer真空フレームによって露光を施した。
【0167】
版の更なる処理を下記のように行った:
試料番号1,2及び5を、露光直後に予熱した。
2つのスクラブ・ブラシローラを備えたTDP 60(Kodak Polychrome Graphics)単一浴処理装置内で、表7(表7中、「CD」は比較処理液を示す)に示された処理液によって、全ての版を直接的に処理し、この場合前記処理の前にいかなる洗浄工程も実施することはなかった。排出絞りローラによって過剰の液体を除去し、そして版を高温空気で乾燥させ、付加的な洗浄工程及びガム引き工程は実施しなかった。
【0168】
こうして調製された版を、湿し水及び研摩性印刷インク(Sun Chemicalから入手可能なOffset S7184、10%炭酸カリウムを含有)を使用する枚葉紙オフセット印刷機内に装填した。画像なしの領域をスカム形成に関して検査した。版が100部未満でクリーンアップしない場合には、印刷試験は1000部で時期尚早に停止した。そうでない場合には、特に断りのない限り、最大20,000部を形成したが、しかし印刷運転はさらに続く場合もあった。
【0169】
下記試験を行った。
現像性:
現像性を評価するために、5×30cm2の未露光の版ストリップを、ガラスビーカー内に入れられた相応の現像剤中に浸し、これらのストリップを5秒毎に4cmずつ深く現像剤浴内に沈めた。その前に、版#1、#2、及び#5を90℃の炉内で2分間にわたって処理した。全部で50秒後に、ストリップを現像剤から引き出し、水で濯ぎ、そして最初のクリーンステップを得るための時間を、現像時間と見なした。
405nmの輻射線に対して感光する版の感光性(版#1、#4及び#5):
405nmで露光された版のフォトスピードを、上に開示されたプレートセッターを使用して、投光下で評価した。このような版に関して測定されたフォトスピードは、現像後にUGRAスケールの2つのグレースケールステップを得るために必要となるエネルギーである。
830nmの輻射線に対して感受性である版の感光性(版#2及び#3):
種々の異なるエネルギーで版を露光することにより、830nmで露光された版(表3に開示する配合)のフォトスピードを評価した。現像後の全てのミクロ構造要素のクリアな画像を得るために必要な最小エネルギーを、かかる系の感光性に関連する量と見なした。
ロールアップ:
クリーンな画像が印刷される前に必要としたシートの数をカウントした。必要なシートが20枚未満である場合、その性能は申し分のないものと考えられた。
上記試験の結果を表8から導きだすことができる。
【0170】
【表1】

【0171】
【表2】

【0172】
【表3】

【0173】
【表4】

【0174】
【表5】

【0175】
【表6】

【0176】
【表7】

【0177】
【表8】

【0178】
例1〜10において、予備洗浄又は後濯ぎなしで単一浴処理機械内で処理液D1及びD2を使用した試験は、良好なロールアップ挙動を示し、そして印刷開始時又は再開時に印刷機上にスカム形成を示さなかった。アルカリ剤及び界面活性剤を含有するが、Sorbidexのような親水性の皮膜形成性ポリマーを含有しない現像剤を使用する比較例1〜5は、良好な現像性を示したものの、印刷機上のスカム形成は重度であった。(処理液が)親水性ポリマー及び界面活性剤を含有するが、しかしアルカリ剤を含有しない比較例6〜15の場合、コーティングされた版から非画像領域を除去することはできない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成済平版印刷版を製造する方法であって、
(a)(i)親水性表面を有する基材と、
(ii)ラジカル重合性コーティングと、
(iii)酸素不透過性の水溶性又は水分散性オーバーコートと、
を含むネガ型平版印刷版前駆体を、前記ラジカル重合性コーティングが感受性である輻射線に像様露光し、
(b)(i)水と、
(ii)少なくとも1種の界面活性剤と、
(iii)少なくとも1種の水溶性で皮膜形成性の親水性ポリマーと、
(iv)pH9.5〜14を得るのに十分な量の少なくとも1種のアルカリ性試薬と、
(v)任意選択的に、有機溶剤、殺生物剤、錯化剤、緩衝剤物質、フィルタ染料、消泡剤、防食剤及びラジカル阻害剤から選択された1種又は2種以上の添加剤と、
を含む水性アルカリ性処理液で、像様露光済前駆体を処理し、
(c)工程(b)で得られた処理済前駆体から過剰の処理液を除去し、
(d)任意選択的に、乾燥させ、
(e)任意選択的に、ベーキングし、
(f)工程(c)、(d)又は(e)で得られた前駆体を印刷機上に載置し、次いで、これを湿し水及び印刷インクに同時又は順次に接触させることを含み、但し、工程(a)〜(f)のうちのいずれかの工程間にも洗浄工程がないことを条件とし、さらに、工程(c)が洗浄工程ではないことを条件とし、そしてさらに、工程(b)の後にガム引き工程がないことを条件とする、画像形成済平版印刷版を製造する方法。
【請求項2】
前記ラジカル重合性コーティングは、250〜750nmの範囲から選択された波長の輻射線に対して感受性であり、工程(a)において、前記前駆体を250〜750nmの範囲から選択された波長の輻射線に像様露光させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラジカル重合性コーティングは、750超〜1200nmの範囲から選択された波長の輻射線に対して感受性であり、工程(a)において、前記前駆体を750超〜1200nmの範囲から選択された波長の輻射線に像様露光させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶性で皮膜形成性の親水性ポリマーが、デキストリン及び糖アルコールから選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理液のpHが10.5〜13である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理液が非イオン界面活性剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)が処理液の浴内で行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
過剰の処理液が、絞りロールによって工程(c)で除去される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、工程(a)、(b)、(c)、(d)及び(f)から成る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、さらに、工程(a)と(b)との間に予熱工程を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−540377(P2009−540377A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514672(P2009−514672)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004988
【国際公開番号】WO2007/144096
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】