説明

カップリング化合物の製造方法およびカップリング触媒

【課題】芳香族化合物とハロゲン化不飽和化合物との新規な脱ハロゲン化水素カップリング反応を提供する。
【解決手段】塩基(アルコキシドなど)および含窒素有機化合物(脂肪族第2級ポリアミン、脂肪族第3級ポリアミン、芳香族第3級ポリアミン、ポリイミンなど)を含む触媒の存在下、芳香族化合物と炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子にハロゲン原子を有するハロゲン化不飽和化合物(例えば、ハロゲン化芳香族化合物)とを反応させる。この反応により、前記芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、前記不飽和化合物のハロゲン原子とで脱ハロゲン化水素したカップリング化合物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化合物と炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子にハロゲン原子を有するハロゲン化不飽和化合物(例えば、ハロアレーン)とがカップリング(脱ハロゲン化水素カップリング)した化合物を製造する方法およびカップリング触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロアレーンとアレーンとの脱ハロゲン化水素を伴うカップリング反応は、広くビアリール化合物の合成に用いられている。このような反応として、非特許文献1(Tetrahedron Lett.2003,44,8665)には、特定のルテニウム触媒([RuCl(cod)])、P[N(CH、および炭酸セシウムの存在下、ブロモベンゼンとo−クレゾールとを反応させ、2−ヒドロキシ−3−メチルビフェニルを得る方法が開示されている。この文献に記載の方法では、ルテニウム触媒を用いることにより、反応中間体としてアリールメタルを経て、最終生成物としてのカップリング化合物が得られる。
【0003】
また、金属アルコキシドを用いたカップリング反応も知られている。このような反応として、例えば、非特許文献2(Chem.Commun.2004,1926)には、t−ブトキシカリウムおよび特定のイリジウム触媒([CpIrHCl])の存在下、ヨードベンゼン類と大過剰のベンゼン類とを反応させ、対応するビフェニル化合物をオルト選択的に得る方法が、非特許文献3(Angew.Chem,Int,Ed,2007,46,3135)には、t−ブトキシカリウム、特定のロジウム触媒([RhCl(cod)])、および下記式
【0004】
【化1】

【0005】
で表される配位化合物の存在下、ブロモベンゼン類と過剰のベンゼン類とを反応させ、対応するビフェニル化合物を得る方法が開示されている。なお、非特許文献2および3に記載の方法では、ロジウム触媒などを用いることにより、t−ブトキシカリウムを用いることにより、反応中間体としてフェニルラジカルを経て、最終生成物としてのカップリング化合物が得られる。
【0006】
しかし、これらの文献の記載の反応では、複雑な構造であるだけでなく、ロジウム触媒などの高価な貴金属触媒が必要であり、よりシンプルで実用的な触媒系でのカップリング反応系が求められる。また、これらの文献の方法では、基質が限定される。
【0007】
また、非特許文献4(Org.Lett.2008,10,4673)には、1.5当量のt−ブトキシカリウムの存在下、マイクロ波を作用させつつ、ヨードベンゼンと大過剰のピラジンとを反応させ、対応するカップリング化合物(2−フェニルピラジン)を得る方法が開示されている。なお、この文献では、(i)ラジカル捕捉剤の存在下で反応を行うことにより、カップリング反応がラジカルを経て生じていること、(ii)t−ブトキシカリウムに代えてt−ブトキシナトリウムを使用するとカップリング反応が進行しないことを確認している。
【0008】
しかし、この文献に記載の方法では、貴金属触媒などを要することなくカップリング反応できるものの、基質が、ピラジンなどに著しく限定される。
【0009】
さらに、非特許文献5(J.Am.Chem.Soc.2006,128,13706)には、トリス(トリメチルシリル)シランおよびピリジンの存在下、ヨードベンゼン類と過剰のベンゼンとを反応させ、対応するカップリング化合物(ビフェニル類)を得る方法が開示されている。この文献の方法でも、貴金属触媒などを要することなくカップリング反応できるものの、トリス(トリメチルシリル)シランのような特殊な反応剤を当量以上必要とするだけでなく、塩基としてのピリジンを大量に使用する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Tetrahedron Lett.2003,44,8665
【非特許文献2】Chem.Commun.2004,1926
【非特許文献3】Angew.Chem,Int,Ed,2007,46,3135
【非特許文献4】Org.Lett.2008,10,4673
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc.2006,128,13706
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、芳香族化合物とsp炭素原子(炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子)にハロゲン原子を有するハロゲン化不飽和化合物(例えば、ハロアレーン)とがカップリングした化合物(詳細には、前記芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と前記ハロゲン化合物のハロゲン原子とで脱ハロゲン化水素したカップリング化合物)を製造する新規な方法およびこの方法に用いる触媒を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、芳香族化合物とハロゲン化不飽和化合物との幅広い組み合わせで、カップリング化合物を製造できる方法およびこの方法に用いる触媒を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、遷移金属触媒などを使用しなくても、ハロゲン化不飽和化合物と芳香族化合物とのカップリング化合物を効率よく製造できる方法およびこの方法に用いる触媒を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、複雑な構造の触媒や高価な触媒を使用しなくても、芳香族化合物とハロゲン化不飽和化合物とのカップリング化合物を製造できる実用性の高い方法およびこの方法に用いる触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、塩基(例えば、金属アルコキシドなど)および含窒素有機化合物の存在下で、芳香族化合物と炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子(sp炭素原子)にハロゲン原子を有する不飽和化合物とを反応させると、芳香族化合物と不飽和化合物との幅広い組み合わせにおいても、これらの化合物間の脱ハロゲン化水素を伴うカップリング化合物を生成できること、特に、含窒素有機化合物として、sp窒素(炭素−窒素二重結合)を複数有する含窒素有機化合物を用いると、遷移金属触媒などを使用しなくても、カップリング化合物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の製造方法は、塩基、および含窒素有機化合物を含む触媒(ただし、含窒素有機化合物およびルテニウム化合物又はロジウム化合物で構成された触媒を除く)の存在下、芳香族化合物と、炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子にハロゲン原子を有するハロゲン化不飽和化合物とを反応させて、前記芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、前記不飽和化合物のハロゲン原子とで脱ハロゲン化水素したカップリング化合物を製造する方法である。このような方法では、塩基と含窒素有機化合物との組合せにより、遷移金属触媒などを使用しなくても、カップリング化合物を得ることができる。そのため、前記方法において、前記触媒は、遷移金属触媒(例えば、遷移金属化合物)を含まない触媒であってもよい。特に、このような遷移金属触媒を含まない系で、効率よくカップリング反応を進行させるためには、含窒素有機化合物の中でも、特に、sp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物を好適に使用してもよい。代表的には、前記方法において、前記触媒が遷移金属化合物を含まない触媒であり、かつ前記含窒素有機化合物が、sp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物で構成されていてもよい。
【0017】
前記方法において、塩基はアルコキシド(特に、ナトリウム第3級アルコキシドなどの第3級アルコールのアルコキシド)であってもよい。また、前記方法において、含窒素有機化合物は、例えば、脂肪族第2級ポリアミン、脂肪族第3級ポリアミン、芳香族第3級ポリアミン、およびポリイミンから選択された少なくとも1種であってもよい。特に、前記含窒素有機化合物は、芳香族第3級ポリアミンおよびポリイミンから選択された少なくとも1種のsp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物で構成されていてもよい。このような含窒素有機化合物は、カップリング反応における触媒活性に優れており、好適に使用できる。
【0018】
前記触媒は、さらに遷移金属触媒を含んでいてもよい。前記のように、本発明の方法では、遷移金属触媒を必須としないが、カップリング反応効率をより一層向上させるため、遷移金属触媒を併用してもよい。このような遷移金属触媒は、代表的には、鉄化合物で構成されていてもよい。遷移金属触媒を併用する場合、含窒素有機化合物と遷移金属触媒との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=0.1/1〜10/1程度であってもよい。
【0019】
本発明には前記製造方法に用いる触媒も含まれる。すなわち、本発明には、塩基および触媒の存在下、芳香族化合物と、炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子にハロゲン原子を有する不飽和化合物とを反応させて、前記芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、前記不飽和化合物のハロゲン原子とで脱ハロゲン化水素したカップリング化合物を製造するための触媒であって、含窒素有機化合物を含む触媒(ただし、含窒素有機化合物およびルテニウム化合物又はロジウム化合物で構成された触媒を除く)も含まれる。このような触媒は、前記のように遷移金属触媒を含んでいなくてもカップリング反応を進行させることができる。代表的には、前記触媒は、遷移金属触媒を含まず、かつ含窒素有機化合物が、sp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物で構成されていてもよい。また、前記触媒は、さらに遷移金属触媒を含んでいてもよい。このような遷移金属触媒をさらに含む触媒は、含窒素有機化合物単独の場合に比べて、カップリング反応効率を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法では、芳香族化合物とsp炭素原子にハロゲン原子を有するハロゲン化不飽和化合物とがカップリングした化合物を製造できる。特に、本発明の方法では、芳香族化合物およびハロゲン化不飽和化合物の種類が限定されることなく、芳香族化合物とハロゲン化不飽和化合物との幅広い組み合わせで、カップリング化合物を製造できる。
【0021】
また、本発明の方法では、含窒素有機化合物として、sp窒素を複数有する含窒素有機化合物を用いることにより、遷移金属触媒などを使用しなくても、芳香族化合物とハロゲン化不飽和化合物とのカップリング化合物を効率よく製造できる。しかも、非特許文献4のマイクロ波のような特別な反応条件は必要でなく、前記のように反応に供する基質として幅広い化合物を使用でき、さらには、より効率よくカップリング反応させるため遷移金属触媒を用いる場合であっても、鉄化合物のような安価又は入手容易な触媒を使用することができる。そのため、本発明の方法は、複雑な構造の触媒や高価な触媒を使用しなくても、芳香族化合物とハロゲン化不飽和化合物とのカップリング化合物を製造できる実用性の高い方法であり、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の方法では、塩基、および含窒素有機化合物を含む触媒の存在下、芳香族化合物とsp炭素原子(すなわち、炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子)にハロゲン原子を有するハロゲン化不飽和化合物とを反応(カップリング反応)させて、対応するカップリング化合物を製造する。すなわち、本発明では、カップリング反応により、前記芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、前記ハロゲン化合物のハロゲン原子とで脱ハロゲン化水素したカップリング化合物を製造する。なお、この方法は、含窒素有機化合物およびルテニウム化合物又はロジウム化合物で構成された触媒の存在下で、上記カップリング化合物を製造する方法を含まない。
【0023】
[芳香族化合物]
芳香族化合物は、脱ハロゲン化水素に関与する水素原子(すなわち、芳香環に直接結合した水素原子)を少なくとも1つ有する芳香族化合物であればよく、単環式芳香族化合物又は多環式芳香族化合物であってもよく、ヘテロ原子含有芳香族化合物であってもよい。
【0024】
具体的な芳香族化合物を構成する芳香環(又は芳香族骨格)としては、芳香族炭化水素環{例えば、ベンゼン環、多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、フルオランテン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ペリレン環、ベンゾ[a]ピレン環、ベンゾ[e]ピレン環などの縮合2乃至6環式芳香族炭化水素環など)、複数の芳香族炭化水素環(縮合多環式芳香族炭化水素環であってもよい)が直接結合した芳香族炭化水素環(例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ターフェニル環などの2乃至6のC6−10アレーン環が直接結合した芳香族炭化水素環)など]など}、芳香環を構成する原子としてヘテロ原子(特に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子)を含む芳香環{例えば、ピロール環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、アゾール環(例えば、ジアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環など)、ピラジン環などのヘテロ原子含有単環式芳香環;縮合多環式芳香族ヘテロ環[例えば、チエノ[2,3−b]チオフェン環、インドール環、ベンゾ[b]フラン環、3,4−エチレンジオキシチオフェン環、ベンゾ[b]チオフェン環、ベンゾピラン環、キノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、キサンテン環、チアントレン環などの縮合2乃至6環式芳香族ヘテロ環]、環集合芳香族ヘテロ環(例えば、ビフリル環などの2乃至6の芳香族ヘテロ環が直接結合した芳香環など)などのヘテロ原子含有多環式芳香環など]など}が挙げられる。
【0025】
芳香族化合物は、芳香環(芳香環骨格)を有している限り、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(メチル、エチル、ブチル、t−ブチル基、ペンチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基)、ハロアルキル基(トリクロロメチル、トリフルオロメチル、テトラフルオロプロピル基などのハロC1−4アルキル基など)、アルケニル基(ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル基などのC2−6アルケニル基、好ましくはC2−4アルケニル基)、アリール基(フェニル基などのC6−14アリール基)、アラルキル基(ベンジル、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基)など]、ヒドロキシル基、(チオ)エーテル基[例えば、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ、t−ブトキシ基などのC1−6アルコキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基などの上記アルコキシ基に対応するC1−6アルキルチオ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)など]、アシル基[ホルミル基、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル基などのC1−6アルキル−カルボニル基)、アロイル基(例えば、ベンゾイル基など)など]、カルボキシル基、エステル基[例えば、アルコキシ−カルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル基などのC1−6アルコキシ−カルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基など)など]、アミノ基、N−置換アミノ基(メチルアミノ、ブチルアミノ基などのN−モノC1−4アルキルアミノ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ基などのN,N−ジC1−4アルキルアミノ基、アセチルアミノ基などのアシルアミノ基など)、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、これらの置換基同士が結合した置換基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基などのC1−4アルコキシC6−10アリール基)、アルコキシカルボニルアリール基(例えば、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニルC6−10アリール基など)]などが挙げられる。芳香族化合物は、これらの置換基を単独又は組み合わせて有していてもよい。このような置換基を有する芳香族化合物において、置換基の数は、芳香族骨格の種類にもよるが、例えば、0〜8、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜4程度であってもよい。
【0026】
代表的な芳香族化合物としては、芳香族炭化水素化合物、複素環式芳香族化合物などが挙げられる。芳香族炭化水素化合物(又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素)としては、例えば、ベンゼン、置換基を有するベンゼン[例えば、アルキルベンゼン(例えば、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼンなどのモノ乃至テトラC1−10アルキルベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラC1−6アルキルベンゼン、さらに好ましくはモノ乃至トリC1−4アルキルベンゼン)、アルコキシベンゼン(例えば、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン、トリメトキシベンゼンなどのモノ乃至テトラC1−10アルコキシベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラC1−6アルコキシベンゼン、さらに好ましくはモノ乃至トリC1−4アルコキシベンゼン)、アシルベンゼン(例えば、アセトフェノンなどのC1−10アシルベンゼン)、ヒドロキシベンゼン(例えば、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼンなど)、アルキルヒドロキシベンゼン(例えば、クレゾール、キシレノールなどのC1−10アルキル−ヒドロキシベンゼン)、カルボキシベンゼン(安息香酸など)、アルコキシカルボニルベンゼン(例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどのC1−10アルコキシ−カルボニルベンゼン)、ベンゾニトリル、アニリン、アニリド(例えば、アセトアニリドなどのN−C1−10アシルアニリン)など]、多環式芳香族炭化水素化合物{又は置換基を有していてもよい多環式芳香族炭化水素、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素(例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、フルオランテン、トリフェニレン、ナフタセン、ペリレン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]ピレンなどの縮合2乃至6環式芳香族炭化水素など)、複数の芳香族炭化水素が直接結合した化合物[例えば、ビフェニル、フェニルナフタレン、ターフェニルなどの複数の2乃至6のC6−10アレーンが直接結合した化合物(ビス乃至テトラキスアリールなど)など]、置換基を有する多環式芳香族炭化水素[例えば、置換基を有する縮合多環式芳香族炭化水素(例えば、アルコキシ縮合多環式アレーン(例えば、メトキシナフタレンなどのC1−10アルコキシ−縮合2乃至6環式芳香族炭化水素など)などの前記置換基を有するベンゼンに対応する多環式芳香族炭化水素]など}などが挙げられる。
【0027】
複素環式芳香族化合物としては、芳香環を構成する原子としてヘテロ原子(特に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子)を含む芳香族化合物、例えば、置換基を有していてもよいヘテロ原子含有単環式芳香族化合物{例えば、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェン、アゾール(例えば、ジアゾール、オキサゾール、チアゾールなど)、ピラジン;アルキルフラン(例えば、2−メチルフラン、2−ペンチルフランなどのC1−10アルキルフラン)、アルキルチオフェン(例えば、2−メチルチオフェン、3−メチルチオフェンなどのC1−10アルキルチオフェン)、アルコキシチオフェン(例えば、2−メトキシチオフェンなどのC1−10アルコキシチオフェン)、アシルチオフェン(例えば、2−チオフェンカルバルデヒドなどのC1−10アルキルカルボニル−チオフェン)などの前記例示の置換基を有するヘテロ原子含有単環式芳香族化合物}、置換基を有していてもよいヘテロ原子含有多環式芳香族化合物{例えば、縮合多環式芳香族ヘテロ環化合物[例えば、チエノ[2,3−b]チオフェン、インドール、ベンゾ[b]フラン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾピラン、キノリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、キサンテン、チアントレン;N−アルキルインドール(例えば、N−メチルインドールなどのN−C1−4アルキルインドール)などの前記例示の置換基を有する縮合2乃至6環式芳香族ヘテロ環化合物など]、環集合芳香族ヘテロ環化合物(例えば、ビフリルなどの2乃至6の芳香族ヘテロ環化合物が直接結合した化合物;これらの化合物に前記置換基が置換した化合物など)など}などが挙げられる。
【0028】
なお、複素環式芳香族化合物は、通常、多環式の芳香族ポリアミンでない場合が多い。また、ヘテロ原子含有多環式芳香族化合物は、いわゆる多座配位化合物でない(又は多座配位子又は多座配位化合物に分類される化合物でない)場合が多い。例えば、縮合多環式芳香族ヘテロ環化合物は、複数の窒素原子含有芳香環が縮合した芳香族ヘテロ環化合物(例えば、フェナントロリンなど)でない場合が多く、また、環集合芳香族ヘテロ環化合物は、通常、複数の窒素原子含有芳香環が直接結合した環集合芳香族ヘテロ環化合物(例えば、ビピリジン、ターピリジンなど)でない場合が多い。
【0029】
なお、前記のように、芳香族化合物は、芳香環に直接結合した水素原子を少なくとも1つ有するが、このような水素原子の数は、特に限定されず、例えば、1以上(例えば、1〜50)、好ましくは2〜30(例えば、2〜25)、さらに好ましくは3〜20(例えば、3〜18)程度であってもよく、通常2〜15(例えば、3〜12)程度であってもよい。
【0030】
[ハロゲン化不飽和化合物]
ハロゲン化不飽和化合物(単に、ハロゲン化合物、不飽和化合物などということがある)は、炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子[又はsp炭素原子(詳細には、sp混成軌道を構成する炭素原子)]にハロゲン原子を有する(又はハロゲン原子が結合している)。すなわち、ハロゲン化不飽和化合物は、炭素−炭素二重結合を有する不飽和化合物のsp炭素原子にハロゲン原子が置換した化合物である。なお、炭素−炭素二重結合には、芳香環を構成する炭素−炭素二重結合も含まれる。
【0031】
ハロゲン化不飽和化合物は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(すなわち、少なくとも2つのsp炭素原子)を有していればよく、2以上の炭素−炭素二重結合を有していてもよい。
【0032】
このようなハロゲン化不飽和化合物に対応する代表的な不飽和化合物(又は不飽和骨格)としては、例えば、脂肪族不飽和化合物{又は脂肪族不飽和骨格、例えば、アルケン[例えば、エチレン、プロピレン、ブテン(1−ブテン、2−ブテン、イソブテン)、ペンテン(1−ペンテンなど)、ヘキセン(1−ヘキセンなど)などのC2−40アルケン、好ましくはC2−30アルケン、さらに好ましくはC2−20アルケン]、シクロアルケン(例えば、シクロヘキセン、シクロオクテンなどのC5−10シクロアルケン)、アルカポリエン[例えば、アルカジエン(例えば、1,4−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエンなどの共役又は非共役C4−10アルカジエン)など]、シクロアルカポリエン[例えば、シクロアルカジエン(例えば、1,4−シクロヘキサジエンなどの共役又は非共役C5−10シクロアルカジエンなど)など]など}、芳香族化合物などが挙げられる。芳香族化合物(芳香族骨格、芳香環骨格)としては、前記例示の芳香環と同様の芳香環(芳香族骨格)が挙げられる。
【0033】
ハロゲン化不飽和化合物において、sp炭素原子に有する(又は結合した)ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。好ましいハロゲン原子は、ヨウ素原子である。ハロゲン化不飽和化合物は、少なくとも1つのハロゲン原子を有していればよく、2以上の同一又は異なるハロゲン原子(sp炭素原子に結合したハロゲン原子)を有していてもよい。2以上のハロゲン原子を有する場合、同一のsp炭素原子にハロゲン原子が置換していてもよいが、通常、異なるsp炭素原子にハロゲン原子が置換している場合が多い。なお、ハロゲン原子が異なる場合、ヨウ素、臭素原子、塩素原子の順に優先的に脱ハロゲン化水素が生じる場合が多い。
【0034】
また、ハロゲン化不飽和化合物は、不飽和骨格(芳香環など)を有している限り、置換基を有していてもよい。置換基としては、前記例示の置換基の他、オキソ基(O=)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など、ただし、sp炭素原子に有するハロゲン原子を除く)などが挙げられる。なお、オキソ基、ハロゲン原子などの置換基は、通常、脂肪族不飽和化合物(脂肪族不飽和骨格)に置換している場合が多い。ハロゲン化不飽和化合物は、これらの置換基を単独又は組み合わせて有していてもよい。このような置換基の数は、ハロゲン化不飽和化合物の種類にもよるが、例えば、0〜8、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜4程度であってもよい。置換基の置換位置は、特に限定されないが、不飽和化合物が芳香族化合物である場合、芳香環に置換したハロゲン原子に隣接する2つの炭素原子に置換基を有しない場合が多い。
【0035】
代表的なハロゲン化不飽和化合物としては、ハロゲン化脂肪族化合物[例えば、ハロアルケン(例えば、塩化ビニルなどのハロC2−20アルケンなど)、ハロシクロアルケン(例えば、1−クロロシクロヘキセン)、ハロアルカジエン(例えば、クロロプレンなどのハロC4−10アルカジエン)などのハロゲン化炭化水素;これらのハロゲン化炭化水素にさらに置換基を有する化合物(例えば、クロロマレイン酸、α−クロロスチレンなど)]、ハロゲン化芳香族化合物などが挙げられる。ハロゲン化芳香族化合物を使用すると、カップリング反応により、効率よくポリアリール化合物(例えば、ビスアリール化合物など)を得ることができる。
【0036】
ハロゲン化芳香族化合物としては、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物(又は置換基を有していてもよいハロゲン化芳香族炭化水素)としては、例えば、ハロベンゼン(例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、4−クロロ−1−ヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼンなどのハロベンゼン)、置換基を有するハロベンゼン[例えば、アルキルハロベンゼン(例えば、クロロトルエン、ブロモトルエン、ヨードトルエンなどのモノ乃至テトラC1−10アルキルハロベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラC1−6アルキルハロベンゼン、さらに好ましくはモノ乃至トリC1−4アルキルハロベンゼン)、ハロアルキルハロベンゼン(例えば、トリフルオロメチルヨードベンゼンなどのモノ乃至テトラハロC1−10アルキルハロベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラハロC1−6アルキルハロベンゼン、さらに好ましくはモノ乃至トリハロC1−4アルキルハロベンゼン)、シアノハロベンゼン(例えば、シアノクロロベンゼン、シアノヨードベンゼンなど)、ニトロハロベンゼン(例えば、クロロニトロベンゼン、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)、アルコキシハロベンゼン(例えば、クロロアニソール、ヨードアニソール、ヘキシルオキシヨードベンゼンなどのモノ乃至テトラC1−10アルコキシハロベンゼン、好ましくはモノ乃至テトラハロC1−6アルコキシベンゼン、さらに好ましくはモノ乃至トリC1−4アルコキシハロベンゼン)、アシルベンゼン(例えば、クロロベンズアルデヒド、クロロアセトフェノンなどのC1−10アシルハロベンゼン)、ヒドロキシハロベンゼン(例えば、クロロフェノールなど)、アルキルヒドロキシハロベンゼン(例えば、クロロクレゾールなどのC1−10アルキル−ヒドロキシハロベンゼン)、カルボキシハロベンゼン(例えば、クロロ安息香酸、クロロサリチル酸など)、アルコキシカルボニルベンゼン(例えば、クロロ安息香酸メチルなどのC1−10アルコキシ−カルボニルハロベンゼン)、ハロアニリン(例えば、クロロアニリンなど)など]、ハロゲン化多環式芳香族炭化水素化合物[又は置換基を有していてもよいハロゲン化多環式芳香族炭化水素、例えば、ハロゲン化縮合多環式芳香族炭化水素(例えば、クロロナフタレン、ヨードナフタレン、ジクロロナフタレンなどのハロゲン化縮合2乃至6環式芳香族炭化水素など)、ハロゲン化環集合芳香族炭化水素(例えば、クロロビフェニルなどハロゲン化ビス乃至テトラキスアリールなど)、前記置換基を有するハロベンゼンに対応する置換基を有する多環式芳香族炭化水素(例えば、1−クロロ−4−ニトロナフタレンなど)など]などが挙げられる。
【0037】
ハロゲン化複素環式芳香族化合物としては、芳香環を構成する原子としてヘテロ原子(特に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子)を含むハロゲン化芳香族化合物、例えば、置換基を有していてもよいハロゲン化ヘテロ原子含有単環式芳香族化合物(例えば、クロロピリジン、ヨードピリジン、クロロチオフェン、ヨードチオフェンなど)、置換基を有していてもよいハロゲン化ヘテロ原子含有多環式芳香族化合物{例えば、ハロゲン化縮合多環式芳香族ヘテロ環化合物[例えば、2−クロロキノリンなどの前記例示の置換基を有していてもよいハロゲン化縮合2乃至6環式芳香族ヘテロ環化合物など]など}などが挙げられる。
【0038】
[塩基]
塩基(含窒素有機化合物(例えば、アミン類)ではない塩基)としては、例えば、無機塩基{例えば、金属水酸化物[例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウムなど)など]、金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属水素化物)、金属炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸塩)、金属炭酸水素塩(例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、アンモニアなど}、有機塩基{例えば、アルコキシド、有機金属化合物(例えば、ブチルリチウムなど)、有機酸塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの有機酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など)など}などが例示できる。塩基は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0039】
好ましい塩基には、アルコキシド(金属アルコキシド)が含まれる。そのため、塩基は、少なくともアルコキシドで構成してもよい。アルコキシドは、アルコール類のヒドロキシル基の水素を金属で置換した化合物である。このようなアルコキシドに対応するアルコール類としては、例えば、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコールなどのC1−14アルカノール、好ましくはC1−10アルカノール、さらに好ましくはC1−6アルカノール)などの脂肪族アルコールが挙げられる。
【0040】
また、アルコキシドの金属としては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなど)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4族金属)、周期表第13族金属(例えば、アルミニウムなど)などが挙げられる。好ましい金属は、アルカリ金属である。
【0041】
代表的なアルコキシドとしては、例えば、アルカリ金属アルコキシド(例えば、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属C1−10アルコキシド、好ましくはアルカリ金属C1−6アルコキシド、さらに好ましくはアルカリ金属C1−4アルコキシド)などが挙げられる。
【0042】
好ましいアルコキシドには、アルカリ金属アルコキシド(特に、ナトリウムアルコキシド)が含まれる。また、第3級アルコール[例えば、第3級アルカノール(例えば、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級C4−10アルカノール、好ましくは第3級C4−6アルカノール)など]のアルコキシドも好ましい。特に好ましいアルコキシドには、ナトリウム第3級アルコキシド(例えば、ナトリウムt−ブトキシドなどのナトリウムC4−8第3級アルコキシド)などが含まれる。
【0043】
塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0044】
[触媒]
(含窒素有機化合物)
触媒は、少なくとも含窒素有機化合物(含窒素化合物などということがある)で構成されている。このような含窒素有機化合物は、窒素原子を有する有機化合物であればよく、通常、炭素−窒素結合を有する有機化合物である。このような炭素−窒素結合は、炭素−窒素単結合であってもよく、炭素−窒素二重結合であってもよい。また、含窒素有機化合物は、これらの結合を単独又は2種以上組み合わせて有する有機化合物であってもよい。すなわち、含窒素有機化合物は、1つ又は複数のsp窒素原子(詳細には、sp混成軌道を構成する窒素原子)を有する有機化合物であってもよく、1つ又は複数のsp窒素原子(詳細には、sp混成軌道を構成する窒素原子)を有する有機化合物であってもよく、1つ又は複数のsp窒素原子および、1つ又は複数のsp窒素原子を有する有機化合物であってもよい。
【0045】
代表的な含窒素有機化合物としては、アミン、イミン(シッフ塩基)などが挙げられる。アミンは、第1〜3級アミンのいずれであってもよいが、好ましいアミンは、第2級アミン又は第3級アミンである。特に好ましいアミンは、アミンを構成する窒素原子が、sp窒素である第3級アミンが好ましい。このようなsp窒素を有する第3級アミンには、後述するように、芳香族窒素環化合物(芳香族ヘテロ環を構成するヘテロ原子が窒素原子である芳香族化合物)などが含まれる。
【0046】
また、アミンは、1つのアミノ基を有するアミン(すなわち、モノアミン)であってもよく、複数のアミノ基(又はイミノ基)を有するアミン(すなわち、ポリアミン)であってもよい。好ましいアミンはポリアミンである。特に好ましいポリアミンには、錯体(又は配位化合物)において、多座配位子として分類されるポリアミンが含まれる。
【0047】
イミンもまた、1つの炭素−窒素二重結合を有していてもよく、複数の炭素−窒素二重結合(又はイミノ基)を有するイミン(ポリイミン)であってもよい。好ましいイミンはポリイミンであり、特に好ましいポリイミンには、錯体(又は配位化合物)において、多座配位子として分類されるポリイミンなどが含まれる。
【0048】
具体的なアミンとしては、脂肪族アミンと芳香族アミンとに大別される。脂肪族アミンとしては、例えば、脂肪族モノアミン[例えば、アルキルアミン(例えば、エチルアミンなどのC1−10アルキルアミン)などの脂肪族第1級モノアミン;ジアルキルアミン(例えば、ジメチルアミンなどのジC1−10アルキルアミン)、アザシクロアルカン(例えば、ピペリジン、モルホリンなど)などの脂肪族第2級モノアミン;トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリC1−10アルキルアミン)、トリシクロアルキルアミン(トリシクロヘキシルアミンなど)、アルキルジシクロアルキルアミン(例えば、メチルジシクロヘキシルアミンなど)などの脂肪族第3級モノアミン]、脂肪族ポリアミン[例えば、アルカンジアミン(例えば、エチレンジアミンなどのC2−10アルカンジアミン)、ポリアルカンジアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど)などの脂肪族第1級ポリアミン;N,N’−ジアルキルアルカンジアミン(例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミンなどのN,N’−ジC1−4アルキルC2−10アルカンジアミン)、ポリアザシクロアルカン(例えば、ピペラジン、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンなどのジ乃至テトラアザシクロアルカン;)などの脂肪族第2級ポリアミン;N,N,N’,N’−テトラアルキルアルカンジアミン(例えば、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミンなどのN,N,N,N−テトラC1−4アルキルC2−10アルカンジアミン)、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタアルキルジアルキレントリアミン(例えば、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンなどのN,N,N’,N’’,N’’−ペンタC1−4アルキルジC2−4アルキレントリアミン)、N,N’,N’’−トリアルキルトリアザシクロアルカン(例えば、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンなどのN,N’,N’’−トリC1−4アルキルトリアザシクロアルカン)などの脂肪族第3級ポリアミン]などが挙げられる。
【0049】
芳香族アミンは、通常、芳香族ポリアミンであってもよい。芳香族ポリアミンには、芳香族第3級ポリアミン、例えば、環集合芳香族窒素環化合物{例えば、ビピリジン類[又は置換基を有していてもよいビピリジン、例えば、ビピリジン(2,2’−ビピリジンなど);アルキルビピリジン(例えば、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジトリフルオロメチル−2,2’−ビピリジンなどのC1−4アルキルビピリジン)、アリールビピリジン(例えば、4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジンなどのC6−10アリールビピリジン)、アルコキシビピリジン(例えば、4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジンなどのC1−4アルコキシビピリジン)、ニトロビピリジン(例えば、4,4’−ジニトロ−2,2’−ビピリジンなど)、カルボキシビピリジン(例えば、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンなど)、ジアルキルアミノビピリジン(例えば、4,4’−ジメチルアミノ−2,2’−ビピリジンなどのC1−4アルキルアミノビピリジン)、ヒドロキシビピリジン(例えば、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ビピリジンなど)などの置換基(前記例示の置換基など)を有するビピリジン]、ターピリジン類[又は置換基を有していてもよいターピリジン、例えば、ターピリジン(2,2’:6’,2’’−ターピリジンなど)、置換基を有するターピリジン(前記置換基を有するビピリジンに対応するターピリジン)]、クアテルピリジン類[又は置換基を有していてもよいクアテルピリジン、例えば、クアテルピリジン(2,2’:6’,2’’:6’’,2’’’−クアテルピリジンなど)、置換基を有するクアテルピリジン(前記置換基を有するビピリジンに対応するターピリジン)]などの芳香族窒素環が複数直接結合した化合物など}、縮合多環式芳香族窒素環化合物{例えば、フェナントロリン類[又は置換基を有していてもよいフェナントロリン、例えば、フェナントロリン(1,10−フェナントロリンなど);アルキルフェナントロリン(例えば、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリンなどのC1−4アルキルフェナントロリン)、アリールフェナントロリン(例えば、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなどのC6−10アリールフェナントロリン)、アルキル−アリールフェナントロリン(例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなどのC1−4アルキル−C6−10アリールフェナントロリン)、アルコキシフェナントロリン(例えば、3,4,7,8−テトラメトキシ−1,10−フェナントロリンなどのC1−4アルコキシフェナントロリン)などの置換基(前記例示の置換基など)を有するフェナントロリン]などの縮合多環式芳香族化合物の芳香環を構成する炭素原子の2以上が窒素原子に置換した化合物}などが挙げられる。
【0050】
また、イミンとしては、例えば、ビス(N−置換イミノ)アセナフテン類{例えば、ビス(アリールイミノ)アセナフテン[例えば、ビス(フェニルイミノ)アセナフテン(1,2−ビス(フェニルイミノ)アセナフテン)などのビス(C6−10アリールイミノ)アセナフテン]など}などのポリイミンが挙げられる。
【0051】
好ましい含窒素有機化合物には、第2級ポリアミン(例えば、脂肪族第2級ポリアミン)、第3級ポリアミン(例えば、脂肪族第3級ポリアミン、芳香族第3級ポリアミン)、ポリイミン(複数の炭素−窒素二重結合を有するイミン化合物)である。
【0052】
特に好ましい含窒素有機化合物には、sp窒素原子を複数有するアミン(例えば、ビピリジン類、ターピリジン類、フェナントロリン類などの芳香族第3級ポリアミン)、ポリイミンなどのsp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物が含まれる。このようなsp窒素を複数有する含窒素有機化合物は、カップリング反応の触媒活性が高く、遷移金属触媒などを使用しなくても、効率よくカップリング反応を進行させることができる。
【0053】
含窒素有機化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0054】
(遷移金属触媒)
触媒は、前記含窒素有機化合物に加えて、さらに、遷移金属触媒(単に、金属触媒、金属化合物などということがある)を含んでいてもよい。なお、本発明では、触媒として少なくとも含窒素有機化合物を使用すればよく、遷移金属触媒は必須ではないが、カップリング反応を効率よく進行させるため、含窒素有機化合物と遷移金属触媒とを併用してもよい。特に、含窒素有機化合物の種類によっては、遷移金属触媒との組み合わせにより、カップリング反応効率を大幅に上昇させることができる場合がある。概ね、本発明の反応系においては、(i)含窒素有機化合物として、sp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物を使用する場合には、遷移金属触媒を使用しなくてもカップリング反応が効率よく進行し、(ii)含窒素有機化合物として、sp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物以外の化合物を使用する場合には、遷移金属触媒を併用することによりカップリング反応効率が著しく向上する傾向があるようである。なお、上記(i)sp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物を使用する場合であっても、遷移金属触媒を使用することにより、さらにカップリング反応効率を向上できる場合が多い。
【0055】
遷移金属触媒(又は遷移金属成分)は、遷移元素で構成されている。遷移金属触媒を構成する遷移元素としては、例えば、周期表第3族元素[又は周期表第3族金属、以下同じ。Sc、Y、ランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Smなど)、アクチノイド]、周期表第4族元素(Ti、Zr、Hfなど)、周期表第5族元素(V、Nb、Taなど)、周期表第6族元素(Cr、Mo、Wなど)、周期表第7族元素(Mn、Tc、Reなど)、周期表第8族元素(Fe、Ru、Osなど)、周期表第9族元素(Co、Rh、Irなど)、周期表第10族元素(Ni、Pd、Ptなど)、周期表第11族元素(Cu、Ag、Auなど)などが例示できる。遷移金属触媒は、これらの遷移金属元素を単独で又は二種以上含む成分であってもよい。
【0056】
好ましい遷移金属元素には、例えば、周期表第7族元素、周期表第8族元素、周期表第9族元素、周期表第10族元素から選択された少なくとも一種が含まれる。特に、遷移金属成分は、少なくとも周期表第8族元素(特に、鉄)を含んでいてもよい。遷移金属元素の酸化数は、特に制限されず、元素の種類に応じて、例えば、0、+2、+3、+4などであってもよい。
【0057】
遷移金属触媒は、金属単体であってもよいが、通常、遷移金属化合物(遷移金属元素を含む化合物)として使用する場合が多い。なお、遷移金属化合物は、反応系中で生成させてもよい。
【0058】
遷移金属化合物としては、例えば、無機塩[又は無機化合物、例えば、無機酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、過塩素酸塩などの過ハロゲン酸塩、クロム酸塩など)、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、酸化物、硫化物、水酸化物など]、有機酸塩{例えば、スルホン酸塩[例えば、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などのアルカンスルホン酸塩(C1−10アルカンスルホン酸塩など);トリフルオロメタンスルホン酸塩などのハロアルカンスルホン酸塩(ハロC1−4アルカンスルホン酸塩など);ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などのアレーンスルホン酸塩(C6−10アレーンスルホン酸塩など)]、カルボン酸塩[例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩などのカルボン酸塩(C1−12アルカン酸塩など);ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩などのハロアルカン酸塩(ハロC1−4アルカン酸塩など)など]など}、錯体(又は錯塩)などが含まれる。
【0059】
錯体を構成する配位子としては、例えば、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)、アシル基(C1−4アシル基など)、アルコキシカルボニル基(C1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アセチルアセトナト、シクロアルカジエニル基(シクロペンタジエニル基、シクロオクタジエニル基など)、ベンジリデン基、ビニリデン基、ベンジリデンアセトン、ベンジリデンアセチルアセトナト、ベンジリデンアセトフェノン、シクロアルカジエン(シクロオクタジエンなど)、芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、シメン、クメン、キシレン、ナフタレンなど)、ハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、HO(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなど)、ホスファイト(トリフェニルホスファイトなど)、NH(アンミン)、NO、NO(ニトロ)、NO(ニトラト)、アミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリン、ビピリジルなど)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)などが挙げられる。錯体又は錯塩において、同種又は異種の配位子が一種又は二種以上配位してもよい。
【0060】
なお、遷移金属成分は、担体(活性炭、シリカ、アルミナ、チタニアなど)に担持(固定)されていてもよい。
【0061】
代表的な遷移金属化合物には、鉄化合物{例えば、無機塩[例えば、ハロゲン化鉄(例えば、FeCl、FeCl、FeBr、FeIなど)、無機酸鉄(例えば、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、リン酸鉄(II)、リン酸鉄(II)など)、酸化鉄(例えば、FeO、Feなど)、これらの水和物(FeCl・4HOなど)など]、有機酸塩[例えば、鉄トリフラート(例えば、Fe(CFSO、Fe(CFSOなど)などのスルホン酸塩;酢酸鉄(例えば、Fe(CHCOO)、Fe(CHCOO)など)などのカルボン酸塩など]、鉄錯体[例えば、鉄カルボニル化合物(例えば、Fe(CO)、ビス(η−シクロペンタジエニル)テトラカルボニル二鉄など)、鉄アミン錯体(例えば、トリスビピリジル鉄(II)、トリス(1,10−フェナントロリン)鉄(II)、トリス(1,10−フェナントロリン)鉄(II)塩化物など)、鉄アセチルアセトナト錯体(例えば、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)など)、フェロセン、これらの水和物など]など}、これらの鉄化合物に対応する遷移金属化合物[周期表第7〜10族金属化合物(鉄化合物を除く)など]などが含まれる。
【0062】
遷移金属触媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0063】
好ましい遷移金属触媒は、周期表第7〜10族金属化合物(例えば、周期表第7〜10族金属の無機塩)であり、特に、遷移金属触媒は、鉄化合物[特に、ハロゲン化鉄(塩化鉄など)、有機酸鉄(鉄トリフラートなど)など]などの周期表第8族金属化合物(周期第8族金属触媒)で構成するのが好ましい。なお、鉄化合物の価数は、通常、+2又は+3であり、特に鉄(II)化合物が好ましい。このような鉄化合物で構成された遷移金属触媒は、鉄化合物単独で構成してもよく、鉄化合物と他の遷移金属触媒とを組み合わせてもよい。
【0064】
[カップリング(脱ハロゲン化水素)反応]
カップリング化合物は、前記塩基および前記含窒素有機化合物を含む触媒の存在下、芳香族化合物とハロゲン化不飽和化合物とを反応(カップリング)させることにより得ることができる。すなわち、本発明では、カップリング反応により、前記芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、前記ハロゲン化合物のハロゲン原子とで脱ハロゲン化水素したカップリング化合物を製造する。なお、この方法は、含窒素有機化合物およびルテニウム化合物で構成された触媒の存在下で、上記カップリング化合物を製造する方法を含まない。
【0065】
芳香族化合物とハロゲン化不飽和化合物との使用割合は、目的とする生成物の種類やこれらの化合物の種類(反応性)などに応じて適宜選択でき、例えば、芳香族化合物の割合は、ハロゲン化不飽和化合物のハロゲン原子(sp炭素に結合したハロゲン原子)1モルに対して、0.1モル以上(例えば、0.2〜1000モル程度)の範囲から選択でき、通常0.3〜800モル(例えば、0.5〜500モル)程度であってもよく、特に過剰モル[例えば、1.5モル以上(例えば、2〜300モル)、好ましくは3モル以上(例えば、4〜200モル)程度]であってもよい。なお、過剰の芳香族化合物を反応系の溶媒として使用してもよい。
【0066】
また、塩基の使用割合は、例えば、ハロゲン化不飽和化合物のハロゲン原子(sp炭素に結合したハロゲン原子)1モルに対して、1モル以上(例えば、1〜20モル)、好ましくは1.2〜10モル、さらに好ましくは1.3〜8モル(例えば、1.5〜5モル)程度であってもよい。
【0067】
さらに、含窒素有機化合物の使用割合は、ハロゲン化不飽和化合物のハロゲン原子(sp炭素に結合したハロゲン原子)100モルに対して、例えば、0.1〜70モル(例えば、0.5〜50モル)、好ましくは1〜40モル、さらに好ましくは2〜30モル(例えば、3〜25モル)程度であってもよく、通常1〜40モル(例えば、3〜30モル)程度であってもよい。
【0068】
遷移金属触媒を使用する場合、遷移金属触媒の使用割合は、ハロゲン化不飽和化合物のハロゲン原子(sp炭素に結合したハロゲン原子)100モルに対して、例えば、0.1〜70モル(例えば、0.5〜50モル)、好ましくは1〜40モル、さらに好ましくは2〜30モル(例えば、3〜25モル)程度であってもよく、通常1〜40モル(例えば、3〜30モル)程度であってもよい。
【0069】
また、含窒素有機化合物と遷移金属触媒との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=0.0.5/1〜20/1、好ましくは0.1/1〜10/1(例えば、0.2/1〜5/1)、さらに好ましくは0.3/1〜3/1(例えば、0.4/1〜2.5/1)程度であってもよい。
【0070】
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては、反応において不活性であれば特に限定されず、例えば、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの鎖状脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環族炭化水素類など)、含硫黄系溶媒(ジメチルスルホキサイド、スルホランなど)などが挙げられる。また、芳香族化合物及び/又はハロゲン化不飽和化合物を過剰に用いて溶媒として用いてもよい。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0071】
反応温度は、例えば、0〜300℃程度の広い範囲から選択でき、通常、30〜300℃(例えば、40〜250℃)、好ましくは50〜220℃、さらに好ましくは70〜200℃(例えば、100〜200℃)程度であってもよく、通常110〜230℃(例えば、130〜220℃、好ましくは140〜200℃)程度であってもよい。また、反応時間は、使用する基質(芳香族化合物、ハロゲン化不飽和化合物)の種類、塩基や触媒の種類、反応温度などに応じて適宜選択でき、ガスクロマトグラフィーなどを利用してカップリング化合物の生成の程度を確認しながら調整してもよい。
【0072】
反応は、常圧下、加圧下、又は減圧下のいずれで行ってもよく、また、還流させて行ってもよい。なお、反応は、酸化性雰囲気中で行ってもよく、非酸化性雰囲気中[例えば、窒素ガス、希ガス(ヘリウム、アルゴンなど)中など]で行ってもよい。
【0073】
反応終了後、慣用の分離精製手段、例えば、濃縮、乾固、晶析、再結晶、濾過、抽出、蒸留、クロマトグラフィなどの方法を利用して、生成物を単離してもよい。
【0074】
[カップリング化合物]
上記のようにしてカップリング化合物が得られる。カップリング化合物は、1つの芳香族化合物と1つのハロゲン化不飽和化合物とが脱ハロゲン化水素した化合物(すなわち、1つの芳香族化合物に1つのハロゲン化不飽和化合物に対応する不飽和化合物が結合した化合物)であってもよく、分子間脱ハロゲン化水素可能であれば、(1)1つの芳香族化合物と複数のハロゲン化不飽和化合物とが脱ハロゲン化水素した化合物(すなわち、芳香族化合物に複数のハロゲン化不飽和化合物に対応する不飽和化合物が結合した化合物)であってもよく、(2)1つのハロゲン化不飽和化合物と複数の芳香族化合物とが脱ハロゲン化水素した化合物(すなわち、ハロゲン化不飽和化合物に対応する不飽和化合物に複数の芳香族化合物が結合した化合物)などであってもよい。なお、上記(2)の態様では、ハロゲン化不飽和化合物として、複数のハロゲン原子を有する不飽和化合物(例えば、ポリハロアレーンなど)を使用する必要がある。
【0075】
なお、塩基(アルコキシドなど)および含窒素有機化合物(および遷移金属触媒)がどのように作用してカップリング化合物を生成するかについては定かではないが、例えば、以下のようなラジカル機構を伴うメカニズムが考えられる。例えば、含窒素有機化合物と金属(例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)などの金属アルコキシドのカウンターカチオンである金属)とで配位化合物(錯体)が形成され、この配位化合物から電子がハロゲン化合物に移動して、対応するハロゲン化イオンがハロゲン化合物から脱離し、残ったラジカル(例えば、アリールラジカルなど)が芳香族化合物に付加して、最後に水素ラジカルが抜けてカップリング化合物が生成するものと考えられる。また、含窒素有機化合物と遷移金属触媒とを組み合わせる場合、含窒素有機化合物と遷移金属(鉄など)とで配位化合物(錯体)が形成され、この配位化合物から電子がハロゲン化合物に移動して、上記と同様のラジカル反応が進行するものと考えられる。このように遷移金属触媒を用いた場合、遷移金属上のいくつかの配位子(塩素原子など)が、塩基又はその一部(例えば、アルコキシドのアルコキシ基など)と置換しているものと考えられる。
【0076】
なお、カップリング反応は、芳香族化合物の置換基の位置や種類などに応じて、比較的位置選択的に進行する場合がある。例えば、アルコキシ基などが置換した置換ベンゼンでは、オルト位及び/又はパラ位(特にオルト位)に、ハロゲン化不飽和化合物に対応する不飽和化合物が置換する(すなわち、芳香族化合物のオルト位及び/又はパラ位(特にオルト位)の水素原子とハロゲン化不飽和化合物のハロゲン原子とが脱ハロゲン化水素してカップリングする)場合が多いなどの傾向がある。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0078】
なお、実施例および比較例において使用した含窒素有機化合物は、以下の通りである。
【0079】
(A1)1,10−フェナントロリン(下記式(A1)で表される化合物)
【0080】
【化2】

【0081】
(A2)4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(下記式(A2)で表される化合物)
【0082】
【化3】

【0083】
(A3)2,2’:6’,2’’−ターピリジン(下記式(A3)で表される化合物)
【0084】
【化4】

【0085】
(A4)ビス(フェニルイミノ)アセナフテン(下記式(A4)で表される化合物)
【0086】
【化5】

【0087】
(A5)1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン(下記式(A5)で表される化合物)
【0088】
【化6】

【0089】
(A6)N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(下記式(A6)で表される化合物)
【0090】
【化7】

【0091】
(A7)N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(下記式(A7)で表される化合物)
【0092】
【化8】

【0093】
(実施例1)
乾燥機で十分に乾燥した耐圧ガラス管に、1,10−フェナントロリン45μmol(8.1mg)、tert−ブトキシナトリウム(又はナトリウムt−ブトキシド、NaOBuと略記する場合がある)0.45mmol(43.2mg)、有機ハロゲン化合物としてのp−ヨードトルエン0.225mmolおよび芳香族化合物としてのベンゼン2.4mL(27mmol、有機ハロゲン化合物の120倍モル)を加え、管内部を窒素ガスで置換した後、密栓し、内部温度を155℃に維持して攪拌し、3時間反応させた。その後、反応混合液を室温(25℃)まで冷却した後、1N塩酸(4mL)でクエンチし、ジエチルエーテルで3回抽出を行った。有機層を併せて、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で溶媒を濃縮し、PTLC(シリカゲル、ヘキサン−酢酸エチル)で精製し、生成物としてのカップリング化合物(ビアリール化合物)を収率61%(有機ハロゲン化合物ベースの収率、以下同じ)で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表1に、生成物の構造などをまとめて示す。なお、表において、芳香族化合物、塩基、含窒素化合物の割合(当量又はモル%)は、それぞれ、有機ハロゲン化合物に対する割合(当量又はモル%)を示す(以下の実施例において同じ)。また、収率などはガスクロマトグラフィー(GC)分析により決定した(以下の実施例において同じ)。
【0094】
(実施例2)
実施例1において、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン45μmolを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率70%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表1に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0095】
(実施例3)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、p−ヨードアニソール0.225mmolを使用し、反応時間を12時間に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率50%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表1に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0096】
(実施例4)
実施例3において、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン45μmolを使用し、反応時間を3時間に代えたこと以外は、実施例3と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率85%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表1に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0097】
(実施例5)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、1−ヨード−4−シアノベンゼン0.225mmolを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率41%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表1に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0098】
(実施例6)
実施例5において、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン22.5μmolを使用し、反応時間を6時間に代えたこと以外は、実施例5と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率57%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表1に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0099】
(実施例7)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、1−ヨード−4−トリフルオロメチルベンゼン0.225mmolを使用し、反応時間を12時間に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率42%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表1に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0100】
(実施例8)
実施例7において、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン22.5μmolを使用し、反応時間を6時間に代えたこと以外は、実施例7と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率80%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表2に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0101】
(実施例9)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、p−ブロモトルエン0.225mmolを使用し、反応時間を6時間に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率58%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表2に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0102】
(実施例10)
実施例7において、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン22.5μmolを使用し、反応時間を48時間に代えたこと以外は、実施例9と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率80%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表2に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0103】
(実施例11)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、1−ヨード−4−クロロベンゼン0.225mmolを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率66%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は98%であった。表2に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0104】
(実施例12)
実施例11において、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン45μmolを使用したこと以外は、実施例11と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率67%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表2に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0105】
(実施例13)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、o−ヨードトルエン0.225mmolを使用し、反応時間を12時間に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率40%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は93%であった。表2に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0106】
(実施例14)
実施例13において、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン45μmolを使用し、反応時間を24時間に代えたこと以外は、実施例13と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率62%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表2に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0107】
(実施例15)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、1−ヨードナフタレン0.225mmolを使用し、反応時間を24時間に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率57%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表3に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0108】
(実施例16)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、3−ヨードピリジン0.225mmolを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率56%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表3に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0109】
(実施例17)
実施例16において、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン22.5μmolを使用し、反応時間を6時間に代えたこと以外は、実施例16と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率75%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表3に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0110】
(実施例18)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、ヨードベンゼン0.5mmolを使用し、ベンゼン27mmolに代えてピラジン(1,4−ジアザベンゼン)を20mmol(有機ハロゲン化合物の40倍モル)使用し、tert−ブトキシナトリウムを0.45mmolに代えて1.0mmol使用し、1,10−フェナントロリンを45μmolに代えて0.1mmol使用し、反応温度を100℃に代え、反応時間を13時間に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率76%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表3に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0111】
(実施例19)
乾燥機で十分に乾燥した耐圧ガラス管に、2,2’:6’,2’’−ターピリジン22.5μmol、塩化鉄(II)(FeCl)22.5μmol、tert−ブトキシナトリウム0.45mmol、有機ハロゲン化合物としてのヨードベンゼン0.225mmolおよび芳香族化合物としてのピリジン2.25mmol(有機ハロゲン化合物の10倍モル)を加え、管内部を窒素ガスで置換した後、密栓し、内部温度を185℃に維持して攪拌し、24時間反応させた。その後、反応混合液を室温(25℃)まで冷却した後、1N塩酸(4mL)でクエンチし、ジエチルエーテルで3回抽出を行った。有機層を併せて、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で溶媒を濃縮し、PTLC(シリカゲル、ヘキサン−酢酸エチル)で精製し、生成物としてのカップリング化合物(ピリジンの2〜4位にフェニル基が置換した異性体混合物)を収率51%で得た。表4に、生成物の構造などをまとめて示す。なお、表において、遷移金属化合物の割合(モル%)は、有機ハロゲン化合物に対する割合(モル%)を示す(以下の実施例において同じ)。
【0112】
(実施例20)
実施例19において、ピリジン2.25mmolに代えてキノリン1.125mmolを使用したこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物(キノリンの2〜8位にフェニル基が置換した異性体混合物)を収率56%で得た。表4に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0113】
(実施例21)
実施例19において、ヨードベンゼン0.225mmolに代えてブロモベンゼン0.225mmolを使用し、ピリジン2.25mmolに代えて1,4−ジメトキシベンゼン1.125mmolを使用し、反応時間を72時間にしたこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物を収率24%で得た。表4に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0114】
(実施例22)
実施例19において、ヨードベンゼン0.225mmolに代えて1−ヨード−4−メトキシベンゼン0.225mmolを使用し、ピリジン2.25mmolに代えて1,4−ジメトキシベンゼン1.125mmolを使用したこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物を収率21%で得た。表4に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0115】
(実施例23)
実施例19において、ヨードベンゼン0.225mmolに代えて1−ヨード−4−シアノベンゼン0.225mmolを使用し、ピリジン2.25mmolに代えて1,4−ジメトキシベンゼン1.125mmolを使用したこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物を収率30%で得た。表5に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0116】
(実施例24)
実施例19において、ヨードベンゼン0.225mmolに代えて3−ヨードピリジン0.225mmolを使用し、ピリジン2.25mmolに代えて1,4−ジメトキシベンゼン1.125mmolを使用したこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物を収率18%で得た。表5に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0117】
(実施例25)
実施例19において、ピリジン2.25mmolに代えてベンゼン1.125mmolを使用し、反応温度を155℃に代えたこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物を収率8%で得た。表5に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0118】
(実施例26)
実施例19において、ピリジン2.25mmolに代えてアニソール1.125mmolを使用し、塩化鉄(II)を22.5μmolに代えて45μmol使用したこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物(アニソールのo,m又はp位にフェニル基が置換した異性体混合物)を収率37%で得た。表5に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0119】
(実施例27)
実施例19において、ピリジン2.25mmolに代えてシアノベンゼン1.125mmolを使用したこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物(シアノベンゼンのo,m又はp位にフェニル基が置換した異性体混合物)を収率30%で得た。表6に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0120】
(実施例28)
実施例19において、ピリジン2.25mmolに代えてビフェニル1.125mmolを使用したこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物(ビフェニルのo,m又はp位にフェニル基が置換した異性体混合物)を収率50%で得た。表6に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0121】
(実施例29)
実施例19において、ピリジン2.25mmolに代えてナフタレン1.125mmolを使用したこと以外は、実施例19と同様にして生成物としてのカップリング化合物(ナフタレンのα又はβ位にフェニル基が置換した異性体混合物)を収率48%で得た。表6に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0122】
(実施例30)
実施例1において、p−ヨードトルエン0.225mmolに代えて、m−ヨードアニソール0.225mmolを使用し、1,10−フェナントロリン45μmolに代えて、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン22.5μmolを使用し、反応時間を6時間に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率76%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は94%であった。表7に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0123】
(実施例31)
実施例30において、m−ヨードアニソール0.225mmolに代えて4−(n−ヘキシルオキシ)ヨードベンゼン0.225mmolを使用したこと以外は、実施例30と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率76%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表7に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0124】
(実施例32)
実施例30において、m−ヨードアニソール0.225mmolに代えて3−ヨードチオフェン0.225mmolを使用したこと以外は、実施例30と同様にして、生成物としてのカップリング化合物を収率69%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は100%であった。表7に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0125】
(実施例33)
実施例30において、m−ヨードアニソール0.225mmolに代えてp−ヨードトルエン0.225mmolを使用し、ベンゼン27mmolに代えてアニソール27mmolを使用し、反応温度を185℃に代えたこと以外は、実施例30と同様にして、生成物としてのカップリング化合物[o体(2−メトキシ−4’−メチルビフェニル)、m体(3−メトキシ−4’−メチルビフェニル)、p体(4−メトキシ−4’−メチルビフェニル)]を収率51%で得た。有機ハロゲン化合物の転化率は99%であった。表7に、生成物の構造などをまとめて示す。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
【表7】

【0133】
(実施例34〜43、比較例1〜3)
芳香族化合物としてのピリジン2.25mmolに代えて、1,4−ジメトキシベンゼン1.125mmol(ヨードベンゼンに対して5当量)を使用し、表8に示す割合で、表8に示す塩基(t−ブトキシナトリウム、ヨードベンゼンに対して0又は2当量)、含窒素化合物(ヨードベンゼンを100モル%とするとき、0、10又は20モル%)、および遷移金属化合物(ヨードベンゼンを100モル%とするとき、0又は10モル%)をそれぞれ使用したこと以外は、実施例19と同様にして、生成物としてのカップリング化合物(2,5−ジメトキシビフェニル)を得た。表8に、収率などをまとめて示す。なお、表8において、「Fe(OAc)」とは酢酸鉄(II)、「Fe(OTf)」とはFe(CFSO(トリフルオロメタンスルホン酸鉄(II))を示す。以下に、反応式を示す。
【0134】
【化9】

【0135】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明では、芳香族化合物と特定のハロゲン化合物(例えば、ハロアレーンなど)とが脱ハロゲン化水素したカップリング化合物を得ることができる。このようなカップリング化合物は、ハロゲン化合物の種類に応じて、種々の用途、例えば、各種化学品、薬品、医薬品などに利用できる。特に、ハロゲン化合物としてハロアレーンなどのハロゲン化芳香族化合物を用いると、芳香族化合物にさらに芳香族骨格を導入できるため、このようなカップリング化合物は、発光材料(例えば、有機EL材料など)、電解液用添加剤(例えば、リチウム二次電池の電解液用添加剤)、感光材料(又は感光性樹脂用添加剤)、感熱材料(例えば、顕色剤など)、液晶材料などに利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基、および含窒素有機化合物を含む触媒(ただし、含窒素有機化合物およびルテニウム化合物又はロジウム化合物で構成された触媒を除く)の存在下、芳香族化合物と、炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子にハロゲン原子を有するハロゲン化不飽和化合物とを反応させて、前記芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、前記不飽和化合物のハロゲン原子とで脱ハロゲン化水素したカップリング化合物を製造する方法。
【請求項2】
触媒が遷移金属触媒を含まない触媒であり、かつ含窒素有機化合物が、sp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物で構成されている請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
塩基がアルコキシドである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
塩基が第3級アルコールのアルコキシドである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
塩基がナトリウム第3級アルコキシドである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
含窒素有機化合物が、脂肪族第2級ポリアミン、脂肪族第3級ポリアミン、芳香族第3級ポリアミン、およびポリイミンから選択された少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
含窒素有機化合物が、芳香族第3級ポリアミンおよびポリイミンから選択された少なくとも1種のsp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物で構成されている請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
触媒が、さらに遷移金属触媒を含む請求項3〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
遷移金属触媒が、鉄化合物で構成されている請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
含窒素有機化合物と遷移金属触媒との割合が、前者/後者(モル比)=0.1/1〜10/1である請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
塩基および触媒の存在下、芳香族化合物と、炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子にハロゲン原子を有するハロゲン化不飽和化合物とを反応させて、前記芳香族化合物の芳香環に結合した水素原子と、前記不飽和化合物のハロゲン原子とで脱ハロゲン化水素したカップリング化合物を製造するための触媒であって、含窒素有機化合物を含む触媒(ただし、含窒素有機化合物およびルテニウム化合物又はロジウム化合物で構成された触媒を除く)。
【請求項12】
遷移金属触媒を含まず、かつ含窒素有機化合物が、sp窒素原子を複数有する含窒素有機化合物で構成されている請求項11記載の触媒。
【請求項13】
さらに遷移金属触媒を含む請求項11記載の触媒。

【公開番号】特開2011−79739(P2011−79739A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210117(P2009−210117)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1.刊行物名:日本化学会第89春季年会 2009年 講演予稿集II、発行所:社団法人日本化学会、発行日:平成21年3月13日 2.研究集会名:日本化学会第89春季年会、主催者名:社団法人 日本化学会、開催日:平成21年3月29日
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】