説明

カムアーム式ホースカプラおよびこれを使用するカプラ付きフレキシブルホース

【課題】内面にライニングのあるホースにもホースカプラを採用可能にする。
【解決手段】ホースカプラがアダプタに連結されるカプラ本体2と、ホース5の一端に取り付けられ、カプラ本体2の内側に挿入されるホースシャンク3とに分割され、カプラ本体2のボール溝29とホースシャンク3のボール溝32との間に多数のベアリングを充填することにより回転可能に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の一端に取り付けられるアダプタに嵌め、カムアームの操作により固定してフレキシブルホースを配管に接続するカムアーム式のホースカプラおよびこれを使用するカプラ付きフレキシブルホースに関する。
【背景技術】
【0002】
固定配管と機器との中間など、配管系統内の相対変位や取り外しが予想される部分にフレキシブルホースが使用され、フレキシブルホースを固定配管に接続する箇所にはワンタッチで着脱できるカムアーム式のホースカプラが使用される。
図5はごく一般的なカムアーム式のホースカプラの一例を示す斜視図、図6はカムアーム21を開いた状態の断面図、図7はカムアーム21を閉じた状態の断面図で、1は配管側の先端にねじ込みで取り付けられるアダプタ、2はカプラ本体、21はカムアーム、22はその回転中心であるピン、23はアダプタ1とカプラ本体2との間に挿入されるガスケット、24はカムアーム21の先端に取り付けられたリング、26はカプラ本体2の両脇に設けられた開口部、3aはカプラ本体2と一体に設けられたホースシャンク部である。
【0003】
カムアーム式カプラの着脱機構を簡単に説明すると、カムアーム21の基部がカムとなっており、カムアーム21を外側に開けばカムは開口部26から引っ込むが、閉じればカムが開口部26から突出し、アダプタ1の凹部11に嵌合する。カムアーム21を開いた状態でカプラ本体2を配管先端のアダプタ1にかぶせて嵌合させ、カムアーム21を閉じればアダプタ1とカプラ本体2は連結される。カプラ本体2とアダプタ1の間にはガスケット23が挿入され、連結状態ではこれを軽く押しつぶすことにより気密が保たれる。ホースシャンク部3aにはゴム等のフレキシブルホースが嵌められるから、これにより配管とホースとが接続される。外すときはカムアーム21を開けば直ちに解放される。振動の大きい場所などでは、外れ防止のためリング24を針金等でしばり、ホースに巻き付けることが行なわれる。
【0004】
図8はカムアーム式のホースカプラの他の例を示す斜視図、図9は断面図で、図5〜7のものとの違いは、ホースシャンク3がカプラ本体2と分離されて別物となっていることである。カプラ本体2を配管に連結した状態でもホースが回転できるので、ねじれ等をなくすことができる。
図8、9で示したホースカプラをホースの先端に取り付ける手順を図10ないし図12により説明する。図10は取り付け作業を示す説明図であるが、図9からもわかるように、ホースシャンク3の先端広がり部の径はカプラ本体2のホースより部分の内径よりも大きいから、ホースシャンク3はカプラ本体2の先端側から図10の矢印方向に挿入しなければならない。
【0005】
ホースシャンク3をカプラ本体2内に圧入して固定したら、突出しているホースシャンク3のたけのこ状の部分にホースを嵌める。ホースの先端にはかしめカラー51をかぶせてある。
図11、12はかしめ作業を示す説明図である。カプラを取り付けたホース5を一種のプレス機であるかしめ機に固定し、上型D1でホースシャンク3の先端を矢印方向に圧入すると、2つ割りの下型D2が矢印方向に相対的に押し上げられ、上昇すると内側に寄せられるように外側がガイドされるので、かしめカラー51の外径が絞られ、ホース5がホースシャンク3に固定される。図12は固定後の状態を示す断面図である。この作業においては、油圧シリンダ等に取り付ける上型D1がカプラ本体2の内部に進入しなければならないので、寸法上の制約がある。また、損消等を防止するため、カムアーム21は一時取り外した方がよい。
【0006】
図13はカムアーム式のホースカプラのさらに他の例を示すカムアーム21を開いた状態の断面図、図14は同じくカムアーム21を閉じた状態の断面図、図15は図14のホースカプラを一部切断して示す斜視図である。4はカプラ本体2とホースシャンク3との間に挿入される多数のベアリングボール、28はカプラ本体2の外面に設けられたベアリングボール挿入口をふさぐプラグである。
【0007】
このホースカプラは、前の例と同様、カプラ本体2とホースシャンク3とは分離されているが、両者の間に多数のベアリングボール4が挿入されてボールベアリング状となっている。これにより、図8、9に示したものよりホースの回転が一層自由になったばかりでなく、カプラ2のホース5への取り付けに新たな利便が生じている。
図16はこれを説明する断面図で、29はカプラ本体2の端部内面に設けられたボール溝、32はホースシャンク3の端部外面に設けられたボール溝である。ホースシャンク3の外径はカプラ本体2の内径よりも小さいので、ベアリングボール4を挿入するまではこの両者は自由に出入りできる。つまり、これまで説明したもののようにホースシャンク3をホース5の先端に嵌める前にカプラ本体2をホース5に通しておく必要がなく、ホースシャンク3をホース5の先端に嵌めてから、カプラ本体2に挿入することができる。ホースシャンク3をホース5の先端に嵌め、ボール溝29、32の位置が一致したら挿入口からボールを充填してボールベアリングの状態にし、挿入口をプラグ28でふさげば連結は完了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、食品工業や薬品工業、精密加工等の分野で、衛生上や品質管理上の理由から高度の清浄度が要求される配管系統においては、固定配管にステンレス鋼管を使用し、フレキシブルホースには汚れ付着のないよう内面にフッ素樹脂被膜をライニングしたものが使用される場合が多い。
このライニングは先端のホースシャンク部まで伸ばし、その先端で半径方向に開いて固定されるが、それにはフッ素樹脂被膜を約350℃に加熱してプレス加工する必要がある。この処理は、現実問題としてホースにカプラ本体2が付いていない状態でないと行なうことができないが、図5ないし12で示した従来のホースカプラではホースをホースシャンク部に固定する際にはすでにカプラ本体が取り付けられており、したがってフッ素樹脂ライニング付きのホースには採用することができない。
【0009】
また、同じく従来のホースカプラにおいては、ホース側に損傷が生じた場合、ホースを交換すればカプラ本体2は再度使用できるが、カプラ本体側に損傷が生じた場合には、ホースを取り外さないとカプラが取り出せないので、カプラ、ホース全体を交換することになってしまうという問題点もある。
本発明は、カプラ本体に支障されることなくホースにライニングを施すことのできるホースカプラを採用し、フッ素樹脂ライニング付きのホースを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のカムアーム式ホースカプラは、配管の一端に取り付けられるアダプタに連結させ、カムアームの操作により内面にフッ素樹脂のライニングを有するホースを配管に接続、固定するカムアーム式のホースカプラであって、このホースカプラが前記アダプタに嵌合されるカプラ本体と、前記ホースの一端に取り付けられ、前記カプラ本体の内側に挿入されるホースシャンクとに分割され、カプラ本体のボール溝とホースシャンクのボール溝との間に多数のベアリングボールを充填することにより互いに回転可能に結合されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のカプラ付きフレキシブルホースは、内面にフッ素樹脂のライニングを有するホースの端部に、配管の一端に取り付けられるアダプタに連結させ、カムアームの操作により前記ホースを配管に接続、固定するカムアーム式のホースカプラを取り付けてなるカプラ付きフレキシブルホースであって、
前記ホースカプラが前記アダプタに連結されるカプラ本体と、前記ホースの一端に取り付けられ、前記カプラ本体の内側に挿入されるホースシャンクとに分割され、カプラ本体のボール溝とホースシャンクのボール溝との間に多数のベアリングボールを充填することにより互いに回転可能に結合されているものであり、
前記ホースが端部においてホースカプラのホースシャンクの外周に嵌め込まれると同時に、内面のライニングがホースシャンクの内面に嵌合し、先端部が半径方向に開かれてホースシャンクの先端部分に重ねられているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホースを最終段階でカプラ本体に組み付ければよいので、ホースに対してライニングを施す加工などを自由に行なうことができ、フッ素樹脂ライニング付きフレキシブルホースなどの特殊ホースを容易に製造できるというすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、カプラ本体に対してホースを自由に取り付け、取り外しできるので、熱を加えて行なわなければならないフッ素樹脂ライニングのホース端部における処理などをカプラ本体に支障されずに行なうことができ、またホースの損傷による交換なども容易である。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例を図面により説明する。図1は実施例のカムアーム式ホースカプラおよびこれを端部に取り付けたホースを示す断面図で、各符号はこれまでに説明したものと同じである。
ホースカプラは、配管側のアダプタに嵌合されるカプラ本体2と、ホース5の一端に取り付けられ、カプラ本体2の内側に挿入されるホースシャンク3とに分割され、カプラ本体2のボール溝とホースシャンク3のボール溝との間に多数のベアリングボール4を充填することにより互いに回転可能に結合されている。
【0015】
またホース5は、端部においてホースカプラのホースシャンク3の外周たけのこ状の部分に嵌め込まれかしめカラー51により固定されると同時に、内面のライニング52はホースシャンク3の内面に嵌合し、先端部は半径方向に開かれてホースシャンク3の先端部分に重ねられている。
前記したように、最後にベアリングボール4を挿入してカプラ本体2とホースシャンク3とを結合すればよいので、ホースシャンク3に対してホース5を取り付け、ライニング52を施すことはカプラ本体2に制約されることなく行なうことができる。また使用後においても、ベアリングボール4を抜き取ることにより、カプラ本体2とホースシャンク3とは簡単に分離するので、損傷等があった場合、それぞれ単独に交換することもできる。ホースシャンク3側のボール溝32の外径をガスケット23の外径よりも大きく設計すれば、ガスケット23を損傷のおそれなくホースシャンク3側に取り出すことができるので、分解洗浄などを頻繁に行なうユーザには便利である。
【0016】
図2はホース5の端部をホースシャンク3に固定する作業を示す説明図である。先端にかしめカラー51をかぶせたホース5の端部をホースシャンク3の外周たけのこ状の部分に嵌め、かしめカラー51の外側に2つ割りの下型D2を配置し、プレス機等のかしめ機で上方から上型D1を押し下げると、下型D2は相対的に押し上げられ、内側に寄せられるのでかしめカラー51の外径を絞り、ホース5はホースシャンク3に固定される。
【0017】
さきに図11で説明した場合と異なり、ホースシャンク3がカプラ本体2から分離されているので上型D1の寸法に制約を受けない。
つづいてフッ素樹脂のライニングについて説明する。図3に示すように、チューブ状のフッ素樹脂52をホース5の内側に挿入して嵌合させる。先端はホースシャンク3よりも若干突出させる。フッ素樹脂は熱可塑性であるから先端部分を約350℃に加熱して軟化させ、図2と同様の処理により先端部分を圧下して半径方向に押し広げ、図4に示すようにホースシャンク3の先端部分に重ねる。図1に示したとおり、この広がった部分がガスケット23との当たり面となり、アダプタに連結されて気密構造を構成する。
【0018】
ホース側の加工が完了したら、カプラ本体2に差し込み、ベアリングボール4を挿入してホースカプラとすることは図16で説明した従来のものと同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明実施例のホースカプラを示す断面図である。
【図2】本発明実施例においてホースシャンクにホースを取り付ける作業を示す説明図である。
【図3】本発明実施例におけるフッ素樹脂ライニングを説明する説明図である。
【図4】同じく本発明実施例におけるフッ素樹脂ライニングを説明する説明図である。
【図5】従来一般的なホースカプラの一例を示す斜視図である。
【図6】図5のホースカプラの斜視図である。
【図7】同じく図5のホースカプラの斜視図である。
【図8】ホースカプラの他の従来例を示す斜視図である。
【図9】図8のホースカプラの断面図である。
【図10】図8、9に示したホースカプラにおけるホースへのカプラの取り付け作業を示す説明図である。
【図11】図10の作業におけるかしめ作業を示す説明図である。
【図12】同じく図10の作業におけるかしめ作業を示す説明図である。
【図13】従来のホースカプラのさらに他の例を示す断面図である。
【図14】同じく図13に示すホースカプラの断面図である。
【図15】図14のホースカプラの切断斜視図である。
【図16】図13ないし15に示すホースカプラの組み立て方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 アダプタ
2 カプラ本体
3 ホースシャンク
3a ホースシャンク部
4 ベアリングボール
5 ホース
11 (アダプタの)凹部
21 カムアーム
22 ピン
23 ガスケット
24 リング
26 開口部
28 (ベアリングボール挿入口の)プラグ
29、32 ボール溝
51 かしめカラー
52 ライニング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の一端に取り付けられるアダプタ(1)に嵌合させ、カムアーム(21)の操作により内面にフッ素樹脂のライニング(52)を有するホース(5)を配管に接続、固定するカムアーム式のホースカプラであって、このホースカプラが前記アダプタ(1)に連結されるカプラ本体(2)と、前記ホース(5)の一端に取り付けられ、前記カプラ本体(2)の内側に挿入されるホースシャンク(3)とに分割され、カプラ本体(2)のボール溝(29)とホースシャンク(3)のボール溝(32)との間に多数のベアリングボール(4)を充填することにより互いに回転可能に結合されていることを特徴とするカムアーム式ホースカプラ。
【請求項2】
内面にフッ素樹脂のライニング(52)を有するホース(5)の端部に、配管の一端に取り付けられるアダプタ(1)に連結させ、カムアーム(21)の操作により前記ホース(5)を配管に接続、固定するカムアーム式のホースカプラを取り付けてなるカプラ付きフレキシブルホースであって、
前記ホースカプラが前記アダプタ(1)に連結されるカプラ本体(2)と、前記ホース(5)の一端に取り付けられ、前記カプラ本体(2)の内側に挿入されるホースシャンク(3)とに分割され、カプラ本体(2)のボール溝(29)とホースシャンク(3)のボール溝(32)との間に多数のベアリングボール(4)を充填することにより互いに回転可能に結合されているものであり、
前記ホース(5)が端部においてホースカプラのホースシャンク(3)の外周に嵌め込まれると同時に、内面のライニング(52)がホースシャンク(3)の内面に嵌合し、先端部が半径方向に開かれてホースシャンク(3)の先端部分に重ねられているものである
カプラ付きフレキシブルホース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2007−218281(P2007−218281A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36692(P2006−36692)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(599023956)東葛工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】