説明

カメラ

【課題】撮影領域外のエリアをより広く観察することができるカメラを提供すること。
【解決手段】撮影光学系の焦点距離を変更する変更手段と、前記撮影光学系の焦点距離の変更を指示する操作手段と、前記撮影光学系による画像および該画像の一部を示す指標を表示可能な表示手段と、前記操作手段による前記焦点距離の変更の指示に対し、前記変更手段による前記焦点距離の変更を禁止した状態で、前記表示手段に表示された前記指標の前記表示手段の表示領域に対する大きさを変化させる制御手段とを有するカメラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実際の撮影領域よりも広い領域を観察できるファインダを設け、ファインダの視野よりも小さな撮影領域を示す撮影フレームをファインダ内に表示するカメラがある(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2940101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のカメラにおいては、ファインダ内に表示された撮影フレームの大きさは固定されている。このため、撮影領域外の範囲が実際の撮影領域よりも視野率を広げた差分しかないため、撮影領域外のエリアが狭かった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、撮影領域外のエリアをより広く観察することができるカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカメラは、撮影光学系の焦点距離を変更する変更手段と、前記撮影光学系の焦点距離の変更を指示する操作手段と、前記撮影光学系による画像および該画像の一部を示す指標を表示可能な表示手段と、前記操作手段による前記焦点距離の変更の指示に対し、前記変更手段による前記焦点距離の変更を禁止した状態で、前記表示手段に表示された前記指標の前記表示手段の表示領域に対する大きさを変化させる制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮影領域外のエリアをより広く観察することができるカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るカメラを背面側から見た斜視図である。
【図2】実施形態に係るカメラの構成を示すブロック図である。
【図3】通常視野モードでのモニタの画像例であり、(a)は撮影光学系が広角端における画像、(b)は望遠端における画像を示している。
【図4】実施形態に係るカメラの動作を示すフロー図である。
【図5】(a)は、広視野モードにおいて撮影光学系の焦点距離および撮影フレームに対応する焦点距離がともに25mmのときのモニタの画像例であり、(b)はこのときのズームスイッチの状態を示す図である。
【図6】(a)は、広視野モードにおいて撮影光学系の焦点距離が25mmで、撮影フレームに対応する焦点距離が55mmのときのモニタの画像例であり、(b)はこのときのズームスイッチの状態を示す図である。
【図7】(a)は、広視野モードにおいて撮影光学系の焦点距離が25mmで、撮影フレームに対応する焦点距離が80mmのときのモニタの画像例であり、(b)はこのときのズームスイッチの状態を示す図である。
【図8】(a)は、広視野モードにおいて撮影光学系の焦点距離および撮影フレームに対応する焦点距離がともに80mmのときのモニタの画像例であり、(b)はこのときのズームスイッチの状態を示す図である。
【図9】(a)は、広視野モードにおいて撮影光学系の焦点距離が80mmで、撮影フレームに対応する焦点距離が125mmのときのモニタの画像例であり、(b)はこのときのズームスイッチの状態を示す図である。
【図10】ズームスイッチの形態を変更した実施例を背面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一つの実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず本実施形態に係るカメラの構成および機能の説明をする。
【0010】
図1は本実施形態に係るカメラを背面側から見た斜視図である。
【0011】
本実施形態に係るカメラ1は、本体部であるボディ部4と、ボディ部4に設けられたレンズ鏡筒7とから構成されるレンズ一体型デジタルカメラである。ボディ部4の上面にはレリーズボタン10が配置されている。ボディ部4の背面にはモニタ13、画角ロックスイッチ16、ズームスイッチ19が配置されている。この他にもボディ部4の上面および背面には、図示はしていないが、カメラ1の電源ボタン、機能の設定等のメニュー画面を表示するためのメニューボタン、メニューや撮影シーンの選択や決定等を行う十字キー等の公知のボタンおよびキーが配置されている。レンズ鏡筒7はボディ部4の正面に配置され、レンズ鏡筒7の内部には撮影光学系8が配置されている。撮影光学系8は複数のレンズ要素で構成され、ズームレンズ20とオートフォーカス用の合焦レンズ21とを含んでいる。本実施形態に係るカメラ1の撮影光学系8は、焦点距離が25mmから125mmまでの範囲で変倍が可能となっている。
【0012】
レリーズボタン10は半押しすることによりONされる半押しスイッチ(SW1、図2参照)と、全押しすることによりONされる全押しスイッチ(SW2、図2参照)とから構成されている。モニタ13は液晶画面であり、撮影時には被写体を動画で表示したり、記録済みの画像やメニュー画面等を表示したりすることができる。画角ロックスイッチ16は、押下してON状態にすることにより撮影光学系8を広角端にロックするためのボタンである。また、カメラ1は画角ロックスイッチ16がON状態であるかまたはOFF状態であるかにより、撮影モードが自動的に切替わるようになっている。画角ロックスイッチ16がOFF状態のときは、撮影モードは通常視野モードであり、ON状態では後述するように広視野モードとなる。したがって、撮影者は画角ロックスイッチ16を操作することにより好みの撮影モードで撮影をすることができる。
【0013】
ズームスイッチ19はスライド部22を上下方向に移動させるスライド式になっている。なお、ズームスイッチ19はスライド式に限られず、回転式等の他の方式でも構わない。ズームスイッチ19にはスライド部22が移動する範囲に亘って目盛り25が付されており、スライド部22の中心線22aが目盛り25を指示するようになっている。目盛り25は撮影光学系8の焦点距離を表している。目盛り25の距離表示は撮影光学系8の広角端の焦点距離から望遠端の焦点距離に亘って10mmごとに付されている(図5〜9参照)。スライド部22は目盛り25の広角端から望遠端の間の任意の位置で保持することができる。ズームスイッチ19は撮影モードによって作用が異なっている。通常視野モードでは、スライド部22を移動させることによりズームレンズ20が移動する。これにより撮影光学系8を広角側(WIDE側)および望遠側(TELE側)に駆動させることができる。広視野モードでは、スライド部22を移動させると、後述するように、モニタ13に表示された撮影範囲を示す撮影フレームの大きさを変えることができる。
【0014】
図2は本実施形態に係るデジタルカメラ1の構成を示すブロック図である。
【0015】
制御部28はCPU31を含み、撮像部34、ズーミング機構37、オートフォーカス制御部40、画像処理部43、表示部46、RAM49、ROM52、外部メモリ55、内部メモリ58、および操作部61と接続され、これら各部を制御する。
【0016】
撮像部34は撮影光学系8と撮像素子64と図示しないシャッターとを含んでいる。撮像素子64はCCDあるいはCMOSが用いられている。撮像素子64は、撮影光学系8を通過して撮像素子64に結像した被写体像を電気信号に変換し、画像処理部43に出力する。画像処理部43は撮像素子64からの画像信号を処理して画像を生成する。
【0017】
ズーミング機構37はズーム用モータ67を含んでいる。通常視野モードにおいては、ズーミング機構37はズームスイッチ19と連動しており、ズームスイッチ19のスライド部22を移動させると、制御部28がズーム用モータ67を介してズームレンズ20を光軸方向に駆動し、撮影光学系8の焦点距離が変化する。撮影光学系8の焦点距離はスライド部22を一方側(W側)の端部まで移動させると広角端となり、他方側(T側)の端部まで移動させると望遠端となる。ズームスイッチ19に付された目盛り25の表示距離と撮影光学系8の実際の焦点距離とは対応しており、制御部28は、撮影光学系8の焦点距離がスライド部22によって指示された目盛り25の表示距離と同じ距離になるように、ズーム用モータ67を介してズームレンズ20を光軸方向に駆動する。したがって撮影者はズームスイッチ19のスライド部22を目盛り25の表示距離に合わせることで撮影光学系8を所望の焦点距離に設定することができる。
【0018】
本実施形態に係るカメラ1のオートフォーカス制御は、コントラスト検出方式である。オートフォーカス制御部40はレリーズボタン10を半押しにすることで作動する。レリーズボタン10を半押しにするとSW1がONになり、オートフォーカス制御部40はオートフォーカス用モータ70を介して合焦レンズ21を光軸方向に少しずつ駆動し、撮像素子64で生成された画像信号のコントラストを変化させ、コントラストがピークとなる合焦レンズ21の位置を検出する。コントラストがピークとなる位置を検出すると、その位置に合焦レンズ21を保持する。なお、オートフォーカス制御は他の方式であっても良い。例えば位相差検出方式であっても良いし、あるいはコントラスト検出方式と位相差検出方式の双方を備えたものであっても良い。
【0019】
画像処理部43はA/D変換回路73を含み、撮像部34から出力された画像信号をデジタル信号に変換し、さらにその他の必要な画像処理を行い、モニタ13に表示する画像や記録用の画像を生成する。生成された画像はRAM49に一時的に記憶される。
【0020】
表示部46はモニタ13と表示用ドライバ76とを含み、表示用ドライバ76は制御部28からの指示によりモニタ13に表示用の画像を表示させる。本実施形態に係るカメラ1は、撮像素子64から連続して出力される画像信号を画像処理部43が順次処理して生成した表示用の画像データをモニタ13に連続して表示し、動画像として再生することが可能である。この連続してモニタ13に表示される画像をスルー画像という。スルー画像は撮影光学系8が継続して捉えている画像がモニタ13に連続して動画像として表示されているものである。スルー画像はカメラ1の電源を入れるとモニタ13に表示され、撮影者はこのスルー画像を観察して撮影する写真の構図を決定することができる。
【0021】
図3は、通常視野モードにおいてモニタ13に表示されているスルー画像の例であり、(a)は撮影光学系8が広角端であるときの画像例であり、(b)は望遠端であるときの画像例を示している。
【0022】
モニタ13には撮影光学系8が現在捉えている画像が表示されるので、ズームレンズ20が駆動して撮影光学系8の焦点距離が変化すれば、モニタ13に表示される画像もズームレンズ20の駆動すなわち焦点距離の変化に応じて変化する。例えば図3に示す画面中央に表示されている一本の木を被写体79として撮影しようとした時、撮影光学系8の焦点距離を広角端(本実施形態では25mm)に設定すると、図3(a)に示すように、被写体79は画面の中央に位置して小さく表示され、被写体79の周辺は広い範囲に亘って画面に表示される。これに対し焦点距離を望遠端(本実施形態では125mm)に設定すると、図3(b)に示すように、被写体79は画面の中央に大きく表示され、被写体79の周辺の範囲はあまり表示されない。通常視野モードではモニタ13に表示された画像がほぼ撮影範囲となる。
【0023】
また、通常視野モードにおいては、モニタ13には、画面右上に撮影光学系8の現在の焦点距離が表示される。表示される焦点距離はズームスイッチ19と連動しており、ズームスイッチ19のスライド部22を移動させて焦点距離を変更すると、スライド部22が指示する目盛り25の表示距離に合わせて焦点距離の表示も変化する。図3(a)では画面右上に「25mm」が表示されているが、撮影光学系8の焦点距離を望遠端にすると、図3(b)のように「125mm」が表示される。撮影者はこの表示により、モニタ13に表示されている被写体79から視線を大きく逸らすことなく撮影光学系8の現在の焦点距離を知ることができる。広視野モードでは、後述するように、撮影光学系8の現在の焦点距離の表示に加えて、撮影範囲に対応する焦点距離も表示される。
【0024】
RAM49は、画像処理部43が生成した表示用の画像や記録用の画像のデータを一時的に記憶しておくためのものである。ROM52はカメラ1の作動あるいは設定等のためのプログラムが記憶されている。外部メモリ55は、画像ファイルを保存するための着脱可能なメモリカードである。内部メモリ58はハードディスク等の大容量の記憶媒体である。操作部61は上記したレリーズボタン10、画角ロックスイッチ16、ズームスイッチ19、その他図示しない電源ボタン、十字キー等が含まれる。
【0025】
次に、本実施形態に係るカメラ1の撮影動作について、図4に示すフロー図および図5〜図9に示すモニタ13の画像例を参照して説明する。なお図5〜図9は、図3に示す一本の木を被写体79とした画像例である。
【0026】
本実施形態に係るカメラ1の撮影モードは、上述したように画角ロックスイッチ16のON、OFFにより広視野モードと通常視野モードとの切替えができるようになっている。図4に示すフロー図のSTARTでカメラ1の電源をONにした後、ステップS101で画角ロックスイッチ16をONにすると撮影モードは広視野モードとなり、画角ロックスイッチ16を作動させない場合は通常視野モードとなる。まず通常視野モードでの動作について説明する。
【0027】
カメラ1の電源をONにすると(START)、モニタ13にはスルー画像が表示される。ステップS101では画角ロックスイッチ16を作動させずにステップS121に進む。通常視野モードでは、モニタ13に表示されるスルー画像がほぼ実際の撮影範囲となる。撮影者はズームスイッチ19を操作することで撮影光学系8を望遠側または広角側に駆動させて(ステップS121)撮影光学系8の焦点距離を変化させる。モニタ13に表示されるスルー画像は撮影光学系8の駆動に合わせて拡大あるいは縮小する。このようにして焦点距離を変化させて撮影画角(以後フレーミングともいう。)を決定する(ステップS122)。フレーミングが決定したらレリーズボタン10を半押しする(ステップS123)。するとSW1がONとなり、オートフォーカス制御部40はオートフォーカス用モータ70を介して合焦レンズ21を駆動させ、撮影光学系8を被写体79に合焦させる(ステップS124)。その後レリーズボタン10を全押し(ステップS125)するとSW2がONとなり、シャッター(図示省略)が作動して撮影が行われる(ステップS126)。
【0028】
撮影が終了すると、制御部28は撮影続行か否かの指示を待つ(ステップS127)。撮影を続行する場合はステップS101に戻り、続行しない場合はカメラ1の電源をOFFにする(ステップS128)。電源をOFFにすると、制御部28は撮影光学系8が広角端となるようにズーム用モータ67を介してズームレンズ20を駆動し、その後カメラ1の電源が切れて撮影動作は終了となる。なお、ステップS122でフレーミングが確定しない場合、およびステップS124で撮影光学系8が被写体79に合焦しない場合は、ステップS101に戻る。
【0029】
次に広視野モードでの動作について説明する。
【0030】
カメラ1の電源をON(START)にした後、ステップS101で画角ロックスイッチ16を押下してON状態にすると、カメラ1の撮影モードは広視野モードに切替わる。撮影モードが広視野モードに切替わると、制御部28は撮影光学系8が広角端に位置していれば撮影光学系8をそのまま広角端でロックする。広角端に位置していない場合は、ズーミング機構37を介して広角端となるように駆動し、広角端でロックする(ステップS102、S103)。このとき、ズームスイッチ19のスライド部22も自動的に最も広角側(25mm)に移動する。また、制御部28はズームスイッチ19の撮影光学系8との連動を解除する。図5(a)、(b)はこのときのモニタ13の表示とズームスイッチ19の状態を示す図である。撮影光学系8は広角端に位置しているので、モニタ13には、図5(a)に示すように、最も広角のスルー画像が表示される。画面右上には撮影光学系8の現在の焦点距離「25mm」が表示されている。
【0031】
制御部28は、ズームスイッチ19の撮影光学系8との連動を解除すると、撮影光学系8の焦点距離をスライド部22が指示している目盛り25の表示距離と同じ距離にした場合の撮影範囲の画角を演算して求める。そして演算して求められた撮影範囲の画角に相当する大きさの視野枠を、表示用ドライバ76を介してモニタ13に表示する。つまり、現在モニタ13に表示されているスルー画像を基準として、当該スルー画像全体のうち実際に撮影される範囲を示す撮影フレーム82をモニタ13に表示する(ステップS103)。撮影フレーム82は、演算して求められた撮影範囲の画角の四隅に相当する部分が表示される。いま、ズームスイッチ19のスライド部22は画角ロックスイッチ16をONとすることで広角端に位置しているので、撮影フレーム82は図5(a)に示すように、モニタ13の最も外側に沿って表示される。
【0032】
また、広視野モードでは、実際の撮影光学系8の焦点距離の表示に加えて、撮影フレーム82に対応する焦点距離が、図5(a)に示すようにモニタ13の中央上部に表示される。撮影フレーム82に対応する焦点距離とは、表示された撮影フレーム82を撮影範囲として撮影する場合の撮影光学系8の焦点距離である。撮影光学系8およびズームスイッチ19が共に最も広角側の状態にあっては、現在の撮影光学系8の焦点距離と撮影フレーム82に対応する焦点距離とは同じなので、図5(a)では同じ値(25mm)が表示されている。
【0033】
そして広視野モードにおいては、撮影光学系8を広角端にロックし、且つ最も広角のスルー画像をモニタ13に表示させた状態で、撮影光学系8を望遠側に駆動させたとすると当該スルー画像に対して撮影範囲がどのように変化していくのかを、モニタ13の表示上で確認することができる。具体的には、ズームスイッチ19のスライド部22を望遠側に移動させてスライド部22が指示している目盛り25の表示距離を変化させる。すると、制御部28は、撮影光学系8の焦点距離をスライド部22が指示している目盛り25の表示距離としたときの撮影範囲の画角をスライド部22の移動に従って順次演算し、演算して求められた撮影範囲の画角に相当する大きさの撮影フレーム82を、表示用ドライバ76を介してモニタ13に順次表示する。つまり、現在モニタ13に表示されているスルー画像を基準として、撮影光学系8の焦点距離を変化させた場合に、当該スルー画像全体のうち実際に撮影される範囲を示す撮影フレーム82をモニタ13に順次表示する。
【0034】
当該動作をさらに詳細に説明する。撮影光学系8およびズームスイッチ19のスライド部22が広角端にある状態(ステップS103)から、撮影範囲を決めるためにズームスイッチ19を操作する(ステップS104)。ズームスイッチ19のスライド部22を望遠側にスライドさせると(ステップS105)、制御部28はスライド部22の移動量から、スライド部22が現在指示している目盛り25の表示距離を順次検出する。そして制御部28は、当該検出した目盛り25の表示距離と、現在の撮影光学系8の位置とから、実際に撮影光学系8の焦点距離を当該検出した目盛り25の表示距離と同じ距離にしたときに、現在モニタ13に表示されているスルー画像において実際に撮影される範囲を演算する。そして制御部28は、表示用ドライバ76を介して、すでに表示されている撮影フレーム82の大きさを演算の結果算出された撮影範囲の画角を示すように、スライド部22の移動に合わせて連続的に変化させていく。つまり、図5(a)においてモニタ13の画面の外枠に沿って表示されていた撮影フレーム82は、スライド部22の移動に連動してモニタ13の画面の大きさに対して画面中心方向に向かって小さく変化する(ステップS107)。言い換えると、撮影フレーム82は、ズームスイッチ19のスライド部22が指示する目盛り25が示す表示距離に合わせて、その表示距離を焦点距離とした場合の撮影範囲の画角を示すように連続的に縮小していく。このとき撮影光学系8は広角端にロックされた状態なので、モニタ13の画面全体に表示されているスルー画像は広角端のままで変化しない。なお、ステップS104でズームスイッチ19を操作しない場合は、ステップS112に進む。
【0035】
モニタ13の中央上部に表示された撮影フレーム82に対応する焦点距離の表示は、スライド部22の移動に合わせて、撮影フレーム82の大きさの変化とともに変化していく。したがって、撮影フレーム82に対応する焦点距離の表示はスライド部22の指示する目盛り25の表示距離と同じ値が表示される。この状態において、実際の撮影光学系8は広角端でロックされているので、モニタ13の画面右上に表示された撮影光学系8の焦点距離の表示は変化しない。
【0036】
スライド部22の移動を停止すると、撮影フレーム82の大きさの変化も止まり、撮影フレーム82はその時点でスライド部22が指示している目盛り25の表示距離に対応する撮影範囲の画角を示す大きさで表示される。図6(a)、(b)は、ズームスイッチ19のスライド部22を目盛り25の表示距離で55mmの位置で停止させたときのモニタ13の表示およびズームスイッチ19の状態を示す図である。図6(a)に示す撮影フレーム82は、広角端のスルー画像において、焦点距離が55mmに対応する撮影範囲の画角を示す大きさで表示される。撮影フレーム82の外側の領域は撮影範囲外であるがモニタ13に表示されているので、撮影者は撮影範囲内と撮影範囲外とを同時にモニタ13で観察することができる。これと同時に、撮影フレーム82に示された撮影範囲を撮影する場合の焦点距離がモニタ13に表示されるので、どの程度ズーミングした状態なのかを確認しながら構図を決定することができる。
【0037】
この状態からズームスイッチ19をさらに操作する(ステップS108)。ズームスイッチ19のスライド部22は望遠側と広角側にスライドさせることができるので、スライド部22の望遠側への移動および広角側への移動に合わせて、撮影フレーム82は小さくなったり大きくなったりする(ステップS109〜S111)。同時に撮影フレーム82に対応する焦点距離の表示も変化する。撮影フレーム82は撮影光学系8の焦点距離の望遠端に対応する撮影範囲の画角に相当する大きさから現在モニタ13に表示されているスルー画像の画角に相当する大きさ、つまりこの場合にあっては広角端に対応する撮影範囲の画角に相当する大きさまで連続的に変化させることができる。なお、ステップS108でズームスイッチ19を操作しない場合は、ステップS112に進む。
【0038】
本実施形態のカメラ1は、広視野モードでモニタ13に広角端のスルー画像が表示されている場合においてズームスイッチ19のスライド部22を望遠端まで移動させた時、撮影フレーム82の大きさはモニタ13の大きさの1/9から1/16の大きさになるように設定されている。つまり、広角端のスルー画像の1/9から1/16の大きさである。撮影フレーム82の大きさがモニタ13の画面と比べて小さすぎると撮影範囲内の構図が確認し難くなり、またモニタ13の画面と比べて大きさがあまり変わらないと観察可能な撮影範囲外の領域が狭くなってしまう。こうして、撮影者は広角端におけるスルー画像の範囲の中で、望遠端に亘る任意の焦点距離における撮影範囲を確認し、同時に撮影範囲外の状況も観察することができる。しかも焦点距離を望遠側にするに従ってモニタ13に撮影範囲外として表示される範囲が相対的に広くなり、より広い範囲を観察することが可能となる。その結果、構図の把握が容易となり、また、移動する被写体を撮影するときなど、レリーズするタイミングを計り易くなる。さらに撮影範囲内に自動車等の移動物が近づいてくることが確認でき、撮影の失敗を防止することができる。
【0039】
モニタ13を観察して構図、すなわち撮影範囲が決定したら、レリーズボタン10を操作する。図7(a)、(b)は、ズームスイッチ19のスライド部22を80mmに合わせたときのモニタ13の表示とズームスイッチ19の状態を示す図である。例えば図7(a)、(b)に示す状態でフレーミングを確定し(ステップS112)、レリーズボタン10を半押しする(ステップS113)。すると制御部28は撮影光学系8のロック状態を一旦解除して可動状態にする。そして、撮影光学系8の焦点距離をズームスイッチ19のスライド部22が指示している表示距離(この場合80mm)に一致させるようにズーミング機構37のズームレンズ20を駆動する(ステップS114)。つまり実際にズームレンズ20を駆動して撮影光学系8を望遠側に駆動する。このとき、モニタ13に表示されていた広角端のスルー画像は、ズームレンズ20の駆動に伴い拡大される。同時に撮影フレーム82も拡大する。スルー画像および撮影フレーム82の拡大は、元のスルー画像に表示されていた撮影フレーム82の範囲がモニタ13の画面の大きさと一致する大きさとなるまで連続して拡大される。制御部28はズームレンズ20の駆動が終了すると、その状態で撮影光学系8を再度ロック状態にする。
【0040】
また、レリーズボタン10が半押しされているので、オートフォーカス制御部40はオートフォーカス用モータ70を介して合焦レンズ21を駆動させ、撮影光学系8を被写体79に合焦させる(ステップS115)。この状態において、モニタ13の画面には、実際に撮影される範囲がスルー画像として表示されている。図8(a)、(b)は、撮影光学系8が焦点距離80mmの位置まで駆動され、実際に撮影される範囲がスルー画像として表示されている状態のモニタ13とズームスイッチ19の状態を示す図である。モニタ13には、撮影光学系8の現在の焦点距離と撮影される範囲に対応する焦点距離とが同じ距離(80mm)で表示されている。
【0041】
なお、ステップS112で撮影範囲が決定せず、再度フレーミングを行うときは、ステップS101またはステップS104に戻る。ステップS101に戻ったときは、画角ロックスイッチ16をOFFにして通常視野モードで撮影することもできる。ステップ104に戻ったときは、ステップS104以降のステップを繰り返す。
【0042】
また、ステップS115で撮影光学系8が被写体に合焦せず、または、合焦はしたが再度フレーミングを行いたいときは、レリーズボタン10の半押し状態を解除した後、ステップS116に進む。ステップS116以降は次のような動作となる。
【0043】
まず撮影光学系8がステップS114で既に望遠端まで駆動しているときは、ステップS101に戻る。ステップS101に戻ったときは画角ロックスイッチ16をOFFにして通常視野モードで撮影することもできるし、画角ロックスイッチ16を一旦OFFにした後再度ONにして撮影光学系8を広角端に駆動してロックし(ステップS102、S103)、ステップS104以降の操作を繰り返して撮影することもできる。
【0044】
次に撮影光学系8がS114で望遠端まで駆動していないときは、ステップS101またはステップS104に戻ることができる。ステップS101に戻ったときの動作は画角ロックスイッチ16をOFFにして通常視野モードで撮影することもできるし、あるいは画角ロックスイッチ16を一旦OFFにした後再度ONにして撮影光学系8を広角端に駆動してロックし(ステップS102、S103)、ステップS104以降を繰り返して撮影することもできる。
【0045】
ステップS104に戻ったときは、撮影光学系8が広角端に位置している場合はステップS104からの動作を繰り返し、撮影光学系8が広角端に位置していない場合はステップS108からの動作を繰り返すこととなる。ステップS108以降のステップを繰り返す場合、撮影光学系8は、ステップS112で一旦確定した撮影範囲相当の画角になるようにステップS114において移動している。そしてモニタ13にはステップS112で確定した撮影範囲がスルー画像として表示されている(図8(a)参照)。この場合、フレーミングは図8(a)に示すスルー画像を基準にして行うことができる。すなわち、現在の撮影光学系8の焦点距離よりも望遠側の範囲でフレーミングを行うことができる。したがってステップS110にあっては、撮影フレーム82の拡大は、モニタ13に表示されているスルー画像、すなわち焦点距離が80mm相当の画角まで変化させることができる。図9(a)、(b)は、撮影光学系8がステップS114で移動した後の再フレーミングにおいて、実際の撮影光学系8の焦点距離が80mmの時に、ズームスイッチ19のスライド部22を望遠端(125mm)まで移動させた時のモニタ13の表示およびズームスイッチ19の状態を示している。このように、本実施形態では撮影光学系8を当初の広角端の位置から望遠側に移動させ、その位置でのスルー画像を基準に再度撮影フレーム82の大きさだけを変化させてフレーミングを行うことができる。
【0046】
ステップS115で撮影光学系8が被写体79に合焦した後、レリーズボタン10が全押しされると(ステップS117)、図示しないシャッターが作動してモニタ13に表示されている範囲が撮影され(ステップS118)、ステップS119に進む。そして、さらに撮影を続行する時はステップS120に進む。ステップS120以降の動作は、上記したステップS116以降の動作と同様となる。
【0047】
ステップS119で撮影を続行しない時は、電源をOFFにする(ステップS128)。電源をOFFにすると制御部28は撮影光学系8が広角端になるようにズームレンズ20を駆動し、カメラ1の電源を切って撮影動作は終了する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、モニタ13に撮影範囲を示す撮影フレーム82が表示され、撮影光学系8の焦点距離を変えた場合すなわち画角を変えた場合の撮影範囲を撮影フレーム82の大きさの変化で確認できるので、撮影者は構図をイメージし易くなる。さらに撮影者は実際の撮影範囲の周辺を広い範囲に亘ってモニタ13で観察して撮影を行うことができる。その結果、フレーミングがし易くなり、特に動く被写体を望遠側で撮影するときなど、被写体の追尾がより容易になり、撮影チャンスを逃してしまうことも少なくなるという効果を奏する。また、フレーミング中は撮影光学系8を動かさずに画面に表示された撮影フレーム82の大きさが変化するだけなので、省電力に貢献するという効果も奏する。
【0049】
なお、本実施形態では、ズームスイッチ19はスライド式であるが、図10に示すようにダイヤル式のズームスイッチ119としても良い。この場合もダイヤルの周りには撮影光学系8の焦点距離を表す目盛り125が付されている。また、撮影光学系の変倍可能な焦点距離の範囲も上記実施形態に限定されることはない。
【0050】
このように本発明は上記実施形態に限定されることはなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 カメラ
4 ボディ部
7 レンズ鏡筒
8 撮影光学系
10 レリーズボタン
13 モニタ
16 画角ロックスイッチ
19 ズームスイッチ
20 ズームレンズ
21 合焦レンズ
22 スライド部
22a 中心線
25 目盛り
28 制御部
31 CPU
34 撮像部
37 ズーミング機構
40 オートフォーカス制御部
43 画像処理部
46 表示部
49 RAM
52 ROM
55 外部メモリ
58 内部メモリ
61 操作部
64 撮像素子
67 ズーム用モータ
70 AF用モータ
73 A/D変換回路
76 表示用ドライバ
79 被写体
82 撮影フレーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系の焦点距離を変更する変更手段と、
前記撮影光学系の焦点距離の変更を指示する操作手段と、
前記撮影光学系による画像および該画像の一部を示す指標を表示可能な表示手段と、
前記操作手段による前記焦点距離の変更の指示に対し、前記変更手段による前記焦点距離の変更を禁止した状態で、前記表示手段に表示された前記指標の前記表示手段の表示領域に対する大きさを変化させる制御手段とを有するカメラ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記変更手段による前記焦点距離の変更を禁止した状態で前記指標の大きさを前記表示手段の表示領域に対して小さく変化させたのち、前記指標の範囲が前記表示手段の表示領域の大きさと一致する大きさとなるように前記変更手段により前記焦点距離を変更することを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記指標の大きさは前記操作手段で指示された前記撮影光学系の焦点距離における撮影範囲の画角に相当し、前記変更手段による前記焦点距離の変更を禁止した状態で前記撮影光学系の広角端における撮影範囲の画角に相当する大きさから望遠端における撮影範囲の画角に相当する大きさに亘って変化させることができることを特徴とする請求項1または2に記載のカメラ。
【請求項4】
前記変更手段による前記焦点距離の変更を禁止した状態で、前記撮影光学系の前記望遠端における撮影範囲の画角に相当する大きさに対応する前記指標の範囲は、前記表示手段の表示領域の面積に比して1/9から1/16程度の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のカメラ。
【請求項5】
前記表示手段の表示領域には、前記撮影光学系による画像に対応する前記撮影光学系の焦点距離と、前記表示手段の表示領域に表示された前記指標の範囲に対応する焦点距離とを表示可能であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のカメラ。
【請求項6】
前記操作手段による前記焦点距離の変更の指示に対し、前記変更手段による前記焦点距離の変更を禁止せずに前記制御手段が前記変更手段を介して前記撮影光学系を変更して前記焦点距離を変更する制御に切替えることが可能なことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−18317(P2012−18317A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156012(P2010−156012)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】