説明

オーブン制御用の積分回路

【課題】 抵抗器の抵抗値、コンデンサの容量に制約されず、積分時間を長くすることができ、更に、当該積分時間を任意に変更できる積分回路を提供する。
【解決手段】 抵抗1、コンデンサ2、オペアンプ3を備える積分器を備え、入力段にクロックのハイ/ローでオン/オフするアナログスイッチ5と、当該クロックを発生させるクロック発生回路4と、クロックの周期Tとハイ部分の長さT1を制御する制御回路6とを設け、抵抗器1を介してオペアンプ3に入力される入力信号をクロックがハイ部分でのみ入力し、クロックの周期Tとハイ部分の長さT1を制御回路6で制御可能としたOCXOのオーブン制御用の積分回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)におけるオーブン制御用の積分回路に係り、特に、積分時間に対してより小さい抵抗器及びコンデンサの部品を使用可能とし、部品を変更することなく積分時間を任意に変更できる積分回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の積分回路:図3]
従来の積分回路について図3を参照しながら説明する。図3は、従来の積分回路の構成図である。
従来の積分回路は、図3に示すように、抵抗器1と、コンデンサ2と、オペアンプ3と、入力端子7と、出力端子8とを備えている。
【0003】
従来の積分回路の接続関係は、入力端子7に抵抗器1が直列に接続されてオペアンプ3の負の入力端子(−)に接続し、オペアンプ3の正の入力端子(+)は接地され、オペアンプ3の出力端子が出力端子8に接続されている。
また、オペアンプ3の負の入力端子(−)とオペアンプ3の出力端子とがコンデンサ2を介して接続されている。
【0004】
従来の積分回路では、入力端子7から入力信号が抵抗器1を介してオペアンプ3の負の入力端子(−)に入力され、オペアンプ3で増幅された信号がコンデンサ2に蓄積されて負の入力端子(−)に出力されることで、入力信号が積分されて出力端子8に出力されることになる。
【0005】
ここで、一般的なオペアンプを用いた積分回路では、積分時間は回路に用いた抵抗器とコンデンサの積で決まる。出力信号電圧をVoとし、入力信号電圧をViとし、抵抗器1の抵抗値R、コンデンサ2の容量Cとすると、Voは以下の式で表される。
Vo=−1/(CR)∫vidt
尚、CRは、積分時間となる。
【0006】
積分時間(CR)を長くするには、C若しくはRを大きくしなければならず、部品選択に制約があった。また、積分時間を変更するには抵抗器、コンデンサの部品におけるC,Rを変更する必要があった。
【0007】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平07−264002号公報「積分回路」(ローム株式会社)[特許文献1]、特開平07−336173号公報「信号レベル調整装置」(アイワ株式会社)[特許文献2]、特開2000−048113号公報「積分方法、積分器、電圧制御発振器及び周波数−電圧変換器」(富士通株式会社)[特許文献3]がある。
【0008】
特許文献1には、積分部5で積分させる特定時間をタイミング発生回路3からスイッチ4に出力し、スイッチ4はその特定時間オンして整流回路2からの信号を積分部5に出力することが記載されている。
【0009】
特許文献2には、スイッチ部12のオン/オフのデューティー比を制御して積分器13からの出力信号のレベルを調整することが記載されている。
【0010】
特許文献3には、積分容量27の積分時間中の一定時間、一定時間パルス発生回路30で開閉スイッチ回路31をオフにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平07−264002号公報
【特許文献2】特開平07−336173号公報
【特許文献3】特開2000−048113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の積分回路では、積分時間を長くするためには、抵抗器とコンデンサの値を大きくしなければならず、抵抗器等の部品を選択するのに制約を受け、更に、抵抗器とコンデンサの値によって積分時間が決まるため、積分時間を任意にかつ簡易に変更することが難しいという問題点があった。
【0013】
また、特許文献1では、積分部5で特定時間積分させる構成であって、デューティーサイクルを用いて断続的に積分させるものとはなっていない。
【0014】
また、特許文献2では、スイッチ部12のオン/オフのデューティー比を制御して入力信号を調整しているものの、その図2のA〜Dに示すように、積分器13は平均波形を求めて出力信号レベルを得るものであって、つまり、オン/オフの短い区間だけで積分しており、長い区間で積分することを予定したものではなく、OCXOのオーブン制御用の積分回路に適用できない。
【0015】
また、特許文献3では、その図11に示すように、信号の周期によって開閉スイッチ回路31をオフにする一定時間及びオンになる時間が変動するものであって、OCXOのオーブン制御用の積分回路に適用できない。
【0016】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、抵抗器の抵抗値、コンデンサの容量に制約されず、積分時間を長くすることができ、更に、当該積分時間を任意に変更できる積分回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、恒温槽付水晶発振器のオーブン制御用に用いられる積分回路であって、一方の入力端子に入力信号が入力され、他方の入力端子が接地されたオペアンプと、オペアンプにおける一方の入力端子の入力側に設けられた抵抗器と、オペアンプにおける一方の入力端子の入力側と出力端子の出力側とを接続するコンデンサと、抵抗器の前段にクロックの周期内のハイ部分でオンとなり、周期内のロー部分でオフとなるスイッチと、スイッチにクロックを生成して出力するクロック発生回路と、クロック発生回路で生成されるクロックの周期、当該周期内のハイ部分の長さを指示する制御回路とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記積分回路において、クロックの1周期より長い区間積分を行うものであり、クロックの周期をTとし、当該周期内のハイ部分の長さをT1とした場合に、クロックのデューティーサイクルsは、T1/Tとなり、制御回路が、デューティーサイクルsのT又はT1、若しくはTとT1の両方を変更させて積分時間を変更するようにしたことを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記積分回路において、抵抗器の抵抗値をRとし、コンデンサの容量値をCとした場合に、積分時間はデューティーサイクルsとRとCの積を基に決定され、制御回路が、デューティーサイクルsを変更させて、特定の積分時間に設定することを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記積分回路において、制御回路が、抵抗器の抵抗値R、コンデンサの容量値C及び積分時間からTとT1を演算式により算出することを特徴とする。
【0021】
本発明は、上記積分回路において、制御回路が、抵抗器の抵抗値R、コンデンサの容量値C及び積分時間に対するTとT1の値を記憶するテーブルを用いて、TとT1を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、抵抗とコンデンサとオペアンプを備える積分器の入力段に、クロックの周期内のハイ部分でオンとなり、周期内のロー部分でオフとなるスイッチと、スイッチにクロックを生成して出力するクロック発生回路と、クロック発生回路で生成されるクロックの周期、当該周期内のハイ部分の長さを指示する制御回路とを有する積分回路としているので、抵抗器の抵抗値、コンデンサの容量に制約されず、積分時間を長くすることができ、更に、当該積分時間を任意に変更できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る積分回路の構成図である。
【図2】入出力の信号状態を示す図である。
【図3】従来の積分回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るオーブン制御用の積分回路は、抵抗とコンデンサとオペアンプを備える積分器の入力段に、クロックの周期内のハイ部分でオンとなり、周期内のロー部分でオフとなるスイッチと、スイッチにクロックを生成して出力するクロック発生回路と、クロック発生回路で生成されるクロックの周期、当該周期内のハイ部分の長さを指示する制御回路とを有する積分回路としているので、抵抗器の抵抗値、コンデンサの容量に制約されず、積分時間を長くすることができ、更に、当該積分時間を任意に変更できるものである。
【0025】
[本積分回路:図1]
本発明の実施の形態に係る積分回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る積分回路の構成図である。
本発明の実施の形態に係る積分回路(本積分回路)は、図1に示すように、抵抗器1と、コンデンサ2と、オペアンプ3と、クロック発生回路4と、アナログスイッチ5と、制御回路6と、入力端子7と、出力端子8とを備えている。
【0026】
本積分回路の接続関係は、入力端子7にアナログスイッチ5を介して抵抗器1が直列に接続されてオペアンプ3の負の入力端子(−)に接続し、オペアンプ3の正の入力端子(+)は接地され、オペアンプ3の出力端子が出力端子8に接続されている。
また、オペアンプ3の負の入力端子(−)とオペアンプ3の出力端子とがコンデンサ2を介して接続されている。
【0027】
クロック発生回路4は、制御回路6からの指示信号に基づいてクロックを生成し、アナログスイッチ5に提供する。
具体的には、制御回路6からクロックの周期Tとクロックのハイ(High)部分の長さT1を特定する指示信号が入力され、その指示信号に基づいてクロック発生回路4は、クロックを生成する。
尚、本積分回路は、クロックの1周期より長い区間積分を行うものとなっている。
【0028】
アナログスイッチ5は、クロック発生回路4から出力されるクロックのハイ(High)部分についてスイッチをオンとして入力端子7と抵抗器1とを接続し、クロックのロー(Low)部分でスイッチをオフとし、入力端子7と抵抗器1の接続を断にする。
つまり、スイッチオンで入力信号が抵抗器1を介してオペアンプ3に入力され、スイッチオフで入力信号がオペアンプ3に入力されないものである。
【0029】
制御回路6は、クロック発生回路4に対してクロックのハイ部分の長さT1(ハイ部分の時間)を特定するための指示信号を出力し、更に、クロックの周期Tの長さを特定するための指示信号を出力する。
よって、デューティーサイクル(Duty Cycle)sは、s=T1/Tで求められる。
つまり、制御回路6には、抵抗器1の抵抗値、コンデンサ2の容量値、更に積分時間に基づいて周期Tとクロックのハイ部分の長さT1を算出する演算式を記憶しており、抵抗器1の値等によってTとT1を算出する処理を行う。特に、本積分装置は、OCXOのオーブン制御用の積分装置であるため、入力電圧Viと出力電圧Voは安定的な値をとるので、TとT1を算出することが容易である。
【0030】
[本積分回路の動作]
本積分回路における動作を説明する。
本制御回路では、抵抗器1の抵抗値、コンデンサ2の容量値、更に積分時間を考慮して、クロックの周期Tとハイ部分の長さT1が制御回路6で演算される。
つまり、制御回路6には、抵抗器の抵抗値、コンデンサの容量値、積分時間を設定すると、周期Tとハイ部分の長さT1を演算する演算式を記憶しており、その演算式に従い演算処理を行う。尚、演算式の代わりに、抵抗器の抵抗値等に対応したテーブルにより、TとT1を求めるようにしてもよい。
【0031】
制御回路6からクロック発生回路4にTとT1が設定されると、クロック発生回路4は、TとT1に従ったクロックを生成し、アナログスイッチ5に出力する。
アナログスイッチ5は、クロックにおけるハイ部分でスイッチオンとなり、ロー部分でスイッチオフとなる。従って、クロックのハイ部分の時間でのみ入力信号が抵抗器1を介してオペアンプ3に入力され、積分が行われることになる。
【0032】
[入出力の信号状態:図2]
次に、本積分回路における入力信号、クロック、出力信号の状態について図2を参照しながら説明する。図2は、入出力の信号状態を示す図である。
入力信号は、図2(a)に示すように、本積分回路がOCXOのオーブン制御用の積分回路であるので、比較的安定したDC成分の電圧となる。
また、クロックは、図2(b)に示すように、制御回路6から周期Tとハイ部分の長さT1が設定され、クロック発生回路4からクロックが出力される。
そして、出力信号は、図2(c)に示すように、クロックのハイ部分の間だけ入力信号を積分し、ロー部分は入力信号の積分を行わないものであるから、階段状の信号となる。
【0033】
[本積分回路の特徴]
本積分回路の構成とすることで、アナログスイッチ5がクロックのハイ部分(T1)でオンとなり、ロー部分(T−T1)でオフとなるため、出力信号電圧Voは、以下の式で表される。ここで、s(デューティーサイクル)=T1/T<1である。
Vo=−s/(CR)∫vidt
【0034】
よって、本積分回路では、コンデンサ2に充電される平均電流がクロックのデューティーサイクル(s=T1/T<1)倍となり、積分時間が1/s(=T/T1>1)倍に延びる。
また、従来の積分回路と同一の積分時間を実現するためには、抵抗器1の抵抗値Rとコンデンサ2の容量値Cの積(RC)がs(=T1/T<1)倍で済むことになり、抵抗器1又はコンデンサ2を小型化して値の小さい部品を用いることが可能となる。
【0035】
また、本積分回路によれば、抵抗器1とコンデンサ2の値を変更することなく、クロックのデューティーサイクルを変更することで、積分時間を変更することが可能となる。
【0036】
[実施の形態の効果]
本積分回路によれば、入力段にクロックのハイ/ローでオン/オフするアナログスイッチ5と、当該クロックを発生させるクロック発生回路4と、クロックの周期とハイ部分の長さを制御する制御回路6とを設け、抵抗器1を介してオペアンプ3に入力される入力信号をクロックがハイ部分でのみ入力し、クロックの周期とハイ部分の長さを制御回路6で制御可能としたことで、積分時間を従来の積分回路より長くでき、更に、抵抗器1の抵抗値とコンデンサ2の容量値に制約されることなく、積分時間を可変にできる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、抵抗器の抵抗値、コンデンサの容量に制約されず、積分時間を長くすることができ、更に、当該積分時間を任意に変更できる積分回路に好適である。
【符号の説明】
【0038】
1…抵抗器、 2…コンデンサ、 3…オペアンプ、 4…クロック発生回路、 5…アナログスイッチ、 6…制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温槽付水晶発振器のオーブン制御用に用いられる積分回路であって、
一方の入力端子に入力信号が入力され、他方の入力端子が接地されたオペアンプと、
前記オペアンプにおける前記一方の入力端子の入力側に設けられた抵抗器と、
前記オペアンプにおける前記一方の入力端子の入力側と出力端子の出力側とを接続するコンデンサと、
前記抵抗器の前段にクロックの周期内のハイ部分でオンとなり、前記周期内のロー部分でオフとなるスイッチと、
前記スイッチにクロックを生成して出力するクロック発生回路と、
前記クロック発生回路で生成されるクロックの周期、当該周期内のハイ部分の長さを指示する制御回路とを有することを特徴とする積分回路。
【請求項2】
積分回路は、クロックの1周期より長い区間積分を行うものであり、
クロックの周期をTとし、当該周期内のハイ部分の長さをT1とした場合に、クロックのデューティーサイクルsは、T1/Tとなり、
制御回路は、前記デューティーサイクルsのT又はT1、若しくはTとT1の両方を変更させて積分時間を変更するようにしたことを特徴とする請求項1記載の積分回路。
【請求項3】
抵抗器の抵抗値をRとし、コンデンサの容量値をCとした場合に、積分時間はデューティーサイクルsとRとCの積を基に決定され、
制御回路は、前記デューティーサイクルsを変更させて、特定の積分時間に設定することを特徴とする請求項2記載の積分回路。
【請求項4】
制御回路は、抵抗器の抵抗値R、コンデンサの容量値C及び積分時間からTとT1を演算式により算出することを特徴とする請求項3記載の積分回路。
【請求項5】
制御回路は、抵抗器の抵抗値R、コンデンサの容量値C及び積分時間に対するTとT1の値を記憶するテーブルを用いて、TとT1を求めることを特徴とする請求項3記載の積分回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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