説明

カラーフィルター用インク、カラーフィルター用インクセット、カラーフィルター、画像表示装置および電子機器

【課題】吐出安定性に優れるとともに、顔料の長期分散安定性(分散安定性)に優れており、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、各部位での色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターの製造に好適に用いることができる、インクジェット方式のカラーフィルター用インクを提供すること。
【解決手段】本発明のカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものであって、顔料としてのC.I.ピグメントグリーン58と、樹脂材料と、下記式(10)で示される化合物Aとを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用インク、カラーフィルター用インクセット、カラーフィルター、画像表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造の過程で形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、カラーフィルターの着色層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法では、着色層形成用の材料(着色層形成用組成物)の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
顔料は、一般に、染料に比べて耐光性等に優れる等の特徴を有しているため、カラーフィルター用インクにおいては、着色剤として、顔料が広く用いられている。また、カラーフィルターの製造においては、通常、光の三原色(赤色、緑色、青色)に対応する3色のインク(カラーフィルター用インク)が用いられる。
【0004】
ところで、緑色のカラーフィルター用インクにおいては、顔料粒子の分散性、分散安定性の観点から、C.I.ピグメントグリーン36が広く用いられている。しかしながら、C.I.ピグメントグリーン36は、明度、コントラストに劣るという問題点があった。
一方、本発明者は、カラーフィルターの製造において、C.I.ピグメントグリーン58を用いることにより、C.I.ピグメントグリーン36に比べて、明度、コントラストに優れた緑色の着色部を形成することができることを見出した。しかしながら、C.I.ピグメントグリーン58は、インク中における分散安定性に劣っており、C.I.ピグメントグリーン58を含むカラーフィルター用インクを用いて着色部を形成した場合に、色むら、濃度むら等の発生を、長期間にわたって安定的に防止するのが困難であった。また、C.I.ピグメントグリーン58を含むカラーフィルター用インクを用いた場合、液滴の吐出安定性を十分に優れたものとすることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−372613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、吐出安定性に優れるとともに、顔料の長期分散安定性(分散安定性)に優れており、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、各部位での色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターの製造に好適に用いることができる、インクジェット方式のカラーフィルター用インクを提供すること、該カラーフィルター用インクを備えたカラーフィルター用インクセットを提供すること、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、各部位での色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明のカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクであって、
顔料としてのC.I.ピグメントグリーン58と、樹脂材料と、下記式(10)で示される化合物Aとを含むことを特徴とする。
【化1】

これにより、吐出安定性に優れるとともに、顔料の長期分散安定性(分散安定性)に優れており、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、各部位での色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターの製造に好適に用いることができる、インクジェット方式のカラーフィルター用インクを提供することができる。
【0008】
本発明のカラーフィルター用インクでは、カラーフィルター用インク中における前記化合物Aの含有率は、2.5wt%以上であることが好ましい。
これにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターを用いて表示される画像について、明度、コントラストを特に優れたものとすることができ、各部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターの個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明のカラーフィルター用インクは、前記化合物Aに加え、さらに、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテートおよび1,3−ブチレングリコールジアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
【0010】
これにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターを用いて表示される画像について、明度、コントラストを特に優れたものとすることができ、各部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターの個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0011】
本発明のカラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mを含むものであることが好ましい。
【化2】

【化3】

【0012】
これにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、平坦性に特に優れたものとなり、製造されるカラーフィルターについてのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、樹脂材料についての、所定温度以下では実質的に硬化反応を進行させず、それ以上の温度で効率よく硬化反応を進行させることができる特性等を優れたものとすることができる。
【0013】
本発明のカラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xを含むものであることが好ましい。
【化4】

【化5】

【化6】

【0014】
これにより、樹脂材料についての、所定温度以下では実質的に硬化反応を進行させず、それ以上の温度で効率よく硬化反応を進行させることができる特性等を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の耐溶剤性等を特に優れたものとすることができ、また、形成される着色部の表面の平坦性を特に高いものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むらの発生やコントラストの低下等をより確実に防止することができ、カラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0015】
本発明のカラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yを含むものであることが好ましい。
【化7】

これにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性等を優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の基板に対する密着性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0016】
本発明のカラーフィルター用インクでは、カラーフィルター用インク中における前記C.I.ピグメントグリーン58の含有率をCPG[wt%]、カラーフィルター用インク中における前記化合物Aの含有率をC[wt%]としたとき、0.25≦C/CPG≦10の関係を満足することが好ましい。
これにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターを用いて表示される画像について、明度、コントラストを特に優れたものとすることができ、各部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターの個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0017】
本発明のカラーフィルター用インクセットは、カラーフィルターの製造に用いられるインクを複数種備えたカラーフィルター用インクセットであって、
カラーフィルター用インクセットを構成する複数種の前記インクのうち少なくとも1種が、本発明のカラーフィルター用インクであることを特徴とする。
これにより、吐出安定性に優れるとともに、顔料の長期分散安定性(分散安定性)に優れており、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、各部位での色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターの製造に好適に用いることができる、インクジェット方式のカラーフィルター用インクセットを提供することができる。
【0018】
本発明のカラーフィルターは、本発明のカラーフィルター用インクを用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、各部位での色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターを提供することができる。
【0019】
本発明のカラーフィルターは、本発明のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、各部位での色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターを提供することができる。
【0020】
本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
これにより、表示部の各部位での色むら、濃度むら等が抑制され、個体間での特性の均一性に優れ、明度、コントラストに優れた画像表示が可能な画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、表示部の各部位での色むら、濃度むら等が抑制され、個体間での特性の均一性に優れ、明度、コントラストに優れた画像表示が可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図3】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
《カラーフィルター用インク》
本発明のカラーフィルター用インクは、カラーフィルターの製造(カラーフィルターの着色部の形成)に用いられるインクであり、特に、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。
カラーフィルター用インクは、顔料、樹脂材料等を含むものである。
【0023】
<顔料>
本発明のカラーフィルター用インクは、顔料として、C.I.ピグメントグリーン58を含むものである。
ところで、緑色のカラーフィルター用インクにおいては、顔料粒子の分散性、分散安定性の観点から、C.I.ピグメントグリーン36が広く用いられている。しかしながら、C.I.ピグメントグリーン36は、明度、コントラストに劣るという問題点があった。
一方、本発明者は、カラーフィルターの製造において、C.I.ピグメントグリーン58を用いることにより、C.I.ピグメントグリーン36に比べて、明度、コントラストに優れた緑色の着色部を形成することができることを見出した。そこで、本発明では、顔料としてC.I.ピグメントグリーン58を用いる。
【0024】
カラーフィルター用インク中におけるC.I.ピグメントグリーン58の含有率は、特に限定されないが、2.9wt%以上18.1wt%以下であるのが好ましく、3.0wt%以上16.2wt%以下であるのがより好ましい。C.I.ピグメントグリーン58の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。また、従来においては、このように比較的高濃度でC.I.ピグメントグリーン58を含む場合には、吐出安定性が特に低いものとなり、カラーフィルター用インクの液滴を吐出する際に、飛行曲がりや液滴吐出量の不安定化等の問題が特に発生し易かった。また、従来においては、特に、大型基板(例えば、G5以上)上に液滴吐出をして着色部を形成する場合に、面内の各部位での吐出量ばらつきによる不良品の発生が顕著となり、カラーフィルターの生産性が著しく低下するという問題があった。これに対し、本発明では、比較的高濃度でC.I.ピグメントグリーン58を含む場合であっても、後に詳述するように、上記のような問題の発生を確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等や、個体間での特性のばらつきの発生を確実に防止することができ、優れた生産性で、カラーフィルターを製造することができる。すなわち、カラーフィルター用インクが、C.I.ピグメントグリーン58を上記のように比較的高濃度で含む場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0025】
本発明のカラーフィルター用インクは、C.I.ピグメントグリーン58以外の顔料を含むものであってもよい。これにより、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の微妙な色味の調整等を行うことができ、例えば、カラーフィルターの色再現域をより広いものとすることができる。
このような顔料としては、例えば、公知の各種顔料を用いることができるが、以下に述べるようなスルホン化顔料誘導体が好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における、C.I.ピグメントグリーン58の分散安定性等を特に優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターのコントラスト、明度を非常に優れたものとすることができる。
スルホン化顔料誘導体は、公知の顔料または公知の顔料の誘導体に対して、スルホン化の処理を施すことにより得られるが、特に、下記式(32)で示される化学構造を有するものであるのが好ましい。
【0026】
【化8】

【0027】
これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、後述するような方法において、微分散工程の効率を特に優れたものとすることができ、短時間で、また、比較的小さなエネルギーで、カラーフィルター用インクを製造することができるため、カラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができ、生産コストの低減にも寄与することができる。また、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターのコントラスト、明度を特に優れたものとすることができる。
上記のように、本発明において、スルホン化顔料誘導体は、式(32)で示される化学構造を有するものであるのが好ましいが、中でも、下記式(34)で示される化学構造を有するものであるのが特に好ましい。これにより、上述したような効果は、さらに顕著に発揮される。
【0028】
【化9】

【0029】
カラーフィルター用インク中におけるスルホン化顔料誘導体の含有率は、特に限定されないが、0.08wt%以上3.5wt%以下であるのが好ましく、0.22wt%以上3.2wt%以下であるのがより好ましい。
また、カラーフィルター用インク中におけるスルホン化顔料誘導体の含有率は、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン58:100重量部に対して、0.5重量部以上30重量部以下であるのが好ましく、7重量部以上28重量部以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の明度、コントラストを特に優れたものとすることができる。
なお、スルホン化顔料誘導体(副顔料)は、単一の化合物で構成されるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0030】
また、本発明のカラーフィルター用インクは、C.I.ピグメントグリーン58、スルホン化顔料誘導体以外の顔料(以下、「その他の顔料」とも言う)を含むものであってもよいが、その他の顔料を含む場合、カラーフィルター用インク中におけるその他の顔料の含有率は、特に限定されないが、前述したC.I.ピグメントグリーン58の含有率、スルホン化顔料誘導体の含有率よりも少ないものであるのが好ましい。
【0031】
カラーフィルター用インク中における顔料(C.I.ピグメントグリーン58およびスルホン化顔料誘導体を含む)の含有率は、3.0wt%以上27.0wt%以下であるのが好ましく、3.6wt%以上22.0wt%以下であるのがより好ましく、4.2wt%以上12.0wt%以下であるのがさらに好ましい。顔料の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターにおいて、より高い色濃度を確保することができ、より鮮明な画像表示に用いることができる。また、所定の色濃度の着色部を形成するのに要するカラーフィルター用インクの量を少なくすることができ、省資源の観点から有利である。また、カラーフィルターの着色部を形成する際における分散媒(溶剤)の揮発量を抑制することができるため、環境に対する負荷を軽減することができる。また、従来においては、このように比較的高濃度で顔料を含む場合には、吐出安定性が特に低いものとなり、カラーフィルター用インクの液滴を吐出する際に、飛行曲がりや液滴吐出量の不安定化等の問題が特に発生し易かった。また、従来においては、特に、大型基板(例えば、G5以上)上に液滴吐出をして着色部を形成する場合に、面内の各部位での吐出量ばらつきによる不良品の発生が顕著となり、カラーフィルターの生産性が著しく低下するという問題があった。これに対し、本発明では、比較的高濃度で顔料を含む場合であっても、後に詳述するように、上記のような問題の発生を確実に防止することができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等や、個体間での特性のばらつきの発生を確実に防止することができ、優れた生産性で、カラーフィルターを製造することができる。すなわち、カラーフィルター用インクが、上記のように比較的高濃度の顔料を含む場合、本発明の効果がより顕著に発揮される。また、製造されるカラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0032】
<化合物A>
本発明において、カラーフィルター用インクは、C.I.ピグメントグリーン58とともに、下記式(10)で示される化合物Aを含有するものである。
【0033】
【化10】

【0034】
ところで、上述したように、本発明者は、カラーフィルター用インクにおいて、C.I.ピグメントグリーン58を用いることにより、C.I.ピグメントグリーン36に比べて、明度、コントラストに優れた緑色の着色部を形成することができることを見出した。
しかしながら、C.I.ピグメントグリーン58は、インク中における分散安定性に劣っており、C.I.ピグメントグリーン58を含むカラーフィルター用インクを用いて着色部を形成した場合に、色むら、濃度むら等の発生を、長期間にわたって安定的に防止するのが困難であった。また、C.I.ピグメントグリーン58を含むカラーフィルター用インクを用いた場合、液滴の吐出安定性を十分に優れたものとすることが困難であった。
【0035】
このような課題を解決する目的で、鋭意研究を行った結果、本発明者は、C.I.ピグメントグリーン58とともに、上記のような化合物Aを用いることにより、上記のような課題を解決することができ、吐出安定性に優れるとともに、顔料の長期分散安定性(分散安定性)に優れており、明度、コントラストに優れた画像表示が可能で、各部位での色むら、濃度むらが抑制され、個体間での特性の均一性に優れたカラーフィルターの製造に好適に用いることができる、インクジェット方式のカラーフィルター用インクを提供することを見出した。
【0036】
上記式(10)中、Rは、炭素数が1〜4の炭化水素基であればよいが、メチル基であるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターを用いて表示される画像について、明度、コントラストを特に優れたものとすることができ、各部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターの個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0037】
また、上記式(10)中、X、X、X、X、Xは、それぞれ、独立に、水素原子またはハロゲン原子であればよいが、いずれも、水素原子であるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターを用いて表示される画像について、明度、コントラストを特に優れたものとすることができ、各部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターの個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
なお、カラーフィルター用インクは、化学構造の異なる複数種の化合物Aを含むものであってもよい。
【0038】
カラーフィルター用インク中における化合物Aの含有率は、特に限定されないが、2.5wt%以上であるのが好ましく、4wt%以上25wt%以下であるのがより好ましく、6wt%以上17wt%以下であるのがさらに好ましい。化合物Aの含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクにおいて、化合物Aが顔料を分散する分散媒としての機能を十分に発揮することができ、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターを用いて表示される画像について、明度、コントラストを特に優れたものとすることができ、各部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターの個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。これに対し、化合物Aの含有率が前記下限値未満であると、カラーフィルター用インクが化合物Aを含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、化合物Aの含有率が前記上限値を超えると、相対的に、C.I.ピグメントグリーン58の含有率や後述する樹脂材料の含有率が低下し、着色部の形成に必要なカラーフィルター用インクの量が多くなってしまったり、形成される着色部の基板に対する密着性が低下する等の問題が発生しやすくなる。なお、カラーフィルター用インクが化学構造の異なる複数種の化合物Aを含むものである場合、化合物Aの含有率の値としては、これら複数の化合物の含有率の総和を採用するものとする。
【0039】
また、カラーフィルター用インク中における前記C.I.ピグメントグリーン58の含有率をCPG[wt%]、カラーフィルター用インク中における前記化合物Aの含有率をC[wt%]としたとき、0.25≦C/CPG≦10の関係を満足するのが好ましく、0.6≦C/CPG≦3の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターを用いて表示される画像について、明度、コントラストを特に優れたものとすることができ、各部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターの個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0040】
<樹脂材料>
カラーフィルター用インクは、形成される着色部の基板に対する密着性を向上させる等の目的で、樹脂材料(バインダー樹脂)を含んでいる。
本発明では、以下に詳述するような樹脂材料を含むのが好ましい。
[重合体M]
重合体Mは、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含むものである。
【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
このような重合体Mを含むことにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、平坦性に特に優れたものとなり、製造されるカラーフィルターについてのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、樹脂材料についての、所定温度以下では実質的に硬化反応を進行させず、それ以上の温度で効率よく硬化反応を進行させることができる特性(以下、「硬化反応のスイッチング特性」ともいう)等を優れたものとすることができる。また、重合体Mは、後述する樹脂成分(重合体X、重合体Y)との親和性、相溶性に非常に優れているため、複数種の樹脂成分を含む場合であっても、カラーフィルター用インク中での樹脂材料の不本意な析出を防止し、優れた吐出安定性で液滴吐出を行うことができるとともに、形成される着色部においては、各樹脂成分の特長を十分に発揮させることができ、不本意な相分離による透明性の低下等の問題の発生を確実に防止することができる。また、カラーフィルター用インクの長期保存性(カラーフィルター用インクの寿命)が非常に優れたものとなり、大量生産したカラーフィルター用インクの作り置きによる品質の低下等の問題の発生が効果的に防止され、カラーフィルターの製造に際してカラーフィルター用インクの交換頻度を減らすことができるため、カラーフィルターの生産性、製造されるカラーフィルターの信頼性を優れたものとすることができる。また、重合体Mは、機械的な力に対して極めて優れた安定性を有している。このため、後述するような製造方法を用いてカラーフィルター用インクを製造する際に(後述する微分散工程で)、原料として用いる顔料粒子の凝集体の微分散時に重合体Mを好適に用いることができる。これについては後述する。
なお、重合体Mは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0044】
(単量体成分m1)
重合体Mは、上記式(1)で表される単量体成分m1、すなわち、ブロックされたイソシアネート基(以下、「ブロックイソシアネート基」ともいう)を有する化合物を単量体成分として含有してなるものである。なお、カラーフィルター用インクを構成する重合体Mは、分子内に、上記一般式(1)で表される単量体成分m1を複数種含むものであってもよい。
【0045】
このような単量体成分m1を重合体M中に単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。すなわち、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。すなわち、重合体M中における単量体成分m1が有するブロックイソシアネート基は、着色部形成工程(硬化工程)において付与されるような比較的高いエネルギーによって脱ブロック化し、活性なイソシアネート基が生成し、前記イソシアネート基とカルボキシル基または酸無水物基が硬化に寄与して、基板との密着性、耐熱性、耐薬品性等の向上を図れる一方で、比較的低いエネルギーが与えられた場合には、上記のような脱ブロック化が進行せず、硬化反応の進行が防止、抑制される。
【0046】
式(1)で表される単量体成分m1において、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1以上8以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示す。Rはイソシアネート基のブロック剤RHの残基を示す。
における炭素数1以上8以下の2価の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状の2価の飽和脂肪族炭化水素基(アルキレン基)が挙げられるが、エチレン、トリメチレン、プロピレン基等の炭素数2以上4以下の2価の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0047】
イソシアネート基のブロック剤RHとしては、例えば、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、メチルイソブチルケトキシム、ジエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系ブロック剤;3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系ブロック剤;メタノール、エタノール等のアルコール系ブロック剤;フェノール、クレゾール等のフェノール系ブロック剤;ブチルメルカプタン等のメルカプタン系ブロック剤;アセトアニリド、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等の酸アミド系ブロック剤;マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン系ブロック剤;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;尿素系ブロック剤;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸系ブロック剤;ジフェニルアミン、アニリン等のアミン系ブロック剤;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等のイミン系ブロック剤等が挙げられる。
イソシアネート基のブロック剤としては、オキシム系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤が好ましく、下記式(5)で表されるものがより好ましい。
【0048】
【化13】

【0049】
式(5)中のRおよびRにおける炭素数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状アルキル基が挙げられるが、メチル、エチル、プロピル基等の炭素数1以上4以下の直鎖状または分岐鎖状アルキル基が好ましい。RおよびRが互いに結合して隣接する炭素原子とともに結合する環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の3〜12員程度(好ましくは5または6員)のシクロアルカン環等が挙げられる。
【0050】
式(1)で表される単量体成分m1の具体例としては、メタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート)(下記式(6)で表されるもの)、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチル(下記式(7)で表されるもの)等が挙げられる。
【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
重合体M中における単量体成分m1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、1wt%以上99wt%以下(例えば10wt%以上95wt%以下)であるのが好ましく、20wt%以上90wt%以下であるのがより好ましく、25wt%以上88wt%以下であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分m2、m3等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体M中における単量体成分m1の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分m1を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体M中における単量体成分m1の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分m2、m3等の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m1を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m1の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m1を含有しているのが好ましい。
【0054】
(単量体成分m2)
重合体Mは、カルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2を単量体成分として含有してなるものである。なお、カラーフィルター用インクを構成する重合体Mは、分子内に複数種の単量体成分m2を含むものであってもよい。
このような単量体成分m2を重合体M中に単量体成分として含有することにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部を好適に形成することができる。また、単量体成分m2を単量体成分として含有することにより、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。
【0055】
単量体成分m2としては、不飽和カルボン酸またはその酸無水物が挙げられる。単量体成分m2の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)等が挙げられ、中でも、アクリル酸、メタクリル酸(下記式(2)で表されるもの)が特に好ましい。
【0056】
【化16】

【0057】
重合体M中における単量体成分m2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、0.5wt%以上98wt%以下(例えば2.5wt%以上70wt%以下)であるのが好ましく、3wt%以上50wt%以下であるのがより好ましく、5wt%以上40wt%以下であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記範囲内の値であると、上述した単量体成分m1や後に詳述する単量体成分m3等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分m2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体M中における単量体成分m2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分m1、m3等の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m2を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m2の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m2を含有しているのが好ましい。
【0058】
(単量体成分m3)
重合体Mは、上記式(3)で表される単量体成分m3((メタ)アクリル酸エステル)を単量体成分として含有してなるものである。なお、カラーフィルター用インクを構成する重合体Mは、分子内に、上記一般式(3)で表される単量体成分m3を複数種含むものであってもよい。
【0059】
このような単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性を高いものとすることができる。また、単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分m3を重合体M中に単量体成分として含有することにより、顔料の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの保存安定性(長期保存性)を優れたものとすることができる。
【0060】
における炭素数16以上25以下の炭化水素基としては、例えば、ヘキサデシル(セチル)、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、ノナデシル、イコシル、ドコシル(ベヘニル)基等のアルキル基;10−シクロヘキシルデシル、12−シクロヘキシルドデシル、14−シクロヘキシルテトラデシル、16−シクロヘキシルヘキサデシル基等の脂環式炭化水素基とアルキル基とが結合した基;10−フェニルデシル、12−フェニルドデシル、14−フェニルテトラデシル、16−フェニルヘキサデシル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0061】
炭素数16以上25以下の炭化水素基が有していてもよい炭化水素基置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1以上10以下のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等の炭素数1以上15以下(好ましくは、炭素数1以上12以下)の炭化水素基置換オキシ基等が挙げられる。
単量体成分m3の具体例としては、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
上記のように、重合体Mを構成する単量体成分m3が有する炭化水素基(炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい)の炭素数(以下、Rの炭素数ともいう)は、16以上25以下であるが、特に、16以上22以下であるのが好ましく、16以上20以下であるのがより好ましい。これにより、上述した効果は、さらに顕著に発揮される。これに対し、Rの炭素数が前記下限値未満である場合、または、前記上限値を超える場合には、上述したような優れた効果が得られない。このように、重合体Mは、所定の炭素数を有する基(R)を備えた単量体成分(単量体成分m3)を含む点に大きな一つの特徴を有するものである。
【0063】
重合体M中における単量体成分m3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、0.5wt%以上98wt%以下(例えば2.5wt%以上70wt%以下)であるのが好ましく、3wt%以上50wt%以下であるのがより好ましく、5wt%以上40wt%以下であるのがさらに好ましい。重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記範囲内の値であると、上述した単量体成分m1、m2等の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分m3を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体M中における単量体成分m3の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分m1、m2等の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。なお、重合体Mが複数種の単量体成分m3を含むものである場合、当該複数種の単量体成分m3の含有率の和が上記のような条件を満足するのが好ましい。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分m3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Mが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分m3を含有しているのが好ましい。
【0064】
重合体Mにおける単量体成分m1の比率(Cm1[wt%])と単量体成分m2の比率(Cm2[wt%])は、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、Cm1/Cm2は、2/98以上98/2以下であるのが好ましく、20/80以上95/5以下であるのがより好ましく、40/60以上95/5以下であるのがさらに好ましい。
また、重合体Mにおける単量体成分m1の比率(Cm1[wt%])と単量体成分m3の比率(Cm3[wt%])は、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、Cm1/Cm3は、2/98以上98/2以下であるのが好ましく、20/80以上95/5以下であるのがより好ましく、40/60以上95/5以下であるのがさらに好ましい。
重合体Mとしては、例えば、下記式(8)で表されるものがある。
【0065】
【化17】

【0066】
また、重合体Mは、上述した単量体成分m1、m2およびm3以外の成分を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。このような成分としては、例えば、以下に述べるような単量体成分m4、単量体成分m5、単量体成分m6、単量体成分m7等が挙げられる。
【0067】
(単量体成分m4)
重合体Mは、下記式(4)で表される単量体成分m4((メタ)アクリル酸エステル)を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0068】
【化18】

【0069】
重合体Mが単量体成分m4を含むことにより、カラーフィルター用インクを構成する分散媒(顔料を分散する分散媒)が親水性の高い場合であっても、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の溶解性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の透明性を優れたものとすることができる。
単量体成分m4において、Rは、炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい炭素数1以上15以下の炭化水素基を示すが、当該炭化水素基の炭素数は、1以上12以下であるのが好ましい。Rで示される炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル、ジシクロペンタニル、イソボルニル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0070】
炭素数1以上15以下の炭化水素基が有していてもよい炭化水素基置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1以上10以下のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等の炭素数1以上15以下(好ましくは、炭素数1以上12以下)の炭化水素基置換オキシ基等が挙げられる。
【0071】
単量体成分m4の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
上記のように、単量体成分m4が有する炭化水素基(炭化水素基置換オキシ基を有していてもよい)の炭素数(以下、Rの炭素数ともいう)は、1以上15以下であるが、特に、1以上8以下であるのが好ましく、1以上4以下であるのがより好ましい。これにより、上述した効果は、さらに顕著に発揮される。
上記のような単量体成分m4を含む重合体Mとしては、例えば、下記式(9)で表されるものがある。
【0073】
【化19】

【0074】
(単量体成分m5)
重合体Mは、芳香族ビニル化合物である単量体成分m5を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
重合体Mが単量体成分m5を含むことにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に特に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下がより効果的に防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が特に生じにくいものとなる。
単量体成分m5の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル等が挙げられる。
【0075】
(単量体成分m6)
重合体Mは、ヒドロキシル基含有化合物である単量体成分m6を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
重合体Mが単量体成分m6を含むことにより、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、着色部形成時における樹脂材料の硬化反応をより好適に進行させることができる。
【0076】
単量体成分m6の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物やエチレンオキサイド、もしくはプロピレンオキサイドを開環重合したヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。
【0077】
(単量体成分m7)
重合体Mは、3〜5員の環状エーテル基を有するビニル化合物である単量体成分m7を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
単量体成分m7(3〜5員の環状エーテル基を有するビニル化合物)には、オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物、オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物、オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物が含まれる。
重合体Mが単量体成分m7を含むことにより、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の硬度や、基板に対する密着性等の更なる向上を図ることができる。
【0078】
オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキシラニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のオキシラン環(単環)を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の3,4−エポキシシクロヘキサン環等のエポキシ基含有脂環式炭素環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(メタ)アクリレート等の5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等);エポキシ化ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート[3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート[2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシブチル(メタ)アクリレート、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシヘキシル(メタ)アクリレート等の3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体等)等が挙げられる。他のオキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物として、エポキシ基を含むビニルエーテル化合物、エポキシ基を含むアリルエーテル化合物、エポキシ基を含む芳香族ビニル化合物等を用いることもできる。エポキシ基を含む芳香族ビニル化合物としては、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルオキシラン、4−ビニルフェネチルオキシラン等のスチレン誘導体が挙げられる。
【0079】
オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキセタニル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレートや、オキセタニル基を含むビニルエーテル化合物、オキセタニル基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。
オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、オキソラニル基を含むビニルエーテル化合物、オキソラニル基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。
【0080】
カラーフィルター用インクを構成する重合体Mが、上述したような単量体成分m7を含むものである場合、3〜5員の環状エーテル基(オキシラン環(エポキシ基)、オキセタン環(オキセタニル基)、オキソラン環(オキソラニル基))は硬化性基として作用する。3〜5員の環状エーテル基は、主に耐薬品性(耐溶剤性、耐アルカリ性等)の向上に寄与する。
【0081】
重合体Mが、単量体成分m1、m2、m3に加え、さらに、単量体成分m4、m5、m6およびm7よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含むものである場合、重合体M中における単量体成分m4、m5、m6およびm7の含有率の総和は、60wt%以下であるのが好ましく、50wt%以下であるのがより好ましく、40wt%以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述した単量体成分m1、m2、m3を含むことによる効果を十分に発揮させつつ、単量体成分m4、m5、m6、m7を含むことによる効果が発揮される。
【0082】
重合体Mの重量平均分子量は、500以上100000以下であるのが好ましく、1000以上40000以下であるのがより好ましく、2000以上30000以下であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターについてのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクの保存安定性(長期安定性)、吐出安定性、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0083】
また、重合体Mの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
また、カラーフィルター用インク中における重合体Mの含有率Cは、0.5wt%以上12wt%以下であるのが好ましく、1.0wt%以上9.0wt%以下であるのがより好ましい。
カラーフィルター用インク中における重合体Mの含有率は、0.6wt%以上13.0wt%以下であるのが好ましく、0.9wt%以上9.0wt%以下であるのがより好ましい。これにより、上述したC.I.ピグメントグリーン58、化合物Aの機能を十分に発揮させつつ、重合体Mを含むことによる効果をより効果的に発揮させることができる。
【0084】
[重合体X]
重合体Xは、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含むものである。重合体Xとしては、例えば、下記式(17)で表されるものがある。
【0085】
【化20】

【0086】
【化21】

【0087】
【化22】

【0088】
【化23】

【0089】
このような重合体Xを含むことにより、樹脂材料全体としての硬化反応のスイッチング特性等を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の耐溶剤性等を特に優れたものとすることができ、また、形成される着色部の表面の平坦性を特に高いものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むらの発生やコントラストの低下等をより確実に防止することができ、カラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Xを含むことにより、カラーフィルター用インク中における各重合体成分の親和性、相溶性(特に、重合体Xの、重合体Mや重合体Yとの親和性、相溶性)を十分に優れたものとすることができるため、重合体Xの特長を十分に発揮させつつ、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとし、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の透明性を高いとすることができる。
なお、重合体Xは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Xが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分x1、x3およびx4を含有するものである。
【0090】
(単量体成分x1)
重合体Xは、上記式(11)で表される単量体成分x1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。すなわち、単量体成分x1を含有することにより、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0091】
重合体X中における単量体成分x1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30wt%以上90wt%以下であるのが好ましく、40wt%以上80wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分x2、x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x1を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x2、x3、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Xの高温での反応速度が低下し、十分に優れた生産性でカラーフィルターを製造するのが困難となる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x1を含有しているのが好ましい。
【0092】
(単量体成分x2)
重合体Xは、下記式(12)で表される単量体成分x2を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0093】
【化24】

【0094】
このような単量体成分x2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分x1や後に詳述する単量体成分x3とともに含有すること)により、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の重合反応の立ち上がりをより良好なものとすることができるとともに、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分x2を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を特に優れたものとすることができる。
単量体成分x2を単量体成分として含有する重合体Xとしては、例えば、下記式(19)で表されるものがある。
【0095】
【化25】

【0096】
重合体X中における単量体成分x2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、5wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、10wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1および後に詳述する単量体成分x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x3、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Xの比較的低温での反応性が増し、カラーフィルター用インクの保存安定性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x2を含有しているのが好ましい。
【0097】
(単量体成分x3)
重合体Xは、上記式(13)で表される単量体成分x3を単量体成分として含有してなるものである。
重合体Xが単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の耐薬品性、耐溶剤性等を特に優れたものとすることができる。これにより、着色部形成工程(硬化工程)の後に、薬品塗布や洗浄等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生を確実に防止することができる。
【0098】
また、単量体成分x3は、重合体Xにおいて、上述した単量体成分x1と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)での反応性が十分に低いのに対し、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を示すものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
また、単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0099】
重合体X中における単量体成分x3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2および後に詳述する単量体成分x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x3を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x2、x4の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部が硬くなりすぎ、温度変化に伴う基板等の変形に対する追従性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x3を含有しているのが好ましい。
【0100】
(単量体成分x4)
重合体Xは、上記式(14)で表される単量体成分x4を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから分散媒を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクのチキソトロピック性および粘度が上昇し、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることをより確実に防止することができる。
【0101】
また、単量体成分x4は、その末端に水酸基を有している。このような構造を有することにより、比較的低い温度(例えば、100℃以下)における反応性を十分に低いものとしつつ、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下における反応性をさらに高めることができる。これにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。
また、単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0102】
重合体X中における単量体成分x4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2wt%以上20wt%以下であるのが好ましく、3wt%以上15wt%以下であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2、x3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分x4を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分x1、x2、x3の含有率が低下し、これらの機能が十分に発揮されない可能性がある。また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の硬度が低下する傾向が現れる。なお、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分x4の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x4を含有しているのが好ましい。
なお、重合体Xは、上述した単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
【0103】
重合体Xが、その他の単量体成分(単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体X中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
重合体Xの重量平均分子量は、1000以上50000以下であるのが好ましく、1200以上10000以下であるのがより好ましく、1500以上5000以下であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Xの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
【0104】
[重合体Y]
重合体Yは、下記式(15)で表される単量体成分y1を含むものである。重合体Yとしては、例えば、下記式(18)で表されるものがある。
【0105】
【化26】

【0106】
【化27】

【0107】
このような重合体Yを含むことにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性等を優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の基板に対する密着性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
なお、重合体Yは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Yが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分y1を含有するものである。
【0108】
(単量体成分y1)
重合体Yは、上記式(15)で表される単量体成分y1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分y1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の基板に対する密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0109】
重合体Y中における単量体成分y1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30wt%以上90wt%以下であるのが好ましく、40wt%以上80wt%以下であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記範囲内の値であると、例えば、重合体Yが単量体成分として後に詳述する単量体成分y2を含む場合において、当該単量体成分y2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分y1を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記上限値を超えると、例えば、重合体Yが単量体成分として後に詳述する単量体成分y2を含む場合において、相対的に単量体成分y2の含有率が低下し、単量体成分y2の機能が十分に発揮されない可能性がある。また、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから分散媒を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇する傾向が現れ、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じ易くなる。なお、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分y1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y1を含有しているのが好ましい。
【0110】
(単量体成分y2)
重合体Yは、下記式(16)で表される単量体成分y2を単量体成分として含有してなるものであってもよい。
【0111】
【化28】

【0112】
このような単量体成分y2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分y1とともに含有すること)により、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)をより確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の重合反応の立ち上がりを良好なものとすることができるとともに、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分y2を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0113】
また、重合体Yが単量体成分y2を含有することにより、前述した樹脂成分(重合体M、重合体X)との親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクが重合体Y以外の樹脂成分を含む場合であっても、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。これに対し、単量体成分y2を単量体成分として含有しないと、他の樹脂成分(重合体M、重合体X)を含む場合に、当該他の樹脂成分との親和性、相溶性を十分に優れたものとすることが困難となり、カラーフィルター用インクは、吐出安定性に劣ったものとなり、また、製造されるカラーフィルターは、色むら等が発生し易く、コントラストや耐久性、信頼性等を十分に優れたものとするのが困難となる可能性がある。
単量体成分y2を単量体成分として含有する重合体Yとしては、例えば、下記式(20)で表されるものがある。
【0114】
【化29】

【0115】
重合体Y中における単量体成分y2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、10wt%以上70wt%以下であるのが好ましく、20wt%以上60wt%以下であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分y1の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。これに対し、重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記下限値未満であると、単量体成分y2を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記上限値を超えると、相対的に単量体成分y1の含有率が低下し、単量体成分y1の機能が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Yの比較的低温での反応性が増し、カラーフィルター用インクの保存安定性が低下する傾向が現れる。なお、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分y2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y2を含有しているのが好ましい。
【0116】
なお、重合体Yは、上述した単量体成分y1、y2以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体成分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
重合体Yが、その他の単量体成分(単量体成分y1、y2以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体Y中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
【0117】
重合体Yの重量平均分子量は、1000以上50000以下であるのが好ましく、1200以上10000以下であるのがより好ましく、1500以上5000以下であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
【0118】
また、重合体Yの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上3以下であるのが好ましい。
なお、上述した各重合体は、最終的に上述したような構造(各単量体成分に対応する各部分構造)を有していればよく、上述した各単量体成分そのものを用いて合成されたものであってもよいし、上述した単量体成分とは異なる成分(前駆体、誘導体等)を用いて合成されたものであってもよい。
【0119】
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率は、0.7wt%以上18wt%以下であるのが好ましく、1.0wt%以上15wt%以下であるのがより好ましく、3.0wt%以上12wt%以下であるのがさらに好ましい。
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率をC[wt%]、カラーフィルター用インク中における顔料の含有率をC[wt%]としたとき、0.2≦C/C≦9.0の関係を満足するのが好ましく、0.3≦C/C≦5.0の関係を満足するのがより好ましく、0.4≦C/C≦3.5の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、製造されるカラーフィルターのコントラスト等をより優れたものとすることができたり、着色部厚さをより薄いものとした場合であっても十分なコントラストを確保することができる。なお、従来のカラーフィルター用インクでは、顔料の含有率に対する樹脂材料の含有率を低いものとした場合、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じる等の不都合を生じやすかったが、本発明では、上記のように、顔料の含有率に対する樹脂材料の含有率を低いものとした場合であっても、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることを確実に防止することができる。すなわち、上記のような関係を満足することにより、本発明の効果はより顕著に発揮される。
なお、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料は、上述した以外の重合体(例えば、熱可塑性の重合体や上述した重合体M、X、Y以外の硬化性の重合体)を含むものであってもよい。
【0120】
<その他の成分>
また、本発明のカラーフィルター用インクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、カラーフィルター用インク中において、分散媒として機能する成分(液体成分)が挙げられる。上記のように、カラーフィルター用インクにおいて、化合物Aは、通常、分散媒として機能するものであるが、化合物Aに加え、さらに他の分散媒として機能する成分を含むことにより、カラーフィルター用インクの粘度等の調整を好適に行うことができ、カラーフィルター用インクの吐出安定性のさらなる向上等を図ることができる。
【0121】
このような成分としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテートおよび1,3−ブチレングリコールジアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これにより、カラーフィルター用インクの吐出安定性、顔料の長期分散安定性(分散安定性)を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターを用いて表示される画像について、明度、コントラストを特に優れたものとすることができ、各部位での色むら、濃度むらをより効果的に防止することができるとともに、カラーフィルターの個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。
【0122】
また、上述した中でも、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含む場合、カラーフィルター用インクの粘度を特に低いものとすることができ、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクが基板上ですばやく隅々まで濡れ広がるため、形成される着色部の厚さの均一性をより高いものとすることができ、色再現性およびコントラスト比を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクがジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含む場合、水の分散媒への溶解度を適度なものとすることができる。このため、カラーフィルター用インクがジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むことにより、外部からの吸湿を確実に防止することができる。また、液滴吐出装置のカラーフィルター用インクの流路等の内部に水が混入した場合であっても、水を好適に溶解し、除去することができる。この結果、液滴吐出ヘッドからのカラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性(例えば、液滴の吐出量の均一性)をより長期にわたって、特に優れたものとすることができる。
【0123】
また、その他の成分としては、例えば、各種架橋剤、熱酸発生剤、光酸発生剤、各種重合開始剤、酸架橋剤、界面活性剤、増感剤、光安定剤、各種染料、各種分散剤、発光材料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、各種重合促進剤、各種光安定化剤、ガラス、ジルコニア、アルミナ、酸化チタン等のセラミックス、密着促進剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を用いることができる。
【0124】
レベリング剤は、カラーフィルター用インクの表面張力を低下させることにより、セル内に付与されたカラーフィルター用インクの表面を平滑化し、着色部を平坦化させるものである。このため、カラーフィルター用インクがレベリング剤を有することにより、上述したような樹脂材料の効果と相乗的に作用し、セル内のカラーフィルター用インクの表面をより平坦なものとすることができる。このため、形成される着色部はより平坦なものとなる。
【0125】
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素−ケイ素系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤等が挙げられる。このようなレベリング剤の中でも、アクリル系レベリング剤、ビニルエーテル系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤を用いることが好ましい。特に、サーフィノールDF−58、LHP−95、LHP−90、LF1970から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、形成される着色部の表面がより平坦化され、得られるカラーフィルターは、各部位での色むら、濃度むらが特に小さいものとなる。
【0126】
酸化防止剤は、カラーフィルター用インクの酸化等による変質を防止するとともに、カラーフィルター用インクによって形成された着色部内において顔料や樹脂材料等の熱や光等による劣化を防止することができる。
酸化防止剤としては、各種リン系酸化防止剤、各種イオウ系酸化防止剤、各種ヒンダードフェノール系酸化防止剤、各種ヒンダーアミン系酸化防止剤等の各種酸化防止剤等が挙げられる。この中でも、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも一種を用いることが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることがより好ましく、TINUVIN152を用いることがさらに好ましい。このような酸化防止剤は、好適にカラーフィルター用インク、着色部の変質を効果的に防止するとともに、形成される着色部において、色、明度、コントラスト比等の光学特性に影響しにくいものである。
【0127】
カラーフィルター用インクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、4mPa・s以上12mPa・s以下であるのが好ましく、5mPa・s以上11mPa・s以下であるのがより好ましい。カラーフィルター用インクの粘度が前記範囲内の値であると、後述するようなインクジェット方式による液滴吐出において、吐出されるカラーフィルター用インクの液適量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、カラーフィルター用インクの粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
本発明のカラーフィルター用インクは、上述したように、C.I.ピグメントグリーン58を含むものであり、通常、緑色の着色部を形成するのに用いられるが、他の着色剤成分を含むことにより色調が調整された、緑色以外の着色部の形成に用いられるものであってもよい。
【0128】
≪カラーフィルター用インクの製造方法≫
次に、上述したようなカラーフィルター用インクの製造方法、特に、着色剤として顔料を含み、かつ、樹脂材料が、重合体Mを含むカラーフィルター用インクの製造方法の好適な実施形態について、説明する。
本実施形態の製造方法は、重合体Mが溶剤に溶解した重合体M溶液を調製する重合体M溶液調製工程と、顔料が添加された重合体M溶液を、ビーズミルによる微分散処理に供し、顔料が微分散した顔料分散体を得る微分散工程と、顔料分散体に希釈用の樹脂材料を追加混合する樹脂材料追加工程とを有する。
【0129】
<重合体M溶液調製工程>
重合体M溶液調製工程においては、重合体Mが溶剤に溶解した重合体M溶液を調製する。このように、後述する顔料を微分散させる工程(微分散工程)に先立って、顔料と混合する液体(重合体M溶液)を、重合体Mを含むものとすることにより、原料として用いる顔料粒子の凝集体を効率よく、容易かつ確実に微粒子化(解砕)することができ、カラーフィルター用インクの生産性を向上させることができるとともに、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、重合体M溶液を用いることにより、後述する微分散工程を、比較的温和な条件で行うことができるため、カラーフィルター用インクの構成材料の不本意な変性、劣化等を確実に防止することができる。
本工程で用いる溶剤は、いかなるものであってもよいが、化合物Aを含むものであるのが好ましい。これにより、重合体M溶液における重合体Mの溶解状態を良好なものとすることができ、より効率よくカラーフィルター用インクを調製することができるとともに、得られるカラーフィルター用インクの信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0130】
また、製造すべきカラーフィルター用インクが分散剤を含むものである場合、本工程において分散剤を用いるのが好ましい。これにより、重合体Mと分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮される。また、本工程において分散剤を用いる場合、(重合体Mと溶剤との混合に先立って、または、重合体Mと溶剤との混合時に、)分散剤と溶剤とを含む混合物を攪拌する(分散剤を予備分散する)のが好ましい。これにより、得られる重合体M溶液中において、分散剤の会合状態を解いた(ほぐした)状態とすることができ、分散剤の機能をより効果的に発揮させることができる。
本工程では、各種攪拌機を用いて上記各成分の混合物を攪拌することにより、重合体M溶液を得ることができる。
【0131】
<微分散工程>
次に、顔料が添加された重合体M溶液を、ビーズミルによる微分散処理に供することにより、顔料が微分散した顔料分散体を得る(微分散工程)。
本工程において顔料の微分散を行う重合体M溶液は、重合体Mを含むものであるため、顔料の微粒子化(解砕)を効率よく行うことができ、カラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができる。これは、本工程において、顔料の周りを重合体Mが取り囲むような状態となり、顔料の微粒子化(解砕)を促進するとともに、微粒子化した顔料粒子が結晶性成長し粗大粒子化したり、粒子同士が凝集し二次粒子を形成して再凝集すること防止するためであると考えられる。
【0132】
また、本工程は、化合物Aを含む状態で行うのが好ましい。これにより、顔料の微粒子化(解砕)を特に効率よく行うことができる。特に、化合物Aとともに、上述したような重合体Mを含む状態で顔料の微分散処理を行うことにより、これらの機能が相乗的に作用し合い顔料の微粒子化(解砕)の効率を特に優れたものとするができる。
本工程は、各種ビーズミルを用いて行うことができる。
なお、本工程においては、必要に応じて、例えば、溶剤による希釈等の処理を行ってもよい。
【0133】
<樹脂材料追加工程>
上記のような微分散工程で得られた顔料分散体を、追加の樹脂材料と混合する(樹脂材料追加工程)。これにより、カラーフィルター用インクが得られる。
このように、本実施形態では、樹脂材料を構成する重合体Mを微分散工程に際して用いるとともに、微分散工程後に、追加の樹脂材料を用いる。これにより、例えば、微分散工程の効率を優れたものとしつつ、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性を特に優れたものとし、液滴の吐出安定性を特に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インク中に含まれる樹脂材料の含有率を好適なものとすることができる。また、重合体M以外の重合体を用いる場合においては、カラーフィルター用インクの調製時における当該重合体の不本意な変性、劣化を防止しつつ、最終的に得られるカラーフィルター用インクに当該重合体を所望の割合で含ませることができる。
本工程に追加する樹脂材料としては、例えば、上述したような重合体X、重合体Y等の重合体Mとは異なる重合体を用いることができる。また、重合体Mは、前述した重合体M溶液調製工程に加え、本工程でも用いられるものであってもよい。
【0134】
本工程は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
なお、本工程では、前記工程で用いた溶剤とは異なる組成の液体を添加してもよい。これにより、前述した重合体M溶液調製工程での重合体Mの溶解、分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有するカラーフィルター用インクを確実に得ることができる。
【0135】
また、本工程においては、顔料分散体と追加の樹脂材料との混合に先立って、または、顔料分散体と追加の樹脂材料との混合の後に、前記工程で用いた溶剤の少なくとも一部を除去してもよい。これにより、重合体M溶液調製工程、微分散工程での溶剤の組成と、最終的に得られるカラーフィルター用インクでの分散媒の組成とを異なるものとすることができる。その結果、前述した重合体M溶液調製工程での重合体の溶解、分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有するカラーフィルター用インクを確実に得ることができる。溶剤の除去は、例えば、対象とする液体を、減圧雰囲気下に置いたり、加熱したりすることにより行うことができる。
【0136】
《カラーフィルター用インクセット》
上述したようなカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。カラーフィルターは、通常、フルカラー表示に対応するため、複数色の着色部(通常は、光の三原色に対応するRGBの3色)を有している。そして、これら複数色の着色部の形成には、それぞれに対応する色の複数種のカラーフィルター用インクが用いられる。すなわち、カラーフィルターの製造には、複数色のカラーフィルター用インクを備えるインクセット(カラーフィルター用インクセット)が用いられる。本発明においては、カラーフィルターの製造において、上述したようなカラーフィルター用インクが、少なくとも1種の着色部の形成に用いられるものであればよいが、特に、緑色の着色部の形成に用いられるのが好ましい。これにより、従来のカラーフィルターの製造において、緑色の着色部の形成について発生していた問題を確実に解消し、全体として信頼性に優れたカラーフィルターの製造に好適に用いることのできるカラーフィルター用インクセットを提供することができる。
【0137】
また、本発明においては、カラーフィルター用インクセットを構成するインクのうち、C.I.ピグメントグリーン58を含むインクが上述したような化合物Aを含むものであればよいが、C.I.ピグメントグリーン58を含むインク以外のインクも化合物Aを含むものであるのが好ましい。これにより、C.I.ピグメントグリーン58を含むインク以外のインクについての液滴の吐出安定性、顔料の分散安定性等も優れたものとすることができるとともに、後に詳述するカラーフィルターの製造方法(特に、着色部形成工程)における各インクの挙動のばらつきを抑制することができ、結果として、より信頼性の高いカラーフィルターを得ることができる。
また、カラーフィルター用インクセットを構成するインクのうち、C.I.ピグメントグリーン58を含むインク以外のインクは、通常、着色剤の種類を異なるものとした以外は、本発明のカラーフィルター用インク(C.I.ピグメントグリーン58を含むインク)について説明したのと同様の材料を用いて、同様の方法により調製することができる。
【0138】
インクセットが、赤色のインクを備えるものである場合、当該インクは、顔料(赤色顔料)として、C.I.ピグメントレッド177とその誘導体、および/または、C.I.ピグメントレッド254とその誘導体を含むものであるのが好ましい。これにより、当該インク(赤色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、前述した樹脂材料を用いることによる効果がより顕著に発揮され、インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができる。この結果、着色部形成時におけるインクのチキソトロピック性の上昇を抑制することができるとともに、セルへのインク付与時においては、インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
C.I.ピグメントレッド177の誘導体、C.I.ピグメントレッド254の誘導体として、下記式(30)または下記式(31)で示される化合物(誘導体)を含有するものである場合、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。
【0139】
【化30】

【0140】
【化31】

【0141】
また、インクセットが、青色のインクを備えるものである場合、当該インクは、C.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントバイオレット23を含むものであるのが好ましい。これにより、当該インク(青色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0142】
《カラーフィルター》
次に、上述したようなカラーフィルター用インク(インクセット)を用いて製造されるカラーフィルターの一例について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、上述したカラーフィルター用インクを用いて形成された着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる色の第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。
【0143】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0144】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0145】
<着色部>
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)を用いて形成されたものである。
着色部12は、上述したようなカラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)を用いて形成されたものであるため、色むら、濃度むらの発生が効果的に防止されている。また、コントラスト比、明度に優れた画像を好適に表示することができるものとなっている。また、同色の着色部12については、カラーフィルター1の個体間での特性差(濃度等のばらつき)が小さいものとなっている。
【0146】
各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、互いに異なる色のものである。例えば、第1の着色部12Aを赤色フィルター領域(R)、第2の着色部12Bを緑色フィルター領域(G)、第3の着色部12Cを青色フィルター領域(B)とすることができる。
【0147】
そして、一組の異なる色の着色部12A、12B、12Cで1画素を構成している。そして、カラーフィルター1においては、その横方向および縦方向に、着色部12が所定数配置されている。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素を備えたものであってもよい。
【0148】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁(遮光部)13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0149】
隔壁13の高さは、特に限定されないが、着色部12の膜厚とほぼ同じであるのが好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができる。隔壁13の具体的な厚さは、0.1μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.5μm以上3.5μm以下であるのがより好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色を確実に防止することができるとともに、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。
【0150】
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、後述するような方法で、隔壁13を容易に所望の形状を有するものとして形成することができる。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
【0151】
次に、上述したようなカラーフィルター1の製造方法の一例について説明する。
図2は、カラーフィルターの製造方法を示す断面図、図3は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
図2に示すように、本実施形態では、基板11を準備する基板準備工程(1a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(1b、1c)と、インクジェット方式によりカラーフィルター用インク2を隔壁13で囲まれた領域に付与するインク付与工程(1d)と、カラーフィルター用インク2から分散媒を除去し、樹脂材料を硬化させることにより固形状の着色部12とする着色部形成工程(1e)とを有している。
【0152】
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(1a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0153】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(1b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(1c)。
【0154】
また、現像処理の前に、塗膜3に対して撥液化処理を行ってもよい。例えば、現像処理の前に、塗膜3に対してフッ素樹脂をスタンプ法などで付与してもよいし、フッ素をプラズマ重合処理で塗膜3(感放射線性組成物)の表面にドープしてもよい。そのような処理をすることで、バンク表面(図中の上面。内壁面を除く部位)のみ撥液化して、後の工程で形成される着色部12の表面の平坦化に寄与する。また、感放射線性組成物のなかに、表面のみに配向するように、比重の軽いフッ素樹脂を添加しておいてもよい。
【0155】
<インク付与工程>
次に、インクジェット方式により、カラーフィルター用インク2を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(1d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色部12に対応する複数種のカラーフィルター用インク2を用いて行う。この際、隔壁13が設けられているため、2種以上のカラーフィルター用インク2が混ざり合うことが確実に防止される。
【0156】
カラーフィルター用インク2の吐出は、図3に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
図3に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101からカラーフィルター用インク2が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)をキャリッジに搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッドとは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッドのそれぞれにカラーフィルター用インク2が圧縮空気によって供給される。
【0157】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、カラーフィルター用インク2を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
【0158】
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッドの相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板11と、液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、カラーフィルター用インク2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0159】
上記のような液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応するカラーフィルター用インク2を、セル14内に付与する。上記のような装置を用いることにより、セル14内に、効率よくかつ選択的にカラーフィルター用インク2を付与することができる。また、上述したように、カラーフィルター用インク2は、優れた吐出安定性を有しており、長期間、液滴吐出を行った場合であっても、飛行曲がりや、液滴の吐出量が不安定化する等の問題が極めて発生しにくいものである。したがって、異なる色の着色部を形成するのに用いられる複数種のインクが混ざり合って(混色して)しまったり、本来同一の着色濃度であることが求められる複数個の着色部の間での着色濃度のばらつきが発生する等の問題を確実に防止することができる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、カラーフィルター用インク2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色のカラーフィルター用インク2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッドは、駆動素子として、ピエゾ素子を用いるものであっても、静電アクチュエータを用いるものであってもよい。また、液滴吐出ヘッドは、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してカラーフィルター用インクを吐出する構成であってもよい。
【0160】
<着色部形成工程(硬化工程)>
次に、セル14内のカラーフィルター用インク2から分散媒(化合物A等)を除去し、樹脂材料を硬化させることにより固形状の着色部12とする(1e)。これにより、カラーフィルター1が得られる。
本工程は、通常、加熱により行う。本工程を加熱により行うことにより、形成される着色部12の基板11に対する密着性を特に優れたものとすることができる。また、形成される着色部12内に分散媒が残存することを確実に防止することができる。その結果、カラーフィルター1の耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター1の生産性も向上する。
【0161】
本工程での加熱温度(加熱された基板11の温度)は、特に限定されないが、100℃以上280℃以下であるのが好ましく、110℃以上250℃以下であるのがより好ましい。これにより、着色部12の構成材料の不本意な劣化・分解等を防止しつつ、樹脂材料の硬化反応を効率よく進行させ、さらに、カラーフィルター用インク2から好適に分散媒を除去できる。
また、本工程での加熱時間は、特に限定されないが、30分以上190分以下であることが好ましく、40分以上130分以下であることがより好ましい。
【0162】
また、本工程は、温度の異なる複数の加熱処理を行ってもよい。具体的には、本工程において、比較的低温で基板11の加熱を行う第1の加熱処理と、第1の加熱処理よりも高い温度で基板11の加熱を行う第2の加熱処理とを施してもよい。
これにより、着色部12の構成材料の不本意な劣化・分解等を防止し、カラーフィルター1の生産性を向上させ、さらに、形成される着色部12に分散媒が残存すること等を効果的に防止することができる。
【0163】
また、本工程において、比較的低温で基板11の加熱を行う第1の加熱処理と、第1の加熱処理よりも高い温度で基板11の加熱を行う第2の加熱処理とを施すことにより、着色部12の表面の平坦性をより高いものとすることができる。
このような場合、第1の加熱処理にて比較的低温で基板11を加熱することにより、カラーフィルター用インク2の対流を防止しつつ、穏やかに分散媒を除去し、カラーフィルター用インク2の表面を平坦なものとした状態で、流動性を消失または低減させることができる。また、比較的低温で加熱することにより、不本意な樹脂材料の硬化反応を防止することができる。
また、第2の加熱処理では、第1の加熱処理では除去できなかった分散媒を完全に除去することができる。また、本工程で、樹脂材料を反応させてカラーフィルター用インク2を硬化させる場合、第1の加熱処理において表面が平坦な状態で固定されたカラーフィルター用インク2を、効率よくその形状で硬化させることができる。
【0164】
上記のように、本工程において第1の加熱処理および第2の加熱処理を施す場合、第1の加熱処理での処理温度(加熱された基板11の温度)は、特に限定されないが、30℃以上100℃以下であるのが好ましく、40℃以上80℃以下であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク2の対流を確実に防止しつつ、カラーフィルター用インク2から好適に分散媒を除去できる。
また、第1の加熱処理の時間は、特に限定されないが、3分以上50分以下であることが好ましく、5分以上40分以下であることがより好ましい。
【0165】
また、第2の加熱処理での処理温度(加熱された基板11の温度)は、特に限定されないが、120℃以上280℃以下であるのが好ましく、150℃以上250℃以下であるのがより好ましい。これにより、第1の加熱処理では除去できなかった分散媒を完全に除去することができる。また、本工程で、樹脂材料(硬化性樹脂材料)を反応させてカラーフィルター用インク2を硬化させる場合、第1の加熱処理において表面が平坦な状態で固定されたカラーフィルター用インク2を、効率よくその形状で硬化させることができる。
また、第2の加熱処理の時間は、特に限定されないが、25分以上150分以下であることが好ましく、30分以上100分以下であることがより好ましい。
【0166】
また、本工程においては、例えば、活性エネルギー線の照射や、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を減圧環境下に置く等の処理を行ってもよい。
活性エネルギー線を照射することにより、樹脂材料の硬化反応を効率よく進行させたり、加熱温度を比較的低いものとした場合であっても、樹脂材料の硬化反応を確実に進行させることができ、基板11等への悪影響の発生がより確実に防止される等の効果が得られる。活性エネルギー線としては、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線、g線、i線、エキシマレーザー等を使用することができる。
【0167】
また、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を減圧環境下に置く(減圧処理を施す)ことにより、分散媒をより効率よく除去することができたり、画素(セル)内での着色部の形状を確実に好ましいものとすることができたり、加熱温度を比較的低いものとした場合であっても、分散媒を確実に除去することができ、基板11、形成される着色部12等への悪影響の発生がより確実に防止される等の効果が得られる。また、加熱処理および減圧処理を併用することにより、より効率よく着色部を形成することができる。
【0168】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図4は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図4中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図4中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
【0169】
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
【0170】
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図4中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図4中下側)から出射する。
【0171】
上述したように、着色部12は、本発明のカラーフィルター用インク2(カラーフィルター用インクセット)を用いて形成されたものであるため、色むら、濃度むらの発生が効果的に防止され、各画素間での特性のばらつきが抑制されたものである。その結果、液晶表示装置60において、各部位での色むら、濃度むら等が抑制された画像を安定的に表示することができる。また、着色部12は、本発明のカラーフィルター用インクを用いて形成されたものであるため、コントラスト比、明度に優れている。
【0172】
《電子機器》
前述したようなカラーフィルター1を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図5は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピューター1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
図6は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0173】
図7は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0174】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリーが設置されている。
【0175】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリーに転送・格納される。
【0176】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリーに格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。
【0177】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、ラップトップ型パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニター類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、従来のカラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターを適用した場合、色むら、濃度むら等の問題を特に生じ易かったが、本発明を適用すれば、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有する電子機器に適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0178】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態においては、各色の着色部に対応するカラーフィルター用インクを、セル内に付与した後に、一括で、セル内の各色のカラーフィルター用インクから分散媒を除去し、樹脂材料を硬化させるもの、すなわち、着色部形成工程(硬化工程)を1回のみ行うものとして説明したが、インク付与工程および着色部形成工程は、各色に対応して、繰り返し行うものであってもよい。
【0179】
また、前述した実施形態では、カラーフィルター用インクセットを構成する各インクが、いずれも顔料を含む場合について代表的に説明したが、C.I.ピグメントグリーン58を含むインク以外のインクは、顔料を含まないものであってもよい。
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。例えば、本発明において、カラーフィルターは、着色部の基板に対向する面とは反対の面側に、着色部を被覆する保護膜が設けられていてもよい。これにより、着色部の損傷や劣化等をより効果的に防止することができる。
【0180】
また、前述した実施形態では、カラーフィルター用インクセットが、光の三原色に対応する3種(3色)のカラーフィルター用インクを備える場合について中心的に説明したが、カラーフィルター用インクセットを構成するカラーフィルター用インクの数、種類(色)は、上述したものに限定されない。例えば、本発明においてカラーフィルター用インクセットは、4種以上のカラーフィルター用インクを備えるものであってもよい。
【実施例】
【0181】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]重合体の合成
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:100重量部を入れて、80℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、単量体成分m1としてのメタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート):60重量部、単量体成分m2としてのメタクリル酸:20重量部、単量体成分m3としてのステアリルメタクリレート:20重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:30重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。一方、ラジカル開始剤(重合開始剤)としてのアゾビスジメチルバレロニトリル:5重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:90重量部に溶解させた溶液を、別の滴下ポンプを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。重合開始剤の滴下が終了した後、4時間同温度に保持(熟成)し、その後、室温まで冷却して、単量体成分m1、m2、m3を含み上記式(8)で表される重合体Mとしての重合体M1を得た。
(合成例2〜8)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)および単量体成分の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、7種の重合体M(重合体M2〜M8)が得られた。
【0182】
(合成例9)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(11)で表される単量体成分(化合物)x1:180重量部、上記式(12)で表される単量体成分(化合物)x2:90重量部、上記式(13)で表される単量体成分(化合物)x3:15重量部、上記式(14)で表される単量体成分(化合物)x4:15重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分x1、x2、x3、x4を含み上記式(19)で表される重合体Xとしての重合体X1を得た。
(合成例10〜16)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例9と同様の操作を行った。その結果、7種の重合体X(重合体X2〜X8)が得られた。
【0183】
(合成例17)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(溶剤)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(15)で表される単量体成分(化合物)y1:200重量部、上記式(16)で表される単量体成分(化合物)y2:100重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、単量体成分y1、y2を含み上記式(20)で表される重合体Yとしての重合体Y1を得た。
(合成例18、19)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類、各成分の比率を調整し、重合体の組成を表1に示すように変更した以外は、前記合成例17と同様の操作を行った。その結果、2種の重合体Y(重合体Y2、Y3)が得られた。
【0184】
表1には、合成例1〜19で合成した各重合体を構成する各単量体成分の比率、各重合体の重量平均分子量Mwをまとめて示した。表中、メタクリル酸2−[O−(1′−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(=2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート)を「m1a」で示し、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチルを「m1b」で示し、アクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチルを「m1c」で示し、メタクリル酸を「m2a」で示し、アクリル酸を「m2b」で示し、ステアリルメタクリレートを「m3a」で示し、ベヘニルメタクリレートを「m3b」で示し、パルミチルアクリレートを「m3c」で示し、リグノセリルメタクリレートを「m3d」で示し、メタクリル酸メチルを「m4a」で示し、アクリル酸エチルを「m4b」で示し、アクリル酸ペンチルを「m4c」で示し、スチレンを「m5」で示し、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを「m6」で示し、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルアクリレートと3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレートの混合物を「m7」で示した。なお、上記のようにして合成した重合体は、いずれも、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1以上3以下の範囲内であった。
【0185】
【表1】

【0186】
[2]カラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)の調製
(実施例1)
分散剤としてのディスパービック166と、重合体M1と、重合体M1を溶解する溶媒(カラーフィルター用インクにおける分散媒の構成成分)として機能するジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートと、下記式(36)で示される化合物Aとを、攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより、重合体M1が溶媒に溶解した重合体M溶液を得た(重合体M溶液調製工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0187】
【化32】

【0188】
次に、以下に述べるようにして、重合体M溶液調製工程で得られた重合体M溶液に、顔料を添加し、攪拌機(ビーズミル)を用いて、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた重合体M溶液に、顔料を添加し、10分間攪拌を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、C.I.ピグメントグリーン58の粉末と、上記式(34)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体(副顔料)の粉末と、C.I.ピグメントイエロー150との混合物を用いた。また、このとき、重合体M溶液と顔料との混合物中における顔料の含有率が16wt%となるように、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートおよび化合物Aで希釈した。
【0189】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、ビーズミル(攪拌機)が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、このとき、得られる顔料分散体中における顔料の含有率が13wt%となるように、化合物Aで希釈した。
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、顔料分散体を得た。
【0190】
次に、上記のようにして得られた顔料分散体に、重合体X1、重合体Y1、レベリング剤(サーフィノールDF58、日信化学工業(株)社製))、酸化防止剤(TINUVIN 152、チバジャパン株式会社製)および、分散媒としての化合物A、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルを加え、混合した(希釈工程)。本工程は、上記の各材料を内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。これにより、目的とする緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)を得た。
また、顔料の種類、各成分の使用量を変更した以外は、前記緑色のカラーフィルター用インクと同様にして、赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるカラーフィルター用インクセットが得られた。
【0191】
(実施例2〜11)
カラーフィルター用インクの調製に用いる材料の種類・使用量を表2、表3に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)を調製した。
(比較例1、2)
カラーフィルター用インクの調製に用いる材料の種類・使用量を表3に示すように変更した以外は、前記実施例と同様にしてカラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)を調製した。
【0192】
前記各実施例および各比較例でのカラーフィルター用インクの構成成分の種類、含有量を表2、表3にまとめて示した。なお、表中、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、上記式(34)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基が1個)で構成された粉末を「SPD1」、下記式(35)で表される顔料誘導体(分子内のスルホ基が2個)で構成された粉末を「SPD2」、C.I.ピグメントレッド177を「PR177」、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントレッド177と式(30)で表される顔料誘導体との混合物を「PR177D」、C.I.ピグメントレッド254と式(31)で表される顔料誘導体との混合物を「PR254D」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、C.I.ピグメントバイオレット23を「PV23」、ディスパービック111(酸価:50KOHmg/g)を「DA1」、ディスパービック166(アミン価:115KOHmg/g)を「DA2」、ヒノアクトT8000Eを「DA3」、酸化防止剤(TINUVIN 152、チバジャパン株式会社製)を「T152」、レベリング剤(サーフィノールDF58、日信化学工業(株)社製))を「DF58」、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「S1」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「S2」、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートを「S3」、ビス(2−ブトキシエチル)エーテルを「S4」、オクタン酸エチルを「S5」、ジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S6」、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルを「S7」、3−エトキシプロピオン酸エチルを「S8」、メチルプロピレントリグリコールを「S9」、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルを「S10」、ジエチレングリコールジメチルエーテルを「S11」、ジエチレングリコールジエチルエーテルを「S12」エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「S13」、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを「S14」、3−メトキシブチルアセテートを「S15」で示した。
【0193】
また、前記各実施例で用いた、C.I.ピグメントレッド177と式(30)で表される顔料誘導体との混合物中における式(30)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1wt%以上10wt%以下であった。また、前記各実施例で用いた、C.I.ピグメントレッド254と式(31)で表される顔料誘導体との混合物中における式(31)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1wt%以上10wt%以下であった。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例のカラーフィルター用インクの25℃における粘度は、いずれも、5mPa・s以上11mPa・s以下の範囲内の値であった。
【0194】
【化33】

【0195】
【表2】

【0196】
【表3】

【0197】
[3]カラーフィルター用インクの保存安定性評価(長期安定性評価)
前記各実施例および各比較例の緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)について、50℃の環境下に、70日間放置した後、目視による観察を行い、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:加熱前からの変化が全く認められない。
B:顔料粒子の凝集・沈降がほとんど認められない。
C:顔料粒子の凝集・沈降がわずかに認められる。
D:顔料粒子の凝集・沈降がはっきりと認められる。
E:顔料粒子の凝集・沈降が顕著に認められる。
【0198】
[4]液滴吐出の安定性評価(吐出安定性評価)
前記各実施例および各比較例で得られた緑色のカラーフィルター用インク(製造直後のカラーフィルター用インク)、および、50℃の環境下に28日間放置した緑色のカラーフィルター用インク(加熱環境下に放置したカラーフィルター用インク)を用いて、下記に示すような試験による評価を行った。
【0199】
[4.1]着弾位置精度評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インクセットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、40%RHの環境下で、緑色のカラーフィルター用インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、3000000発(3000000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された3000000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
【0200】
A:ズレ量dの平均値が0.5μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.5μm以上1μm未満。
C:ズレ量dの平均値が1μm以上3μm未満。
D:ズレ量dの平均値が3μm以上5μm未満。
E:ズレ量dの平均値が5μm以上。
【0201】
[4.2]液滴吐出量の安定性評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インクセットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、40%RHの環境下で、緑色のカラーフィルター用インクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、3000000発(3000000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの左右両端の指定の2つのノズルについて、吐出された液滴の総重量を求め、上記2つのノズルから吐出された液滴の平均吐出量の差の絶対値ΔW[ng]を求めた。このΔWの、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(ΔW/W)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。ΔW/Wの値が小さいほど、液滴吐出量の安定性に優れていると言える。
【0202】
A:ΔW/Wの値が、0.026未満。
B:ΔW/Wの値が、0.026以上0.270未満。
C:ΔW/Wの値が、0.270以上0.470未満。
D:ΔW/Wの値が、0.470以上0.790未満。
E:ΔW/Wの値が、0.790以上。
【0203】
[5]カラーフィルターの製造
前記各実施例および各比較例で得られたカラーフィルター用インク(製造直後のカラーフィルター用インク)、および、55℃の環境下に28日間放置したカラーフィルター用インク(加熱環境下に放置したカラーフィルター用インク)を用いて、以下のようにして、カラーフィルターを製造した。
【0204】
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
【0205】
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、CFとHeガスとを1:9(体積比)で混合したガスを導入した大気圧プラズマ重合装置で、出力600W、プラズマ発生装置からテーブルまでの距離:0.5mm、処理テーブル速度:5mm/sという条件で、プリベーク処理、ポストエキスポジャーベーク処理の施された塗膜の表面だけにフッ素をドーピングした。その後、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cmという条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:150℃、加熱時間:5分という条件で行った。形成された隔壁の厚さは、2.0μmであった。
【0206】
次に、図3に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、カラーフィルター用インクを吐出した。この際、3色のカラーフィルター用インクを用い、各色のカラーフィルター用インクが混色しないようにした。各セル内には、形成される着色部の平均厚さが2.0μmとなるような量のカラーフィルター用インクを付与した。
【0207】
その後、ホットプレート上にて80℃で20分間の加熱処理を施した(第1の加熱処理)。さらに230℃のオーブン内で60分加熱処理を施すことにより(第2の加熱処理)、3色(赤色(R)、緑色(G)、青色(B))の着色部が形成された。その後、N−メチル−2−ピロリドンおよびγ−ブチロラクトンを用いた洗浄を行い、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(それぞれ、製造直後のカラーフィルター用インクおよび加熱環境下に放置したカラーフィルター用インク)を用いて、それぞれ、8000枚のカラーフィルターを製造した。
【0208】
[6]カラーフィルターの評価
上記のようにして得られた各カラーフィルターを用いて、以下のような評価を行った。
[6.1]着色部の平坦性
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、6000枚目に製造されたカラーフィルターを用意した。
これらのカラーフィルターについて、触針式粗さ計(Tencor社製、P−15)を用いて、緑色の着色部の最大高さと最小高さとの差ΔDを求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0209】
A:ΔDが0.14μm未満。
B:ΔDが0.14μm以上0.23μm未満。
C:ΔDが0.23μm以上0.40μm未満。
D:ΔDが0.40μm以上0.50μm未満。
E:ΔDが0.50μm以上。
【0210】
[6.2]コントラスト比の評価
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、8000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図4に示すような液晶表示装置を製造した。
これらの液晶表示装置を用いて、緑色の単色表示を行い、コントラストテスター(壺坂電機社製、CT−1)を用いて、表示を行っていない場合と比較してのコントラスト比(CR)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0211】
A:CRが3900以上。
B:CRが3600以上3900未満。
C:CRが3300以上3600未満。
D:CRが2900以上3300未満。
E:CRが2900未満。
【0212】
[6.3]明度の評価
前記[6.2]で製造した前記各実施例および各比較例の液晶表示装置について、下記に示すような評価を行った。液晶表示装置について、緑色の単色表示を行い、色度計(ミノルタ社製、CM−3700d、光源としてC光源使用)を用いて、xyY表色法による三刺激値を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0213】
A:明度Yが63.3以上。
B:明度Yが61.3以上63.3未満。
C:明度Yが59.3以上61.3未満。
D:明度Yが57.8以上59.3未満。
E:明度Yが57.8未満。
【0214】
[6.4]色むら、濃度むら
前記[6.2]で製造した前記各実施例および各比較例の液晶表示装置について、暗室で、緑色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むら(光漏れによるものを含む)の発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:色むら、濃度むらが全く認められない。
B:色むら、濃度むらがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むらがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むらがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むらが顕著に認められる。
【0215】
[6.6]個体間での特性差
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、1〜20枚目、および、7980〜7999枚目に製造されたカラーフィルターを用意し、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて測色した。その結果から、各実施例および各比較例について、それぞれ、1〜20枚目、7980〜7999枚目に製造されたカラーフィルター(合計40枚のカラーフィルター)で最大となる色差(Lab表示系での色差ΔE)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0216】
A:色差(ΔE)が1.3未満。
B:色差(ΔE)が1.3以上2.3未満。
C:色差(ΔE)が2.3以上3.3未満。
D:色差(ΔE)が3.3以上4.3未満。
E:色差(ΔE)が4.3以上。
【0217】
[6.7]耐久性試験
前記各実施例および各比較例のカラーフィルター用インク(カラーフィルター用インクセット)を用いて製造されたカラーフィルターのうち、それぞれ、7001〜7010枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図4に示すような液晶表示装置を製造した。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、緑色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、光漏れ(白抜け、輝点)が発生していないことを確認した。
【0218】
次に、上記の液晶表示装置からカラーフィルターを取り外した。
取り外した各カラーフィルターを、20℃の環境下に1.5時間、次いで、75℃の環境下に2.5時間、次いで、20℃の環境下に1.5時間、次いで、−15℃の環境下に2.5時間静置した。その後、再び、環境温度を20℃に戻し、これを1サイクル(8時間)とし、このサイクルを合計30回繰り返した(合計240時間)。
その後、これらのカラーフィルターを用いて、再び、図4に示すような液晶表示装置を組み立てた。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、緑色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、光漏れ(白抜け、輝点)の発生状況を、以下の6段階の基準に従い、評価した。
【0219】
A:光漏れ(白抜け、輝点)の発生したカラーフィルターはない。
B:1〜2枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
C:3〜4枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
D:5〜7枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
E:8〜9枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
F:10枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
【0220】
これらの結果を表4に示す。なお、表中、製造直後のカラーフィルター用インクを「加熱前」と示し、55℃の環境下に28日間放置したカラーフィルター用インク(加熱環境下に放置したカラーフィルター用インク)を「加熱後」と示した。
【0221】
【表4】

【0222】
表4から明らかなように、本発明では、優れた結果が得られたのに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
【符号の説明】
【0223】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁(バンク、遮光部) 14…セル 2…カラーフィルター用インク 3…塗膜 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板(対向基板) 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置(移動手段) 106…ステージ 108…第2位置制御装置(移動手段) 110…チューブ 112…制御手段 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピューター 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッターボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニター 1440…パーソナルコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクであって、
顔料としてのC.I.ピグメントグリーン58と、樹脂材料と、下記式(10)で示される化合物Aとを含むことを特徴とするカラーフィルター用インク。
【化1】

【請求項2】
カラーフィルター用インク中における前記化合物Aの含有率は、2.5wt%以上である請求項1に記載のカラーフィルター用インク。
【請求項3】
カラーフィルター用インクは、前記化合物Aに加え、さらに、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテートおよび1,3−ブチレングリコールジアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである請求項1または2に記載のカラーフィルター用インク。
【請求項4】
カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(1)で表される単量体成分m1とカルボキシル基または酸無水物基を有する単量体成分m2と下記式(3)で表される単量体成分m3とを含む重合体Mを含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【化2】

【化3】

【請求項5】
カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(11)で表される単量体成分x1と下記式(13)で表される単量体成分x3と下記式(14)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xを含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【化4】

【化5】

【化6】

【請求項6】
カラーフィルター用インクは、前記樹脂材料として、下記式(15)で表される単量体成分y1を含む重合体Yを含むものである請求項1ないし5のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【化7】

【請求項7】
カラーフィルター用インク中における前記C.I.ピグメントグリーン58の含有率をCPG[wt%]、カラーフィルター用インク中における前記化合物Aの含有率をC[wt%]としたとき、0.25≦C/CPG≦10の関係を満足する請求項1ないし6のいずれかに記載のカラーフィルター用インク。
【請求項8】
カラーフィルターの製造に用いられるインクを複数種備えたカラーフィルター用インクセットであって、
カラーフィルター用インクセットを構成する複数種の前記インクのうち少なくとも1種が、請求項1ないし7のいずれかに記載のカラーフィルター用インクであることを特徴とするカラーフィルター用インクセット。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載のカラーフィルター用インクを用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項10】
請求項8に記載のカラーフィルター用インクセットを用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項11】
請求項9または10に記載のカラーフィルターを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−227419(P2011−227419A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99530(P2010−99530)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】