説明

カメラ装置、拡大表示方法およびプログラム

【課題】 拡大対象物が画像の周縁にある場合でも適切にハイブリッドズームを行えるカメラ装置を提供する。
【解決手段】 撮像によって得られた画像データから表示装置22の画面に表示する表示用データを切り出し、画面のサイズに合わせて拡大する映像信号処理用DSP15とを備える。映像信号処理用DSP15は、プリセットポジションが選択されたときに、画像データからプリセットポジションに対応する領域を表示装置22の画面のサイズに合わせて拡大し、回転台12によってカメラの撮像方向を拡大対象物に向けると共に、拡大対象物が定位置に表示されるように撮像方向の変化に応じて表示用データを切り出す領域を移動し、ズームレンズ20によって光学ズームの倍率を上げると共に、拡大対象物の表示倍率が変動しないように光学ズームの倍率の上昇分に応じて表示用データを切り出す領域の大きさを変える構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズと回転台とを有するカメラにて撮像を行い、撮像した画像を表示するカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラは、撮像された画像データの一部を拡大して表示する電子ズーム機能を備えている。また、ズームレンズによる光学ズーム機能を備えた機種も多数販売されている。光学ズームは、光学系を制御して、表示したい被写体の像を撮像素子に結像させ、結像した像を撮像する。光学ズームは撮像素子の全画素を利用することができるので、高画質の画像が得られる。これに対し、電子ズームは、撮像した画像のデータのうち、表示したい被写体に対応するエリアのデータを切り出して表示する。従って、撮像素子の全素子数に比べて画素数が少なくなるので、画質が劣化する。その一方で、電子ズームは、電子データを処理すればよく、ズームレンズを駆動する必要がないので処理が速いというメリットがある。
【0003】
特許文献1は、光学ズームと電子ズームのメリットを生かしたハイブリッドズームの発明を開示している。この文献に記載された発明では、ユーザが拡大を希望するエリアにタッチしてズームアップ操作を行うと、カメラは、電子ズームを優先して行い、続いて、光学ズームを行う。光学ズームを行う際には、電子ズームによって拡大表示した画像の表示倍率を維持するように、光学ズームを打ち消す方向に電子ズームを制御する。この文献に記載された発明によれば、光学ズームの振動音や摩擦音などのメカ的な騒音を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−329689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した文献に記載された発明は、同文献に「カメラの向きを変えることなく、所望の拡大が迅速、容易に行なえる。光学ズームに付随するズームSW操作やカメラの向きの変更はカメラの不安定な揺れを往々にして引き起こし、鑑賞時に不快な乗り物酔いのような感覚を引き起こす。」(特許文献1、[0027]段落)と記載されているとおり、カメラの向きが固定されていることを前提としている。
【0006】
特許文献1ではカメラの向きが固定されているため、拡大表示すべき被写体が画像の周縁近くにある場合には、光学ズームを十分に行うことができなかった。なぜなら、光学ズームの倍率を上げると撮影範囲が狭くなるため、画像の周縁近くは切れてしまうからである。つまり、特許文献1に記載された発明では、拡大表示すべき被写体の写っている位置に応じて、光学ズームによって拡大できる限界が決まってしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は上記背景に鑑み、被写体が画像の周縁にある場合でも適切にハイブリッドズームを行えるカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカメラ装置は、撮像素子と、前記撮像素子での撮像倍率を変更するズームレンズと、前記撮像素子の撮像方向を変更する回転台と、前記撮像素子での撮像によって得られた画像データから画面に表示する表示用データを切り出し、前記表示用データを前記画面のサイズに合わせて拡大する表示制御部とを備え、拡大して表示すべき拡大対象物が選択されたときに、前記表示制御部は、前記画像データから前記拡大対象物に対応する領域を表示用データとして切り出し、切り出した表示用データを前記画面のサイズに合わせて拡大し、前記回転台によって前記撮像素子の撮像方向を前記拡大対象物に向けると共に、前記表示制御部が、前記拡大対象物が定位置に表示されるように撮像方向の変化に応じて前記表示用データを切り出す領域を移動し、前記ズームレンズによって光学ズームの倍率を上げると共に、前記拡大対象物の表示倍率が変動しないように前記光学ズームの倍率の上昇分に応じて前記表示用データを切り出す領域の大きさを変える構成を有する。
【0009】
この構成により、拡大対象物が選択されたときに、その拡大対象物に対応する領域を切り出して拡大表示する、いわゆる電子ズームにより、迅速に拡大対象物を拡大表示できる。その後、回転台により撮像素子の撮像方向を拡大対象物に向け、光学ズームの倍率を上げることにより、拡大対象物を光学的に拡大する。従って、拡大対象物が撮像範囲の周縁にある場合であっても、拡大対象物が撮像範囲の中央にくるように撮像方向を変えるので、光学ズームにより画素数を多くして高精細な画像を表示できる。また、撮像方向の変更および光学ズームの倍率の変更を行う際には、拡大対象物が定位置に一定の倍率で表示されるように、表示用データの切り出し領域を変更するので、ユーザにとっては、最初に、電子ズームによって拡大表示された拡大対象物が継続して表示されているように見える。
【0010】
本発明のカメラ装置は、前記拡大対象物の候補となるプリセットポジションとその位置を記憶した記憶部を有し、前記拡大対象物を、前記プリセットポジションの中から選択する構成を有する。この構成により、プリセットポジションの拡大表示を迅速に行える。
【0011】
本発明のカメラ装置は、前記拡大対象物を、前記画面に表示された画像に映る物体の中から選択する構成を有する。この構成により、ユーザが選択した物体の拡大表示を迅速に行える。
【0012】
本発明のカメラ装置は、前記画像の中から移動物体を検出する物体検出部を備え、前記物体検出部にて検出された移動物体を拡大対象物として選択する構成を有する。この構成により、移動物体の拡大表示を迅速に行える。
【0013】
本発明のカメラ装置による拡大表示方法は、ズームレンズおよび回転台を備えたカメラ装置によって、拡大対象物を拡大表示する方法であって、拡大して表示すべき拡大対象物が選択されたときに、撮像によって得られた画像データから前記拡大対象物に対応する領域を表示用データとして切り出すステップと、切り出した表示用データを画面のサイズに合わせて拡大し、前記画面に表示するステップと、前記回転台によって前記カメラの撮像方向を前記拡大対象物に向けると共に、前記拡大対象物が定位置に表示されるように撮像方向の変化に応じて前記表示用データを切り出す領域を移動するステップと、前記ズームレンズによって光学ズームの倍率を上げると共に、前記拡大対象物の表示倍率が変動しないように前記光学ズームの倍率の上昇分に応じて前記表示用データを切り出す領域の大きさを変えるステップとを備える。
【0014】
この構成により、上記した本発明のカメラ装置と同様に、拡大対象物が撮像範囲の周縁にある場合であっても、迅速に拡大対象物を拡大して表示すると共に、光学ズームにより画素数を多くして高精細な画像を表示できる。なお、上記した本発明のカメラ装置と同様の方法により、拡大対象物を選択することが可能である。
【0015】
本発明のプログラムは、ズームレンズおよび回転台を備えたカメラ装置によって、拡大対象物を拡大表示させるためのプログラムであって、コンピュータに、拡大して表示すべき拡大対象物が選択されたときに、撮像によって得られた画像データから前記拡大対象物に対応する領域を表示用データとして切り出すステップと、切り出した表示用データを画面のサイズに合わせて拡大し、前記画面に表示するステップと、前記回転台によって前記カメラの撮像方向を前記拡大対象物に向けると共に、前記拡大対象物が定位置に表示されるように撮像方向の変化に応じて前記表示用データを切り出す領域を移動するステップと、前記ズームレンズによって光学ズームの倍率を上げると共に、前記拡大対象物の表示倍率が変動しないように前記光学ズームの倍率の上昇分に応じて前記表示用データを切り出す領域の大きさを変えるステップとを実行させる構成を有する。
【0016】
この構成により、上記した本発明のカメラ装置と同様に、拡大対象物が撮像範囲の周縁にある場合であっても、迅速に拡大対象物を拡大して表示すると共に、光学ズームにより画素数を多くして高精細な画像を表示できる。なお、上記した本発明のカメラ装置と同様の方法により、拡大対象物を選択することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、拡大対象物が撮像範囲の周縁にある場合であっても、迅速に拡大対象物を拡大して表示すると共に、光学ズームにより画素数を多くして高精細な画像を表示できるというすぐれた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係るカメラ装置の概略構成を示すブロック図
【図2】(a)撮像素子にて撮像される画像の例を示す図、(b)拡大対象物が選択されたときに撮像素子にて撮像される画像の例を示す図、(c)撮像方向を変えたときに撮像素子にて撮像される画像の例を示す図、(d)撮像方向を変えたときに撮像素子にて撮像される画像の例を示す図、(e)光学ズーム倍率を変えたときに撮像素子にて撮像される画像の例を示す図、(f)光学ズーム倍率を変えたときに撮像素子にて撮像される画像の例を示す図
【図3】第1の実施の形態に係るカメラ装置の動作を示す図
【図4】第1の実施の形態の変形例に係るカメラ装置の動作を示す図
【図5】第1の実施の形態の変形例に係るカメラ装置の動作を示す図
【図6】第2の実施の形態に係るカメラ装置の概略構成を示すブロック図
【図7】第2の実施の形態に係るカメラ装置の動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るカメラ装置について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るカメラ装置1の概略構成を示すブロック図である。カメラ装置1は、被写体を撮像する撮像素子11と、撮像素子11から出力された画像データを処理するフロントエンドプロセッサ(以下、「FEP」という)18と、撮像素子11をパン及びチルト方向に回転させる回転台12と、回転台12を駆動するサーボマイコン13と、外部機器30との間でコマンドの受け渡しを行う通信マイコン14と、FEP18からの映像信号に対して電子シャッタなどを含む処理を行う映像信号処理用DSP(Digital Signal Processor)15と、装置各部を制御するメインCPU(Central Processing Unit)16と、メインCPU16を制御するためのプログラムを格納するプログラムメモリ17と、パン及びチルトの角度データや動作の設定データを記憶するメモリ(記憶部)19とを備える。
【0020】
撮像素子11としては、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いることができる。撮像素子11の前にはズームレンズ20が装着されている。ズーム制御部21は、メインCPU16からの命令に従ってズームレンズ20を制御する。プログラムメモリ17としては、フラッシュRAM(Random Access memory)等の不揮発性メモリが用いられる。映像信号処理用DSP15は、撮像素子11からの映像信号を処理し、これにより得られた映像信号を表示装置22に出力する。
【0021】
撮像素子11は、回転台12に取り付けられている。回転台12を回転させることにより、撮像素子11の向きを変更でき、ユーザが見たい被写体を撮影することができる。回転台12は、撮像素子11をパン方向とチルト方向へ移動させるための機構及びモータ(図示せず)等を有する。回転台12は、サーボマイコン13によって制御される。メモリ19には、プリセットポジションのポジション番号と、そのプリセットポジションの撮像方向を示すパン及びチルトの角度データが記憶されている。
【0022】
ユーザが外部機器30からポジション番号を入力すると、映像信号処理用DSP15およびメインCPU16は、当該ポジション番号に対応するプリセットポジションの方向をハイブリッドズームにより拡大表示する。ハイブリッドズームは、高速処理が可能な電子ズームと高精細の光学ズームとを組み合わせた拡大表示方式である。プリセットポジション(拡大対象物)が選択されたときに、まず、カメラ装置1は、電子ズームによって、当該拡大対象物を迅速に拡大表示する。続いて、カメラ装置1は、撮像素子11の撮像方向を拡大対象物に向け、光学ズーム倍率を高めることで高精細な画像に徐々に切り替えていく。ユーザに電子ズームから光学ズームへの切り替えを意識させないように、カメラ装置1は、撮像方向の変化および光学ズームの倍率変化をキャンセルするように電子ズームを行う。
【0023】
以下、ハイブリッドズームについて詳しく説明する。まず、メインCPU16は入力されたポジション番号に対応するプリセットポジションのパン及びチルト角度をメモリ19から読み出す。次に、パン・チルト角度のデータに基づいて、映像信号処理用DSP15が、撮像画像の中からポジション番号に対応する領域を切り出し、切り出した領域を表示装置22の画面のサイズに拡大して表示する。
【0024】
次に、メインCPU16は、パン及びチルト角度のデータに基づいて撮像素子11をプリセットポジションに向けるように、回転台12を回転させる。サーボマイコン13は、メインCPU16からのコマンドに従って、回転台12のモータを駆動するドライバを制御する。この際、映像信号処理用DSP15は、回転台12の回転に対応して、表示装置22の画面に表示すべき切出し領域を移動させる。
【0025】
次に、メインCPU16は、ズーム制御部21に命令を出し、選択されたプリセットポジションに対応する方向を拡大表示する。この際、映像信号処理用DSP15は、ズームレンズ20の倍率に対応して、表示装置22の画面に表示すべき切出し領域の大きさを変える。
【0026】
図2(a)〜図2(f)は、撮像素子11にて撮像される画像(すなわち、撮像素子11の撮像範囲)の例を示す。ハイブリッドズーム中の撮像範囲の変化と切出し領域の関係について説明する。最初、図2(a)に示すように、撮像素子11にて撮像された画像が画面に表示されている。このときは電子ズームによる拡大表示はされておらず、図2(a)の表示画像は撮像範囲と一致している。図2(a)において、画面左下の入口のドアのところがプリセットポジションA、画面右側の窓のところがプリセットポジションBとして設定されている。プリセットポジションAを拡大表示することにより、ドアから入ってくる人を監視できる。また、プリセットポジションBを拡大表示することにより、窓から侵入する不審者がないか監視できる。
【0027】
図2(b)〜図2(f)は、ユーザがプリセットポジションAを拡大表示物として選択した場合の撮像画像を示す。図2(b)〜図2(f)において点線の枠は、ハイブリッドズーム時の表示用データの切り出し領域Dを示す。以下では、拡大対象物としてプリセットポジションAを選択した場合を例として説明する。
【0028】
映像信号処理用DSP15は、図2(b)に示すように、プリセットポジションAに対応する領域Dを表示用データとして切り出し、切り出した表示用データを表示装置22の画面のサイズに合うように拡大して表示する。従って、表示装置22の画面には、図2(f)に示す画像が表示される。ただし、この時点では、表示用データを切り出して拡大している(電子ズームアップしている)ので、光学ズームによってズームアップした場合に比べ、粗い画像である。
【0029】
メインCPU16は、サーボマイコン13に命令を出し、撮像素子11の撮像方向がプリセットポジションAを向くように回転台12を回転させる。図2(c)及び図2(d)は、撮像方向が変化する様子を示す図である。図2(c)及び図2(d)に示すように、プリセットポジションAのドアが画像の中央にくるように撮像方向が変化する。映像信号処理用DSP15は、このように撮像方向が変化している間に得られた画像の中から、表示用データを切り出す。表示用データの切り出し領域Dは、撮像方向の変化に対応し、常に同じ領域(この場合は、プリセットポジションA)が切り出されるように変更する。これにより、表示装置22の画面上には、図2(f)に示す画像が表示され続ける。
【0030】
続いて、メインCPU16は、ズーム制御部21に命令を出し、ズームレンズ20の倍率を変更する。図2(e)は、光学ズーム倍率が変化する様子を示す図である。図2(e)に示すように、プリセットポジションAの画像が拡大される。映像信号処理用DSP15は、このように光学ズーム倍率が変化している間に得られた画像の中から、表示用データを切り出す。表示用データの切り出し領域Dは、ズーム倍率の変化に対応し、常に同じ倍率でプリセットポジションが表示されるように拡大していく。やがて、ズームレンズ20による光学ズームのみを用いた拡大によって、図2(f)に示す画像が撮像される。
【0031】
これにより、表示装置22の画面上には、最初に、電子ズームによってプリセットポジションが拡大表示されてから連続して、図2(f)に示す画像が表示され続け、電子ズームによる拡大画像からズームレンズ20の拡大画像に切り替わる。ズームレンズ20の倍率を拡大することによって得られた画像は、撮像素子11の全画素のデータを用いているので、図2(b)から切り出した表示用データを拡大して表示した画像より、高精細になっている。
【0032】
図3は、第1の実施の形態のカメラ装置1の動作を示す図である。カメラ装置1は、まず、ユーザからプリセットポジションの選択を受け付ける(S10)。カメラ装置1は、プリセットポジションの選択を受け付けると、現在の撮像画像内にプリセットポジションが映っているか否かを判定する(S12)。現在の撮像画像内にプリセットポジションが映っている場合には(S12でYES)、プリセットポジションを電子ズームで拡大して表示する(S14)。具体的には、プリセットポジションに対応する領域を表示用データとして切り出し、切り出した表示用データを表示装置22の画面のサイズに合わせて拡大表示する。
【0033】
次に、カメラ装置1は、撮像素子11の撮像方向がプリセットポジションを向くように、回転台12をパン・チルト移動する(S16)。この際、電子ズームアップされたプリセットポジションが一定の位置に表示されるように、表示用データの切り出し位置を変更する。次に、カメラ装置1は、ズームレンズ20の倍率を拡大する(S18)。この際、プリセットポジションが一定の倍率で表示されるように、表示用データの切り出し位置を拡大する、すなわち電子ズームの倍率を縮小する。
【0034】
ユーザから受け付けたプリセットポジションが現在の撮像画像内に映っていなかった場合には(S12でNO)、カメラ装置1は、撮像素子11の撮像方向がプリセットポジションを向くように、回転台12をパン・チルト移動し(S20)、続いて、ズームレンズ20の倍率を変更する(S22)。この動作は、従来のカメラ装置と同じである。以上、第1の実施の形態のカメラ装置1の構成および動作について説明した。
【0035】
第1の実施の形態のカメラ装置1は、プリセットポジションが選択されたときに、そのプリセットポジションに対応する領域を切り出して拡大表示する電子ズームアップを行うので、迅速に拡大表示を行える。その後、回転台12(パン・チルト機構)により撮像素子11の撮像方向をプリセットポジションに向け、ズームレンズ20の倍率を上げることにより、プリセットポジションを光学的に拡大する。このようにプリセットポジションが撮像範囲の中央にくるように撮像方向を変えてからズームレンズ20による光学ズームを行うので、選択時にプリセットポジションが撮像範囲の周縁にある場合であっても、撮像画像の画素数を多くして高精細な画像を表示できる。
【0036】
第1の実施の形態では、現在の撮像画像内にプリセットポジションが存在しない場合には、パン・チルト移動した後にズームレンズの倍率を上げるという従来と同様の動作を行う例について説明したが、図4に示すように、パン・チルト移動によってプリセットポジションが撮像範囲内に入ってきたか否かを判定し(S24)、撮像範囲内に入ってきたところで(S24でYES)、ハイブリッドズームを開始してもよい。
【0037】
また、第1の実施の形態では、拡大対象物をプリセットポジションの中から選択する例について説明したが、撮像画像に映っている物体の中から拡大対象物を選択することとしてもよい。この場合、拡大対象物の選択は、例えば、タッチパネルによって表示装置22の画面上でタッチされた座標を把握し、タッチされた場所にある物体を含む領域を拡大対象物に対応する領域として認識する方法を採用することができる。
【0038】
図5は、撮像画像から拡大対象物を選択する場合のカメラ装置の動作の例を示す図である。カメラ装置1は、ユーザが拡大表示したい拡大対象物の選択を受け付ける(S30)。拡大対象物の選択を受け付ける方法は、上述したとおり、タッチパネルによってタッチされた座標を通信マイコン14に入力することによって実現することができる。映像信号処理用DSP15は、選択された拡大対象物に対応するエリアを表示用データとして切り出し、切り出した表示用データを表示装置22の画面のサイズに合うように拡大して表示する(S32)。
【0039】
次に、カメラ装置1は、撮像素子11の撮像方向が選択された拡大対象物を向くように、回転台12をパン・チルト移動する(S34)。この際、電子ズームアップされた拡大表示物が定位置に表示されるように、映像信号処理用DSP15は、表示用データの切り出し位置を変更する。次に、カメラ装置1は、ズームレンズ20の倍率を拡大する(S36)。この際、映像信号処理用DSP15は、プリセットポジションが一定の倍率で表示されるように、表示用データの切り出し位置を拡大する、すなわち電子ズームの倍率を縮小する。以上の動作により、カメラ装置1は、ユーザが選択した拡大対象物をハイブリッドズームすることができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態に係るカメラ装置2の概略構成を示す図である。第2の実施の形態のカメラ装置2は、撮像範囲内において追尾すべき移動物体を検出したときに、その移動物体を拡大対象物として選択する。第2の実施の形態のカメラ装置2の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであるが、移動物体の検出および追尾を行うための構成として、追尾処理用DSP24と、プログラムメモリ25と、画像データ格納用メモリ26とを備えている。
【0041】
映像信号処理用DSP15は、撮像素子11からの映像信号を処理し、得られた映像信号を出力すると共に、追尾処理用DSP24へデジタル画像信号を出力する。追尾処理用DSP24は、映像信号処理用DSP15から出力されるデジタル画像信号に対して2値化処理やノイズ低減処理などを行って追尾対象を特定する。プログラムメモリ25は、追尾処理用DSP24を制御するためのプログラムを格納している。画像データ格納用メモリ26は、追尾処理用DSP24で処理された画像データを格納する。
【0042】
追尾処理用DSP24について詳しく説明する。追尾処理用DSP24は、「待ち状態」、「サーチ状態」、「追尾状態」の3つの状態を有する。「待ち状態」とは自動追尾機能OFFの状態であり、「サーチ状態」とは自動追尾機能ONの状態であり、動いている被写体を検出し、被写体が中央になるようにパン、チルト及びズームを制御し、人かどうかを特定するまでの状態をいう。「追尾状態」とは「サーチ状態」で人と特定した後に、実際に人を追尾する状態をいう。追尾処理用DSP24は、自身の状態を示すデータをメインCPU16に通知する。
【0043】
追尾処理用DSP24は、映像信号処理用DSP15から送られてきたデジタル画像信号を、例えば100ms毎にキャプチャーし、差分を取ることにより移動物体を検出する。また、追尾処理用DSP24は、検出した移動物体が追尾すべき対象であるか否かを判定する。具体的には、追尾処理用DSP24は、パターンマッチングにより、移動物体が人であるか否かを判定し、移動物体が人である場合に追尾対象であると判定する。追尾処理用DSP24は、追尾対象を検出した場合には、追尾対象(人)の動きデータやパン、チルト及びズームデータを含む追尾データをシリアルデータとしてメインCPU16へ出力する。
【0044】
なお、本実施の形態では、移動物体が追尾対象であるか否かの判定の精度を高めるため、移動物体を検出した場合には、移動物体を光学ズームによって拡大して撮像し、拡大された画像を用いてパターンマッチングを行う。具体的には、追尾処理用DSP24は移動物体を検出すると、移動物体を検出したことを示すデータおよびその位置データをメインCPU16に送信する。メインCPU16は、ズーム制御部21に命令を出して、ズームレンズ20のズーム倍率を第1の倍率(例えば、2倍)まで上げる。追尾処理用DSP24は、第1の倍率で撮像した画像を用いて、移動物体が追尾対象であるか否かを判定する。
【0045】
映像信号処理用DSP15は、追尾処理用DSP24にて検出された追尾対象を拡大対象物として選択し、拡大対象物のハイブリッドズームを行う。ハイブリッドズームの方法は、第1の実施の形態と同じである。第2の実施の形態では、追尾処理用DSP24によって追尾対象か否かの判定を行う際に、ズームレンズ20の倍率が第1の倍率(例えば、2倍)にされているので、第1の倍率から第2の倍率(例えば、5倍)までハイブリッドズームを行う。
【0046】
図7は、第2の実施の形態のカメラ装置2の動作を示す図である。カメラ装置2は、撮像画像の中から移動物体を検出したか否かを判定する(S40)。移動物体を検出しなかった場合には(S40でNO)、移動物体を検出するまで判定処理を繰り返す。
【0047】
撮像画像の中から移動物体を検出した場合には(S40でYES)、カメラ装置2は、ズームレンズ20の倍率を第1の倍率まで高めて、移動物体を撮像する(S42)。続いて、カメラ装置2は、第1の倍率で撮像した撮像画像に基づいて、移動物体が追尾対象であるか否かを判定する(S44)。移動物体が追尾対象でない場合には(S44でNO)、カメラ装置2は、移動物体を検出する処理に戻る(S40)。
【0048】
移動物体が追尾対象であった場合には(S44でYES)、追尾対象を拡大表示物としてハイブリッドズームを行う。カメラ装置2は、まず、追尾対象を電子ズームで拡大して表示する(S46)。具体的には、追尾対象に対応する領域を表示用データとして切り出し、切り出した表示用データを表示装置22の画面のサイズに合わせて拡大表示する。
【0049】
次に、カメラ装置2は、撮像素子11の撮像方向が追尾対象を向くように、回転台12をパン・チルト移動する(S48)。この際、電子ズームアップされた追尾対象物が一定の位置に表示されるように、表示用データの切り出し位置を変更する。続いて、カメラ装置2は、ズームレンズ20の倍率を第2の倍率まで拡大する(S50)。この際、追尾対象が一定の倍率で表示されるように、表示用データの切り出し位置を拡大する、すなわち電子ズームの倍率を縮小する。以上、第2の実施の形態のカメラ装置2について説明した。
【0050】
第2の実施の形態のカメラ装置2は、追尾対象を検出すると、検出した追尾対象を電子ズームアップするので、迅速に追尾対象を拡大表示できる。その後、回転台12(パン・チルト機構)により撮像素子11の撮像方向を追尾対象に向け、ズームレンズ20の倍率を上げることにより、追尾対象を光学的に拡大する。従って、追尾対象が撮像範囲の中に入ってきて撮像範囲の周縁にある場合であっても、追尾対象が撮像範囲の中央にくるように撮像方向を変えてから、ズームレンズ20による光学ズームを行うので撮像画像の画素数を多くして高精細な画像を表示できる。
【0051】
また、第2の実施の形態のカメラ装置2は、追尾対象を検出した直後から表示装置22の画面上には追尾対象が拡大表示されているが、電子ズームアップによる拡大画像からズームレンズ20による拡大画像に切り替えるハイブリッドズームの過程においては、撮像素子11は表示装置22の画面に表示されているよりも広角で撮像を行なっている。従って、表示された範囲より広い範囲において、別の移動物体がないかどうかを検出することができる。
【0052】
なお、上記した第2の実施の形態では、移動物体を検出したときに、その移動物体が追尾対象であるか否かを判定し、追尾対象であった場合に追尾を行うこととしたが、移動物体を検出したときに、その移動物体をそのまま追尾対象としてもよい。
【0053】
以上、本発明のカメラ装置について、実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、拡大対象物が撮像範囲の周縁にある場合であっても、迅速に拡大対象物を拡大して表示すると共に、光学ズームにより画素数を多くして高精細な画像を表示できるというすぐれた効果を有し、例えば、監視カメラ等として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1,2 カメラ装置
11 撮像素子
12 回転台
13 サーボマイコン
14 通信マイコン
15 映像信号処理用DSP
16 メインCPU
17 プログラムメモリ
18 FEP
19 メモリ
20 ズームレンズ
21 ズーム制御部
22 表示装置
24 追尾処理用DSP
25 プログラムメモリ
26 画像データ格納用メモリ
30 外部機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子での撮像倍率を変更するズームレンズと、
前記撮像素子の撮像方向を変更する回転台と、
前記撮像素子での撮像によって得られた画像データから画面に表示する表示用データを切り出し、前記表示用データを前記画面のサイズに合わせて拡大する表示制御部と、
を備え、
拡大して表示すべき拡大対象物が選択されたときに、前記表示制御部は、前記画像データから前記拡大対象物に対応する領域を表示用データとして切り出し、切り出した表示用データを前記画面のサイズに合わせて拡大し、
前記回転台によって前記撮像素子の撮像方向を前記拡大対象物に向けると共に、前記表示制御部が、前記拡大対象物が定位置に表示されるように撮像方向の変化に応じて前記表示用データを切り出す領域を移動し、
前記ズームレンズによって光学ズームの倍率を上げると共に、前記拡大対象物の表示倍率が変動しないように前記光学ズームの倍率の上昇分に応じて前記表示用データを切り出す領域の大きさを変えるカメラ装置。
【請求項2】
前記拡大対象物の候補となるプリセットポジションとその位置を記憶した記憶部を有し、
前記拡大対象物を、前記プリセットポジションの中から選択する請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記拡大対象物を、前記画面に表示された画像に映る物体の中から選択する請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記画像の中から移動物体を検出する物体検出部を備え、
前記物体検出部にて検出された移動物体を拡大対象物として選択する請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項5】
ズームレンズおよび回転台を備えたカメラ装置によって、拡大対象物を拡大表示する方法であって、
拡大して表示すべき拡大対象物が選択されたときに、撮像によって得られた画像データから前記拡大対象物に対応する領域を表示用データとして切り出すステップと、
切り出した表示用データを画面のサイズに合わせて拡大し、前記画面に表示するステップと、
前記回転台によって前記カメラの撮像方向を前記拡大対象物に向けると共に、前記拡大対象物が定位置に表示されるように撮像方向の変化に応じて前記表示用データを切り出す領域を移動するステップと、
前記ズームレンズによって光学ズームの倍率を上げると共に、前記拡大対象物の表示倍率が変動しないように前記光学ズームの倍率の上昇分に応じて前記表示用データを切り出す領域の大きさを変えるステップと、
を備える拡大表示方法。
【請求項6】
ズームレンズおよび回転台を備えたカメラ装置によって、拡大対象物を拡大表示させるためのプログラムであって、コンピュータに、
拡大して表示すべき拡大対象物が選択されたときに、撮像によって得られた画像データから前記拡大対象物に対応する領域を表示用データとして切り出すステップと、
切り出した表示用データを画面のサイズに合わせて拡大し、前記画面に表示するステップと、
前記回転台によって前記カメラの撮像方向を前記拡大対象物に向けると共に、前記拡大対象物が定位置に表示されるように撮像方向の変化に応じて前記表示用データを切り出す領域を移動するステップと、
前記ズームレンズによって光学ズームの倍率を上げると共に、前記拡大対象物の表示倍率が変動しないように前記光学ズームの倍率の上昇分に応じて前記表示用データを切り出す領域の大きさを変えるステップと、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−239104(P2011−239104A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107666(P2010−107666)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】