説明

カテーテル組立体

【課題】カテーテル内への血液の流入を確認した後、カテーテルを血管内の所定位置に容易に前進させることが可能な、カテーテル前進性に優れ、ユーザビリティー上の問題も解決できるカテーテル組立体を提供することにある。
【解決手段】カテーテル組立体1は、カテーテル2と、カテーテル2の基端側に固着されるカテーテルハブ3と、カテーテル内に挿通される針4と、針4の基端側に固着される針ハウジング5と、針ハウジング内に配置され、カテーテルハブ3の基端部と着脱可能に接続される針4の先端または全部を内部に収容する針シールド部11とを備え、カテーテルハブ3は、その外周面から突出するタブ34を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液等に用いられるカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に対して輸液等を行う際には、輸液ラインと接続されるカテーテル組立体を患者の血管に穿刺し、留置してこれを行う。
【0003】
従来、このようなカテーテル組立体としては、例えば、特許文献1には、カテーテルアセンブリと導入器針アセンブリとから構成されるアセンブリが記載されている。そして、カテーテルアセンブリは、中空のカテーテルと、カテーテルの基端に固着されたカテーテルハブとから構成されている。また、導入器針アセンブリは、カテーテル内に挿入される導入器針の基端に固着された針ハブと、使用後にカテーテルから抜去して廃棄される導入器針による誤刺を防止するために、カテーテルハブに取り外し可能に結合され、導入器針の刃先を作業者からシールドする針シールドとを含んで構成されている。
【0004】
また、特許文献2には、中空のカテーテルと、カテーテルの基端に固着されたカテーテルアダプタと、カテーテル内に挿入される針カニューレと、針カニューレの基端に固着された針ハブとから構成される医療用針アセンブリが記載されている。そして、医療用針アセンブリは、使用後にカテーテルから抜去して廃棄される針カニューレによる誤刺を防止するために、カテーテルアダプタと針ハブとの間に配置され、針カニューレの刃先を作業者からシールドする針シールドアセンブリを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3379645号公報
【特許文献2】特表2005−529719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カテーテル組立体においては、カテーテル内への血液の流入(フラッシュバック)を確認後、カテーテルを血管内の所定位置に留置するために、カテーテルのみを血管内へさらに前進させる手技を行う。
【0007】
特許文献1または特許文献2では、本来前進させるべきカテーテルハブまたはカーテルアダプタにタブがないため、カテーテルの前進性が悪いと共に、カテーテルハブの前進方法がわからず手技が中断したり、針シールドまたは針シールドアセンブリを前進させた指で固定したまま無理に導入器針または針カニューレの引抜きを行い、カテーテルが誤って血管から抜けてしまったりするというユーザビリティー上の問題がある。
【0008】
また、特許文献1に記載されたアセンブリ(カテーテル組立体)においては、針シールドとカテーテルハブとの間には直径方向の段差が形成されるため、カテーテルハブに指を引掛け難く、仮にカテーテルハブにタブを設けても、直径方向の段差によって、タブへの引掛りを十分取れず、カテーテル前進性を改善することができなかった。
【0009】
そして、特許文献2に記載された医療用針アセンブリ(カテーテル組立体)においても、針シールドアセンブリにタブが設けられているため、同様の理由でカテーテル前進性が悪いという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は、カテーテル内への血液の流入(フラッシュバック)を確認した後、カテーテルを血管内の所定位置に容易に前進させることが可能な、カテーテル前進性に優れ、ユーザビリティー上の問題も解決できるカテーテル組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係るカテーテル組立体は、中空のカテーテルと、前記カテーテルの基端側に固着され、前記カテーテル内と連通する流路を有するカテーテルハブと、前記カテーテル内に挿通される針と、前記針の基端側に固着される針ハウジングと、前記針ハウジング内に配置され、前記カテーテルハブの基端部と着脱可能に接続される前記針の先端または全部を内部に収容する針シールド部とを備えるカテーテル組立体であって、前記カテーテルハブは、その外周面から突出するタブを備えることを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、カテーテルハブの外周面から突出するタブを備えることよって、指がタブに引掛り易くなるため、カテーテルハブを先端側(血管側)に容易に前進させることが可能となる。また、針の抜去の際に針ハウジングが固定されることがないため、カテーテルが誤って血管から抜けることがない。
【0013】
本発明に係るカテーテル組立体は、前記針ハウジングは、その先端側において、前記タブと周方向の位置が同一となる位置に、外径が先端方向に向って漸減する傾斜部を備えることを特徴とする。
【0014】
前記構成によれば、針ハウジングの先端側に傾斜部を備えることによって、指がタブに引掛り易くなるため、カテーテルハブを先端側(血管側)に容易に前進させることが可能となる。また、針の抜去の際に針ハウジングが固定されることがないため、カテーテルが誤って血管から抜けることがない。
【0015】
本発明に係るカテーテル組立体は、前記針ハウジングは、その先端側において、前記タブと周方向の位置が同一となる位置に、前記針シールド部の一部が露出するように当該針ハウジングの一部が欠損する欠損部を備えることを特徴とする。
【0016】
前記構成によれば、針ハウジングの先端側に欠損部を備えることによって、指がタブに引掛り易くなるため、カテーテルハブを先端側(血管側)に容易に前進させることが可能となる。また、針の抜去の際に針ハウジングが固定されることがないため、カテーテルが誤って血管から抜けることがない。
【0017】
本発明に係るカテーテル組立体は、前記針シールド部が、前記カテーテルハブの基端部と着脱可能に接続する内筒と、前記内筒の外周側に配置され当該内筒を摺動可能に嵌合する外筒と、前記外筒の外周側に配置され当該外筒を摺動可能に嵌合し、前記針ハウジングの内周側に摺動可能に嵌合する中継管とから構成されることを特徴とする。
【0018】
前記構成によれば、針シールド部が、内筒、外筒および中継管とから構成されることによって、カテーテルハブから抜去された針が針シールド部内に確実に収容されるため、抜去された針の刃先による作業者への誤刺が防止される。
【0019】
本発明に係るカテーテル組立体は、前記カテーテルハブが、前記流路の途中に当該流路を遮断または開放にする弁機構をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
前記構成によれば、カテーテルハブが弁機構を備えることによって、カテーテルハブから針を抜去した際に、血管穿刺時にカテーテルハブ内に流入した血液がカテーテルハブから流出することないため、穿刺作業者への血液汚染が防止される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カテーテル内へのフラッシュバックを確認した後、カテーテルを血管内の所定位置に前進させることが容易な、カテーテル前進性に優れ、カテーテルから針を脱離させることが容易なユーザビリティーに優れたカテーテル組立体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るカテーテル組立体の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るカテーテル組立体の構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係るカテーテル組立体のカテーテル前進手技の様子を示す正面図である。
【図4】本発明に係るカテーテル組立体の針抜去後の様子を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るカテーテル組立体の針抜去時の様子を示す部分断面図である。
【図6】本発明に係るカテーテル組立体の針抜去時の様子を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係るカテーテル組立体を輸液に用いた際の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<カテーテル組立体>
本発明に係るカテーテル組立体の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、本発明において、「先端側」とは血管への穿刺側、「基端側」とは「先端側」の反対側で輸液等を行う際にコネクタ等の接続具を接続する側を言う。
【0024】
図1、図2に示すように、カテーテル組立体1は、カテーテル2と、カテーテルハブ3と、針4と、針ハウジング5と、針シールド部11とを備えるもので、カテーテルハブ3にタブ34を備えるものである。また、カテーテル組立体1は、針ハウジング5の先端側に傾斜部51aおよび欠損部51bの少なくとも一方を備えることが好ましい。以下、各構成について説明する。
【0025】
(カテーテル)
図1〜図5に示すように、カテーテル2は、中空のチューブから構成され、ある程度の可撓性を有するものが好ましく用いられる。カテーテル2の構成材料は、樹脂材料、特に、軟質樹脂材料が好適であり、その具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂またはこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、前記オレフィン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。また、カテーテル2の構成材料は、X線造影剤を配合して、造影機能を持たせた材料であってもよい。
【0026】
このようなカテーテル2は、その全部または一部が内部の視認性を有しているのが好ましい。すなわち、カテーテル2は、透明(無色透明)、着色透明または半透明の樹脂で構成されているのが好ましい。これにより、カテーテル組立体1で血管を穿刺した際、血液がカテーテル2の内腔21を通って後記する透明なカテーテルハブ3に流入する現象(フラッシュバック)を目視で確認することができる。
【0027】
(カテーテルハブ)
図1〜図5に示すように、カテーテルハブ3は、カテーテル2の基端側を、例えば、カシメ、融着(熱融着、高周波融着等)、接着剤による接着等の方法により、好ましくはステンレス鋼等で構成されたカシメピン10によるカシメで液密に固着するものである。
【0028】
カテーテルハブ3は、円筒状部材で構成され、その構成材料としてはポリプロピレン等のオレフィン樹脂が好ましく用いられ、フラシュバックの確認のために、透明樹脂が好ましく用いられる。また、カテーテルハブ3は、その内腔部が流路31として機能するものである。この流路31は、カテーテル2の内腔21と連通している。また、流路31には、弁機構6が収納、配置されていることが好ましい。このようにカテーテルハブ3の内腔部は、流路31の他に、弁機構6を収納する収納部としても利用される。
【0029】
カテーテルハブ3の基端32aには、後記する針シールド部11の先端側が着脱可能に接続される(図4参照)。また、図7に示すように、カテーテルハブ3の基端部32は、その壁部311の内径が基端方向に向かって漸増したテーパ状をなしている。このテーパ状をなす基端部32には、輸液の際、コネクタ200のコネクタ本体201を挿入することができる。基端部32にコネクタ本体201を挿入すると、流路31の壁部311とコネクタ本体201の外周部204とが密着し、これにより、液密性が維持される。また、カテーテルハブ3の基端部32の外周には、コネクタ200のロック部202の雌ネジと螺合する雄ネジが形成されている。このようにカテーテルハブ3の基端部32は、コネクタ200が接続される接続部となっている。
【0030】
カテーテルハブ3は、流路31の途中に、流路31を遮断または開放にする弁機構6を備えることが好ましい。
このような弁機構6を備えることによって、カテーテルハブ3から後記する針4を抜去した際に、カテーテルハブ3内に流入した血液がカテーテルハブ3から流出することがないため、穿刺作業者への血液汚染が防止される。
【0031】
(弁機構)
図2、図5、図7に示すように、弁機構6は、開閉可能な開閉部711を有する弁体7と、弁体7の基端側に配置され弁体7を開閉操作する操作部材8と、弁体7と操作部材8の間に設けられたシール部材9とから構成されることが好ましい。そして、このような弁機構6の場合には、後記するように、カテーテルハブ3に内周溝部36を軸方向に沿って形成する。
【0032】
弁体7は、流路31の途中に、具体的には、カテーテルハブ3に形成された内周溝部36の位置に、流路31を塞ぐように設置されている。そして、弁体7は、流路31に形成された段差部35に基端側から当接するように設けられている。弁体7は、有底筒状をなしており、底部には、弁体7の厚さ方向に貫通した開閉部711が形成されている。この開閉部711は、例えば、スリットで構成され、その形状としては、特に限定されず、例えば、一文字状、十文字状、Y字状(ト字状)等が挙げられる。また、弁体7は弾性材料で構成されている。弁体7を弾性部材で構成することにより、操作部材8による開閉操作がスムーズに行われと共に、自己閉塞性を有することができる。
【0033】
弁体7を構成する弾性材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の各種弾性材料が挙げられ、これらの弾性材料の中でも、特に、イソプレンゴムを用いるのが好ましい。弁体7の構成材料にイソプレンゴムを用いた場合には、圧縮永久歪みが小さく、製品の使用期限が長くなるという利点がある。
【0034】
本実施形態では、弁体7が配置される流路31に、具体的にはカテーテルハブ3の内周面に、その軸方向に沿って複数の内周溝部36が形成されている。このような内周溝部36を形成することにより、カテーテル2の内腔21から流路31へ流入する血液と弁体7との間に閉じ込められた空気を、複数の内周溝部36を介して弁体7よりも基端側へ逃がすことができる。これにより、流路31への血液の流入(フラッシュバック)を確実に行うことができるようになる。
そして、流路31に流入した血液が、内周溝部36を介して、弁体7の基端側に漏れないように、弁体7の基端側には、弁体7と操作部材8との間に弁体7と密着して設けられたシール部材9が配置されている。
【0035】
シール部材9は、後記する操作部材8が挿通される内腔を有する円筒部材で構成され、空気を通過させるが血液等の液体を通過させない作用を有する。このような作用を有するシール部材9としては、図示しないが、焼結体からなる構成、溝部または孔部が形成されたポリプロピレン等からなる成型品であって、成型品の基端側に疎水性フィルタを設けた構成、溝部または孔部が形成されたポリプロピレン等からなる成型品であって、溝部内または孔部内の少なくとも一部に水膨潤性ポリマーをコーティングした構成が挙げられる。
【0036】
コーティングされる水膨潤性ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタアクリレート共重合体等のアクリルアミド−アクリレート共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホネート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオシジド、ポリエチレンイミン等の水溶性合成高分子、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性半剛性高分子、タンニン、リグニン、アルギン酸、アラビアゴム、グアーガム、トラガントガム、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等の水溶性天然高分子等を挙げることができる。また、水膨潤性ポリマーは、熱、光、放射線等の外部エネルギーを与えられることによって架橋構造を構築したものであってもよい。
【0037】
操作部材8は、弁体7の開閉部711を開閉操作するポリプロピレン等からなる筒状体で構成され、その一方の開口部が、弁体7の開閉部711を通じて、カテーテルハブ3の基端側と先端側とを挿脱自在に設けられている。この操作部材8は、カテーテルハブ3の流路31の長手方向に沿って移動可能に支持されている。そのため、カテーテル組立体1では、操作部材8が弁体7よりも基端側にある第1の状態(図2、図5参照)と、その第1の状態から操作部材8が先端方向に移動して弁体7の開閉部711を貫通し、開閉部711から突出する第2の状態(図7参照)とを取り得る。
【0038】
第1の状態では、開閉部711が弁体7の自己閉塞性によって閉じたものとなっている。これにより、流路31は、遮断される。一方、第2の状態では、開閉部711が操作部材8の貫通によって強制的に開いたものとなっている。これにより、流路31は、弁機構6を介して、その先端側と基端側とが連通する。
【0039】
操作部材8の基端外周部には、その外径が拡径した基端拡径部84が形成されている。操作部材8が移動する際、基端拡径部84が流路31の壁部311を摺動することによって、その移動が安定して行なわれる。
【0040】
操作部材8の先端外周部には、その外径が拡径した、すなわち、その周方向に沿って突出した2つの先端拡径部(突部)81aおよび81bが形成されている。これらの先端拡径部81aおよび81bのうちの先端拡径部81bは、第2の状態(図7参照)のときに弁体7の開閉部71に係合する係合部として機能する。先端拡径部81bが弁体7の開閉部71に係合することにより、操作部材8が不本意に基端方向に移動するのが防止され、第2の状態が確実に維持される。
【0041】
また、先端拡径部81aおよび81bは、それぞれ、テーパ状をなしている。これにより、操作部材8が弁体7の開閉部711を貫通する際、先端拡径部81aおよび81bがこの順に開閉部711を外方に向かって確実に押し広げることができ、よって、その貫通が容易に行なわれる。そして、操作部材8の開閉部711を貫通した部分(先端拡径部81aおよび81b)が、開閉部711から突出する。
【0042】
なお、弁機構6の構成は、前記構成に限定されるものではなく、カテーテルハブ3の流路31を遮断または開放する作用を有する構成であれば用いることができる。例えば、弁機構6は、弁体と操作部材の構成、外周面に溝部が形成された弁体と操作部材の構成、または、外周面に水膨潤性高分子でコーティングされた溝部が形成された弁体と操作部材の構成であってもよい。
【0043】
カテーテルハブ3は、タブ34を備える。
このようなタブ34を備えることによって、フラッシュバック確認後、タブ34に指を引掛けてカテーテル2のみを血管内の所定位置に前進させることができる(図3参照)。
【0044】
(タブ)
図1〜図5に示すように、タブ34は、カテーテルハブ3の外周面33から突出する凸部である。そして、タブ34の形状は、カテーテル2の前進手技の際に指が引掛る形状であれば特に限定されるものではないが、板状の形態であることが好ましい。また、タブ34は、先端側または基端側に傾斜したものであってもよい。
【0045】
図4、図7に示すように、タブ34の高さHは、タブ34に引掛けた指でカテーテルハブ3(カテーテル2)を前進させることができれば特に限定されるものではない。しかしながら、輸液の際にはカテーテルハブ3をコネクタ200と共に粘着テープ等で皮膚に固定するため、タブ34の高さHは、固定の妨げにならないように、コネクタ200の外径D、具体的にはコネクタ200のロック部202の外径Dを超えない高さであることが好ましい。
【0046】
図4に示すように、カテーテルハブ3の外周面33におけるタブ34の形成位置Lは、タブ34に引掛けた指でカテーテル2を前進させることができれば特に限定されるものではないが、カテーテル2の前進手技が容易となるカテーテルハブ3の基端32aから先端側に7〜12mm離れた位置に形成されることが好ましい。
【0047】
(針)
図1〜図5に示すように、針4は、カテーテル2内に挿通されるもので、その先端に鋭利な針先を有している。そして、針4の長さは、カテーテル2内に挿通されたとき、少なくとも針先がカテーテル2の先端から突出する程度の長さとされる。そして、この針先により、生体表面を穿刺することができる。針4は、中実針または中空針のいずれでもよい。針4の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料が挙げられる。
【0048】
(針ハウジング)
図1〜図4に示すように、針ハウジング5は、円筒状部材で構成され、針4の基端側に固着されるものである。そして、針ハウジング5は、円筒状のハウジング部51と、その内部の基端側に固定された針4の基端部を固着する針ハブ部52とを備える。また、ハウジング部51の内部の先端側には、後記する針シールド部11が収容される。そして、針ハブ部52は、針4の基端側を、例えば、カシメ、融着(熱融着、高周波融着等)、接着剤による接着等の方法により液密に固着するものである。なお、針ハウジング5は、針ハブ部52の基端側にエアーフィルタ(図示せず)を備えてもよい。
【0049】
このようなハウジング部51および針ハブ部52の構成材料としては、特に限定されず、それぞれ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル等の各種樹脂材料が挙げられる。また、ハウジング部51および針ハブ部52は、血管穿刺時の針4からの血液流入が確認できることから、透明樹脂材料で構成することが好ましい。
【0050】
図3に示すように、針ハウジング5は、その先端側に、具体的にハウジング部51の先端側に、タブ34と周方向の位置が同一となる位置に、外径が先端方向に向って漸減する傾斜部51a、および、後記する針シールド部11の一部が露出するようにハウジング部51の一部が欠損する欠損部51bの少なくとも一方を備えることが好ましい。このような傾斜部51aおよび欠損部51bの少なくとも一方を備えることによって、ハウジング部51の先端側とカテーテルハブ3の基端側との間に形成される段差が小さくなる。その結果、カテーテル2の前進手技の際に、カテーテルハブ3に備えられたタブ34に指を引掛けて、カテーテル2のみを血管の所定位置まで前進させることが容易となる。
【0051】
傾斜部51aの傾斜角度θは、10〜70度が好ましい。しかしながら、傾斜部51aの傾斜角度θは、カテーテル2の前進手技の際に、カテーテルハブ3に備えられたタブ34に指を引掛けて、カテーテル2のみを血管の所定位置まで容易に前進させることが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0052】
欠損部51bの大きさは、ハウジング部51の長手方向の長さAが、ハウジング部51の全長に対して5〜30%、ハウジング部51の径方向の深さBが、ハウジング部51の外径に対して20〜50%であることが好ましい。しかしながら、欠損部51bの大きさは、カテーテル2の前進手技の際に、カテーテルハブ3に備えられたタブ34に指を引掛けて、カテーテル2のみを血管の所定位置まで容易に前進させることが可能であれば、特に限定されるものではない。
【0053】
傾斜部51aおよび欠損部51bの形成位置と、タブ34の形成位置とを周方向で同一とするためには、針ハウジング5の先端側の形状を、カテーテルハブ3の基端側の形状に合わせることが好ましい。具体的には、本発明においては、針ハウジング5に収容される外筒13と、内筒12が接続されるカテーテルハブの基端32a(基端部32)の底面形状を同一にしている(図4、図5参照)。
【0054】
(針シールド部)
図2、図4〜図6に示すように、針シールド部11は、針ハウジング5内に配置され、カテーテルハブ3の基端32a(基端部32)と着脱可能に接続され、脱離時にその内部に針4の先端または全部を収容する円筒状部材で構成される。この針シールド部11によって、カテーテルハブ3(カテーテル2)から抜去された針4の針先が製品外に露出されることがなくなるため、作業者への誤刺が防止される。そして、針シールド部11は、内筒12と、外筒13と、中継管14で構成される三重管構造にすることでコンパクトな大きさにすることができる。
【0055】
内筒12は、針4を内部に収容する円筒状部材で構成され、その先端側でカテーテルハブ3の基端32a(基端部32)と着脱可能に接続するものである。具体的には、内筒12は、その先端側には、カテーテルハブ3の基端部32の内周側、具体的には壁部311と嵌合する先端部12cと、基端32aの外周側と係合する係合腕12dを有する。この先端部12cと係合腕12dによって、内筒12がカテーテルハブ3へ着脱可能に接続される。
【0056】
また、内筒12は、その内部に板バネ等で構成されるシャッタ12bを有する。このシャッタ12bを有することによって、カテーテルハブ3(カテーテル2)から抜去された針4が先端側に移動して、針先が内筒外に露出されることがなくなる。さらに、内筒12は、後記する外筒13の係止部13aに係合する係合部12aを有する。この係合部12aを有することによって、針4が完全に内筒内に収容される前に、内筒12がカテーテルハブ3から脱離することが防止されるため、針4の針先による誤刺がさらに防止される。
【0057】
すなわち、まず、針4が基端側に後退すると、シャッタ12bが開いて内筒12の内腔を閉塞する(図5参照)。次に、針4が基端側にさらに後退して、針4が完全に内筒内に収容されると、係合部12aと係止部13aの係合が解除されて、内筒12からの外筒13の後退が可能となる(図6参照)。そして、外筒13の後退によって、内筒12の係合腕12dが外側に開く。次に、内筒12が後退することによって、先端部12cおよび係合腕12dのカテーテルハブ3との嵌合、係合が解除されて、内筒12がカテーテルハブ3から脱離する(図4参照)。
【0058】
外筒13は、内筒12の外周側に配置される円筒状部材から構成され、内筒12を内部に収容するものである。そして、外筒13は、その先端側の内周面に、内筒12の係合部12aを係止する係止部13aを有すると共に、凸部13bを有して、内筒12を摺動可能に嵌合している。内筒12が摺動可能であることによって、針シールド部11(ハウジング部51)の内部に針4を全長にわたって収容することが可能となる。
【0059】
中継管14は、外筒13の外周側に配置される円筒状部材から構成され、外筒13を内部に収容するものである。そして、中継管14は、その先端側の内周面に凸部14aを有して、外筒13を摺動可能に嵌合すると共に、ハウジング部51の内周側に摺動可能に嵌合している。外筒13が摺動可能であることによって、針シールド部11(ハウジング部51)の内部に針4を全長にわたって収容することが可能となる。
【0060】
なお、針シールド部11は、前記した三重管構造のものに限定されず、針先を内部に収容して作業者への誤刺が防止できる構造であれば、本発明における針シールド部11として用いることが可能である。
【0061】
<カテーテル組立体の使用方法>
次に、カテーテル組立体1の使用方法について説明する。なお、カテーテル組立体1の構成については、適宜図面を参照して説明する。
【0062】
[1]図1に示すように、プロテクタ100を外し、カテーテル組立体1を把持して、患者の血管を穿刺する。図2に示すように、カテーテル2により血管が確保されると、血圧により血液が、カテーテル2の内腔21を介して流路31へ流入(フラッシュバック)するので、視認性を有するカテーテル2またはカテーテルハブ3において、フラッシュバックを確認する。
【0063】
[2]図3に示すように、フラッシュバック確認後、カテーテルハブ3のタブ34に指を引掛けて、カテーテルハブ3のみを先端側に微小距離だけ前進させる。これにより、カテーテル2が血管内の所定位置に留置される。
【0064】
[3]図4に示すように、カテーテル2を所定位置に留置後、カテーテル2またはカテーテルハブ3を一方の手で固定し、他方の手で針ハウジング5を把持して基端側に後退させる。これにより、カテーテルハブ3から針シールド部11(内筒12)が脱離して、針4がカテーテル2から抜去される。このとき、抜去された針4は、針シールド部11(針ハウジング5)の内部に収容される。そして、針4が収容された針ハウジング5は不要となるため、廃棄処分に供す。
【0065】
[4]次に、カテーテルハブ3を粘着テープ等により皮膚に固定する。そして、図7に示すように、カテーテルハブ3にコネクタ200を接続する。この接続により、操作部材8は、コネクタ200のコネクタ本体201で押圧されて先端方向に移動して、弁体7を貫通する。これにより、流路31とコネクタ本体内とが操作部材内を介して連通する。なお、コネクタ200には、輸液剤が充填された輸液バッグが予め接続されている。
【0066】
[5]次に、輸液バッグから輸液剤の供給を開始する。これにより、コネクタ本体内、操作部材内を順に通過した輸液剤は、操作部材8の先端開口から流出し、流路全体が輸液剤で満たされる(プライミングされる)こととなる。
【符号の説明】
【0067】
1 カテーテル組立体
2 カテーテル
3 カテーテルハブ
34 タブ
4 針
5 針ハウジング
51a 傾斜部
51b 欠損部
11 針シールド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のカテーテルと、
前記カテーテルの基端側に固着され、前記カテーテル内と連通する流路を有するカテーテルハブと、
前記カテーテル内に挿通される針と、
前記針の基端側に固着される針ハウジングと、
前記針ハウジング内に配置され、前記カテーテルハブの基端部と着脱可能に接続される前記針の先端または全部を内部に収容する針シールド部とを備えるカテーテル組立体であって、
前記カテーテルハブは、その外周面から突出するタブを備えることを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項2】
前記針ハウジングは、その先端側において、前記タブと周方向の位置が同一となる位置に、外径が先端方向に向って漸減する傾斜部を備えることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル組立体。
【請求項3】
前記針ハウジングは、その先端側において、前記タブと周方向の位置が同一となる位置に、前記針シールド部の一部が露出するように当該針ハウジングの一部が欠損する欠損部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカテーテル組立体。
【請求項4】
前記針シールド部は、前記カテーテルハブの基端部と着脱可能に接続する内筒と、前記内筒の外周側に配置され当該内筒を摺動可能に嵌合する外筒と、前記外筒の外周側に配置され当該外筒を摺動可能に嵌合し、前記針ハウジングの内周側に摺動可能に嵌合する中継管とから構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のカテーテル組立体。
【請求項5】
前記カテーテルハブは、前記流路の途中に、前記流路を遮断または開放にする弁機構をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のカテーテル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−200425(P2012−200425A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68109(P2011−68109)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】