説明

カチオン電着塗装における電着浴の管理方法および電着塗装システム

【課題】顔料の沈降が極めて少なく、塗装しないときには循環作業を停止することができるカチオン電着塗料組成物を用いた電着浴の管理方法および電着塗装システムの提供。
【解決手段】顔料の沈降が極めて少ないカチオン電着塗料として(a)カチオン性エポキシ樹脂、(b)硬化剤、(c)カーボンブラック、有機顔料などの顔料、および(d)銀触媒による硬化触媒、更に(e)カチオン性アクリル樹脂を含有する電着塗料を用い、電着塗装時には電着浴1の一部をポンプ3で循環攪拌し、電着塗装を行っていないときには循環ポンプ3を停止して、攪拌羽11を用いる攪拌に切り替える電着塗装システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料の沈降が極めて少なく、塗装しないときには攪拌作業を停止することができるカチオン電着塗料組成物を用いた電着浴の管理方法および電着塗装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電着塗料、特にカチオン電着塗料は、つき回り性が良く、防錆性も高いことから、自動車や電気器具などの下塗り塗装として広く実用化されている。カチオン電着塗料組成物は、カチオン性樹脂、着色顔料、体質顔料あるいは防錆顔料および硬化剤、さらには硬化触媒などを水性媒体中に分散することにより得られる。
【0003】
カチオン電着塗料は、前述のように顔料等の固体状の成分を含むことから、塗料を静置すると沈降する性質がある。実際の塗装ラインでは、沈降を防止するために、種々の方法で撹拌を行って、沈降を防止している。しかし、最近はこのような沈降防止として必要な撹拌のためのエネルギーや設備なども可能な限り減少させたり、場合によっては省略する傾向にある。
【0004】
カチオン電着塗料の沈降を防止するには、固体状成分を省けばよいが、そのことは逆に塗膜性能の低下を伴う。
【0005】
下記特許文献1には、沈降量が5.0mg/時間以下であるカチオン電着塗料組成物が開示されている。このカチオン電着塗料組成物は、前述のように沈降する成分を省くことにより達成している。しかしそのために、硬化焼付条件が175℃で25分間という高い温度を必要とする。
【0006】
特許文献2には、電着塗料の樹脂固形分100重量部に対して、球状の高純度アモルファスシリカ粉を0.1〜40重量部配合することを特徴とする電着塗料組成物が開示されている。高純度のアモルファスシリカ粉を用いることにより、二酸化チタンや防錆顔料などの沈降を防止することができる。しかしながら、この方法では5時間静置後の沈降度合を沈降性の評価方法としており、沈降防止効果としては充分とは言えない。しかも、焼付条件は170℃で30分という高い温度を必要とする。
【特許文献1】特開平9−328641号公報
【特許文献2】特開平6−340832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、顔料としてカーボンブラックまたは有機顔料を用い、しかもハジキ性や防錆性に優れ、かつ塗膜光沢の不必要な上昇が押さえられるカチオン電着塗料組成物を用いた電着浴の管理方法および電着塗装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、沈降の極めて少ないカチオン電着塗料組成物を用いる電着浴の管理方法および電着塗装システムを提供する。
【0009】
即ち、本発明は電着塗装時には、電着浴の一部を取りだしてポンプで電着浴中に戻すことにより電着浴を循環攪拌し、電着塗装を行っていないときは該循環用ポンプを停止する電着浴管理方法であって、電着浴中の電着塗料が沈降の極めて少ないカチオン電着塗料であることを特徴とする電着浴の管理方法を提供する。
【0010】
更に、本発明は沈降の極めて少ないカチオン電着塗料を用いる電着塗装システムにおいて、電着浴の一部を取り出してポンプで元の浴中に戻す液体流による循環攪拌を、攪拌羽を用いる攪拌に切り替えることによりエネルギーを節約することを特徴とする電着塗装システムを提供する。
【0011】
また、本発明は沈降の極めて少ないカチオン電着塗料を用いる電着浴で被塗物を塗装した後、被塗物を第一水洗浴で水洗し、更に第二水洗浴に送って水洗する電着塗装システムにおいて、第一水洗浴の一部を取り出してポンプで元の浴中に戻す液体流による循環攪拌を、攪拌羽を用いる攪拌に切り替えることを特徴とする電着塗装システムも提供する。
【0012】
さらにまた、本発明は沈降の極めて少ないカチオン電着塗料を用いる電着浴で被塗物を塗装した後、被塗物を第一水洗浴で水洗し、更に第二水洗浴に送って水洗する電着塗装システムにおいて、第二水洗浴の一部を取り出してポンプで元の浴中に戻す液体流による循環攪拌を、攪拌羽を用いる攪拌に切り替えることを特徴とする電着塗装システムを提供する。
【0013】
上記沈降の極めて少ない電着塗料が、(a)カチオン性エポキシ樹脂、(b)硬化剤、(c)顔料および(d)硬化触媒、更に必要に応じて(e)カチオン性アクリル樹脂を含有し、顔料(c)としてカーボンブラック、有機顔料またはそれらの組合せを用い、(d)硬化触媒として錫触媒を用いるものが好ましい。また、この電着塗料中には、亜鉛イオンを200〜600ppmの量で含むものが更に好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カチオン電着塗料を静置しておいても、顔料沈降物が少なく、電着浴の攪拌を停止するか、極力少なくすることができる。また、本発明のカチオン電着塗料組成物は、従来塗料と比べて比較的低温で硬化することができ、しかも塗膜性能が従来のものとほとんど遜色がない。また、本発明のカチオン電着塗料では、顔料沈降物を少なくすることができるので、従来一般に使用されてき循環ポンプによる攪拌を簡易な攪拌手段に変更することができ、エネルギーを大幅に減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
カチオン性エポキシ樹脂(a)
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。このカチオン性エポキシ樹脂は、特開昭54−4978号、同昭56−34186号などに記載されている公知の樹脂でよい。
【0016】
カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
【0017】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3,000〜4,000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
【0018】
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。本発明の1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
【0019】
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよい。
【0020】
硬化剤(b)
本発明で使用する硬化剤は、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られたブロックポリイソシアネートが好ましく、ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
【0021】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0022】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーも硬化剤として使用してよい。
【0023】
ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートであることが好ましく、更に好ましくは脂肪族ポリイソシアネートである。形成される塗膜が耐候性に優れるからである。
【0024】
脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
【0025】
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0026】
ブロック剤としては、低温硬化(160℃以下)を望む場合には、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック剤、及びホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤を使用するのが良い。
【0027】
カチオン性エポキシ樹脂と硬化剤とを含むバインダーは、一般に、電着塗料組成物の全固形分の25〜85質量%、好ましくは60〜85質量%を占める量で電着塗料組成物に含有される。
【0028】
顔料(c)
本発明のカチオン電着塗料組成物には顔料としてカーボンブラック、有機顔料またはその組合せを含有させる。本明細書中で「有機顔料」とは、無機顔料と対比する概念で用いる。有機顔料は無機顔料より沈降傾向が少なく、好適である。有機顔料の例としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロンエロー、キナクリドンレッド、モノアゾレッド、ボリアゾレッド、またはベリレンレッド等が挙げられる。本発明では顔料としてカーボンブラックや有機顔料のみを用い、無機着色顔料および体質顔料を含まないことを特徴とする。好ましくは、カーボンブラックのみを顔料として含む。カーボンブラックは沈降する性質が少なく好適である。
【0029】
顔料は、電着塗料組成物の全固形分の1〜5質量%を占める量で電着塗料組成物に配合される。
【0030】
硬化触媒(d)
本発明では硬化触媒として常温で固体の錫触媒をカチオン電着塗料に加えることを特徴とする。常温で固体の錫触媒は、他の顔料に比べて分散しにくい。従って、予め顔料分散樹脂を用いて分散してペースト状にした後、顔料と顔料分散樹脂を混練したものに添加して分散させる。この方法により、固体の錫触媒が安定に分散した顔料ペーストを調製できる。
【0031】
本発明で使用する常温で固体の錫触媒としては、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、モノブチル錫オキサイドおよびそれらの混合物等が挙げられる。好ましくは、ジブチル錫オキサイドである。
【0032】
上記硬化触媒は、電着塗料中の樹脂固形分に対し0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の量で配合する。
【0033】
カチオン性アクリル樹脂(e)
本発明では体質顔料を配合しないことにともなう油ハジキ性の低下を防止するためにカチオン性アクリル樹脂を配合する。カチオン性アクリル樹脂は、分子内に複数のオキシラン環を含んでいるアクリル共重合体とアミンとの開環付加反応によってつくることができる。このようなアクリル重合体は、(i)グリシジル(メタ)アクリレートと、(ii)ヒドロキシル基含有アクリルモノマー、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、プラクセルFAおよびFMシリーズとして知られる2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応生成物と、(iii)その他のアクリル系および/または非アクリル系モノマーを共重合することによって得られる。その他のアクリル系および非アクリル系モノマーの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルケトン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどである。
【0034】
このオキシ環含有アクリル樹脂は、エポキシ樹脂のオキシラン環をアミンで開環してカチオン性基を導入するのと全く同様に、そのオキシラン環の全部を1級アミン、2級アミンまたは3級アミン酸塩との反応によって開環し、カチオン性アクリル樹脂とすることができる。
【0035】
他の方法として、アミノ基を有するアクリルモノマーを他のモノマーと共重合することによって直接カチオン性アクリル樹脂をつくることができる。この場合は、先にオキシラン環含有アクリル樹脂の製造に用いたグリシジル(メタ)アクリレートの代りにN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有アクリルモノマーを使用し、これをヒドロキシル基含有アクリルモノマーおよび他のアクリル系および/または非アクリル系モノマーと共重合することによってカチオン性アクリル樹脂が直接得られる。
【0036】
カチオン性アクリル樹脂は、重合体の数平均分子量が1,000〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、より好ましくは5,000〜10,000の範囲内になるように常法によって前記モノマーを共重合することによって得られる。
【0037】
カチオン性アクリル樹脂の配合量は、電着塗料中の樹脂固形分100重量部に対し10〜50重量部、好ましくは10〜30重量部である。50重量部より多いとハジキ防止効果に比して、他の性能が悪化する。10重量部より少ないと、ハジキ防止効果が発揮できない。
【0038】
カチオン性アクリル樹脂の溶解性パラメーター(SP値)は、カチオン性エポキシ樹脂よりも少なくとも0.5、好ましくは0.5〜2.0程度低いことが好ましい。
【0039】
一般に、共重合体のSP値は、構成モノマーのホモポリマーのSP値と、モノマー混合物中の各構成モノマーの重量分率に基づいて計算によって推定することができるので、所望のSP値を有するカチオン性アクリル樹脂を設計することが可能である。
【0040】
例えば、SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
【0041】
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlを
ホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより
溶解する。
溶媒 良溶媒:ジオキサン、アセトン
貧溶媒:n−ヘキサン、イオン交換水
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を
滴下量とする。
【0042】
樹脂のSP値δは次式によって与えられる。
【0043】
【数1】

:溶媒の分子容(ml/mol)
φ:濁点における各溶媒の体積分率
δ:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0044】
亜鉛イオン
本発明では、前述のように、体質顔料を配合しないのであるが、その場合と膜の光沢が上がって、重厚感が無くなる。それを防止するために、電着塗料中に亜鉛イオンを200〜600ppm、好ましくは400〜600ppmの量で存在させる。600ppmを越えると、仕上がり塗膜の肌荒れ等の問題が生じてくる。200ppmより少ないと、塗膜の光沢が高くなり、重厚感が無くなる。亜鉛イオンは、有機酸の亜鉛塩を塗料中に配合することにより、供給される。有機酸の亜鉛塩の例としては、亜鉛ジ酢酸塩、亜鉛ジオクチル酸塩、亜鉛ジラウリル酸塩、亜鉛ジ安息香酸塩などが挙げられる。
【0045】
顔料分散ペースト
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を顔料分散樹脂と呼ばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。本発明では、固体の錫触媒を予め顔料分散樹脂を用いて分散しておきペースト状にした後、顔料と顔料分散樹脂の混合物に添加してさらに分散させて、塗料中に錫触媒を均一に分散安定化させる。
【0046】
顔料分散樹脂ワニスとしては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂ワニスは固形分中で20〜40質量部、顔料および錫触媒は60〜80質量部の比率で用いる。
【0047】
電着塗料組成物
本発明の電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂および硬化剤を水性媒体中に分散させたもの(メインエマルション)、カチオン性アクリル樹脂および硬化剤を水性媒体中に分散させたもの(サブエマルション)、顔料分散ペースト、脱イオン水を所定の割合で混合することによって調製される。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂の分散性を向上させるために中和剤を含有させる。中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
【0048】
硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級又は/及び3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂の硬化剤に対する重量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
【0049】
電着塗料は、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
【0050】
本発明の電着塗料組成物は当業者に周知の方法で被塗物に電着塗装され、硬化塗膜を形成する。このカチオン電着塗料組成物を用いて電着塗装を行う場合の被塗物は、予め、浸漬、スプレー方法等によりリン酸亜鉛処理等の表面処理の施された導体であることが好ましいが、この表面処理が施されていないものであっても良い。また、導体とは、電着塗装を行うに当り、陰極になり得るものであれば特に制限はなく、金属基材が好ましい。
【0051】
電着が実施される条件は一般的に他の型の電着塗装に用いられるものと同様である。印加電圧は大きく変化してもよく、1ボルト〜数百ボルトの範囲であってよい。電流密度は通常約10アンペア/m〜160アンペア/mであり、電着中に減少する傾向にある。
【0052】
電着後、被膜を昇温下に通常の方法、例えば焼付炉中、オーブン中あるいは赤外ヒートランプで焼付ける。焼付け温度は変化してもよいが、通常約140℃〜180℃である。
【0053】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、電着浴の攪拌を停止しても顔料成分の沈降が非常に少ないので、非塗装時には電着浴の攪拌を停止しても問題がない。ただし、電着塗装時には塗膜析出中に発生する反応ガスを除去したり、塗膜析出時に発生する反応熱を拡散させる意味から槽内攪拌をすることが好ましい。従来の塗料では、非塗装時にも電着浴の攪拌を実施することが必要であるが、本発明のカチオン電着塗料は夜間、休日等の非塗装時に攪拌を停止することが可能なため、電着浴の攪拌に要する電気エネルギーコストを大幅に減少させることが可能となる。
【0054】
電着浴の攪拌は一般に、図1に示すように、ポンプを利用して、電着浴の一部をとって、電着浴に戻すことにより行っているのが一般的である。図中、電着浴1には、オーバーフロー槽2が付いていて、電着塗料が両槽に存在する。電着浴1の一部およびオーバーフロー槽の一部もポンプ3に送られ、フィルター4を通って電着浴内に戻されるが、その際電着浴1内のライザー5のノズル6より、噴出して攪拌を行なう。しかし、もちろんこの方法に限定されるものではない。
【0055】
例えば、図2に記載するように、攪拌のための羽(攪拌羽11)を電着浴に挿入する方法も考えられる。この場合には、従来、用いていた図1に記載する循環攪拌システムを利用しないことができる。従って、循環攪拌のための装置等が攪拌羽のみでよく、設備費やエネルギーコストが大幅に改善される。攪拌自体は、前述のように、反応ガスの除去や、反応熱の拡散のために必要であるが、電着塗装時に攪拌羽による簡単な攪拌で十分であり、しかも本発明の塗料組成物を用いると、非塗装時に攪拌を停止することができるので、大きくエネルギーコストの削減に寄与する。
【0056】
また、図1に記載されているような循環攪拌は、電着以後に行われる水洗浴の管理においても行われている。その例を図3に模式的に示す。図3中、30は電着浴を示し、31は第1水洗浴を示し、32は第2水洗浴を示す。電着浴30の一部は限外濾過器(UF)33により、塗料分を水分に分離し、塗料分は電着浴30に戻し、水分は水洗浴(31および32)で利用される。通常は、水分は第2水洗浴32で利用した後、その一部を第1水洗浴31に戻し、更に電着浴30に戻される。第1水洗浴31および第2水洗浴32のいずれでも、34および35で示す循環攪拌システムで攪拌されている。この攪拌は、電着塗料が水洗浴にも被塗物に付着して持ち込まれるので、分散状態を保つために必要である。本発明の塗料を用いると、今までの電着塗料と比べて沈降が極めて少ないので、従来の図3のような循環攪拌は特に必要が無くなり、図4に記載するような、攪拌羽36を用いた攪拌で十分になり、設備コストおよびエネルギーコストが大きく削減する。
【実施例】
【0057】
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定するものと解してはならない。これら実施例中において「部」および「%」は特別に記載しない限り重量による。
【0058】
製造例1
カチオン性エポキシ樹脂
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を備え付けた反応容器に、エピコート1001(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量475のビスフェノールA型エポキシ樹脂)99.8部、エピコート1004(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量950のビスフェノールA型エポキシ樹脂)850.2部、ノニルフェノール55部、メチルイソブチルケトン(MIBK)193.3部およびベンジルジメチルアミン4.5gを加え、140℃で4時間反応し、エポキシ当量1175を有する樹脂を得た。ここにエチレングリコールn−ヘキシルエーテル69.1部、2−アミノエチルエタノールアミンのMIBKケチミン化物のMIBK溶液(固形分78重量%)35.4部、N−メチルエタノールアミン26.5部およびジエタノールアミン37.1部を加えた。これを120℃で2時間反応させ、目的とする樹脂を得た。このカチオン性エポキシ樹脂のSPは11.4であった。
【0059】
製造例2
カチオン性アクリル樹脂
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたフラスコに、スチレン50.7部、メチルメタクリレート10.0部、n−ブチルアクリレート20.1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10.2部、グリシジルメタクリレート9.2部、およびt−ブチルパーオクトエート4.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後115℃で約1時間保持し、t−ブチルパーオクトエート0.5部を滴下し、115℃で約30分間保持し、固形分65%の樹脂溶液を得た。数平均分子量(Mn)5000の樹脂溶液を得た。冷却後これへN−メチルエタノールアミン5.1部を加え、窒素雰囲気下120℃で2時間反応させ固形分約66%のカチオン性アクリル樹脂溶液を得た。このカチオン性アクリル樹脂のSPは9.7であった。
【0060】
製造例3
硬化剤
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(コロネートEH)199.1部とメチルイソブチルケトン31.6部を仕込み、窒素雰囲気下40℃に加熱保持した。これへジブチル錫ジラウレート0.2部を加え、さらにメチルエチルケトオキシム87.0部を滴下ロートより2時間かけて滴下し、滴下終了後、IRスペクトルによりイソシアネート基のピークが消失するまで70℃で反応させた。反応終了後、メチルイソブチルケトン38.1部およびブタノール1.6部を加え冷却し、固形分80%のブロックポリイソシアネート架橋剤を得た。
【0061】
製造例4
エポキシ樹脂系顔料分散樹脂A
エピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂)567部、ビスフェノールA230部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下170〜180℃へ加熱した。反応混合物を170〜180℃でエポキシ当量が800に達するまで反応させた。次いで、反応混合物を145℃に冷却後、2−エチルヘキサノールハーフブロック化トルエンジイソシアネート317部を加えた。反応混合物を145℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル1466部を加えた。次に、反応混合物を70℃に冷却し、四級化剤(注、次項で説明)447部を加え、70℃で酸価が0.5以下になるまで反応させ、22.5%の固形分量になるまで脱イオン水で希釈し、顔料分散用ワニスを得た。
【0062】
四級化剤の調製
イソホロンジイソシアネート222部、メチルイソブチルケトン34部を反応容器に入れ、メチルエチルケトオキシム88部を加えて55℃へ加熱した。混合物をイソシアネート当量が348±10に達するまで反応させた。次に、N,N−ジメチルエタノールアミン89部を加え、60℃で約1時間反応させた。IRにてNCO基の消失を確認した後、エチレングリコールモノブチルエーテル20部、50%乳酸187部、脱イオン水27部を加えて四級化剤を得た。
【0063】
製造例5
エポキシ樹脂系顔料分散樹脂B
エピコート828 382部、ビスフェノールA118部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下150〜160℃へ加熱した。反応混合物を150〜160℃でエポキシ当量が500に達するまで反応させた。次いで、反応混合物を140〜145℃に冷却後、2−エチルヘキサノールハーフブロック化トルエンジイソシアネート203部を加えた。反応混合物を140〜145℃に約1時間保ち、次いで、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル209部を加えた。次に、反応混合物を90℃以下に冷却し、1−(2−ヒドロキシエチルチオ)プロパン−2−オール272部、ジメチロールプロピオン酸134部、脱イオン水144部を加えた。この混合物を約8の酸価が得られるまで65〜75℃で反応させて顔料分散用樹脂を得た。これを冷却し、30%の固形分量になるまで脱イオン水で希釈し、顔料分散用ワニスを得た。
【0064】
製造例6
エポキシ樹脂系顔料分散樹脂C
エピコート828 385部、ビスフェノールA120部、オクチル酸29部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下170℃へ加熱した。反応混合物を170℃でエポキシ当量が680に達するまで反応させた。次いで、反応混合物を140℃に冷却後、2−エチルヘキサノールハーフブロック化イソホロンジイソシアネート198部を加えた。反応混合物を140℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル157部を加えた。次に、反応混合物を105℃以下に冷却し、ジエチレントリアミン277部を加え、115〜120℃で1時間反応させた。反応混合物を70〜90℃に冷却し、脱イオン水21部、無水酢酸78部を加えて約2時間反応させた。脱イオン水を165部加えた後、100〜110℃に昇温し、減圧下メチルイソブチルケトンを262部留出させた。次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル208部を加え、25%の固形分量になるまで脱イオン水で希釈し、顔料分散用ワニスを得た。
【0065】
製造例7
メインエマルションの製造
製造例1のカチオン性エポキシ樹脂と製造例3のポリイソシアネート架橋剤を固形分として70:30の割合で混合し、酢酸で中和率40%に中和し、脱イオン水を加え、ゆっくり希釈し、ついで不揮発分が37質量%になるようにメチルイソブチルケトン及び脱イオン水を除去し、メインエマルションを得た。
【0066】
製造例9
カチオン性アクリル樹脂エマルションの製法
上記製造例7と同様に、製造例2のカチオン性アクリル樹脂と製造例3の架橋剤を固形分として70:30の割合で含む不揮発分33%のエマルションを作成した。
【0067】
顔料ペーストの調製
下記配合量のものを分散することにより顔料ペーストAを調製した。
(顔料ペーストA)
カーボンブラック 14重量部
エポキシ樹脂系顔料分散樹脂A 51重量部
エポキシ樹脂系顔料分散樹脂B 11重量部
ジブチル錫オキサイド 11重量部
脱イオン水 13重量部
【0068】
下記配合量のものを分散することにより顔料ペーストBを調製した。
(顔料ペーストB)
カーボンブラック 4重量部
エポキシ樹脂系顔料分散樹脂B 27重量部
エポキシ樹脂系顔料分散樹脂C 29重量部
珪酸アルミニウム 32重量部
ジブチル錫オキサイド 3重量部
脱イオン水 5重量部
【0069】
実施例1、2および3
メインエマルション、カチオン性アクリル樹脂エマルション(必要に応じて)、顔料ペーストA、25%酢酸亜鉛水溶液、脱イオン水を下記表1の配合に従って混合し、不揮発分20%のカチオン電着塗料を得た。各塗料をリン酸亜鉛処理した冷延鋼板に乾燥膜厚が約20μmなるように電着し、水洗後、140℃で20分間焼き付けた。塗料沈降性、塗膜性能(60°グロス、耐溶剤性、突沸油ハジキ性、塗膜外観、防錆性)を評価した。結果を表2に示す。
【0070】
比較例1〜5
メインエマルション、カチオン性アクリル樹脂エマルション、顔料ペーストA又はB、脱イオン水を下記表1の配合に従って混合し、不揮発分20%のカチオン電着塗料を得た。各塗料をリン酸亜鉛処理した冷延鋼板に乾燥膜厚が約20μmなるように電着し、水洗後、140℃で20分間焼き付けた。塗料沈降性、塗膜性能(60°グロス、耐溶剤性、突沸油ハジキ性、塗膜外観、防錆性)を評価した。結果を表3に示す。
【0071】
【表1】

錫触媒の量はすべて電着塗料中の樹脂固形分に対して2%である。
不揮発分 メインエマルション:37%
アクリルエマルション:33%
顔料ペーストA:37%
顔料ペーストB:54%
【0072】
評価方法
(1)塗料沈降性
塗料を96時間静置した後の上澄み液の固形分を測定し、静置前の上澄み液の固形分からの減少分を算出し、塗料沈降性の評価とした。評価は下記の規準で行なった。
○:0.5以下
△:0.5%〜2.0%
×:2.0%以上
(2)60°グロス
140℃で焼き付けて得られた塗膜を光沢計(BYK-GardnerGmbH社製)を用いて60°光沢値を測定した。
(3)耐溶剤性
○:艶引けなし、かつ塗膜の溶解・膨潤なし
○〜△:わずかな艶引けあり、またはわずかな塗膜の溶解・膨潤あり
△:艶引けあり、または塗膜の溶解・膨潤あり
×:塗膜が溶解して、下地金属面の露出が見られる
硬化塗膜の表面をメチルイソブチルケトンを染み込ませたガーゼを用いて20往復した後の状態を目視評価した。
(4)突沸油ハジキ性
電着塗装後の板を水洗した後、水分を充分タレ切れさせた(30分以上自然乾燥)。塗板を網の上に水平に置き、中央にφ14mm×高さ5mmのアルミカップを固定した。スポイドを用いて水を1滴落とした後、さらに油を1滴落とした。塗板を水平にしたまま、140℃で20分焼き付けた後、塗膜の状態を目視評価した。
◎:ハジキがほとんど見られない
○:径の小さいハジキが少し見られる
△:ハジキが部分的に見られる、または径の大きいハジキが少し見られる
×:全面にハジキが見られる、またはハジキの径が大きい
(5)塗膜外観
硬化塗膜の外観を目視判断した。○は良好であり、△は肌が粗い、を意味する。
(6)防錆性
硬化塗膜の表面にカッターナイフで素地に達するまでクロスカットを入れ、塩水噴霧試験(5%食塩水、35℃)を500時間実施した。試験後のクロスカット部の錆幅およびふくれを目視評価した。
(ふくれ)
○:ふくれなし
△:小さいふくれが数カ所見られる
×:大きいふくれが見られる
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明で用いる電着浴と循環攪拌システムとの関係を模式的に示す図である。
【図2】本発明の電着浴で、循環攪拌システムを用いずに、攪拌装置を用いる態様を模式的に示す図である。
【図3】電着浴と、循環撹拌システムを持つ第1水洗浴および第2水洗浴との関係を示す模式図である。
【図4】電着浴と、撹拌羽を供えた第1水洗浴および第2水洗浴との関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・電着浴
2・・・オーバーフロー槽
3・・・ポンプ
4・・・フィルター
5・・・ライザー
6・・・ノズル
11・・・攪拌羽
30・・・電着浴
31・・・第1水洗浴
32・・・第2水洗浴
33・・・限外濾過器(UF)
34および35・・・循環攪拌システム
36・・・攪拌羽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着塗装時には、電着浴の一部を取りだしてポンプで電着浴中に戻すことにより電着浴を循環攪拌し、電着塗装を行っていないときは該循環用ポンプを停止する電着浴管理方法であって、電着浴中の電着塗料が沈降の極めて少ない電着塗料であることを特徴とする電着浴の管理方法。
【請求項2】
カチオン電着塗料を用いる電着塗装システムにおいて、電着浴の一部を取り出してポンプで元の浴中に戻す液体流による循環攪拌を、攪拌羽を用いる攪拌に切り替えることによりエネルギーを節約し、該カチオン電着塗料が沈降の極めて少ない電着塗料であることを特徴とする電着塗装システム。
【請求項3】
カチオン電着塗料を用いる電着浴で被塗物を塗装した後、被塗物を第一水洗浴で水洗し、更に第二水洗浴に送って水洗する電着塗装システムにおいて、第一水洗浴の一部を取り出してポンプで元の浴中に戻す液体流による循環攪拌を、攪拌羽を用いる攪拌に切り替え、該カチオン電着塗料が沈降の極めて少ない電着塗料であることを特徴とする電着塗装システム。
【請求項4】
カチオン電着塗料を用いる電着浴で被塗物を塗装した後、被塗物を第一水洗浴で水洗し、更に第二水洗浴に送って水洗する電着塗装システムにおいて、第二水洗浴の一部を取り出してポンプで元の浴中に戻す液体流による循環攪拌を、攪拌羽を用いる攪拌に切り替え、該カチオン電着塗料が沈降の極めて少ない電着塗料であることを特徴とする電着塗装システム。
【請求項5】
カチオン電着塗料を用いる電着浴で被塗物を塗装した後、被塗物を第一水洗浴で水洗し、更に第二水洗浴に送って水洗する電着塗装システムにおいて、第一水洗浴および第二水洗浴の両方の浴の一部を取り出して別々のポンプでそれぞれの浴中に戻す液体流による循環攪拌を、両者とも攪拌羽を用いる攪拌に切り替えし、該カチオン電着塗料が沈降の極めて少ない電着塗料であることを特徴とする電着塗装システム。
【請求項6】
沈降の極めて少ない電着塗料が、(a)カチオン性エポキシ樹脂、(b)硬化剤、(c)顔料、および(d)硬化触媒を含有し、顔料(c)としてカーボンブラック、有機顔料またはそれらの組合せを用い、(d)硬化触媒として錫触媒を用いる、請求項1記載の電着浴の管理方法。
【請求項7】
沈降の極めて少ない電着塗料が、更に(e)カチオン性アクリル樹脂を含有する請求項6記載の管理方法。
【請求項8】
更に電着塗料中に亜鉛イオンを200〜600ppmの量で含む請求項6又は7記載の管理方法。
【請求項9】
沈降の極めて少ない電着塗料が、(a)カチオン性エポキシ樹脂、(b)硬化剤、(c)顔料、および(d)硬化触媒を含有し、顔料(c)としてカーボンブラック、有機顔料またはそれらの組合せを用い、(d)硬化触媒として錫触媒を用いる、請求項2〜5いずれかに記載の電着塗装システム。
【請求項10】
沈降の極めて少ない電着塗料が、更に(e)カチオン性アクリル樹脂を含有する請求項9記載の電着塗装システム。
【請求項11】
更に電着塗料中に亜鉛イオンを200〜600ppmの量で含む請求項9又は10記載の電着塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−291525(P2007−291525A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126792(P2007−126792)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【分割の表示】特願2003−276910(P2003−276910)の分割
【原出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】