説明

カップ状容器のシート状蓋材

【課題】衛生機能を損なうことなく再封時の保持力に優れたカップ状容器のシート状蓋材の提供。
【解決手段】カップ状容器の開口縁にヒートシールされることにより該カップ状容器を密封すると共に、開口縁の外縁よりも外側に突出する開封用タブを有し、少なくとも遮光紙層、中間層及びシーラント層を有する積層構造であり、蓋材の表面には、遮光紙層を貫通するが中間層を貫通しない第1のハーフカット線が、開封用タブにおける開口縁の外縁に略相当する位置から該開口縁の内縁を越えて蓋材の中央側に向けて膨らむように形成され、蓋材の裏面には、シーラント層を貫通するが中間層を貫通しない第2のハーフカット線が、第1のハーフカット線と重ならずに近接し、且つ、第1のハーフカット線に沿うように、開封用タブにおける開口縁の外縁に略相当する位置から該開口縁の内縁を越えて蓋材の中央側に向けて膨らむように形成されているカップ状容器のシート状蓋材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱湯を注いで調理するラーメン等のインスタント食品用のカップ状容器のシート状蓋材に関し、詳しくは、衛生機能を損なわずに再封性に優れたカップ状容器のシート状蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状蓋材によって密封されているカップ状容器に収容されたラーメン等のインスタント食品は、シート状蓋材を途中まで剥離し、熱湯を注いだ後、剥離した蓋材を再封することにより所定時間の調理を行う。
【0003】
しかし、一旦開封されたシート状蓋材は、調理時の熱湯の蒸気により加熱されたり、一旦剥離された時の癖(カール)がついたりすること等の理由によって再封しにくい。このため、シート状蓋材を再封時にカップ状容器の開口縁に確実に保持できるようにすることが求められている。
【0004】
従来、このシート状蓋材の再封性に関し、特許文献1には、図6に示すように、カップ状容器200の開口縁201の外縁201aよりも外側に突出するシート状蓋材100の開封用タブ(摘まみ片)101の略中央部に、開口縁200の内側に向けて膨らむように切り込み線102を設けて切り込み片103を形成し、再封時、この切り込み片103を下方に折り倒し、その先端部103aを、開口縁201の下面の一部と係止させることで、再封時にシート状蓋材100をカップ状容器200の開口縁201に保持させることができるようにした点が開示されている。
【特許文献1】特開2001−48220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシート状蓋材100は、切り込み線102の両端が、カップ状容器200の開口縁201の外縁201aよりも外側にあり、この位置から開口縁201の内側に向けて膨らむように形成される。そして、切り込み片103の先端部103aは、開口縁201の外縁201aと内縁201bとの極めて狭小な幅の間に位置している。
【0006】
すなわち、切り込み線102はカップ状容器200の内部にかからないように形成されている。これは、カップ状容器200内に収容される食品の衛生上の問題から、開口縁201の内縁201bよりも更に内側に、シート状蓋材100を貫通するような切り込み線102を設けることができないためである。
【0007】
このため、切り込み片103は極めて小さい高さhでしか形成することができず、再封時に切り込み片103を下方に折り倒してカップ状容器200の開口縁201の外縁201aに係止させようとしても、すぐに開封してしまい、再封性が悪いという問題がある。
【0008】
これは、再封時の切り込み片103は、図7に示すように、折り線103b(切り込み線102の両端を結ぶ線)から開口縁201の外縁201aに向けて斜め下方に延びるように配置されるため、その先端部103aが開口縁201に対して点接触に近い状態で接触して係止するだけであり、その係止状態を保持させておく力に乏しいためである。
【0009】
切り込み片103の高さhを大きくするには、切り込み線102の両端を、開口縁201の外縁201aよりも更に外側に延長させるしかない。しかし、これでは切り込み片103の折り線103bの位置と開口縁201の外縁201aの位置との距離が更に大きく離れてしまう。一般にシート状蓋材100は剥離性を良好にするために可撓性を有する薄いシート状に形成されるため、切り込み片103が大きくなるとより撓み易くなり、切り込み片103の先端部103aで開口縁201との係止状態を保持させておく力は一層乏しくなって、再封性はむしろ劣ってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、衛生機能を損なうことなく、再封時の保持力に優れたカップ状容器のシート状蓋材を提供することを課題とする。
【0011】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0013】
請求項1記載の発明は、カップ状容器の開口縁にヒートシールされることにより該カップ状容器を密封すると共に、前記開口縁の外縁よりも外側に突出する開封用タブを有するシート状蓋材であって、前記蓋材は、少なくとも遮光紙層、中間層及びシーラント層を有する積層構造であり、前記蓋材の表面には、前記遮光紙層を貫通するが前記中間層を貫通しない第1のハーフカット線が、前記開封用タブにおける前記開口縁の外縁に略相当する位置から該開口縁の内縁を越えてシート状蓋材の中央側に向けて膨らむように形成され、前記蓋材の裏面には、前記シーラント層を貫通するが前記中間層を貫通しない第2のハーフカット線が、前記第1のハーフカット線と重ならずに近接し、且つ、前記第1のハーフカット線に沿うように、前記開封用タブにおける前記開口縁の外縁に略相当する位置から該開口縁の内縁を越えてシート状蓋材の中央側に向けて膨らむように形成されていることを特徴とするカップ状容器のシート状蓋材である。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記中間層は、樹脂フィルム層であることを特徴とする請求項1記載のカップ状容器のシート状蓋材である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記蓋材の裏面には、開封時に蓋材を折り起すための折り線となる直線状の第3のハーフカット線が、前記シーラント層を貫通するが前記中間層を貫通しないように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のカップ状容器のシート状蓋材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、衛生機能を損なうことなく、再封時の保持力に優れたカップ状容器のシート状蓋材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、カップ状容器を密封する本発明に係るシート状蓋材の開封前の平面図、図2は、本発明に係るシート状蓋材の断面図、図3(a)(b)は、シート状蓋材を有するカップ状容器の使用方法の説明図、図4は、シート状蓋材をカップ状容器に係止させた状態を示す平面図、図5は、図4の(v)−(v)線に沿う断面図である。
【0019】
シート状蓋材1は、平面視形状がカップ状容器2の開口縁21の形状とほぼ一致する略円形状を呈しており、その一部に、開口縁21の外縁21aよりも外側に膨らむように突出する開封用タブ11を有している。
【0020】
シート状蓋材1は、複数の層からなる積層構造を呈しており、図2に示すように、表層側から順に、少なくとも遮光紙層1a、中間層1b、シーラント層1cを有している。
【0021】
遮光紙層1aは、遮光性を有する紙材からなり、例えば片面コート紙や片面アート紙の裏面全体に、顔料を主成分とする遮光剤をコーティングする等の方法によって形成することができ、厚みは80〜120μm程度とすることができる。
【0022】
中間層1bには、例えばポリエチレンやポリプロピレン或いはポリエステル等の樹脂フィルムを15〜25μm程度の厚みに形成し、遮光紙層1aの裏面にラミネートすることによって形成することができる。
【0023】
このように中間層1bを樹脂フィルム層とすると、遮光紙層1aの強度向上とシーラント層1cの密着性を図ることができる。また、シート状蓋材1にアルミニウム等の金属層を含まないため、カップ食品製造時の金属探知機の使用や電子レンジを用いた調理も可能であり、更に、所定のガスバリヤー性を有することで、防湿性、食品保存性に優れ、衛生面でも優れる。
【0024】
シーラント層1cは、シート状蓋材1をカップ状容器2の開口縁21の上面にヒートシールすることによって貼着させ、カップ状容器2を密封する。シーラント層1cには、カップ状容器2の種類によって、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリエステル等の樹脂を、例えば20〜50μm程度の厚みでラミネートすることにより形成される。
【0025】
シート状蓋材1の表面には、第1のハーフカット線12が、開封用タブ11における開口縁21の外縁21aに略相当する位置から該開口縁21の内縁21bを越えてシート状蓋材1の中央側に向けて膨らむように形成されている。
【0026】
第1のハーフカット線12は、シート状蓋材1の表面から遮光紙層1aを貫通し、中間層1bの手前まで、あるいは、中間層1bの途中まで達するが、該中間層1bを貫通せず、シート状蓋材1の裏面まで貫通しない打ち抜き加工(ハーフカット)を施すことにより形成される。
【0027】
また、シート状蓋材1の裏面には、第2のハーフカット線13が、第1のハーフカット線12とは重ならずに近接し、且つ、第1のハーフカット線12に沿うように、開封用タブ11における開口縁21の外縁21aに略相当する位置から該開口縁21の内縁21bを越えてシート状蓋材1の中央側に向けて膨らむように形成されている。
【0028】
第2のハーフカット線13、シート状蓋材1の裏面からシーラント層1cを貫通し、中間層1bの手前まで、あるいは、中間層1bの途中まで達するが、該中間層1bを貫通せず、シート状蓋材1の表面まで貫通しない打ち抜き加工(ハーフカット)を施すことにより形成される。
【0029】
これにより、シート状蓋材1の開封用タブ11側には、後述する再封時にカップ状容器2の外縁21aにシート状蓋材1を係止させるための係止片14が形成される。
【0030】
これら第1のハーフカット線12及び第2のハーフカット線13は、平面視的に互いに重ならないことが重要であり、互いに一定の間隔Lを保って形成されている。これにより、第1のハーフカット線12と第2のハーフカット線13とはシート状蓋材1の表裏に連通しないため、シート状蓋材1によるカップ状容器2の密封性は保持される。すなわち、シート状蓋材1の未開封時(未使用時)、これら第1のハーフカット線12及び第2のハーフカット線13によって形成される係止片14は、シート状蓋材1から切り抜かれていない。
【0031】
特に、第1のハーフカット線12及び第2のハーフカット線13は、いずれも中間層1bを貫通しないため、密封時のシート状蓋材1の表裏での空気の連通は、中間層1bにおいて完全に遮断され、シート状蓋材1の衛生機能は何ら損なわれない。
【0032】
第1のハーフカット線12と第2のハーフカット線13との間隔Lは、狭すぎると、加工時に第1のハーフカット線12と第2のハーフカット線13とが互いに連通するおそれが高くなり、また、広すぎると、後述するように、これら第1のハーフカット線12と第2のハーフカット線13を切り破く際の破断性に劣るため、0.3〜1.0mm程度とすることが好ましい。
【0033】
第1のハーフカット線12及び第2のハーフカット線13の膨らみ具合の大きさは、係止片14がほぼ手指の先端、特に親指で押し開くことができる形状、及び面積で形成されるようにすると、後述するように、係止片14の折り倒し作業が楽に行なえる。
【0034】
シート状蓋材1の裏面には、略中央部よりも開封用タブ11とは反対側寄りに、直線状の第3のハーフカット線15が、シーラント層1cを貫通し、中間層1bの手前まで、あるいは、中間層1bの途中まで達するが、該中間層1bを貫通せず、シート状蓋材1の表面まで貫通しない程度に形成されている。この第3のハーフカット線15は、注湯のためにシート状蓋材1を開封する時に、開封したシート状蓋材1を折り起すための折り線となる。従って、図3(b)に示すように、注湯時に、シート状蓋材1をこの第3のハーフカット線15の位置まで剥離すれば、シート状蓋材1を折り起した状態が維持され、閉封方向に倒れ込むことがないため、注湯作業が容易となる。
【0035】
かかるシート状蓋材1は、カップ状容器2の開口縁21の上面にシーラント層1cによってヒートシールすることで、剥離可能にカップ状容器2を密封する。
【0036】
次に、このようなシート状蓋材1を有するカップ状容器2を調理する際の作業方法について説明する。
【0037】
まず、カップ状容器2全体を包装しているシュリンクフィルム(図示せず)を剥離した後、図3(a)に示すように、シート状蓋材1の表面において、第1のハーフカット線12及び第2のハーフカット線13によって区画される係止片14を、例えば親指によって下方に打ち抜き、カップ状容器2の内部に向けて折り倒す。
【0038】
次いで、図3(b)に示すように、開封用タブ11を摘まんでシート状蓋材1をハーフカット線15の位置まで開封する。これにより、カップ状容器1が大きく開口し、注湯口が形成される。
【0039】
注湯後は、シート状蓋材1を再び折り倒し、再封する。このとき、図4に示すように、係止片14をカップ状容器2の開口縁21の外縁21aの外側に位置させる。第1のハーフカット線12及び第2のハーフカット線13の各両端は、開口縁21の外縁21aに略相当する位置にあるため、係止片14の折り線14aは、図4及び図5に示すように、開口縁21の外縁21aに接するように形成される。従って、係止片14を下方にほぼ直角に折り倒すと、その係止片14の表面は、カップ状容器2の開口縁21の外縁21aに対してほぼ面接触する。
【0040】
また、係止片14を形成する第1のハーフカット線12及び第2のハーフカット線13は、カップ状容器2の開口縁21よりも内側に大きく膨らむように形成することができるため、係止片14の突出高さを大きくすることができ、開口縁21の外縁21aと面接触する部分の面積(係止片14の表面の面積)を大きく形成することができる。
【0041】
これにより、従来の点接触による問題を解消することができる。従って、係止片14は、カップ状容器1に対して強力な保持力を発揮し、シート状蓋材1の再封状態を良好に保持させることができるようになる。
【0042】
以上の説明では、第1のハーフカット線12及び第2のハーフカット線13により形成される係止片14は、略半円形状のものとしたが、これに限定されず、例えばUの字状、Vの字状、コの字状等であってもよい。
【0043】
なお、以上の説明では、中間層1bが1層であるものについて説明したが、2種以上の樹脂を用いて多層構成にしてもよい。
【0044】
また、以上の説明では、シート状蓋材1はアルミニウム層を含まない積層構造としたが、中間層1bを樹脂フィルム層に代えてアルミニウム層を用いるようにして本発明を改良することは当業者であれば容易であろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るシート状蓋材の開封前の平面図
【図2】本発明に係るシート状蓋材の断面図
【図3】(a)(b)は、シート状蓋材を有するカップ状容器の使用方法の説明図
【図4】シート状蓋材をカップ状容器に係止させた状態を示す平面図
【図5】図4の(v)−(v)線に沿う断面図
【図6】従来のシート状蓋材の開封前の平面図
【図7】従来のシート状蓋材の再封時の状態を示す部分断面図
【符号の説明】
【0046】
1:シート状蓋材
1a:遮光紙層
1b:中間層
1c:シーラント層
11:開封用タブ
12:第1のハーフカット線
13:第2のハーフカット線
14:係止片
14a:折り線
15:第3のハーフカット線
2:カップ状容器
21:開口縁
21a:外縁
21b:内縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状容器の開口縁にヒートシールされることにより該カップ状容器を密封すると共に、前記開口縁の外縁よりも外側に突出する開封用タブを有するシート状蓋材であって、
前記蓋材は、少なくとも遮光紙層、中間層及びシーラント層を有する積層構造であり、
前記蓋材の表面には、前記遮光紙層を貫通するが前記中間層を貫通しない第1のハーフカット線が、前記開封用タブにおける前記開口縁の外縁に略相当する位置から該開口縁の内縁を越えてシート状蓋材の中央側に向けて膨らむように形成され、
前記蓋材の裏面には、前記シーラント層を貫通するが前記中間層を貫通しない第2のハーフカット線が、前記第1のハーフカット線と重ならずに近接し、且つ、前記第1のハーフカット線に沿うように、前記開封用タブにおける前記開口縁の外縁に略相当する位置から該開口縁の内縁を越えてシート状蓋材の中央側に向けて膨らむように形成されていることを特徴とするカップ状容器のシート状蓋材。
【請求項2】
前記中間層は、樹脂フィルム層であることを特徴とする請求項1記載のカップ状容器のシート状蓋材。
【請求項3】
前記蓋材の裏面には、開封時に蓋材を折り起すための折り線となる直線状の第3のハーフカット線が、前記シーラント層を貫通するが前記中間層を貫通しないように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のカップ状容器のシート状蓋材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−131263(P2006−131263A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322226(P2004−322226)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(591121199)コーパックインターナショナル株式会社 (9)
【Fターム(参考)】