説明

カメラモジュール

【課題】カメラモジュールにおいて、光学フィルタをハウジングに対して固定するにあたり接着材を使用する必要性がなくて、組み立て後に、光学フィルタがハウジングから離脱したり、異物が撮像素子の収容空間に侵入して画質が低下したりすることがなく、しかも、製造コストをより抑制することが可能なものを提供する。
【解決手段】基板3上に撮像素子4が搭載されて成る素子基板部2と、ハウジング6にIRカットフィルタ7が保持されて成るフィルタ部5と、鏡筒9にレンズ10a,10bが保持されて成るレンズユニット8とを備えたカメラモジュール1において、フィルタ7の周縁部をハウジング6の凹溝14内に配し、その両面7a,7bを該凹溝14の両側壁14a,14bに密接状態で挟持させることにより、フィルタ7をハウジング6に対して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等の小型電子機器に搭載されるレンズ付き小型カメラモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、カメラ付き携帯電話等の普及に伴って、レンズ付き小型カメラモジュールの需要は急激に拡大しており、更なる高品質化や低コスト化が求められている。
このようなカメラモジュールとしては、特許文献1〜3に開示されるように、鏡筒に保持されたレンズと、ハウジングの開口部に保持された光学フィルタと、基板上に搭載された撮像素子とを備え、上記ハウジング上に鏡筒を取り付けると共に、上記基板上にハウジングを固定して、該ハウジングと上記光学フィルタとで形成された収容空間内に撮像素子を収容したものが知られている。
【0003】
ところで、このような従来のカメラモジュールにおいては、一般的に、上記光学フィルタが、全体の厚さが均一な平板状に形成されていて、該光学フィルタを上記ハウジングに対して固定するにあたり、ハウジングの開口部におけるレンズ側又は撮像素子側の開口縁に段部を周設し、該段部に上記光学フィルタの周縁部を配して接着材で固定している。
そのため、カメラモジュールの組み立て後に、衝撃により接着が剥がれてハウジングから光学フィルタが離脱してしまったり、上記接着材の糸引き等により生じた微小な接着材の断片や、上記光学フィルタの周縁の角部が欠けて生じた微小な破片が、異物として上記撮像素子の収容空間内に侵入し、その結果、画質に悪影響を及ぼすという問題点があった。
また、製造コストの観点からしても、この接着工程により工数が増えるばかりでなく、接着時に接着材が上記段部から溢れ出さないように接着材の量を正確に管理する必要性があるため、接着材を使用せずに光学フィルタをハウジングに対して固定することが望ましい。
【特許文献1】特開2007−067978号公報
【特許文献2】特開2007−181044号公報
【特許文献3】特開2007−060288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の技術的課題は、カメラモジュールにおいて、光学フィルタをハウジングに対して固定するにあたり接着材を使用する必要性がなくて、組み立て後に、光学フィルタがハウジングから離脱したり、異物が撮像素子の収容空間に侵入して画質が低下したりすることがなく、しかも、製造コストをより抑制することが可能なものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、鏡筒に保持されたレンズと、ハウジングに保持された光学フィルタと、基板上に搭載され撮像素子とを備えていて、上記レンズの光軸上に、上記光学フィルタと撮像素子とが順次配されるように構成されたカメラモジュールにおいて、上記ハウジングが、上記基板に固定されて上記撮像素子の周囲全体を囲むように立設された側壁部と、該側壁部の内面側に周設されて上記光学フィルタの周縁部を保持するフィルタ保持部とを有していて、該フィルタ保持部の上記光軸周りには、一対の側壁と底壁を有して内方向に開口する凹溝が一体に周設されており、上記光学フィルタが、上記レンズ側に配される第1面と上記撮像素子側に配される第2面と周端面とを有していて、その周縁部において、少なくともこれら第1面と第2面とを上記凹溝の一対の側壁にそれぞれ密接させることにより、上記ハウジングに対して固定されており、これらハウジングと光学フィルタとにより形成された収容空間内に、上記基板上の撮像素子が収容されていることを特徴とするものである。
【0006】
具体的には、上記光学フィルタにおける上記第1面と第2面とが、互いに平行を成す平面に形成されていて、上記凹溝における上記一対の側壁が、互いに平行を成して対向すると共に上記光軸と垂直を成す平面に形成されている。このとき、上記光学フィルタが、その周端面をも上記凹溝の底壁に密接させていても良い。
【0007】
また、本発明においては、上記フィルタ保持部が、上記側壁部から内方向に一体に延びて周設された鍔部により構成され、該鍔部における上記光軸周りの内端面に上記凹溝が一体に周設されても良く、更に、上記鍔部の内端面が、上記光軸と平行を成していて、周方向に沿って均一な幅を有しており、その幅方向の中央に上記凹溝が周設されていても良い。なお、上記ハウジングは、樹脂により一体成型されたものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るカメラモジュールによれば、光学フィルタが、その周縁部において、両面をハウジングのフィルタ保持部に周設された凹溝の一対の側壁にそれぞれ密接させることにより、該ハウジングに対して固定されているので、光学フィルタをハウジングに対して固定するのに接着材を使用する必要性がなく、また、光学フィルタの周縁の角部を全て上記凹溝内に配することができる。
そのため、カメラモジュールの組み立て後に、衝撃によって光学フィルタがハウジングから離脱してしまったり、接着材の糸引き等により生じた微小な接着材の断片や、上記光学フィルタの周縁の角部が欠けて生じた微小な破片が、異物として撮像素子の収容空間内に侵入して画質に悪影響を及ぼしたりすることがなく、しかも、ハウジングに対する光学フィルタの接着工程を省くことができるため、製造コストをより抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明に係るカメラモジュールの一実施例を示しており、カメラモジュール1は、基板3上に撮像素子4が搭載されて成る素子基板部2と、ハウジング6にIRカットフィルタ7(光学フィルタ)が保持されて成るフィルタ部5と、鏡筒9にレンズ10a,10bが保持されて成るレンズユニット8とにより構成されている。そして、本実施例においては、上記ハウジング6が、該レンズユニット8をレンズ10a,10bの光軸l方向に往復動可能に保持するレンズフォルダ部11を含んで成り、上記フィルタ部5が、フィルタ7を撮像素子4上に配して上記素子基板部2に固定されると共に、上記レンズユニット8が、そのレンズ10a,10bを該フィルタ7上に配して該レンズフォルダ部11内に保持されている。このように、上記レンズ10a,10bの光軸l上に上記フィルタ7と撮像素子4とを順次配置することにより、レンズ10a,10bを通じてカメラモジュール1内に入射した光が、フィルタ7を介して撮像素子4と導かれ、その受光面4a上に結像させるようになっている。
【0010】
上記撮像素子4は、その受光面4aで受光した光を電気信号に変換する例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等であって、上記基板3上にハンダにより固定接続されている。
【0011】
上記ハウジング6は、図1〜図4に示すように、上記基板3に基端部を固定されて上記撮像素子4の周囲全体を囲んで立設された側壁部12と、該側壁部12の内面から一体に内方向に延びて周設され、光軸l周りに略矩形の開口を形成する鍔部13(フィルタ保持部)とを有しており、該開口の開口縁を成す鍔部13の内端面13aには、内方向に開口する凹溝14が一体に周設されている。そして、該開口に上記フィルタ7が配されており、該フィルタ7は、その周縁部おいて両面7a,7bを上記凹溝14の対向する両側壁14a,14bに密接させることにより、ハウジング6に対して固定されている。すなわち、該フィルタ7は、接着材を使用することなくハウジング6に対して支持固定されている。更に、該ハウジング6は、その鍔部13の上面に、上記フィルタ7の周囲全体を囲んで筒状に立設された上記レンズフォルダ部11を有している。
【0012】
具体的に説明すると、上記ハウジング6は、平面視略矩形に形成されていて、光の乱反射を防止するため黒色の樹脂により一体成型されたものである。上記側壁部12は、その基端部をエポキシ等の樹脂接着材により基板3上に固定されて、該基板に対し略垂直に立設されており、その先端部の周全体から、上記鍔部13が該側壁部12と略直角を成して(すなわち光軸lと略垂直を成して)内方向に一体に延設されている。該鍔部13における光軸lを臨む先端には、上記内端面13aが該光軸lと略平行を成して周設されており、周方向に沿って略均一な幅aを有している。そして、該内端面13aにおける幅方向の略中央には、互いに略平行で光軸lと略垂直を成す上記一対の側壁14a,14bと、該側壁14a,14bと略直角を成す底壁14cとにより形成された上記凹溝14が周設されている。このとき、これら凹溝14の両側壁14a,14b及び底壁14cは何れも略平面に形成されている。なお、本実施例のハウジング6においては、上記レンズフォルダ部11も上記鍔部13と一体に形成されている。
【0013】
その一方で、上記IRカットフィルタ7は、厚さt(t=20〜400μm)が全体にわたって略均一なガラス板或いはプラスチック板により形成され、上記レンズ10a,10b側に配される第1面7aと、上記撮像素子4側に配される第2面7bと、これら第1面7aと第2面7bの周縁と角部を形成して連なる周端面7cとを有していて、上記ハウジング6における鍔部13の開口よりも若干大きい略矩形に形成されている。このとき、上記第1面7a及び第2面7bは、互いに略平行を成す略平面に形成されていて、上記周端面7cは、これら第1面7a及び第2面7bの各周縁において略直角の角部を形成している。また、上記第1面7aには、レンズ10a,10bを通じて入射した光のうち赤外線(IR)をカットするIRカットコートが施されており、上記第2面には、光の反射を防止するARコートが施されている。なお、該フィルタ7は上述のようなコーティングによるものに限られず、要するに光学フィルタとしての機能さえ有していれば良い。
【0014】
そして、該フィルタ7は、その周縁部全体を上記凹溝14内に配すると共に、その第1面7aと第2面7bを上記凹溝14の一対の側壁14a,14bに密接させることにより、換言すると、周縁部全体を該フィルタ7の厚さtと同じ溝幅の凹溝14内に配して鍔部13によって密に挟持させることにより、ハウジング6に対して固定されている。そのとき、本実施例においては、図2に示すように、フィルタ7はその周端面7cをも凹溝14の底壁14cに密接させているが、必ずしもこれらを密接させる必要はなく、周端面7cと底壁14cとの間に若干の間隙が形成されていても良い。
なお、本実施例においては、フィルタ7の厚さ20〜400μmに対し、上記内端面13aの幅aは該フィルタ7の厚さtよりも大きければ足り、凹溝14の深さ(すなわち側壁14a,14bの高さ)bは約20μm以上であることが望ましい。また、上記IRカットコート及びARコートは、フィルタ7のハウジング6に対する固定前に施されても良く、固定後に施されても良い。
【0015】
以上のように構成することにより、フィルタ部5と基板3との間には、ハウジング6の内面とフィルタ7の第2面7bとによって形成された収容空間Sが設けられ、該収容空間S内に上記撮像素子4が実質的な密閉状態で収容されている。そのとき、撮像素子4の受光面4aとフィルタ7の第2面7bとの間には一定の間隙が保たれている。
【0016】
なお、上記フィルタ部5の製造するにあったては、ハウジング6の型内に上記フィルタ7をセットした状態で該型内に樹脂材料を流し込んで、ハウジング6の一体成型と同時にフィルタ7の周縁部を上記鍔部の内端面に埋設することにより、接着材を使用することなくフィルタ7をハウジング6に対し固定することができる。よって、従来必要とされていた、ハウジング6に対してフィルタ7を接着するための工程を省くことが可能となり、フィルタ部5の製造を一工程で行うことが可能となる。
【0017】
更に、上記鏡筒9は、光軸l周りの円筒状に形成されていて、その上端中央に絞り開口9aを有しており、外周面には雄ネジ9bが形成され、内周面には上記レンズ10a,10bが光軸lに沿って順次固定されている。
また、上記レンズフォルダ部11も、光軸l周りの円筒状に形成されていて、その内周面には上記鏡筒9の雄ネジ9bに螺合する雌ネジ11aが形成されている。
そして、鏡筒9の雄ネジ9bとレンズフォルダ部11の雌ネジ11aとで該鏡筒9全体を光軸l方向にネジ送りすることにより、レンズ10a,10bの位置を調節することができるようになっている。
なお、上記レンズユニット8及びレンズフォルダ部11によって構成される光学系は、本実施例に何ら限定されるものではなく、その他様々な形態を採用することが可能である。例えば、レンズの枚数を変更したり、レンズユニット8を上記ネジ9b,11a以外の送り機構を介してレンズフォルダ部11に保持させたり、レンズフォルダ部11をハウジング6と別体に形成して該ハウジング6上に固定したり等することが可能である。
【0018】
このように、本実施例に係るカメラモジュール1によれば、フィルタ7をハウジング6に対し固定するにあたって、接着材を使用する必要性がなく、また、該フィルタ7の周縁に形成された角部を全て上記凹溝14内に実質的な密閉状態で配することができるため、カメラモジュール1の組み立て後に、接着材の糸引き等により生じた微小な接着材の断片や、上記フィルタ7の周縁の角部が欠けて生じた微小な破片が、異物として上記撮像素子4の収容空間S内に侵入して画質に悪影響を及ぼしたりすることがない。しかも、ハウジング6の一体成型と同時にフィルタ7を取り付けることができるため、ハウジング6に対するフィルタ7の接着工程を省いて、フィルタ部5を一工程にて製造することができ、製造コストをより抑制することが可能となる。
【0019】
更に、本実施例に係る、カメラモジュール1によれば、フィルタ7の周縁部が、ハウジング6の凹溝14内に配され、その両面7a,7bを該凹溝14の両側壁14a,14bに密接状態で挟持させているため、組み立て後に衝撃によってフィルタ7がハウジング6から離脱することがなく、フィルタ7の周縁部における光の乱反射を防止することもできる。しかも、従来の接着材を使用した固定方法に比べて、フィルタ7をハウジング6の鍔部13により確実に保持させることができるため、該鍔部13の厚さをより薄くすることができると同時に、フィルタ7の周縁部の固定代をより小さくして、フィルタ7の大きさをより小さくすることができ、その結果、材料コストをより抑制することが可能となる。
【0020】
以上、本発明に係るカメラモジュールの一実施例について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るカメラモジュールの一実施例を示す断面図である。
【図2】図1におけるフィルタ部の要部拡大図である。
【図3】図1におけるフィルタ部の斜視図である。
【図4】同じく図1におけるフィルタ部の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 カメラモジュール
3 基板
4 撮像素子
6 ハウジング
7 IRカットフィルタ(光学フィルタ)
7a 第1面
7b 第2面
7c 周端面
10a,10b レンズ
12 側壁部
13 鍔部(フィルタ保持部)
14 凹溝
14a,14b 側壁
14c 底壁
l 光軸
S 収容空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒に保持されたレンズと、ハウジングに保持された光学フィルタと、基板上に搭載され撮像素子とを備えていて、上記レンズの光軸上に、上記光学フィルタと撮像素子とが順次配されるように構成されたカメラモジュールにおいて、
上記ハウジングが、上記基板に固定されて上記撮像素子の周囲全体を囲むように立設された側壁部と、該側壁部の内面側に周設されて上記光学フィルタの周縁部を保持するフィルタ保持部とを有していて、該フィルタ保持部の上記光軸周りには、一対の側壁と底壁を有して内方向に開口する凹溝が一体に周設されており、
上記光学フィルタが、上記レンズ側に配される第1面と上記撮像素子側に配される第2面と周端面とを有していて、その周縁部において、少なくともこれら第1面と第2面とを上記凹溝の一対の側壁にそれぞれ密接させることにより、上記ハウジングに対して固定されており、
これらハウジングと光学フィルタとにより形成された収容空間内に、上記基板上の撮像素子が収容されている、
ことを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
上記光学フィルタにおける上記第1面と第2面とが、互いに平行を成す平面に形成されていて、上記凹溝における上記一対の側壁が、互いに平行を成して対向すると共に上記光軸と垂直を成す平面に形成されている、
請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
上記光学フィルタが、その周端面をも上記凹溝の底壁に密接させている、
請求項1又は請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
上記フィルタ保持部が、上記側壁部から内方向に一体に延びて周設された鍔部により構成され、該鍔部における上記光軸周りの内端面に上記凹溝が一体に周設されている、
請求項1〜3の何れかに記載のカメラモジュール。
【請求項5】
上記鍔部の内端面が、上記光軸と平行を成していて、周方向に沿って均一な幅を有しており、その幅方向の中央に上記凹溝が周設されている、
請求項4に記載のカメラモジュール
【請求項6】
上記ハウジングが、樹脂により一体成型されたものである、
請求項1〜5の何れかに記載のカメラモジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−71631(P2009−71631A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238429(P2007−238429)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000207595)AGCマテックス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】