説明

カプセル化された腎臓組織

ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む治療用インプラントを提供する。また、患者における病状を治療するための方法であって、患者の中に、ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む治療用インプラントを埋め込むことを含む、方法も開示する。また、治療用インプラントを製造するための方法であって、腎組織を提供することと、腎組織を、ポリマーを含む溶液と混合して、それにより、組織−ポリマー懸濁液を形成することと、組織−ポリマー懸濁液をビーズ形成溶液に押し出して、それにより、腎組織がカプセル化されたポリマーのビーズを含む治療用インプラントを形成することと、を含む、方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2007年12月20日に出願された米国仮出願第61/015,328号の利益を主張し、その内容全体を参照により組み入れる。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、ポリマーにおける組織のカプセル化に関係する。
【0003】
〔発明の背景〕
腎臓は、生理学的なホメオスタシスを維持する際に、重要な役割を果たしている。そのホメオスタシス機能には、酸−塩基バランス、電解質濃度の調節、血圧および血量の調節がある。腎臓は、独立に、また、血流に分泌されたホルモンおよびタンパク質の作用を通じ他の臓器システムと協働して、これらの機能を達成する。これらの分泌されたタンパク質には、エリスロポエチン(Epo)、ウロジラチン、レニン、およびビタミンDと同様に、アディポネクチンやレプチンといったあまり強調されることのないタンパク質が含まれる。
【0004】
アディポネクチン(AdipoQ、Acrp30、apM1、およびGBP28としても知られている)は、抗炎症特性を有することが知られている脂肪細胞由来サイトカインである。さらに、それは、肝臓との相互コミュニケーションを通じて、血液グルコースレベルを調節するように機能する。アディポネクチンの正常な血液濃度は、ヒトでは、5〜30μg/mLである。これまでの研究によると、アディポネクチンの循環レベルは、ヒトおよびマウスでは、慢性的なカロリー制限中に上昇することが示されてきた。一方、ヒトの血漿中の低レベルのアディポネクチンは、高レベルのインスリン、グルコース、およびトリグリセリドと同様に、増大した肥満と相関する。形質転換マウスにおけるヒトアディポネクチンの過剰発現は、脂肪蓄積の抑制、および高カロリー食による早死の防止をもたらすことが示されている。さらに、糖尿病感受性遺伝子座が、染色体3q27、すなわち、ヒトアディポネクチン遺伝子の位置にマッピングされた。糖尿病および関連した並存疾患を治療する際に、アディポネクチン血液レベルを高めることは、治療価値を有し得る。
【0005】
レプチンは、食欲を減退させたり代謝を高めたりすることにより、エネルギー摂取量およびエネルギー消費量を調節する際に重要な役割を果たすような、16kDaタンパク質ホルモンである。最近では、レプチンが、糖尿病性腎症のマウスモデルにおいて、腎損傷から腎臓を保護する際に、役立つことが知られている。さらに、レプチンは、血管内皮成長因子をアップレギュレーションすることにより、血管形成を促進する。
【0006】
30年間以上、エリスロポエチン(Epo)(主に腎臓で合成され分泌される、30.4kDaタンパク質)は、貧血に冒されている患者における赤血球産生を刺激するためにうまく用いられてきた。最近では、EPOの有益な効果は、赤血球細胞産生の刺激を優に超えていることが明らかになっている[Brines et al., Kidney Int., 2006; 70(2):246-250]。Chong et al.によるこれまでの研究により、Epoが、虚血性傷害から血管内皮を保護することが立証された[Chong et al., Circulation, 2002; 106(23):2973-9]。他の者は、これらの発見を検証しており、血管疾患のさまざまな動物モデルにおいて、Epoが内皮細胞に対する保護効果を有することを示している[Santhanam et al., Stroke, 2005; 36 (12):2731-7;Satoh et al., Circulation, 2006; 113(11): 1442-50;Urao et al., Circulation Research, 2006; 98(11): 1405-13]。慢性腎不全では、腎臓による不適切なEpo産生のために、患者は貧血になる。置換療法として投与された組換えEpoは、ヘマトクリットおよび血液ヘモグロビン濃度を回復して、血液輸血の必要性を解消する。しかしながら、この治療は、週あたり2〜4回、静脈内または皮下のいずれかに、定期的なEpoの注射を必要とする。Epo投薬は煩雑であり、ノンコンプライアンスおよび頻繁な患者で、血液Epoおよびヘマトクリット値の周期的変動をもたらす。
【0007】
心臓血管系におけるEpoの保護効果と同様に、組換えEpo治療に関連する現在の挑戦を考慮すると、Epo溶出装置の埋め込みが、現在の治療モダリティに対して効果的な代替案であるかもしれない。また、このような埋め込み可能な装置は、ヘマトクリット値をよりよく制御するかもしれないし、傷害から臓器微小血管系をも潜在的に保護するかもしれない。
【0008】
代替的なEpo送達システムを開発することに焦点をおいた現在の研究が、進行中である。研究者は、異なる種類の生体吸収性ポリマーに、組換えEpoをカプセル化することの実現可能性を示している[たとえば、Yeh et al., J. Microencapsulation, 2007; 24(l):82-93;Pistel et al., J. of Controlled Release, 1999; 59(3):309-325;Bittner et al., European Journal of Pharmaceutics an Biopharmaceutics , 1998; 45:295-305;Morlock et al., Journal of Controlled Release, 1998; 56: 105-115を参照のこと]。いくつもの技術を用いて、ペプチドおよび小分子を生体分解性エンベロープにカプセル化することが達成され得るが、タンパク質のカプセル化には、関連する課題がある。たとえば、最小の初期バーストを有する連続的なEpo放出プロファイルと同様に、マイクロスフェア内に十分なタンパク質充填を得ることは難しい。組換えEpoを充填された埋め込み可能な装置の開発には、長期間のロバストな疾患管理を確実にするために、頻繁な薬剤充填、または装置置換が必要とされるかもしれない。
【0009】
他の研究者は、組換えEpoにあまり重点を置いておらず、遺伝子操作および細胞治療アプローチを追求している。Naffakah et al.は、遺伝子組換え細胞からのEpoの分泌が、慢性貧血を治療するための反復注射の代替物であり得るかどうか試験した。Naffakh et al., Human Gene Therapy, 1996; 7(1): 11- 21。この研究では、マウスホスホグリセリン酸キナーゼプロモータの制御下でマウスEpo cDNAを発現するレトロウイルスベクターにより、一次マウス皮膚線維芽細胞を形質導入した。コラーゲンゲルに包埋された遺伝子組換え線維芽細胞を含むこれらの「ネオ臓器」を、マウスの腹膜腔に埋め込んだところ、観察期間10ヶ月後に、ヘマトクリットおよび血清Epo濃度の増加が生じた。Epo分泌性線維芽細胞の埋め込みは、長期間のin vivo Epo送達のための有望な方法を示している。
【0010】
同様に、Orive et al.は、ex vivo遺伝子治療アプローチの長期機能性について調査した。Orive G et al., Molecular Therapy, 2005; 12(2):283-9。Epo分泌性筋芽細胞を充填したポリマーマイクロカプセルを、同系および同種マウスの腹膜組織および皮下組織に埋め込んだ。埋め込まれたマウスすべてで、高く、持続したヘマトクリットレベルが、100日を超えて維持された。興味深いことに、同種マウスに埋め込まれたカプセルの機能性は、埋め込み後210日目まで存続した。これらの結果は、同種モデル内の長期間のEpo送達のための、細胞カプセル化技術の実現可能性を示している。
【0011】
さらに、多くの会社も細胞カプセル化技術を開発している。StemCells(CytoTherapeutics)は、細胞カプセルであって、外科的に埋め込むことができ、神経学的適用のために、血液脳関門をこえて物質を放出することができるような細胞カプセルを開発している。Novocell Inc.(San Diego, CA)は、インスリン依存性糖尿病のためのカプセル化された膵島細胞を開発している。Islet Technology, Inc.(St. Paul, Minnesota)も、膵島マイクロカプセル化技術を開発しており、糖尿病のイヌにおけるインプラントの、3年を超える長期間の持続性を示している。Amcyte Inc.(Santa Monica, CA)は、光架橋可能なアルギン酸またはポリエチレングリコールカプセルを用いて、人工膵臓を形成するための膵島細胞を開発している。最後に、MicroIslet Inc.(San Diego, CA)は、高度生体適合性のアルギン酸を用いて、腹腔へと注射するためのマイクロカプセル化されたブタ膵島の懸濁液を開発している。
【0012】
実際に、いくつもの努力があり、治療用薬剤を送達するための手段として、細胞およびタンパク質のカプセル化を開拓することを試みている。全体として、最新技術は、非常に説得力のあり有用なデータを生み出しており、これらの努力により、in vivoでのEpoの制御された長期間送達の方法としての、カプセル化の有用性が示されてきた。しかしながら、遺伝子組換え細胞のカプセル化を治療用目的のために利用することができる以前に、解決されなければならない重要な安全性の問題が存在する。
【0013】
治療的配置に関連した従来の問題を解決するような埋め込み可能な装置が、いまだ必要とされている。
【0014】
〔発明の概要〕
ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む治療用インプラントを提供する。また、患者における病状を治療するための方法であって、ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む治療用インプラントを患者の中に埋め込むことを含む、方法も提供する。
【0015】
また、治療用インプラントを製造するための方法であって、腎組織を提供することと、ポリマーを含む溶液と腎組織を混合して、それにより、組織−ポリマー懸濁液を形成することと、組織−ポリマー懸濁液を、ビーズ形成溶液に押し出して、それにより、腎組織が中でカプセル化されたポリマーのビーズを含む治療用インプラントを形成することと、を含む、方法も提供する。
【0016】
〔例示的な実施態様の詳細な説明〕
治療用薬剤を送達するための方法として、細胞カプセル化への興味が高まっているにもかかわらず、組織フラグメント全体のカプセル化にはわずかな興味しか払われていない。現在、細切れにした腎臓組織のカプセル化が、組織拒絶を防ぐための免疫学的障壁を提供しながら、内因性細胞から天然のEpoおよび他の有益な薬剤を送達する機会を提供することが発見されている。本願で発見されたように、腎臓組織から構成される、誘導性で有益な薬剤を分泌する埋め込み可能な装置の移植により、現在の赤血球産生刺激薬剤にまつわる金銭上、安全上、および医療上の課題を劇的に軽減することが可能である。また、腎臓組織カプセル化技術は、様々な病状の治療のための他の治療技術の開発をも可能にするかもしれない。
【0017】
本開示において、単数形“a”、“an”、および“the”には、複数の言及が含まれ、特定の数値に対する言及には、内容が別に明確に示されていない限り、少なくともその特定の値が含まれる。先行詞「約」を用いることにより、値が概算値として表現されている場合には、特定の値が別の実施態様を形成していることが理解されるだろう。存在する場合、すべての範囲が、包括的であり結合可能である。
【0018】
ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む治療用インプラントを提供する。本インプラントは、in vivoでの導入および埋め込み後の治療効果を提供するのに適している。本インプラントにおける使用のための腎組織は、自家組織、同種組織、異種組織、またはそれらの任意の組み合わせであるかもしれない。腎組織は、本インプラントにおける使用のために、大きさを加工してもよく、この加工は、たとえば、腎組織の原料をフラグメントに細切れにすることによる。このようなフラグメントは、約1mm未満の大きさを有していてもよいし、または、より大きくてもよい。フラグメントの大きさは、好ましくは、最も大きな寸法に関して、たとえば、フラグメントが1:1を超える縦横比を有する場合には縦方向に、フラグメントがおおよそ立方体である場合には側面の長さで、または、フラグメントがおおよそ球状である場合には直径でなどと測定する。細切れにすることに加えて、フラグメントは、組織の寸法を減らすようにさらに大きさを加工してもよい。たとえば、フラグメントは、実質的にすべてのフラグメントが、約300μm未満、約150μm未満、約100μm未満、または約50μm未満になるまで、さらに細切れにしてもよい。本発明のインプラントにおける腎組織の全量は、少なくとも約100mg、少なくとも約50mg、少なくとも約30mg、または、少なくとも約10mgであってもよい。さまざまな因子(たとえば、腎組織の望ましい全表面積、治療の種類、腎組織の種類、治療を受ける患者の特徴、治療が望まれる病状の種類および段階、組織から分泌される材料の量および種類、ならびに本分野の当業者により正しく評価されるだろう他の因子)が、インプラントにおける腎組織の量、個々の組織フラグメントの大きさ、またはその両方を決定するために用いられてもよい。
【0019】
ポリマービーズは好ましくは、生体適合性ポリマー(たとえば、天然に生じた生体ポリマー、または合成由来の生体ポリマー)を含む。ポリマービーズは、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、ポリ−L−リジン、カラギーナン、ペクチン、トラガカントゴム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、I型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリン、またはそれらの任意の組み合わせといったポリマーを含む。好ましいポリマーの組み合わせは、アルギン酸、およびポリ−L−リジンを含む。このようなポリマーは簡単に市販されている。
【0020】
用語「ビーズ」は、ポリマーに関連して用いられる場合、ポリマー組成物が、概しておおよそ球状形態をとるが、卵形または楕円形であってもよいということを伝えることを意図している。ポリマービーズの正確な形態は本発明には重要なことではなく、腎組織がポリマー内に実質的に包まれることができる任意の形態が許容される。その最大寸法について測定される場合、ポリマービーズは約0.5mm〜約10mmの直径を有してもよいし、好ましくは、約3mm〜約6mmである。ポリマービーズの大きさは、埋め込み前、または埋め込み後のビーズの特性に応じて測定され得る。ポリマービーズは自発的に出芽してもよいので、ポリマービーズの大きさは、未出芽のビーズに関して、または出芽した結果生じたビーズに関して、測定されてもよい。
【0021】
ポリマービーズの特徴は、即席インプラントが、ビーズの中から、ビーズが埋め込まれた周囲環境、または、さもなければ含まれている周囲環境に有益な薬剤を分泌することを可能にする。言い換えると、ポリマービーズは、ビーズ内にカプセル化された腎組織により分泌される物質に対して透過性である。腎組織は、内因性で、天然に生じる組織であってもよいし、または、天然には存在していない遺伝子もしくは遺伝子部分の挿入といった遺伝子改変を含む細胞を含んでいてもよい。遺伝子改変または挿入を含む腎組織は、内因性または天然に生じる組織が分泌できない物質を分泌することが物理的に可能であってもよい。腎組織、したがって同様に、本発明のインプラントは、任意の化合物であって、内因性または改変された(たとえば、遺伝子改変された)腎組織が物理的に産生することが可能である化合物を分泌してもよい。たとえば、腎組織は、1つ以上のホルモン、プロホルモン、タンパク質、成長因子、栄養因子、またはそれらの任意の組み合わせを分泌してもよい。追加の実施例のように、また、本明細書でさらに説明するように、組織は、エリスロポエチン、MCP−1、アディポネクチン、レプチン、およびMMP−2のうち1つ以上を分泌してもよい。遺伝子改変された組織から分泌されてもよい化合物は、理論的には実質的に限定されない。
【0022】
患者における病状を治療するための方法であって、ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む治療用インプラントを患者の中に埋め込むことを含む、方法も提供する。本インプラントは、多くの有用な薬剤を分泌することができるので、多種多様な病状を治療するために、本発明の方法を用いることができる。本明細書で用いるように、「治療」は、予防のための治療、または任意の病理学上の表現型の軽減について言及してもよい。本発明により治療が提供される病状は、貧血、脳卒中、心臓血管疾患、または任意の腎疾患であってもよい。すなわち、任意の病理であって、不適当な腎臓機能に直接的にまたは関節的に関連する病理、不適当な腎臓機能をもたらす病理、または、不適当な腎臓機能により少なくとも部分的に引き起こされる病理である。腎疾患は、遺伝性であっても、先天性であっても、獲得されたものであってもよい。腎疾患の非限定的な例には、多発性嚢胞腎、アルポート症候群、遺伝性腎炎、原発性シュウ酸尿、シスチン尿、腎炎、腎炎症候群、高血圧、糖尿病、急性腎疾患、慢性腎疾患(持続性タンパク尿)、尿細管性アシドーシス、糸球体疾患、およびグッドパスチャー症候群が含まれる。Epoによる治療の利益は、たとえば、多くの病理に関して広く記録されており、本分野の当業者により簡単に理解される。本方法で用いるためのポリマービーズおよび腎組織の特徴は、本発明の治療用インプラントに関して、これまでに説明されているとおりであってもよい。
【0023】
本発明はまた、治療用インプラントを製造するための方法を目的とする。治療用インプラントを製造するための方法は、本開示にしたがって用いることができる治療用組成物の製造をうまくもたらす。本方法は、腎組織を提供することと、ポリマーを含む溶液と腎組織を混合して、それにより、組織−ポリマー懸濁液を形成することと、組織−ポリマー懸濁液をビーズ形成溶液に押し出し、それにより、腎組織が中でカプセル化されたポリマーのビーズを含む治療用インプラントを形成することと、を含む。
【0024】
組織種類を選択すること、および大きさを加工することを含む、これまでに開示された技術にしたがって、腎組織を準備してもよい。本願発明にしたがって、腎組織と混合されたポリマー溶液は、ポリマーおよび成長培地の組み合わせを含んでもよい。上記に説明したとおり、ポリマーの特徴を決定してもよい。即席成長培地のために、任意の許容可能な培養培地、栄養培養液、または同様のものが用いられてもよく、適切な成長培地(培地の混合物を含んでもよい)の特徴は、本分野の当業者により簡単に決定される。pH、グルコース濃度、成長因子、および他の栄養成分の存在について、成長培地は変動しうるが、成長培地は、腎組織の栄養要求のうちの少なくともいくつかを満たすべきであるし、好ましくは、ほとんど、または、すべての栄養要求を満たすし、また、腎組織を維持し育てるために必要とされるpH、および、他の化学的特徴を有するべきである。適切な培地の例は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Invitrogen, Carlsbad, CA)である。成長培地は市販されており、本分野の当業者は適切な培地を簡単に認識することができる。感染を防ぐために、抗生物質(たとえば、ペニシリン、ストレプトマイシン、および同様のもの)を成長培地に加えてもよい。血清(たとえば、ウシ胎仔血清)もまた、成長培地に加えてもよい。
【0025】
懸濁液(すなわち、腎組織がポリマー溶液中に実質的に均一に懸濁されている混合液)を形成するために適した任意の手段(たとえば、撹拌、かき混ぜ、または注入)により、腎組織およびポリマー溶液を混合することを達成してもよい。たとえば、腎組織およびポリマー溶液を第1の容器(たとえば、シリンジ)に充填することと、その溶液を(たとえば、シリンジの中身を第2のシリンジに放出することにより)別の容器に移すことと、溶液を第1の容器に移し戻すことと、その後、必要ならば、懸濁液が達成されるまでこのサイクルをくり返すこととによって、混合することを達成してもよい。
【0026】
懸濁液を形成した後、懸濁液をビーズ形成溶液に押し出して、腎組織がカプセル化されたポリマービーズを形成する。押し出しは、懸濁液をシリンジから排出すること、または、そうでなければ、1つの容器からビーズ形成溶液が含まれる別の容器へと、懸濁液を移すこと、あるいは、ビーズ形成溶液を懸濁液が入れられた容器へと移すことを含んでもよい。ビーズ形成溶液は、イオン性溶液、架橋溶液、または両方のものであってもよい。1つの実施態様では、ビーズ形成溶液は、CaClを含む。カプセル化された腎組織を有するポリマービーズは、ビーズ形成溶液と組み合わされると自発的に形成されてもよい。ビーズ形成過程は、たとえば、懸濁液およびビーズ形成溶液の混合物を撹拌すること、混合物の温度を調節すること(たとえば、温度を上げること)、またはその両方により、さらに助けられてもよい。
【0027】
ポリマービーズの形成後、ビーズを架橋溶液に入れることにより、ビーズの化学的架橋を達成してもよい。架橋のために、ビーズを、ポリマー(好ましくは、ビーズの主なポリマー成分とは異なるポリマー)の希釈溶液に移してもよい。たとえば、ポリマーの主成分がアルギン酸を含むならば、アルギン酸ビーズを架橋するために、ポリ−L−リジンの希釈溶液を用いてもよい。ビーズ形成溶液における「産生」後、または、架橋後に、ポリマービーズに追加のポリマー層を選択的に加えてもよい。好ましくは、追加のポリマー層は、ポリマービーズの主成分を構成する同じポリマーを含む。たとえば、主成分がアルギン酸であるビーズに、追加のアルギン酸層を加えてもよい。追加の層が作られるだろうポリマーを含む希釈ポリマー溶液に、ビーズを入れることにより、別のポリマー層をポリマービーズに加えることが達成されてもよい。
【0028】
本発明は、以下の実施例において、さらに明らかにされる。これらの実施例は、本発明の実施態様を示すものであるが、例示の目的でのみ提供され、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されるべきである。上記の議論およびこれらの実施例から、本分野の当業者は、本発明の本質的な特徴を確かめることができ、その精神および範囲から逸脱することなくさまざまな使用法および条件に適するように、本発明をさまざまに変更し修正することができる。
【0029】
〔実施例1:治療用インプラントの形成〕
メスのLong Evansラット(8週齢)由来の4つの腎臓を外科的に取り除き、Ca2+およびMg2+を含まない氷冷したリン酸緩衝食塩水(PBS)(Invitrogen, Carlsbad, CA)で洗浄し、その後、外科用メスを用いて、細片(1〜5mm)に細切れにした。その後、組織フラグメントをさらに細切れにするために、300μMスチールシーブ(steel sieve)(Sigma, St Louis, MO)を用いた。その後、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)および1%ウシ胎仔血清(FBS)(Hyclone, Logan, UT)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)を含む成長培地30〜50mLで、細切れにした組織を3回洗浄した。最後の洗浄液を完全に取り除き、2シリンジ混合システム(two syringe mixing system)のうちの1つの1mLシリンジに、組織フラグメントを充填した。1.8%(w/v)アルギン酸溶液(Sigma)を成長培地中で調製し、第2の1mLシリンジ中に充填した。その後、両方のシリンジを通して内容物を前後に押すことにより、2つの溶液を混合した。その後、細切れにした組織−ゲル懸濁液を、100mM CaCl溶液に押し出した。その後、もたらされたカプセル化された組織ビーズを、CaCl中で、5分間ゆっくりと撹拌しながら、室温でインキュベーションした。その後、5分間、1%FBSを含む0.05%(w/v)ポリ−L−リジン(分子量24,000)(Sigma)に移すことにより、ビーズを化学的に架橋し、その後、5分間、1%FBSを含む0.1(w/v)アルギン酸溶液の別の層でコーティングした。その後、成長培地0.5mL、または、100ng/mLポリ−D−グルタミン酸(pDGA)(Sigma)を含む成長培地0.5mLを含む、24ウェル低クラスター組織培養ディッシュ(24 well low-cluster, tissue culture dish)の個々のウェルに、4〜10個のビーズを移して、4日間、標準酸素または低酸素(5%酸素)空気条件下、37℃で培養した。デジタルカメラおよびエクリプスTE2000−U顕微鏡(Eclipse TE2000-U microscope)(Nikon, 日本)を用いて、ビーズを外観検査し、画像化した。
【0030】
アルギン酸カプセル化された組織ビーズの外観検査により、2方向シリンジシステムによる手動押し出しが、球状の組織を含むビーズを生成する際に効果的であることが示された。アルギン酸ビーズ内の組織フラグメントも明らかであり、アルギン酸ゲル全体の均一分布を示していた。
【0031】
〔実施例2:ビーズ直径測定〕
14個の組織を含むビーズそれぞれを、清潔な組織培養プレートに置き、デジタルカメラを取り付けたNikon解剖顕微鏡を用いて画像化した。その後、各ビーズの直径を、IMAGE PRO PLUSソフトウェアを用いて測定した。
【0032】
アルギン酸カプセル化された組織ビーズの外観検査により、2方向シリンジシステムによる手動押し出しが、球状の組織を含むビーズを生成する際に効果的であることが示された。アルギン酸ビーズ内の組織フラグメントも明らかであり、アルギン酸ゲル全体の均一分布を示していた。フラグメント化された腎臓組織3.72gから115個のビーズを生成し、ビーズ当たりおよそ32mgの組織をもたらした。表1は、ビーズ直径の分布を示している。
【表1】

14個のビーズそれぞれの平均直径は、4.56±0.44mmであることがわかった。
【0033】
〔実施例3:細胞生存力の評価〕
代謝活性に応答して減少する酸化還元比色指示薬であるALAMAR BLUE(Invitrogen)を用いて、細切れにした腎臓組織の生存力を評価した。培養4日後、カプセル化されていない腎臓組織、カプセル化された腎臓組織、イソプロパノール固定腎臓組織、および成長培地のみのサンプルから、使用済みの成長培地を取り除いた。10% ALAMAR BLUEを含む成長培地1mLをサンプルに加え、やさしくゆらしながら、37℃、5%COで、2〜4時間、さらにインキュベーションした。その後、分光光度法により(SPECTRAMAX-190;Molecular devices, Sunnyvale, CA)、570nmおよび600nmで、使用済みの培地を分析した。各サンプル由来の培地を3回分析した。ALAMAR BLUEの減少割合は、業者の指示にしたがって測定され、細胞生存力の間接的な測定値である。
【0034】
培養4日後、組織生存力を評価した。カプセル化していない組織と比較して、カプセル化は、より高い組織生存力を維持した(図1)。通常酸素下または低酸素下で培養されたカプセル化していない腎臓組織は、同様の相対的な平均生存力を示し、それぞれ20.9%±3.4%および21.0%±1.9%であった。しかしながら、通常酸素下または低酸素下で培養されたカプセル化された腎臓組織は、相対的な平均組織生存力について、増加を示した。カプセル化された組織は、83.5%±4.5%の相対的な平均組織生存力を示した。低酸素条件下で培養されたカプセル化された腎臓組織は、31.3%±3.4%の減少した組織生存力をもたらした。期待されるとおり、組織固定により、組織生存力は顕著な減少を生じ、5.0%±0.084%であった。
【0035】
〔実施例4:Epo分泌分析〕
培養4日後、使用済みの培地を収集し、Quantikineマウス/ラットエリスロポエチンELISAキット(R&D systems, MN)を用いて、培養培地中に放出されたEpoの量を決定した。分光光度法により(SPECTRAMAX-190, Molecular devices, Sunnyvale, CA)、540nmで、ELISAプレートを解析した。未知のサンプルの吸光度値を、標準曲線の線形回帰と比較することにより、データを分析した。
【0036】
カプセル化後4日目で、培養培地中に放出されたEpoの量を、ELISAにより決定した。成長培地のみにより得られた吸光度値データに対して、データを正規化した(補正平均)。8〜10個のビーズから得られた使用済みの培地に対して、各測定を実行した。標準誤差(SEM)も計算した。以下の表2に示したデータを、図2に図形的に示した。
【表2】

【0037】
図2において、データバーは、3回の測定の平均を示しており、エラーバーはSEMを示している。8〜10個のビーズから得られた使用済みの培地に対して、各測定を行った。
【0038】
結果は、細切れにした腎臓組織が、周囲の培養培地に45.8±3.3pg/mLのEpoを産生したことを示していた。同様に、アルギン酸カプセル化により、細切れにした組織からのEpo放出が妨げられなかった(79.3±28.6pg/mLのEpoを産生)。Epo産生が化学的に高められるかどうか決定するために、ビーズを調製し、pDGA中で培養した。結果は、pDGA処理により、60.9±10.5pg/mLのEpoがもたらされ、Epo産生には影響を与えないということを示していた。陰性対照として、組織を含まないビーズ由来のEpo産生を決定した。期待したとおり、これらのサンプルからは、測定可能なEpoはまったく検出されなかった。
【0039】
〔実施例5:栄養因子分泌分析〕
培養4日後、使用済みの培養培地をビーズから採取した。使用済みの培養培地から、細胞壊死片を遠心分離により取り除き、培養培地を−80℃で保管した。分析時、以下のタンパク質因子について、使用済みの培地をELISAにより解析した。インターロイキン−4(IL−4)、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、RANTES、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、インターロイキン−10(IL−10)、アディポネクチン、レプチン、マトリクスメタロプロテアーゼ-2(MMP−2)[Searchlightプロテオームアレイ(Pierce Biotechnology Inc.)を用いた]。
【0040】
組織カプセル化されていないビーズ由来の使用済みの培養培地と比較すると、腎組織フラグメントを含むビーズは、MCP−1(50.6±8.9pg/mL)、アディポネクチン(132,060.6±11,226.7pg/mL)、レプチン(10.3±2.6pg/mL)、およびMMP−2(945.2±13.3pg/mL)について、増加した量を分泌し、IL−4、RANTES、GMCSF、およびIL−10については低いか、検出されない量を分泌した。以下の表3に示すとおり、各処理群には、3つのサンプル(1、2、3)が含まれた。
【表3】

STD=標準偏差、SEM=標準誤差。本明細書に示したデータは、図3に図形的に示されており、データバーは、培養4日後に培地に分泌されたタンパク質の平均量を示している。組織を含まないビーズから入手されたバックグラウンド測定は、示されたデータから差し引かれた。エラーバーはSEMを示している。
【0041】
〔実施例6:赤血球産生刺激活性の評価〕
ラット赤血球CD34+細胞(Lonza, Walkersville MD)を、10%FBSを含むIMDM中に15,000細胞/cmで再懸濁する。その後、ビーズ馴化培地を、メチルセルロースコロニー形成解析培地(MethoCult GF H4534, StemCell Technologies, Vancouver BC)に加える。細胞をメチルセルロースに加え、12〜14日間、5%COインキュベーター中に、37℃で、その後のインキュベーションに置く。位相差顕微鏡により、50個を超える細胞を含むコロニーをカウントする。
【0042】
これまでに、カプセル化されたラット腎臓組織由来の馴化培地がEpoを含むことが示されてきた。現在、BFU−E活性により測定されるとおり、馴化培地が赤血球産生刺激活性(ESA)を有することが知られている。
【0043】
〔実施例7:カプセル化された腎組織フラグメントの腎保護効果の評価〕
本研究の目的は、腎疾患のラットモデルにおける、アルギン酸カプセル化されたラット腎臓組織フラグメントの腎保護効果を評価することである。これらの実験のために、初期体重200〜250gのSprague Dawleyラット(糖尿病または非糖尿病)を用いた。塩酸ケタミンおよび塩酸キシラジンの4:1溶液(5mg/kg)を腹腔内に注射することにより、ラットを麻酔した。2段階腎摘出手法により、腎疾患を誘導した。腎被膜を保存しながら、絹糸結紮を用いて、左腎臓の上部および下部(1つの腎臓の2/3)を切除する。10日後、右の腎臓を取り除き、全体の腎臓量のおよそ1/6を残す(5/6腎摘出術)。メチルセルロースによりやさしく圧迫を加えて、出血を止め、腹膜および皮膚を、再吸収性4−0Vicryl縫合糸で層状に閉じる。
【0044】
5/6腎摘出5週後、被膜下にビーズを埋め込む。対照として、フィブリンマトリクスのみを、5/6腎摘出術を行われたラットに注射する。0日目(5/6腎摘出術前)、1日目(細胞移植日)、7日目、14日目、21日目、28日目、および35日目(剖検日)に、血清サンプルを入手した。VETACE CHEMISTRY ANALYZER(Alpha Wassermann Diagnostic Technologies, LLC, West Caldwell, NJ)を用いて、血中尿素窒素およびクレアチニンを定量する。
【0045】
細胞移植後5週目に、二酸化炭素窒息により、すべての群の動物を屠殺する。組織学的分析および転写分析のために、腎臓を取り除く。RT−PCR分析のために、各腎臓の半分を液体窒素で急速凍結する。研究協力者が、凍結腎臓組織から、メッセンジャーRNAを単離し、線維症促進遺伝子および炎症遺伝子を含む低密度マイクロアレイカードを利用して、転写分析を行う。下流の組織学分析のために、残りの被膜腎臓部分を、10%中性緩衝ホルマリンで固定する。
【0046】
組織学のために固定された腎臓組織を、組織学的に加工し、切片化し(5μm厚)、ヘマトキシリン/エオシンにより染色する。尿細管傷害を評価し、獣医病理学によりスコア化する。
【0047】
本研究において、アルギン酸カプセル化された腎臓組織フラグメントの被膜下移植は、5/6腎摘出されたげっ歯類または糖尿病性腎症のげっ歯類モデルにおいて、腎傷害の進行を遅らせるだろう。血清クレアチニンおよび血中尿素窒素値は、対照動物と比較して、hUTC処理された動物において、顕著に減少する。さらに、ビーズは、糖尿病性腎症のげっ歯類モデルにおける血中グルコースレベルを低くする。組織学的な傷害評価は、処理された動物における尿細管壊死、および尿細管膨脹を明らかにする。
【0048】
治療用薬剤を送達するための方法として、細胞カプセル化に対する興味が高まっているにもかかわらず、組織フラグメント全体のカプセル化にはあまり興味が払われていない。本明細書において、カプセル化された腎臓組織フラグメントが、Epoおよび他の有用な薬剤を培養培地に分泌することを示している。したがって、開示された治療用インプラントおよび治療方法は、数多くの病状の治療を提供することができる。
【0049】
本明細書で引用され、または説明された特許、特許出願、および文献の開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
〔実施の態様〕
なお、本願の実施態様は以下のとおりである。
(1)治療用インプラントにおいて、
ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む、治療用インプラント。
(2)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記腎組織が、自家組織、同種組織、異種組織、またはそれらの任意の組み合わせである、治療用インプラント。
(3)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記腎組織が、遺伝子改変された細胞を含む、治療用インプラント。
(4)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記腎組織が、腎組織のフラグメントを含み、
前記フラグメントが、約1mm未満の大きさを有する、治療用インプラント。
(5)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記腎組織が、腎組織のフラグメントを含み、
前記フラグメントが、約300μmの大きさを有する、治療用インプラント。
【0051】
(6)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
少なくとも約30mgの腎組織を含む、治療用インプラント。
(7)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記ポリマービーズが、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、ポリ−L−リジン、カラギーナン、ペクチン、トラガカントゴム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、I型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、治療用インプラント。
(8)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記ポリマービーズが、アルギン酸、およびポリ−L−リジンを含む、治療用インプラント。
(9)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記ポリマービーズが、約3mm〜約6mmの直径を有する、治療用インプラント。
(10)実施態様(1)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記組織が、1つ以上のホルモン、プロホルモン、タンパク質、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを分泌する、治療用インプラント。
【0052】
(11)実施態様(10)に記載の治療用インプラントにおいて、
前記組織が、エリスロポエチン、MCP−1、アディポネクチン、レプチン、およびMMP−2のうち1つ以上を分泌する、治療用インプラント。
(12)患者における病状を治療するための方法において、
ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む治療用インプラントを、前記患者の中に埋め込むことを含む、方法。
(13)実施態様(12)に記載の方法において、
前記病状が、貧血、脳卒中、心臓血管疾患、または腎疾患である、方法。
(14)実施態様(12)に記載の方法において、
前記腎組織が、自家組織、同種組織、異種組織、またはそれらの任意の組み合わせである、方法。
(15)実施態様(12)に記載の方法において、
前記腎組織が、遺伝子改変された細胞を含む、方法。
【0053】
(16)実施態様(12)に記載の方法において、
前記腎組織が、腎組織のフラグメントを含み、
前記フラグメントが、約1mm未満の大きさを有する、方法。
(17)実施態様(12)に記載の方法において、
前記腎組織が、腎組織のフラグメントを含み、
前記フラグメントが、約300μm未満の大きさを有する、方法。
(18)実施態様(12)に記載の方法において、
前記治療用インプラントが、少なくとも約30mgの腎組織を含む、方法。
(19)実施態様(12)に記載の方法において、
前記ポリマービーズが、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、ポリ−L−リジン、カラギーナン、ペクチン、トラガカントゴム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、I型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
(20)実施態様(12)に記載の方法において、
前記ポリマービーズが、アルギン酸およびポリ−L−リジンを含む、方法。
【0054】
(21)実施態様(12)に記載の方法において、
前記ポリマービーズが、約3mm〜約6mmの直径を有する、方法。
(22)実施態様(12)に記載の方法において、
前記組織が、1つ以上のホルモン、プロホルモン、タンパク質、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを分泌する、方法。
(23)実施態様(22)に記載の方法において、
前記組織が、エリスロポエチン、MCP−1、アディポネクチン、レプチン、およびMMP−2のうち1つ以上を分泌する、方法。
(24)治療用インプラントを製造するための方法において、
腎組織を提供することと、
前記腎組織を、ポリマーを含む溶液と混合して、それにより、組織−ポリマー懸濁液を形成することと、
前記組織−ポリマー懸濁液を、ビーズ形成溶液に押し出して、それにより、前記腎組織が中でカプセル化されている前記ポリマーのビーズを含む治療用インプラントを形成することと、
を含む、方法。
(25)実施態様(24)に記載の方法において、
前記ポリマーを含む溶液が、
アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、ポリ−L−リジン、カラギーナン、ペクチン、トラガカントゴム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、I型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリン、またはそれらの任意の組み合わせと、
成長培地と、
を含む、方法。
【0055】
(26)実施態様(24)に記載の方法において、
前記ビーズ形成溶液が、架橋溶液を含む、方法。
(27)実施態様(24)に記載の方法において、
前記ビーズ形成溶液が、イオン溶液を含む、方法。
(28)実施態様(24)に記載の方法において、
前記ビーズ形成溶液が、CaClを含む、方法。
(29)実施態様(28)に記載の方法において、
前記ビーズを、追加のポリマー層でコーティングすることをさらに含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】カプセル化された細切れラット腎臓組織、およびカプセル化されていない細切れラット腎臓組織の相対的な生存力の評価の結果を示している。
【図2】カプセル化後4日目にELISAにより決定された、培養培地に放出されたEpoの量を示している。データには、組織を欠いたビーズ(ビーズのみ)、カプセル化されていない細切れにしたラット腎臓組織(組織のみ)、およびカプセル化された細切れラット腎臓組織(組織を有するビーズ)が含まれる。
【図3】培養4日後に、培地に分泌されたさまざまなタンパク質の平均量を測定した研究由来のデータを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用インプラントにおいて、
ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む、治療用インプラント。
【請求項2】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
前記腎組織が、自家組織、同種組織、異種組織、またはそれらの任意の組み合わせである、治療用インプラント。
【請求項3】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
前記腎組織が、遺伝子改変された細胞を含む、治療用インプラント。
【請求項4】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
前記腎組織が、腎組織のフラグメントを含み、
前記フラグメントが、約1mm未満の大きさを有する、治療用インプラント。
【請求項5】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
前記腎組織が、腎組織のフラグメントを含み、
前記フラグメントが、約300μmの大きさを有する、治療用インプラント。
【請求項6】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
少なくとも約30mgの腎組織を含む、治療用インプラント。
【請求項7】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
前記ポリマービーズが、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、ポリ−L−リジン、カラギーナン、ペクチン、トラガカントゴム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、I型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、治療用インプラント。
【請求項8】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
前記ポリマービーズが、アルギン酸、およびポリ−L−リジンを含む、治療用インプラント。
【請求項9】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
前記ポリマービーズが、約3mm〜約6mmの直径を有する、治療用インプラント。
【請求項10】
請求項1に記載の治療用インプラントにおいて、
前記組織が、1つ以上のホルモン、プロホルモン、タンパク質、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを分泌する、治療用インプラント。
【請求項11】
請求項10に記載の治療用インプラントにおいて、
前記組織が、エリスロポエチン、MCP−1、アディポネクチン、レプチン、およびMMP−2のうち1つ以上を分泌する、治療用インプラント。
【請求項12】
患者における病状を治療するための方法において、
ポリマービーズ内にカプセル化された腎組織を含む治療用インプラントを、前記患者の中に埋め込むことを含む、方法。
【請求項13】
治療用インプラントを製造するための方法において、
腎組織を提供することと、
前記腎組織を、ポリマーを含む溶液と混合して、それにより、組織−ポリマー懸濁液を形成することと、
前記組織−ポリマー懸濁液を、ビーズ形成溶液に押し出して、それにより、前記腎組織が中でカプセル化されている前記ポリマーのビーズを含む治療用インプラントを形成することと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記ポリマーを含む溶液が、
アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、ポリ−L−リジン、カラギーナン、ペクチン、トラガカントゴム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、I型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリン、またはそれらの任意の組み合わせと、
成長培地と、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、
前記ビーズ形成溶液が、架橋溶液を含む、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法において、
前記ビーズ形成溶液が、イオン溶液を含む、方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、
前記ビーズ形成溶液が、CaClを含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、
前記ビーズを、追加のポリマー層でコーティングすることをさらに含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−507875(P2011−507875A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539742(P2010−539742)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/087211
【国際公開番号】WO2009/085850
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(507209506)エシコン・インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Incorporated
【住所又は居所原語表記】Rt. 22 West,P.O.Box 151,Somerville,NJ 08876−0151 United States of America
【Fターム(参考)】