説明

カチオン性ビニルモノマー

【課題】 他のモノマーとの共重合性が良好で、乳化重合用のビニル重合性乳化剤として使用した場合に残存しにくく、得られるエマルジョンの乾燥皮膜が耐水性に優れているビニル重合性乳化剤として有用なカチオン性ビニルモノマーを提供することにある。
【解決手段】 一般式(1)で表されるカチオン性ビニルモノマーである。
【化6】


式中、R1、R2およびR3は炭素数1〜24のアルキル基;R4は炭素数1〜24の炭化水素基;Aは炭素数2〜4のアルキレン基;Qは炭素数2〜4のアルキレン基、−CH2CH(OH)CH2−または−CH(CH2OH)CH2−;Y-はアニオン基;nは0〜200の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカチオン性ビニルモノマーに関する。詳しくは(ポリ)オキシアルキレン鎖を有するカチオン性ビニルモノマー、該モノマーからなるビニル重合性乳化剤および該モノマーを必須構成モノマーとしてなるビニル重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン鎖[以下において、オキシアルキレンとポリオキシアルキレンを総称して(ポリ)オキシアルキレンと略記する]を有するカチオン性ビニルモノマーとしては、重合性基としてアリル基を有し、ポリ(オキシアルキレン)鎖とカチオン基を有する非ノニルフェニル系の化合物などが提案されている(特許文献1および2参照)。そして、これらのカチオン性ビニルモノマーは、ビニル重合性乳化剤として使用することができる。
【特許文献−1】特開2002−275115号公報
【特許文献−2】特開2002−3013353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のアリル基を重合性基とするビニル重合性モノマーは、他のモノマーとの共重合性に問題があり、乳化重合後でも系内に残存する量が多く、得られる樹脂被膜の耐水性に悪影響を及ぼすことがあった。
本発明の課題は、他のモノマーとの共重合性が良好で、乳化重合用のビニル重合性乳化剤として使用した場合に残存しにくく、得られるエマルジョンの乾燥皮膜が耐水性に優れているビニル重合性乳化剤として有用なカチオン性ビニルモノマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、一般式(1)で表されるカチオン性ビニルモノマー;該カチオン性ビニルモノマーからなるビニル重合性乳化剤;該ビニル重合性乳化剤を用いてビニルモノマーを乳化重合して得られるビニル重合体エマルジョン;該カチオン性ビニルモノマーを必須構成モノマーとしてなるビニル重合体;である。
【化2】

式中、R1、R2およびR3は炭素数1〜24のアルキル基;R4は炭素数1〜24の炭化水素基;Aは炭素数2〜4のアルキレン基;Qは炭素数2〜4のアルキレン基、−CH2CH(OH)CH2−または−CH(CH2OH)CH2−;Y-はアニオン基;nは0〜200の整数を表す。
【発明の効果】
【0005】
本発明のカチオン性ビニルモノマーは共重合性が良好であり、ビニル重合性乳化剤として使用した場合、得られるエマルジョンの乾燥被膜は耐水性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
一般式(1)において、R1〜R3で示される炭素数1〜24のアルキル基としては、メチル基、エチル基、並びに直鎖もしくは分岐のアルキル基、例えばプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシルおよびエイコシル基などが挙げられる。
4で示される炭素数1〜24の炭化水素基としては、上記のR1〜R3で挙げられたアルキル基、アルケニル基(ビニル、アリル、メタリル、オクテニルおよびドデセニル基など)、アリール基(フェニルおよびナフチル基など)、アラルキル基(ベンジルおよびフェニルエチル基など)およびアルキルアリール基(メチルフェニル、エチルフェニルおよびノニルフェニル基など)が挙げられる。
4のうち好ましいのは炭素数1〜18のアルキル基である。
本発明のカチオン性ビニルモノマーが乳化重合用のビニル重合性乳化剤として使用される場合の乳化性の観点から、好ましいのはR1〜R4のうちのいずれか1個もしくは2個が炭素数8〜24で、その他が炭素数1〜4である場合である。
【0007】
一般式(1)におけるAで表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン、プロピレンおよびブチレン基が挙げられる。これらのうち、製造しやすさの観点等から、エチレンおよびプロピレン基が好ましい。これらのアルキレン基は、1種類でも2種類以上の混合でもよい。2種類以上の混合のとき、n個の(AO)の結合様式はブロック、ランダム及びこれらの組合せのいずれでもよい。また、nは、1〜200、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜20の整数である。
【0008】
Qで表される基は、炭素数2〜4のアルキレン基、−CH2CH(OH)CH2−[2−ヒドロキシプロピレン基]または−CH(CH2OH)CH2−[1−ヒドロキシメチルエチレン基]であり、製造のし易さの観点から、好ましいのは炭素数2〜3のアルキレン基または−CH2CH(OH)CH2−である。
【0009】
-はアニオン基であり、下記のものが挙げられる。
(1)無機酸アニオン、例えばF-、Cl-、Br-およびI-、硫酸アニオン、硝酸アニオンおよびリン酸アニオン
(2)硫酸エステルアニオン、例えば炭素数1〜12の硫酸エステル[例えばメチル硫酸、エチル硫酸およびラウリル硫酸]のアニオン
(3)スルホン酸アニオン、例えば炭素数1〜20のスルホン酸〔例えばメチルスルホン酸、エチルスルホン酸およびスルホコハク酸エステルなど〕のアニオン
(4)リン酸エステルアニオンおよびホスホン酸アニオンなどのリン原子含有アニオン
(5)カルボン酸アニオン、例えばギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸およびアジピン酸などのアニオン
なお、上記(2)〜(5)には、後述のアニオン性モノマー(m3)は含まれない。
【0010】
これらのY-のうち、乾燥被膜の耐水性の観点から好ましいのは無機酸アニオンおよび硫酸エステルアニオンである。
【0011】
一般式(1)で表されるカチオン性性ビニルモノマーとしては、例えば、以下の一般式(2)〜(4)等の種類のものが例示される。
【0012】
【化3】

【0013】
本発明のカチオン性ビニルモノマーは、以下の公知の製造方法を組み合わせて得ることができる。
(1)α−ヒドロキシメチル化反応;
[α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステルの製造]
アクリル酸アルキルエステルとホルムアルデヒドとを三級アミンの存在下に反応させることにより、α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステルを得る(たとえば、特開昭61−134353号公報、米国特許第4654432号明細書、特開平5−70408号公報)。
【0014】
(2)α−ヒドロキシメチル基へ(ポリ)オキシアルキレン基の導入;
α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステルのヒドロキシル基に、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド等)を開環付加反応させる(公知のアルカリまたは酸触媒が使用できる)。
【0015】
(3)(ポリ)オキシアルキレン鎖の末端水酸基のカチオン化反応
(3−1)一般式(1)におけるQが炭素数2〜4のアルキレン基の場合:
塩化チオニル、臭化チオニルまたはホスゲン等のハロゲン化剤により水酸基をハロゲン化し、その後、3級アミン化合物を反応させることにより導入することができる。また、3級アミン化合物の代わりに2級アミン化合物を反応させた後に、ハロゲン化アルキルまたは硫酸ジメチル等を反応させてもよい。
水酸基をハロゲン化する場合の反応条件は、特に限定されないが、通常、温度は室温〜100℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応温度は1〜10時間程度である。また、アミノ化する場合の反応条件も、特に限定されないが、通常、温度は室温〜150℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応温度は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを触媒として使用してもよい。
(3−2)一般式(1)におけるQが−CH2CH(OH)CH2−または−CH(CH2OH)CH2−の場合;
エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等のエピハロヒドリンを反応させ、その後、3級アミン化合物を反応させることにより導入することができる。また、3級アミン化合物の代わりに2級アミン化合物を反応させた後に、ハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル等を反応させてもよい。エピハロヒドリンを反応させる場合の反応条件は、特に限定されないが、通常、温度は室温〜100℃、圧力は常圧〜0.3MPa程度の加圧下、反応温度は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒、又は硫酸、リン酸、塩化鉄、フッ化ホウ素、塩化スズ等の酸触媒を使用してもよい。また、アミノ化する場合の反応条件も、特に限定されないが、通常、温度は室温〜150℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応温度は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを触媒として使用してもよい
【0016】
本発明のカチオン性ビニルモノマー は、必要により、各工程の反応生成物を精留、抽
出及び再結晶等の精製方法により精製してもよい。
【0017】
本発明のビニル重合性乳化剤(A)は、上記のカチオン性ビニルモノマーからなる乳化剤であり、ビニルモノマーの乳化重合において、乳化性と共重合性を発揮するものである。
ビニル重合性乳化剤(A)のうち、乳化性の観点から、好ましいのは一般式(1)におけるR1〜R4のうちのいずれか1個もしくは2個が炭素数8〜24で、その他が炭素数1〜4である場合である。
【0018】
本発明のビニル重合体エマルジョンは、上記のビニル重合性乳化剤(A)を用いてビニルモノマーを乳化重合して得られるビニル重合体エマルジョンである。
【0019】
ビニル重合性乳化剤(A)を用いて乳化重合できるビニルモノマー(m)としては以下の非イオン性モノマー(m1)、カチオン性モノマー(m2)およびアニオン性モノマー(m3)が挙げられる。
【0020】
(m1)非イオン性モノマー;
(m11)水酸基含有ビニルモノマー;
(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[アルキレン基としては、炭素数2〜20、好ましくは2〜6のアルキレン基、アルキレングリコール単位数は1〜50、好ましくは1〜20、具体例としては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数9〜18)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数3)モノ(メタ)アクリレートなど]、ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、炭素数3〜12のアルケノール[アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、1−オクテノール、1−ウンデセノールなど]、炭素数4〜12のアルケンジオール[2−ブテン−1,4−ジオールなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル[2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、p−ヒドロキシスチレンおよびトリエタノールアミンジ(メタ)アクリレートなど]が挙げられる。
その他、本発明のアニオン性ビニルモノマーにおいてアニオン基を導入する前の化合物が挙げられる。
(m12)非置換アミド基含有ビニルモノマー;
(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
(m13)N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;
N−モノアルキル(炭素数1〜30、好ましくは4〜30、さらに好ましくは8〜30の直鎖もしくは分岐)置換(メタ)アクリルアミド[例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルへキシル(メタ)アクリルアミド、N−デシル(メタ)アクリルアミド、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド、N−オクタデシル(メタ)アクリルアミド、N−2−デシルテトラデシル(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリルアミドなど]、N,N−ジアルキル(炭素数1〜30、好ましくは4〜30、さらに好ましくは8〜30の直鎖もしくは分岐)置換(メタ)アクリルアミド[例えばN,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジドデシル(メタ)アクリルアミドなど]およびエチレンジ(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0021】
(m14)(メタ)アクリル酸エステル;
(m141)(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
アルキル基としては炭素数1〜32(好ましくは1〜24)の直鎖または分岐のアルキル基が挙げられ、具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルおよび(メタ)アクリル酸テトラコシルなどが挙げられる。
【0022】
(m142)(メタ)アクリル酸アルケニルエステル;
アルケニル基としては、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルケニル基が挙げられ、例えば(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸オクテニル、(メタ)アクリル酸デセニル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オレイルなどが挙げられる。
【0023】
(m143)(ポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテルのモノ(メタ)アクリル酸エステル;
アルキレン基としては前述の基などが挙げられる。またモノアルキルエーテルを構成するアルキル基としては炭素数が1〜20、好ましくは1〜18の直鎖または分岐アルキル基が挙げられ、前述のアルキル基が挙げられる。(ポリ)アルキレングリコールにおけるアルキレングリコールの単位の数は好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20である。
具体例としては、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数6)モノメチルエーテルモノメタクリレート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルモノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数3)モノブチルエーテルモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0024】
(m15)(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸のエステル;
(メタ)アクリル酸以外の不飽和モノカルボン酸[クロトン酸など]の炭素数1〜30のアルキル、シクロアルキルもしくはアラルキルエステル、ならびに不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など]の炭素数1〜24のアルキルジエステル[マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチルなど]が挙げられる。
【0025】
(m16)脂肪族ビニル系炭化水素;
炭素数2〜30のアルケン[エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘプテン、4-メチルペンテン−1,1−ヘキセン、ジイソブチレン、1
−オクテン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびその他のα−オレフィンなど]、炭素数4〜18のアルカジエン[好ましくは炭素数4〜5のブタジエン、イソプレン、その他1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエンなど]などが挙げられる。
【0026】
(m17)アルキルアルケニルエーテル;
炭素数1〜30の直鎖または分岐アルキル基を有するアルキルビニルエーテル、アルキル(メタ)アリルエーテル、アルキルプロペニルエーテルおよびアルキルイソプロペニルエーテルなどが挙げられ、好ましくは炭素数1〜24のアルキル基である。具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アルキル(メタ)アリルエーテルとしては、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、n−ブチルアリルエーテルなどが挙げられる。これらのうちで好ましいものは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルアリルエーテルおよびエチルアリルエーテルである。
【0027】
(m18)脂肪酸ビニルエステル;
脂肪酸としては総炭素数1〜30、好ましくは1〜24、さらに好ましくは1〜18の直鎖状または分岐状の脂肪酸が挙げられ、飽和または不飽和のいずれであってもよい。具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルおよびn−オクタン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニルなどが挙げられる。
【0028】
(m19)ビニルケトン類;
炭素数1〜8のアルキルもしくはアリールのビニルケトン[メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなど]が挙げられる。
【0029】
(m110)脂環基(炭素数5〜24)含有ビニルモノマー;
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン、ピネン、リモネン、インデン、シクロアルキルカルボン酸ビニルエステル[シクロヘキサン酸ビニル、シクロオクタン酸ビニル、デカヒドロナフチル酸ビニルなど]、シクロアルキルカルボン酸プロペニルエステル[ビシクロペンチル酸プロペニルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルおよび(メタ)アクリル酸デカヒドロナフチルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエチルなど]、シクロヘキシル(メタ)アクリル酸メチル、シクロヘプチル(メタ)アクリル酸エチルなどが挙げられる。
【0030】
(m111)芳香族ビニル系炭化水素;
スチレン、置換スチレン(置換基の炭素数1〜18)[アルキル置換スチレン(好ましくはα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレンなど)、シクロアルキル置換スチレン(シクロヘキシルスチレンなど)、アリール置換スチレン(フェニルスチレンなど)、アラルキル置換スチレン(ベンジルスチレンなど)、アシル基置換スチレン(アセトキシスチレンなど)、フェノキシ基置換スチレン(フェノキシスチレンなど)など]、ジビニル置換芳香族炭化水素[好ましくはジビニルベンゼン、その他ジビニルトルエンおよびジビニルキシレンなど]、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0031】
(m112)上記以外の非イオン性モノマー;
ニトリル基含有モノマー[(メタ)アクリロニトリルおよびシアノスチレンなど]、ニトロ基含有モノマー[4−ニトロスチレンなど]およびハロゲン含有ビニルモノマー[塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル、ハロゲン化スチレン(モノおよびジクロルスチレン、テトラフルオロスチレンおよび塩化アリルなど)]が挙げられる。
【0032】
(m2)カチオン性モノマー;
(m21)1級もしくは2級アミノ基含有モノマー:
アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド[アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミドなど]およびこれらのモノアルキル(炭素数1〜6)置換体[モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレートなど]およびモノ(メタ)アリルアミンなどが挙げられる。
(m22)3級アミノ基含有モノマー:
ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなど]、並びにモルホリノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(m23)第4級アンモニウム塩基含有モノマー:
上記の(m21)の第4級アンモニウム塩化物、例えば塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよび塩化ジメチルジアリルなどが挙げられる。
【0033】
アニオン性モノマー(m3)
(m31)カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびそれらの塩;
カルボキシル基を1個含有するビニルモノマー、例えば、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなど]など;カルボキシル基を2個以上含有するビニル単量体、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびアコニット酸などが挙げられる。
塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)塩、アンモニウム塩、アミン(アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアミン等:たとえば、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、モノブチルアミン)塩、第4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数が1〜4のテトラアルキルアンモニウム塩:たとえば、テトラメチルアンモニウム塩、トリメチルエチルアンモニウム塩)等が含まれる。
【0034】
(m32)スルホン酸基含有ビニルモノマーおよびそれらの塩;
炭素数2〜6のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸など]、炭素数6〜12の芳香族ビニル基含有スルホン酸[α−メチルスチレンスルホン酸など]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル系単量体[スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸など]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマー[2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など]、スルホン酸基と水酸基を含有するビニルモノマー[3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸など]、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸エステル[ドデシルアリルスルホコハク酸エステルなど]などが挙げられる。塩としては上記と同様の塩が挙げられる。
(m33)硫酸基含有ビニルモノマーおよびそれらの塩;
(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの硫酸化物などが挙げられる。塩としては上記と同様の塩が挙げられる。、
(m34)リン酸エステル基含有ビニルモノマーおよびそれらの塩;
例えば、リン酸モノアルケニルエステル(炭素数2〜12)[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル、リン酸ドデセニルなど]、(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数1〜12)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェートなど]、ポリ(n=2〜20)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートエステルのリン酸エステルなどが挙げられる。塩としては上記と同様の塩が挙げられる。
【0035】
本発明のビニル重合体エマルジョンにおける重合体の構成モノマー重量比率(%)の好ましい範囲は、(m1)/(m2)が50/50〜100/0であり、さらに好ましくは60/40〜95/5である。また、[(m1)+(m2)]/(m3)が、好ましくは95/5〜100/0、さらに好ましくは98/2〜100/0である。
【0036】
本発明のビニル重合性乳化剤(A)と、他のビニルモノマー(m)の仕込み比率(モル%)(A)/(m)は、好ましくは0.1/99.9〜15/85、好ましくは0.2/99.8〜10/90である。
(A)が0.1モル%以上であれは乳化重合時に乳化状態が不安定になりにくく、凝集物が少ない。また、15モル%以下であればエマルジョンから生成するフィルムの耐水性が比較的良好である。
(A)の使用時期は、(1)乳化重合反応の際の乳化剤として添加する方法、あるいは(2)生成したエマルジョンに後から添加する方法のいづれでもよい。
(1)の方法は、従来から行われている乳化重合の方法で行えばよい。すなわち、本発明の(A)単独、または必要により他の公知の乳化重合用乳化剤(M)を併用して、水性媒体中で撹拌下に所定温度で(m)および重合開始剤を一括で、または分割して、あるいは連続的に供給することにより行われる。
(m)はそのままで、あるいは水と他の乳化剤により(m)のエマルジョンの状態で供給される。
【0037】
乳化重合時の系内における(A)+(m)の濃度としては仕込原料の全量に基づいて通常20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。重合開始剤および促進剤としては公知のものを使用すればよく、たとえば重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル等が挙げられ、また促進剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄アンモニウムおよび硫酸銅等などが挙げられる。
【0038】
必要により併用される他の乳化重合用乳化剤(M)としては、ノニオン性乳化重合用乳化剤、アニオン性乳化重合用乳化剤、カチオン性乳化重合用乳化剤、両性乳化重合用乳化剤、および(A)以外のビニル重合性乳化剤が挙げられる。
ノニオン性乳化重合用乳化剤としては、脂肪族系アルコール(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=20)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(重合度=30)等]、多価(2価〜10価またはそれ以上)アルコール脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノラウリン酸ソルビタン等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8,重合度=1〜100)多価(2価〜10価またはそれ以上)アルコール高級脂肪酸(炭素数8〜24)エステル[モノラウリン酸ポリオキシエチレン(重合度=10)ソルビタン、ポリオキシエチレン(重合度=50)ジオレイン酸メチルグルコシド等]、脂肪酸アルカノールアミド[1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等]、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数1〜22)フェニルエーテル、(ポリ)オキシアルキレン(炭素数2〜8、重合度=1〜100)アルキル(炭素数8〜24)アミノエーテルおよびアルキル(炭素数8〜24)ジアルキル(炭素数1〜6)アミンオキシド[ラウリルジメチルアミンオキシド等]等が挙げられる。
【0039】
アニオン性乳化重合用乳化剤としては、炭素数8〜24の炭化水素系エーテルカルボン酸またはその塩、[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24の炭化水素系硫酸エステル塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム、]、炭素数8〜24の炭化水素系スルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]及び炭素数8〜24の炭化水素系リン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられる。
【0040】
カチオン性乳化重合用乳化剤としては、アルキル(炭素数1〜4)硫酸高級脂肪酸アミノアルキル(炭素数2〜4)トリアルキル(炭素数1〜4)アンモニウム塩[(エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等)]、アミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
【0041】
両性乳化重合用乳化剤としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
(A)以外のビニル重合性乳化剤としては、例えば、特公昭49−46291号公報に記載のスルホコハク酸エステル型界面活性剤;特開昭62−100502号公報、特開昭63−23725号公報、特開平4−50202号公報、及び特開平4−50204号公報等に記載のアリル基又はプロペニル基を有する炭化水素置換フェノールのアルコキシレート;特開昭62−104802号公報等に記載の炭化水素基又はアシル基を有するグリセリン誘導体のアルコキシレート;特開昭62−11534号公報に記載のホルムアルデヒドで架橋した(置換)フェノールの誘導体;特開昭63−319035号公報、特開平4−50204号公報等に記載のα−オレフィンオキシド由来のアルキル基を含むもの等が挙げられる。
【0042】
(M)を併用する場合の、(A)+(M)と(m)の込み重量%の比[(A)+(M)]/(m)は、好ましくは0.2/99.8〜20/80、好ましくは0.3/97〜15/85である。
【0043】
乳化重合の安定化の目的で、さらに保護コロイド剤、例えば部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを使用することができるが、多量に使用すると本発明の目的に反するので本発明の(A)の重量に基づいて20重量以下が好ましい。重合は必要に応じてその他の添加剤、例えば、PH調整剤、連鎖移動剤、キレート剤などが使用される。重合温度は、重合しようとするモノマーの種類によって異なるが、通常−5〜100℃である。また普通に用いられる水系媒体として水の他にメタノール、イソプロパノール、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の有機溶剤を併用してもよい。また、必要に応じて、乳化重合時または生成したエマルジョンに消泡剤、粘度調整剤、造膜助剤、防腐剤、凍結安定剤、架橋剤、可塑剤、帯電防止剤、顔料、染料などの添加剤を加えてもよい。
【0044】
本発明のカチオン性性ビニルモノマーを必須構成モノマーとしてなるビニル重合体は、上記の乳化重合で得られるエマルジョンの形態以外に、溶融液状、塊状または溶液状で得られるビニル重合体を包含するものである。
これらのビニル重合体の製造方法は、公知の重合方法を適用でき、たとえば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合または逆相懸濁重合のいずれでもよい。これらの重合方法のうち
好ましくは溶液重合および逆相懸濁重合、特に好ましくは溶液重合である。これらの重合には、公知の、重合開始剤、連鎖移動剤又は溶媒等が使用できる。
【0045】
本発明のビニル重合体は、例えば樹脂成型品(繊維、板状品、ブロック状品など)であってもよい。これらの樹脂成形品は、樹脂の重合時に上記のアニオン性ビニルモノマーを
共重合することによって得られ、その成型品は顔料分散性、調色性、染色性、帯電防止性、表面塗装性または防曇性等を改良することができる。
このような樹脂成型品の改質剤として使用される場合の、(A)と(m)の仕込みモル%(A)/(m)は、好ましくは0.1/99.9〜50/50、好ましくは0.2/99.8〜30/70である。
【0046】
[実施例]
以下の実施例により本発明を更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。部および%は特記しない限り重量部および重量%を意味する。
【0047】
<実施例1>
下記式(5)で示されるカチオン性ビニルモノマー(X1)の製造:
【0048】
【化4】

【0049】
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製反応容器に、アクリル酸n−ドデシル240部(1モル部)、37%ホルムアルデヒド水溶液(メタノール含有量7%)122部(1.5モル部)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)7部(63ミリモル部)、メトキシハイドロキノン0.3部及びアセトニトリル200部を仕込み、均一混合した後、80〜82℃で1時間反応させた。この反応液を40℃に冷却し、濃塩酸でpH5.0に調整した後、トルエン300部で抽出し、α−ヒドロキシメチルアクリル酸n−ドデシル(HMAD)の粗生成物のトルエン溶液を得た。
上記トルエン溶液600部に水100部を加えて不純物を3回抽出除去した。ついで、トルエンを留去して精製HMADを得た(純度98.5%)。
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製耐圧反応容器に、HMAD270部(1モル部)、三フッ化硼素(ジエチルエーテル錯体)1.5部およびメトキシハイドロキノン0.3部を混合し、60℃に調整した後、60℃でエチレンオキシド264部(6モル部)を滴下して反応させることにより、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸n−ドデシル(EOAD−6)を得た。
EOAD−6の534部(1モル部)に、塩化チオニル157部(1.2モル部)を加えて80℃で8時間加熱攪拌して、末端の水酸基をハロゲン化した。
さらに、トリメチルアミン65部(1.1モル部)を加えて、60℃で8時間攪拌して本発明のカチオン性ビニルモノマーの粗生成体を得た。
粗生成体をシリカゲルを充填した分離カラムを通してを精製し、本発明のカチオン性ビニルモノマー(X1)を得た(純度95.0%)。
【0050】
<実施例2>
下記式(6)で示されるカチオン性ビニルモノマー(X2)の製造:
【0051】
【化5】

【0052】
実施例1と同様にして精製HMADを得た(純度98.4%)。
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製耐圧反応容器に、HMAD270部(1モル部)、三フッ化硼素(ジエチルエーテル錯体)1.5部およびメトキシハイドロキノン0.3部を混合し、60℃に調整した後、60℃でエチレンオキシド440部(10モル部)を滴下して反応させることにより、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸n−ドデシル(EOAD−10)を得た。
EOAD−10の710部(1モル部)に、粉末状水酸化ナトリウム60部(1.5モル部)、およびエピクロルヒドリン110部(1.2モル部)を加えて、50℃で6時間加熱攪拌した。
さらに、トリエチルアミン138部(1.1モル部)を加えて、60℃で10時間攪拌して本発明のカチオン性ビニルモノマーの粗生成体を得た。
粗生成体をシリカゲルを充填した分離カラムを通してを精製し、本発明のカチオン性ビニルモノマー(X2)を得た(純度94.0%)。
【0053】
上記の実施例1および2で得られたカチオン性ビニルモノマーからなるビニル重合性乳化剤、または市販のビニル重合性乳化剤を用いて以下のようにビニル重合体エマルジョンを製造した。
【0054】
実施例3〜4、比較例1〜2
攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、温度計、および還流冷却器を付けた反応器にイオン交換水360部、ビニル重合性乳化剤を7.2部、重炭酸ナトリウム0.48部、過硫酸アンモニウム1.2部を仕込み、窒素置換後、撹拌下に75℃でメタクリル酸メチル130部、アクリル酸ブチル108部、メタクリル酸2部の混合モノマーを滴下ロートより3時間にわたって滴下し、さらに2時間80℃で熟成して乳化重合を行った。40℃に冷却後、28%のアンモニア水でPHを8〜9に調整した。得られたビニル重合体エマルジョンはモノマー転化率98%以上の乳白色のエマルジョンであった。
【0055】
比較例で使用したビニル重合性乳化剤は以下のものである。
比較品Y1:「アデカリアソープSE−10N」旭電化(株)製のアルキルフェニル基およびアリル基を有するグリセリン誘導体のアルキレンオキシド付加物の硫酸化物
比較品Y2:「アクアロンHS−10」第一工業製薬(株)製のプロペニル置換アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物の硫酸化物
【0056】
実施例3〜4および比較例1〜2で得られたエマルジョンの乳化重合安定性、即ち、乳化重合中に出来た凝塊物の量、および生成したエマルジョンの起泡性、機械的安定性、さらにエマルジョンから作成した皮膜の耐水性を以下のようにして評価した。
結果を表1に示す。
(凝塊物)
生成したエマルジョンを150メッシュの金網で濾過し、残渣を水で洗浄後130℃で1.5時間乾燥して得た凝固物重量を、仕込みモノマー重量に対する%で表した。
(エマルジョンの起泡性)
100mlの共栓付メスシリンダーに、生成したエマルジョンをイオン交換水で4倍に希釈した希釈液30部を入れて、30回強く振套した直後の泡の体積を測定し、mlで表した。
(エマルジョンの機械的安定性)
生成したエマルジョン50gをマロン法安定度試験器にて10kg/cm2、1,00
0rpmで5分間回転し、生成した凝固物を150メッシュの金網で濾別し、水で洗浄後130℃で1。5時間乾燥した。この乾燥重量を採取エマルジョン中の固形分重量に対する%で表した。
(フィルムの耐水性)
試料をガラス板上で70℃にて8時間乾燥して作成した被膜(厚さ0.2mm)の耐水白化性をJIS K-6828に準じて測定した。240時間後被膜の状態を以下の基準で判定した。浸せき後の塗膜が透明なほど耐水性が良好であることを示す。
◎:完全透明、○:わずかに白化、△:○〜×の中間、×:大部分白化
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果より、本発明のビニル重合性乳化剤は乳化重合用乳化剤として比較例と比べると、重合安定性が良く、エマルジョンの起泡性が少なく、さらに機械的安定性が良好で、フィルムの耐水性も優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のカチオン性ビニルモノマーは、各種ビニルポリマーの構成モノマーとして使用できる。また、乳化重合用のビニル重合性乳化剤として利用できる。
そして、得られたビニルポリマーは、塗料バインダー、粘着剤、接着剤、分散剤、セメント組成物用添加剤(減水剤)、スケール防止剤、増粘剤及び凝集剤等に応用できる。
さらに、本発明のカチオン性ビニルモノマーは、放射線硬化型組成物の構成成分とする
ことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるカチオン性ビニルモノマー。
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は炭素数1〜24のアルキル基;R4は炭素数1〜24の炭化水素基;Aは炭素数2〜4のアルキレン基;Qは炭素数2〜4のアルキレン基、−CH2CH(OH)CH2−または−CH(CH2OH)CH2−;Y-はアニオン基;nは0〜200の整数を表す。)
【請求項2】
一般式(1)におけるR1、R2およびR3が炭素数1〜4の炭化水素基、R4が炭素数8〜24の炭化水素基、Aがエチレン基、Qがエチレン基およびnが1〜20の整数である請求項1記載のカチオン性ビニルモノマー。
【請求項3】
請求項1または2記載のカチオン性ビニルモノマーからなるビニル重合性乳化剤(A)。
【請求項4】
請求項3記載のビニル重合性乳化剤(A)を用いてビニルモノマーを乳化重合して得られるビニル重合体エマルジョン。
【請求項5】
請求項1または2記載のカチオン性ビニルモノマーを必須構成モノマーとしてなるビニル重合体。

【公開番号】特開2008−184573(P2008−184573A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21112(P2007−21112)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】