説明

カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ及びこれを備える表示装置

【課題】カラーフィルタの各領域へのインクの吐出量のバラツキを抑制したカラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ及びこれを備える表示装置を提供すること。
【解決手段】描画領域14A〜14Eが、主走査方向及び副走査方向に沿ってマトリクス状に配列されると共に、吐出工程において液状体が吐出される吐出領域15A〜15Fを有し、吐出領域15A〜15FのY方向におけるピッチP2が、ノズルの副走査方向におけるピッチの整数倍であり、吐出工程では、液滴吐出ヘッドを副走査方向で相対移動させる前後で、同一のノズルから液状体を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ及びこれを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出ヘッドによってインクを吐出するインクジェット方式を用いてカラーフィルタを形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法では、基板に対して相対的に移動する液滴吐出ヘッドに設けられた複数のノズルから色材を含む液状体(液滴)を吐出して液状体を配置(描画)し、さらに配置された液状体を乾燥などによって固化させて画素に対応した着色膜を形成している。
【0003】
基板は、基板上に形成されたバンクによって複数の領域によってマトリクス状に区画されている。そして、液滴吐出ヘッドは、主走査方向及び副走査方向に沿って基板に対して相対的に移動されることにより、区画された各領域に液状体を吐出する。このとき、ノズルがバンク上に位置している場合には液状体を吐出しないため、すべてのノズルから同時に液状体が吐出されるわけではない。したがって、複数のノズルには、液状体を吐出するノズルと液状体を吐出しないノズルとが存在している。そのため、液滴吐出ヘッドが副走査方向に沿って移動されるごとに、複数のノズルにおいて液状体を吐出するノズルの分布(吐出パターン)を変更する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−204973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のカラーフィルタの製造方法においても、以下の課題が残されている。すなわち、走査ごとに吐出パターンを変更すると、吐出パターンにかかわらず同一の駆動信号を用いて対応するノズルから液状体を吐出させても、液状体の吐出量が変動してしまう。したがって、吐出パターンに応じて液状体の吐出量にバラツキが発生するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされてもので、液状体の吐出量のバラツキを抑制したカラーフィルタの製造方法、カラーフィルタ及びこれを備える表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかるカラーフィルタの製造方法は、基板上にバンクを形成し、前記基板を複数の描画領域で区画するバンク形成工程と、複数のノズルが設けられた液滴吐出ヘッドを前記基板に対して第1及び第2走査方向で相対的に移動させ、前記描画領域それぞれに前記ノズルから液状体を吐出してカラーフィルタ層を形成する吐出工程と、を備え、前記バンク形成工程では、前記液状体が吐出され、第1走査方向におけるピッチが前記ノズルの前記第1走査方向におけるピッチの整数倍である吐出領域を前記描画領域対応して形成し、前記吐出工程では、前記液滴吐出ヘッドを前記第1走査方向で相対移動させる前後で、同一の前記ノズルから前記液状体を吐出させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のカラーフィルタは、基板上に形成されたバンクと、前記バンクによって区画された複数の描画領域に、液滴吐出ヘッドに一列に配列された複数のノズルから液状体を吐出することによって形成されたカラーフィルタ層と、を備え、前記バンクが、前記描画領域それぞれに前記一方向におけるピッチが前記ノズルの前記一方向におけるピッチの整数倍であり、前記液状体が吐出される吐出領域を形成することを特徴とする。
【0009】
この発明では、複数のノズルにおける吐出中のノズルと非吐出のノズルとの分布である吐出パターンを変更することなく各吐出領域に液状体を吐出するので、各描画領域における液状体の吐出量バラツキを抑制できる。
すなわち、第1走査方向(一方向)において吐出領域のピッチをノズルのピッチの整数倍とすることで、液滴吐出ヘッドを第1走査方向(一方向)に沿って吐出領域のピッチの整数倍だけ基板に対して相対的に移動させると、移動させる前に吐出領域上に位置するノズルは、移動後においても吐出領域上に位置する。また、移動させる前に吐出領域上に位置しないノズルは、移動後においても吐出領域上に位置しない。このため、第1走査方向(一方向)に沿って液滴吐出ヘッドを基板に対して相対的に移動させる前後で複数のノズルによる吐出パターンが変更されない。したがって、液滴吐出ヘッドにおける構造クロストークが低減され、液滴吐出ヘッドからの液状体の吐出量が安定する。
以上より、液状体の吐出量のバラツキを抑制してカラーフィルタ層の膜厚をより均一にすることができる。
【0010】
また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記バンク形成工程では、前記吐出領域に接続され、前記描画領域の前記第1走査方向におけるピッチを前記カラーフィルタが用いられる表示装置に設けられた画素領域の前記第1走査方向におけるピッチの整数倍にする調節領域を形成することが好ましい。
また、本発明のカラーフィルタは、前記描画領域が、前記吐出領域に接続されて該描画領域の前記一方向におけるピッチを調節する調節領域を有することが好ましい。
この発明では、調節領域を吐出領域に接続して設けることで、描画領域全体としてのピッチを画素領域のピッチに合わせることができる。
【0011】
また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、前記バンク形成工程では、前記バンクを遮光材料で形成することが好ましい。
この発明では、カラーフィルタを表示装置に組み込んだ際に、表示装置の画素領域からバンクを通って光が漏洩することを防止し、表示装置のコントラストなどの画質を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の表示装置は、上記記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする。
この発明では、より均一な膜厚のカラーフィルタ層を有するカラーフィルタを備えることで、表示装置の画質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態におけるカラーフィルタを示す概略平面図である。
【図2】液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図3】液滴吐出ヘッドの構成を示す図である。
【図4】カラーフィルタの製造工程を説明する概略平面図である。
【図5】カラーフィルタの製造工程を説明する説明図である。
【図6】カラーフィルタを備える有機EL装置を示す概略平面図である。
【図7】有機EL装置を示す等価回路図である。
【図8】図6の部分断面図である。
【図9】本発明を適用可能な他のカラーフィルタを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明におけるカラーフィルタ及びカラーフィルタの製造方法の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
[カラーフィルタ]
まず、本実施形態におけるカラーフィルタについて説明する。
カラーフィルタ1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、基板11と、基板11上に形成されたバンク12と、バンク12によって区画された領域に形成されたカラーフィルタ層13と、を備えている。そして、カラーフィルタ1は、バンク12及びカラーフィルタ層13によってパネル領域CAを構成している。
基板11は、例えばガラスなどの透光性材料で形成されており、平面視ほぼ矩形をなしている。
【0016】
バンク12は、例えば黒色などに着色されたアクリルのような樹脂材料などの遮光材料で形成されている。そして、バンク12は、図1(b)に示すように、基板11上でほぼ矩形の開口を有する枠状に形成されることによってバンク12によって囲まれる凹部領域である描画領域14A〜14E(以下、総称して描画領域14と称することもある)を区画している。
【0017】
描画領域14は、基板11の互いに直交するX方向(第2走査方向)及びY方向(第1走査方向)に沿ってマトリクス状に複数配列されており、本実施形態におけるカラーフィルタ1を備える後述する有機EL装置(表示装置)100の画素領域110に対応して形成されている。そして、描画領域14A〜14Eは、Y方向に沿って描画領域14A〜14Eの順で繰り返し配列されている。
また、描画領域14A〜14DのY方向におけるピッチP1、すなわちY方向で隣り合う2つの描画領域14における+Y方向側の端部間の距離は、画素領域110のピッチと同等になっている。そして、描画領域14EのY方向におけるピッチP1は、画素領域110のピッチの2倍になっている。また、描画領域14A〜14EにおいてX方向の幅は、画素領域110の幅と同等になっている。
【0018】
描画領域14は、吐出領域15A〜15F(以下、総称して吐出領域15と称することもある)と、吐出領域15に接続して設けられた調節領域16A〜16E(以下、総称して調節領域16と称することもある)と、を有する。ここで、描画領域14A〜14Eのうち最も+Y方向側にある描画領域14Eは、互いに接続された2つの吐出領域15E、15Fを有している。
【0019】
吐出領域15A〜15Fは、平面視でほぼ矩形をなしており、Y方向に沿って吐出領域15A〜15Fの順で形成されている。そして、吐出領域15のY方向におけるピッチP2、すなわちY方向で隣り合う2つの吐出領域15における+Y方向側の端部間の距離は、図5に示すように、後述するノズルNの副走査方向におけるピッチP3の3倍になっている。また、吐出領域15のY方向におけるピッチP2は、描画領域14のY方向におけるピッチP1の5/6と同等になっている。
【0020】
調節領域16は、描画領域14のX方向における両側に形成されており、描画領域14のY方向におけるピッチを調節する。調節領域16は、吐出領域15よりもX方向における幅が狭い帯状をなしており、X方向に沿って延在している。そして、調節領域16のY方向における幅は、画素領域110の幅と同等になっている。
調節領域16Aは、−Y方向側の端部が吐出領域15Aの−Y方向側の端部と一致しており、吐出領域15Aの+Y方向側の端部から突出している。また、X方向で離間して配意された調節領域16A間には、吐出領域15Bの−Y方向側の端部が配置されている。
調節領域16B〜16Dそれぞれは、対応する吐出領域15B〜15Dの−Y方向側の端部よりも+Y方向側から延在しており、吐出領域15B〜15Dの+Y方向側の端部から突出している。また、X方向で離間して配置された調節領域16B〜16Dの間には、+Y方向で隣り合う吐出領域15C〜15Eの−Y方向側の端部が配置されている。
調節領域16Eは、吐出領域15Eの+Y方向側の端部から延在しており、+Y方向側の端部が吐出領域15Fの+Y方向側の端部と一致している。
【0021】
カラーフィルタ層13は、例えばアクリルなどで形成されており、描画領域14それぞれの表示色に対応する色材を含有している。カラーフィルタ層13の配列は、Y方向で同色となっており、X方向でR(赤)、G(緑)、B(青)の順で繰り返されている。すなわち、カラーフィルタ層13の配列は、一方向(Y方向)で直線状に設けられた同一色のカラーフィルタ層13が他方向(X方向)で交互に配列された、ストライプ型となっている。
【0022】
[カラーフィルタの製造方法]
次に、以上のような構成のカラーフィルタ1の製造方法について説明する。
カラーフィルタ1は、図2に示すような液滴吐出装置50を用いて製造される。
液滴吐出装置50は、例えばインクジェット方式により後述するマザー基板80の所定領域に液状体を吐出してカラーフィルタ層13を形成する装置である。そして、液滴吐出装置50は、装置架台51と、ワークステージ52と、ステージ移動装置53と、キャリッジ54と、液滴吐出ヘッド55と、キャリッジ移動装置56と、チューブ57と、第1から第3タンク58〜60と、制御装置61と、を備えている。
【0023】
装置架台51は、ワークステージ52及びステージ移動装置53の支持台である。ワークステージ52は、装置架台51上においてステージ移動装置53によって主走査方向であるX方向に移動可能に設置されており、上流側の搬送装置(図示略)から搬送されるマザー基板80を真空吸着機構によってXY平面上に保持する。
ステージ移動装置53は、リニアガイド及びボールネジなどの直動機構を備えており、制御装置から入力されるワークステージ52の移動先のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ52をX方向に移動させる。
【0024】
キャリッジ54は、液滴吐出ヘッド55を保持しており、キャリッジ移動装置56によって副走査方向であるY方向及びZ方向に移動可能に設けられている。
液滴吐出ヘッド55は、図3(a)及び図3(b)に示すように、複数のノズルNを備えており、図2に示すように、制御装置61から入力される描画データや駆動信号に基づいて液状体を吐出する。液滴吐出ヘッド55は、液状体のR(赤)、G(緑)及びB(青)に対応して設けられており、それぞれキャリッジ54を介してチューブ57と連結されている。
そして、R(赤)に対応する液滴吐出ヘッド55には、チューブ57を介して第1タンク58からR(赤)用の液状体が供給され、G(緑)に対応する液滴吐出ヘッド55には、チューブ57を介して第2タンク59からG(緑)用の液状体が供給され、B(青)に対応する液滴吐出ヘッド55には、チューブ57を介して第3タンク60からB(青)用の液状体が供給される。
【0025】
キャリッジ移動装置56は、装置架台51を跨ぐ橋梁構造をなしており、Y方向及びZ方向に沿ってリニアガイド及びボールネジなどの直動機構を備え、制御装置61から入力されるキャリッジ54の移動先のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいてキャリッジ54をY方向及びZ方向に移動させる。
【0026】
チューブ57は、第1から第3タンク58〜60とキャリッジ54とを連結する液状体の供給用チューブである。
第1タンク58は、R(赤)用の液状体を貯蔵すると共にチューブ57を介してR(赤)に対応する液滴吐出ヘッド55に液状体を供給する。第2タンク59は、G(緑)用の液状体を貯蔵すると共にチューブ57を介してG(緑)に対応する液滴吐出ヘッド55に液状体を供給する。第3タンク60は、B(青)用の液状体を貯蔵すると共にチューブ57を介してB(青)に対応する液滴吐出ヘッド55に液状体を供給する。
【0027】
制御装置61は、ワークステージ52の移動によるマザー基板80の位置決め動作と、キャリッジ54の移動による液滴吐出ヘッド55の位置決め動作と、液滴吐出ヘッド55によるマザー基板80上に所定位置に液状体を吐出する液滴吐出動作と、を制御する装置である。制御装置61は、ステージ移動装置53にステージ位置制御信号を出力し、キャリッジ移動装置56にキャリッジ位置制御信号を出力し、液滴吐出ヘッド55に描画データ及び駆動信号を出力する。
【0028】
続いて、液滴吐出ヘッド55の構成について説明する。
液滴吐出ヘッド55は、図3(a)に示すように、Y方向に配列された複数(例えば180)のノズルN〜N180(以下、総称してノズルNと称することもある)を備えている。複数のノズルNは、ピッチP3で等間隔に配置されている。そして、ノズルN〜N180によってノズル列NAが形成される。
【0029】
なお、液滴吐出ヘッド55は、ノズル列NAを1列のみ備えているが、複数列備えていてもよく、ノズル列NAを構成するノズルNの数は、180に限られない。ただし、ノズル列NAを複数列設ける場合、X方向で隣り合うノズル列NAにおいて、Y方向におけるノズルNの形成位置のズレは、ピッチP3の整数倍になっている。また、キャリッジ54内に配置される液滴吐出ヘッド55の数は、任意に変更可能である。さらに、キャリッジ54は、サブキャリッジ単位で複数設けられてもよい。
【0030】
液滴吐出ヘッド55は、図3(b)及び図3(c)に示すように、チューブ57に連結される材料供給孔71aが設けられた振動板71と、ノズルN〜N180が設けられたノズルプレート72と、振動板71及びノズルプレート72の間に設けられたリザーバ73と、複数の隔壁74と、複数の液溜部75と、を備えている。
振動板71上には、各ノズルN〜N180に対応して駆動素子PZ〜PZ(以下、総称して駆動素子PZと称することもある)が配置されている。駆動素子PZは、例えばピエゾ素子である。
【0031】
リザーバ73には、材料供給孔71aを介して供給される液状体が充填されるようになっている。
液溜部75は、振動板71と、ノズルプレート72と、一対の隔壁74とによって囲まれることによって形成されている。また、液溜部75は、各ノズルN〜N180に1対1で対応して形成されている。さらに、各液溜部75には、一対の隔壁74間に設けられた供給口75aを介して、リザーバ73から液状体が導入されるようになっている。
【0032】
駆動素子PZは、図3(c)に示すように、圧電材料76と圧電材料を挟持する一対の電極77とを備えている。そして、駆動素子PZは、一対の電極77間に駆動信号を印加することで圧電材料76を収縮させ、圧電材料76の収縮によって振動板71を駆動素子PZと共に同時に外側(液溜部75の反対側)へ撓曲させて液溜部75の容積を増大させる構成となっている。
したがって、液溜部75内に増大した容積分に相当する液状体がリザーバ73から供給口75aを介して流入する。また、このような状態から駆動素子PZへの駆動信号の印加を停止すると、駆動素子PZ及び振動板71は、元の形状に戻り、液溜部75も元の容積に戻る。これにより、液溜部75内の液状体の圧力が上昇し、ノズルNからマザー基板80に向けて液状体の液滴Lが吐出される。
【0033】
続いて、カラーフィルタ1を製造する方法について説明する。
本実施形態において、カラーフィルタ1は、ガラスなどの透光性材料で形成された大面積のマザー基板80に複数のパネル領域CAをマトリクス状に形成した後にこのマザー基板80を各パネル領域CA間で分割することによって一括して形成される。複数のパネル領域CAは、X方向及びY方向に沿ってマトリクス状に形成されている。
【0034】
まず、マザー基板80上にバンク12を形成するバンク形成工程を行う。ここでは、フォトリソグラフィ技術などを用いてマザー基板80上にバンク12を形成する。
次に、バンク12によって区画された描画領域14に上述した液滴吐出装置50を用いてカラーフィルタ層13を形成する吐出工程を行う。
ここでは、最初に、ワークステージ52上にマザー基板80を載置し、マザー基板80の上面と液滴吐出ヘッド55とを対向させる。これにより、マザー基板80のパネル領域CAに形成された描画領域14A〜14Eの繰り返しパターンが副走査方向に沿って配置されることとなる。
【0035】
そして、ステージ移動装置53及びキャリッジ移動装置56をマザー基板80に対して相対的に移動させながら液滴吐出ヘッド55の複数のノズルNから描画領域14のうち吐出領域15に向けて液状体を吐出させる。このとき、液滴吐出ヘッド55は、マザー基板80に対して図4(b)に示す主走査方向である矢印A1に沿って相対的に移動された後に副走査方向であるY方向で相対的に所定距離だけ移動され、再び主走査方向である矢印A2に沿って相対的に移動される。これを繰り返すことにより、液滴吐出ヘッド55は、1つのパネル領域CAの左端から右端まで移動したら、再びパネル領域CAの左端に戻ってすでに吐出を行った位置とは若干異なる位置で主走査方向であるY方向に沿って走査を行う。そして、このような走査を複数回行うことにより、パネル領域CA内すべての描画領域14に液状体を吐出する。
【0036】
ここで、描画領域14は、パネル領域CA内でマトリクス状に配列されているため、液滴吐出ヘッド55におけるすべてのノズルNから同時に液状体を吐出するわけではない。そのため、複数のノズルNには、吐出領域15上に位置して液状体を吐出するノズルN(吐出ノズル)と吐出領域15上に位置せずに液状体を吐出しないノズルN(非吐出ノズル)とが存在する。
本実施形態では、吐出領域15のピッチP2がノズルNのピッチP3の3倍になっている。そのため、複数のノズルNでは、図5に示すように、2つの吐出中のノズルNと1つの非吐出のノズルNとが交互に配列される。このとき、ノズルNa、Nbは、吐出領域15A上に位置しているため、吐出中のノズルであり、ノズルNcは、非吐出のノズルとなっている。
【0037】
上述のように副走査方向であるY方向に沿って吐出領域15のピッチP2分だけ液滴吐出ヘッド55を相対的に移動すると、ノズルNa、Nbは、吐出領域15B上に位置するため、依然として液状体を吐出するノズルとなり、ノズルNcは、吐出領域15上に位置していないため、非吐出のノズルのままとなる。これは、他のノズルNについても同様である。すなわち、Y方向への相対的な移動前に吐出領域15上に位置するノズルNは、Y方向への相対的な移動後にも隣り合う吐出領域15上に位置し、相対的な移動前に吐出領域15上に位置しないノズルNは、相対的な移動後においても吐出領域15上に位置しない。
したがって、副走査方向に沿った液滴吐出ヘッド55の相対的な移動の前後において、液滴吐出ヘッド55の複数のノズルNの吐出パターンは変更されない。
このように、液滴吐出ヘッド55の吐出パターンが変更されないため、各ノズルNに対して同一の駆動信号を供給しても、吐出領域15上に位置するノズルNから吐出される液適量が変化しない。
【0038】
吐出領域15に着弾した液状体は、描画領域14全体にぬれ広がる。そして、液状体を乾燥させることで、所望の膜厚のカラーフィルタ層13を形成する。
その後、パネル領域CAごとにマザー基板80を分割してカラーフィルタ1を製造する。
【0039】
[有機EL装置]
次に、本実施形態におけるカラーフィルタ1を備える有機EL装置(表示装置)100について説明する。
本実施形態における有機EL装置100は、アクティブマトリックス型のカラー有機EL装置であって、図6に示すように、平面視でほぼ矩形の素子基板101を備えている。
素子基板101の中央部分には、図6及び図7に示すように、複数の画素領域110、データ線111、走査線112及び電源線113が配置された実表示領域114が形成されている。
【0040】
画素領域110の配列は、図6に示すY方向で同色となっており、X方向でR(赤)、G(緑)、B(青)の順で繰り返されている。すなわち、画素領域110の配列は、一方向(Y方向)で直線状に設けられた同一色の画素領域110が他方向(X方向)に配列された、ストライプ型となっている。
素子基板101の実表示領域114の外側には、図6に示すように、データ線駆動回路115及び走査線駆動回路116が配置されたダミー領域117が形成されている。そして、素子基板101のダミー領域117の外側には、後述する陰極層122に接続される陰極用配線118が配置されている。この実表示領域114及びダミー領域117により、画素部119が形成されている。
【0041】
複数の画素領域110それぞれには、図7に示すように、画素電極となる陽極層121と、陰極層122と、陽極層121及び陰極層122の間に挟みこまれる発光層123とが設けられている。これら陽極層121、陰極層122及び発光層123により、有機EL素子が構成される。また、複数の画素領域110それぞれには、陽極層121をスイッチング制御するためのTFT素子124、125と、保持容量126とが設けられている。
【0042】
TFT素子124は、ゲートが走査線112に接続されて、ソースがデータ線111に接続され、ドレインがTFT素子125及び保持容量126に接続されている。また、TFT素子124は、走査線112を介して走査線駆動回路116から供給された走査信号に応じて、データ線111を介してデータ線駆動回路115から供給されたデータ信号を保持容量126に供給する構成となっている。
TFT素子125は、ゲートがTFT素子124のドレインに接続され、ソースが電源線113に接続され、ドレインが陽極層121に接続されている。そして、TFT素子125は、保持容量126で保持されたデータ信号に応じてオン・オフ状態が決定され、電源線113を介して供給される駆動電流を陽極層121に供給する構成となっている。
データ線111、走査線112及び電源線113は、実表示領域114内において格子状に配置されている。そして、データ線111はデータ線駆動回路115に接続され、走査線112は走査線駆動回路116に接続されている。
【0043】
次に、素子基板101の画素領域110における詳細な構成について説明する。
素子基板101は、図8に示すように、例えばガラスなどの透光性材料で構成された基板本体131と、基板本体131上に積層された素子形成層132、陽極層121、発光層123、陰極層122及び陰極保護膜133と、を備えている。
【0044】
素子形成層132には、データ線111、走査線112及び電源線113とTFT素子124、125とが適宜の絶縁膜を介して形成されている。
陽極層121は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透光性の導電材料で形成されており、TFT素子125のドレインに接続されている。
発光層123は、低分子の有機発光色素や高分子発光体のような各種の蛍光物質や燐光物質などの発光物質、例えばAlq(トリス(8−キノリノール)アルミニウム)などで形成されている。なお、発光層123は、電圧の印加により白色に発光するように形成されている。ここで、発光層123と陽極層121との間や発光層123と陰極層122との間には、正孔注入層や正孔輸送層、電子輸送層などを適宜形成されてもよい。
【0045】
陰極層122は、発光層123側から順に例えば1nmのLiF(フッ化リチウム)膜及び例えば10nmのMg(マグネシウム)Ag(銀)膜を積層した構成となっている。なお、陰極層122は、複数の画素領域110の全域にわたる共通電極となっている。
陰極保護膜133は、例えばシリコン酸化物やシリコン窒化物、シリコン窒酸化物などのシリコン化合物のような無機化合物で形成されており、製造工程において陰極層122が腐食することを防止する。
【0046】
また、素子基板101の上面には、接着層140によりカラーフィルタ1が貼付されている。カラーフィルタ1は、描画領域14のピッチP1が素子基板101の画素領域110のピッチP4の整数倍になるように、画素領域110と対応して配置されている。
【0047】
以上のように、本実施形態におけるカラーフィルタ1の製造方法及びカラーフィルタ1では、複数のノズルNによる吐出パターンを変更することなく各吐出領域15に液状体を吐出することで、各描画領域14における液状体の吐出量バラツキを抑制できる。したがって、各描画領域14においてカラーフィルタ層13の膜厚をより均一にすることができる。また、調節領域16を吐出領域15に接続して設けることで、描画領域14のピッチP1を画素領域110のピッチに合わせることができる。さらに、バンク12を遮光材料で形成すことで、有機EL装置100の画素領域110からバンク12を通って光が漏洩することを防止し、有機EL装置100のコントラストなどの画質を向上させることができる。
また、本実施形態における有機EL装置100では、より均一な膜厚のカラーフィルタ層13を有するカラーフィルタ1を備えることで、有機EL装置100の画質が向上する。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、描画領域は、図9に示すように、調節領域を有さずに吐出領域のみによって形成されてもよい。図9に示すカラーフィルタ200では、素子基板101の画素領域110のピッチP4にかかわらず、吐出領域のみによって形成された描画領域201がY方向に沿ってピッチP2で配置されている。
【0049】
吐出領域のピッチは、ノズルのピッチの3倍になっているが、整数倍であれば、3倍に限られない。同様に、描画領域のピッチは、画素領域のピッチの整数倍になっているが、整数倍でなくてもよい。
描画領域のピッチは、画素領域のピッチの整数倍としているが、これに限られない。
バンクは、遮光材料で形成されていなくてもよい。
ノズルは、Y方向に沿って一列に配列されているが、吐出領域のY方向におけるピッチがノズルのY方向におけるピッチの整数倍になっていれば、Y方向から傾いて配置されてもよい。
カラーフィルタは、マザー基板上に複数のパネル領域を形成し、これをパネル領域ごとに分割することによって製造されているが、基板上に1つのパネル領域のみを形成することによって製造されてもよい。
カラーフィルタを備える表示装置は、有機EL装置に限らず、カラーフィルタを透過させることによってカラーフィルタ層の各色を表示させる表示装置であれば、液晶表示装置など他の表示装置であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,200 カラーフィルタ、11 基板、12 バンク、13 カラーフィルタ層、14,14A〜14E,201 描画領域、15,15A〜15F 吐出領域、16,16A〜16E 調節領域、100 有機EL装置(表示装置)、110 画素領域、N,N〜N180,Na〜Nc ノズル、P1〜P4 ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にバンクを形成し、前記基板を複数の描画領域で区画するバンク形成工程と、
複数のノズルが設けられた液滴吐出ヘッドを前記基板に対して第1及び第2走査方向で相対的に移動させ、前記描画領域それぞれに前記ノズルから液状体を吐出してカラーフィルタ層を形成する吐出工程と、を備え、
前記バンク形成工程では、前記液状体が吐出され、第1走査方向におけるピッチが前記ノズルの前記第1走査方向におけるピッチの整数倍である吐出領域を前記描画領域対応して形成し、
前記吐出工程では、前記液滴吐出ヘッドを前記第1走査方向で相対移動させる前後で、同一の前記ノズルから前記液状体を吐出させることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記バンク形成工程では、前記吐出領域に接続され、前記描画領域の前記第1走査方向におけるピッチを前記カラーフィルタが用いられる表示装置に設けられた画素領域の前記第1走査方向におけるピッチの整数倍にする調節領域を形成することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記バンク形成工程では、前記バンクを遮光材料で形成することを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
基板上に形成されたバンクと、
前記バンクによって区画された複数の描画領域に、液滴吐出ヘッドに一列に配列された複数のノズルから液状体を吐出することによって形成されたカラーフィルタ層と、を備え、
前記バンクが、前記描画領域それぞれに前記一方向におけるピッチが前記ノズルの前記一方向におけるピッチの整数倍であり、前記液状体が吐出される吐出領域を形成することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項5】
前記描画領域が、前記吐出領域に接続されて該描画領域の前記一方向におけるピッチを調節する調節領域を有することを特徴とする請求項4に記載のカラーフィルタ。
【請求項6】
請求項4または5に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−266634(P2010−266634A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117294(P2009−117294)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】