説明

カメラモジュール

【課題】撮像素子と対向する内部空間を長期に亘り外部空間と連通させつつ塵埃から保護できるようにし、かつ組立作業性を悪化させる虞もないカメラモジュールを提供する。
【解決手段】基板1上に実装された撮像素子2と、撮像素子2を覆うように基板1上に搭載された筒状ケース3と、筒状ケース3内に収納されて一面が撮像素子2と対向する赤外線除去フィルタ4と、筒状ケース3内に収納されて赤外線除去フィルタ4の他面と対向するレンズ6とを備え、撮像素子2と赤外線除去フィルタ4との間に存する内部空間S1が通気口3aを介して外部空間と連通されているカメラモジュールにおいて、撮像素子2の周縁部上に多孔質の筒形弾性体5を載置して赤外線除去フィルタ4に弾接させることによって、この筒形弾性体5が赤外線除去フィルタ4を支持した状態で内部空間S1を包囲するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状ケースに収納されたレンズが直接または赤外線除去フィルタを介して撮像素子と対向しているカメラモジュールに係り、特に、撮像素子近傍の内部空間を外部空間と連通させることによって結露等を防止しているカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の小型電子機器に組み込まれるカメラモジュールには、筒状ケースの鏡筒部(レンズホルダ)に収納されたレンズと、基板上に実装されて該レンズにより集光された光を電気信号に変換する撮像素子とが備えられており、レンズと撮像素子との間に赤外線除去フィルタを配置させた構成のものが多い。一般的に、この種のカメラモジュールでは、中空の筒状ケースが撮像素子を覆うように基板上に搭載され、この筒状ケースに収納されたレンズが直接または赤外線除去フィルタを介して撮像素子と対向するようになっている。なお、筒状ケースは少なくともレンズを収納する鏡筒部を有するが、鏡筒部とは別体で基板上に固定される台座部を有して該台座部上に該鏡筒部を連結することによって筒状ケースを構成しているカメラモジュールが広く知られている。ただし、一体成形品の筒状ケースも公知である。
【0003】
このように概略構成されたカメラモジュールにおいて、筒状ケース内で撮像素子と対向する内部空間が密閉されていると、該内部空間に含まれる水蒸気が環境温度の変化によって撮像素子に結露したり、撮像素子と対向する赤外線除去フィルタの一面に結露する可能性があり、その場合、カメラモジュールの性能が著しく劣化することになる。また、前記内部空間が密閉されていると、熱膨張した空気の圧力で撮像素子が損傷する危険性もある。そこで従来より、筒状ケース内で撮像素子と対向する内部空間を、適宜箇所に設けた通気口等を介して外部空間と連通させておくという構造が検討されているが、かかる構造を採用した場合、外気中に含まれる塵埃が内部空間へ侵入して撮像素子に付着する危険性が高まるため、撮像素子を塵埃から保護するための新たな対策が望まれている。
【0004】
撮像素子と対向する内部空間を外部空間と連通させつつ該内部空間への塵埃の侵入を防止できるようにしたカメラモジュールとしては、従来より、筒状ケース(レンズホルダ)の内壁面とレンズの外壁面との間に画成される隙間を該内部空間に連通させると共に、該隙間にエアフィルタを嵌め込むという構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来のカメラモジュールにおいて、外気はエアフィルタが嵌め込まれた隙間を通過しないと撮像素子に到達できないようになっているため、このエアフィルタで外気中に含まれる塵埃を除去することによって撮像素子を塵埃から保護することが可能となる。
【特許文献1】特開2004−304605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来のカメラモジュールでは、レンズホルダとレンズとの間の狭隘な隙間に小さなエアフィルタが嵌め込んであるだけなので、このエアフィルタが目詰まりを起こしやすく、それゆえ撮像素子と対向する内部空間が次第に密閉に近い状態に変化していき、長期間経過すると内部空間がほとんど密閉状態と化して結露等が生じやすくなるという問題があった。また、かかるカメラモジュールの組立時には、レンズに隣接する狭隘な隙間に小さなエアフィルタを嵌め込むという煩雑な作業を追加しなくてはならないため、組立作業性の悪化も避けがたかった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、撮像素子と対向する内部空間を長期に亘り外部空間と連通させつつ塵埃から保護できるようにし、かつ組立作業性を悪化させる虞もないカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、基板上に実装された撮像素子と、一面が前記撮像素子に対向する赤外線除去フィルタと、この赤外線除去フィルタの他面に対向するレンズと、これら赤外線除去フィルタおよびレンズを収納して前記撮像素子を覆うように前記基板上に搭載された中空の筒状ケースとを備え、前記撮像素子と前記赤外線除去フィルタとの間に存する内部空間が外方に露出する通気口と連通されているカメラモジュールにおいて、前記撮像素子の周縁部上に載置される多孔質の筒形弾性体を備え、この筒形弾性体を前記赤外線除去フィルタの一面に弾接させて該赤外線除去フィルタを支持すると共に、前記内部空間が前記筒形弾性体によって包囲されるように構成した。
【0008】
このように構成されたカメラモジュールは、撮像素子と赤外線除去フィルタとの間に存する内部空間を多孔質の筒形弾性体が包囲しているため、内部空間を外部空間と連通させつつ、内部空間へ流入する外気中に含まれる塵埃を筒形弾性体によって除去することができる。また、筒形弾性体は表面積や厚みが十分に確保できるため、長期間使用しても目詰まりを起こしにくい筒形弾性体を使用することができ、それゆえ内部空間と外部空間との連通状態を長期に亘り維持して結露等を確実に防止することができる。さらに、筒状ケースの内部で筒形弾性体が赤外線除去フィルタを支持していることから、赤外線除去フィルタは筒状ケースに接着しなくても位置決めされた状態となり、よって赤外線除去フィルタを筒状ケースに接着する組立工程を省略できる。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、基板上に実装された撮像素子と、一面が前記撮像素子に対向するレンズと、このレンズを収納して前記撮像素子を覆うように前記基板上に搭載された中空の筒状ケースとを備え、前記撮像素子と前記レンズとの間に存する内部空間が外方に露出する通気口と連通されているカメラモジュールにおいて、前記撮像素子の周縁部上に載置される多孔質の筒形弾性体を備え、この筒形弾性体を前記レンズの一面に弾接させて該レンズを支持すると共に、前記内部空間が前記筒形弾性体によって包囲されるように構成した。
【0010】
このように構成されたカメラモジュールは、撮像素子とレンズとの間に存する内部空間を多孔質の筒形弾性体が包囲しているため、内部空間を外部空間と連通させつつ、内部空間へ流入する外気中に含まれる塵埃を筒形弾性体によって除去することができる。また、筒形弾性体は表面積や厚みが十分に確保できるため、長期間使用しても目詰まりを起こしにくい筒形弾性体を使用することができ、それゆえ内部空間と外部空間との連通状態を長期に亘り維持して結露等を確実に防止することができる。さらに、筒状ケースの内部で筒形弾性体がレンズを支持していることから、レンズは筒状ケースに接着しなくても位置決めされた状態となり、よってレンズを筒状ケースに接着する組立工程を省略できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載のカメラモジュールによれば、撮像素子と赤外線除去フィルタとの間に存する内部空間を多孔質の筒形弾性体が包囲しており、筒形弾性体として長期間使用しても目詰まりを起こしにくいものを使用することができるため、内部空間と外部空間との連通状態を維持して結露等を確実に防止することができると共に、内部空間へ流入する外気中に含まれる塵埃を筒形弾性体によって効果的に除去することができる。しかも、筒状ケースの内部で筒形弾性体が赤外線除去フィルタを支持しているため、赤外線除去フィルタを筒状ケースに接着する必要がなくなって組立作業性の向上が図れる。
【0012】
本発明の請求項2に記載のカメラモジュールによれば、撮像素子とレンズとの間に存する内部空間を多孔質の筒形弾性体が包囲しており、筒形弾性体として長期間使用しても目詰まりを起こしにくいものを使用することができるため、内部空間と外部空間との連通状態を維持して結露等を確実に防止することができると共に、内部空間へ流入する外気中に含まれる塵埃を筒形弾性体によって効果的に除去することができる。しかも、筒状ケースの内部で筒形弾性体がレンズを支持しているため、レンズを筒状ケースに接着する必要がなくなって組立作業性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明すると、図1は本発明の第1実施形態例に係るカメラモジュールの断面図、図2は該第1実施形態例で用いた筒形弾性体の斜視図である。
【0014】
図1に示すカメラモジュールは、基板1上に実装されたイメージセンサ等の撮像素子2と、この撮像素子2を覆うように基板1上に搭載された中空の筒状ケース3と、筒状ケース3の内部に収納されて図示下面が撮像素子2と対向する赤外線除去フィルタ4と、筒状ケース3の内部で撮像素子2の周縁部上に載置された多孔質の筒形弾性体5と、筒状ケース3の鏡筒部30内に収納されて赤外線除去フィルタ4の図示上面と対向するレンズ6とによって主に構成されている。また、このカメラモジュールは、筒形弾性体5が赤外線除去フィルタ4の周縁部に弾接して該赤外線除去フィルタ4を支持していると共に、撮像素子2と赤外線除去フィルタ4との間に存する内部空間S1が筒形弾性体5によって包囲されている。
【0015】
撮像素子2は、平面上に光電変換素子を多数集積してなるものであり、レンズ6に集光されて赤外線除去フィルタ4を通過した光を画像データ(電気信号)として出力する。この撮像素子2は基板1の周縁部を露出させた状態で該基板1上に固定されており、ワイヤボンディング等の手法で撮像素子2と基板1とが電気的に接続されている。
【0016】
筒状ケース3は合成樹脂材からなる一体成形品で、円筒状の鏡筒部30を有する。筒状ケース3の一端(図示下端)は方形枠状の外壁部31によって画成された開放端となっており、この外壁部31の底面が基板1の周縁部に接着固定されている。ただし、外壁部31の底面の一部には、外方に露出して接着剤が塗布されない切欠き溝状の通気口3aが形成されている。また、筒状ケース3の他端(図示上端)の中央部には、絞り部として機能する段丘状の開口3bが形成されている。
【0017】
レンズ6は、その外周面が鏡筒部30の内周面に接着固定されている。このレンズ6は、赤外線除去フィルタ4を介して撮像素子2と対向していると共に、筒状ケース3の天井面に当接して開口3bに臨出している。なお、レンズ6は実際には複数枚のレンズの組み合わせ体であるが、図面の煩雑さを避けるために単純化した形状の1枚のレンズとして図示している。
【0018】
赤外線除去フィルタ4は、レンズ6によって集光された赤外線を遮断するための板状フィルタである。赤外線除去フィルタ4の周縁部は、筒状ケース3の内部の凹段部3cに嵌め込まれた状態で図示下方から筒形弾性体5によって弾性付勢されている。そのため、この赤外線除去フィルタ4は、筒状ケース3に接着固定されてはいないが位置ずれを起こす虞はない。
【0019】
図2に示すように、筒形弾性体5は円筒状に形成された多孔質の部材であり、所要の機械的強度と弾性を有する。筒形弾性体5は撮像素子2と赤外線除去フィルタ4間の内部空間S1を全周に亘って包囲しているが、この筒形弾性体5には微細な空洞が多数形成されているため、内部空間S1は通気口3aを介して外部空間と連通された状態になっている。ただし、筒形弾性体5に形成されている空洞は塵埃が通過できない程度に微細なため、外気中に含まれる塵埃が筒形弾性体5を通過して撮像素子2や赤外線除去フィルタ4に付着する虞はない。
【0020】
以上説明したように、本実施形態例に係るカメラモジュールは、撮像素子2と赤外線除去フィルタ4との間に存する内部空間S1を多孔質の筒形弾性体5が包囲しているため、内部空間S1を通気口3aを介して外部空間と連通させつつ、内部空間S1へ流入する外気中に含まれる塵埃を筒形弾性体5によって除去することができる。また、この筒形弾性体5は表面積や厚みが十分に確保できるため、長期間使用しても目詰まりを起こしにくいものを使用することができ、それゆえ内部空間S1と外部空間との連通状態を長期に亘り維持して結露等を確実に防止することができる。
【0021】
また、本実施形態例に係るカメラモジュールは、筒状ケース3の内部で筒形弾性体5が赤外線除去フィルタ4の周縁部を支持しているため、この赤外線除去フィルタ4は筒状ケース3に接着しなくても位置決めされた状態となっている。したがって、赤外線除去フィルタ4を筒状ケース3に接着する組立工程を省略でき、組立作業性の向上が図れる。
【0022】
図3は本発明の第2実施形態例に係るカメラモジュールの断面図であって、図1と対応する部分には同一符号が付してあるため重複する説明は省略する。
【0023】
図3に示すカメラモジュールは、板状の赤外線除去フィルタを具備しないという構成のものであり、筒状ケース3の鏡筒部30内に収納されたレンズ6が多孔質の筒形弾性体5によって支持されているという点が前述した第1実施形態例と大きく異なっている。すなわち、この第2実施形態例において、レンズ6は鏡筒部30内で接着固定されてはいないが、撮像素子2の周縁部上に載置された筒形弾性体5がレンズ6の周縁部に弾接しているため、このレンズ6は筒状ケース3の天井面と筒形弾性体5との間に挟圧された状態に保たれており、鏡筒部30内でレンズ6が位置ずれを起こす虞はない。それゆえ、レンズ6を筒状ケース3に接着する組立工程を省略でき、組立作業性の向上が図れる。また、この第2実施形態例では、撮像素子2とレンズ6との間に存する内部空間S2が多孔質の筒形弾性体5によって包囲されているため、内部空間S2を通気口3aを介して外部空間と連通させつつ、内部空間S2へ流入する外気中に含まれる塵埃を筒形弾性体5によって除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態例に係るカメラモジュールの断面図である。
【図2】第1実施形態例で用いた筒形弾性体の斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態例に係るカメラモジュールの断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 基板
2 撮像素子
3 筒状ケース
3a 通気口
4 赤外線除去フィルタ
5 筒形弾性体
6 レンズ
30 鏡筒部
S1,S2 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装された撮像素子と、一面が前記撮像素子に対向する赤外線除去フィルタと、この赤外線除去フィルタの他面に対向するレンズと、これら赤外線除去フィルタおよびレンズを収納して前記撮像素子を覆うように前記基板上に搭載された中空の筒状ケースとを備え、前記撮像素子と前記赤外線除去フィルタとの間に存する内部空間が外方に露出する通気口と連通されているカメラモジュールであって、
前記撮像素子の周縁部上に載置される多孔質の筒形弾性体を備え、この筒形弾性体を前記赤外線除去フィルタの一面に弾接させて該赤外線除去フィルタを支持すると共に、前記内部空間が前記筒形弾性体によって包囲されるように構成したことを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
基板上に実装された撮像素子と、一面が前記撮像素子に対向するレンズと、このレンズを収納して前記撮像素子を覆うように前記基板上に搭載された中空の筒状ケースとを備え、前記撮像素子と前記レンズとの間に存する内部空間が外方に露出する通気口と連通されているカメラモジュールであって、
前記撮像素子の周縁部上に載置される多孔質の筒形弾性体を備え、この筒形弾性体を前記レンズの一面に弾接させて該レンズを支持すると共に、前記内部空間が前記筒形弾性体によって包囲されるように構成したことを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−60381(P2009−60381A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225934(P2007−225934)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】