説明

カウルルーバとカウルパネルを有する自動車

【課題】カウルパネル4に形成された外気導入孔15にエアコンユニット12のダクト16が接続され、そのダクト16に形成されたダクト開口17には開閉体18が回動開閉可能に装着され、外気を車室IR内に取り入れるときは、開閉体18を閉じて、外気を外気導入孔15からダクト16内に導入し、車室IR内の空気を循環させるときは、開閉体18を開いて車室内の空気をダクト16内に導入する自動車において、外気導入孔15からダクト16内に水が浸入することを阻止する大サイズのバッフルプレートを廃止する。
【解決手段】カウルパネル4に形成された外気導入孔15に開閉ドア23を設け、外気を車室IR内に取り入れるときは、開閉ドア23を開けて、その下部開口26からダクト16内に外気を導入し、車室IR内の空気を循環させるときは、開閉ドア23を閉じる。いずれの場合も開閉ドア23によってダクト16内に水が浸入することを阻止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の骨格構造を構成するカウルパネルと、そのカウルパネルの上側に位置する樹脂製のカウルルーバとを有する自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
カウルパネルとカウルルーバとを有する自動車は従来より周知である(特許文献1参照)。図6は、この種の自動車の従来例を示す斜視図であり、図7は図6のVII−VII線拡大断面図である。これらの図に示すように、エンジンルームERの上部開口は、通常、フード1によって覆われていいて、このフード1は、車体2、すなわち自動車のメインボデーに回動開閉可能に支持されている。各図における矢印Frは自動車の前進方向を示し、符号Wは車幅方向を示している。
【0003】
図6及び図7における符号3は、車室IRの前部を区画するフロントウィンドシールドを示し、符号5は、フロントウィンドシールド3の下部に沿って車幅方向Wに延びる樹脂製のカウルルーバを示している。図8は、図6及び図7に示したフード1を省略して示した自動車の部分概略斜視図である。この図8及び図7に示すように、カウルルーバ5の下側には、そのカウルルーバ5に沿って車幅方向Wに延びるカウルパネル4が位置している。このカウルパネル4は、車体2の骨格構造を構成する部材であって、鋼板により構成されている。かかるカウルパネル4には、エンジンルームERと車室IRとを仕切るダッシュパネル6の上端部が固着され、そのダッシュパネル6の下端は、車体2の床面を構成するフロアパネル(図示せず)に固着されている。
【0004】
図7に示すように、フロントウィンドシールド3は、その下部がカウルパネル4に接着剤7を介して固定され、カウルルーバ5には、車幅方向Wに間隔をあけて配置された複数の爪8が形成されていて、その各爪8がカウルパネル4に形成された係止孔9にそれぞれ嵌着され、これによってカウルルーバ5がカウルパネル4に連結されている。さらに、図7及び図8に示すように、カウルルーバ5の前部には、ゴム製のウェザストリップ10がクリップによって取り付けられ、フード1が図6及び図7に示したように閉じられたとき、そのフード1がウェザストリップ10に圧接してエンジンルームER内がシールされる。また、カウルルーバ5の後端部に形成された二又部11にフロントウィンドシールド3の下部が嵌着されている。
【0005】
また、図7に示すように、カウルパネル4よりも車室IRの側には、エアコンユニット(空調装置)12が配置され、このエアコンユニット12は、モータ13と、そのモータ13により作動されるブロア14とを有している。また、カウルパネル4には外気導入孔15が形成され、エアコンユニット12は、この外気導入孔15とブロア14とを接続するダクト16を有している。さらに、ダクト16には、その内部と車室IRとを連通するダクト開口17が形成され、エアコンユニット12は、このダクト開口17に配置された開閉体18を有している。この開閉体18は、図7に実線で示したように、ダクト開口17を閉鎖する閉位置と、図7に二点鎖線で示したように、ダクト開口17を開放する開位置との間を、枢ピン19を介して、矢印Cで示したように回動開閉可能にダクト16に支持されている。図7から判るように、開閉体18が二点鎖線で示した開位置を占めたとき、その開閉体18によって、ダクト16内の空気流路が閉鎖される。かかる開閉体18を手動によって回動させるように構成することもできるが、ここではモータによって開閉体18を回動させるように構成されている。
【0006】
エアコンユニット12は、車室IR内に固定配置されたインストルメントパネル20によって覆われていて、車室IR内の乗員によって、カウルパネル4やエアコンユニット12が目視されることはない。また、図7に示すように、カウルルーバ5には、小開口面積の多数の外気取入口21が形成されている。図6及び図8には、外気取入口21の図示は省略してある。
【0007】
開閉体18が、図7に実線で示した閉位置を占めた状態で、車室IR内の乗員がインストルメントパネル20に設けられた図示していないブロア用スイッチを操作し、エアコンユニット12のモータ13を起動させてブロア14を作動させると、カウルルーバ5に形成された外気取入口21から、そのカウルルーバ5とカウルパネル4との間の空間Sに外気が取り入れられる。引き続き、その外気は、カウルパネル4に形成された外気導入孔15とダクト16の内部を通してブロア14に吸引されて車室IR内に導入される。図7には、このときの空気の流れを矢印Aで示してある。
【0008】
一方、車室内の乗員が図示していない開閉体用のスイッチを操作して、開閉体18用のモータを作動させると、その開閉体18は図7に二点鎖線で示した開位置に回動する。この状態で、乗員がブロア用スイッチを操作してエアコンユニット12のモータ13を起動させてブロア14を作動させると、開位置を占めた開閉体18によって、ダクト16内の空気流路が閉鎖されると共に、ダクト16に形成されたダクト開口17が開放されるので、矢印Bで示すように、車室IR内の空気がダクト開口17を通してダクト16内に取り入れられ、その取り入れられた空気は、ブロア14に吸引されて、再び車室IR内に戻される。このとき、外気がカウルパネル4の外気導入孔15を通してブロア14に吸引されることはない。このようにして、車室IR内の空気が車室内で循環するのである。
【0009】
上述のように、カウルルーバ5には外気取入口21が形成され、カウルパネル4には外気導入孔15が形成されていて、これらの孔21,15を通して外気を車室内に取り入れることができるのであるが、外気導入孔15が開放したままであったとすれば、雨天時や洗車時に、外気取入口21を通してカウルパネル4の内部に入り込んだ水が、外気導入孔15からエアコンユニット12内に浸入し、これによってそのエアコンユニット12が故障するおそれがある。
【0010】
そこで、従来は図6乃至図8に示すように、カウルパネル4に形成された外気導入孔15に水が浸入することを阻止するバッフルプレート22がカウルルーバ5に固着されていた。このバッフルプレート22は、外気導入孔15に雨水などの水が浸入することを阻止するための部材であるから、図8に示すように、外気導入孔15の開口面積よりも大きく形成され、しかもその外気導入孔15に対向して位置している。このため、開閉体18を閉位置にもたらして外気導入孔15を通して外気をエアコンユニット12に取り入れるとき、大サイズのバッフルプレート22によって吸気抵抗が増大し、これによってエアコンユニット12の空調性能が悪化するおそれがある。しかも、サイズの大きなバッフルプレート22は、そのコストが高く、その重量も大きいため、かかるバッフルプレート22を設けることによって、自動車のコストが上昇し、かつ自動車の重量が増大するおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−203169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述した従来の欠点を除去した自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、フロントウィンドシールドの下部に沿って車幅方向に延びる樹脂製のカウルルーバと、該カウルルーバの下側に位置し、かつ該カウルルーバに沿って車幅方向に延びるカウルパネルと、エアコンユニットとを具備し、該エアコンユニットは、モータと、該モータにより作動されるブロアと、前記カウルパネルに形成された外気導入孔と前記ブロアとを接続するダクトと、該ダクトの内部と車室内とを連通するように該ダクトに形成されたダクト開口を閉鎖する閉位置と該ダクト開口を開放する開位置との間を作動可能な開閉体とを有し、該開閉体が閉位置を占めた状態で、前記ブロアが作動することにより、前記カウルルーバに形成された外気取入口から、該カウルルーバと前記カウルパネルとの間の空間に取り入れられた外気が、前記外気導入孔とダクトの内部を通して前記ブロアに吸引されて車室内に導入され、前記開閉体が開位置を占めた状態で、前記ブロアが作動することにより、前記ダクト開口を通してダクト内に取り入れられた車室内からの空気が、前記ブロアに吸引されて再び車室内に戻される自動車において、前記カウルパネルに形成された外気導入孔を閉鎖する閉位置と該外気導入孔を開放する開位置との間を作動可能な開閉ドアと、前記開閉体が開位置を占めたとき前記開閉ドアが閉位置を占め、かつ該開閉体が閉位置を占めたとき前記開閉ドアが開位置を占めるように、当該開閉体と開閉ドアの作動を規制する規制駆動手段とを有し、前記開閉ドアは、該開閉ドアが閉位置を占めたときに前記外気導入孔を閉鎖するドア正面壁と、該ドア正面壁の車幅方向各端部に一体に形成された一対のドア側壁とによって、前記ダクトの側が開放した形態に形成され、かつ前記ドア正面壁の下部には、開閉ドアが開位置を占めたときに前記カウルパネルの内部と前記ダクトの内部を連通する下部開口が形成され、当該開閉ドアの上部が前記カウルパネル又はダクトに回動可能に支持されていることを特徴とする自動車を提案する(請求項1)。
【0014】
また、上記請求項1に記載の自動車において、前記規制駆動手段は、前記開閉体をその閉位置と開位置との間を作動させる第1のモータと、前記開閉ドアをその閉位置と開位置との間を作動させる第2のモータと、前記開閉体が開位置を占めたとき前記開閉ドアが閉位置を占め、かつ当該開閉体が閉位置を占めたとき前記開閉ドアが開位置を占めるように、前記第1及び第2のモータの作動を制御する制御装置とを具備していると有利である(請求項2)。
【0015】
さらに、上記請求項1に記載の自動車において、前記規制駆動手段は、長手方向中心部がモータ又は手動によって回転駆動される回動アームと、該回動アームの一端側と前記開閉体とに連結された第1の連結部材と、前記回動アームの他端側と前記開閉ドアとに連結された第2の連結部材とを有し、前記回動アームが第1の方向に回動することにより、前記第1の連結部材が回動アームにより引かれて前記開閉体が閉位置に回動すると共に、前記第2の連結部材が回動アームに押されて前記開閉ドアが開位置に回動し、前記回動アームが第2の方向に回動することにより、前記第1の連結部材が回動アームにより押されて前記開閉体が開位置に回動すると共に、前記第2の連結部材が回動アームに引かれて前記開閉ドアが閉位置に回動するように構成すると有利である(請求項3)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カウルパネルに形成された外気導入孔を閉鎖する閉位置と外気導入孔を開放する開位置との間を作動可能な開閉ドアを有していて、車室内の空気を循環させるべく、開閉体が開位置を占めたとき、開閉ドアは閉位置を占めるので、カウルパネルに形成された外気導入孔から外気がエアコンユニット内に浸入することを阻止できると共に、その外気導入孔を通して雨水や洗車水などの水がエアコンユニットに浸入することを阻止できる。
【0017】
一方、車室内に外気を取り入れるべく、開閉体が閉位置を占めたとき、開閉ドアは開位置を占めるので、外気導入孔を通して外気を支障なくエアコンユニットに吸引して車室内に導くことがきる。このとき、開閉ドアのドア正面壁の下部に形成された下部開口を通して、カウルパネル内の外気がエアコンユニットのダクトに流入するので、雨水や洗車水などの水がダクトの内部に浸入することを阻止することができる。
【0018】
上述のように、開閉ドアが、外気導入孔を通して外部の水がダクト内に浸入することを阻止する働きをなすので、従来の自動車には必ず必要とされた大サイズのバッフルプレートを設ける必要はない。このため、エアコンユニットに外気を取り入れるときの吸気抵抗を従来よりも小さなものにすることができ、エアコンユニットの空調性能の悪化を防止することができる。しかも、開閉ドアは、カウルパネルに形成された外気導入孔を開閉するだけの大きさであればよいので、開閉ドアのサイズは、従来のバッフルプレートよりも大幅に小さくすることができ、これによって自動車のコストと重量を従来の自動車よりも低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図7と同様の断面図であって、本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】開閉ドアが閉位置を占め、かつ開閉体が開位置を占めたときの、図1と同様な断面図である。
【図3】開閉ドアの斜視図である。
【図4】規制駆動手段の一例を示すブロック図である。
【図5】規制駆動手段の他の例を示す概略説明図である。
【図6】自動車の外観を示す斜視図である。
【図7】図6のVII−VII線拡大断面図であって、従来の自動車の構造を示す図である。
【図8】図7に示したフードを省略して示した自動車の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0021】
本例の自動車の外観は、図6に示した従来の自動車と実質的に変わりはない。また、図1及び図2は本例の自動車の図7と同様な断面図であるが、これらの図に示すように、本例の自動車の基本構成も、従来の自動車と変わりはない。すなわち、図1、図2及び図6に示すように、本例の自動車も、フロントウィンドシールド3の下部に沿って車幅方向Wに延びる樹脂製のカウルルーバ5と、そのカウルルーバ5の下側に位置し、かつ該カウルルーバ5に沿って車幅方向Wに延びるカウルパネル4と、エアコンユニット12とを具備し、該エアコンユニット12は、モータ13と、そのモータ13により作動されるブロア14と、カウルパネル4に形成された外気導入孔15とブロア14とを接続するダクト16と、開閉体18とを有している。この開閉体18は、ダクト16の内部と車室IR内とを連通するように該ダクト16に形成されたダクト開口17を閉鎖する図1に示した閉位置と、ダクト開口17を開放する図2に示した開位置との間を作動可能に枢ピン19を介してダクト16に支持されている。開閉体18が、図1に示した閉位置と図2に示した開位置との間を矢印C方向に回動可能にダクト16に支持されているのである。また、この開閉体18が図1に示した閉位置を占めた状態で、ブロア14が作動することにより、カウルルーバ5に形成された外気取入口21から、該カウルルーバ5とカウルパネル4との間の空間Sに取り入れられた外気が、矢印Aで示すように、外気導入孔15とダクト16の内部を通してブロア14に吸引されて車室IR内に導入される。また、開閉体18が図2に示した開位置を占めた状態で、ブロア14が作動することにより、ダクト開口17を通してダクト16内に取り入れられた車室IR内からの空気が、矢印Bで示すようにブロア14に吸引されて再び車室IR内に戻されるように構成されている。このように本例の自動車の基本構成は従来の自動車と変わりはない。よって、図1及び図2における従来の自動車と同一の部分については、図6乃至図8に付した符号と同一の符号を付して、従来の自動車と同一の部分についてのこれ以上の説明を省略する。
【0022】
図1及び図2に示した自動車の従来と異なるところは、先ず、この自動車には、図6乃至図8に示したバッフルプレート22が設けられておらず、その代わりに、カウルパネル4に形成された外気導入孔15を開閉する開閉ドア23と、その開閉ドア23と開閉体18とを後述するように規制しながら駆動する規制駆動手段が設けられている点である。より具体的に示すと、開閉ドア23は、カウルパネル4に形成された外気導入孔15を閉鎖する図2に示した閉位置と、その外気導入孔15を開放する図1に示した開位置との間を作動可能となっていて、しかも上述した規制駆動手段によって、開閉体18が図2に示した開位置を占めたとき、開閉ドア23は図2に示した閉位置を占め、開閉体18が図1に示した閉位置を占めたとき、開閉ドア23は図1に示した開位置を占めるように、開閉体18と開閉ドア23の作動が規制される。
【0023】
また、開閉ドア23は、図1、図2及び図3の(a)に示すように、ほぼ半円筒状に形成されたドア正面壁24と、そのドア正面壁24の車幅方向各端部に一体に形成された一対のドア側壁25とを有し、そのドア正面壁24と一対のドア側壁25とによってダクト16の側が開放したカップ状の横断面形態に形成され、ドア正面壁24の下部には、下部開口26が形成されている。かかる開閉ドア23の上部が、ピン27を介して、カウルパネル4又はダクト16に矢印Dで示す方向に回動可能に支持されている。
【0024】
図2に示したように、開閉ドア23が閉位置を占めたとき、その開閉ドア23のドア正面壁24がカウルパネル4に形成された外気導入孔15の全体を閉鎖し、外気が外気導入孔15を通してエアコンユニット12のダクト16内に流入することが阻止される。その際、外気導入孔15のまわりのカウルパネル部分には、例えばゴムや発泡体などの弾性材より成るシール材28が固定されていて、閉位置を占めた開閉ドア23のドア正面壁24の外面がシール材28に圧接して、ダクト16内のシール性が高められる。
【0025】
一方、開閉ドア23が図1に示した開位置を占めたとき、その開閉ドア23のドア正面壁下部に形成された下部開口26を通して、カウルルーバ5とカウルパネル4の間の空間Sと、ダクト16の内部の空間が連通する。このように、開閉ドア23のドア正面壁24の下部には、開閉ドア23が図1に示した開位置を占めたときに、カウルパネル4の内部空間Sとダクト16の内部を連通する下部開口26が形成されているのである。
【0026】
図1に示したように、開閉体18が閉位置を占め、開閉ドア23が開位置を占めた状態で、車室IR内の乗員がブロア用スイッチを操作してモータ13を起動し、これによってブロア14が作動を開始すると、先にも説明したように、車外の外気が矢印Aで示すように、カウルルーバ5に形成された外気取入口21からカウルパネル4内に流入する。このとき、この外気は、開位置を占めた開閉ドア23の下部開口26を通してダクト16内に流入し、次いでブロア14に吸引されて車室IR内に取り入れられる。このとき、開閉体18は閉位置を占めているので、ダクト開口17を通して車室IR内の空気がダクト16内に流入することはない。また、外気が流通する開閉ドア23の下部開口26は下方を向いて開口しているので、カウルルーバ5の外気取入口21から雨水や洗車水などの水がカウルパネル4とカウルルーバ5との間の空間S内に浸入しても、その水が開閉ドア23の下部開口26を通してダクト16に浸入することはない。開閉ドア23は、ドア正面壁24のほかに、その車幅方向各端部に一体に設けられた一対のドア側壁25を有しているので、雨水などの水が、開閉ドア23の車幅方向各端部からまわり込んで、ダクト16に浸入することも阻止できる。このように、従来の自動車に必ず設けられていたバッフルプレートが設けられてはいないが、外気を車室内に取り入れるとき、雨水などの水がエアコンユニット12に浸入することを阻止できる。
【0027】
これに対し、図2に示したように、開閉体18が開位置を占め、開閉ドア23が閉位置を占めた状態で、ブロア14が作動を開始すると、先に説明したように、車室IR内の空気が矢印Bで示したようにダクト開口17を通してダクト16内に流入してブロア14に吸引され、再び車室IRに戻され、空気が車室IR内を循環する。このとき、開閉ドア23は閉位置を占めているので、カウルルーバ5に形成された外気取入口21とカウルパネル4に形成された外気導入孔15を通して外気がダクト16内に流入することはなく、当然、外気取入口21を通してカウルパネル4とカウルルーバ5との間の空間S内に入り込んだ雨水などの水も、ダクト16内に浸入することはない。このように、この場合も、従来のバッフルプレートが設けられていなくとも、水がエアコンユニット12に浸入することを阻止できる。カウルパネル4に形成された外気導入孔15に対するあらゆる方向からの水の浸入を阻止することができるのである。
【0028】
なお、上述のように車室内の空気を循環させるとき、開閉ドア23が閉位置を占めていて、外気がダクト16内に流入することはないので、開閉体18がダクト16の空気流路を閉鎖しなくともよく、開閉体18が、例えば図2に二点鎖線で示した開位置を占めていてもよい。
【0029】
以上のように、本例の自動車によれば、バッフルプレートは不要であるため、エアコンユニットを介して車室内に外気を取り入れるときの空調性能の悪化を防止できる。しかも、開閉ドア23は、カウルパネル4に形成された外気導入孔15を開閉するだけの大きさを有していればよいので、その開閉ドア23のサイズを従来用いられていたバッフルプレートよりも大幅に小型化することができる。このように開閉ドア23を小型化することにより、自動車の重量とコストの低減を達成できる。
【0030】
図1、図2及び図3の(a)に示した開閉ドア23のドア正面壁24は、ほぼ半円筒状に形成されているが、図3の(b)及び(c)に示した開閉ドア23のように、ドア正面壁24が四角柱状又は三角柱状などの形態に形成されていてもよい。
【0031】
次に、開閉体18が開位置を占めたとき開閉ドア23が閉位置を占め、かつ該開閉体18が閉位置を占めたとき開閉ドア23が開位置を占めるように、当該開閉体18と開閉ドア23の作動を規制する規制駆動手段の具体的構成を明らかにする。
【0032】
図4に示した規制駆動手段は、開閉体18をその閉位置(図1)と開位置(図2)との間を作動させる第1のモータ29と、開閉ドア23をその閉位置(図2)と開位置(図1)との間を作動させる第2のモータ30と、制御装置31とを有している。第1のモータ29は、図1及び図2に示した開閉体18の枢ピン19を矢印C方向に回転駆動し、第2のモータ30は、図1及び図2に示した開閉ドア23のピン27を矢印D方向に回転駆動するように構成されている。
【0033】
車室内には、図4に示したスイッチ32が設けられ、乗員がそのスイッチ32を操作することにより生ぜしめられた信号が制御装置31に取り込まれ、その制御装置31より第1及び第2のモータ29,30に指令が出力され、これらのモータ29,30が作動して、開閉体18と開閉ドア23がそれぞれ駆動される。これにより、開閉体18と開閉ドア23が、図1及び図2に示した各位置を占めることができる。このように、制御装置31は、車室内に配置されたスイッチ32の操作によって、開閉体18が開位置を占めたとき開閉ドア23が閉位置を占め、かつ当該開閉体18が閉位置を占めたとき開閉ドア23が開位置を占めるように、第1及び第2のモータ29,30の作動を制御するのである。
【0034】
図5の(a),(b)に示した規制駆動手段は、図1及び図2に示したインストルメントパネル20の内部に配置された回動アーム33と、その回動アーム33の一端側と開閉体18とにそれぞれ回動可能に連結された剛体の棒より成る第1の連結部材34と、回動アーム33の他端側と開閉ドア23とにそれぞれ回動可能に連結された剛体の棒より成る第2の連結部材35とを有している。回動アーム33は、その長手方向中心部がモータ36により、又は手動によって矢印E,F方向に回転駆動されるように支持されている。
【0035】
ここで、モータ36の作動により、又は乗員の手操作によって、回動アーム33が図5の(a)に示したように第1の方向Eに回動させられると、第1の連結部材34が回動アーム33によって矢印G方向に引かれて、開閉体18が閉位置に回動する。これと同時に、第2の連結部材35が回動アーム33によって矢印H方向に押されて、開閉ドア23が開位置に回動する。これに対し、図5の(b)に示すように、モータ36の作動又は手操作によって、回動アーム33が第2の方向Fに回動すると、第1の連結部材34が回動アーム33によって矢印I方向に押されて、開閉体18が開位置に回動する。同時に第2の連結部材35が回動アーム33によって矢印J方向に引かれて開閉ドア23が閉位置に回動する。
【符号の説明】
【0036】
3 フロントウィンドシールド
4 カウルパネル
5 カウルルーバ
12 エアコンユニット
13 モータ
14 ブロア
15 外気導入孔
16 ダクト
17 ダクト開口
18 開閉体
21 外気取入口
23 開閉ドア
24 ドア正面壁
25 ドア側壁
26 下部開口
29 第1のモータ
30 第2のモータ
31 制御装置
33 回動アーム
34 第1の連結部材
35 第2の連結部材
36 モータ
E 第1の方向
F 第2の方向
IR 車室
S 空間
W 車幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウィンドシールドの下部に沿って車幅方向に延びる樹脂製のカウルルーバと、該カウルルーバの下側に位置し、かつ該カウルルーバに沿って車幅方向に延びるカウルパネルと、エアコンユニットとを具備し、該エアコンユニットは、モータと、該モータにより作動されるブロアと、前記カウルパネルに形成された外気導入孔と前記ブロアとを接続するダクトと、該ダクトの内部と車室内とを連通するように該ダクトに形成されたダクト開口を閉鎖する閉位置と該ダクト開口を開放する開位置との間を作動可能な開閉体とを有し、該開閉体が閉位置を占めた状態で、前記ブロアが作動することにより、前記カウルルーバに形成された外気取入口から、該カウルルーバと前記カウルパネルとの間の空間に取り入れられた外気が、前記外気導入孔とダクトの内部を通して前記ブロアに吸引されて車室内に導入され、前記開閉体が開位置を占めた状態で、前記ブロアが作動することにより、前記ダクト開口を通してダクト内に取り入れられた車室内からの空気が、前記ブロアに吸引されて再び車室内に戻される自動車において、
前記カウルパネルに形成された外気導入孔を閉鎖する閉位置と該外気導入孔を開放する開位置との間を作動可能な開閉ドアと、前記開閉体が開位置を占めたとき前記開閉ドアが閉位置を占め、かつ該開閉体が閉位置を占めたとき前記開閉ドアが開位置を占めるように、当該開閉体と開閉ドアの作動を規制する規制駆動手段とを有し、前記開閉ドアは、該開閉ドアが閉位置を占めたときに前記外気導入孔を閉鎖するドア正面壁と、該ドア正面壁の車幅方向各端部に一体に形成された一対のドア側壁とによって、前記ダクトの側が開放した形態に形成され、かつ前記ドア正面壁の下部には、開閉ドアが開位置を占めたときに前記カウルパネルの内部と前記ダクトの内部を連通する下部開口が形成され、当該開閉ドアの上部が前記カウルパネル又はダクトに回動可能に支持されていることを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記規制駆動手段は、前記開閉体をその閉位置と開位置との間を作動させる第1のモータと、前記開閉ドアをその閉位置と開位置との間を作動させる第2のモータと、前記開閉体が開位置を占めたとき前記開閉ドアが閉位置を占め、かつ当該開閉体が閉位置を占めたとき前記開閉ドアが開位置を占めるように、前記第1及び第2のモータの作動を制御する制御装置とを具備する請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記規制駆動手段は、長手方向中心部がモータ又は手動によって回転駆動される回動アームと、該回動アームの一端側と前記開閉体とに連結された第1の連結部材と、前記回動アームの他端側と前記開閉ドアとに連結された第2の連結部材とを有し、前記回動アームが第1の方向に回動することにより、前記第1の連結部材が回動アームにより引かれて前記開閉体が閉位置に回動すると共に、前記第2の連結部材が回動アームに押されて前記開閉ドアが開位置に回動し、前記回動アームが第2の方向に回動することにより、前記第1の連結部材が回動アームにより押されて前記開閉体が開位置に回動すると共に、前記第2の連結部材が回動アームに引かれて前記開閉ドアが閉位置に回動する請求項1に記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86647(P2012−86647A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234047(P2010−234047)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】