説明

カセット装置

【課題】種々の温度に応じて色が多様に変化してバラエティーに富む情報を表現することが可能な示温ラベルを作成することができる印刷用のカセット装置を提供する。
【解決手段】カセット装置21は、印刷用テープ34とインクリボン35を保持し、サーマルヘッド9を備えた印刷装置1に着脱可能に装着され、サーマルヘッド9に対して印刷用テープ34およびインクリボン35が送られて、サーマルヘッド9の発熱によりインクリボン35を介して印刷用テープ34に印刷が行なわれる。印刷用テープ34は、温度の変化に応じて変色または発色する示温材を含む示温材層41を有し、インクリボン35は、印刷用テープ34の示温材層41とは異なる温度で変色または発色する示温材を含む転写用インク層46を有し、この転写用インク層46のインクで印刷用テープ34の示温材層41の上に所定のパターンが印刷され、示温ラベルとして使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用テープや記録シートに印刷により、温度によって色の変わる複数種類のパターンを形成して温度管理等に用いる示温ラベルを作成することが可能なカセット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度によって色が変化するテープを作成する装置として、実開平5‐447号公報に記載のものがある。この公報のものは、印刷用テープおよびインクリボンを保持するカセット装置の前記印刷用テープに示温材を含ませて構成し、このカセット装置を印刷装置に装着し、印刷装置のサーマルヘッドを発熱させ、インクリボンのインクを印刷用テープに付着させて文字や記号等のパターンを印刷するものである。
【0003】
このカセット装置に保持される印刷用テープは、示温材を含んでいるため、インクを付着させて文字や記号等のパターンを印刷すると、温度に応じて示温材が反応するため、周囲温度に応じて色が変化する示温ラベルとして使用することができる。
【0004】
例えば、このカセット装置を用いて印刷用テープ上に温度に応じて色が変化する文字等を表現するためには、その文字を反転させた印刷、すなわち文字部分を残して文字の背景部分にインクを付着させて印刷を行なう。これにより、背景部分では、インクにより印刷用テープの示温材の塗布面が遮蔽されるが、文字部分では示温材の塗布面が遮蔽されないため、文字部分が温度に応じて変色し、その変色で文字を表現することになる。
【0005】
また、温度によって発色するシート印刷を行なうものとして、特開平10−329429号公報に記載される技術がある。この公報のものは、転写リボンに示温材を含む感熱転写層を設け、サーマルプリンタを用いてその感熱転写層をシートに熱転写して温度に応じて可視化が可能なパターンを印刷するものである。
【特許文献1】実開平5−447号公報
【特許文献2】特開平10−329429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実開平5−447号公報のテープ作成装置においては、示温材を含む印刷用テープにインクリボンで所定のパターンを印刷することにより示温ラベルを作成し、この示温ラベルを食品等に貼り付けて、その温度管理に使用することができる。
【0007】
しかし、このテープ作成装置で作成される示温ラベルは、指定された温度に応じて印刷用テープの色が変わるだけであるため、食品等の温度管理等に使用するときに、温度の変化で得られる情報が少なく、更に多様なバリエーションの情報が得られる示温ラベルの作成が可能なことが望まれる。
【0008】
また、前記テープ作成装置では、温度に応じて色の変化する文字等を印刷するためには、文字を反転処理して印刷データを作成する必要があり、処理が面倒でる。
【0009】
一方、特開平10−329429号公報の感熱転写リボンでは、感熱転写層に温度特性が同じ1種類の示温材が含まれているだけであり、このためその感熱転写リボンでシートにパターンを印刷して示温ラベルとしたときに、実開平5−447号公報のものと同様に、温度の変化で得られる情報が少なく、更に多様なバリエーションの情報が得られる示温ラベルの作成が可能なことが望まれる。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点を解決するものであり、種々の温度に応じて色が多様に変化してバラエティーに富む情報を表現することが可能な示温ラベルを作成することができ、また文字のパターンを印刷する際の制御も簡単にすることができる印刷用のカセット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、印刷用テープとインクリボンとを保持し、サーマルヘッドを備えた印刷装置に着脱可能に装着され、前記サーマルヘッドに対して前記印刷用テープおよび前記インクリボンが送られて、前記サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンを介して前記印刷用テープに印刷が行なわれるカセット装置であって、前記印刷用テープは、温度の変化に応じて変色または発色・消色する示温材を含んで構成され、前記インクリボンは、前記印刷用テープの示温材とは異なる温度により変色または発色・消色する示温材を含んだ転写用インク層を備えて構成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、前記インクリボンが、特性の異なる示温材を含んだ複数種類の転写用インク層を該インクリボン上の異なる位置に備えていることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、前記複数種類のそれぞれの転写用インク層が、前記インクリボンのリボン送り方向に沿って区分けされて所定の順に繰り返して配置されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、前記複数種類のそれぞれの転写用インク層が、前記インクリボンのリボン送り方向と直交するリボン幅方向に区分けされるとともに、リボン送り方向に沿って延びるように配置されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明は、前記示温材の特性の異なる複数種類の印刷用テープをそれぞれ保持する複数種類のテープカセットうちの1種類のテープカセットと、前記示温材の特性の異なる複数種類のインクリボンをそれぞれ保持する複数種類のリボンカセットのうちの1種類のリボンカセットとを互いに係脱可能に組み合わせた状態で1個のカセット装置を構成し、該カセット装置を前記印刷装置に装着可能に構成したことを特徴としている。
【0016】
請求項6の発明は、前記印刷用テープが、前記示温材を含む被印刷テープと剥離テープとを剥離可能に重ねてなり、前記被印刷テープには、ハーフカットにより形成された印刷対象部分である複数のラベル領域がテープ送り方向に沿って配置されていることを特徴としている。
【0017】
請求項7の発明は、インクリボンを保持して、サーマルヘッドを備えた印刷装置に着脱可能に装着され、前記サーマルヘッドに対して前記インクリボンが送られて、前記サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンを介して記録シートに印刷が行なわれるカセット装置であって、前記インクリボンが、温度の変化に応じて変色または発色・消色する特性の異なる示温材を含んだ複数種類の転写用インク層を該インクリボン上の異なる位置に備えたことを特徴としている。
【0018】
請求項8の発明は、前記複数種類のそれぞれの転写用インク層が、前記インクリボンのリボン送り方向に沿って区分けされて所定の順に繰り返して配置されていることを特徴としている。
【0019】
請求項9の発明は、前記複数種類のそれぞれの転写用インク層が、前記インクリボンのリボン送り方向と直交するリボン幅方向に区分けされるとともに、リボン送り方向に沿って配置されていることを特徴としている。
【0020】
請求項10の発明は、前記記録シートが、前記インクリボンとともに前記カセット装置に収納される示温材を含んでいない印刷用テープであり、この印刷用テープが前記インクリボンとともに前記サーマルヘッドに対して送られて、前記サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンを介して印刷が行なわれることを特徴としている。
【0021】
請求項11の発明は、印刷用テープを保持するテープカセットと、前記複数種類の転写用インク層の前記示温材の特性の組み合わせが異なる複数種類のインクリボンのうちの1種類のリボンカセットとを互いに係脱可能に組み合わせた状態で1個のカセット装置を構成し、該カセット装置を前記印刷装置に装着可能に構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、印刷用テープが示温材を含んで構成され、インクリボンも示温材を含んだ転写用インク層を備えているため、印刷用テープ自体が温度に応じて変色するだけでなく、その印刷用テープに示温材を含むインクで印刷される文字や記号等のパターンも温度に応じて変色させることができ、このためこれらの印刷用テープ自体の色の変化と、その印刷用テープの上のパターンの色の変化との組み合わせで、温度に応じて多様に変化するバラエティーに富む情報を表現することが可能な示温ラベルを作成することが可能となる。
【0023】
また、インクリボンが示温材を含む転写用インク層を備えるため、その転写用インク層の示温材を含むインクで文字を印刷してそれを温度の変化でそのまま表現でき、したがって従来のように文字を反転処理して印刷データを作成するような必要がなく、このため印刷制御を簡単に行なうことができる。
【0024】
請求項2〜4の発明によれば、インクリボンに特性の異なる示温材を含んだ複数種類の転写用インク層が設けられているから、印刷用テープにそのインクリボンを介して温度特性の異なる複数種類のパターンを印刷することができ、その異なる温度で変色する複数種類のパターンと印刷用テープ自体の変色との組み合わせで、より多様に変化するバラエティーに富む情報を表現することが可能な示温ラベルを作成することができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、複数種類のテープカセットのうちの1個と、複数種類のリボンカセットのうちの1個とを組み合わせてカセット装置を構成することができ、その組み合わせるテープカセットとリボンカセットを選択することで、温度特性の異なる印刷用テープとインクリボンとの多数の組み合わせが可能となり、これにより多様に変化するバラエティーに富む情報を表現することが可能な示温ラベルを作成することができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、インクリボンを介して温度の変化で色が変わるパターンを印刷した後に、そのパターンが印刷された示温ラベルを印刷用テープから容易に剥し取って対象物に貼り付けることができる。
【0027】
請求項7〜9の発明によれば、記録シートに、温度特性の異なる示温材を含む複数種類の文字や記号等のパターンを印刷して形成することができ、その各パターンの色の変化で、温度に応じて多様に変化するバラエティーに富む情報を表現することが可能な示温ラベルを作成することができる。
【0028】
請求項10の発明によれば、示温材を含んでいない印刷用テープに、温度特性の異なる示温材を含む複数種類の文字や記号等のパターンを印刷して形成することができ、その各パターンの色の変化で、温度に応じて多様に変化するバラエティーに富む情報を表現することが可能な示温ラベルを作成することができる。
【0029】
請求項11の発明によれば、テープカセットに対して、複数種類のリボンカセットのうちの1個を組み合わせてカセット装置を構成することができ、そのテープカセットに組み合わせるリボンカセットを選択することで、前記テープカセットに保持されているテープ状の記録シートに印刷するパターンの温度特性を種々変えることができ、これにより多様に変化するバラエティーに富む情報を表現することが可能な示温ラベルを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0031】
図1は本発明の一実施形態に係るカセット装置が装着される印刷装置の外観を示す斜視図である。
【0032】
図1に示すように、印刷装置1は、装置本体2の上面にキー入力部3、表示部4、および開閉蓋5を備えている。キー入力部3は、印字する文字列のデータを入力する文字キー、印字開始を指示する印字キー、表示部4の表示画面上のカーソルを移動操作するカーソルキー、および入力された文字列の編集処理、各種設定処理、印字処理等に必要な種々の制御キーを備えている。表示部4は液晶表示装置であり、入力されたデータや処理内容を表示する。
【0033】
装置本体2は、カセット装置を装着するためのカセット収納部6を有し、このカセット収納部6の上面の開口が開閉蓋5により開閉される。
【0034】
図2は、印刷装置1のカセット収納部6の内部構造と、このカセット収納部6内に装着されるカセット装置21の外観とを示す斜視図、図3はカセット装置21の内部構造を示す平面図である。
【0035】
カセット装置21は、上ケース22aと下ケース22bを組み合わせて構成したカセットケース22を備え、このカセットケース22の内部に、印刷用テープ34を巻回したテープコア23、未使用のインクリボン35を巻回したリボン供給コア24、印刷に使用された使用済部分のインクリボン35を巻き取るリボン巻取コア25がそれぞれ収納されている。
【0036】
テープコア23は、カセットケース22の下ケース22bに一体に形成された起立軸23aに回転可能に嵌合され、リボン供給コア24は下ケース22bに一体に形成された起立軸24aに回転可能に嵌合され、またリボン巻取コア25は上ケース22aと下ケース22bとの間に回転可能に支持されている。
【0037】
カセットケース22には、その外壁の一部を凹状に成形してなる凹陥部26が設けられ、この凹陥部26内にカセットケース22の内部から印刷用テープ34およびインクリボン35が繰出されて露出する。そして印刷装置1のカセット収納部6内にカセット装置21を収納したときに前記凹陥部26内に印刷装置1の後述する印刷機構が配置される。
【0038】
前記凹陥部26の一側部には、印刷用テープ34およびインクリボン35をカセットケース22の外部に繰出すための繰出口28が形成され、カセットケース22内の印刷用テープ34およびインクリボン35がこの繰出口28から互いに重なり合いながら凹陥部26内に繰出される。
【0039】
また、凹陥部26の他側部には、前記インクリボン35をカセットケース22内に還流させるためのリボン戻し口32が形成されている。そしてこのリボン戻し口32に連なるカセットケース22の側壁の外面が、前記印刷用テープ34を走行させてカセットケースの22の外方に排出させるガイド面30となっている。また、繰出口28の内側には印刷用テープ34の移動経路上に臨むように案内ローラ29が設けられている。
【0040】
図1および図2に示すように、印刷装置1のカセット収納部6には、カセット装置21の印刷用テープ34を搬送するテープ搬送機構としてのプラテンローラ8と、印刷用テープ34にインクリボン35を介して熱転写印刷を行なう印刷機構としてのサーマルヘッド9と、カセット装置21の装着に応じて前記リボン巻取コア25に嵌合するインクリボン巻取軸10、および前記起立軸23aに嵌合する支持軸11とが設けられている。
【0041】
そしてプラテンローラ8の側方には印刷用テープ34を排出するためのスリット状のテープ排出口17が設けられ、この排出口17の近傍に印刷用テープ34の先端側の印字済部分を切断するテープ切断機構としてのカッター18が設けられている。
【0042】
テープ搬送機構としてのプラテンローラ8は、印刷時に図示しない駆動機構によって回転駆動されて印刷用テープ34を搬送する。印刷機構としてのサーマルヘッド9には、印刷用テープ34の幅方向に対応して並ぶ複数個の発熱素子が1列に設けられ、印字データに基づいてその複数個の発熱素子が選択的に発熱駆動されて印刷用テープ34に対する印刷が行なわれる。
【0043】
このサーマルヘッド9は、図示しないヘッド移動機構により枢支軸13を中心に開閉蓋5の開閉に連動して回動するものであり、印刷時等の開閉蓋5が閉じられているときにはプラテンローラ8に対して圧接し、カセット装置21の交換時等に開閉蓋5が開かれるとプラテンローラ8から離間する。
【0044】
インクリボン巻取軸10は、カセット収納部6内へのカセット装置21の装着に応じてそのカセット装置21のリボン巻取コア25に嵌合し、印刷に使用された使用済部分のインクリボン35を巻き取る。
【0045】
図4には、テープコア23に巻回された印刷用テープ34の断面構造を、図5には、リボン供給コア24に巻回されたインクリボン35の断面構造をそれぞれ示してある。印刷用テープ34は、長尺な被印刷テープ40と、この被印刷テープ40の表面の全体に均一に設けられた示温材層41と、被印刷テープ40の裏面に粘着剤層42を介して剥離可能に貼り付けられた剥離テープ43とで構成され、前記示温材層41に温度の変化に応じて、所定の色から他の所定の色に変色し、逆に他の所定の色から所定の色に可逆的に変色したり、あるいは無色から所定の色に発色し、逆に所定の色が消色して無色となる特性を有する示温材が含まれている。
【0046】
また、インクリボン35は、長尺なリボン基材45と、このリボン基材45の表面の全体に一様に設けられた転写用インク層46とで構成され、その転写用インク層46に温度の変化に応じて変色または発色・消色する示温材が含まれている。
【0047】
印刷用テープ34における示温材とインクリボン35における示温材は、その温度特性が異なっている。すなわち、印刷用テープ34における示温材が変色または発色するときの温度と、インクリボン35における示温材が変色または発色するときの温度とが異なっている。
【0048】
このような構成において、カセット装置21が印刷装置1のカセット収納部6内に装着されると、サーマルヘッド9がカセット装置21の凹陥部26内に相対的に配置されるとともにインクリボン巻取軸10がリボン巻取コア25に嵌入する。
【0049】
カセット装置21の凹陥部26には、カセットケース22から繰出された印刷用テープ34とインクリボン35とが、その示温材層41と転写用インク層46とが互いに向かい合うように重なり合って露出しており、この重なり部分の印刷用テープ34とインクリボン35がサーマルヘッド9とプラテンローラ8との間に挟まれる。
【0050】
印刷装置1に対して印刷開始を指示すると、印刷用テープ34およびインクリボン35の送りの制御が行なわれながら、サーマルヘッド9による印刷が開始される。前記サーマルヘッド9は、キー入力部3から入力された情報に基づいて発熱して印刷用テープ34の示温材層41の表面にインクリボン35の転写用インク層46のインクを熱転写して所定の文字列からなるパターンを印刷する。
【0051】
熱転写に使用された使用済のインクリボン35は、リボン巻取軸10が回転駆動されることで、凹陥部26の下流側のリボン戻し口32を通してリボン巻取コア25に巻き取られてカセットケース22内に回収される。
【0052】
一方、印刷が完了した印刷用テープ34は、プラテンローラ8によって搬送されてカセット装置21の凹陥部26の下流側のガイド面30の上を通過し、印刷装置1のテープ排出口17から外部に排出される。テープ排出口17の近傍には、カッター18が設けられているから、このカッター18により印刷用テープ34の先端側の印刷済の所定の長さ部分が切断され、その切断された部分が示温ラベル34aとなる。
【0053】
このように作成される示温ラベル34aの例を図6に示してある。図6の(A)〜(C)は示温ラベル34aを上から見た平面図で、図6の(D)は示温ラベル34aの断面図である。この示温ラベル34aでは、印刷用テープ34の示温材層41の上にインクリボン35の転写用インク層46のインクが熱転写されて『冷え過ぎ』の文字列のパターンPが印刷されている。
【0054】
印刷用テープ34の示温材層41は、8℃を上回る温度の範囲では無色透明で、8℃以下の温度となったときに青色に変化する特性をもち、この示温材層41の上に印刷された『冷え過ぎ』のパターンPは、5℃を上回る温度の範囲では無色透明で、5℃以下の温度となったときに赤色に変化する特性をもっている。
【0055】
そしてこの示温ラベル34aを使用する際には、被印刷テープ40の裏面から剥離テープ43を剥し取り、粘着剤層42を介して例えば缶ビールの外面に貼り付け、その缶ビールを冷蔵庫内に入れて冷やす。
【0056】
ビールの飲みごろは、5〜8℃が最適とされている。冷蔵庫内の缶ビールが8℃を上回る温度のときには、示温ラベル34aの表面の示温材層41および『冷え過ぎ』のパターンPは共に無色透明で、示温ラベル34aの表面の全体には被印刷テープ40の地の色である白色が表われている(図6−A)。
【0057】
そして缶ビールが冷やされ、8℃の温度にまで低下すると、示温材層41が青色に発色する。このとき、『冷え過ぎ』のパターンPは無色透明であり、したがって示温ラベル34aの表面の全体は青色に見え、これによりビール缶が適温に冷やされていることが分る(図6−B)。
【0058】
ビール缶が更に冷やされ、5℃以下の冷え過ぎの温度にまで達したときには、示温材層41は青色を保ったまま、この示温材層41の上のインクによる『冷え過ぎ』のパターンPが赤色に発色し、その青色の下地の上に赤色の『冷え過ぎ』の文字列が浮き出るように表現される(図6−C)。これにより、缶ビールの冷え過ぎを判断することができる。
【0059】
このように、缶ビールの冷え具合についての状況を示温ラベル34aの表面の色の変化と温度の変化に応じて出現する文字情報とによって的確に知ることができる。
【0060】
図7には本発明の第2の実施形態に係るインクリボン35を示してあり、このインクリボン35はその表面に複数種類の例えば2種類の第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bとを備える構成となっている。
【0061】
第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bには、それぞれ温度の特性が異なる示温材が含まれている。第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bは、インクリボン35の送り方向(長手方向)に沿って区分された領域に交互に順次繰り返して並ぶように配置されている。そしてこのインクリボン35には各第1の転写用インク層46aに対応する第1の頭出し用のマーク48aと各第2の転写用インク層46bに対応する第2の頭出し用のマーク48bが設けられている。
【0062】
このインクリボン35は、図3に示すカセットケース22内に第1の実施形態の場合と同様の構造で収納されて保持され、カセット装置21として構成される。そしてこのカセット装置21を図2に示す印刷装置1のカセット収納部6内に収納して装着し、印刷装置1に対して印刷開始を指示する。
【0063】
この指示に応じて、まず、印刷用テープ34がプラテンローラ8の駆動により送り方向に搬送されると共に、前記インクリボン35がリボン巻取軸10による駆動で送り方向に搬送され、そのインクリボン35の第1の転写用インク層46aがサーマルヘッド9に対応する印刷位置に配置される。この配置の制御は、インクリボン35の第1のマーク48aが印刷装置1に設けられた不図示のセンサにより検知され、その検知信号に基づいて制御される。
【0064】
また、この場合の印刷装置1は図2に示す支持軸11が、前記カセット装置21の印刷用テープ34を巻き戻す方向に駆動する駆動軸11となっている。
【0065】
この状態でサーマルヘッド9がインクリボン35に接触して印刷が開始され、印刷用テープ34およびインクリボン35が順次送り方向に送られながらその印刷用テープ34の所定の領域にインクリボン35の第1の転写用インク層46aのインクが熱転写され、その領域の所定の位置に所定の文字列の第1のパターンが印刷される。
【0066】
この後、サーマルヘッド9が枢支軸13を中心に回動して一旦印刷用テープ34から離れるとともに、前記駆動軸11の駆動により印刷用テープ34が送り方向の逆方向に戻され、前記所定の領域が再び印刷位置に配置される。
【0067】
次に、サーマルヘッド9がインクリボン35に接触して再び印刷が開始され、印刷用テープ34が送り方向に送られながらその印刷用テープ34の所定の領域にインクリボン35の第2の転写用インク層46bのインクが熱転写され、その領域の前記とは異なる所定の位置に所定の文字列の第2のパターンが印刷される。
【0068】
このように、所定の領域に第1のパターンと第2のパターンとが印刷された印刷用テープ34は、プラテンローラ8によって搬送されてカセット装置21の凹陥部26の下流側のガイド面30の上を通過し、印刷装置1のテープ排出口17から外部に排出され、その先端側の印刷済の所定の領域の部分が切断され、示温ラベル34bとなる。
【0069】
このように作成される示温ラベル34bの例を図8に示してある。図8の(A)〜(D)は示温ラベル34bを上から見た平面図で、図8の(E)は示温ラベル34bの断面図である。
【0070】
この例では印刷用テープ34の示温材層41の上に、インクリボン35の第1の転写用インク層46aのインクの熱転写による『適温』の文字列が第1のパターンP1として印刷されている。
【0071】
さらに、この印刷用テープ34の上には、インクリボン35の第2の転写用インク層46bのインクの熱転写によるべた塗りのマスクと『冷え過ぎ』の文字列とが第2のパターンP2として印刷されている。マスクのパターンP2は、印刷用テープ34の示温材層41の上の前記『適温』のパターンP1の文字列を覆う位置に印刷され、『冷え過ぎ』の文字列のパターンP2はそのマスクのパターンP2と並ぶ横の位置に印刷されている。
【0072】
印刷用テープ34の示温材層41は、8℃を上回る温度の範囲では無色透明で、8℃以下の温度となったときに青色に発色する特性をもち、示温材を含む『適温』の文字列の第1のパターンP1は5℃を上回る温度の範囲では無色透明で、5℃以下の温度となったときに黄色に発色する特性をもち、示温材を含むマスクおよび『冷え過ぎ』の文字列の第2のパターンP2は3℃を上回る温度の範囲では無色透明で、3℃以下の温度となったときに赤色に発色する特性をもっている。
【0073】
そしてこの示温ラベル34bを使用する際には、被印刷テープ40の裏面から剥離テープ43を剥し取り、粘着剤層42を介して例えば缶ビールの外面に貼り付け、その缶ビールを冷蔵庫内に入れて冷やす。
【0074】
冷蔵庫内の缶ビールが8℃を上回る温度のときには、示温ラベル34bの示温材層41、『適温』の文字列からなる第1のパターンP1、マスクおよび『冷え過ぎ』の文字列からなる第2のパターンP2は共に無色透明であり、したがって示温ラベル34bの表面の全体には被印刷テープ40の地の色である白色が表われている(図8−A)。
【0075】
そして缶ビールが冷やされ、8℃にまで温度が低下すると、示温材層41が青色に発色する。このとき、『適温』の第1のパターンP1、マスクおよび『冷え過ぎ』の第2のパターンP2は共に無色透明であり、したがって示温ラベル34bの表面の全体は青色に見え(図8−B)、これによりビール缶が適温に冷やされている途中であることが分る。
【0076】
ビール缶がさらに冷やされ、5℃の温度にまで達したときには、示温材層41は青色を保ったまま、この示温材層41の上の第1のパターンP1の『適温』の文字列が黄色に発色する。このとき、第2のパターンP2のマスクおよび『冷え過ぎ』の文字列は無色透明であり、したがって示温ラベル34bの表面の全体には、示温材層41による青色の下地の上に黄色の『適温』の文字列が浮き出るように表現される(図8−C)。
【0077】
示温ラベル34bの全体が青色のときには、缶ビールが8℃以下5℃未満であり、したがってこの表示のときに缶ビールを冷蔵庫から取り出し、直ちに飲めば旨さの最もよい飲みごろの温度で飲むことができる。
【0078】
示温ラベル34bに黄色の『適温』が表示されたときには、缶ビールが5℃以下にまで冷やされた場合であるが、缶ビールは冷蔵庫から取り出して直ちに飲むことは少なく、数分程度放置してから飲み始めることが多い。この場合、冷蔵庫から取り出したときに缶ビールが5℃以下であっても、その放置により温度が上昇して5℃を少し上回る飲みごろの温度となり、したがって示温ラベル34bに『適温』のパターンP1が表示されているときに、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと適温で飲むことができる。
【0079】
『適温』の表示以後も缶ビールを取り出さない場合には、缶ビールが更に冷やされ、3℃以下となったときに、第2のパターンP2のマスクおよび『冷え過ぎ』の文字列が無色透明から赤色に変色する。そして、赤色に変色したマスクのパターンP2により前記『適温』の文字列が視覚的に遮蔽されて見えなくなるとともに、赤色に変色した『冷え過ぎ』のパターンP2が青色の示温材層41の上に浮き出るように表現される。したがって、この表現により缶ビールが飲みごろの温度より低い3℃以下にまで冷えていることが分る。
【0080】
このように、この示温ラベル34bの場合には、缶ビールの冷え具合についての状況を色の変化と、温度によって段階的に出現する文字情報とで、よりきめ細かく把握することができる。
【0081】
図9には第3の例の示温ラベル34cを示してあり、この例の示温ラベル34cでは印刷用テープ34の示温材層41の上に、図5に示すインクリボン35の転写用インク層46のインクで印刷された1個のマークA(白抜き枠A)と1個のマークB(べた塗り枠B)とのパターンPが設けられている。白抜き枠Aは輪郭の四角形の枠部分のみに転写用インク層46で印刷され、枠内には示温ラベル34cの表面が露出している。また、マークAの隣に並べて印刷されたべた塗り枠Bはべた塗りの四角形に転写用インク層46で印刷され、この印刷部分によってその下の示温ラベル34cの表面は隠されている。
【0082】
示温ラベル34aの示温材層41は、8℃を上回る温度の範囲では白色で、8℃以下の温度となったときに青色に変化する特性をもち、示温材を含む転写用インク層46のインクで印刷された白抜き枠Aおよびべた塗り枠BのパターンPは、5℃を上回る温度の範囲では緑色で、5℃以下の温度となったときに赤色に変化する特性をもっている。
【0083】
示温ラベル34aの示温材層41の上には、前記白抜き枠Aおよびべた塗り枠BのパターンPの下方に位置して、その両枠A,Bの色の組み合わせによる温度についての説明用の参照情報がインクリボン35の転写用インク層46のインクにより印刷されている。すなわち、この参照情報は、『白』と『緑』の組み合わせは『常温』、『青』と『緑』の組み合わせは『適冷』、『青』と『赤』の組み合わせは『過冷』という説明用の表示となっている。
【0084】
そして、この示温ラベル34aの場合には、冷蔵用の商品に貼り付け、その商品を冷蔵庫に収納してその温度の管理に用いる。商品が8℃を上回る常温の温度範囲にある場合には、白抜き枠Aの内側には示温材層41の常温での色である白色が表われ、べた塗り枠Bは緑色の状態にある。つまり、白抜き枠Aとべた塗り枠Bの色の組み合わせが『白−緑』であり、参照情報の表示から『常温』であることが分る。
【0085】
そして商品が冷やされ、8℃の温度にまで低下すると、示温材層41が白色から青色に変化し、白抜き枠Aの内側の色も青色となる。べた塗り枠Bの色は緑色のままで、変化しない。つまり、白抜き枠Aとべた塗り枠Bの色の組み合わせが『青−緑』に変化し、参照情報の表示から商品が『適冷』の状態に冷却されていることが分る。
【0086】
さらに商品が冷やされ、5℃以下の温度にまで低下すると、示温材層41は青色のままを保持し、白抜き枠Aの内側の色も青色のままで、色の変化は起きないが、べた塗り枠Bの色は緑色から赤色に変化する。つまり、白抜き枠Aとべた塗り枠Bの色の組み合わせが『青−赤』に変化し、参照情報の表示から商品が『過冷』の状態にまで冷却されていることが分る。
【0087】
このように、この示温ラベル34cの場合には、商品の冷え具合についての状況を色の組み合わせの変化できめ細かく把握することができる。
【0088】
図10には第4の例の示温ラベル34dを示してあり、この例では印刷用テープ34の示温材層41の上に、パターンPとして、図7に示すインクリボン35の第1の転写用インク層46aのインクで印刷されたマークA(白抜き枠A)およびマークB(第1のべた塗り枠B)が設けられているとともに、インクリボン35の第2の転写用インク層46bのインクで印刷されたマークC(第2のべた塗り枠C)が設けられている。
【0089】
白抜き枠A、第1のべた塗り枠B、第2のべた塗り枠Cは、順次互いの隣り合うように配列されている。
【0090】
示温ラベル34dの示温材層41は、8℃を上回る範囲の温度では白色で、8℃以下の温度となったときに青色に変化する特性をもち、インクリボン35の第1の転写用インク層46aのインクで印刷された白抜き枠Aおよび第1のべた塗り枠Bは5℃を上回る温度の範囲では桃色で、5℃以下の温度となったときに黄色に変化する特性をもち、インクリボン35の第2の転写用インク層46bで印刷された第2のべた塗り枠Cは3℃を上回る温度の範囲では緑色で、3℃以下の温度となったときに赤色に変化する特性をもっている。
【0091】
示温ラベル34dの示温材層41の上には、前記白抜き枠A、第1および第2のべた塗り枠B,Cの下方に位置して、その各枠A,Bの色の組み合わせによる温度についての説明用の参照情報が例えばインクリボン35の第1の転写用インク層46aのインクにより印刷されている。すなわち、この参照情報は、『白』と『桃』と『緑』の組み合わせのときには『常温』を表わし、『青』と『桃』と『緑』の組み合わせのときは『冷却不足』を表わし、『青』と『黄』と『緑』の組み合わせのときは『適冷』を表わし、『青』と『黄』と『赤』の組み合わせのときは『過冷』を表わす説明の表示となっている。
【0092】
そして、この示温ラベル34dは、冷蔵用の商品に貼り付け、その商品を冷蔵庫に収納してその温度の管理に用いる。商品が8℃を上回る常温の温度範囲にある場合には、白抜き枠Aの内側には示温材層41の常温での色である白色が表われ、第1のべた塗り枠Bは桃色、第2のべた塗り枠Cは緑色の状態にある。つまり、白抜き枠Aと第1および第2のべた塗り枠B,Cの色の組み合わせが『白−桃−緑』であり、参照情報から商品が『常温』の範囲にあることが分る。
【0093】
そして商品が冷やされ、8℃の温度にまで低下すると、示温材層41が白色から青色に変化し、白抜き枠Aの内側の色も青色となる。第1および第2のべた塗り枠B,Cの色はそれぞれ桃色、緑色のままで、変化しない。つまり、白抜き枠Aと第1および第2のべた塗り枠B,Cの色の組み合わせが『青−桃−緑』に変化し、参照情報から商品がまだ『冷却不足』の状態であることが分る。
【0094】
更に商品が冷やされ、5℃の温度にまで低下すると、白抜き枠Aの内側の色および第2のべた塗り枠Cの色は変化せずにその色を保持するが、第1のべた塗り枠Bの色が桃色から黄色に変化する。つまり、白抜き枠Aと第1および第2のべた塗り枠B,Cの色の組み合わせが『青−黄−緑』に変化し、参照情報から商品が『適冷』の状態にまで冷却されていることが分る。
【0095】
更に商品が冷やされ、3℃以下の温度にまで低下すると、白抜き枠Aの内側の色および第1のべた塗り枠Bの色は変化せずにその色を保持するが、第2のべた塗り枠Cの色が緑色から赤色に変化する。つまり、白抜き枠Aと第1および第2のべた塗り枠B,Cの色の組み合わせが『青−黄−赤』に変化し、参照情報から商品が『過冷』の状態にまで冷却されていることが分る。
【0096】
このように、この示温ラベル34dの場合には、商品の冷え具合についての状況を色の組み合わせの変化で段階的によりきめ細かく把握することができる。
【0097】
図7に示すインクリボン35では、第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bとがリボン基材45の長手方向(リボン送り方向)に沿って並ぶように区分けされた領域に順に繰り返して配置された構成となっているが、図11に変形例として示すように、第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bとがインクリボン35の送り方向と直交するリボン幅方向に区分けされてリボン送り方向に延びるように配置される構成とすることも可能である。
【0098】
この場合には、第1の転写用インク層46aのインクをサーマルヘッド9で印刷用テープ34に熱転写するときには、そのサーマルヘッド9のインクリボン35のリボン幅方向に沿って配列する発熱素子のうちの第1の転写用インク層46aに対応する部分の発熱素子を制御して熱転写し、第2の転写用インク層46bのインクをサーマルヘッド9で印刷用テープ34に熱転写するときには、そのサーマルヘッド9のインクリボン35のリボン幅方向に沿って配列する発熱素子のうちの第2の転写用インク層46bに対応する部分の発熱素子を制御して熱転写する。
【0099】
前記実施形態では、印刷用テープ34にインクリボン35で所定のパターンを印刷した後に、印刷用テープ34を印刷装置1の排出口17から所定の長さだけ排出し、その先端側を印刷装置1のカッター18で切断して切り離すことで示温ラベル34aを作成するようにしたが、図12および図13に示すように、剥離テープ43の上に粘着剤層42で貼り付けられた被印刷テープ40に、ハーフカットによる切込み線40aを施して所定形状の複数の示温ラベル34aのラベル領域を被印刷テープ40の長手方向に沿って順次並ぶように区画形成するようにしてもよい。なお、図12は印刷用テープ34の平面図、図13は印刷用テープ34の断面図である。
【0100】
この場合には、その各示温ラベル34aの表面に示温材層を設ける。そして示温ラベル34aの表面の示温材層の上にインクリボン35を用いて示温材を含むインクを熱転写により付着させて所定のパターンを印刷し、この印刷後に前記示温ラベル34aをハーフカットによる切込み線40aに沿って剥離テープ43から剥し取り、所定の対象物に貼り付け、前述のような温度管理等に使用する。
【0101】
図14には本発明の第2の実施形態に係るカセット装置21を示してあり、この実施形態におけるカセット装置21は、テープカセット21aと、このテープカセット21aとは別個に構成されたリボンカセット21bとを備えている。
【0102】
テープカセット21aは、カセットケース27aを有し、このカセットケース27a内にテープコア23に巻回された印刷用テープ34が収納され、この印刷用テープ34がカセットケース27aの凹陥部26aに向けて繰出される点では図3に示すカセット装置21と同様の構造となっている。ただ、このテープカセット21aにおいては、カセットケース27aの一側部に前記リボンカセット21bの着脱が可能な切欠部36が形成されている。そしてこの切欠部36には第1の係合用凹部36aおよび第2の係合用凹部36bが形成されている。
【0103】
前記リボンカセット21bは、カセットケース27bを有し、このカセットケース27b内に未使用のインクリボン35を巻回したリボン供給コア24と、そのインクリボン35の印刷に使用された使用済部分を巻き取るリボン巻取コア25とが収納されている。
【0104】
そして、カセットケース27bの側面に、テープカセット21aの前記第1の係合用凹部36aに対応する第1の係合用凸部37aおよび第2の係合用凹部36bに対応する第2の係合用凸部37bが形成されている。
【0105】
リボンカセット21bは、第1の係合用凸部37aおよび第2の係合用凸部37bをテープカセット21aの第1の係合用凹部36a及第2の係合用凹部36bにそれぞれ嵌合して切欠部36に着脱可能に装着することが可能で、その装着によりテープカセット21aとリボンカセット21bとが一体的に結合してカセット装置21が構成される。そしてこのカセット装置21を図2に示す印刷装置1のカセット収納部6内に装着して使用する。
【0106】
リボンカセット21bをテープカセット21aの切欠部36に装着する際には、カセットケース27bから引き出されている部分のインクリボン35をテープカセット21aの凹陥部26aの外側に掛け渡してその部分の印刷用テープ34に重なり合うように対向させる。
【0107】
テープカセット21aの切欠部36の底面には巻取軸挿入孔38が形成されており、リボンカセット21bを切欠部36に装着した際に、そのリボンカセット21bのリボン巻取コア25が前記巻取軸挿入孔38に対向するようになっている。そして、テープカセット21aとリボンカセット21bとが結合してなるカセット装置21が図2に示す印刷装置1のカセット収納部6内に収納されたときに、そのカセット収納部6の底部のインクリボン巻取軸10が前記巻取軸挿入孔38からリボン巻取コア25内に進入して係合し、これによりインクリボン巻取軸10の回転駆動力がリボン巻取コア25に伝わってインクリボン35が巻取られる。
【0108】
テープカセット21aに保持された印刷用テープ34の表面には、温度の変化に応じて変色または発色する示温材を含む示温材層41が設けられ、またリボンカセット21bに保持されたインクリボン35の表面には、温度に応じて変色または発色する示温材を含む転写用インク層46が設けられている。
【0109】
本実施形態では、複数種類のテープカセット21aと複数種類のリボンカセット21bとを備えている。複数種類のテープカセット21aは、その種類ごとでその保持する印刷用テープ34における示温材層41に含まれる示温材の温度特性がそれぞれ異なっている。また、複数種類のリボンカセット21bは、その種類ごとでその保持するインクリボン35における転写用インク層46に含まれる示温材の温度特性がそれぞれ異なっている。
【0110】
使用時には、複数種類のテープカセット21aのうちの1個と、複数種類のリボンカセット21bのうち1個とを選択し、そのテープカセット21aとリボンカセット21bとを組み合わせてカセット装置21を構成し、そのカセット装置21を印刷装置1のカセット収納部6内に装着し、印刷用テープ34の示温材層41の上にインクリボン35の転写用インク層46の示温材を含むインクを熱転写により付着させて所定のパターンを印刷して温度管理用等の示温ラベルを作成する。
【0111】
この場合、その組み合わせるテープカセット21aとリボンカセット21bとの種類を選択することにより、示温特性が種々異なる多様なバリエーションをもつ多数種類の温度管理用等の示温ラベルを作成することができる。
【0112】
なお、前記実施形態では、複数種類のテープカセット21aと複数種類のリボンカセット21bとを備えるようにしたが、1種類のテープカセット21aと複数種類のリボンカセット21bとを備え、かつその1種類のテープカセット21aが示温材を含まない通常のテープからなる印刷用テープ34を保持する構成で、複数種類のリボンカセット21bから1個のリボンカセット21bとを選択し、そのリボンカセット21bを前記テープカセット21aに組み合わせてカセット装置21を構成し、そのカセット装置21を印刷装置1のカセット収納部6内に装着し、前記印刷用テープ34の上にインクリボン35の転写用インク層46の示温材を含むインクを熱転写により付着させて所定のパターンを印刷して温度管理用等の示温ラベルを作成する構成とすることも可能である。
【0113】
この場合にも、1種類のテープカセット21aに組み合わせるリボンカセット21bの種類を選択することにより、示温特性が種々異なる多様なバリエーションをもつ多数種類の温度管理用等の示温ラベルを作成することができる。
【0114】
図15には本発明の第3の実施形態に係るカセット装置21を示してある。このカセット装置21は、サーマルヘッドを搭載したキャリッジに装着して、記録シートをその幅方向に直交する方向に搬送しつつ、キャリッジを記録シートの幅方向に移動させて熱転写印字を行う、ワードプロセッサなどに装備される熱転写によるシリアルプリンタなどに使用される。このカセット装置21は、カセットケース22を有し、このカセットケース22内にリボン供給コア24とリボン巻取コア25が設けられ、リボン供給コア24に未使用のインクリボン35が巻回され、このインクリボン35の一部がカセットケース22の外部の印刷位置に繰出され、印刷に使用された使用済部分がリボン巻取コア25に巻き取られるようになっている。
【0115】
前記インクリボン35は、図16に示すように、その表面に複数種類の例えば2種類の第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bとを備えている。第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bには、それぞれ温度特性が異なる示温材が含まれている。
【0116】
第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bは、インクリボン35の送り方向(長手方向)に沿って区分された領域に交互に順次繰り返して並ぶように配置されている。そしてこのインクリボン35には各第1の転写用インク層46aに対応する第1の頭出し用のマーク48aと各第2の転写用インク層46bに対応する第2の頭出し用のマーク48bが設けられている。
【0117】
このカセット装置21は、サーマルヘッドおよび通常の普通紙からなる記録シートの送り機構を備える印刷装置に装着して使用する。すなわち、印刷装置にカセット装置21および記録シートを装着し、カセット装置21のインクリボン35の送りと記録シートの送りをそれぞれ制御しながら、サーマルヘッドにより記録シートの所定の領域にインクリボン35の第1の転写用インク層46aのインクと第2の転写用インク層46bのインクをそれぞれ熱転写により付着させて所定の第1のパターンと第2のパターンとを印刷する。
【0118】
これにより、記録シートの上にそれぞれ温度特性の異なる示温材を含む第1および第2の2種類のパターンを有する示温ラベルが作成される。
【0119】
図16に示すインクリボン35では、第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bとがリボン長手方向(リボン送り方向)に沿って並ぶように区分けされた領域に順に繰り返して配置された構成となっているが、図17に変形例として示すように、第1の転写用インク層46aと第2の転写用インク層46bとがインクリボン35の送り方向と直交するリボン幅方向に区分けされてリボン送り方向に沿って延びるように配置される構成とすることも可能である。
【0120】
この場合には、第1の転写用インク層46aのインクをサーマルヘッドで記録シートに熱転写するときには、そのサーマルヘッドのインクリボン35のリボン幅方向に沿って配列する発熱素子のうちの第1の転写用インク層46aに対応する部分の発熱素子を制御して熱転写し、第2の転写用インク層46bのインクをサーマルヘッドで記録シートに熱転写するときには、そのサーマルヘッドのインクリボン35のリボン幅方向に沿って配列する発熱素子のうちの第2の転写用インク層46aに対応する部分の発熱素子を制御して熱転写する。
【0121】
なお、前記記録シートとしては、普通紙を用いる場合のほか、普通紙の表面に示温材層を設けたシートを用いることも可能である。この場合には、そのシートの表面の示温材層の上に、インクリボン35の第1の転写用インク層46aのインクと第2の転写用インク層46bのインクをそれぞれ熱転写により付着させて第1のパターンと第2のパターンとを印刷して示温ラベルを作成する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るカセット装置が装着される印刷装置の外観を示す斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るカセット装置とこれが装着される印刷装置の一部の構造を示す斜視図。
【図3】そのカセット装置の内部構造を示す平面図。
【図4】そのカセット装置が備える印刷用テープの断面図。
【図5】そのカセット装置が備えるインクリボンの断面図。
【図6】そのカセット装置を用いて作成する示温ラベルの例を示す説明図。
【図7】そのカセット装置で用いるインクリボンの変形例を示す平面図。
【図8】その変形例のインクリボンを用いて作成する示温ラベルの例を示す説明図。
【図9】その変形例のインクリボンを用いて作成する示温ラベルの他の例を示す説明図。
【図10】その変形例のインクリボンを用いて作成する示温ラベルのさらに異なる他の例を示す説明図。
【図11】インクリボンのさらに異なる変形例を示す平面図。
【図12】印刷用テープの変形例を示す平面図。
【図13】その印刷用テープの断面図。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るカセット装置を示す斜視図。
【図15】本発明の第3の実施形態に係るカセット装置を示す斜視図。
【図16】そのカセット装置が備えるインクリボンの平面図。
【図17】インクリボンの変形例を示す平面図。
【符号の説明】
【0123】
1…印刷装置
6…カセット収納部
8…プラテンローラ
9…サーマルヘッド
10…インクリボン巻取軸
11…支持軸
17…テープ排出口
18…カッター
21…カセット装置
21a…テープカセット
21b…リボンカセット
22…カセットケース
23…テープコア
24…リボン供給コア
25…リボン巻取コア
26…凹陥部
27a…カセットケース
27b…カセットケース
34…印刷用テープ
34a〜34d…示温ラベル
35…インクリボン
36…切欠部
38…巻取軸挿入孔
40…被印刷テープ
40a…切込み線
41…示温材層
42…粘着剤層
43…剥離テープ
45…リボン基材
46…転写用インク層
46a…第1の転写用インク層
46b…第2の転写用インク層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用テープとインクリボンとを保持し、サーマルヘッドを備えた印刷装置に着脱可能に装着され、前記サーマルヘッドに対して前記印刷用テープおよび前記インクリボンが送られて、前記サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンを介して前記印刷用テープに印刷が行なわれるカセット装置であって、
前記印刷用テープは、温度の変化に応じて変色または発色・消色する示温材を含んで構成され、
前記インクリボンは、前記印刷用テープの示温材とは異なる温度により変色または発色・消色する示温材を含んだ転写用インク層を備えて構成されていることを特徴とするカセット装置。
【請求項2】
前記インクリボンは、特性の異なる示温材を含んだ複数種類の転写用インク層を該インクリボン上の異なる位置に備えていることを特徴とする請求項1に記載のカセット装置。
【請求項3】
前記複数種類のそれぞれの転写用インク層は、前記インクリボンのリボン送り方向に沿って区分けされて所定の順に繰り返して配置されていることを特徴とする請求項2に記載のカセット装置。
【請求項4】
前記複数種類のそれぞれの転写用インク層は、前記インクリボンのリボン送り方向と直交するリボン幅方向に区分けされるとともに、リボン送り方向に沿って延びるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載のカセット装置。
【請求項5】
前記示温材の特性の異なる複数種類の印刷用テープをそれぞれ保持する複数種類のテープカセットのうちの1種類のテープカセットと、前記示温材の特性の異なる複数種類のインクリボンをそれぞれ保持する複数種類のリボンカセットのうちの1種類のリボンカセットとを互いに係脱可能に組み合わせた状態で1個のカセット装置を構成し、該カセット装置を
前記印刷装置に装着可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のカセット装置。
【請求項6】
前記印刷用テープは、前記示温材を含む被印刷テープと剥離テープとが剥離可能に重ねられ、前記被印刷テープには、ハーフカットにより形成された印刷対象部分である複数のラベル領域がテープ送り方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のカセット装置。
【請求項7】
インクリボンを保持して、サーマルヘッドを備えた印刷装置に着脱可能に装着され、前記サーマルヘッドに対して前記インクリボンが送られて、前記サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンを介して記録シートに印刷が行なわれるカセット装置であって、
前記インクリボンは、温度の変化に応じて変色または発色・消色する特性の異なる示温材を含んだ複数種類の転写用インク層を該インクリボン上の異なる位置に備えたことを特徴とするカセット装置。
【請求項8】
前記複数種類のそれぞれの転写用インク層は、前記インクリボンのリボン送り方向に沿って区分けされて所定の順に繰り返して配置されていることを特徴とする請求項7に記載のカセット装置。
【請求項9】
前記複数種類のそれぞれの転写用インク層は、前記インクリボンのリボン送り方向と直交するリボン幅方向に区分けされるとともに、リボン送り方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項7に記載のカセット装置。
【請求項10】
前記記録シートは、前記インクリボンとともに前記カセット装置に収納される示温材を含んでいない印刷用テープであり、前記印刷用テープは、前記インクリボンとともに前記サーマルヘッドに対して送られて、前記サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンを介して印刷が行なわれることを特徴とする請求項7に記載のカセット装置。
【請求項11】
前記印刷用テープを保持するテープカセットと、前記複数種類の転写用インク層の前記示温材の特性の組み合わせが異なる複数種類のインクリボンをそれぞれ保持する複数種類のリボンカセットのうちの1種類のリボンカセットとを互いに係脱可能に組み合わせて1個のカセット装置を構成し、該カセット装置を前記印刷装置に装着可能に構成したことを特徴とする請求項10に記載のカセット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−82412(P2006−82412A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269798(P2004−269798)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】