説明

カラーフィルタ基板及びそれを用いた液晶表示装置

【課題】異なる表示方式の液晶表示装置において、PG58顔料を使用して緑色画素の高明度を実現しても、斜め方向から画面を見た際に、視認性低下が生じない緑色画素を備えるカラーフィルタ基板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも、C.I.Pigment Green 58、メラミン化合物、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Yellow 138を含有する顔料、透明樹脂、光重合性モノマー、及び溶剤を主成分とする光硬化性の緑色着色組成物を用いて形成した、厚み方向の位相差値(Rth)が−21.3nmから25.6nmの範囲内にある緑色画素を備えたことを特徴とするカラーフィルタ基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置を斜め方向から観察した際の視認性を改善するために、カラーフィルタの緑色画素における厚み方向の位相差値(Rth)を制御したカラーフィルタ基板及び液晶表示装置を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、VA(Vertical Alignment)表示方式やIPS(In−Planes Switching)表示方式などを採用する液晶表示装置において高視野角化が実現されているが、高視野角化にともない斜め方向から画面を見た際に正面方向と比べて色相やコントラストが低下するといった視野角依存性が生じる問題が依然として残っている。この視野角依存性が起こる原因として、斜め方向の黒表示状態において光漏れが発生するためであり、この光漏れの改善が求められている。
【0003】
上記の光漏れが起こる原因の一つとしては、液晶層に入射した直線偏光が液晶分子自体の複屈折性により位相がずれてしまうことで楕円偏光へと変化し、これにより出射側の偏光フィルムにて完全に出射光を遮光できなくなるためである。この対策として、楕円偏光を直線偏光に戻すための位相差フィルムが設けられているが、斜め方向に対しては完全な位相差の補償できておらず、光漏れ改善の要求に対応できていない現状である。このため、斜め方向の光漏れの改善、言い換えれば視野角依存性の改善を行うためにカラーフィルタにおいても位相差を制御する必要が生じている(特許文献1)。尚、カラーフィルタに求められる位相差制御とは厚み方向の位相差値(Rth)を所望の値に調整することである。
【0004】
このとき、カラーフィルタに求められるRthは、液晶表示方式(IPS表示方式やVA表示方式など)や、液晶表示装置を構成する部材(偏光フィルムや位相差フィルムなど)や、液晶セル内のセルギャップの違いにより求められる値が異なり、これら構成・構造が異なる液晶表示装置に対応するためには、カラーフィルタ基板においてRthを広い範囲で制御できることが望まれている。このとき求められるRthの値として、VA表示方式では0以上の値が求められており、IPS表示方式では0付近の値が求められている。しかしながら上述したように液晶表示装置を構成する部材により求められるRthが異なるため、これに対応するためにもカラーフィルタ基板においてRthを広い範囲で制御する必要がある。
【0005】
カラーフィルタの位相差制御を行なう手段としては、カラーフィルタを構成する着色組成物に液晶性化合物などの位相差調整剤を添加させる方法や、カラーフィルタの画素上に位相差制御層を別に設ける方法が提案されている。しかしながら、材料コストや製造コストに負担がかかるためカラーフィルタの値段が高くなってしまう問題があり、構成・構造を大きく変化させること無しに位相差制御できる技術の開発が望まれている。
【0006】
このとき、材料・製造コストに大きな負担をかけずにRthを制御する手段・方法に関しては、メラミン骨格を有する熱硬化性樹脂を着色組成物に含有させることでRthを制御する方法がある(特許文献2)。しかし、上述したように構成・構造が異なる液晶表示装置に対応するためには、カラーフィルタにおいてRthを広い範囲で制御できる必要があり制御方法の確立が必要である。尚、カラーフィルタ基板に設けられている画素の膜厚を変化させてRthを制御する方法があるが、画素膜厚を変化させてしまうと狙いとする色相も変化するため、膜厚でRthを制御することは困難であるため、画素を形成する着色組成物にてRthを制御する必要がある。
【0007】
別の極めて重要な問題として液晶表示装置では低消費電力化が求められており、そのためにカラーフィルタにおいては明度の一段の向上が必要である。この高明度化の要求に対しては、カラーフィルタの緑色画素に含有されている有機顔料を、従来まで広く用いられているC.I.Pigment Green36(以下、PG36と記す)から、C.I.Pigment Green 58(以下、PG58と記す)に変更することにより明度向上が実現されている。
【0008】
しかしながら、有機顔料として高い明度を有するPG58のみを用いた緑色画素において、Rthを制御できる範囲が−1nmから3nm程度と狭い範囲内であるため、構成・構造が異なる液晶表示装置に対して斜め方向から画面を観察した際の視認性低下を改善するためにはRthを広い範囲で制御することが必要であるため、位相差調整剤を添加してRthを制御する方法の確立が必要である。
【特許文献1】特開2007−279379号公報
【特許文献2】特開2007−021897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、異なる表示方式の液晶表示装置において、PG58顔料を使用して緑色画素の高明度を実現しても、斜め方向から画面を見た際に、視認性低下が生じない緑色画素を備えるカラーフィルタ基板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために本発明は、少なくとも、C.I.Pigment Green 58、メラミン化合物、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Yellow 138を含有する顔料、透明樹脂、光重合性モノマー、及び溶剤を主成分とする光硬化性の緑色着色組成物を用いて形成した、厚み方向の位相差値(Rth)が−21.3nmから25.6nmの範囲内にある緑色画素を備えたことを特徴とするカラーフィルタ基板としたものである。
【0011】
以下に本発明になる顔料を組み合わせるに至った経緯ついて説明する。
【0012】
始めに、PG58のみを含有した緑色画素のRthの確認を行った。その結果、該緑色画素を形成する他の組成物によってRthは若干異なるが、画素膜厚が1〜4μmのときにRthは−1nmから3nm程度の狭い範囲内であることが分かった。しかし、構成・構造が異なる液晶表示装置に対して斜め方向から画面を観察した際の視認性低下を改善するためにはRthを広い範囲で制御することが必要であり、且つ、コスト面からカラーフィルタの構成を大きく変えずにRthを増減することのできる材料の探索が必要であるため顔料スクリーニングを行なった。
【0013】
このとき、Rthを低減することのできる材料に関しては、緑色画素を形成する際に広く用いられていることを条件に探索した結果、PG36が有効であることを見出した。このときPG36をPG58を含有する緑色着色組成物に添加すると、添加していない画素ではRthが1.9nmだったのに対し、添加した緑色画素においてRthを1.9nmから−16.2nmまで低減できることを見出した。さらに、添加量を調節することによりRthを1.9nmから−16.2nmまでの範囲にて制御できることを見出した。
【0014】
その他にも、Rthを低減させる材料としてPY138が有効であり、PY138をPG58を含有する緑色着色組成物に添加すると、Rthを1.9nmから−9.1nmまで低減できることを見出した。さらに、添加量を調節することによりRthを1.9nmから−
9.1nmまでの範囲にて制御できることを見出した。
【0015】
さらに、PG36とPY138の両方をPG58を含有する緑色着色組成物に添加すると、Rthが1.9nmから−21.3nmまで低減できることを見出した。さらに、両方の添加量を調節することによりRthを1.9nmから−21.3nmまでの範囲にて制御できることを見出した。
【0016】
反対にRthを増加させることのできる材料としては、メラミン骨格を有する化合物(メラミン化合物)が有効であり、PG58を含有した緑色着色組成物にメラミン化合物を添加して形成した緑色画素において、Rthを最大で25.6nmまで増加させられることを見出した。また、添加量を調節することによりRthを1.9nmから25.6nmまでの範囲にて制御できることを見出した。尚、本発明で用いたメラミン樹脂の詳細については後述する。
【0017】
以上より、有機顔料として少なくともPG58を含有した緑色着色組成物に、PG36、PY138、メラミン化合物のどれかを一つまたは複数を含有する緑色画素を形成することにより、Rthを−21.3nmから25.6nmの範囲内にて制御できることを見出した。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、明度の高いPG58顔料を使用しても緑色画素のRthを正負の広い範囲で、所望の値に制御することが可能なPG58顔料と組み合わせるべき顔料を特定することができた。このため、表示方式の異なる液晶表示装置であっても、該表示装置の光学的特性に見合った所望のRthに容易に調整できるので、斜め方向からの観察においても視認性の良く、明るい(消費電力の少ない)液晶表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき説明する。
【0020】
緑色着色画素の厚み方向位相差値は、分光エリプソメータなどの位相差測定装置を用いて測定される3次元屈折率を用いて決定できる。
すなわち、550nmの波長の光で、緑色画素の正面と入射角45度の少なくとも2方向から位相差測定を行い、Nx、Ny、Nzの3次元屈折率を得たのち、下記の式より厚み方向位相差値(Rth)を算出する。
th={(Nx+Ny)/2-Nz}×d
式中、Nxは、着色画素層の平面内のx方向の屈折率であり、Nyは、着色画素層の平面内のy方向の屈折率であり、Nzは、着色画素層の厚み方向の屈折率であり、dは、着色画素層の膜厚(nm)である。
【0021】
本発明に用いるカラーフィルタ着色組成物は、アクリル樹脂、カルド樹脂などのポリマーやモノマーを基材として、少なくとも有機溶剤、光重合性開始剤もしくは硬化剤に有機顔料を分散した液状の塗布液である。該着色組成物を、フォトリソグラフィーに用いるカラーレジストとして、あるいは、インクジェットや印刷などのインキとして使用することができる。なお、カラーフィルタに用いる着色組成物としての組成の詳細は後述する。
【0022】
本発明に用いるメラミン化合物としては、下記一般式(I)で表される市販のものを用いることができ、以下にメラミン化合物を例示する。
【0023】
【化1】

【0024】
式中、R1、R2、R3はそれぞれ水素原子、メチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシn−ブチル基、R4、R5、R6はそれぞれメチロール基、アルコキシメチル基、アルコキシn−ブチル基である。二種類以上の繰り返し単位を組み合わせたコポリマーを用いてもよい。二種類以上のホモポリマーまたはコポリマーを併用してもよい。また、上記以外に1,3,5−トリアジン環を有する化合物で、例えば特開2001−166144号公報に記載のものを使用することができる。また下記一般式(II)に示す化合物も好んで用いられる。
【0025】
【化2】

【0026】
R7からR14はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基であり、水素原子であることが特に好ましい。
【0027】
次に本発明のカラーフィルタについて説明する。
【0028】
図1に示すように、本発明のカラーフィルタは、ガラス基板1上に遮光層であるブラックマトリクス2を具備し、少なくとも赤色3(R)・緑色3(G)および青色3(B)の3色の着色画素3を備えている。
なお、これら3色に限らず、補色の組み合わせでも良く、あるいは補色や他色を含んだ3色以上の多色のカラーフィルタであっても良い。
【0029】
赤色画素には、例えば、C.I.Pigment Red 7、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、168、177、178、179、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272、279等の赤色顔料を用いることができ、黄色顔料や橙色顔料を併用することもできる。
【0030】
黄色顔料としては、本発明で用いているC.I. Pigment Yellow 138やC.I. Pigment Yellow 150以外に、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、147、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、187、188、193、194、199、198、213、214等が挙げられる。
【0031】
橙色顔料としては、C.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等が挙げられる。
【0032】
その使用量は、顔料の合計重量を基準として、ジケトピロロピロール系赤色顔料を10〜90重量%、アントラキノン系赤色顔料を5〜70重量%とすることが、画素の色相や明度、膜厚、コントラスト等の点から好ましく、特に、コントラストに着目した場合、ジケトピロロピロール系赤色顔料を25〜75重量%、アントラキノン系赤色顔料を30〜60重量%とすることがより好ましい。
【0033】
また、赤色画素には色相を調整する目的で黄色顔料や橙色顔料を含有させることができ
るが、高コントラスト化の点からアゾ金属錯体系黄色顔料を用いることが好ましい。その使用量は、顔料の合計重量を基準として5〜25重量%であることが好ましく、5重量%未満の場合には、充分な明度向上などの色相調整ができず、30重量%を超える場合には、色相が黄味にシフトし過ぎるため、色再現性は悪くなる。
【0034】
上記において、ジケトピロロピロール系赤色顔料としては、C.I.Pigment Red 254、アントラキノン系赤色顔料としては、C.I.Pigment Red 177、アゾ金属錯体系黄色顔料としてはC.I.Pigment Yellow 150、キノフタロン系黄色顔料としてはPY138が優れた耐光性、耐熱性、透明性、および着色力等の点から好適である。
【0035】
緑色画素には、本発明で用いているC.I.Pigment Green 58、36のほかに、例えば、C.I.Pigment Green 10、37等の緑色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用することもできる。黄色顔料としては、赤色画素の説明で挙げた顔料と同様のものが使用可能である。
【0036】
その使用量は、顔料の合計重量を基準として、PG58を含む、緑色顔料を1〜90重量%、アゾ系黄色顔料を1〜60重量%、キノフタロン系黄色顔料を1〜60重量%とすることが、画素の色相や明度、膜厚等の点から好ましい。
【0037】
上記において、緑色顔料としては、C.I.Pigment Green 36、58、アゾ系黄色顔料としてはC.I.Pigment Yellow 150、キノフタロン系黄色顔料としてはC.I.Pigment Yellow 138が、優れた耐光性、耐熱性、透明性、および着色力等の点から好適である。
【0038】
青色画素には、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができ、紫色顔料を併用することもできる。紫色顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等が挙げられる。
【0039】
その使用量は、顔料の合計重量を基準として、金属フタロシアニン系青色顔料を40〜100重量%、ジオキサジン系紫色顔料を1〜50重量%とすることが、画素の色相や明度、膜厚等の点から好ましく、さらに、金属フタロシアニン系青色顔料を50〜98重量%、ジオキサジン系紫色顔料を2〜25重量%とすることがより好ましい。
【0040】
上記において金属フタロシアニン系青色顔料としてはC.I.Pigment Blue 15:6、ジオキサジン系紫色顔料としてはC.I.Pigment Violet 23が、優れた耐光性、耐熱性、透明性、および着色力等の点から好適である。
【0041】
また、無機顔料としては、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。
無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組み合わせて用いられる。さらに、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。
【0042】
以下には、本発明のカラーフィルタの各色画素を形成するために用いられる着色組成物について説明する。
【0043】
各色画素を形成するために用いられる着色組成物に含まれる顔料担体は、顔料を分散させるものであり、透明樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物により構成される。
【0044】
透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である。
透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれ、その前駆体には、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0045】
顔料担体は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、30〜700重量部、好ましくは60〜450重量部の量で用いることができる。
また、透明樹脂とその前駆体との混合物を顔料担体として用いる場合には、透明樹脂は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、20〜400重量部、好ましくは50〜250重量部の量で用いることができる。また、透明樹脂の前駆体は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部の量で用いることができる。
【0046】
熱可塑性樹脂としては、例えば, ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0047】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0048】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。
また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0049】
透明樹脂の前駆体であるモノマーおよびオリゴマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
【0050】
着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化する場合には、光重合開始剤等が添加される。
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジク
ロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。
光重合開始剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部の量で用いることができる。
【0051】
上記光重合開始剤は、単独あるいは2種以上混合して用いるが、増感剤として、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。
増感剤は、光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜60重量部の量で含有させることができる。
【0052】
さらに、着色組成物には、連鎖移動剤としての働きをする多官能チオールを含有させることができる。多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール 、デカンジチオール 、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。これらの多官能チオールは、1種または2種以上混合して用いることができる。
多官能チオールは、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.2〜150重量部、好ましくは0.2〜100重量部の量で用いることができる。
【0053】
さらに、顔料を充分に顔料担体中に分散させ、ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が
0.2〜5μmとなるように塗布してフィルタセグメントを形成することを容易にするために溶剤を含有させることができる。溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
溶剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、800〜4000重量部、好ましくは1000〜2500重量部の量で用いることができる。
【0054】
着色組成物は、1種または2種以上の顔料を、必要に応じて上記光重合開始剤と共に、顔料担体および有機溶剤中に三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等の各種分散手段を用いて製造することができる。また、2種以上の顔料を含む着色組成物は、各顔料を別々に顔料担体および有機溶剤中に微細に分散したものを混合して製造することもできる。
【0055】
顔料を顔料担体および有機溶剤中に分散する際には、適宜、樹脂型顔料分散剤、界面活性剤、顔料誘導体等の分散助剤を含有させることができる。
分散助剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、分散助剤を用いて顔料を顔料担体および有機溶剤中に分散してなる着色組成物を用いた場合には、透明性に優れたカラーフィルタが得られる。分散助剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.1〜30重量部の量で用いることができる。
【0056】
樹脂型顔料分散剤としては、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の顔料担体への分散を安定化する働きをするものである。
樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などの油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0057】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性
界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
色素誘導体は、有機色素に置換基を導入した化合物であり、用いる顔料の色相に近いものが好ましいが、添加量が少なければ色相の異なるものを用いても良い。
有機色素には、一般に色素とは呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。色素誘導体としては、特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用できる。特に、塩基性基を有する色素誘導体は、顔料の分散効果が大きいため、好適に用いられる。これらは単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0059】
着色組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。貯蔵安定剤としては、例えばベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.1〜10重量部の量で含有させることができる。
【0060】
また、着色組成物には、基板との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等が挙げられる。シランカップリング剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.01〜100重量部の量で含有させることができる。
【0061】
着色組成物は、グラビアオフセット用印刷インキ、水無しオフセット印刷インキ、インクジェット用インキ、シルクスクリーン印刷用インキ、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジストの形態で調製することができる。着色レジストは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または感光性樹脂と、モノマーと、光重合開始剤と、有機溶剤とを含有する組成物中に色素を分散させたものである。
顔料は、着色組成物の全固形分量を基準(100重量%)として5〜70重量%の割合で含有されることが好ましい。より好ましくは、20〜50重量%の割合で含有され、その残部は、顔料担体により提供される樹脂質バインダーから実質的になる。
着色組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大
粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0062】
本発明のカラーフィルタ中の赤色画素、緑色画素、および青色画素は、透明基板上に、印刷法またはフォトリソグラフィー法により、上記の各色着色組成物を用いて形成される。
【0063】
透明基板としては、ソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス、無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスなどのガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板が用いられる。また、ガラス板や樹脂板の表面には、液晶パネル化後の液晶駆動のために、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモンなどの金属酸化物の組み合わせからなる透明電極が形成されていてもよい。
【0064】
印刷法による各色フィルタセグメントの形成は、上記各種の印刷インキとして調製した着色組成物の印刷と乾燥を繰り返すだけでパターン化ができるため、カラーフィルタの製造法としては、低コストで量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。印刷を行うためには、印刷の版上にて、あるいはブランケット上にてインキが乾燥、固化しないような組成とすることが好ましい。また、印刷機上でのインキの流動性の制御も重要であり、分散剤や体質顔料によるインキ粘度の調整を行うこともできる。
【0065】
インクジェット法は、微細な複数の吐出口(インクジェットヘッド)を各色ごとに揃えたインクジェット装置にて、透明基板もしくはTFTなどアクティブ素子を形成した基板に直接印刷形成する方法である。
【0066】
フォトリソグラフィー法により各色画素を形成する場合は、上記溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジストとして調製した着色組成物を、透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2〜10μmとなるように塗布する。
塗布膜を乾燥させる際には、減圧乾燥機、コンベクションオーブン、IRオーブン、ホットプレート等を使用してもよい。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行う。
その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するかもしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去して所望のパターンを形成したのち、同様の操作を他色について繰り返してカラーフィルタを製造することができる。
さらに、着色レジストの重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。フォトリソグラフィー法によれば、上記印刷法より精度の高いカラーフィルタが製造できる。
【0067】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
なお、紫外線露光感度を上げるために、上記着色レジストを塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ水溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【0068】
本発明のカラーフィルタは、上記方法の他に電着法、転写法、インクジェット法などにより製造することができる。なお、電着法は、透明基板上に形成した透明導電膜を利用して、コロイド粒子の電気泳動により各色フィルタセグメントを透明導電膜の上に電着形成
することでカラーフィルタを製造する方法である。
また、転写法は剥離性の転写ベースシートの表面に、あらかじめカラーフィルタ層を形成しておき、このカラーフィルタ層を所望の透明基板に転写させる方法である。
【0069】
次に、本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置について説明する。
【0070】
図2は、本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置の概略断面図である。
図2に示す装置4は、ノート型パソコン用のTFT駆動型液晶表示装置の典型例であって、離間対向して配置された一対の透明基板5および6を備え、それらの間には、液晶(LC)が封入されている。第1の透明基板5の内面には、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ7が形成されており、その上には例えばITOからなる透明電極層8が形成されている。透明電極層8の上には、配向層9が設けられている。また、透明基板5の外面には、位相差フィルムを構成に含む偏光板10が形成されている。
【0071】
他方、第2の透明基板6の内面には、本発明のカラーフィルタ11が形成されている。カラーフィルタ11を構成する赤色、緑色および青色のフィルタセグメントは、ブラックマトリックス(図示せず)により分離されている。カラーフィルタ11を覆って、必要に応じて透明保護膜(図示せず)が形成され、さらにその上に必要に応じて、例えばITOからなる透明電極層12が形成され、透明電極層12を覆って配向層13が設けられている。また、透明基板6の外面には、偏光板14が形成されている。なお、偏光板10の下方には、バックライト光源15を備えたバックライトユニット16が設けられている。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施の形態について具体的な実施例を挙げて記載する。なお、実施例および比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。また、顔料の記号はカラーインデックスナンバーを示し、例えば、「PG36」は「C.I.Pigment Green 36」を表す。
【0073】
・顔料の製造
実施例および比較例で用いた顔料を以下の方法により製造した。
【0074】
[製造例1]
ハロゲン化銅フタロシアニン系緑色顔料(東洋インキ製造社製「リオノールグリーン6YK」)120部、粉砕した食塩1600部、およびジエチレングリコール270部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で12時間混練した。
この混合物を温水5000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、117部のソルトミリング処理顔料であるPG36を得た。
【0075】
[製造例2]
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン系緑色顔料(大日本インキ化学工業株式会社製 「 Phthalocyanine Green A110」)120部、粉砕した食塩1600部、およびジエチレングリコール270部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、70℃で12時間混練した。この混合物を温水5000部に投入し、約70℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗をくりかえして食塩および溶剤を除いた後、80℃で24時間乾燥し、117部のソルトミリング処理顔料であるPG58を得た。
【0076】
・アクリル樹脂溶液の調製
反応容器にシクロヘキサノン800部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら100℃
に加熱して、同温度で下記のモノマーおよび熱重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。
スチレン 60.0部
メタクリル酸 60.0部
メタクリル酸メチル 65.0部
メタクリル酸ブチル 65.0部
アゾビスイソブチロニトリル 10.0部
滴下後、さらに100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル2.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、さらに100℃で1時間反応を続けて樹脂溶液を合成した。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20%となるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を調製した。
【0077】
・顔料分散体の調製
上記のPG36とPG58の分散性を良化させるために、アクリル樹脂溶液・PY150(ランクセス社製「E4GN」)・色素誘導体・有機溶媒と混合した溶液を均一に撹拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過してPG36とPG58の顔料分散体を得た。また、黄色顔料のPY138、PY150の分散性を良化させるために、アクリル樹脂溶液・色素誘導体・有機溶媒と混合した溶液を均一に撹拌混合した後、直径1mmのジルコニアビーズを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmのフィルタで濾過してPY138とPY150の顔料分散体を得た。
【0078】
メラミン骨格を有する化合物として、以下の市販の化合物(I)を使用した。
メラミン化合物・・・日本カーバイド工業製ニカラックMX−750
【0079】
【化3】

【0080】
R1は水素原子、R2は−CH2OH基、R3〜R6は−CH2OCH3基。
【0081】
・着色組成物の調製
次いで、表1に示す組成(重量比)の混合物を均一に撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して緑色着色組成物を得た。このとき、緑色着色組成物は緑色画素を形成した際に、膜厚が2.6μm、色度値がCIE色度座標でC光源のときにy=0.603のときにx=0.286〜0.296の範囲内におさまるように調整した。尚、色度値はこの範囲に限定されるものではない。
【0082】
【表1】

【0083】
・モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート
(新中村化学社製「NKエステルATMPT」)
・光重合開始剤:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア 907」)
・有機溶剤:シクロヘキサノン。
【0084】
・緑色画素の作製
表1に示した各レジストをスピンコート法によりガラス基板に塗工した後、クリーンオーブン中で、70℃で2分間プリベークした。次いで、この基板を室温に冷却後、超高圧水銀ランプを用い紫外線を露光した。その後、この基板を炭酸ナトリウム水溶液にてスプレー現像した後、イオン交換水で洗浄し、風乾した。その後、クリーンオーブン中で、23
0℃で20分間の焼成を行い、緑色画素を得た。
【0085】
本発明において、XYZ表色系色度図における色度は、分光光度計(オリンパス社製「OSP−200」)を用いて測定した。
【0086】
本発明において、厚み方向位相差値は、透過型分光エリプソメータ(日本分光社製「M−220」)を用いて、塗膜を形成した基板の法線方向から45°傾けた方位より、400nmから700nmの範囲で5nmおきの波長で測定し、エリプソパラメータであるδを得た。Δ=δ/360×λより位相差値Δ(λ)を算出し、この値を用いて、3次元屈折率を算出し次より厚み方向位相差値(Rth)を算出した。このとき、緑色着色画素では550nmの波長で測定を行った。
th={(Nx+Ny)/2-Nz}×d
式中、Nxは着色画素層の平面内のx方向の屈折率であり、Nyは着色画素層の平面内のy方向の屈折率であり、Nzは着色画素層の厚み方向の屈折率であり、NxをNx≧Nyとする遅相軸とする。dは着色画素層の膜厚(nm)である。
【0087】
上記にて作製された各緑色画素のRthの値を表1に示す。その結果、PG58のみを含有した緑色画素のRthが1.9nmであったのに対し、Rthをプラス化させるためにメラミン化合物を含有した実施例1,2ではRthを最大で25.6nmまで増加することができた。また、Rthを低減させるためにPG36を含有した実施例3,4ではRthを最大で-16.2nmまで低下でき、PY138を含有した実施例5,6ではRthを最大で9.1nmまで低下することができた。さらに、PG36とPY138を含有させた実施例7においてはRthを最大で21.3nmまで低下することができた。
【0088】
以上より、PG58を含有した緑色画素において、PG36、PY138、メラミン化合物のどれかを一つまたは複数を緑色画素形成や色度・明度・コントラストに影響がない範囲で適正量を含有させることで、Rthを−21.3nmから25.6nmの範囲内にて任意の値を選択できることを見出した。これにより、構成・構造が異なる各種液晶表示装置において、本発明のRthを制御できる緑色画素を形成したカラーフィルタを用いることで、斜め方向から画面を観察した際の視認性低下の改善をできると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施の形態に係るカラーフィルタの概略断面視図である。
【図2】本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置の一例を示す概略断面視図である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・ガラス基板
2・・・ブラックマトリックス
3・・・着色画素
4・・・液晶表示装置
5、6・・・透明基板
7・・・TFTアレイ
8、12・・・透明電極
9、13・・・配向層
10、14・・・偏光板
11・・・カラーフィルタ
15・・・バックライト光源
16・・・バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、C.I.Pigment Green 58、メラミン化合物、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Yellow 138を含有する顔料、透明樹脂、光重合性モノマー、及び溶剤を主成分とする光硬化性の緑色着色組成物を用いて形成した、厚み方向の位相差値(Rth)が−21.3nmから25.6nmの範囲内にある緑色画素を備えたことを特徴とするカラーフィルタ基板。
【請求項2】
請求項1記載のカラーフィルタ基板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−145787(P2010−145787A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323512(P2008−323512)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】