カテーテル
【課題】血管等の体内管状組織の湾曲部分への挿入に際して、挿入先端部分を血管等の湾曲部分に沿った形状に湾曲させることが出来る、新規な構造のカテーテルを提供する。
【解決手段】可撓性のカテーテル本体12の先端部分において周上で部分的に突出して、カテーテル本体12が挿入される管状器官の内面への当接反力を利用して該カテーテル本体12の先端部を湾曲させる方向変換用の突出部32と、該突出部32を突出状態と非突出状態とに制御するコントロール手段28とを、設けたカテーテル。
【解決手段】可撓性のカテーテル本体12の先端部分において周上で部分的に突出して、カテーテル本体12が挿入される管状器官の内面への当接反力を利用して該カテーテル本体12の先端部を湾曲させる方向変換用の突出部32と、該突出部32を突出状態と非突出状態とに制御するコントロール手段28とを、設けたカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管,消化器管,気管支管などの体内管状組織に挿入して用いられて挿入部位の観察や医療処置を行うカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管や管状器官等の体内管状組織に対して検査や治療等を行うための医療器具の一種として、カテーテルが知られている。具体的には、PCTA(経皮的冠動脈経血管形成術)やPTCR(冠動脈血栓溶解術),PTCD(経皮経肝胆道ドレナージ),PEIT(ペイト)などの処置に際して、カテーテルが用いられている。
【0003】
ところで、このようなカテーテルを用いた医療処置に際しては、カテーテルを血管等に挿し入れ、カテーテルの先端が体内組織の目的とする部位に至るまで押し進めることが必要となる。その際、血管等は体内で湾曲していることから、カテーテルを血管等の湾曲に沿って挿し入れるために、カテーテル自体も湾曲可能な軟質材料とされている。
【0004】
しかしながら、カテーテルを外力によって血管等に挿し入れたり、カテーテルに及ぼされる陰圧等に耐えるために、カテーテル自体にも或る程度の強度や硬度が要求される。それ故、カテーテルを挿し入れる血管等の曲率が大きい場合には、それに沿ってカテーテルの先端を湾曲させることが難しく、目的とする部位まで達し得ないおそれもある。
【0005】
このような問題に対処するために、特開平2−1292号公報(特許文献1)には、カテーテルの断面上で偏心した引張用ルーメンを形成して、この引張用ルーメンに引張線状体を挿通させた構造が提案されている。即ち、引張線状体の先端がカテーテル先端に固定されており、カテーテル基端側の操作部分で引張線状体を引っ張ることにより、その引張力を引張線状体を介してカテーテル先端に及ぼし、カテーテル先端部分を湾曲させるようにしたものである。
【0006】
ところが、特許文献1に記載のカテーテルでは、引張線状体を介してルーメン全体に力が及ぼされることから、目的とするルーメンの先端部分だけを目的とする形状に安定して湾曲させ難いという問題があった。
【0007】
しかも、引張線状体は、カテーテルの湾曲部分の内周側に位置することから、例えば吸引カテーテルの場合に、吸引ルーメンの先端が外周側に開口することとなり、吸引ルーメンの先端を内周側に向けて開口させることが難しい。そのために、例えば血管の湾曲部分に血栓等がある場合に、吸引ルーメンの先端開口が血栓部分から外周側に逸れて血管外周壁に向いてしまい、充分な吸引効果が得られ難いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−1292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、先端部分を血管等の湾曲部分に沿った目的とする形状に安定して湾曲させることが出来る、新規な構造のカテーテルを提供することにある。
【0010】
また、本発明は、例えば吸引カテーテルに適用した場合に、吸引ルーメンの先端開口部を血管等の湾曲部分の内周側に向けることが出来、それによって血管の湾曲部分の血栓等に対する処置を効果的に行うことが可能とされたカテーテルを提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴とするところは、体内の管状器官に挿入されるカテーテルであって、可撓性のカテーテル本体の先端部分において周上で部分的に突出して該管状器官の内面への当接反力を利用して該カテーテル本体の先端部を湾曲させる方向変換用の突出部と、該突出部を突出状態と非突出状態とに制御するコントロール手段とを、設けたカテーテルにある。
【0012】
本発明に従う構造とされたカテーテルにおいては、突出部の突出反力だけでなく、該突出部が管状器官の壁内面に当接することによる当接反力も、カテーテル本体の先端部分に対して及ぼされる。特に、当接反力は、管状器官から相対的且つ直接にカテーテルに及ぼされることから、管状器官の湾曲部の外周壁面に対して突出部を当接させることにより、カテーテルの先端部分を管状器官の湾曲部の内周側に向けて直接に且つ確実に湾曲指向させることが可能となる。
【0013】
しかも、突出部の突出反力や当接反力は、突出部が突出するカテーテルの先端部分だけに効率的に及ぼされることとなる。それ故、特許文献1記載の従来技術のようにカテーテル全体に外力が及ぼされてしまうことがなく、カテーテルの先端部分だけを効果的に湾曲させることが出来る。
【0014】
また、本発明では、前記カテーテル本体の先端部分の外周面に開口部を形成して、前記コントール手段による前記突出状態で前記突出部が該開口部から外方に突出される一方、該コントロール手段による前記非突出状態で該突出部が該開口部から突出しないで該カテーテル本体の内部に収納されるようにした構成が、好適に採用される。
【0015】
このように突出部をカテーテル本体の開口部を通じて外方に突出させることにより、カテーテル本体に大きな変形等を必要とすることなく、カテーテル本体からの突出部の突出量を大きく設定することが可能になる。しかも、非突出状態では、突出部がカテーテル本体へ収納されることから、突出部の管状器官内面への干渉が回避される。
【0016】
ところで、上述のようにカテーテル本体に形成した開口部からの突出状態と収納状態とに変形作動される突出部は、例えば以下の構成によって有利に実現される。即ち、前記カテーテル本体にコントロール用ルーメンを形成して、該コントロール用ルーメンにコントロールワイヤを挿通し、該コントロールワイヤの先端を該カテーテル本体の先端に固定すると共に、該コントロール用ルーメンを前記開口部を通じて該カテーテル本体の外周面に開口させる一方、前記コントロール手段により、該コントロールワイヤの基端側に対して該コントロール用ルーメンへの送込方向と引出方向とに外力を及ぼすことによって、該コントロールワイヤを該開口部を通じての該コントロール用ルーメンからの突出状態と該コントロール用ルーメンへの収納状態とに制御可能とした構成が、本発明において採用可能である。
【0017】
上記コントロールワイヤは、カテーテル本体の先端部分で開口部から外方に突出して、カテーテル本体が挿し入れられた管状組織の壁内面に当接されることにより、その突出反力と当接反力に基づいて、カテーテル先端に曲げ力を及ぼし、カテーテル先端がコントロールワイヤの突出方向と反対側に向かって湾曲変形され得る。また、コントロールワイヤの基端側をカテーテル本体から引出方向に操作することにより、突出部に対して直接に力を伝達させて、突出部をカテーテル本体内に確実に収納させることが出来ることから、突出部を突出状態と非突出状態とに確実に変更操作することが可能となる。
【0018】
また、本発明では、上述のコントロールワイヤに代えてバルーンを採用して、例えば以下の構成により突出部を実現することも可能である。即ち、前記カテーテル本体の先端部分に設けられて周上で部分的に突出するバルーンによって前記突出部を構成すると共に、該カテーテル本体にコントロール用ルーメンを形成して、前記コントロール手段により、該コントロール用ルーメンを通じて該バルーンへの圧力流体の供給と排出とを行うことで該バルーンが膨出した突出状態と収縮した非突出状態とに制御可能とした構成が、本発明において採用可能である。
【0019】
バルーンで突出部を構成することにより、管状組織の壁内面への当接面積を大きく設定して、管状組織に対する突出部の当接圧(単位面積当たりの当接力)を分散させることが出来る。また、管状組織の壁内面への当接面積が大きく設定されることで、管状組織内でカテーテル先端を特定方向に湾曲させた状態で安定して保持させることが可能となる。
【0020】
また、本発明では、前記カテーテル本体に治療用ルーメンが形成されており、且つ、該治療用ルーメンの該カテーテル本体の先端面における開口部が、前記突出部の突出方向に対して該カテーテル本体の軸直角方向反対側に偏倚している構成が、好適に採用される。
【0021】
このような治療用ルーメンを採用すれば、カテーテル本体の先端面において湾曲内周側に治療用ルーメンを開口させることが出来る。それ故、管状組織の湾曲部において湾曲外周側の壁面に向き易い治療用ルーメンの開口を、湾曲内周側に向かわせることにより、管状組織の湾曲部における血栓等への処置を効果的に施すことが可能となる。
【0022】
また、上述の治療用ルーメンを採用するに際しては、前記カテーテル本体において、該治療用ルーメンに対して軸直角方向反対側に偏倚してガイド用ルーメンを形成し、該ガイド用ルーメンにガイドワイヤを挿通可能とした構成が、好適に採用される。
【0023】
このように治療用ルーメンに対して、ガイド用ルーメンを突出部の突出方向と同じ側に偏倚させることにより、治療用ルーメンを湾曲内周側に向けつつその断面積を大きく設定することが可能となる。また、突出部及びガイド用ルーメンに対して軸直角方向反対側に形成された治療用ルーメンを内周側としたカテーテル本体の目的方向への湾曲が、前述の突出部の作用だけでなくガイドワイヤの剛性も利用して一層安定して生ぜしめられ得る。
【0024】
また、本発明では、前記カテーテル本体の少なくとも先端部分における曲げ剛性が、前記突出部が突出する側の半周部分と、それと反対側の半周部分とで相互に異なっており、該突出部が突出する側の半周部分がそれと反対側の半周部分よりも曲がり難くされている構成が、好適に採用される。
【0025】
突出部が突出する側と反対側の半周部分は、カテーテル本体の目的とする湾曲形状において曲率半径が小さい内周側とされる。それ故、この内周側を曲がり易くすることにより、カテーテル本体を目的とする方向、即ち突出部が突出する側が外周側となりそれと反対側が内周側とされる方向での湾曲形状が、より安定して発現される。
【0026】
また、本発明では、前記突出部の突出方向の指標となる造影マーカーを設けることが望ましい。この造影マーカーを利用することにより、処置に際して管状組織内での突出部の突出方向を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施形態としての血栓吸引カテーテルを示す全体概略図。
【図2】図1に示されたカテーテルの先端部縦断面図であって、図3におけるII−II断面図。
【図3】図2におけるIII−III断面図。
【図4】図2に示されたカテーテルにおける突出部の突出状態を示す先端部縦断面図。
【図5】図2に示されたカテーテルにおける湾曲操作状態を示す説明図。
【図6】本発明の第二の実施形態としての血栓吸引カテーテルを示す先端部縦断面図であって、図3におけるVI−VI断面図。
【図7】図6におけるVII−VII断面図。
【図8】本発明の第三の実施形態としての血栓吸引カテーテルを示す先端部縦断面図。
【図9】図8に示されたカテーテルにおける突出部の非突出状態を示す先端部縦断面図。
【図10】本発明の第四の実施形態としての血栓吸引カテーテルを示す先端部縦断面図。
【図11】図10に示されたカテーテルにおける突出部の突出状態を示す先端部縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0029】
図1には、本発明の第一の実施形態としての血栓吸引カテーテル10の全体概略が示されている。本実施形態の血栓吸引カテーテル10は、長尺のカテーテル本体12を備えており、カテーテル本体12の基端側には、把持部を兼ねたハブ14が設けられている。そして、カテーテル本体12の先端側を人体の手首や大腿部から血管に挿し入れて冠動脈等の治療部位まで到達させた状態で、人体から露出したハブ14側での操作により、血栓吸引等の処置を施すようになっている。
【0030】
より詳細には、カテーテル本体12は、挿入対象となる血管に挿入可能な太さと、目的とする治療部位まで達する長さを有している。また、血管に沿って湾曲可能な軟質材料によって形成されており、例えばポリアミドやポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン等の合成樹脂材料、ステンレス鋼、ニッケル−チタン合金等の金属材料及びこれらの組み合わせによって成形されたものが採用され得る。
【0031】
また、図2〜4に示されているように、カテーテル本体12の内部には、長さ方向に延びる3本のルーメン16,18,20が形成されている。具体的には、治療用ルーメンとしての吸引用ルーメン16と、ガイド用ルーメンとしてのガイドワイヤ用ルーメン18と、コントロール用ルーメン20である。何れのルーメン16,18,20も、カテーテル本体12の基端部から先端部に至るまで略一定の断面形状と、相対的な断面位置関係をもって連続して形成されている。
【0032】
吸引用ルーメン16は、カテーテル本体12の先端面に開口している一方、カテーテル本体12の基端側において、ハブ14を介して陰圧発生手段22に接続されるようになっている。そして、この陰圧発生手段22から及ぼされる陰圧をカテーテル本体12の先端側開口部を通じて血管内に及ぼすことにより、血管内の血栓等を吸引除去し得るようになっている。
【0033】
また、ガイドワイヤ用ルーメン18は、カテーテル本体12の先端面に開口している一方、カテーテル本体12の基端側において、ハブ14を貫通して外部に開口している。そして、このガイドワイヤ用ルーメン18には、図3に示されているようにガイドワイヤ24が抜差可能に挿通されている。要するに、本実施形態では、ガイドワイヤ24がカテーテル本体12に挿通されている。
【0034】
かかるガイドワイヤ24は、カテーテル本体12より小径で、カテーテル本体12の挿入に先立って、予め血管に挿し入れられる。その後、ガイドワイヤ24にカテーテル本体12を外挿することで、カテーテル本体12を血管内にスムーズに挿し入れて、カテーテル本体12の先端を目的とする処置部位の近くまで案内する。
【0035】
さらに、コントロール用ルーメン20は、カテーテル本体12の先端面に開口している一方、カテーテル本体12の基端側において、ハブ14を介してコントロール手段としてのコントローラ26に連通されている。そして、このコントロール用ルーメン20には、コントロールワイヤ28が挿通されている。
【0036】
かかるコントロールワイヤ28は、その先端部が、カテーテル本体12の先端側におけるコントロール用ルーメン20の開口部分に固着されている。また、コントロールワイヤ28の他方の端部は、ハブ14を通じてコントローラ26に接続されている。このコントローラ26は、コントロールワイヤ28に対してコントロール用ルーメン20への送込方向と引出方向の軸方向外力を及ぼすものである。具体的には、例えば手動操作可能な押圧ピストンを設けて、この押圧ピストンにコントロールワイヤ28の基端側を固定することや、ピストンなどの手段でなくても、手でワイヤ自体を押し込み又は引き出しさせて、コントロールワイヤを制動させることによってコントローラが実現される。
【0037】
一方、カテーテル本体12の先端部分には、コントロール用ルーメン20の周壁部に開口部30が形成されている。そして、この開口部30を通じて、コントロール用ルーメン20がカテーテル本体12の外部空間に連通されている。また、コントロール用ルーメン20における開口部30の形成部分にはコントロールワイヤ28が挿通されている。
【0038】
これにより、カテーテル本体12の基端部側に設けられたコントローラ26を操作して、コントロール用ルーメン20に挿通されたコントロールワイヤ28に対して送込方向の外力を及ぼすと、コントロールワイヤ28の先端部まで長手方向圧縮力が伝達される。その結果、図4に示されているように、コントロールワイヤ28が、開口部30による開放部分において開口部30から外方に突出して湾曲変形されることとなる。要するに、コントロールワイヤ28は、コントロール用ルーメン20内への収納部分では周壁で変形が阻止されており、開口部30で開放された部分だけに外方への膨出状の変形が集中して発生して突出させられるのである。
【0039】
また、このことから明らかなように、本実施形態では、開口部30から外方に突出して湾曲変形する、コントロールワイヤ28の先端部分によって、カテーテル本体12の先端部分において周上で部分的に突出する突出部32が構成されている。また、かかる突出部32は、コントローラ26を操作してコントロールワイヤ28に対してコントロール用ルーメン20からの引出方向の軸方向外力を及ぼすことにより、開口部30からの突出状態を解除して、再びカテーテル本体12内部に収容された非突出状態に復元することができる。このように、突出部32は、コントローラ26によりコントロールワイヤ28が送込方向と引出方向に操作されて軸方向の外力を及ぼされることにより、開口部30から外方に突出した突出状態と、カテーテル本体12内部に収容された非突出状態とに切換制御されるようになっている。
【0040】
而して、上述のようにカテーテル本体12の先端部分で突出部32が外方に突出すると、その突出反力によってカテーテル本体12の先端部分に曲げ力が及ぼされる。即ち、カテーテル本体12の開口部30から外方に突出した突出部32に対して、その両端部に支持力を及ぼすカテーテル本体12の先端部分には、かかる支持力の反力として、突出部32と同じ方向への湾曲変形が生ぜしめられる。
【0041】
しかも、図5に例示するように、血管34の湾曲部内において、カテーテル本体12の先端部分で突出させられた突出部32は、血管34の湾曲外周側の内壁面に対して当接される。そして、この突出部32の血管34に対する当接反力が、カテーテル本体12の先端部分を湾曲方向内方に向けて更に湾曲変形させることとなる。
【0042】
従って、本実施形態の血栓吸引カテーテル10においては、突出部32が突出されたカテーテル本体12の先端部分だけに対して、突出部32の血管34に対する当接反力が湾曲力として効率的に及ぼされる。それ故、特許文献1記載の従来構造のカテーテルに比して、カテーテル本体12の先端部分だけを目的とする血管湾曲方向に確実に湾曲させることが出来て、カテーテル本体12の先端部分を湾曲した血管34内に容易に挿し入れることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、図3に示されているように、カテーテル本体12の断面形状において、吸引用ルーメン16が略半周に亘る領域で略半円形の断面形状で形成されている。そして、他方の半周側の領域に、ガイドワイヤ用ルーメン18とコントロール用ルーメン20が、それぞれ略円形断面で形成されている。要するに、略半周に亘って開口形成された吸引用ルーメン16に対して、ガイドワイヤ用ルーメン18とコントロール用ルーメン20が、何れも、軸直角方向反対側に偏倚して形成されている。
【0044】
これにより、カテーテル本体12では、図3において下半分となる吸引用ルーメン16の形成部分に比して上半分となるガイドワイヤ用ルーメン18及びコントロール用ルーメン20の形成部分の方が、図3中の左右方向に延びる径方向線に対する断面二次モーメント(I)が大きくされている。そして、ガイドワイヤ用ルーメン18に挿通されたガイドワイヤ24とコントロール用ルーメン20に挿通されたコントロールワイヤ28の剛性も相俟って、カテーテル本体12は、突出部32が突出する図3中の上半周部分よりも、反対側となる図3中の下半周部分の方が曲がり易くなっている。
【0045】
このようなカテーテル本体12の断面上での曲がり易さの偏在により、カテーテル本体12自体も、曲がり易い吸引用ルーメン16の形成部分が曲率の大きい内周側となり、曲がり難い突出部32の突出側部分が曲率の小さい外周側となる方向で湾曲変形し易くなっている。これにより、前述の突出部32の突出反力および血管34への当接反力に基づいてカテーテル本体12に及ぼされる曲げ力によって、カテーテル本体12の先端部分には、目的とする方向への湾曲変形が一層安定して生ぜしめられるのである。
【0046】
また、吸引用ルーメン16と突出部32とが、カテーテル本体12内部においてそれぞれ軸直角方向反対側に形成されていることから、吸引用ルーメン16は、カテーテル本体12の先端面において、突出部32の突出方向に対してカテーテル本体12の軸直角方向反対側に偏倚して開口することとなる。そして、湾曲変形したカテーテル本体12の先端面では、湾曲方向の内周側に吸引用ルーメン16が開口することから、吸引用ルーメン16の開口部が、血管34における湾曲方向の外周側の壁面から離れて位置する。これにより、吸引用ルーメン16が、湾曲した血管34内で前方に向かって効率的に開口位置することとなり、血管34内の血栓36等に対して効果的な吸引効果を得ることが可能となる。
【0047】
なお、カテーテル本体12の先端部分の湾曲方向は、コントロールワイヤ28の突出方向によってコントロールすることができる。その際、コントロールワイヤ28の突出方向となる開口部30の位置を、オペレータが正確に把握してカテーテル本体12の基端部側で手技操作できるように、造影マーカーを付すことが望ましい。具体的には、例えば図3に示されているように、X線不透過性の白金チップ等からなる造影マーカー38を、カテーテル本体12の先端部分における周上の特定位置に固着することによって実現される。
【0048】
次に、図6〜7には、本発明の第二の実施形態としての血栓吸引カテーテル40の先端部分が示されている。本実施形態の血栓吸引カテーテル40は、その突出部として、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10におけるコントロールワイヤに代えてバルーン42を採用したものである。
【0049】
すなわち、カテーテル本体44には、第一の実施形態と同様に吸引用ルーメン16とガイドワイヤ用ルーメン18、コントール用ルーメン20が形成されているが、カテーテル本体44の先端部分において、コントロール用ルーメン20に連通されたバルーン42が形成されている。このバルーン42は、カテーテル本体44と別体形成された中空体で構成しても良いが、本実施形態では、コントロール用ルーメン20におけるカテーテル本体44の外周壁部が薄肉化されて弾性的に膨出変形可能とされることによって、カテーテル本体44によってバルーン42が一体的に形成されている。
【0050】
また、図示はされていないが、このバルーン42の内部空間が、コントロール用ルーメン20を通じて、ハブ14に接続されたコントロール手段としての圧力給排源に連通されている。そして、圧力給排源による正圧を、エアや生理食塩水等の適当な圧力媒体を利用して、コントロール用ルーメン20を通じてバルーン42の内部空間に供給することで、図6に仮想線で表されているようにバルーン42を周方向外方に部分的に膨出変形させて突出部を発現させるようになっている。
【0051】
なお、圧力給排源によってバルーン42の内部空間に及ぼされる圧力を調節することでバルーン42の突出量を制御することが出来る。また、バルーン42の内部空間に対して圧力の除去乃至は吸引を行うことによりバルーン42を収縮させ、バルーン42の突出を解除することが出来るようになっている。
【0052】
このような本実施形態の血栓吸引カテーテル40においても、バルーン42の突出に伴って、カテーテル本体12の先端部分には、突出反力と共に血管内壁への当接反力が何れも特定方向への湾曲力として作用する。それ故、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10と同様な効果が発揮され得る。
【0053】
加えて、バルーン42で構成された突出部は、第一の実施形態におけるコントロールワイヤ28で構成された突出部に比して、血管への当接面積を大きく確保することが容易である。それ故、バルーン42の血管内壁への当接に基づいて、カテーテル本体44の先端部分を、血管内の所定位置により安定して保持することが可能となる。また、カテーテル本体44からの突出部の血管内壁への当接力を分散させて、単位面積当たりの当接力を軽減することも可能となる。
【0054】
次に、図8〜9には、本発明の第三の実施形態としての血栓吸引カテーテル46の先端部分が示されている。本実施形態の血栓吸引カテーテル46は、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10におけるコントロールワイヤ28に代えて異形ワイヤ48を採用したものである。
【0055】
かかる異形ワイヤ48は、カテーテル本体12のコントロール用ルーメン20内で軸方向に変位可能に挿入されており、図示はされていないが、ハブ(14)側の基端部分において、コントロール用ルーメン20に対する送り込み方向と引き出し方向に変位操作できるようになっている。また、図8に示されているように、異形ワイヤ48の先端部分には、単体での初期形状において「く」字形の異形部50が設けられている。更に、異形ワイヤ48は、少なくとも異形部50の部分において、ばね材等の弾性材料で形成されており、異形部50が外力で変形可能で且つ外力を除くと「く」字形の初期形状に復元するようになっている。
【0056】
そして、異形ワイヤ48をコントロール用ルーメン20への送り込み方向側の移動させて、異形部50を、カテーテル本体12の開口部30に位置合わせすることにより、図8に示されているように、異形部50が開口部30からカテーテル本体12の外周面上に突出して突出部を構成するようになっている。一方、異形ワイヤ48をコントロール用ルーメン20から引き出し方向側に移動させて、異形部50を、カテーテル本体12の開口部30の位置から基端側に外すことにより、図9に示されているように、異形部50は、コントロール用ルーメン20の周壁で抑え付けられて、突出状態が解除され、略直線状に変形させられてカテーテル本体12内に収納されることとなる。
【0057】
このような本実施形態の血栓吸引カテーテル46においても、異形部50を開口部30を通じてカテーテル本体12の外方に突出させることにより、カテーテル本体12の先端部分には、突出反力と共に血管内壁への当接反力が何れも特定方向への湾曲力として作用する。それ故、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10と同様な効果が発揮され得る。
【0058】
次に、図10〜11には、本発明の第四の実施形態としての血栓吸引カテーテル52の先端部分が示されている。本実施形態の血栓吸引カテーテル52は、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10におけるコントロールワイヤ28に代えて筒状弾性体54を採用したものである。
【0059】
かかる筒状弾性体54は、弾性変形可能な筒状体からなり、軸方向に圧縮変形させられることに伴って軸直角方向で外方に膨出変形するようになっている。具体的には、例えば金属や合成樹脂等の変形可能な繊維を筒状に編成したものの他、筒状のゴム様弾性体などが、筒状弾性体54として用いられ得る。
【0060】
そして、この筒状弾性体54は、カテーテル本体12の先端部分において、コントロール用ルーメン20に収容された状態で、開口部30の形成部位に配設されている。また、筒状弾性体54の軸方向基端部分は、カテーテル本体12に対して軸方向で位置固定に支持されている。一方、筒状弾性体54の軸方向先端部分は、カテーテル本体12におけるコントロール用ルーメン20の軸方向で変位可能とされている。
【0061】
さらに、コントロール用ルーメン20には、外力伝達ワイヤ56が挿通されており、第一の実施形態のガイドワイヤ24と同様に、その基端側が図示しないハブ(14)を介してコントローラ(26)に接続されている。このコントローラ(26)の操作により、外力伝達ワイヤ56がコントロール用ルーメン20への送込方向と引出方向で軸方向に駆動されるようになっている。
【0062】
また、外力伝達ワイヤ56の先端側は、筒状弾性体54に挿通されて、筒状弾性体54の軸方向先端部分に固着されている。これにより、外力伝達ワイヤ56がコントローラ(26)の操作でコントロール用ルーメン20から引出方向に駆動されると、図11に示されているように、筒状弾性体54の先端部分が基端部分に向かって引き寄せられて筒状弾性体54が軸方向で圧縮変形する。それに伴い、筒状弾性体54は外方に膨出変形して、カテーテル本体12の開口部30から外方に向かって突出する突出部58が生ずることとなる。
【0063】
特に、筒状弾性体54は、開口部30を通じて外部に露出する部分を除いて、外方への膨出変形がカテーテル本体12のコントロール用ルーメン20の周壁部で制限されている。それ故、筒状弾性体54が軸方向で圧縮変形されるに伴う外周側への膨出変形が開口部30を通じての外方への膨出変形に集中することとなり、突出部58が効率的に大きく突出させられる。
【0064】
なお、外力伝達ワイヤ56をコントロール用ルーメン20への送込方向に駆動させることにより、筒状弾性体54は軸方向に伸長されることとなり、それに伴い、図10に示されているように、突出部58が消失されて、筒状弾性体54は、再び、コントロール用ルーメン20に収納される。
【0065】
このような本実施形態の血栓吸引カテーテル52においても、筒状弾性体54を軸方向に圧縮変形させて開口部30を通じてカテーテル本体12の外方に突出する突出部58を発現させることにより、カテーテル本体12の先端部分には、突出反力と共に血管内壁への当接反力が何れも特定方向への湾曲力として作用する。それ故、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10と同様な効果が発揮され得る。
【0066】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態における具体的な記載によって限定されるものでない。例えば、前記実施形態では、血栓吸引カテーテルに本発明を適用したものを例示したが、薬液注入カテーテルや内視鏡カテーテル等にも適用可能であり、また、消化器系や気管支系等の各種体内管状組織に用いられる各種のカテーテルへの適用も可能である。
【0067】
特に、薬液注入カテーテルや内視鏡カテーテルに本発明を適用した場合でも、吸引用カテーテルと同様に、カテーテル本体の先端面に設けられる薬液注入口や内視鏡観察面が、血管等の体内管状組織の湾曲部分において外周壁面に当接してしまうことを避けて湾曲方向内方に向けられることにより、目的とする部位に対して薬液投与や内視鏡観察を有利に行うことが可能となる。
【0068】
また、そのような各種用途に応じてカテーテルの具体的構造も異なるものであり、例えば前記実施形態に示されたガイドワイヤ用ルーメン18及びガイドワイヤ24も、本発明において必須ではない。
【0069】
また、カテーテル本体12に収納された突出部32,58を外部に突出させるために開口部30を設ける場合でも、前記実施形態のように所定の開口面積をもった開口部30の他、カテーテル本体12の弾性に基づいて閉塞状態に保持されるスリット形状の開口部を採用しても良い。このようなスリット形状の開口部は、突出部32,58の突出に際してだけ開口することとなる。
【0070】
また、突出部は、非突出状態においてカテーテル本体12内に完全に収納される必要はなく、その突出状態に比して、カテーテル本体12に対する湾曲力を及ぼさない程度に突出量が小さくされていれば良い。
【0071】
また、コントロールワイヤ28の突出部32をX線不透過材で形成すること等により、突出部32に造影マーカーを設けることで、突出部32の突出方向や突出量を処置者が確認できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0072】
10:血栓吸引カテーテル、12:カテーテル本体、14:ハブ、16 吸引用ルーメン、20:コントロール用ルーメン、26:コントローラ、28:コントロールワイヤ、30:開口部、32:突出部、34:血管、36:血栓、38:造影マーカー
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管,消化器管,気管支管などの体内管状組織に挿入して用いられて挿入部位の観察や医療処置を行うカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管や管状器官等の体内管状組織に対して検査や治療等を行うための医療器具の一種として、カテーテルが知られている。具体的には、PCTA(経皮的冠動脈経血管形成術)やPTCR(冠動脈血栓溶解術),PTCD(経皮経肝胆道ドレナージ),PEIT(ペイト)などの処置に際して、カテーテルが用いられている。
【0003】
ところで、このようなカテーテルを用いた医療処置に際しては、カテーテルを血管等に挿し入れ、カテーテルの先端が体内組織の目的とする部位に至るまで押し進めることが必要となる。その際、血管等は体内で湾曲していることから、カテーテルを血管等の湾曲に沿って挿し入れるために、カテーテル自体も湾曲可能な軟質材料とされている。
【0004】
しかしながら、カテーテルを外力によって血管等に挿し入れたり、カテーテルに及ぼされる陰圧等に耐えるために、カテーテル自体にも或る程度の強度や硬度が要求される。それ故、カテーテルを挿し入れる血管等の曲率が大きい場合には、それに沿ってカテーテルの先端を湾曲させることが難しく、目的とする部位まで達し得ないおそれもある。
【0005】
このような問題に対処するために、特開平2−1292号公報(特許文献1)には、カテーテルの断面上で偏心した引張用ルーメンを形成して、この引張用ルーメンに引張線状体を挿通させた構造が提案されている。即ち、引張線状体の先端がカテーテル先端に固定されており、カテーテル基端側の操作部分で引張線状体を引っ張ることにより、その引張力を引張線状体を介してカテーテル先端に及ぼし、カテーテル先端部分を湾曲させるようにしたものである。
【0006】
ところが、特許文献1に記載のカテーテルでは、引張線状体を介してルーメン全体に力が及ぼされることから、目的とするルーメンの先端部分だけを目的とする形状に安定して湾曲させ難いという問題があった。
【0007】
しかも、引張線状体は、カテーテルの湾曲部分の内周側に位置することから、例えば吸引カテーテルの場合に、吸引ルーメンの先端が外周側に開口することとなり、吸引ルーメンの先端を内周側に向けて開口させることが難しい。そのために、例えば血管の湾曲部分に血栓等がある場合に、吸引ルーメンの先端開口が血栓部分から外周側に逸れて血管外周壁に向いてしまい、充分な吸引効果が得られ難いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−1292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、先端部分を血管等の湾曲部分に沿った目的とする形状に安定して湾曲させることが出来る、新規な構造のカテーテルを提供することにある。
【0010】
また、本発明は、例えば吸引カテーテルに適用した場合に、吸引ルーメンの先端開口部を血管等の湾曲部分の内周側に向けることが出来、それによって血管の湾曲部分の血栓等に対する処置を効果的に行うことが可能とされたカテーテルを提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴とするところは、体内の管状器官に挿入されるカテーテルであって、可撓性のカテーテル本体の先端部分において周上で部分的に突出して該管状器官の内面への当接反力を利用して該カテーテル本体の先端部を湾曲させる方向変換用の突出部と、該突出部を突出状態と非突出状態とに制御するコントロール手段とを、設けたカテーテルにある。
【0012】
本発明に従う構造とされたカテーテルにおいては、突出部の突出反力だけでなく、該突出部が管状器官の壁内面に当接することによる当接反力も、カテーテル本体の先端部分に対して及ぼされる。特に、当接反力は、管状器官から相対的且つ直接にカテーテルに及ぼされることから、管状器官の湾曲部の外周壁面に対して突出部を当接させることにより、カテーテルの先端部分を管状器官の湾曲部の内周側に向けて直接に且つ確実に湾曲指向させることが可能となる。
【0013】
しかも、突出部の突出反力や当接反力は、突出部が突出するカテーテルの先端部分だけに効率的に及ぼされることとなる。それ故、特許文献1記載の従来技術のようにカテーテル全体に外力が及ぼされてしまうことがなく、カテーテルの先端部分だけを効果的に湾曲させることが出来る。
【0014】
また、本発明では、前記カテーテル本体の先端部分の外周面に開口部を形成して、前記コントール手段による前記突出状態で前記突出部が該開口部から外方に突出される一方、該コントロール手段による前記非突出状態で該突出部が該開口部から突出しないで該カテーテル本体の内部に収納されるようにした構成が、好適に採用される。
【0015】
このように突出部をカテーテル本体の開口部を通じて外方に突出させることにより、カテーテル本体に大きな変形等を必要とすることなく、カテーテル本体からの突出部の突出量を大きく設定することが可能になる。しかも、非突出状態では、突出部がカテーテル本体へ収納されることから、突出部の管状器官内面への干渉が回避される。
【0016】
ところで、上述のようにカテーテル本体に形成した開口部からの突出状態と収納状態とに変形作動される突出部は、例えば以下の構成によって有利に実現される。即ち、前記カテーテル本体にコントロール用ルーメンを形成して、該コントロール用ルーメンにコントロールワイヤを挿通し、該コントロールワイヤの先端を該カテーテル本体の先端に固定すると共に、該コントロール用ルーメンを前記開口部を通じて該カテーテル本体の外周面に開口させる一方、前記コントロール手段により、該コントロールワイヤの基端側に対して該コントロール用ルーメンへの送込方向と引出方向とに外力を及ぼすことによって、該コントロールワイヤを該開口部を通じての該コントロール用ルーメンからの突出状態と該コントロール用ルーメンへの収納状態とに制御可能とした構成が、本発明において採用可能である。
【0017】
上記コントロールワイヤは、カテーテル本体の先端部分で開口部から外方に突出して、カテーテル本体が挿し入れられた管状組織の壁内面に当接されることにより、その突出反力と当接反力に基づいて、カテーテル先端に曲げ力を及ぼし、カテーテル先端がコントロールワイヤの突出方向と反対側に向かって湾曲変形され得る。また、コントロールワイヤの基端側をカテーテル本体から引出方向に操作することにより、突出部に対して直接に力を伝達させて、突出部をカテーテル本体内に確実に収納させることが出来ることから、突出部を突出状態と非突出状態とに確実に変更操作することが可能となる。
【0018】
また、本発明では、上述のコントロールワイヤに代えてバルーンを採用して、例えば以下の構成により突出部を実現することも可能である。即ち、前記カテーテル本体の先端部分に設けられて周上で部分的に突出するバルーンによって前記突出部を構成すると共に、該カテーテル本体にコントロール用ルーメンを形成して、前記コントロール手段により、該コントロール用ルーメンを通じて該バルーンへの圧力流体の供給と排出とを行うことで該バルーンが膨出した突出状態と収縮した非突出状態とに制御可能とした構成が、本発明において採用可能である。
【0019】
バルーンで突出部を構成することにより、管状組織の壁内面への当接面積を大きく設定して、管状組織に対する突出部の当接圧(単位面積当たりの当接力)を分散させることが出来る。また、管状組織の壁内面への当接面積が大きく設定されることで、管状組織内でカテーテル先端を特定方向に湾曲させた状態で安定して保持させることが可能となる。
【0020】
また、本発明では、前記カテーテル本体に治療用ルーメンが形成されており、且つ、該治療用ルーメンの該カテーテル本体の先端面における開口部が、前記突出部の突出方向に対して該カテーテル本体の軸直角方向反対側に偏倚している構成が、好適に採用される。
【0021】
このような治療用ルーメンを採用すれば、カテーテル本体の先端面において湾曲内周側に治療用ルーメンを開口させることが出来る。それ故、管状組織の湾曲部において湾曲外周側の壁面に向き易い治療用ルーメンの開口を、湾曲内周側に向かわせることにより、管状組織の湾曲部における血栓等への処置を効果的に施すことが可能となる。
【0022】
また、上述の治療用ルーメンを採用するに際しては、前記カテーテル本体において、該治療用ルーメンに対して軸直角方向反対側に偏倚してガイド用ルーメンを形成し、該ガイド用ルーメンにガイドワイヤを挿通可能とした構成が、好適に採用される。
【0023】
このように治療用ルーメンに対して、ガイド用ルーメンを突出部の突出方向と同じ側に偏倚させることにより、治療用ルーメンを湾曲内周側に向けつつその断面積を大きく設定することが可能となる。また、突出部及びガイド用ルーメンに対して軸直角方向反対側に形成された治療用ルーメンを内周側としたカテーテル本体の目的方向への湾曲が、前述の突出部の作用だけでなくガイドワイヤの剛性も利用して一層安定して生ぜしめられ得る。
【0024】
また、本発明では、前記カテーテル本体の少なくとも先端部分における曲げ剛性が、前記突出部が突出する側の半周部分と、それと反対側の半周部分とで相互に異なっており、該突出部が突出する側の半周部分がそれと反対側の半周部分よりも曲がり難くされている構成が、好適に採用される。
【0025】
突出部が突出する側と反対側の半周部分は、カテーテル本体の目的とする湾曲形状において曲率半径が小さい内周側とされる。それ故、この内周側を曲がり易くすることにより、カテーテル本体を目的とする方向、即ち突出部が突出する側が外周側となりそれと反対側が内周側とされる方向での湾曲形状が、より安定して発現される。
【0026】
また、本発明では、前記突出部の突出方向の指標となる造影マーカーを設けることが望ましい。この造影マーカーを利用することにより、処置に際して管状組織内での突出部の突出方向を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施形態としての血栓吸引カテーテルを示す全体概略図。
【図2】図1に示されたカテーテルの先端部縦断面図であって、図3におけるII−II断面図。
【図3】図2におけるIII−III断面図。
【図4】図2に示されたカテーテルにおける突出部の突出状態を示す先端部縦断面図。
【図5】図2に示されたカテーテルにおける湾曲操作状態を示す説明図。
【図6】本発明の第二の実施形態としての血栓吸引カテーテルを示す先端部縦断面図であって、図3におけるVI−VI断面図。
【図7】図6におけるVII−VII断面図。
【図8】本発明の第三の実施形態としての血栓吸引カテーテルを示す先端部縦断面図。
【図9】図8に示されたカテーテルにおける突出部の非突出状態を示す先端部縦断面図。
【図10】本発明の第四の実施形態としての血栓吸引カテーテルを示す先端部縦断面図。
【図11】図10に示されたカテーテルにおける突出部の突出状態を示す先端部縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0029】
図1には、本発明の第一の実施形態としての血栓吸引カテーテル10の全体概略が示されている。本実施形態の血栓吸引カテーテル10は、長尺のカテーテル本体12を備えており、カテーテル本体12の基端側には、把持部を兼ねたハブ14が設けられている。そして、カテーテル本体12の先端側を人体の手首や大腿部から血管に挿し入れて冠動脈等の治療部位まで到達させた状態で、人体から露出したハブ14側での操作により、血栓吸引等の処置を施すようになっている。
【0030】
より詳細には、カテーテル本体12は、挿入対象となる血管に挿入可能な太さと、目的とする治療部位まで達する長さを有している。また、血管に沿って湾曲可能な軟質材料によって形成されており、例えばポリアミドやポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン等の合成樹脂材料、ステンレス鋼、ニッケル−チタン合金等の金属材料及びこれらの組み合わせによって成形されたものが採用され得る。
【0031】
また、図2〜4に示されているように、カテーテル本体12の内部には、長さ方向に延びる3本のルーメン16,18,20が形成されている。具体的には、治療用ルーメンとしての吸引用ルーメン16と、ガイド用ルーメンとしてのガイドワイヤ用ルーメン18と、コントロール用ルーメン20である。何れのルーメン16,18,20も、カテーテル本体12の基端部から先端部に至るまで略一定の断面形状と、相対的な断面位置関係をもって連続して形成されている。
【0032】
吸引用ルーメン16は、カテーテル本体12の先端面に開口している一方、カテーテル本体12の基端側において、ハブ14を介して陰圧発生手段22に接続されるようになっている。そして、この陰圧発生手段22から及ぼされる陰圧をカテーテル本体12の先端側開口部を通じて血管内に及ぼすことにより、血管内の血栓等を吸引除去し得るようになっている。
【0033】
また、ガイドワイヤ用ルーメン18は、カテーテル本体12の先端面に開口している一方、カテーテル本体12の基端側において、ハブ14を貫通して外部に開口している。そして、このガイドワイヤ用ルーメン18には、図3に示されているようにガイドワイヤ24が抜差可能に挿通されている。要するに、本実施形態では、ガイドワイヤ24がカテーテル本体12に挿通されている。
【0034】
かかるガイドワイヤ24は、カテーテル本体12より小径で、カテーテル本体12の挿入に先立って、予め血管に挿し入れられる。その後、ガイドワイヤ24にカテーテル本体12を外挿することで、カテーテル本体12を血管内にスムーズに挿し入れて、カテーテル本体12の先端を目的とする処置部位の近くまで案内する。
【0035】
さらに、コントロール用ルーメン20は、カテーテル本体12の先端面に開口している一方、カテーテル本体12の基端側において、ハブ14を介してコントロール手段としてのコントローラ26に連通されている。そして、このコントロール用ルーメン20には、コントロールワイヤ28が挿通されている。
【0036】
かかるコントロールワイヤ28は、その先端部が、カテーテル本体12の先端側におけるコントロール用ルーメン20の開口部分に固着されている。また、コントロールワイヤ28の他方の端部は、ハブ14を通じてコントローラ26に接続されている。このコントローラ26は、コントロールワイヤ28に対してコントロール用ルーメン20への送込方向と引出方向の軸方向外力を及ぼすものである。具体的には、例えば手動操作可能な押圧ピストンを設けて、この押圧ピストンにコントロールワイヤ28の基端側を固定することや、ピストンなどの手段でなくても、手でワイヤ自体を押し込み又は引き出しさせて、コントロールワイヤを制動させることによってコントローラが実現される。
【0037】
一方、カテーテル本体12の先端部分には、コントロール用ルーメン20の周壁部に開口部30が形成されている。そして、この開口部30を通じて、コントロール用ルーメン20がカテーテル本体12の外部空間に連通されている。また、コントロール用ルーメン20における開口部30の形成部分にはコントロールワイヤ28が挿通されている。
【0038】
これにより、カテーテル本体12の基端部側に設けられたコントローラ26を操作して、コントロール用ルーメン20に挿通されたコントロールワイヤ28に対して送込方向の外力を及ぼすと、コントロールワイヤ28の先端部まで長手方向圧縮力が伝達される。その結果、図4に示されているように、コントロールワイヤ28が、開口部30による開放部分において開口部30から外方に突出して湾曲変形されることとなる。要するに、コントロールワイヤ28は、コントロール用ルーメン20内への収納部分では周壁で変形が阻止されており、開口部30で開放された部分だけに外方への膨出状の変形が集中して発生して突出させられるのである。
【0039】
また、このことから明らかなように、本実施形態では、開口部30から外方に突出して湾曲変形する、コントロールワイヤ28の先端部分によって、カテーテル本体12の先端部分において周上で部分的に突出する突出部32が構成されている。また、かかる突出部32は、コントローラ26を操作してコントロールワイヤ28に対してコントロール用ルーメン20からの引出方向の軸方向外力を及ぼすことにより、開口部30からの突出状態を解除して、再びカテーテル本体12内部に収容された非突出状態に復元することができる。このように、突出部32は、コントローラ26によりコントロールワイヤ28が送込方向と引出方向に操作されて軸方向の外力を及ぼされることにより、開口部30から外方に突出した突出状態と、カテーテル本体12内部に収容された非突出状態とに切換制御されるようになっている。
【0040】
而して、上述のようにカテーテル本体12の先端部分で突出部32が外方に突出すると、その突出反力によってカテーテル本体12の先端部分に曲げ力が及ぼされる。即ち、カテーテル本体12の開口部30から外方に突出した突出部32に対して、その両端部に支持力を及ぼすカテーテル本体12の先端部分には、かかる支持力の反力として、突出部32と同じ方向への湾曲変形が生ぜしめられる。
【0041】
しかも、図5に例示するように、血管34の湾曲部内において、カテーテル本体12の先端部分で突出させられた突出部32は、血管34の湾曲外周側の内壁面に対して当接される。そして、この突出部32の血管34に対する当接反力が、カテーテル本体12の先端部分を湾曲方向内方に向けて更に湾曲変形させることとなる。
【0042】
従って、本実施形態の血栓吸引カテーテル10においては、突出部32が突出されたカテーテル本体12の先端部分だけに対して、突出部32の血管34に対する当接反力が湾曲力として効率的に及ぼされる。それ故、特許文献1記載の従来構造のカテーテルに比して、カテーテル本体12の先端部分だけを目的とする血管湾曲方向に確実に湾曲させることが出来て、カテーテル本体12の先端部分を湾曲した血管34内に容易に挿し入れることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、図3に示されているように、カテーテル本体12の断面形状において、吸引用ルーメン16が略半周に亘る領域で略半円形の断面形状で形成されている。そして、他方の半周側の領域に、ガイドワイヤ用ルーメン18とコントロール用ルーメン20が、それぞれ略円形断面で形成されている。要するに、略半周に亘って開口形成された吸引用ルーメン16に対して、ガイドワイヤ用ルーメン18とコントロール用ルーメン20が、何れも、軸直角方向反対側に偏倚して形成されている。
【0044】
これにより、カテーテル本体12では、図3において下半分となる吸引用ルーメン16の形成部分に比して上半分となるガイドワイヤ用ルーメン18及びコントロール用ルーメン20の形成部分の方が、図3中の左右方向に延びる径方向線に対する断面二次モーメント(I)が大きくされている。そして、ガイドワイヤ用ルーメン18に挿通されたガイドワイヤ24とコントロール用ルーメン20に挿通されたコントロールワイヤ28の剛性も相俟って、カテーテル本体12は、突出部32が突出する図3中の上半周部分よりも、反対側となる図3中の下半周部分の方が曲がり易くなっている。
【0045】
このようなカテーテル本体12の断面上での曲がり易さの偏在により、カテーテル本体12自体も、曲がり易い吸引用ルーメン16の形成部分が曲率の大きい内周側となり、曲がり難い突出部32の突出側部分が曲率の小さい外周側となる方向で湾曲変形し易くなっている。これにより、前述の突出部32の突出反力および血管34への当接反力に基づいてカテーテル本体12に及ぼされる曲げ力によって、カテーテル本体12の先端部分には、目的とする方向への湾曲変形が一層安定して生ぜしめられるのである。
【0046】
また、吸引用ルーメン16と突出部32とが、カテーテル本体12内部においてそれぞれ軸直角方向反対側に形成されていることから、吸引用ルーメン16は、カテーテル本体12の先端面において、突出部32の突出方向に対してカテーテル本体12の軸直角方向反対側に偏倚して開口することとなる。そして、湾曲変形したカテーテル本体12の先端面では、湾曲方向の内周側に吸引用ルーメン16が開口することから、吸引用ルーメン16の開口部が、血管34における湾曲方向の外周側の壁面から離れて位置する。これにより、吸引用ルーメン16が、湾曲した血管34内で前方に向かって効率的に開口位置することとなり、血管34内の血栓36等に対して効果的な吸引効果を得ることが可能となる。
【0047】
なお、カテーテル本体12の先端部分の湾曲方向は、コントロールワイヤ28の突出方向によってコントロールすることができる。その際、コントロールワイヤ28の突出方向となる開口部30の位置を、オペレータが正確に把握してカテーテル本体12の基端部側で手技操作できるように、造影マーカーを付すことが望ましい。具体的には、例えば図3に示されているように、X線不透過性の白金チップ等からなる造影マーカー38を、カテーテル本体12の先端部分における周上の特定位置に固着することによって実現される。
【0048】
次に、図6〜7には、本発明の第二の実施形態としての血栓吸引カテーテル40の先端部分が示されている。本実施形態の血栓吸引カテーテル40は、その突出部として、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10におけるコントロールワイヤに代えてバルーン42を採用したものである。
【0049】
すなわち、カテーテル本体44には、第一の実施形態と同様に吸引用ルーメン16とガイドワイヤ用ルーメン18、コントール用ルーメン20が形成されているが、カテーテル本体44の先端部分において、コントロール用ルーメン20に連通されたバルーン42が形成されている。このバルーン42は、カテーテル本体44と別体形成された中空体で構成しても良いが、本実施形態では、コントロール用ルーメン20におけるカテーテル本体44の外周壁部が薄肉化されて弾性的に膨出変形可能とされることによって、カテーテル本体44によってバルーン42が一体的に形成されている。
【0050】
また、図示はされていないが、このバルーン42の内部空間が、コントロール用ルーメン20を通じて、ハブ14に接続されたコントロール手段としての圧力給排源に連通されている。そして、圧力給排源による正圧を、エアや生理食塩水等の適当な圧力媒体を利用して、コントロール用ルーメン20を通じてバルーン42の内部空間に供給することで、図6に仮想線で表されているようにバルーン42を周方向外方に部分的に膨出変形させて突出部を発現させるようになっている。
【0051】
なお、圧力給排源によってバルーン42の内部空間に及ぼされる圧力を調節することでバルーン42の突出量を制御することが出来る。また、バルーン42の内部空間に対して圧力の除去乃至は吸引を行うことによりバルーン42を収縮させ、バルーン42の突出を解除することが出来るようになっている。
【0052】
このような本実施形態の血栓吸引カテーテル40においても、バルーン42の突出に伴って、カテーテル本体12の先端部分には、突出反力と共に血管内壁への当接反力が何れも特定方向への湾曲力として作用する。それ故、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10と同様な効果が発揮され得る。
【0053】
加えて、バルーン42で構成された突出部は、第一の実施形態におけるコントロールワイヤ28で構成された突出部に比して、血管への当接面積を大きく確保することが容易である。それ故、バルーン42の血管内壁への当接に基づいて、カテーテル本体44の先端部分を、血管内の所定位置により安定して保持することが可能となる。また、カテーテル本体44からの突出部の血管内壁への当接力を分散させて、単位面積当たりの当接力を軽減することも可能となる。
【0054】
次に、図8〜9には、本発明の第三の実施形態としての血栓吸引カテーテル46の先端部分が示されている。本実施形態の血栓吸引カテーテル46は、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10におけるコントロールワイヤ28に代えて異形ワイヤ48を採用したものである。
【0055】
かかる異形ワイヤ48は、カテーテル本体12のコントロール用ルーメン20内で軸方向に変位可能に挿入されており、図示はされていないが、ハブ(14)側の基端部分において、コントロール用ルーメン20に対する送り込み方向と引き出し方向に変位操作できるようになっている。また、図8に示されているように、異形ワイヤ48の先端部分には、単体での初期形状において「く」字形の異形部50が設けられている。更に、異形ワイヤ48は、少なくとも異形部50の部分において、ばね材等の弾性材料で形成されており、異形部50が外力で変形可能で且つ外力を除くと「く」字形の初期形状に復元するようになっている。
【0056】
そして、異形ワイヤ48をコントロール用ルーメン20への送り込み方向側の移動させて、異形部50を、カテーテル本体12の開口部30に位置合わせすることにより、図8に示されているように、異形部50が開口部30からカテーテル本体12の外周面上に突出して突出部を構成するようになっている。一方、異形ワイヤ48をコントロール用ルーメン20から引き出し方向側に移動させて、異形部50を、カテーテル本体12の開口部30の位置から基端側に外すことにより、図9に示されているように、異形部50は、コントロール用ルーメン20の周壁で抑え付けられて、突出状態が解除され、略直線状に変形させられてカテーテル本体12内に収納されることとなる。
【0057】
このような本実施形態の血栓吸引カテーテル46においても、異形部50を開口部30を通じてカテーテル本体12の外方に突出させることにより、カテーテル本体12の先端部分には、突出反力と共に血管内壁への当接反力が何れも特定方向への湾曲力として作用する。それ故、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10と同様な効果が発揮され得る。
【0058】
次に、図10〜11には、本発明の第四の実施形態としての血栓吸引カテーテル52の先端部分が示されている。本実施形態の血栓吸引カテーテル52は、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10におけるコントロールワイヤ28に代えて筒状弾性体54を採用したものである。
【0059】
かかる筒状弾性体54は、弾性変形可能な筒状体からなり、軸方向に圧縮変形させられることに伴って軸直角方向で外方に膨出変形するようになっている。具体的には、例えば金属や合成樹脂等の変形可能な繊維を筒状に編成したものの他、筒状のゴム様弾性体などが、筒状弾性体54として用いられ得る。
【0060】
そして、この筒状弾性体54は、カテーテル本体12の先端部分において、コントロール用ルーメン20に収容された状態で、開口部30の形成部位に配設されている。また、筒状弾性体54の軸方向基端部分は、カテーテル本体12に対して軸方向で位置固定に支持されている。一方、筒状弾性体54の軸方向先端部分は、カテーテル本体12におけるコントロール用ルーメン20の軸方向で変位可能とされている。
【0061】
さらに、コントロール用ルーメン20には、外力伝達ワイヤ56が挿通されており、第一の実施形態のガイドワイヤ24と同様に、その基端側が図示しないハブ(14)を介してコントローラ(26)に接続されている。このコントローラ(26)の操作により、外力伝達ワイヤ56がコントロール用ルーメン20への送込方向と引出方向で軸方向に駆動されるようになっている。
【0062】
また、外力伝達ワイヤ56の先端側は、筒状弾性体54に挿通されて、筒状弾性体54の軸方向先端部分に固着されている。これにより、外力伝達ワイヤ56がコントローラ(26)の操作でコントロール用ルーメン20から引出方向に駆動されると、図11に示されているように、筒状弾性体54の先端部分が基端部分に向かって引き寄せられて筒状弾性体54が軸方向で圧縮変形する。それに伴い、筒状弾性体54は外方に膨出変形して、カテーテル本体12の開口部30から外方に向かって突出する突出部58が生ずることとなる。
【0063】
特に、筒状弾性体54は、開口部30を通じて外部に露出する部分を除いて、外方への膨出変形がカテーテル本体12のコントロール用ルーメン20の周壁部で制限されている。それ故、筒状弾性体54が軸方向で圧縮変形されるに伴う外周側への膨出変形が開口部30を通じての外方への膨出変形に集中することとなり、突出部58が効率的に大きく突出させられる。
【0064】
なお、外力伝達ワイヤ56をコントロール用ルーメン20への送込方向に駆動させることにより、筒状弾性体54は軸方向に伸長されることとなり、それに伴い、図10に示されているように、突出部58が消失されて、筒状弾性体54は、再び、コントロール用ルーメン20に収納される。
【0065】
このような本実施形態の血栓吸引カテーテル52においても、筒状弾性体54を軸方向に圧縮変形させて開口部30を通じてカテーテル本体12の外方に突出する突出部58を発現させることにより、カテーテル本体12の先端部分には、突出反力と共に血管内壁への当接反力が何れも特定方向への湾曲力として作用する。それ故、第一の実施形態の血栓吸引カテーテル10と同様な効果が発揮され得る。
【0066】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態における具体的な記載によって限定されるものでない。例えば、前記実施形態では、血栓吸引カテーテルに本発明を適用したものを例示したが、薬液注入カテーテルや内視鏡カテーテル等にも適用可能であり、また、消化器系や気管支系等の各種体内管状組織に用いられる各種のカテーテルへの適用も可能である。
【0067】
特に、薬液注入カテーテルや内視鏡カテーテルに本発明を適用した場合でも、吸引用カテーテルと同様に、カテーテル本体の先端面に設けられる薬液注入口や内視鏡観察面が、血管等の体内管状組織の湾曲部分において外周壁面に当接してしまうことを避けて湾曲方向内方に向けられることにより、目的とする部位に対して薬液投与や内視鏡観察を有利に行うことが可能となる。
【0068】
また、そのような各種用途に応じてカテーテルの具体的構造も異なるものであり、例えば前記実施形態に示されたガイドワイヤ用ルーメン18及びガイドワイヤ24も、本発明において必須ではない。
【0069】
また、カテーテル本体12に収納された突出部32,58を外部に突出させるために開口部30を設ける場合でも、前記実施形態のように所定の開口面積をもった開口部30の他、カテーテル本体12の弾性に基づいて閉塞状態に保持されるスリット形状の開口部を採用しても良い。このようなスリット形状の開口部は、突出部32,58の突出に際してだけ開口することとなる。
【0070】
また、突出部は、非突出状態においてカテーテル本体12内に完全に収納される必要はなく、その突出状態に比して、カテーテル本体12に対する湾曲力を及ぼさない程度に突出量が小さくされていれば良い。
【0071】
また、コントロールワイヤ28の突出部32をX線不透過材で形成すること等により、突出部32に造影マーカーを設けることで、突出部32の突出方向や突出量を処置者が確認できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0072】
10:血栓吸引カテーテル、12:カテーテル本体、14:ハブ、16 吸引用ルーメン、20:コントロール用ルーメン、26:コントローラ、28:コントロールワイヤ、30:開口部、32:突出部、34:血管、36:血栓、38:造影マーカー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の管状器官に挿入されるカテーテルであって、
可撓性のカテーテル本体の先端部分において周上で部分的に突出して該管状器官の内面への当接反力を利用して該カテーテル本体の先端部を湾曲させる方向変換用の突出部と、
該突出部を突出状態と非突出状態とに制御するコントロール手段と
を、設けたことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記カテーテル本体の先端部分の外周面に開口部を形成して、
前記コントール手段による前記突出状態で前記突出部が該開口部から外方に突出される一方、該コントロール手段による前記非突出状態で該突出部が該開口部から突出しないで該カテーテル本体の内部に収納されるようにした請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記カテーテル本体にコントロール用ルーメンを形成して、該コントロール用ルーメンにコントロールワイヤを挿通し、
該コントロールワイヤの先端を該カテーテル本体の先端に固定すると共に、該コントロール用ルーメンを前記開口部を通じて該カテーテル本体の外周面に開口させる一方、
前記コントロール手段により、該コントロールワイヤの基端側に対して該コントロール用ルーメンへの送込方向と引出方向とに外力を及ぼすことによって、該コントロールワイヤを該開口部を通じての該コントロール用ルーメンからの突出状態と該コントロール用ルーメンへの収納状態とに制御可能とした請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記カテーテル本体の先端部分に設けられて周上で部分的に突出するバルーンによって前記突出部を構成すると共に、
該カテーテル本体にコントロール用ルーメンを形成して、前記コントロール手段により、該コントロール用ルーメンを通じて該バルーンへの圧力流体の供給と排出とを行うことで該バルーンが膨出した突出状態と収縮した非突出状態とに制御可能とした請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテル本体に治療用ルーメンが形成されており、且つ、該治療用ルーメンの該カテーテル本体の先端面における開口部が、前記突出部の突出方向に対して該カテーテル本体の軸直角方向反対側に偏倚している請求項1〜4の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記カテーテル本体において、前記治療用ルーメンに対して軸直角方向反対側に偏倚してガイド用ルーメンが形成されており、該ガイド用ルーメンにガイドワイヤが挿通可能とされている請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記カテーテル本体の少なくとも先端部分における曲げ剛性が、前記突出部が突出する側の半周部分と、それと反対側の半周部分とで相互に異なっており、該突出部が突出する側の半周部分がそれと反対側の半周部分よりも曲がり難くされている請求項1〜6の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記突出部の突出方向の指標となる造影マーカーが設けられている請求項1〜7の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項1】
体内の管状器官に挿入されるカテーテルであって、
可撓性のカテーテル本体の先端部分において周上で部分的に突出して該管状器官の内面への当接反力を利用して該カテーテル本体の先端部を湾曲させる方向変換用の突出部と、
該突出部を突出状態と非突出状態とに制御するコントロール手段と
を、設けたことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記カテーテル本体の先端部分の外周面に開口部を形成して、
前記コントール手段による前記突出状態で前記突出部が該開口部から外方に突出される一方、該コントロール手段による前記非突出状態で該突出部が該開口部から突出しないで該カテーテル本体の内部に収納されるようにした請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記カテーテル本体にコントロール用ルーメンを形成して、該コントロール用ルーメンにコントロールワイヤを挿通し、
該コントロールワイヤの先端を該カテーテル本体の先端に固定すると共に、該コントロール用ルーメンを前記開口部を通じて該カテーテル本体の外周面に開口させる一方、
前記コントロール手段により、該コントロールワイヤの基端側に対して該コントロール用ルーメンへの送込方向と引出方向とに外力を及ぼすことによって、該コントロールワイヤを該開口部を通じての該コントロール用ルーメンからの突出状態と該コントロール用ルーメンへの収納状態とに制御可能とした請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記カテーテル本体の先端部分に設けられて周上で部分的に突出するバルーンによって前記突出部を構成すると共に、
該カテーテル本体にコントロール用ルーメンを形成して、前記コントロール手段により、該コントロール用ルーメンを通じて該バルーンへの圧力流体の供給と排出とを行うことで該バルーンが膨出した突出状態と収縮した非突出状態とに制御可能とした請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテル本体に治療用ルーメンが形成されており、且つ、該治療用ルーメンの該カテーテル本体の先端面における開口部が、前記突出部の突出方向に対して該カテーテル本体の軸直角方向反対側に偏倚している請求項1〜4の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記カテーテル本体において、前記治療用ルーメンに対して軸直角方向反対側に偏倚してガイド用ルーメンが形成されており、該ガイド用ルーメンにガイドワイヤが挿通可能とされている請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記カテーテル本体の少なくとも先端部分における曲げ剛性が、前記突出部が突出する側の半周部分と、それと反対側の半周部分とで相互に異なっており、該突出部が突出する側の半周部分がそれと反対側の半周部分よりも曲がり難くされている請求項1〜6の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記突出部の突出方向の指標となる造影マーカーが設けられている請求項1〜7の何れか1項に記載のカテーテル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−213800(P2010−213800A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61943(P2009−61943)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
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