説明

カラーフィルター用顔料分散物およびそれを含有するカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物

【課題】顔料分散性、流動性、分散安定性に優れる新規なカラーフィルター用顔料分散物、および、該カラーフィルター用顔料分散物を使用することにより、塗工適性、現像特性に優れたカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を提供すること。
【解決手段】(1)顔料、顔料分散剤および有機溶剤を含有するカラーフィルター用顔料分散物において、顔料分散剤が、下記条件1を満足する化合物であるカラーフィルター用顔料分散物。条件1:イソシアネート化合物のイソシアネート基と、活性水素基、カルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させた化合物で、イソシアネート化合物に由来するイソシアネート基、もしくはそのイソシアネート基と活性水素基との反応により形成されたウレタン結合および尿素結合の合計に対するカルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数が15〜85%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置等に用いられるカラーフィルターやブラックマトリックスの製造を可能にするカラーフィルター用顔料分散物およびそれを含有するカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、構造上、軽量で消費電力を抑えることができる等の優れた特徴を有する。さらに、近年、高い技術開発力が加わって、高輝度で高精細、高コントラストといった画質面での向上も継続して図られている。その結果、小画面から大画面までのいろいろな分野で常に安定した性能を発揮できるという点で、性能のトータルバランスの高さが認められ、それが用途拡大につながっている。
【0003】
しかし、既存のPDPとの競合や有機ELを用いた画像表示装置の実用化も視野に入れた中で、カラー液晶表示装置の普及をさらに拡大させていくためには、克服しなければならない技術的課題も数多く存在する。
【0004】
たとえば、このような課題の一つにさらなる色再現性の向上がある。そして、色再現性向上のために、基本的にディスプレイ上に表示されるRGBの各色画素自体において、高い色純度とコントラストが求められる。
【0005】
カラー液晶表示装置において、最初にバックライト等の光源から発せられる光は白色光であり、RGBの各色の画素に相当する部分ごとに、液晶のシャッター作用によって光量を制御した後、RGBの着色皮膜が設けられたカラーフィルターを透過させることにより、着色して、ディスプレイ上に各色の画素を表示する。したがって、このような白色光を、カラーフィルター(着色皮膜)で着色する方法で、着色光の色純度を高くするためには、カラーフィルターで設けられている着色皮膜自体の色純度が高いことが不可欠である。また、上記の着色皮膜中に粗い粒子が存在する場合、透過する光の偏光性が乱れて(消偏性)、結果的にコントラストが低下する。したがって、着色皮膜中に粗粒子を含まないことが必要となる。
【0006】
最近、着色皮膜の色材として顔料が利用されている。そこで、色純度にかかわる発色性(彩度)や透明性(明度)等のファクターを向上させるためにも、また、消偏性を抑えるためにも、顔料をより微細に分散しなければならない。
【0007】
さらに、カラーフィルターにおいて、上記の着色皮膜が重なるとにじみにより色純度が低下し、隙間があると光の漏れによりコントラストが低下する。そこで、それらを防止するために、着色皮膜の間の遮光のためにブラックマトリックスが設けられる。したがって、ブラックマトリックスの形成性といった性能も、色再現性の向上に大きく影響することになる。
【0008】
ブラックマトリックスは、遮光性の被膜を格子状または帯状に形成したものである。遮光性の被膜はできるだけ薄く、その幅は細く(細線ともいう)、また、皮膜のエッジはシャープで直線性が高いことが要求される。最近、カーボンブラック等の黒色顔料を遮光材料とした塗工剤がブラックマトリックスの形成に利用されている。ブラックマトリックス形成用塗工剤において、薄膜で高い遮光性を維持するためには、遮光材料の含有濃度を高くする事が必要となる。また、このような塗工剤は、紫外線等で硬化するタイプであり、未硬化部分を除去する現像工程を経て細線のブラックマトリックスが形成される。そこで、細線やエッジがシャープで直線性が高いというような皮膜の形成性を高くするためには、硬化部分が確実に残り、未硬化部分が確実に除去できる現像適性も良好でなければならない。
【0009】
しかしながら、顔料を塗工剤中に分散させた場合、顔料の表面積の増大に伴って再凝集が起こりやすく、分散安定性が低下する傾向がある。これは、RGB着色顔料にしても、黒色顔料でも同じである。そして、上記で要求される、顔料粒子の微細化や高濃度化は表面積の増大につながることから、顔料の分散安定性が低下するという問題を解決しなければならない。
【0010】
加えて、顔料を高い濃度で含む塗工剤、特に遮光材料として比表面積の大きなカーボンブラックを利用するブラックマトリックス形成用塗工剤は、塗工適性や現像特性が低下する傾向があり、その対策も必要である。
【0011】
これらの問題を解決するために、塗工剤中の分散媒体と顔料表面との濡れ(親和性)を向上させる方法があり、その手段として種々の顔料分散剤の検討が行なわれている。
【0012】
たとえば、塩基性官能基を有するポリエステルまたはポリエーテルからなる高分子分散剤の使用(例えば、特許文献1参照)、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドから誘導される共重合体30〜70重量%と塩基性官能基とを含有する重量平均分子量5,000〜40,000の高分子分散剤の使用(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−082908号公報
【特許文献2】特開平10−246812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1、2の技術により、顔料分散性や分散安定性や流動性はある程度改善される。しかし、完全に改善されたわけでは決してなく、限界があった。また、塗工適性、現像特性も未だ改善の余地を有するものであった。
【0015】
本発明の課題は、顔料分散性、流動性、分散安定性に優れる新規なカラーフィルター用顔料分散物、および、該カラーフィルター用顔料分散物を使用することにより、塗工適性、現像特性に優れたカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、顔料を分散させる顔料分散剤として、イソシアヌレート環と、カルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有するポリウレタン系分散剤を使用することを特徴とする。とりわけ、分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物と、分子内に活性水素基を有し、さらにカルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有する化合物とを、特定量反応させたものを使用するとより効果が優れている。
【0017】
すなわち、本発明は、(1)顔料、顔料分散剤および有機溶剤を含有するカラーフィルター用顔料分散物において、前記顔料分散剤が、下記条件1を満足する化合物であることを特徴とするカラーフィルター用顔料分散物に関する。
【0018】
条件1:分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、さらにカルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物であって、得られた化合物の分子内の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基、もしくはそのイソシアネート基と活性水素基との反応により形成されたウレタン結合および尿素結合の3つの数の合計に対して、カルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数は15〜85%である。
【0019】
また、本発明は、(2)さらに、顔料分散助剤を含有する上記(1)項または(2)項に記載のカラーフィルター用顔料分散物に関する。
【0020】
また、本発明は、(3)上記(1)項〜(2)項のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散物を含有することを特徴とするカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のカラーフィルター用顔料分散物は、優れた顔料分散性、流動性、分散安定性を有している。また、この顔料分散物を含むカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物は、塗工適性、現像特性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のカラーフィルター用顔料分散物(以下、「顔料分散物」ともいう)についてさらに詳細に説明する。
【0023】
本発明の顔料分散物は、顔料、顔料分散剤として、イソシアヌレート環と、カルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格とを有するポリウレタン系分散剤、および有機溶剤を含むものであり、以下、まずその構成材料について説明する。
【0024】
<顔料分散物の構成材料>
(顔料)
本発明における顔料(赤色、緑色、青色、黒色等の着色画像に適した顔料)としては、鮮明な色相と高い堅牢度を有する、C.I.ピグメントレッド19、38、43、88、122、123、144、149、166、168、177、178、179、188、190、207、208、209、216、224、226、242、254、264等の赤色系顔料;C.I.ピグメントブルー15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、29、60、64等の青色系顔料;C.I.ピグメントグリーン7、10、36等の緑色系顔料;C.I.ピグメントイエロー24、81、83、93、95、97、108、109、110、117、123、128、137、138、139、150、153、154、166、168、180、185等の黄色系顔料;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、31、37、88等の紫色系顔料;C.I.ピグメントオレンジ31、38、40、43、61、71等の橙色系顔料;カーボンブラック等の黒色系顔料等が使用できる。
【0025】
本発明において、赤色系着色顔料、緑色系着色顔料、青色系着色顔料を得るには、単一の顔料を用いてもよいし、他の顔料を混合して用いてもよい。例えば、赤色系着色画像を得るには、単一の赤色顔料を用いてもよいし、赤色顔料に黄色顔料、橙色顔料等を混合して調色したものを用いてもよい。また、緑色系着色画像を得るには、単一の緑色顔料を用いてもよいし、緑色顔料に黄色顔料等を混合して調色したものを用いてもよく、青色系着色画像を得るには、単一の青色顔料を用いてもよいし、青色顔料に紫色顔料等を混合して調色したものを用いてもよい。
【0026】
なお、顔料分散組成物としてより鮮明な色相を得るには、また、後述する顔料分散レジスト組成物の透過性とコントラスト比を高くするために、従来公知の方法で、前記顔料をプレミックス処理、ソルトミリング処理等による微粒子化処理して使用することが好ましい。とりわけ、ニーダーや3本の攪拌ブレードをそれぞれ自動運動させながら公転運動させる混練装置などを用いて、顔料を無機塩で磨砕して、顔料の一次粒子径をさらに微細になるようにソルトミリング処理したものがより好ましい。本発明において、前記顔料の使用量は、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物中に好ましくは1〜40質量%である。
【0027】
(顔料分散剤)
上記顔料分散剤としては、分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物と、分子内に活性水素基を有し、さらにカルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有する化合物を反応させて得られた化合物であり、かつ、得られた化合物の分子内の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基、もしくはそのイソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合および尿素結合の3つの数の合計に対して、カルバゾール環とアゾベンゼン骨格との数が15〜85%である顔料分散剤を使用するものである。
【0028】
なお、本発明の前記分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物としては、下記構造式のものを例示することができる。しかしながら、本発明の分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物は、下記構造式になんら限定されるものではない、たとえばイソシアネート基の数、位置については、下記構造式では、イソシアネート基が3〜6のものを例示しているが、適宜異なる数、位置のものを使用することもできる。
【0029】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0030】
また、前記分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、さらにカルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物としては、下記構造式のものを例示することができるが、適宜他のものも使用することもできる。
【0031】
【化5】

【化6】

【化7】

【0032】
ここで、「イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基」とは、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物を合成するために利用されたポリイソシアネート化合物のイソシアネート基である。また、「そのイソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合および尿素結合」とは、全ての段階において当該イソシアネート基と活性水素基とが反応して生じたウレタン結合および尿素結合が含まれる。
【0033】
ちなみに、上記イソシアネート基に、イソシアネート基と反応可能な活性水素基を有し、さらにポリウレタン分子鎖を有する化合物を反応させた場合、および、イソシアネート基と反応可能な活性水素基を有し、さらにポリ尿素分子鎖を有する化合物を反応させた場合、並びに、最終的にそれと同じ構造となる分子鎖を有する場合でも、当該イソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合または尿素結合の数はいずれも当然1つである。このような顔料分散剤を使用することにより、分散媒体と顔料表面との親和性が高められるため、顔料分散性、流動性、分散安定性に優れた顔料分散物を得ることができる。そしてこの顔料分散物をブラックマトリックスやカラーフィルターに用いた場合、優れた塗工適性、現像適性が得られる。
【0034】
上記ジイソシアネート化合物しては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4−4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0035】
これらのジイソシアネート化合物を元に、分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物を合成するには、既知の方法が利用できる。その一例として、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤などの単独または混合溶剤中に、ジイソシアネート化合物を仕込み、必要に応じて、イソシアヌレート化触媒、助触媒の存在下、好ましくは30〜100℃の反応温度で反応させてイソシアヌレート化し、分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物を合成することができる。なお、イソシアヌレート環の形成やイソシアネート基の数については、滴定、屈折率、粘度、IR測定等により行うことができる。
【0036】
上記分子内に活性水素基とカルバゾール環を有する化合物としては、イソシアネート基と反応可能な活性水素基(アミノ基、水酸基、カルボキシル基等)を有し、さらにカルバゾール環を有する化合物であればその種類は特に限定されず、例えば3−アミノカルバゾール、2−アミノカルバゾール、3−アミノ−N−9−エチルカルバゾール等が挙げられる。
【0037】
また上記分子内に活性水素基とアゾベンゼン骨格を有する化合物としては、イソシアネート基と反応可能な活性水素基(アミノ基、水酸基、カルボキシル基等)を有し、さらにアゾベンゼン骨格を有する化合物であればその種類は特に限定されず、例えば3−アミノアゾベンゼン、4−アミノアゾベンゼン等が挙げられる。
【0038】
そして、上記の条件に合致するように、分子内にイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物と、分子内に活性水素基を有し、さらにカルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有する化合物を反応させた顔料分散剤を利用することにより、本発明の効果を良好に得ることができる。
【0039】
また、上記顔料分散剤は、前記カルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有する化合物以外に、片末端にイソシアネート基と反応する活性水素基(アミノ基、水酸基、カルボキシル基等)を有するポリエステルやポリエーテル等を反応させてもかまわない。
【0040】
上記顔料分散剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、化合物自身の製造の容易性の面からすると、アゾベンゼン骨格を有する化合物の方がカルバゾール環を含む化合物より有利と言える。
【0041】
本発明の顔料分散物において、上記ポリウレタン系分散剤の使用量は、使用する全顔料100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは1〜60質量部である。ポリウレタン系分散剤の使用量が1質量部未満では、顔料分散性が低下する場合がある。一方、200質量部を超える場合は、現像性が低下する等のおそれがある。
【0042】
(有機溶剤)
本発明の顔料分散物で使用する有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル系有機溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、δ−ブチロラクトン等のケトン系有機溶剤;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、蟻酸n−アミル等のエステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の含窒素系有機溶剤等を例示できる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
(顔料分散助剤)
さらに、本発明においては、顔料分散性、保存中の分散安定性や流動性を向上させるために顔料分散助剤を併用することが好ましい。
【0044】
上記顔料分散助剤としては、フタロシアニン系誘導体、アントラキノン系誘導体、ジケトピロロピロール系誘導体、ジアントラキノニル系誘導体、ジオキサジン系誘導体、ベンズイダゾロン系誘導体、キナクリドン系誘導体等を使用することができる。顔料分散助剤は、顔料の種類に応じて適宜選択し単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の顔料分散物において、上記顔料分散助剤の使用量は、全顔料に対して、通常30質量%以下、好ましくは0.1〜20質量%である。顔料分散助剤の使用量が前記範囲を越えても、顔料分散効果がそれ以上向上されない傾向にある。
【0046】
<顔料分散物の製造方法>
以上の材料を用いて顔料分散物を製造する方法の例を説明する。
【0047】
本発明の顔料分散物を製造するには、従来公知の製法を用いることができ、例えば、以下の製法により製造することができる。
【0048】
まず、顔料、顔料分散剤、有機溶剤、必要に応じて顔料分散助剤からなる混合物を得る。得られた混合物を、ロールミル、ニーダー、高速攪拌装置ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、高圧分散機等の各種分散機を用いて、混練し、分散処理し、顔料分散物を得る。
【0049】
なお、本発明の顔料分散物には、予めバインダー樹脂(アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物等)を含有させておくこともできる。
【0050】
<カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物>
次に、上記カラーフィルター用顔料分散物を含有するカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物についてさらに詳細に説明する。
【0051】
上記カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物は、活性エネルギー線硬化性を有し、アルカリ現像可能なレジスト組成物である。そして、上記顔料分散物に加えて、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、必要に応じて、有機溶剤、熱重合禁止剤、基板との密着性を向上させるためのシランカップリング剤やチタネートカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜含有させたものである。
【0052】
本発明のブラックマトリックスに使用するカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物をブラックマトリックス用途で使用するときに、組成物中の顔料の使用量は、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の全固形分に対して質量分率で、使用する顔料の合計量で好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲である。
【0053】
また、カラーフィルターの各色画素形成の用途で使用するときに、組成物中の有機顔料の使用量は、カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の全固形分に対して質量分率で、使用する有機顔料の合計量で好ましくは5〜80質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲である。
【0054】
上記カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物において、顔料分散剤の使用量は、有機顔料100質量部に対して、通常1〜200質量部、好ましくは1〜60質量部である。1質量部未満では、顔料分散性が低下する場合がある。一方、200質量部を超える場合は、現像性が低下するおそれがある。
【0055】
上記カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物において、顔料分散助剤の使用量は、着色顔料に対して、通常30質量%以下、好ましくは0.1〜20質量%である。30質量%を超えても、顔料分散効果がそれ以上向上されない傾向にある。
【0056】
(アルカリ可溶性樹脂)
次に、現像特性の付与などの目的で、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を構成するアルカリ可溶性樹脂としては、カラーフィルターを製造する際に、その現像処理工程において用いられる現像液、特に好ましくはアルカリ現像液に対して可溶性を有するものであれば、特に限定されるものではない。なかでも、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体が好ましい。
【0057】
具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、当該カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なスチレン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、グリセロールメタクリレート、N−フェニルマレイミド、ポリスチレンマクロモノマーおよびポリメチルメタクリレートマクロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和単量体との共重合体を挙げることができる。
【0058】
上記共重合体の酸価としては、50〜300mgKOH/gが好ましい。この場合、酸価が50mgKOH/g未満では、レジスト組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が低下する傾向がある。一方300mgKOH/gを超えると、アルカリ現像液に対する溶解性が過大となり、アルカリ現像液により現像する際に、着色層の基板からの脱落や着色層表面の膜荒れを来たしやすくなる傾向がある。
【0059】
なお、本発明における酸価は理論酸価であり、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体とその使用量に基づいて算術的に求めた値をいう。
【0060】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、通常1,000〜100,000が好ましい。アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が1,000未満では、アルカリ現像剤に対する溶解性が上がり過ぎて、せっかく硬化したレジスト皮膜が溶出する場合がある。
【0061】
一方100,000を超える場合は、有機溶剤への溶解性が低下し、レジスト皮膜の未硬化部分の基板上または遮光層上に地汚れや膜残りが発生し、また、レジスト組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0062】
上記カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物において、上記アルカリ可溶性樹脂の使用量は、使用する全顔料100質量部に対して、通常10〜1,000質量部、好ましくは20〜500質量部である。アルカリ可溶性樹脂の使用量が10質量部未満では、例えば、アルカリ現像性が低下したり、未露光部の基板上または遮光層上に地汚れや膜残りが発生するおそれがある。一方1,000質量部を超えると、相対的に顔料の濃度が低下するため、薄膜にしたときに目的とする色濃度を達成することが困難となるおそれがある。
【0063】
(光重合性化合物)
次に、露光部で硬化皮膜を形成させるために、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を構成する光重合性化合物について説明する。
【0064】
上記光重合性化合物としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する単量体、オリゴマー等を挙げることができる。
【0065】
光重合性不飽和結合を分子内に1個有する単量体としては、メチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレートまたはアクリレート;ブトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキルメタクリレートまたはアクリレート;N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルメタクリレートまたはアクリレート;ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;ヘキサエチレングリコールフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステル;イソボニルメタクリレートまたはアクリレート;グリセロールメタクリレートまたはアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたはアクリレート等が例示できる。
【0066】
また、光重合性不飽和結合を分子内に2個以上有する単量体としては、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスルトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスルトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
本発明において、上記光重合性化合物の使用量は、上記カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物中の全固形分に対して質量分率で、好ましくは3〜50質量%の範囲である。
【0068】
(光重合開始剤)
次に、光重合性を重合させるために、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を構成する光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0069】
本発明において、上記光重合開始剤の使用量は、上記カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物中の全固形分に対して質量分率で、好ましくは1〜20質量%の範囲である。
【0070】
(有機溶剤)
次に、適度な濃度への希釈や流動性を向上させるために、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を構成する有機溶剤としては、上記に挙げたカラーフィルター用顔料分散物と同様のもので、好ましくは、常圧(1.013×102kPa)における沸点が100〜220℃のエステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素溶剤および含窒素系有機溶剤等である。
【0071】
これら有機溶剤として、具体的には、上記の有機溶剤と同様のものが挙げられる。これらの有機溶剤の中でも、溶解性、分散性、塗布性等より、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、蟻酸n−アミル等が好ましく、さらに好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0072】
さらに、これらの有機溶剤は、上記アルカリ可溶性樹脂の溶解性、顔料分散性、塗布性等より、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物に使用される全有機溶媒中50質量%以上、さらには、70質量%以上含有させることが好ましい。
【0073】
なお、沸点が220℃を超える有機溶剤を多量に含有していると、塗布形成された塗膜をプレベークする際に有機溶剤が充分に蒸発せずに乾燥塗膜内に残存し、乾燥塗膜の耐熱性が低下するおそれがある。また、沸点100℃未満の有機溶剤を多量に含有していると、ムラなく均一に塗布することが困難になり、表面平滑性に優れた塗膜が得られなくなるおそれがある。
【0074】
(その他添加剤)
本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物には、必要に応じて、他の光重合性化合物、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜使用することができる。
【0075】
<カラーフィルター用顔料分散レジスト組成物の製造方法>
以上の構成材料を用いて本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を製造する方法を説明する。これは好ましい実施形態の一例であり、本発明ではこれに限定されるものではない。
【0076】
先に記載した構成材料から、本発明のカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物を製造するためには、上記の方法により得られた顔料分散物に、上記光重合性化合物、光重合開始剤、アルカリ可溶性樹脂、必要に応じて有機溶剤、その他添加剤を加え、攪拌装置等を用いて攪拌混合する方法が利用できる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0078】
〔カラーフィルター用黒色顔料分散物、カラーフィルター用黒色顔料分散レジスト組成物〕
<顔料分散剤>
<分散剤1>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量2000のポリカプロラクトン220部、片末端に水酸基を有する分子量1000のポリエチレングリコール(商品名:ユニオックスM−1000 日油(株)製)54.6部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)179.1部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで3−アミノ−9−エチルカルバゾール35.9部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート510gを仕込んで顔料分散剤1(固形分40%)を得た。(カルバゾール環比率:約50%)
【0079】
<分散剤2>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量3000のポリカプロラクトン245部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)171.5部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで3−アミノ−9−エチルカルバゾール51.5部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート487gを仕込んで顔料分散剤2(固形分40%)を得た。(カルバゾール環比率:約75%)
【0080】
<分散剤3>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量2000のポリカプロラクトン220部、片末端に水酸基を有する分子量1000のポリエチレングリコール(商品名:ユニオックスM−1000 日油(株)製)54.6部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)172.3部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで4−アミノアゾベンゼン32.4部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500gを仕込んで顔料分散剤3(固形分40%)を得た。(アゾベンゼン骨格比率:約50%)
【0081】
<分散剤4>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量1000のポリカプロラクトン245部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)222.8部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで4−アミノアゾベンゼン34.9部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート475gを仕込んで顔料分散剤4(固形分40%)を得た。(アゾベンゼン骨格比率:約42%)
【0082】
<分散剤5>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量1000のポリカプロラクトン245部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)173.3部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで3−アミノ−9−エチルカルバゾール17.3部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート436gを仕込んで顔料分散剤5(固形分40%)を得た。(カルバゾール環比率:約25%)
【0083】
<分散剤6>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量1000のポリカプロラクトン245部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)173.3部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで4−アミノアゾベンゼン16.3部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート435gを仕込んで顔料分散剤6(固形分40%)を得た。(アゾベンゼン骨格比率:約25%)
【0084】
<分散剤7>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量3000のポリカプロラクトン245部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)171.5部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで4−アミノアゾベンゼン48.3部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート482gを仕込んで顔料分散剤7(固形分40%)を得た。(アゾベンゼン骨格比率:約75%)
【0085】
<分散剤8>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量1000のポリカプロラクトン245部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)222.8部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで3−アミノ−9−エチルカルバゾール14.9部および4−アミノアゾベンゼン20.9部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート475gを仕込んで顔料分散剤8(固形分40%)を得た。(カルバゾール環+アゾベンゼン骨格比率:約42%)
【0086】
<分散剤9>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量2000のポリカプロラクトン48.5部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)157.5部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで4−アミノアゾベンゼン54.2部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート193gを仕込んで顔料分散剤9(固形分40%)を得た。(アゾベンゼン骨格比率:約92%)
【0087】
<分散剤10>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量2000のポリカプロラクトン160部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)47.3部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで4−アミノアゾベンゼン1.5部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート254gを仕込んで顔料分散剤10(固形分40%)を得た。(アゾベンゼン骨格比率:約8%)
【0088】
<分散剤11>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量2000のポリカプロラクトン48.5部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)157.5部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで4−アミノアゾベンゼン57.8部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート198gを仕込んで顔料分散剤11(固形分40%)を得た。(カルバゾール環比率:約92%)
【0089】
<分散剤12>
還流冷却管、窒素ガス導入管、攪拌棒、温度計を備えた四つ口フラスコに、片末端に水酸基を有する分子量2000のポリカプロラクトン160部、トルエンジイソシアネート系ポリイソシアネートの酢酸ブチル50%溶液(商品名:コロネート2030 日本ポリウレタン工業(株)製)47.3部を仕込み、約80℃で3時間保持してイソシアネート基と水酸基とを反応させ、次いで4−アミノアゾベンゼン1.5部を仕込み、約90℃で1時間保持してイソシアネート基とアミノ基とを反応させ、次いでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート254gを仕込んで顔料分散剤12(固形分40%)を得た。(カルバゾール環比率:約8%)
【0090】
なお、上記のカルバゾール環およびアゾベンゼン骨格比率とは、顔料分散剤の分子内のイソシアネート基、イソシアネート基に活性水素基を反応させて形成されたウレタン結合および尿素結合の3つの数の合計に対して、カルバゾール環およびアゾベンゼン骨格の数の比率を表す。
【0091】
<顔料>
Printex25
(デグサ社製カーボンブラック、吸油量:45ml/100g、pH:9.3)
<顔料分散剤>
BYK−167(BYK−Chemie社製、固形分52%)
<顔料分散助剤>
ソルスパーズ5000(ルーブリゾール社製、フタロシアニン系顔料分散助剤)
<アルカリ可溶性樹脂>
ZAH−110(商品名、綜研化学(株)製アクリル樹脂ワニス)
<光重合性化合物>
DPEHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
<光重合開始剤>
イルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)
<有機溶剤>
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0092】
〔実施例1〜8、比較例1〜5のカラーフィルター用黒色顔料分散物、カラーフィルター用黒色顔料分散レジスト組成物の調製〕
まず、表1の組成となるように各種材料を混合し、ビーズミルで一昼夜練肉し、カラーフィルター用黒色顔料分散物(A)〜(H)、(M)を得た。
【0093】
さらに、高速攪拌機を用いて、上記カラーフィルター用黒色顔料分散物(A)〜(H)、(M)と他の材料と表2の組成になるように均一に混合した後、孔径3μmのフィルターで濾過し、実施例1〜8、比較例5のブラックマトリックス用レジスト組成物を得た。
(比較例1〜4については、カラーフィルター用黒色顔料分散物(I)〜(L)を得ることができなかったので、その後の評価は行わなかった。)
【0094】
<評価試験>
(分散安定性)
各カラーフィルター用黒色顔料分散物(A)〜(H)および(M)、および実施例1〜8、比較例5の各カラーフィルター用黒色顔料分散レジスト組成物をそれぞれガラス瓶に採り、密栓して室温で7日間保存した後の状態を下記評価基準に従って評価した。結果を表1および2に示す。
A:増粘、沈降物が共に認められない。
B:軽く振ると元に戻る程度の増粘や沈降物が認められる。
C:強く振っても元に戻らない程度の増粘や沈降物が認められる。
【0095】
(レジストパターンの現像マージン)
実施例1〜8、比較例5の各ブラックマトリックス用顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。その後、硬化部分と未硬化部分の面積比が20:80となる線幅25μmの格子状のパターンが得られるマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量400mJ/cm2で露光した。得られた塗膜を、0.05%水酸化カリウム水溶液を使用して現像し、未露光部分のレジスト組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間を測定して、現像マージンを評価した。結果を表2に示す。
【0096】
(再溶解性)
実施例1〜8、比較例5の各カラーフィルター用黒色顔料分散レジスト組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。得られた塗膜を、10重量倍以上のPGMEA溶液に5分間浸漬した時に塗膜が溶解するまでの時間を測定し、下記評価基準に従って再溶解性を評価した。結果を表2に示す。(顔料分散レジスト組成物は、スピンコーターにて塗布しており、再溶解性が悪いと、塗工適性が低下する)。
○:塗膜が完全に再溶解する
△:塗膜が一部を除いて再溶解する
×:再溶解しない
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のカラーフィルター用顔料分散物およびそれを含有するカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物は、カラー液晶表示装置に好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、顔料分散剤と、有機溶剤とを含有するカラーフィルター用顔料分散物であって、前記顔料分散剤が、下記条件1を満足する化合物であることを特徴とするカラーフィルター用顔料分散物。
条件1:分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、さらにカルバゾール環および/またはアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物であって、該化合物の分子内の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基、または、そのイソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合および尿素結合の3つの数の合計に対するカルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数が15〜85%である。
【請求項2】
顔料分散助剤が、さらに含有されてなる請求項1記載のカラーフィルター用顔料分散物。
【請求項3】
請求項1または2記載のカラーフィルター用顔料分散物を含有することを特徴とするカラーフィルター用顔料分散レジスト組成物。

【公開番号】特開2010−107965(P2010−107965A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220836(P2009−220836)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000105947)サカタインクス株式会社 (123)
【Fターム(参考)】