説明

カチオン性樹脂組成物、その製造方法、水性塗料組成物、およびカチオン電着塗料組成物

【課題】耐熱性に優れたコーティング膜を形成することができる水性の塗料を提供する。
【解決手段】ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の基体樹脂に、ウレア結合またはウレタン結合を介してカチオン性水和官能基が結合してなるカチオン性樹脂と、中和化合物とを含有している、カチオン性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性樹脂組成物、およびその製造方法、ならびに当該カチオン性樹脂組成物を含む水性塗料組成物、およびカチオン電着塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等は、耐熱性、絶縁性、耐薬品性等が極めて高い、高機能樹脂素材として知られている。これらの樹脂によるコーティング膜の形成は、これまで有機溶剤系で行われてきたが、近年の環境配慮の観点から、水系へ転換する方向にある。例えば、特許文献1および2には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を併用することにより、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等を水性の塗料に用いることを可能にする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−34352号公報(平成12年2月2日公開)
【特許文献2】特開2003−268235号公報(平成15年9月25日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の耐熱性の低い親水性ポリマーを併用することなしに、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等を水性の塗料に用いることを可能とする技術はこれまで報告されていない。特許文献1または2に記載の塗料のように、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が併用されている場合、形成されるコーティング膜の耐熱性が、ポリイミド樹脂等が本来有する耐熱性よりも劣ってしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れたコーティング膜を形成することができる水性の塗料を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るカチオン性樹脂組成物は、上記課題を解決するために、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の基体樹脂に、ウレア結合またはウレタン結合を介してカチオン性水和官能基が結合してなるカチオン性樹脂と、中和化合物とを含有していることを特徴としている。
【0006】
上記カチオン性樹脂組成物では、上記カチオン性水和官能基が、一級アミノ基、二級アミノ基、および三級アミノ基からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、下記一般式(1)〜(3)に示される官能基より選択される少なくとも一種であることがさらに好ましい。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
(式中、Rは炭素数1以上8以下の直鎖、分岐、または脂環族炭化水素鎖を表す。R、R、およびRは、水素、水酸基、または炭素数1以上8以下の直鎖、分岐、もしくは脂環族炭化水素鎖であり、同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。また、上記炭化水素鎖は、エーテル結合を含んでいてもよい。)
上記カチオン性樹脂組成物では、上記カチオン性水和官能基の含有量が、10ミリモル/(組成物中の樹脂固形分100質量部)以上、1000ミリモル/(組成物中の樹脂固形分100質量部)以下であることが好ましい。
【0011】
上記カチオン性樹脂組成物では、上記カチオン性樹脂が、ブロックイソシアネート基をさらに有していることが好ましい。
【0012】
本発明のカチオン性樹脂組成物はまた、カチオン性水和官能基を有する樹脂及び中和化合物を含有してなるカチオン性樹脂組成物であって、カチオン性水和官能基を有する樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であって、ブロックイソシアネート基を有する基体樹脂に、カチオン性水和官能基含有化合物を反応させて得られるものであって、カチオン性水和官能基は、ウレア結合又はウレタン結合を介して基体樹脂に結合していてもよい。ここで、カチオン性水和官能基は、一級アミノ基、二級アミノ基及び三級アミノ基からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。また、カチオン性水和官能基含有化合物は、基体樹脂と反応するための反応性官能基として、水酸基、若しくは、一級又は二級のアミノ基を有していてもよい。カチオン性水和官能基の含有量は、10〜1000ミリモル/(組成物中の樹脂固形分100質量部)であってよい。
【0013】
本発明に係るカチオン性樹脂組成物の製造方法は、カチオン性水和官能基を有するカチオン性樹脂および中和化合物を含有するカチオン性樹脂組成物の製造方法であって、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、ブロックイソシアネート基を有する基体樹脂に、カチオン性水和官能基含有化合物を反応させて上記カチオン性樹脂を得る反応工程を包含することを特徴としている。
【0014】
上記カチオン性樹脂組成物の製造方法では、上記カチオン性水和官能基含有化合物が、上記基体樹脂と反応するための反応性官能基として、水酸基、または一級、もしくは二級のアミノ基を有していることが好ましい。
【0015】
上記カチオン性樹脂組成物の製造方法では、上記反応工程における、上記基体樹脂の有する上記ブロックイソシアネート基に対する、上記カチオン性水和官能基含有化合物の有する上記反応性官能基の当量比が、1/9以上1倍以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る水性塗料組成物は、本発明に係るカチオン性樹脂組成物を含んでなることを特徴としている。
【0017】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物は、本発明に係るカチオン性樹脂組成物を含んでなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、耐熱性に優れるコーティング膜が得られる水性の塗料を提供することができる。また、上記塗料を用いて形成したコーティング膜の外観が優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、特に記載がない場合、重量平均分子量は、ポリスチレン換算に基づき、ゲル・パーミェーション・クロマトグラフィを用いて測定した値である。また、本明細書では、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
【0020】
(カチオン性樹脂組成物)
本発明は、カチオン性樹脂組成物を提供する。本発明に係るカチオン性樹脂組成物は、カチオン性樹脂と、中和化合物とを含有している。なお、本明細書において、用語「組成物」は各種成分が一物質中に含有されている形態を指し、「カチオン性樹脂組成物」は、カチオン性樹脂を含有する組成物を指す。一実施形態において、本発明に係るカチオン性樹脂組成物は、上記カチオン性樹脂をメインバインダーとして含有するものである。
【0021】
用語「カチオン性樹脂」は、カチオン性水和官能基を有する樹脂を指す。本発明に係るカチオン性樹脂は、基体樹脂に、カチオン性水和官能基がウレア結合またはウレタン結合を介して結合してなるものである。用語「基体樹脂」とは、カチオン性水和官能基を結合させるべき樹脂を指し、本発明に係る基体樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂である。すなわち、本発明に係るカチオン性樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂の骨格(基体樹脂骨格)に、カチオン性水和官能基がウレア結合またはウレタン結合を介して結合した構造を有する樹脂である。
【0022】
本発明に係るカチオン性水和官能基は、カチオン性を有し、水和に寄与する官能基であれば特に限定されないが、例えば、一級アミノ基、二級アミノ基、および三級アミノ基からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。なお、上記一級アミノ基は、ケチミン化されていてもよい。
【0023】
さらに、上記カチオン性水和官能基は、下記一般式(1)〜(3)に示される官能基より選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、なかでも一般式(1)に示される官能基であることがさらに好ましい。また、一般式(2)および(3)に示される官能基は、一般式(1)に示される官能基と、類似する構造を有し、同様の特性を有する。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
(式中、Rは炭素数1以上8以下の直鎖、分岐又は脂環族炭化水素鎖を表す。R、R及びRは、水素、炭素数1以上8以下の直鎖、分岐若しくは脂環族炭化水素鎖、又は水酸基であり、同一であっても異なっていてもよい。なお、上記炭化水素鎖は、エーテル結合を含んでいてよい。)
なお、R、R、RまたはRの炭素数が9以上であると、塗装後に加熱した場合に揮発が困難になり、硬化性が低下するおそれがある。
【0028】
本発明のカチオン性樹脂組成物における上記カチオン性水和官能基の含有量は、下限10ミリモル/(樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部)、上限1000ミリモル/(樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部)であることが好ましい。上記含有量が10ミリモル/(樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部)以上であれば充分な効果を得ることができるため好ましい。また、上記含有量が1000ミリモル/(樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部)以下であれば、水和官能基濃度が高くなることに起因して得られるコーティング膜の耐水性が低下することを避けることができるため好ましい。上記下限は、30ミリモル/(樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部)であることがより好ましく、上記上限は、300ミリモル/(樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部)であることがより好ましい。
【0029】
なお、上記カチオン性樹脂は、ブロックイソシアネート基をさらに有していてもよい。この場合、塗装後の加熱時において、残ったブロックイソシアネート基を硬化のための官能基として機能させることができる。
【0030】
本発明に係る中和化合物は、上記カチオン性水和官能基を中和して、本発明に係るカチオン性樹脂組成物を水性化し得るものであればよく、例えば、酢酸、クエン酸等のカルボン酸、硫酸、スルファミン酸等のスルホン酸等を用いることができる。上記中和化合物の含有量は、本発明に係るカチオン性樹脂組成物を水性化し得れば特に限定されず、例えば、上記カチオン性水和官能基に対して、1〜100当量%とすることができる。
【0031】
本発明に係るカチオン性樹脂組成物は、水性媒体中に分散状態、または水溶化状態で存在していてもよい。上記水性媒体は、水を主体とする媒体であり、例えば、水そのもの、または水とその他の溶媒との混合媒体等を用いることができる。上記その他の溶媒としては、特に限定されないが、例えば、当業者において周知慣用の炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エーテル類、ケトン類、エステル類及びそれらの混合物等を挙げることができる。
【0032】
本発明に係るカチオン性樹脂組成物の重量平均分子量は、下限500、上限10000であることが好ましい。上記重量平均分子量が500以上であれば、耐熱性、絶縁性、耐薬品性等の諸物性の低下を避けることができるため好ましい。上記重量平均分子量が10000以下であれば、高粘度化に起因して得られるコーティング膜の造膜性が低下することを避けることができるため好ましい。なお、上記重量平均分子量は基体樹脂の種類に応じて、より好ましい分子量を設定することができる。
【0033】
さらに、本発明のカチオン性樹脂組成物は、樹脂固形分が下限5質量%、上限70質量%であることが好ましい。上記樹脂固形分が5%以上であれば、樹脂組成物の固形分が希薄になりすぎることがなく、コーティング膜の形成を効率的に行うことができる。また、上記樹脂固形分が70質量%以下であれば、樹脂組成物が高粘度化するおそれがなく好ましい。上記下限は10質量%であることがより好ましく、上記上限は60質量%であることがより好ましい。
【0034】
(カチオン性樹脂組成物の製造方法)
本発明はまた、カチオン性樹脂組成物の製造方法を提供する。本発明に係るカチオン性組成物の製造方法によれば、本発明に係るカチオン性樹脂組成物を製造することができる。本発明に係るカチオン性樹脂組成物の製造方法は、カチオン性水和官能基を有するカチオン性樹脂と、中和化合物とからカチオン性樹脂組成物を製造する。
【0035】
一実施形態において、本発明に係るカチオン性樹脂組成物の製造方法は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、ブロックイソシアネート基を有する基体樹脂に、カチオン性水和官能基含有化合物を反応させて上記カチオン性樹脂を得る反応工程を包含する。
【0036】
本実施形態では、ブロックイソシアネート基を有する基体樹脂が用いられる。なお、基体樹脂の樹脂の種類は、上述のように、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である。上記ブロックイソシアネート基を有する基体樹脂の製造については、当業者において周知慣用の方法を用いることができ、例えば、以下(A)〜(C)のような方法を用いることができる。
【0037】
(A)上記基体樹脂がポリイミド樹脂である場合
まず、ジアミン化合物と、過剰当量のテトラカルボン酸二無水物とから、ジイミドテトラカルボン酸二無水物を合成する。そして、合成したジイミドテトラカルボン酸二無水物が有する酸無水基に対し、多官能ブロックイソシアネート化合物を反応させることによって、ブロックイソシアネート基を有するポリイミド樹脂を得ることができる。
【0038】
上記ジアミン化合物としては、例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等の芳香族ジアミン化合物、およびアミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製 BY16-851、BY16-853U等)等のシロキサン系ジアミン化合物等を用いることができる。
【0039】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0040】
上記多官能ブロックイソシアネート化合物としては、比較的低温で解離するブロック剤を、ポリイソシアネート化合物に付加させたものを用いることができる。上記比較的低温で解離するブロック剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、またはメチルエチルケトオキシム等のオキシム類等を用いることができる。上記ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,6’−トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、各イソシアネートの三量体などの多量体、ポリメリックMDI(日本ポリウレタン社製 コロネートMR−200等)等の2官能を超えるイソシアネート等を用いることができる。
【0041】
(B)上記基体樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合
まず、ジアミン化合物と、過剰当量のトリカルボン酸無水物とから、ジイミドジカルボン酸を合成する。そして、合成したジイミドジカルボン酸が有するカルボキシル基に対し、多官能ブロックイソシアネート化合物を反応させることによって、ブロックイソシアネート基を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができる。
【0042】
上記トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物等を用いることができる。上記ジアミン化合物および上記多官能ブロックイソシアネート化合物としては、上記(A)に記載のものを用いることができる。
【0043】
(C)上記基体樹脂がポリアミド樹脂である場合
ジカルボン酸化合物と、過剰当量の多官能ブロックイソシアネート化合物とを反応させることによって、ブロックイソシアネート基を有するポリアミド樹脂を得ることができる。
【0044】
上記ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸化合物等を用いることができる。上記多官能ブロックイソシアネート化合物としては、上記(A)に記載のものを用いることができる。
【0045】
上記基体樹脂の重量平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。上記範囲外であると耐熱性、絶縁性、耐薬品性、造膜性が低下する恐れがある。
【0046】
本実施形態に係る製造方法における上記反応工程では、上記のようにして得られた基体樹脂に対し、カチオン性水和官能基含有化合物を反応させることにより、カチオン性水和官能基を有するカチオン性樹脂を得ることができる。
【0047】
上記カチオン性水和官能基含有化合物は、カチオン性水和官能基として、上述したような官能基を有するとともに、上記基体樹脂と反応するための反応性官能基として、水酸基、または一級、もしくは二級のアミノ基を有していることが好ましい。
【0048】
このようなカチオン性水和官能基含有化合物として、多官能アミン、水酸基含有アミン、ケチミン化アミン、水酸基含有ケチミンを挙げることができる。これらは、二種以上を併用してもよい。
【0049】
上記多官能アミンは、一分子中に2つ以上のアミノ基を有する化合物であり、具体的には、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルプロピレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン等を挙げることができる。
【0050】
水酸基含有アミンとしては、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン類を挙げることができる。
【0051】
ケチミン化アミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、先の多官能アミンとアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類とを反応させることにより得られるケチミン化アミン等を挙げることができる。
【0052】
水酸基含有ケチミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノエチルイソプロパノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン等のアミノアルキルアルカノールアミン類と、上記ケトン類とを反応させることにより得られる水酸基含有ケチミン等を挙げることができる。
【0053】
上記反応工程では、上記基体樹脂のブロックイソシアネート基と、カチオン性水和官能基含有化合物の、反応性官能基としてのアミノ基又は水酸基とが反応するので、カチオン性水和官能基は、ウレア結合および/またはウレタン結合を介して該基体樹脂に結合していることとなる。
【0054】
製造するカチオン性樹脂組成物における上記カチオン性水和官能基の含有量は、上述したように、下限10ミリモル/(樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部)、上限1000ミリモル/(樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部)であることが好ましい。上記カチオン性水和官能基の含有量にすることを前提とした上で、上記基体樹脂の有するブロックイソシアネート基と、上記カチオン性水和官能基含有化合物の有する、上記基体樹脂と反応するための反応性官能基との比率は、例えば、50:50〜90:10とすることができる(すなわち、上記基体樹脂の有する上記ブロックイソシアネート基に対する、上記カチオン性水和官能基含有化合物の有する上記反応性官能基の当量比が、1/9以上1倍以下となる)。この比率および反応条件を制御することで、上記基体樹脂の有するブロックイソシアネート基を反応させずに残しておくことができる。この場合、塗装後の加熱時において、残ったブロックイソシアネート基を硬化のための官能基として機能させることができる。
【0055】
上記交換反応させる際において、反応温度は、50〜200℃で行うことが好ましい。50℃未満であると、反応速度が小さくなるおそれがあり、200℃を超えると、経済的でない。また反応時間は特に限定されず、反応温度に応じて適宜設定することができる。
【0056】
このようにしてカチオン性水和官能基を導入した後、中和化合物と水性媒体を加えて、上記カチオン性水和官能基を中和して水性化することによって、本発明のカチオン性樹脂組成物が得られる。上記水性化は、分散状態であっても水溶化状態であっても構わない。上記中和化合物および上記水性媒体としては、上述したようなものを用いることができる。
【0057】
このようにして、本発明に係るカチオン性樹脂組成物が得られる。上記基体樹脂の製造および該基体樹脂とカチオン性水和官能基含有化合物との間の反応は、必ずしも定量的に進むものではなく、一般的に製造および反応終了後に精製工程は実施しない。このため、本発明のカチオン性樹脂組成物は、種々の構造のものが混合した状態である組成物であり得る。
【0058】
本発明に係るカチオン性樹脂組成物は、必要に応じて、製造および反応のために使用した有機溶剤を、減圧除去、限外ろ過等の方法で除去してもよい。なお、上記カチオン性水和官能基として、ケチミン化アミン又は水酸基含有ケチミンが含有される場合、ケチミンユニットから一級アミノ基を発生させるために、さらに、加水分解反応を行う過程を含んでもよい。上記加水分解反応としては特に限定されず、例えば、任意の酸で酸性に調整する方法等により行うことができる。
【0059】
(水性塗料組成物)
本発明は、水性塗料組成物を提供する。本明細書において、用語「水性塗料組成物」とは、塗料として用いるための水性の組成物を指す。本発明に係る水性塗料組成物は、上記カチオン性樹脂組成物を含む。本発明に係る水性塗料組成物における上記カチオン性樹脂組成物の含有量は、例えば、塗料固形分換算で10質量%以上60質量%以下とすることができる。
【0060】
上記水性塗料組成物は、必要に応じて硬化剤を含むことができる。上記硬化剤としては、例えば、当業者によく知られたメラミン系硬化剤、ブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物、ビスマレイミド化合物等を挙げることができる。
【0061】
さらに、本発明の水性塗料組成物は、必要に応じて、塗料組成物に用いられる、当業者において周知慣用のその他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては特に限定されず、例えば、顔料、造膜剤、防錆剤、顔料分散樹脂、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0062】
上記顔料としては特に限定されず、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、フタロシアニンブルー、銅フタロシアニン等の無機又は有機着色顔料、塩基性ケイ酸鉛、リンモリブデン酸アルミニウム等の防錆顔料、カオリン、クレー、タルク、シリカ等の体質顔料等を挙げることができる。上記防錆剤としては、具体的には、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、カルシウム担持シリカ、カルシウム担持ゼオライト等を挙げることができる。上記水性塗料組成物が上記顔料および/または防錆剤を含む場合、上記顔料および/または防錆剤の含有量は、上記顔料と防錆剤の合計量として、上記水性塗料組成物固形分として、上限65質量%であることが好ましい。65質量%以下であれば、得られるコーティング膜の平滑性が良好である。
【0063】
上記顔料分散樹脂は、上記顔料を水性塗料組成物中に安定して存在させるために用いられる。上記顔料分散樹脂としては、特に限定されず、一般に使用されている顔料分散樹脂を使用することができる。
【0064】
上記水性塗料組成物の塗布方法としては、ドクターブレード塗装、スプレー塗装、ロール塗装、ディップ塗装、カチオン電着塗装等の当業者によく知られた塗布方法を挙げることができる。
【0065】
(カチオン電着塗料組成物)
本発明はまた、カチオン電着塗料組成物を提供する。本明細書において、用語「カチオン電着塗料組成物」とは、カチオン電着塗装を行うためのカチオン電着塗料として用いるための組成物を指す。カチオン電着塗装は、立体形状を有する物体に対する有効なコーティング方法であり、被塗装物が金属である場合にも、電着塗装の際の陽極分解による金属イオンの溶出が引き起こす様々な問題を避けることができる点においてアニオン電着塗装よりも優れている。また、カチオン電着塗装によれば、膜厚が均一なコーティング膜を形成することができる。
【0066】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物は、本発明に係るカチオン性樹脂組成物を含んでおり、カチオン電着塗装に好適に用いることができる。上記カチオン電着塗料の塗料固形分としては、例えば、5〜30質量%とすることができる。
【0067】
上記水性塗料組成物をカチオン電着塗料として使用し、カチオン電着塗装をする場合、被塗装物は導電性のあるものであり、例えば、銅、鉄、鋼、アルミニウム及びこれらを表面処理した、板状及び成型物等を挙げることができる。
【0068】
カチオン電着塗装としては、例えば、被塗装物を陰極として陽極との間に、通常、1V以上500V以下の電圧を印加して行うことができる。印加電圧が1V以上であれば十分な電着が可能であり、500V以下であれば、消費電力を抑制し得、経済的である。本発明の水性塗料組成物をカチオン電着塗料として使用し、上述の範囲内で電圧を印加すると、電着過程における急激な被膜の析出を生じることなく、被塗装物全体に均一なコーティング膜を形成することができる。
【0069】
本発明の水性塗料組成物をカチオン電着塗装する場合の塗料液の温度は、通常、10〜60℃である。
【0070】
上記電着塗装は、(i)塗料組成物に被塗装物を浸漬する過程、及び(ii)上記被塗装物を陰極とし、陽極との間に電圧を印加して、上記被塗装物上に被膜を析出させる過程、を含む工程である。上記電圧を印加する時間は、電着塗装条件および必要とする膜厚によって異なるが、一般には、1秒〜10分とすることができる。上記過程(ii)の後、加熱することによって被膜を硬化させコーティング膜を形成する。
【0071】
上記コーティング膜の膜厚は、下限0.1μm、上限200μmの範囲内となることが好ましい。上記範囲内であれば、得られるコーティング膜が不均一になったり、膜表面の平滑性が低下したりするおそれがない。
【0072】
このようにして得られるコーティング膜が形成された被塗装物は、目的に応じて更に中塗り塗装及び/又は上塗り塗装を行ってもよい。
【実施例】
【0073】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を表し、「%」とあるのは、特に断りのない限り「質量%」を表す。
【0074】
(実施例1)
酸成分としてトリメリット酸無水物768.5質量部、ジアミン化合物としてビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン865.0質量部をN−メチル−2−ピロリドン669.2質量部に溶解して、室温で1時間反応させたのち、キシレンを加え、キシレン還流下150℃から200℃で3時間反応させ、N−メチル−2−ピロリドンで固形分濃度を調整して固形分70%のジイミドジカルボン酸化合物溶液(化合物A−1)を合成した。
【0075】
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート750.8質量部をN−メチル−2−ピロリドン280.2質量部に溶解して、攪拌しながら、メタノール192.0質量部を徐々に加え、全て加えた後、100℃で2時間さらに反応させてイソシアネート基を完全にブロック化した。その後、化合物A−1を2230.9質量部加え、150℃から200℃に保ち、3時間保持して、末端ブロックイソシアネート型アミドイミド樹脂溶液(化合物C−1)を合成した。
【0076】
次に、化合物C−1を160℃に冷却し、N,N−ジメチルエチレンジアミンを217.4質量部加え100℃で3時間保持し、末端の一部が、アミノ基がウレア結合を介して結合しているアミドイミド樹脂を合成した。その後、酢酸60.0質量部、純水1187.6質量部を加え、固形分50%の水分散型エマルションを得た。
【0077】
(実施例2)
実施例1の化合物C−1を160℃に冷却し、N−メチルジエタノールアミンを297.6質量部加え190℃で10時間保持し、末端の一部が、アミノ基がウレタン結合を介して結合しているアミドイミド樹脂を合成した。その後、酢酸120.0質量部、純水1175.9質量部を加え、固形分50%の水分散型エマルションを得た。
【0078】
(実施例3)
酸成分として3,3´,4,4´―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物716.6質量部、ジアミン化合物としてビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを432.5質量部、N−メチル−2−ピロリドン477.0質量部に溶解して、室温で1時間反応させたのち、キシレンを加え、キシレン還流下150℃から200℃で3時間反応させ、N−メチル−2−ピロリドンで固形分を調整して固形分70%のジイミドテトラカルボン酸二無水物溶液(化合物A−2)を合成した。
【0079】
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート750.8質量部をN−メチル−2−ピロリドン280.2質量部に溶解して、攪拌しながら、メタノール192.0質量部を徐々に加え、全て加えた後、100℃で2時間さらに反応させてイソシアネート基を完全にブロック化した。その後、化合物A−2を3180.0質量部加え、150℃から200℃に保ち、3時間保持して、末端ブロックイソシアネート型イミド樹脂溶液(化合物C−2)を合成した。
【0080】
次に、化合物C―2を160℃に冷却し、N,N−ジメチルエチレンジアミンを235.1質量部加え160℃で3時間保持し、末端の一部が、アミノ基がウレア結合を介して結合しているイミド樹脂を合成した。その後、酢酸60.0質量部、純水1551.9質量部を加え、固形分50%の水分散型エマルションを得た。
【0081】
(実施例4)
ヘキサメチレンジイソシアネート1682.0質量部をN−メチル−2−ピロリドン437.7質量部に溶解して、攪拌しながら、メタノール640.0質量部を徐々に加え、全て加えた後、100℃で2時間さらに反応させてイソシアネート基を完全にブロック化した。その後、イソフタル酸を2136.1質量部加え、150℃から200℃に保ち、3時間保持して、末端ブロックイソシアネート型アミド樹脂溶液(化合物C−4)を合成した。
【0082】
次に、化合物C−4を160℃に冷却し、N,N−ジメチルエチレンジアミンを698.7質量部加え100℃で3時間保持し、アミノ基がウレア結合を介して結合されたアミド樹脂を合成した。その後、酢酸60.0質量部、純水1326.9質量部を加え、固形分50%の水分散型エマルションを得た。
【0083】
(実施例5)
酸成分としてトリメリット酸無水物768.5質量部、ジアミン化合物としてBY16−851(東レ・ダウコーニング社製アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン)520.0質量部をN−メチル−2−ピロリドン521.3質量部に溶解して、室温で1時間反応させたのち、キシレンを加え、キシレン還流下150℃から200℃で3時間反応させ、N−メチル−2−ピロリドンで固形分を調整して固形分70%のジイミドジカルボン酸化合物溶液(化合物A−3)を合成した。
【0084】
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート750.8質量部をN−メチル−2−ピロリドン280.2質量部に溶解して、攪拌しながら、メタノール192.0質量部を徐々に加え、全て加えた後、100℃で2時間さらに反応させてイソシアネート基を完全にブロック化した。その後、化合物A−3を1737.7質量部加え、150℃から200℃に保ち、3時間保持して、末端ブロックイソシアネート型アミドイミド樹脂溶液(化合物C−5)を合成した。
【0085】
次に、化合物C−5を160℃に冷却し、N,N−ジメチルエチレンジアミンを217.4質量部加え100℃で3時間保持し、末端の一部が、アミノ基がウレア結合を介して結合しているアミドイミド樹脂を合成した。その後、酢酸60.0質量部、純水1000.7質量部を加え、固形分50%の水分散型エマルションを得た。
【0086】
(比較例1)
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート312.2質量部をN−メチル−2−ピロリドン302.5質量部に溶解して、攪拌しながら、メタノール80.0質量部を徐々に加え、イソシアネート基を完全にブロック化した。その後、化合物A−1を2264.6質量部、無水フタル酸211.6質量部加え、150℃から200℃に保ち、3時間保持して、末端カルボン酸型アミドイミド樹脂溶液(化合物C−3)を合成した。
【0087】
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、キシレン230.2質量部を仕込んで、窒素雰囲気下に135℃にまで昇温した。そこへ、ジメチルアミノエチルアクリレート303.2質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル92.1質量部、メタクリル酸グリシジル142.0質量部及びtert−ブチルパーオキシオクトエート(以下、TBPOと略記する。)30質量部とからなる混合物を6時間にわたって滴下し、滴下終了後も同温度に10時間保持して重合反応を行い、固形分70%のアクリル樹脂溶液を合成した。次に化合物C−3を1936.2質量部加えて、酸価が2以下になるまで130℃で約5時間反応させた。その後、酢酸90質量部、純水1051.5質量部を加え、固形分50%の水分散型エマルションを得た。
【0088】
(比較例2)
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート187.7質量部をN−メチル−2−ピロリドン160.4質量部に溶解して、攪拌しながら、メタノール48.0質量部を徐々に加え、イソシアネート基を完全にブロック化した。その後、化合物A−1を2717.6質量部、無水フタル酸105.8質量部加え、150℃から200℃に保ち、3時間保持して、末端カルボン酸型アミドイミド樹脂溶液(化合物C−6)を合成した。
【0089】
DER331J(ダウ社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)564.0質量部に化合物C−6を3103.2質量部加えて、酸価が2以下になるまで130℃で5時間反応させた。その後、ジエタノールアミンを210.2質量部加え、110℃で2時間反応させた。酢酸45.0質量部、純水1717.2質量部を加え、固形分50%の水分散型エマルションを得た。
【0090】
<評価試験>
(ドクターブレード塗装方法)
実施例1〜5、比較例1、2の水分散型エマルションを各々適正な粘度まで純水で希釈し、100μmの塗装クリアランスを有するドクターブレードで銅板に塗装し、105℃で15分間、続いて280℃で30分乾燥させた。得られたコーティング膜の膜厚は16〜28μmであった。
【0091】
(電着塗装方法)
実施例1〜5、比較例1及び2の水分散型エマルションを固形分15質量%まで純水で希釈してステンレス容器に入れ、銅板を浸漬し、容器を陽極、銅板を陰極にして得られるコーティング膜の乾燥膜厚が20μmとなるように10〜200Vの電圧を60秒間印加した。次にこの銅板を純水で水洗した後、105℃で15分間加熱した後、続いて280℃で30分加熱した。
【0092】
(膜外観評価)
ドクターブレード塗装と電着塗装で行った、各々のコーティング膜の塗膜外観を評価した。評価は目視にて行い、以下の基準とした。
◎:平滑性が極めて高い。
○:平滑性が高い。
【0093】
(耐熱性能評価)
ドクターブレード塗装と電着塗装で行った、各々の膜の耐熱性能を評価した。耐熱評価は、TG/DTA320(セイコーインストルメンツ社製示差熱・熱質量分析器)を用いて、大気中における熱質量分析をおこない、質量が10%減少する温度を10%分解温度として評価した。評価結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1の結果の通り、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂又は、ポリアミド樹脂を基体樹脂とし、他の樹脂で変性することなく、直接カチオン性樹脂組成物とした実施例1〜5は、膜外観及び耐熱性が高い良好なコーティング膜が得られた。
【0096】
特に、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂を基体樹脂としたものは極めて高い耐熱性を発揮することができた。さらに、ジアミン成分にシロキサン系ジアミンを使用したものは、耐熱性が高く、かつ、平滑性に優れた良好なコーティング膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、エナメル線、接続端子、モーターマグネット等の充分な耐熱性を必要とする製品の塗装、および複雑な形状を有する製品の塗装において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の基体樹脂に、ウレア結合またはウレタン結合を介してカチオン性水和官能基が結合してなるカチオン性樹脂と、中和化合物とを含有していることを特徴とするカチオン性樹脂組成物。
【請求項2】
上記カチオン性水和官能基が、一級アミノ基、二級アミノ基、および三級アミノ基からなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン性樹脂組成物。
【請求項3】
上記カチオン性水和官能基が、下記一般式(1)〜(3)に示される官能基より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のカチオン性樹脂組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

(式中、Rは炭素数1以上8以下の直鎖、分岐、または脂環族炭化水素鎖を表す。R、R、およびRは、水素、水酸基、または炭素数1以上8以下の直鎖、分岐、もしくは脂環族炭化水素鎖であり、同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。また、上記炭化水素鎖は、エーテル結合を含んでいてもよい。)
【請求項4】
上記カチオン性水和官能基の含有量が、10ミリモル/(組成物中の樹脂固形分100質量部)以上、1000ミリモル/(組成物中の樹脂固形分100質量部)以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のカチオン性樹脂組成物。
【請求項5】
上記カチオン性樹脂が、ブロックイソシアネート基をさらに有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のカチオン性樹脂組成物。
【請求項6】
カチオン性水和官能基を有するカチオン性樹脂および中和化合物を含有するカチオン性樹脂組成物の製造方法であって、
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、ブロックイソシアネート基を有する基体樹脂に、カチオン性水和官能基含有化合物を反応させて上記カチオン性樹脂を得る反応工程を包含することを特徴とするカチオン性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
上記カチオン性水和官能基含有化合物が、上記基体樹脂と反応するための反応性官能基として、水酸基、または一級、もしくは二級のアミノ基を有していることを特徴とする請求項6に記載のカチオン性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
上記反応工程における、上記基体樹脂の有する上記ブロックイソシアネート基に対する、上記カチオン性水和官能基含有化合物の有する上記反応性官能基の当量比が、1/9以上1倍以下であることを特徴とする請求項7に記載のカチオン性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5の何れか一項に記載のカチオン性樹脂組成物を含んでなることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項10】
請求項1〜5の何れか一項に記載のカチオン性樹脂組成物を含んでなることを特徴とするカチオン電着塗料組成物。

【公開番号】特開2009−256489(P2009−256489A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108146(P2008−108146)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】