説明

カテーテル組立体

【課題】屈曲部が設けられたカテーテルと、このカテーテルに挿入されるダイレータからなるカテーテル組立体において、カテーテルの開口部とダイレータの突出部との間に段差が生じることを防止し、カテーテルのスムーズな体内への挿入が可能なカテーテル組立体を提供する。
【解決手段】カテーテル20は、先端部分に第1屈曲部28を有する。ダイレータ40は、ダイレータ40がカテーテル20に挿入された際に、先端側の少なくとも一部がカテーテル20の先端から突出する突出部43と、突出部43より後端側のカテーテル20の第1屈曲部28に対応する位置に配置され、且つ、突出部43よりも低い曲げ剛性を有する低剛性部と、低剛性部より後端側に位置し、且つ、低剛性部よりも高い曲げ剛性を有する高剛性部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレータとカテーテルからなるカテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、診断や治療に用いられるカテーテルを血管等に挿入する場合には、シースと呼ばれるカテーテルを挿入する補助具が用いられる(例えば、下記特許文献1、2、3参照)。シースはカテーテルを血管に挿入する前に、予め血管に挿入される。そして、このシースにカテーテルが挿入されることにより、カテーテルは血管に挿入される。
このような手技では、シースの外径の分だけ血管に大きな孔を開ける必要があるため、最近では、シースを用いることなく、カテーテルを血管に挿入できるカテーテル組立体が提案されている(例えば、下記特許文献4、5参照)。
【0003】
このようなカテーテル組立体は、体内で診断や治療を行うためのガイディングカテーテル等の診断治療用カテーテル(以下、単にカテーテルと言う)と、このカテーテル内に挿入されるダイレータからなる。ダイレータは、カテーテルの先端から突出して、血管内へ進入する突出部を有している。このような構成によって、カテーテル組立体は、ダイレータの突出部から血管内に進入し、ダイレータと共にカテーテルを血管内に誘導するようになっている。所定の長さだけカテーテル組立体が体内に挿入されるとダイレータはカテーテルを残して体外へ引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−225035号公報
【特許文献2】特開平6−335531号公報
【特許文献3】特開平6−178814号公報
【特許文献4】特開2002−143318号公報
【特許文献5】特開2002−143319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8に示すように、このようなカテーテル組立体を構成するカテーテル1は、体内での診断、治療目的に適するように屈曲部2を有する各種の形状がつけられているものがある。一方、ダイレータ5は、診断、治療時に使用されるものではないため、通常、略直線状の管状部材である。また、ダイレータ5は、血管に進入するために、カテーテル1の先端から突出する突出部5aを有している。突出部5aを構成する樹脂は、カテーテル1を構成する樹脂より硬い樹脂を用いて形成され、剛性がカテーテル1よりも高くなっている。
【0006】
このため、屈曲部2が設けられたカテーテル1にダイレータ5を挿入した場合、カテーテル1の屈曲部2によって屈曲したダイレータ5は、二点鎖線で示すように直線形状に戻ろうして、反発力が発生する。この結果、カテーテル1の先端の開口部において、ダイレータ5の突出部5aの中心軸は、カテーテル1の開口部の中心軸から偏倚し、カテーテル1の開口部とダイレータ5の突出部5aとの間に段差Sが生じる場合がある。
このように段差Sが生じると、カテーテル1の先端がダイレータ5の突出部5aに沿って体内に進入することを阻害する場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、屈曲部が設けられたカテーテルと、このカテーテルに挿入されるダイレータからなるカテーテル組立体において、カテーテルの開口部とダイレータの突出部との間に段差が生じることを防止し、カテーテルのスムーズな体内への挿入が可能なカテーテル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明では、上記の課題は以下の手段により解決がなされる。
【0009】
<1>管状部材からなるカテーテルと、前記カテーテル内に挿入されるダイレータとからなるカテーテル組立体であって、前記カテーテルは、先端部分に少なくとも1つの屈曲部を有し、前記ダイレータは、前記ダイレータが前記カテーテルに挿入された際に、先端側の少なくとも一部が前記カテーテルの先端から突出する突出部と、前記突出部より後端側の前記カテーテルの屈曲部に対応する位置に配置され、且つ、前記突出部よりも低い曲げ剛性を有する低剛性部と、前記低剛性部より後端側に位置し、且つ、前記低剛性部よりも高い曲げ剛性を有する高剛性部とを備えることを特徴とするカテーテル組立体。
【0010】
<2>前記カテーテルは、複数の屈曲部を有し、前記ダイレータの前記低剛性部は、前記カテーテルの前記複数の屈曲部の内の最も先端側に位置する第1屈曲部に対応する位置に配置され、前記ダイレータの前記高剛性部は、前記カテーテルの前記第1屈曲部よりも後端側に位置する第2屈曲部に対応する位置に配置されていることを特徴とする態様1に記載のカテーテル組立体。
【0011】
<3>前記低剛性部の外径は、前記突出部の外径及び前記高剛性部の外径の何れの外径よりも小さいことを特徴とする態様1又は態様2に記載のカテーテル組立体。
【発明の効果】
【0012】
<1>本発明のカテーテル組立体は、ダイレータが、突出部より後端側のカテーテルの屈曲部に対応する位置に配置され、且つ、突出部よりも低い曲げ剛性を有する低剛性部を有している。このため、ダイレータが元の形状に戻ろうとする反発力は弱められ、ダイレータは、カテーテルの屈曲部に沿って屈曲する。従って、カテーテルの開口部の中心軸に対して、ダイレータの突出部の中心軸が偏倚することが可及的に防止される。この結果、カテーテルの先端とダイレータの突出部との間に段差が生じることが防止されるため、カテーテル組立体の体内への侵入をスムーズに行うことができる。
【0013】
また、本発明のカテーテル組立体におけるダイレータの高剛性部は、低剛性部より後端側に位置し、且つ、低剛性部よりも高い曲げ剛性を有している。このため、カテーテルの屈曲部より後端側は、カテーテルの内部に挿入されたダイレータの高剛性部によってカテーテルの直線性が高められるため、カテーテル組立体の体内への進入をスムーズに行うことができる。また、カテーテル組立体を体内へ挿入した後も、カテーテル組立体をスムーズに体内の目的部位に向かって進行させることができる。
【0014】
<2>本発明の態様2では、ダイレータの低剛性部は、カテーテルの複数の屈曲部の内の最も先端側に位置する第1屈曲部に対応する位置に配置されている。このため、カテーテルの先端に最も近い屈曲部において、ダイレータが元の形状に戻ろうとする反発力が弱められ、ダイレータが、カテーテルの屈曲部に沿って屈曲する。従って、カテーテルの開口部の中心軸に対して、ダイレータの突出部の中心軸が偏倚することが一層効果的に防止される。この結果、カテーテルの先端とダイレータの突出部との間に段差が生じることが効果的に防止されるため、カテーテル組立体の体内への侵入をスムーズに行うことができる。
【0015】
また、本発明の態様2では、ダイレータの高剛性部は、カテーテルの第1屈曲部よりも後端側に位置する第2屈曲部に対応する位置に配置されている。このため、後端側に位置する屈曲部の屈曲は、ダイレータの高剛性部が元の形状に戻ろうとする反発力によって、屈曲が緩和され、直線状に近づくため、カテーテル組立体の体内への侵入をスムーズに行うことができる。また、体内へ挿入した後も、スムーズにカテーテル組立体を体内で目的部位に向かって進行させることができる。
【0016】
<3>本発明の態様3では、ダイレータの低剛性部の外径を、突出部の外径及び高剛性部の外径の何れの外径よりも小さくしている。このため、ダイレータを同一材料によって形成し、容易にダイレータの突出部、低剛性部、及び高剛性部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施の形態のカテーテル組立体のカテーテルの全体図である。
【図2】図2は、本実施の形態のカテーテル組立体のダイレータの全体図である。
【図3】図3は、本実施の形態のカテーテル組立体において、カテーテルにダイレータを装着した状態を示した図である。
【図4】図4は、本実施の形態のダイレータとカテーテルの先端部分の拡大図である。
【図5】図5は、本実施の形態の作用を説明するための図である。
【図6】図6は、カテーテル組立体の第2の実施の形態を示した図である。
【図7】図7は、カテーテル組立体の第3の実施の形態を示した図である。
【図8】図8は、従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態のカテーテル組立体を図1〜図5を参照しつつ説明する。
図1から図4において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される後端側(手元側、基端側)である。
カテーテル組立体10は、全長が約800mm〜約1500mm程度のものである。
【0019】
カテーテル組立体10は、図3に示す様に、診断治療用カテーテルであるカテーテル20とダイレータ40とからなる。図1はカテーテル20を示し、図2はダイレータ40を示している。カテーテル20は、例えば、心臓の血管の狭窄部等の治療のためのバルーンカテーテル等を案内するためのガイディングカテーテルとして用いられるものである。図3は、ダイレータ40をカテーテル20に挿入した状態を示している。図4は、ダイレータ40がカテーテル20に挿入された際のダイレータ40の構成要素とカテーテル20の構成要素の位置関係を示したものである。図4(B)に示されるカテーテル20は、理解を容易にするために、後述する2つの屈曲部28、30を真っ直ぐに伸ばした状態で表現されている。また、理解を容易にするために、一部の要素の寸法は誇張されている。
【0020】
カテーテル20は、内部にルーメン22を有する断面が円形の管状の部材である。カテーテル20は、主にカテーテルシャフト21、チップ33、及びコネクタ35からなる。
カテーテルシャフト21は、図4(B)に示すように、ルーメン22の大半を構成する樹脂からなる内層23の外表面に編組24が配置され、さらに編組24の外表面に樹脂からなる外層25が配置された構成からなる。カテーテルシャフト21の内層及び外層を構成する樹脂は、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等が用いられる。編組24は、ステンレス等の金属製の線材が網目状に巻回された公知の構成からなる。
【0021】
カテーテル20は本実施の形態の場合は、上述した通り、ガイディングカテーテルであり、図1では一例として、左冠状動脈用のジャドキンス(Judkins)型を示している。しかし、カテーテル20の形状は、左冠状動脈用のジャドキンス型に限定されるものでは無く、右冠状動脈用のジャドキンス型、左又は右冠状動脈用のアンプラッツ(Amplatz)型等、少なくとも1つの屈曲部を有するものであれば特に限定されない。
【0022】
本実施の形態の左冠状動脈用のジャドキンス型を有するカテーテルシャフト21は、2つの屈曲部を有している。従って、カテーテルシャフト21は、先端から順に、第1直線シャフト部27、第1屈曲部28、第2直線シャフト部29、第2屈曲部30、本体シャフト部31からなる。
【0023】
第1直線シャフト部27は、後述するチップ33の後方に設けられた直線状の部分である。
【0024】
先端側の第1屈曲部28は、第1直線シャフト部27の後方に設けられ、C1で示す範囲に亘って屈曲している。範囲C1の後端は、例えば、カテーテル20の先端から約30mmの範囲内に設定されている。カテーテル20内にダイレータ40が挿入されていない状態において、第1屈曲部28は、カテーテルシャフト21を約90度に湾曲させている。
【0025】
第2直線シャフト部29は、第1屈曲部28の後方に設けられた直線状の部分である。
【0026】
第2屈曲部30は、第2直線シャフト部29の後方に設けられ、C2で示す範囲に亘って屈曲している。カテーテル20内にダイレータ40が挿入されていない状態において、第2屈曲部30は、カテーテルシャフト21を約180度に湾曲させている。
【0027】
本体シャフト部31は、第2屈曲部30より後方のカテーテルシャフト21の残りの部分であり、略直線状の部分である。
【0028】
チップ33は、カテーテルシャフト21の第1直線シャフト部27の先端に取り付けられている。チップ33は、ルーメン22の先端部分を構成する孔部を有する円筒状の部材であり、先端にルーメン22の開口部22aを有する。チップ33の軸方向の長さは約3.0mmである。チップ33は、カテーテルシャフト21を構成する樹脂材料と同様の樹脂材料で構成されているが、通常、カテーテルシャフト21の樹脂よりも柔軟な樹脂が用いられている。また、チップ33を構成する樹脂は、放射線透視下においてカテーテル20の位置を確認するために、放射線不透過性の材料を含有している。
チップ33の先端には、後述するダイレータ40の突出部43との段差を可及的に小さくするために、先端に向かって先細りとなるテーパ部33aが設けられている。
【0029】
尚、カテーテル20のカテーテルシャフト21とチップ33の外表面には、親水性コーティングが施されている。
【0030】
コネクタ35は、カテーテルシャフト21の後端に取り付けられている。コネクタ35は、内部にカテーテルシャフト21のルーメン22に連通する孔部を有している。コネクタ35の後端には、後述するダイレータ40のコネクタ60の先端取付部61と螺合する接続部36を有する。
【0031】
ダイレータ40は、内部にルーメン42を有する円筒状の部材である。ダイレータ40は、主にダイレータシャフト41とコネクタ60からなる。図3に示すように、ダイレータ40の全長は、ダイレータ40がカテーテル20に挿入され、ダイレータ40のコネクタ60をカテーテル20のコネクタ35に接続した状態において(以下、装着された状態と呼ぶ)、ダイレータ40の先端がカテーテル20の先端から突出するように、所定の長さだけカテーテル20の全長よりも長く設定されている。
【0032】
ダイレータシャフト41は、先端から順に、突出部43、低剛性部47、及び高剛性部49からなる。ダイレータシャフト41は、単一の樹脂材料からなる。樹脂は、例えば、PTFE等のフッ素系樹脂の他、ポリアミド、ポリエステル等が用いられる。
【0033】
突出部43は、ダイレータシャフト41の先端部分である。突出部43は、先端側に設けられたテーパ部43aと、テーパ部43aの後端側に設けられた直線部43bからなる。
【0034】
テーパ部43aは、ダイレータ40がカテーテル20に装着された状態において、カテーテル20の先端から突出する部分である。テーパ部43aは、先端に向かって外径が小さくなるよう傾斜した形状を有する。テーパ部43aの先端には、ルーメン42が開口する開口部42aが形成されている。この構成によって、テーパ部43aは、カテーテル組立10が体内に侵入することを容易にするものである。テーパ部43aの軸方向長さL1は、本実施の形態の場合、約20mm〜約25mmに設定されている。
【0035】
直線部43bは、外径が一定の円筒状の部分である。直線部43bの先端側の軸方向長さL2の部分は、ダイレータ40がカテーテル20に装着された状態において、カテーテル20の先端から突出するようになっている。この軸方向長さL2は、約30mm以下に設定されており、本実施の形態の場合は、約5.0mmである。直線部43bの外径D1は、カテーテル20のチップ33の先端との段差を可及的に小さくするために、ダイレータ40のカテーテル20のルーメン22への挿入と抜去を許容する範囲で可及的に大きく設定されている。
【0036】
上記長さL2以外の直線部43bの後端側の部分は、ダイレータ40がカテーテル20に装着された状態において、カテーテル20の内部に位置するようになっている。直線部43bの後端には、直線部43bが低剛性部47と滑らかに接続するように後端側に向かって細径化されたテーパ状の遷移部43cが形成されている。
【0037】
低剛性部47は、ダイレータ40がカテーテル20に装着された状態において、カテーテル20の第1屈曲部28の範囲C1に対応する部分である。低剛性部47は、ダイレータ40が装着された際に、ダイレータ40が第1屈曲部28の屈曲に反して、真っ直ぐに戻ろうとして、結果的に突出部43の中心軸を、カテーテル20の開口部22aの中心軸から偏倚さないように、曲げ剛性が低くされた部分である。このため、低剛性部47の軸方向の長さDC1は、第1屈曲部28の範囲C1の長さ以上であることが好ましい。本実施の形態では、低剛性部47の軸方向の長さDC1は、第1屈曲部28の範囲C1の長さと略同じ長さとなっている。
【0038】
また、低剛性部47の曲げ剛性を小さくするために、低剛性部47の外径D2は、突出部43の直線部43bの外径D1よりも小さく設定されている。低剛性部47の外径D2は、カテーテル20の第1屈曲部28の湾曲に沿って変形する程度に曲げ剛性が低くする必要があることから、突出部43の曲げ剛性の他に、カテーテルシャフト21の曲げ剛性や第1屈曲部28の屈曲の度合い等を考慮して決定される。
【0039】
高剛性部49は、低剛性部47より後端側の部分である。高剛性部49は、外径D3が一定の部分である。高剛性部49は、カテーテル20に装着された際に対応する部分に応じて、前方部49a、中間部49b、及び後方部49cの3つの部分に分けられる。即ち、中間部49bは、ダイレータ40がカテーテル20に装着された状態において、カテーテル20の第2屈曲部30の範囲C2に対応する部分であり、この中間部49bを境として先端側に位置する部分が前方部49aであり、中間部49bより後端側に位置する部分が後方部49cである。
【0040】
高剛性部49の前方部49aの先端には、低剛性部47と滑らかに接続するように先端側に向かって細径化されたテーパ状の遷移部49dが形成されている。
【0041】
高剛性部49の中間部49bは、ダイレータ40が装着された際に、ダイレータ40が真っ直ぐに戻ろうとする反発力を利用して、第2屈曲部30の屈曲が直線に近くなるように変化させる部分である。このため中間部49bの曲げ剛性は、低剛性部47の曲げ剛性よりも高く設定されている。具体的には、中間部49bの外径D3を突出部43の直線部43bの外径D1と同じとして、外径を可及的に大きくすることにより曲げ剛性を高めている。
本実施の形態の場合、前方部49a、中間部49b、及び後方部49cの3つの部分の外径は同じであるため、事実上1つの部分であるが、それぞれを別個の部材として考慮した場合、中間部49bの軸方向の長さDC2は、第2屈曲部30の範囲C2の長さ以上であることが好ましい。
【0042】
高剛性部49の後方部49cは、中間部49bより後方側の部分であり、カテーテル20の本体シャフト部31に対応する部分である。後方部49cの後端には、コネクタ60が接続されている。
【0043】
コネクタ60は、内部にダイレータシャフト41のルーメン42に連通する孔部を有している。コネクタ60の先端には、カテーテル20のコネクタ35の接続部36と螺合する回転部61が設けられている。また、コネクタ60の後端には、ルーメン42に挿入された図示しないガイドワイヤが延出する後端開口部62を有する。
【0044】
以上の構成のカテーテル20にダイレータ40を装着した状態が図3に示されている。図3に示すように、カテーテル20の先端からダイレータ40の突出部43が突出する。
【0045】
カテーテル20の第1屈曲部28は、その範囲C1に対応する、ダイレータ40の低剛性部47の曲げ剛性が小さくされているため、低剛性部47においてダイレータ40が真っ直ぐに戻ろうとする反発力は弱められている。このため、図5に示すように、ダイレータ40の低剛性部47は、第1屈曲部28の屈曲に沿って湾曲する。従って、第1屈曲部28の先端側に位置する第1直線シャフト部27の軸線に対して、ダイレータ40の突出部43の直線部43bの軸線が偏倚することが可及的に防止される。この結果、カテーテル20の開口部22aにおいて、チップ33の先端とダイレータ40の突出部43との間に段差が生じることが可及的に防止される。
【0046】
また、突出部43の外径D1は、ダイレータ40をカテーテル20のルーメン22へ挿入できる範囲で可及的に大きく設定されている。このため、カテーテル20のチップ33の先端とダイレータ40の突出部43との間に段差が生じることが一層、防止される。
【0047】
更に、カテーテル20のチップ33の先端には、テーパ部33aが設けられている。従って、カテーテル20のチップ33の先端とダイレータ40の突出部43とは、滑らかに接続されるようになっている。
以上のように、カテーテル20のチップ33の先端とダイレータ40の突出部43との間に段差が生じることが防止され、滑らかに接続されることにより、ダイレータ40の先端が体内に侵入し、これに続いてカテーテル20の先端が体内に侵入する際の抵抗が減少し、カテーテル組立体10の体内への侵入をスムーズに行うことができる。
【0048】
カテーテル20の第2屈曲部30は、その範囲C2に対応するダイレータ40の高剛性部49の中間部49bの剛性が高められているため、ダイレータ40が真っ直ぐに戻ろうとする反発力により、第2屈曲部30の屈曲は、直線に近づく方向に変化する。
従って、カテーテル20の第1屈曲部28が体内に挿入され、続いて第2屈曲部30が体内に侵入する際や、第2屈曲部30が血管内で目的部位に向かって押し込まれる際には、第2屈曲部30の屈曲は直線に近くなるように変形しているため、スムーズな体内への侵入と、その後の進行が可能となる。
【0049】
以上の構成に基づいて、本実施の形態のカテーテル組立体10を心臓の大動脈に挿入する手技に用いる場合について説明する。尚、上述した通り、本実施の形態のカテーテル20は、左冠状動脈用のジャドキンス型を例としているため、カテーテル20は左冠状動脈に係合するものとする。
【0050】
カテーテル組立体10は、手首部の橈骨動脈から挿入され、上腕及び鎖骨付近に位置する血管を経て大動脈へ挿入される。その後、ダイレータ40が抜去されて、カテーテル20のみが、左冠状動脈孔に係合することになる。このような状態でカテーテル20のルーメン22内には、図示しないバルーンカテーテル等の治療用カテーテル等が挿通されて、冠状動脈内の狭窄部等に対して治療が行われる。
【0051】
このような手技を行うためには、まず、図示しない穿刺針によって手首部の橈骨動脈に微小な孔が形成される。通常、穿刺針は、ガイドワイヤを挿入するための筒状の外筒と、外筒内に挿入され、穿刺用の針体が取り付けられている内筒からなる。このため、内筒が外筒に挿入された状態で、手首部の橈骨動脈に穿刺が行われ、血管に微小な孔が形成された後、内筒のみが除去される。
【0052】
残った外筒に図示しないガイドワイヤが挿入される。この時、ガイドワイヤは、上腕付近まで挿入される。この後、穿刺針の外筒が除去され、ガイドワイヤが残った状態となる。そして、このガイドワイヤの後端からカテーテル組立体10が挿入される。この際、ダイレータ40はカテーテル20に装着された図3に示す状態にある。ガイドワイヤの後端は、ダイレータ40の突出部43の先端に設けられた開口部42aから挿入され、ルーメン42を通過して、コネクタ60の後端開口部62から延出する。この状態からカテーテル組立体10を、ガイドワイヤに沿って体内に侵入させることになる。
【0053】
まず、ダイレータ40の突出部43の先端が体内に侵入する。この際、突出部43は、先端部分がテーパ部43aとなっており、ダイレータ40の先端とガイドワイヤの表面との間に段差は、可及的に小さくされているため、スムーズに体内に侵入することができる。
【0054】
次に、カテーテル20の先端部分が、ダイレータ40の突出部43に沿って体内に侵入する。この際、突出部43の外径D1は、可及的に大きく設定されているため、カテーテル20のチップ33の先端とダイレータ40の突出部43との間に段差が生じることが防止される。また、カテーテル20のチップ33の先端には、テーパ部33aが設けられているため、カテーテル20のチップ33の先端とダイレータ40の突出部43との間は、滑らかに接続されている。
【0055】
更に、カテーテル20の第1屈曲部28に対応する、ダイレータ40の低剛性部47は、小径化されることによって、曲げ剛性が小さくされているため、ダイレータ40が真っ直ぐに戻ろうとする反発力は弱められている。このため、ダイレータ40の低剛性部47は、第1屈曲部28の屈曲に沿って湾曲し、第1屈曲部28の先端側に位置する第1直線シャフト部27の中心軸に対して、ダイレータ40の突出部43の直線部43bの中心軸が偏倚することが防止されるため、カテーテル20のチップ33の先端とダイレータ40の突出部43との間に段差が生じることが可及的に防止される。
【0056】
以上のように、カテーテル20のチップ33の先端とダイレータ40の突出部43との間に段差が生じることが防止され、滑らかに接続されることにより、カテーテル20の先端部分が、ダイレータ40の突出部43に沿って滑らかに体内に侵入する。
【0057】
カテーテル20のチップ33が体内に挿入されると、これに続いて第1直線シャフト部27、第1屈曲部28、第2直線シャフト部29、及び第2直線シャフト部29が順次、体内に挿入される。
【0058】
この時、カテーテル20の第2屈曲部30に対応するダイレータ40の高剛性部49の中間部49bの曲げ剛性が高められているため、ダイレータ40が真っ直ぐに戻ろうとする反発力により、第2屈曲部30の屈曲は、図3に示すように直線に近づくように変形している。
従って、カテーテル20の第2屈曲部30が体内に侵入する際には、第2屈曲部30の屈曲は伸ばされて直線に近くなるため、スムーズに体内への挿入できる。
【0059】
この後、カテーテル20の本体シャフト部31が体内に挿入され、カテーテル組立体10は、ガイドワイヤに沿って血管内に挿入される。血管内をカテーテル組立体10が進行する際も、カテーテル20の第2屈曲部30は、直線に近づく方向に変形しているため、スムーズに血管内を移動させることができる。
【0060】
カテーテル組立体10の先端が、上腕に位置するガイドワイヤの先端に近づくと、医師等の手技者は、ガイドワイヤとカテーテル組立体10を同時に移動させ、カテーテル組立体10は先端から所定の長さだけガイドワイヤを延出した状態で鎖骨近傍に位置する血管を経由して上行大動脈の入り口付近に至る。
【0061】
この後、ダイレータ40がカテーテル20から引き抜かれ、体外へ抜去される。ダイレータ40が除去されることによって、カテーテル20の第2屈曲部30の形状は、略元の形状に戻ることになる。この状態で、手技者はガイドワイヤとカテーテル20を操作して、更に上行大動脈へガイドワイヤとカテーテル20を進行させた後、ガイドワイヤも体外へ抜去し、カテーテル20の先端を左冠状動脈孔に係合させる。
尚、ダイレータ40やガイドワイヤを抜去するタイミングは手技者によって異なり、このような手技に限定されるものでは無い。
【0062】
以上のように、カテーテル40が冠状動脈孔に係合されると、目的部位である冠状動脈内の狭窄部等を治療するために、別のガイドワイヤやバルーンカテーテル等がカテーテル40内に挿入されて、心臓の治療が行われる。
【0063】
以上述べた実施の形態では、カテーテル20の第1屈曲部28に対応する、ダイレータ40の低剛性部47の曲げ剛性を小さくするために、低剛性部47の直径を他の部分に比較して小さくしている。しかし、曲げ剛性を小さくする手段は、直径を小さくすることに限られるものではない。
【0064】
例えば、上述した低剛性部47の代わりに、図6に示すダイレータシャフト141のように、断面が半円形状の半円部147を有する構成としても良い。即ち、半円部147は、断面図である図6(b)に示すように、突出部43と同じ外径有する筒状の部分における断面の略半分を除去し、切り欠き部147aを設けることによって曲げ剛性を低下させた部分である。
この様に、片側半分のみを切り欠くことによって、切り欠き部147aが存在する側にダイレータシャフト141を曲がり易くすることができる。即ち、低剛性部である半円部147の切り欠き部147aをカテーテル20の第1屈曲部28の内側に位置させることによって、半円部147をカテーテル20の第1屈曲部28に沿って曲がり易くすることができる。
【0065】
このような手段以外にも、低剛性部47に対応する部分に、柔軟な樹脂を用いたり、金属製のコイルを用いたりしても良い。
【0066】
また、以上述べた実施の形態では、カテーテル20の第2屈曲部30に対応するダイレータ40の高剛性部49の中間部49bの曲げ剛性を高めるために、中間部49bの直径を、突出部43、高剛性部49の前方部49a及び後方部49cの直径と同じとしている。しかし、中間部49bの曲げ剛性は、カテーテル20の第2屈曲部30の屈曲を緩和し、カテーテル組立体10の挿入を容易することができれば足りるため、必ずしも中間部49bの直径と突出部43等の直径とを同じにする必要は無い。
【0067】
例えば、上述したダイレータ40の高剛性部49を図7に示すダイレータシャフト241の高剛性部249のようにすることも可能である。即ち、カテーテル20の第2屈曲部30に対応する、ダイレータ240の高剛性部249の中間部249bの外径D4を突出部43の外径D1より小さくし、且つ、高剛性部249の前方部249a及び後方部249cの外径D5より大きくすることも可能である。
【0068】
また、ダイレータ40の高剛性部49の中間部49bの曲げ剛性が高める手段としては、この部分に硬度の高い樹脂を用いることも可能である。
【0069】
以上述べた実施の形態は、カテーテル組立体10のカテーテル20を心臓用のガイディングカテーテルとした場合について述べたが、他のカテーテルにも適用できる。
また、カテーテルが適用される器官も、心臓の血管に限られず、他の器官にも用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
10 カテーテル組立体
20 カテーテル
28 第1屈曲部
30 第2屈曲部
40 ダイレータ
43 突出部
47 低剛性部
49 高剛性部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材からなるカテーテルと、前記カテーテル内に挿入されるダイレータとからなるカテーテル組立体であって、
前記カテーテルは、先端部分に少なくとも1つの屈曲部を有し、
前記ダイレータは、前記ダイレータが前記カテーテルに挿入された際に、先端側の少なくとも一部が前記カテーテルの先端から突出する突出部と、
前記突出部より後端側の前記カテーテルの屈曲部に対応する位置に配置され、且つ、前記突出部よりも低い曲げ剛性を有する低剛性部と、
前記低剛性部より後端側に位置し、且つ、前記低剛性部よりも高い曲げ剛性を有する高剛性部と
を備えることを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項2】
前記カテーテルは、複数の屈曲部を有し、
前記ダイレータの前記低剛性部は、前記カテーテルの前記複数の屈曲部の内の最も先端側に位置する第1屈曲部に対応する位置に配置され、
前記ダイレータの前記高剛性部は、前記カテーテルの前記第1屈曲部よりも後端側に位置する第2屈曲部に対応する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル組立体。
【請求項3】
前記低剛性部の外径は、前記突出部の外径及び前記高剛性部の外径の何れの外径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカテーテル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−85816(P2012−85816A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234956(P2010−234956)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】