説明

カラーフィルタ用赤色着色組成物

【課題】本発明の目的は、コントラスト比、耐溶剤性、現像性、耐熱性、耐光性に優れたカラーフィルタ用赤色着色組成物を提供することである。
【解決手段】有機顔料と、有機溶剤と、アルカリ可溶性樹脂と、熱架橋性成分とを含むカラーフィルタ用赤色着色組成物であって、有機顔料が少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、その一次粒子径が25〜45nmであり、特定有機色素誘導体を含有し、熱架橋性成分が3官能以上の多官能エポキシ樹脂であることを特徴とするカラーフィルタ用赤色着色組成物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置、カラー撮像管素子等に用いられるカラーフィルタの製造に使用されるカラーフィルタ用赤色着色組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタ用着色組成物として、カラーフィルタのコントラスト比に与える影響を顔料の一次粒子と二次粒子の点で考察すると、着色組成物における平均粒子径を小さくするために分散度を高めていく(分散体の平均粒子径を小さくする)とコントラスト比は徐々に上昇するが、通常の分散方法により平均分散粒子径を一次粒子径より小さくすることは困難であるため、分散度を高めても到達するコントラスト比には限界がある。従って、より高いコントラスト比を得るには、顔料の一次粒子径を小さくすることが必要である。
【0003】
上記方法において、赤色フィルタの製造には、従来、ジアントラキノン顔料、ペリレン系顔料又はジケトピロロピロール系顔料等の耐光性及び耐熱性に優れる顔料が用いられていた。なかでも、ジケトピロロピロール系顔料は、赤〜橙色の顔料で、優れた耐光性及び耐熱性を有し、赤色カラーフィルタ用として適する分光スペクトルを有し、かつ、透明性も高いことから、カラーフィルタ用顔料として好ましい顔料である。
【0004】
ジケトピロロピロール系顔料の具体例をカラーインデックスナンバーで示すと、C.I.Pigment Red 254、255、264及びC.I.Pigment Orange 71が挙げられる。このなかで、特に、C.I.Pigment Red 254(ピロロピロール環のパラ位に塩素基を有するジケトピロロピロール顔料)は、赤色カラーフィルタ用として特に適する分光スペクトルを有し、分散性も優れ、非常に高い明度(=Y値)が得られるため、赤色カラーフィルタ用顔料として非常に多く用いられている。高い明度は、液晶ディスプレイにおいて、色の鮮やかさと消費電力の低さを実現するために、非常に重要な品質項目である。
【0005】
カラーフィルタ用途に市販されているC.I.Pigment Red 254顔料として、イルガフォアレッドBCF、イルガフォアレッドBT−CF(共に、チバスペシャルティケミカルズ社製)がある。この顔料は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によれば一次粒子径の大きさ40〜80nmの比較的球状の粒子である。
【0006】
カラーフィルタ用ジケトピロロピロール顔料を製造する方法として、特開2001−220520号公報(特許文献1)には、ジケトピロロピロール系顔料(A)、色素誘導体(B)、水溶性無機塩(C)、及び水溶性無機塩(C)を実質的に溶解しない水溶性有機溶剤(D)を含む混合物をニーダー等で混練した後(以下、顔料、水溶性の無機塩及び水溶性の有機溶剤を含む混合物を混練することをソルトミリングと呼ぶ)、水溶性無機塩(C)及び水溶性有機溶剤(D)を除去することで得られる、カラーフィルタ用ジケトピロロピロール顔料が開示されている。
【0007】
このソルトミリングと呼ばれる処理方法は、顔料の一次粒子の粉砕及び結晶成長が並行して起こるため、一次粒子径を小さく制御できるばかりでなく、粗大粒子の存在をなくすとともに、一次粒子径の粒度分布幅が狭い顔料を得ることができ、カラーフィルタ用途には非常に適した微細化方法である。
【0008】
近年、カラーフィルタの高コントラスト化に対する要求は非常に高く、一次粒子を非常に小さく、かつ一次粒子の粒度分布幅を小さくするための検討が行われている。
【0009】
しかし、今まで以上に一次粒子径を小さくしたときに、高いコントラスト比が得られる一方で、カラーフィルタ製造工程に対する工程性が劣ることが多く、具体的には、赤色カラーフィルタに加工する際に、微細なC.I.Pigment Red 254を含む感放射線顔料組成物を使用すると、特に耐溶剤性に劣ることが明らかになってきた。
【0010】
通常、液晶表示装置はカラーフィルタ基板とTFT(Thin−Film−Transistor)基板とを個別に作製し、貼りあわせた後、液晶を注入することにより製造される。この際、カラーフィルタ基板は、着色層の上に、液晶を配向させるためにポリイミド等の配向膜が塗布される。このため、着色層には、ポリイミド樹脂溶液の溶剤として使用されるNMP(N−メチル−ピロリドン)など極性の強い溶剤に対する耐性が必要とされる。
【0011】
近年、COA(Color−filter On Array)方式の液晶表示装置の実用化が進んでいる。COA方式では、TFTの上に層間絶縁膜の役割も兼ねる着色層を形成される。このため、着色層に対する要求特性は前述のような通常の要求特性に加えて、層間絶縁膜に対する要求特性、即ち剥離液耐性等が必須の要求特性として追加される。これらの要求特性を満足するためには、着色層の上に保護層として樹脂被膜を設けることも行なわれている。
【0012】
従来、カラーフィルタの評価に用いられる耐NMP性は30℃×30分で浸漬させた前後の色度変化で評価されてきた。上記の剥離液耐性は80℃での浸漬後の浸積液の色変化で評価されるので、通常の着色層のままではCOA方式のカラーフィルタには全く使えないものである。
【0013】
このようなより厳しい条件での溶剤耐性を付与するために、下記のような提案がなされている。特許文献1では、カルボキシル基含有重合体にエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物を反応させることにより得られ、その二重結合当量が420以下であるアルカリ可溶性樹脂からなるバインダー樹脂を用いることにより、良好な画像形成性を有すると共に耐熱性に優れた光重合性組成物、及び、該光重合性組成物を用いたカラーフィルタが提案されている。しかし、アルカリ可溶性樹脂の二重結合当量を下げて光硬化性を上げただけでは、より厳しい耐NMP性を満足することはできなかった。特許文献2では、光架橋剤にカプロラクトン変性部位を有する光架橋剤を少なくとも1種類用い、熱架橋剤にメラミン樹脂を用いることにより、透明樹脂による保護層(オーバーコート層)を設けることなく、液晶表示装置作製工程などにおいて不具合を発生しない信頼性の高いカラーフィルタが提案されている。しかし、カプロラクトン変性部位を有する光架橋剤を用いても、耐NMP性の改善効果は限定的であった。特許文献3では、特定の光重合開始剤と4官能以上の多官能エポキシ化合物により、NMP耐性、ITO蒸着適性、液保存安定性が良好である硬化性樹脂組成物を用いたカラーフィルタが提案されている。ヘキサアリールビイミダゾール系重合開始剤と、オキシム系開始剤、もしくはトリアジン系開始剤のいずれか一方が必須成分としており、適用範囲が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−337450号公報
【特許文献2】特開2007−225717号公報
【特許文献3】特開2010−24434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、コントラスト比、耐溶剤性、現像性、耐熱性、耐光性に優れるカラーフィルタ用赤色着色組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カラーフィルタ用赤色着色組成物の着色剤として、赤色顔料と有機色素誘導体を含有し、熱架橋性成分として3官能以上の多官能エポキシ樹脂を使用することにより、微細化された赤色顔料であっても耐溶剤性に優れ、コントラスト比、現像性、耐熱性、耐光性を保持することができることを見出し、この知見に基づいて本発明をなしたものである。
【0017】
すなわち、本発明は、有機顔料と、下記一般式(I)で示される有機色素誘導体と、有機溶剤と、アルカリ可溶性樹脂と、熱架橋性成分とを含むカラーフィルタ用赤色着色組成物であって、
有機顔料が、少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、その一次粒子径が25〜45nmであり、
熱架橋性成分が、3官能以上の多官能エポキシ樹脂であることを特徴とするカラーフィルタ用赤色着色組成物に関する。
【0018】
一般式(I)
P−[X1−(CH2)m−N(R1,R2)]n
【0019】
(式中、Pは、ジケトピロロピロール、ベンゾイソインドール、チアジンインジゴ骨格構造の残基を表し、
1は−CH2NH−、−SO2NH−、−CH2NHCO−、−CH2NHCOCH2NH−、及び、−CONH−から選ばれる2価の連結基を表し、
1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、または、R1及びR2で窒素原子または酸素原子を含んでも良い複素環を表し、
mは1〜4、nは1〜4を表す。)
【0020】
また、本発明は、有機顔料が、さらにC.I.ピグメント レッド 177を含有することを特徴とする前記記載のカラーフィルタ用赤色着色組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、有機顔料が、さらに黄色顔料を含有することを特徴とする前記記載のカラーフィルタ用赤色着色組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を含有することを特徴とする前記記載のカラーフィルタ用赤色着色組成物に関する。
【0023】
また、本発明は、光重合開始剤を含有することを特徴とする前記カラーフィルタ用赤色着色組成物に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、有機顔料が少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、その一次粒子径が25〜45nmであり、さらに下記一般式(I)で示される有機色素誘導体を含有し、熱架橋性成分が3官能以上の多官能エポキシ樹脂であるカラーフィルタ用赤色着色組成物を用いることにより、微細化された赤色顔料を用いた場合でもコントラスト比、耐溶剤性、色特性、耐熱性、耐光性に優れたカラーフィルタを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明のカラーフィルタ用赤色着色組成物は、有機顔料が少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、その一次粒子径が25〜45nmであり、さらに下記一般式(I)で示される有機色素誘導体を含有し、熱架橋性成分が3官能以上の多官能エポキシ樹脂であるカラーフィルタ用赤色着色組成物である。
【0027】
<着色剤>
本発明のカラーフィルタ用赤色着色組成物の着色剤としては、赤色の有機顔料と有機色素誘導体を含むものである。
(赤色の有機顔料)
本発明の赤色着色組成物の用いる赤色の有機顔料としては、少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、さらに、従来用いられている下記のカラーインデックスの赤色顔料を用いることができる。
【0028】
C.I.ピグメント レッド 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、57:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、97、122、123、146、149、168、169、176、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、209、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、255、264、270、272、273、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、及び287等がある。
【0029】
これらの中でも、本発明の赤色着色組成物に用いる赤色の有機顔料としては、少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、さらに、C.I.ピグメント レッド 177を含有することが好ましく、色度によっては、さらにC.I.ピグメント イエロー 150を併用することが好ましい。
【0030】
また、別の好ましい組み合わせとしては、少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、C.I.ピグメント イエロー 138または139との併用系が挙げられる。
【0031】
本発明の赤色着色組成物に用いる着色剤は、赤色の有機顔料に加えて、黄色の有機顔料を併用してもよい。
併用する黄色の有機顔料としては、例えばC.I.ピグメント イエロー 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、及び199等を用いることができる。
中でも、C.I.ピグメント イエロー 138、139、150、及び185が好ましい。
【0032】
[顔料の微細化]
本発明の赤色着色組成物に使用する赤色の有機顔料、さらにオプションとして用いる有機顔料は、ソルトミリング処理を行い微細化することが好ましい。顔料の一次粒子径は、着色剤担体中への分散が良好なことから、20nm以上であることが好ましい。また、コントラスト比が高いフィルタセグメントを形成できることから、50nm以下であることが好ましい。特に好ましい範囲は、25〜45nmの範囲である。なお、顔料の一次粒子径は、顔料のTEM(透過型電子顕微鏡)による電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを画像処理で評価した。具体的には、TEM写真上の100個の一次粒子について、円相当径を
求め、その平均値を平均一次粒子径とした。
【0033】
少なくともC.I.ピグメント レッド 254は、その一次粒子径が25〜45nmであることが好ましい。
【0034】
ソルトミリング処理とは、顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤との混合物を、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等の混練機を用いて、加熱しながら機械的に混練した後、水洗により水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を除去する処理である。水溶性無機塩は、破砕助剤として働くものであり、ソルトミリング時に無機塩の硬度の高さを利用して顔料が破砕される。顔料をソルトミリング処理する際の条件を最適化することにより、一次粒子径が非常に微細であり、また、分布の幅がせまく、シャープな粒度分布をもつ顔料を得ることができる。
【0035】
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等を用いることができるが、価格の点から塩化ナトリウム(食塩)を用いるのが好ましい。水溶性無機塩は、処理効率と生産効率の両面から、顔料の全重量を基準(100重量%)として、50〜2000重量%用いることが好ましく、300〜1000重量%用いることが最も好ましい。
【0036】
水溶性有機溶剤は、顔料及び水溶性無機塩を湿潤する働きをするものであり、水に溶解(混和)し、かつ用いる無機塩を実質的に溶解しないものであれば特に限定されない。ただし、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点溶剤が好ましい。例えば、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコール等が用いられる。水溶性有機溶剤は、顔料の全重量を基準(100重量%)として、5〜1000重量%用いることが好ましく、50〜500重量%用いることが最も好ましい。
【0037】
顔料をソルトミリング処理する際には、必要に応じて樹脂を添加してもよい。用いられる樹脂の種類は特に限定されず、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等を用いることができる。用いられる樹脂は、室温で固体であり、水不溶性であることが好ましく、かつ上記有機溶剤に一部可溶であることがさらに好ましい。樹脂の使用量は、顔料の全重量を基準(100重量%)として、5〜200重量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
<有機色素誘導体>
本発明の赤色着色組成物に使用するC.I.ピグメント レッド 254と併用される有機色素誘導体は、下記一般式(I)で示されるものである。
【0039】
一般式(I)
P−[X1−(CH2)m−N(R1,R2)]n
【0040】
(式中、Pは、ジケトピロロピロール、ベンゾイソインドール、チアジンインジゴ骨格構造の残基、X1は−CH2NH−、−SO2NH−、−CH2NHCO−、−CH2NHCOCH2NH−、−CONH−から選ばれる2価の連結基、R1,R2はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、またはR1,R2で窒素原子または酸素原子を含んでも良い複素環、mは1〜4、nは1〜4を表す。)
【0041】
以下に、ジケトピロロピロール構造、ベンゾイソインドール構造、チアジンインジゴ構造の色素誘導体を例示する。
(ジケトピロロピロール誘導体の具体例)
また、ジケトピロロピロール誘導体としては、具体的には、以下の式(2)又は(3)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化1】



(ベンゾイソインドール誘導体の具体例)
また、ベンゾイソインドール誘導体としては、具体的には、式(4)で表される以下の化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化2】

(アントラキノン誘導体の具体例)
また、アントラキノン誘導体としては、具体的には、以下の式(5)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
【化3】

【0045】
(ジアントラキノン誘導体の具体例)
また、ジアントラキノン誘導体としては、具体的には、以下の式(6)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
【化4】

【0047】
(チアジンインジゴ誘導体の具体例)
また、チアジンインジゴ誘導体としては、具体的には、以下の式(7)で表される化合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
【化5】

【0049】
<熱架橋性成分>
本発明における3官能以上の多官能エポキシ樹脂とは、1分子中に3個以上のエポキシ環を有する化合物である。エポキシ環は、バインダー樹脂のカルボキシル基と熱架橋することができる。
【0050】
本発明に使用できる3官能以上の多官能エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
【0051】
ノボラック型エポキシ樹脂とは、下記一般式(8)で表される化合物で、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に分類される。
一般式(8)
【0052】
【化6】

【0053】
R1は、それぞれ独立にメチル基または水素原子、qは、2〜100の整数である。
【0054】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、具体的には、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−4500、EOCN−4600、XD−1000、XD−1000−L、XD−1000−2L、NC−3000、NC−3000−H(以上、日本化薬社製)、YDPN−638、YDCN−700−2、YDCN−700−3、YDCN−700−5、YDCN−700−7、YDCN−700−10、YDCN−704、YDCN−704A(以上、新日鐵化学社製)、N−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−690、N−695、N−665−EXP、N−672−EXP、N−655−EXP−S、N−662−EXP−S(以上、DIC社製)などが挙げられる。
【0055】
脂環式エポキシ樹脂とは、例えば、下記一般式(9)で表される化合物である。脂環式エポキシ樹脂としては、EHPE3150(ダイセル化学工業社製)などが挙げられる。
一般式(9)
【0056】
【化7】

【0057】
j、k、lはそれぞれ1〜30の整数である。
【0058】
これ以外の3官能以上の多官能エポキシ樹脂としては、三官能のエポキシ樹脂であるテクモアVG3101(プリンテック社製)、四官能のエポキシ樹脂であるTETRAD−C、TETRAD−X(以上、三菱ガス化学社製)などが挙げられる。
【0059】
3官能以上の多官能エポキシ樹脂の添加量としては、アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸量C1に対して、エポキシ量D1との比率(C1/D1)が0.5以上1.5以下であることが好ましい。C1/D1が0.5より小さいと、ベーク後の黄変により、カラーフィルタの品質が損われたり、着色組成物の経時安定性が保てない場合がある。C1/D1が1.5より大きいと、耐溶剤性の改善効果が制限されることがある。
【0060】
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂としては、酸性基含有エチレン性不飽和単量体を共重合したアクリル共重合樹脂を使用することができる。また、さらに光感度を向上させるために、エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることもできる。アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、着色剤を好ましく分散させるためには、3,000〜100,000の範囲が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000の範囲である。また数平均分子量(Mn)は3,000〜30,000の範囲が好ましく、Mw/Mnの値は5以下であることが好ましい。
【0061】
アルカリ可溶性樹脂をカラーフィルタ用感光性着色組成物として使用する場合には、顔料の分散性、浸透性、現像性、及び耐熱性の観点から、着色剤吸着基及び現像時のアルカリ可溶基として働くカルボキシル基、着色剤担体及び溶剤に対する親和性基として働く脂肪族基及び芳香族基のバランスが、顔料及び造塩化合物の分散性、浸透性、現像性、さらには耐久性にとって重要であり、酸価20〜300mgKOH/gの樹脂を用いることが好ましい。酸価が、20mgKOH/g未満では、現像液に対する溶解性が悪く、微細パターン形成するのが困難である。300mgKOH/gを超えると、微細パターンが残らなくなる。
【0062】
アルカリ可溶性樹脂は、成膜性および諸耐性が良好なことから、着色剤の全重量を基準(100重量%)として、30重量%以上の量で用いることが好ましく、着色剤濃度が高く、良好な色特性を発現できることから、500重量%以下の量で用いることが好ましい。
【0063】
酸性基含有エチレン性不飽和モノマーを共重合したアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂として具体的には、酸性基を有するアクリル樹脂、α−オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、酸性基を有するアクリル樹脂、およびスチレン/スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂、特に酸性基を有するアクリル樹脂は、耐熱性、透明性が高いため、好適に用いられる。
【0064】
エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としては、たとえば以下に示す(a)や(b)の方法により不飽和エチレン性二重結合を導入した樹脂が挙げられる。
【0065】
[方法(a)]
方法(a)としては、例えば、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、不飽和エチレン性二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシル基を付加反応させ、更に、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させ、不飽和エチレン性二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0066】
エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。次工程の不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0067】
不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0068】
多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。カルボキシル基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解すること等もできる。また、多塩基酸無水物として、不飽和エチレン性二重結合を有する、エトラヒドロ無水フタル酸、又は無水マレイン酸を用いると、更に不飽和エチレン性二重結合を増やすことができる。
【0069】
方法(a)の類似の方法として、例えば、カルボキシル基を有する不飽和エチレン性単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体を付加反応させ、不飽和エチレン性二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0070】
[方法(b)]
方法(b)としては、水酸基を有する不飽和エチレン性単量体を使用し、他のカルボキシル基を有する不飽和一塩基酸の単量体や、他の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有する不飽和エチレン性単量体のイソシアネート基を反応させる方法がある。
【0071】
水酸基を有する不飽和エチレン性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。また、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、(ポリ)γ−バレロラクトン、(ポリ)ε−カプロラクトン、及び/又は(ポリ)12−ヒドロキシステアリン酸等を付加した(ポリ)エステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。塗膜異物抑制の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又はグリセロール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0072】
イソシアネート基を有する不飽和エチレン性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定することなく、2種類以上併用することもできる。
その他の樹脂成分として、熱硬化性樹脂を使用することができ、例えば、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびフェノール樹脂等が挙げられる。
【0073】
<有機溶剤>
本発明の赤色着色組成物には、着色剤を充分に着色剤担体中に分散、浸透させ、ガラス基板等の基板上に乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布してフィルタセグメントを形成することを容易にするために有機溶剤を含有させることができる。
【0074】
有機溶剤としては、例えば乳酸エチル、ベンジルアルコール、1,2,3−トリクロロプロパン、1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ジオキサン、2−ヘプタノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン-1-オン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、4−ヘプタノン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、n−ブチルアルコール、n−ブチルベンゼン、n−プロピルアセテート、o−キシレン、o−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロトルエン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられる。
【0075】
中でも、本発明の顔料の分散、溶解が良好なことから、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類やシクロヘキサノン等のケトン類を用いることが好ましい。
【0076】
有機溶剤は、1種を単独で、若しくは2種以上を混合して用いることができる。また有機溶剤は、着色組成物を適正な粘度に調節し、目的とする均一な膜厚のフィルタセグメントを形成できることから、着色剤の全重量を基準(100重量%)にして、800〜4000重量%の量で用いることが好ましい。
【0077】
(分散助剤)
着色剤を着色剤担体中に分散する際には、適宜、樹脂型分散剤、界面活性剤等の分散助剤を用いることができる。分散助剤は、着色剤の分散に優れ、分散後の着色剤の再凝集を防止する効果が大きいので、分散助剤を用いて着色剤を顔料担体中に分散してなる着色組成物を用いた場合には、分光透過率の高いカラーフィルタが得られる。
【0078】
樹脂型分散剤は、着色剤に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、着色剤担体と相溶性のある部位とを有し、着色剤に吸着して着色剤の着色剤担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0079】
市販の樹脂型分散剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk−101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155またはAnti−Terra−U、203、204、またはBYK−P104、P104S、220S、6919、またはLactimon、Lactimon−WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE−3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等、チバ・ジャパン社製のEFKA−46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0080】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等のノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物等のカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0081】
樹脂型分散剤、界面活性剤を添加する場合には、着色剤の全量を基準(100重量%)とし、好ましくは0.1〜55重量%、さらに好ましくは0.1〜45重量%である。樹脂型分散剤、界面活性剤の配合量が、0.1重量%未満の場合には、添加した効果が得られ難く、配合量が55重量%より多いと、過剰な分散剤により分散に影響を及ぼすことがある。
【0082】
本発明の着色組成物は、さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を添加し、カラーフィルタ用感光性着色組成物として使用することが出来る。
【0083】
<光重合性化合物>
本発明の光重合性化合物には、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。モノマーの配合量は、着色剤の全重量を基準(100重量%)として、5〜400重量%であることが好ましく、光硬化性および現像性の観点から10〜300重量%であることがより好ましい。
【0084】
紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマー、オリゴマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0085】
<光重合開始剤>
本発明のカラーフィルタ用赤色着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化させ、フォトリソグラフ法によりフィルタセグメントを形成する場合は、光重合開始剤等を加えて溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジスト材の形態で調整することができる。光重合開始剤を使用する際の配合量は、着色剤の全量を基準として、5〜200重量%であることが好ましく、光硬化性および現像性の観点から10〜150重量%であることがより好ましい。
【0086】
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、又は2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、又はベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、又は3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、又は2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、又は2,4−トリクロロメチル−(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系化合物;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、又はO−(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4’−メトキシ−ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、又は2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物; ボレート系化合物; カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物等が用いられる。
【0087】
これらの光重合開始剤は1種または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。これらの光重合開始剤は、カラーフィルタ用赤色着色組成物中の着色剤の全量を基準(100重量%)として、5〜200重量%であることが好ましく、光硬化性及び現像性の観点から10〜150重量%であることがより好ましい。
【0088】
<増感剤>
さらに、本発明のカラーフィルタ用赤色着色組成物には、増感剤を含有させることができる。増感剤としては、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ−ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,又は4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0089】
さらに具体的には、大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、及び「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す増感剤を含有させることもできる。
【0090】
増感剤は、必要に応じて任意の比率で二種以上用いてもかまわない。増感剤を使用する際の配合量は、着色組成物中に含まれる光重合開始剤の全重量を基準(100重量%)として、3〜60重量%であることが好ましく、光硬化性、現像性の観点から5〜50重量%であることがより好ましい。
【0091】
<レベリング剤>
本発明の着色組成物には、透明基板上での組成物のレベリング性をよくするため、レベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤としては、主鎖にポリエーテル構造又はポリエステル構造を有するジメチルシロキサンが好ましい。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、東レ・ダウコーニング社製FZ−2122、ビックケミー社製BYK−333などが挙げられる。主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、ビックケミー社製BYK−310、BYK−370などが挙げられる。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンと、主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンとは、併用することもできる。レベリング剤の含有量は通常、着色組成物の全重量を基準(100重量%)として、0.003〜0.5重量%用いることが好ましい。
【0092】
レベリング剤として特に好ましいものとしては、分子内に疎水基と親水基を有するいわゆる界面活性剤の一種で、親水基を有しながらも水に対する溶解性が小さく、着色組成物に添加した場合、その表面張力低下能が低いという特徴を有し、さらに表面張力低下能が低いにも拘らずガラス板への濡れ性が良好なものが有用であり、泡立ちによる塗膜の欠陥が出現しない添加量において十分に帯電性を抑止できるものが好ましく使用できる。このような好ましい特性を有するレベリング剤として、ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンが好ましく使用できる。ポリアルキレンオキサイド単位としては、ポリエチレンオキサイド単位、ポリプロピレンオキサイド単位があり、ジメチルポリシロキサンは、ポリエチレンオキサイド単位とポリプロピレンオキサイド単位とを共に有していてもよい。
【0093】
また、ポリアルキレンオキサイド単位のジメチルポリシロキサンとの結合形態は、ポリアルキレンオキサイド単位がジメチルポリシロキサンの繰り返し単位中に結合したペンダント型、ジメチルポリシロキサンの末端に結合した末端変性型、ジメチルポリシロキサンと交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマー型のいずれであってもよい。ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンは、東レ・ダウコーニング株式会社から市販されており、例えば、FZ−2110、FZ−2122、FZ−2130、FZ−2166、FZ−2191、FZ−2203、FZ−2207が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
レベリング剤には、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、または両性の界面活性剤を補助的に加えることも可能である。界面活性剤は、2種以上混合して使用しても構わない。
レベリング剤に補助的に加えるアニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0095】
レベリング剤に補助的に加えるカオチン性界面活性剤としては、アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。レベリング剤に補助的に加えるノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどの;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、また、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤が挙げられる。
【0096】
<硬化剤、硬化促進剤>
また本発明の着色組成物には、熱硬化性樹脂の硬化を補助するため、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。硬化剤としては、フェノール系樹脂、アミン系化合物、酸無水物、活性エステル、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物などが有効であるが、特にこれらに限定されるものではなく、熱硬化性樹脂と反応し得るものであれば、いずれの硬化剤を使用してもよい。また、これらの中でも、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物、アミン系硬化剤が好ましく挙げられる。前記硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等)、4級アンモニウム塩化合物(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等)、ブロックイソシアネート化合物(例えば、ジメチルアミン等)、イミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩(例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等)、リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン等)、グアナミン化合物(例えば、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等)、S−トリアジン誘導体(例えば、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等)などを用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記硬化促進剤の含有量としては、熱硬化性樹脂全量に対し、0.01〜15重量%が好ましい。
【0097】
<その他の添加剤成分>
本発明の着色組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。また、透明基板との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
【0098】
貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色剤の全量を基準(100重量%)として、0.1〜10重量%の量で用いることができる。
【0099】
密着向上剤としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等のシランカップリング剤が挙げられる。密着向上剤は、着色組成物中の着色剤の全量を基準(100重量%)として、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%の量で用いることができる。

【実施例】
【0100】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」とは「重量部」を意味する。
【0101】
また、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。なお、顔料の一次粒子径は、(顔料の微細化)で説明した通り、顔料のTEM(透過型電子顕微鏡)による電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを画像処理で評価した。具体的には、TEM写真上の100個の一次粒子について、円相当径を求め、その平均値を平均一次粒子径とした。
【0102】
まず、実施例および比較例に用いたアルカリ可溶性樹脂、微細化顔料、顔料分散体、赤色感光性着色組成物の製造方法から説明する。
<アルカリ可溶性樹脂1、2の製造方法>
(アルカリ可溶性樹脂1の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にメトキシプロピルアセテート70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn−ブチルメタクリレート13.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸4.3部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してアルカリ可溶性樹脂1を調製した。
【0103】
(アルカリ可溶性樹脂2の調製)
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管及び撹拌装置を備えたセパラブル4口フラスコにメトキシプロピルアセテート207部を仕込み、80℃に昇温し、フラスコ内を窒素置換した後、滴下管より、メタクリル酸20部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート20部、メタクリル酸メチル45部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8.5部、及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル1.33部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、共重合体樹脂溶液を得た。
【0104】
次に得られた共重合体溶液全量に対して、窒素ガスを停止し乾燥空気を1時間注入しながら攪拌したのちに、室温まで冷却した後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製カレンズMOI)6.5部、ラウリン酸ジブチル錫0.08部、メトキシプロピルアセテート26部の混合物を70℃で3時間かけて滴下した。
【0105】
樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してアルカリ可溶性樹脂2を調製した。重量平均分子量(Mw)は18000であった。
【0106】
(赤色顔料1の作成)
市販のジケトピロロピロール顔料(C.I.Pigment Red 254、チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガフォアレッドB−CF」)86部、上記(4−1)で表されるベンゾイソインドール誘導体の色素誘導体4部、食塩900部、及びジエチレングリコール110部を、混練機(株式会社井上製作所製「1ガロンニーダー」)中に仕込み、15時間混練した。次に、混練した混合物を温水に投入し、約80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥後、粉砕し、微細ジケトピロロピロール顔料86.0部を得た。得られた微細ジケトピロロピロール顔料は、TEM写真より求めた、一次粒子径の平均値は、30nmであった。
【0107】
(赤色顔料2)
市販のジケトピロロピロール顔料(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガフォアレッドB−CF」)である。一次粒子径の平均値は、70nmであった。
(赤色顔料3の作製)
アントラキノン系赤色顔料C.I.ピグメント レッド 177(チバ・ジャパン社製「クロモフタルレッド A2B」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部の赤色顔料3を得た。赤色顔料3の比表面積は80m2/gであり、一次粒子径の平均値は35nmであった。
【0108】
(黄色顔料の作製)
ニッケル錯体系黄色顔料C.I.ピグメント イエロー 150(ランクセス社製「E−4GN」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部の黄色顔料2を得た。黄色顔料の比表面積は65m2/gであり、一次粒子径の平均値は35nmであった。
【0109】
(チップ製造方法)
下記配合にて、赤色顔料1、上記(4−1)で表されるベンゾイソインドール誘導体の色素誘導体、及びアクリル樹脂溶液を予め十分混合した後、2本ロールミルにて練肉し、シート状物とした。このシート状物を数枚に折り畳み、再度2本ロールミルに通した。この工程を10〜40回繰り返し行った後、粉砕機で粉砕することでチップを作製した。
赤色顔料1 97.0部
上記(4−1)で表される色素誘導体 11.0部
アルカリ可溶性樹脂溶液1(固形分20%) 360.0部
【0110】
(顔料分散体の調製法)
下記組成の混合物を均一に攪拌溶解した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し顔料分散体(P−1)を作製した
先に調製したチップ 202部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 596部
以下、表1に示す顔料に変更した以外は、上記顔料分散体(P−1)と同様にして、顔料分散体(P−2〜4)を作製した。
【0111】
【表1】

【0112】
(感光性着色組成物の調製)
顔料分散体を、表2に示すように配合し、均一に攪拌混合した後、1μmのフィルターで濾過して感光性着色組成物(R−1)を作製した。
顔料分散体 合計100部
アルカリ可溶性樹脂溶液2 18.3部
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルATMPT」) 7.0部
光開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製)「イルガキュア−907」 1.2部
増感剤(保土ヶ谷化学社製EAB−F) 0.4部
メトキシプロピルアセテート 52.1部
熱硬化性成分 D−1 4.8部
以下、表2に示す顔料分散体、熱硬化性成分に変更した以外は、上記の感光性着色組成物(R−1)と同様にして、感光性着色組成物(R−2〜13)を作製した。
【0113】
【表2】

【0114】
(感光性着色組成物の評価)
得られた感光性着色組成物(R−1〜13)の塗膜のコントラスト比、耐熱性、耐光性、耐溶剤性の各試験を下記の方法で行った。試験の結果を表3に示す。
【0115】
(コントラスト比の評価)
ガラス基板上にC光源においてx=0.640、y=0.315になるような膜厚に感光性着色組成物を塗布し、この基板を230℃で20分加熱した。その後、得られた基板の明度(Y)を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP200」)で測定した。
【0116】
測定用塗布基板を一対の偏光板で挟持し、株式会社トプコン社製「色彩頻度計BM−5A」を用いて、偏光板が平行時の輝度及び直行時の輝度を測定した。偏光板は、サンリツ社製「偏光フイルムLLC2−92−18」を用いた。なお、輝度の測定に際しては、不要光を遮断するために、測定部分に1cm角の孔を空けた黒色のマスクを当てた。測定した平行時の輝度及び直行時の輝度の値から、下記式でコントラスト比を算出した。
【0117】
コントラスト比=平行時の輝度/直行時の輝度
4種の膜厚の異なる塗布基板の色相x値とコントラスト比の関係から、色相x=0.64のときのコントラスト比を算出した

◎:コントラスト比が4000以上
○:コントラスト比が3500以上、4000未満
△:コントラスト比が3000以上、3500未満
×:コントラスト比が2500未満
【0118】
(塗膜耐熱性試験の方法)
透明基板上に乾燥塗膜が約2.5μmとなるように感光性着色組成物を塗布し、所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行った後、スプレーによりアルカリ現像液を噴霧して未硬化部を除去して所望のパターンを形成した。その後、オーブンで230℃×20分加熱、放冷後、得られた塗膜のC光源での色度1(L*(1),a*(1),b*(1))を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP200」)を用いて測定した。さらにその後、耐熱試験としてオーブンで250℃1時間加熱し、C光源での色度2(L*(2),a*(2),b*(2))を測定した。
以下、表3にその結果を示す。
【0119】
測定した色差値を用いて、下記計算式により、色差ΔEab*を算出し、塗膜の耐熱性を下記の4段階で評価した。
ΔEab* = √((L*(2)- L*(1))2+ (a*(2)- a*(1)) 2+( b*(2)- b*(1)) 2)

◎:ΔEab*が1.5未満
○:ΔEab*が1.5以上、2.5未満
△:ΔEab*が2.5以上、5.0未満
×:ΔEab*が5.0以上
以下、表3にその結果を示す。
【0120】
(塗膜耐光性試験の方法)
塗膜耐熱性試験と同じ手順で試験用基板を作製し、C光源での色度1(L*(1),a*(1),b*(1))を顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP200」)を用いて測定した。その後、基板を耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)に入れ、500時間放置した。基板を取り出した後、C光源での色度2(L*(2),a*(2),b*(2))を測定し、塗膜耐熱性試験と同様にして色差ΔEab*を算出し、耐熱性と同様の基準により塗膜の耐光性を評価した。
以下、表3にその結果を示す。
【0121】
(塗膜耐溶剤性試験の方法)
耐熱性試験と同じ手順で試験用基板を作製し、3cm□に切り出し、80℃のN−メチルピロリドン15mlに40分間浸漬し、塗膜の溶剤抽出を行った。紫外分光光度計を用いて溶剤抽出を行ったN−メチルピロリドンの分光測定を行い、515nmにおける吸光度を求めた。

◎:吸光度が1.0未満
○:吸光度が1.0以上、1.5未満
△:吸光度が1.5以上、2.5未満
×:吸光度が2.5以上

以下、表3にその結果を示す。
【0122】
【表3】

【0123】
実施例1〜7の感光性着色組成物(R−1〜7)は、コントラスト比、耐溶剤性、現像性、耐熱性、耐光性が良好でカラーフィルタとして使用可能な範囲にあった。一方、比較例1,2の感光性着色組成物(R−8、9)は耐溶剤性が悪く、比較例3,4の感光性着色組成物(R−10、11)では、耐溶剤性は良好なものの、コントラスト比が劣るため、使用可能な範囲にはないものであった。これにより、有機顔料が少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、その一次粒子径が25〜45nmであり、さらに下記一般式(I)で示される有機色素誘導体を含有し、熱架橋性成分が3官能以上
の多官能エポキシ樹脂であることを特徴とするカラーフィルタ用赤色着色組成物を用いることにより、コントラスト比、耐溶剤性、現像性、耐熱性、耐光性に優れたカラーフィルタを提供できることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料と、下記一般式(I)で示される有機色素誘導体と、有機溶剤と、アルカリ可溶性樹脂と、
熱架橋性成分とを含むカラーフィルタ用赤色着色組成物であって、
有機顔料が、少なくともC.I.ピグメント レッド 254を含有し、その一次粒子径が25〜45nmであり、
熱架橋性成分が、3官能以上の多官能エポキシ樹脂であることを特徴とするカラーフィルタ用赤色着色組成物。
一般式(I)
P−[X1−(CH2)m−N(R1,R2)]n
(式中、Pは、ジケトピロロピロール、ベンゾイソインドール、チアジンインジゴ骨格構造の残基を表し、
1は−CH2NH−、−SO2NH−、−CH2NHCO−、−CH2NHCOCH2NH−、及び、−CONH−から選ばれる2価の連結基を表し、
1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、または、R1及びR2で窒素原子または酸素原子を含んでも良い複素環を表し、
mは1〜4、nは1〜4を表す。)
【請求項2】
有機顔料が、さらにC.I.ピグメント レッド 177を含有することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ用赤色着色組成物。
【請求項3】
有機顔料が、さらに黄色顔料を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ用赤色着色組成物。
【請求項4】
さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のカラーフィルタ用赤色着色組成物。

【公開番号】特開2012−177716(P2012−177716A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39146(P2011−39146)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】