説明

カペシタビンの製造方法及びそれに用いられるβ−アノマーが豊富なトリアルキルカルボン酸化合物の製造方法

本発明は、カペシタビン(capecitabine)の製造方法及びそれに用いられるβ−アノマーが豊富なトリアルキルカルボン酸化合物の製造方法に関するものであって、本発明はβ−アノマーが豊富なトリアルキルカルボン酸化合物を中間体として用いることでカペシタビンを高収率及び高純度で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカペシタビン(capecitabine)の製造方法及びそれに用いられるβ−アノマーが豊富なトリアルキルカルボン酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カペシタビンは、転移性乳房癌及び結腸直腸癌の治療に広く用いられる経口用抗癌剤である。カペシタビンは、リボフラノース系ヌクレオシドであり、立体化学的にはリボフラノースの1−位置に5−フルオロシトシン(5−fluorocytosine)がβ−位置に配向された構造を有する。
【0003】
米国特許第5,472,949号及び第5,453,497号には、下記反応スキーム1に示すように、5−フルオロシトシンを用いて化Iのトリ−O−アセチル−5−デオキシ−β−D−リボフラノースをグリコシル化反応させて化IIのシチジンを製造し、その結果得られた化合物をカルバモイル化及び加水分解反応させて、カペシタビンを製造する方法が開示されている。
【0004】
反応スキーム1
【化1】

【0005】
前記反応スキーム1において中間体として用いられた化Iの化合物としては、1−位置のアセチル基がβ−位置に配向された異性体が用いられる。その理由は、2−ヒドロキシ基の保護基がアシル基である場合に発生する隣接基関与効果(neighboring group participation effect)のため、グリコシル化反応時に5−フルオロシトシンがα−異性体よりもβ−異性体とより反応性が高いからである。
【0006】
したがって、当該技術分野におけるカペシタビンを製造することにおいて、β−位置に配向されたトリ−O−アセチル−5−デオキシ−β−D−リボフラノース(化I)が重要な中間体である。しかし、前記反応はβ−及びα−異性体の混合物を生成させるので、非経済的な段階を通じて化IIのシチジンを分離しなければならないという問題点がある。
【0007】
一方、米国特許第4,340,729号には、下記反応スキーム2に示すように、化IIIの1−メチルアセトニドを加水分解して化IVのトリオールを製造し、前記化IVの化合物をピリジン中で酢酸無水物を用いてアセチル化することで化Vのトリ−O−アセチル−5−デオキシ−D−リボフラノースのβ−/α−アノマー混合物を製造し、前記β−/α−アノマー混合物を真空蒸留し精製して化Iのβ−アノマーを分離することでカペシタビンを製造する方法が開示されている。
【0008】
反応スキーム2
【化2】

【0009】
しかし、前記方法は化Vのβ−/α−アノマー混合物からβ−アノマーを分離するために非経済的で且つ複雑な再結晶工程を実施しなければならず、約35〜40%の低い収率をもたらすという問題点がある(Guangyi Wang et al.,J.Med.Chem.,2000,vol.43,2566−2574; Pothukuchi Sairam et al.,Carbohydrate Research,2003,vol.338,303−306;Xiangshu Fei et al.,Nuclear Medicine and Biology, 2004,vol.31,1033−1041;及びHenry M.Kissman et al.,J.Am.Chem.Soc.,1957,vol.79,5534−5540)。
【0010】
また、米国特許第5,476,932号には、下記反応スキーム3に示すように、化VIの5’−デオキシ−5−フルオロシチジンをペンチルクロロメートと反応させて、C11CO基により保護されたアミノ基及び2−,3−ヒドロキシ基を有する化VIIの化合物を製造して;その結果得られた化合物からヒドロキシの保護基を除去することでカペシタビンを製造する方法が開示されている。
【0011】
反応スキーム3
【化3】

【0012】
しかし、前記方法は製造費用が高いとともに、化VIの5’−デオキシ−5−フルオロシチジンを製造するために2−,3−ヒドロキシ基を保護して5−フルオロシトシンと反応させた後、2−,3−ヒドロキシ基を除去するなどの多くの複雑な段階が要求される。
【0013】
したがって、本発明者らは、カペシタビンの効率的な製造方法を開発するために鋭意研究した結果、トリアルキルカルボン酸中間体を用いることによってβ−アノマーを分離する非経済的な工程が要求されない高純度のカペシタビンを効率的に製造することができる新規の改善された方法を見出して本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的は、カペシタビンの改善した製造方法及び前記方法で中間体として用いられるβ−アノマーが豊富なトリアルキルカルボン酸の製造方法を提供することである。
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の一実施態様によれば、
(1)下記式2のメチルアセトニド化合物を加水分解して下記式3のトリオール化合物を製造するステップ;
(2)前記式3の化合物をピリジンとトリエチルアミンとの混合物の存在下で下記式4のギ酸ハロアルキルと反応させて、β−アノマーが豊富な下記式5のトリアルキルカルボン酸化合物を製造するステップ;
(3)前記式5の化合物を酸の存在下で5−フルオロシトシンとグリコシル化反応させて、下記式6のジアルコキシカルボニルシチジン化合物を製造するステップ;
(4)前記式6の化合物をクロロギ酸n−ペンチルとカルバモイル化反応させて、下記式7のカルバモイルシチジン化合物を製造するステップ;及び
(5)前記式7の化合物のヒドロキシカルボン酸の保護基を脱保護化するステップを含む、下記式1のカペシタビンの製造方法を提供する:
【化4】

【0016】
前記式中、Xはクロロ、ブロモまたはヨードであり;Rはメチルまたはエチルである。
【0017】
本発明の他の一実施様態によれば、前記製造方法で中間体として用いられる式5のトリアルキルカルボン酸化合物の製造方法を提供する:
【化5】

【0018】
前記式中、Rは前記定義と同一である。
【発明の詳細な説明】
【0019】
本発明によれば、前記化5のトリアルキルカルボン酸化合物は、β−及びα−アノマーが2:1〜4:1混合物であって、5−フルオロシトシンを用いた前記トリアルキルカルボン酸中間体の改善したグリコシル化反応により高収率及び高純度の前記式1のカペシタビンを製造することができる。
【0020】
本発明によるカペシタビンの製造方法は、下記反応スキーム4として要約される。
【0021】
反応スキーム4
【化6】

【0022】
前記式中、X及びRは前記定義と同一である。
【0023】
以下、前記反応スキーム4に示したように本発明の方法の段階を更に詳細に説明する。
【0024】
<ステップ1>
ステップ1では、式2のメチルアセトニド化合物を米国特許第4,340,729号に記載の通常の方法によって硫酸水溶液のような溶媒中で加水分解してトリオール化合物(式3)を製造することができる。本発明による製造方法は、前記工程で得られたトリオール化合物をそれぞれアノマーに分離する工程を選択的に含むことができる。
【0025】
<ステップ2>
ステップ2では、前記ステップ1から得られたトリオール化合物と式4のギ酸ハロアルキルとを塩基、好ましくは、ピリジン、トリエチルアミン及びこれらの混合物などの有機塩基の存在下で溶媒中で反応させて、式5のβ−アノマーが豊富なトリアルキルカルボン酸化合物を製造することができる。その結果得られた化合物は、式5のβ−アノマーが豊富なトリアルキルカルボン酸であって、α−アノマーよりもβ−アノマーの反応性が良いので、ステップ3におけるグリコシル化反応が早く進行される。
【0026】
前記トリオール化合物に対するカルボン酸化がピリジンの単独存在下で施される場合、その結果得られた化合物がα−及びβ−アノマーの1:1混合物またはα−アノマーが豊富な混合物であってもよい。また、カルボン酸化がトリエチルアミンの単独存在下で施される場合、その結果得られた化合物は、反応温度及びその当量によってβ−アノマー:α−アノマーが6:1の割合で含まれるβ−アノマーが豊富な混合物であってもよい。しかし、このようにトリエチルアミンを単独で用いたカルボン酸化は、副生物として式1aの化合物を過量で生成させるという問題点がある。
【化7】

前記式中、Rは前記定義と同一である。
【0027】
本発明では、前記トリオール化合物に対するカルボン酸化反応において、塩基としてピリジン及びトリエチルアミンが一定の割合で混合された混合物を用いることでα−アノマーの量よりも2倍以上多い式5のβ−アノマーが豊富な化合物を製造することができ、副生物である式1aの環状炭酸エステルの生成を最小化することができる。特に、ピリジンとトリエチルアミンとの混合物の存在下で低温反応を施す場合、反応生成物中で環状炭酸エステル化合物の含量を0.2%以下に減少させることができる。
【0028】
本発明において、前記混合物に用いられたピリジンは、トリエチルアミンに対して1〜2当量、好ましくは1.3〜1.6当量の量で用いられる。また、前記ピリジンとトリエチルアミンとの混合物は、前記トリオール化合物に対して4〜10当量、好ましくは、4〜6当量の量で用いられる。
【0029】
前記反応溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合物であっても良く、ジクロロメタンが好ましい。
【0030】
前記式4のギ酸ハロアルキル化合物は、前記トリオール化合物に対して3〜10当量、好ましくは、5〜7当量の量で用いられる。
【0031】
前記反応が−30℃以上の温度で施される場合には、過量の環状炭酸エステルが生成されるので、前記反応は−50〜−30℃の温度で施しても良く、−35〜−30℃温度で施すことが好ましい。
【0032】
<ステップ3>
ステップ3では、前記ステップ2から得られた化合物を溶媒中で酸の存在下で5−フルオロシトシンとグリコシル化反応させて、式6のジアルコキシカボニルシチジン化合物を製造することができる。
【0033】
前記反応において、アミノ基が1−アノマー位置で競争的に反応することを抑制するために、5−フルオロシトシンを通常的な方法によってシリル化剤、例えば、ヘキサメチルジシラザンと反応させて製造した5−フルオロシトシンのシリル化誘導体を前記5−フルオロシトシンの代りに用いることが好ましい。5−フルオロシトシンまたはそのシリル化誘導体は、前記式5のトリアルキルカルボン酸化合物に対して1〜2当量であっても良く、好ましくは、1当量の量で用いられる。
【0034】
前記酸はグリコシル化反応を促進するために用いられ、前記酸としては、エチルアルミニムジクロライド、メチルアルミニムジクロライド、SnCl、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル及びトリフルオロメタンスルホン酸が挙げられ、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルが好ましい。また、前記酸は、前記式5のトリアルキルカルボン酸化合物に対して0.5〜3当量、好ましくは、1当量の量で用いられる。
【0035】
本発明において、前記反応に用いられる溶媒としては、酢酸エチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはジメチルホルムアミドが用いられ、アセトニトリルが好ましい。前記反応は0〜50℃で施しても良く、20〜35℃の温度で施すことが好ましい。
【0036】
本発明において、前記式6のジアルコキシカルボニルシチジン化合物は、前記グリコシル化反応を通じて、従来のトリ−O−アセチル−5−デオキシ−β−D−リボフラノース(式I)を用いる方法に比べて10%以上の高い収率、例えば、90%以上の高収率でβ−アノマーが豊富な前記式5のトリアルキルカルボン酸化合物から製造されることができる。特に、本発明から製造された式6の化合物は98.5%以上の高純度を有する。また、かかる高収率及び高純度の化合物を用いて本発明の次のステップを行うことによって99.5%の高純度を有する所望の目的産物であるカペシタビンを得ることができる。
【0037】
<ステップ4>
ステップ4では、前記ステップ3から得られたジアルコキシカルボニルシチジン化合物をクロロギ酸n−ペンチルと溶媒中で通常的な方法によりカルバモイル化反応させて、式7のカルバモイルシチジン化合物を製造することができる。
【0038】
本反応において、クロロギ酸n−ペンチルは、前記式6のジアルコキシカルボニルシチジン化合物に対して1〜3当量であっても良く、好ましくは、1.1〜1.5当量の量で用いられる。
【0039】
前記溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン及びアセトニトリルのような有機溶媒を用いることができ、ジクロロメタンが好ましい。
【0040】
一方、トリエチルアミン、ピリジンのような有機塩基を反応混合物に加えて、カルバモイル化反応の間に発生される塩酸を中和させることができ、前記有機塩基は、式6のジアルコキシカルボニルシチジン化合物に対して1〜5当量であっても良く、好ましくは、 1.3〜2.5当量の量で用いられる。
【0041】
前記反応は−10〜10℃で施しても良く、−5〜5℃の温度で施すことが好ましい。
【0042】
前記カルバモイル化反応は定量的に行われ、反応産物を分離することなく次のステップで用いることが好ましい。
【0043】
<ステップ5>
ステップ5では、前記ステップ4で得られたカルバモイルシチジン化合物からヒドロキシルカルボン酸の保護基を通常的な方法によって除去して、式1のカペシタビンを製造することができる。
【0044】
Theodora W.Green,Green’s protective groups in organic synthesis,fourth edition,2007,280頁,998頁,1022頁,Wiley−Interscienceに公知された方法によれば、ヒドロキシカルボン酸の保護基とカルバメートの保護基とが共存する場合に、反応温度及び用いられる塩基の濃度を調節してカルボン酸の保護基のみを選択的に除去することができる。このような選択的な脱保護化反応は、カルボン酸とカルバメート保護基との反応性の差に基づいたものであって、カルボン酸基はpH10でも室温で脱保護されることに比べて、カバメイト基はpH12以上の高いpHと、100℃以上の高い反応温度とを必要とする。
【0045】
本発明において、前記選択的脱保護化反応は、メタノールと水との混合物(2:1(v/v))のような有機溶媒中で水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含む塩基の存在下で−10〜0℃の温度で施しても良く、−5〜0℃の温度で施すことが好ましい。
【0046】
したがって、α−アノマーよりもβ−アノマーが2倍以上含まれたβ−アノマーが豊富なトリアルキルカルボン酸化合物を中間体として用いる本発明の方法によれば、非経済的なβ−アノマーの分離工程無に99%以上の純度を有するカペシタビンを製造することができる。また、本発明はステップ4及び5で総収率90%の高収率を示す。
【0047】
以下、本発明を下記実施例により更に詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1:1,2,3−トリ−O−メトキシカルボニル−5−デオキシ−D−リボフラノース(式5の化合物)の製造
メチル−2,3−O−イソプロピリデン−5−デオキシ−D−リボフラノース20gを2モル%の硫酸水溶液100mLに溶解させた後、その結果得られた混合物を80〜85℃で2時間攪拌した。前記反応混合物を室温に冷却してから減圧濃縮して全体溶媒の約1/2〜約1/3を除去した。その結果得られた濃縮物に2モル%の硫酸水溶液100mLをさらに添加した後、その結果得られた混合物を80〜85℃で1時間攪拌した。次いで、反応物を室温に冷却した後、前記混合物のpHが3.0〜3.5になるように炭酸水素ナトリウムを添加した。その結果得られた溶液を減圧濃縮した後、アセトニトリル100mL及び無水硫酸ナトリウム20gと混合して30分間攪拌してから濾過した。濾過液を減圧濃縮して5−デオキシ−D−リボフラノースを得た。
【0049】
前記で得られた5−デオキシ−D−リボフラノース14.3g(0.107モル)をジクロロメタン200mLに添加してからピリジン30.1mL(0.372モル)及びトリエチルアミン37mL(0.266モル)を添加した後、その結果得られた混合物を−30℃に冷却させた。これにクロロギ酸メチル49.1mL(0.638モル)を−30℃で30分間滴加した後、反応混合物の温度を10℃まで徐々に上昇させた。これに水100mLを添加してからその得られた混合物を30分間攪拌した。次いで、有機層を分離した後、それぞれ200mLの1N塩酸水溶液、含水重炭酸ナトリウム及び塩水で順次洗浄した。その結果得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥してから濾過した後、溶媒を除去して標題化合物27.7gを得た。
【0050】
β−アノマー:α−アノマー=2.7:1
β−アノマーのNMR特性:H NMR(300MHz,CDCl):δ1.42(d,3H),3.82(s,9H),4.34〜4.41(m,1H),5.00(dd,1H),5.28(dd,1H),6.07(s,1H).
α−アノマーのNMR特性:H NMR(300MHz,CDCl):δ1.37(d,3H),3.81(s,9H),4.40〜4.48(m,1H),4.90(dd,1H),5.17(dd,1H),6.29(d,1H)。
【0051】
実施例2:2’,3’−デ−O−メトキシカルボニル−5’−デオキシ−5−フルオロシチジン(式6の化合物)の製造
5−フルオロシトシン11.6g(0.090モル)、ヘキサメチルジシラザン19mLとアセトニトリル24mLとを混合した後、その結果得られた混合物に硫酸アンモニウム0.2gを添加してから1時間還流させた。前記反応混合物を室温に冷却させてからアセトニトリル72mLを添加した後、その結果得られた混合物を蒸留して溶媒約60mLを除去した。その結果得られた溶液を室温に冷却させてから実施例1で得られた27.7g(0.090モル)の化合物及びアセトニトリル72mLを添加した後、その結果得られた混合物を20℃に冷却させた。これにトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル16.3mL(0.090モル)を25℃で滴加した後、前記反応混合物を室温で一晩中攪拌し、次いで、10℃に冷却させてから炭酸水素ナトリウム45.4gを添加した後、30分間攪拌した。これに水9.8g及びジクロロメタン72mLを滴加した。その結果得られた溶液を2時間攪拌した後、濾過してから分離された固体をジクロロメタン72mLで洗浄した。次いで、濾過液を4%重曹溶液120mLで洗浄してから無水硫酸ナトリウムで乾燥して濾過した後、減圧濃縮して標題化合物35.8gを得た。
【0052】
H NMR(CDCl):δ1.47(3H,d),3.79(3H,s),3.81(3H,s),4.22〜4.30(1H,m),4.94(1H,dd),5.39(1H,dd),5.76(1H,d),6.00(1H,br s),7.37(1H,d),8.78(1H,br s)。
【0053】
実施例3:2’,3’−デ−O−メトキシカルボニル−5’−デオキシ−5−フルオロ−N−(ペンチルオキシカルボニル)シチジン(式7の化合物)の製造
前記実施例2から得られた化合物35.8g(0.099モル)をジクロロメタン163mL及びピリジン11mL(0.136モル)と混合してから攪拌した。その結果得られた混合物を−5〜0℃に冷却させた後、前記反応混合物の温度を0℃未満で維持しながらクロロギ酸n−ペンチル15.7mL(0.109モル)を滴加した。次いで、反応混合物の温度を室温まで昇温してから2時間攪拌した。1N塩酸水溶液を添加して有機層を分離した後、飽和重曹溶液163mL及び水163mLでそれぞれ順次洗浄してから無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧濃縮して標題化合物42.9gを得た。
【0054】
H NMR(CDCl)δ 0.91(3H,t),1.33〜1.40(4H,m),1.48(3H,d),1.69〜1.74(2H,m),3.82(6H,s),4.16(2H,t),4.27〜4.32(1H,m),4.93(1H,dd),5.32(1H,dd),5.83(1H,d),7.40(1H,s),12.02(1H,br s)。
【0055】
実施例4:5’−デオキシ5−フルオロ−N−(ペンチルオキシカルボニル)シチジン(式1の化合物)の製造
前記実施例3から得られた化合物42.9gをメタノール215mLに加え、前記混合物を攪拌してから−5〜0℃に冷却させた。次いで、水107mLに水酸化ナトリウム10.8gを溶解させたNaOH溶液を前記反応混合物の温度が0℃以下に維持しながら添加した。前記反応混合物を30分間攪拌した後、6NのHCl溶液48mLを滴加して前記反応混合物のpHが5.3になった。その結果得られた混合物をジクロロメタン215mLで2回、ジクロロメタン108mLで1回洗浄した後、有機層が結合された水215mLで洗浄してから無水硫酸ナトリウムで乾燥して濾過した後、減圧濃縮した。酢酸エチル129mLを添加した後、残渣を酢酸エチル97mLと混合して攪拌しながら結晶化した。次いで、ヘキサン97mLを滴加して結晶を熟成させた。その結果得られた混合物を1時間攪拌した後、0℃に冷却させてから1時間攪拌した。得られた固体を濾過して0℃に冷却させた後、酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v)の混合物86mLで洗浄した後、35℃の真空オーブンで一晩中乾燥して微白色固体の標題化合物28.6gを得た。
【0056】
H NMR(CDOD)δ 0.91(3H,t),1.36〜1.40(4H,m),1.41(3H,d),1.68〜1.73(2H,m),3.72(1H,dd),4.08(1H,dd),4.13〜4.21(3H,m),5.70(1H,s),7.96(1H,d)。
【0057】
以上、本発明を実施例により説明したが、これらの実施例によって本発明が限定されず、本発明の技術分野における通常の知識を有する者なら多様な変形及び実施できることは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記式2のメチルアセトニド化合物を加水分解して下記式3のトリオール化合物を製造するステップ;
(2)前記式3の化合物をピリジンとトリエチルアミンとの混合物の存在下で下記式4のギ酸ハロアルキルと反応させて、β−アノマーが豊富な下記式5のトリアルキルカルボン酸化合物を製造するステップ;
(3)前記式5の化合物を酸の存在下で5−フルオロシトシンとグリコシル化反応させて、下記式6のジアルコキシカルボニルシチジン化合物を製造するステップ;
(4)前記式6の化合物をクロロギ酸n−ペンチルとカルバモイル化反応させて、下記式7のカルバモイルシチジン化合物を製造するステップ;及び
(5)前記式7の化合物のヒドロキシカルボン酸の保護基を脱保護化する段階を含む、下記式1のカペシタビンの製造方法:
【化1】

前記式中、
Xはクロロ、ブロモまたはヨードであり;
Rはメチルまたはエチルである。
【請求項2】
ピリジンがトリエチルアミンに対して1〜2当量の量で用いられることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ピリジンとトリエチルアミンとの混合物が前記式3の化合物に対して4〜10当量の量で用いられることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ2の反応が−50〜−30℃の温度で施されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ3で用いられた前記酸がエチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、SnCl、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルまたはトリフルオロメタンスルホン酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酸が前記式5の化合物に対して0.5〜3当量の量で用いられることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
(1)下記式2のメチルアセトニド化合物を加水分解して下記式3のトリオール化合物を製造するステップ;
(2)前記式3の化合物をピリジンとトリエチルアミンとの混合物の存在下で下記式4のギ酸ハロアルキルと反応させて、β−アノマーが豊富な下記式5のトリアルキルカルボン酸化合物を製造するステップを含む、下記式5のトリアルキルカルボン酸化合物の製造方法:
【化2】

前記式中、
X及びRは、前記第1項の定義と同一である。

【公表番号】特表2011−503228(P2011−503228A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534876(P2010−534876)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006565
【国際公開番号】WO2009/066892
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】