説明

カラー有機ELディスプレイの製造方法

【課題】 基板上にカラーフィルタ層、オーバーコート層、ガスバリア層、および有機EL構造体が順次積層されてなるカラー有機ELディスプレイにおいて、オーバーコート層中に残留する硫黄成分によるダークスポットの発生を極力防止する。
【解決手段】 カラーフィルタ層13の上にオーバーコート層14を光重合で形成した後、オーバーコート層14の表層部の硫黄または硫黄化合物を除去し、続いて、ガスバリア層20の下地部分に脱水処理を施し、その後、オーバーコート層14の上に、ガスバリア層20を、カラーフィルタ層13およびオーバーコート層14の分解開始温度以下の温度にてALE法で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)構造体とカラーフィルタとの間にガスバリア層を介在させてなるカラー有機ELディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカラー有機ELディスプレイは、一般に、基板上にカラーフィルタ層、オーバーコート層、ガスバリア層、および有機EL構造体が順次積層されてなる構成を備えている。
【0003】
ここで、ガスバリア層は、樹脂からなるカラーフィルタ層やオーバーコート層から揮発する水分が、その上の有機EL構造体へ侵入するのを防止するバリアとして作用するもので、このような水分に起因する有機EL構造体のダークスポットや発光効率の低下等の不具合を防止している。
【0004】
このようなガスバリア層を有するカラー有機ELディスプレイの製造方法として、先に、本出願人は、特願2004−211593号を提案している。
【0005】
この製造方法は、ガスバリア層のガスバリア性を向上するためのもので、基板上にカラーフィルタ層を形成し、その上にオーバーコート層を光重合で形成した後、ガスバリア層を成膜する前にガスバリア層の下地部分に脱水処理を施し、続いて、ガスバリア層を、カラーフィルタ層およびオーバーコート層の分解開始温度以下の温度で原子層エピタキシャル成長法(以下、ALE法という)で形成し、その後、有機EL構造体を形成するようにしたものである。
【0006】
それによれば、脱水処理によって、カラーフィルタおよびオーバーコートといったガスバリア層の下地部分の中に含まれる水分を除去するとともに、カバレージに優れたALE法によってガスバリア層を成膜することで、ピンホールの少ないガスバリア性に優れたガスバリア層を実現している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者が更に検討を行ったところ、上記の製造方法では、初期的にはダークスポットを防止できるが、経時的なダークスポット、すなわち駆動中や保存中に発生するダークスポットを防止するには不十分であることがわかった。
【0008】
本発明者が調査した結果、ガスバリア層の下地であるオーバーコート層の表層部に存在する硫黄または硫黄化合物が、上記ダークスポットの主たる原因であることがわかった。具体的に、本発明者は、ダークスポットの発生部を断面カットし透過型電子顕微鏡にて観察した。
【0009】
図4は、その顕微鏡観察に基づくダークスポットの発生部の概略断面図であり、オーバーコート層14の上に、ガスバリア層20、陽極31が積層されている。ここで、オーバーコート層14の表層部にボイドBがあり、その上部のガスバリア層20はテーパ状に欠損していることがわかる。そして、この欠損部が、経時的にダークスポットとなる箇所である。
【0010】
また、図5も、顕微鏡観察に基づくオーバーコート層14の近傍部の概略断面図であるが、オーバーコート層14の表層部近傍に異物Kが存在することがわかる。本発明者がEDXなどによる表面元素分析を行ったところ、この異物Kは、硫黄成分すなわち硫黄もしくは硫黄化合物であることがわかった。
【0011】
また、本発明者の観察によれば、この異物Kはオーバーコート層14の表層部に集中して存在し、それよりも内部側には存在しないこともわかった。そして、このような異物Kが存在する箇所に対応して、上記ダークスポットが発生していることを確認した。
【0012】
通常、オーバーコート層14は、アクリル系樹脂などの樹脂を光重合することで成膜されるが、その樹脂中には、一般に知られている硫黄成分を含む光重合開始剤や増感剤が添加されている。
【0013】
そして、この硫黄成分は、オーバーコート層14の形成時に完全に反応しきれず、一部が、オーバーコート層14の表層部に上記異物Kとして残留し、ガスバリア層20を成膜するときに、この硫黄成分が揮発し、上記のようなガスバリア層20の欠損部を生じると考えられる。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、基板上にカラーフィルタ層、オーバーコート層、ガスバリア層、および有機EL構造体が順次積層されてなるカラー有機ELディスプレイにおいて、オーバーコート層中に残留する硫黄成分によるダークスポットの発生を極力防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、上記先願に示される製造方法において、オーバーコート形成工程と脱水工程との間に、オーバーコート層の表層部の硫黄または硫黄化合物を除去する硫黄除去工程を行うことを特徴とする。
【0016】
それによれば、ガスバリア層の下地部分であるオーバーコート層の表層部に残留する硫黄成分を除去できるから、当該硫黄成分によるダークスポットの発生を極力防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るカラー有機ELディスプレイ100の概略断面構成を示す図である。
【0018】
基板11は、ガラス基板、樹脂基板等の透明な基板からなる。この基板11の一面上には、光の3原色である赤、青、緑のカラーフィルタ層13が設けられている。
【0019】
ここでは、基板11の一面上には、カラーフィルタ層13を分離するためのシャドウマスク12が形成され、これに、カラーフィルタ層13が設けられている。このシャドウマスク12は光を遮断するブラックマトリクスとして構成されるもので、樹脂や金属からなり、必要に応じて設けられるものである。
【0020】
この上部に、平坦化層として、UVなどの光重合により成膜される透明のオーバーコート層14が形成されている。これらカラーフィルタ層13とオーバーコート層14は主にアクリル系の樹脂で形成されている。そして、オーバーコート層14の上には、このオーバーコート層14を被覆するようにガスバリア層20が形成されている。
【0021】
ガスバリア層20は、カラーフィルタ層13およびオーバーコート層14の分解開始温度以下の温度にてALE法により形成されたものである。本例では、カラーフィルタ層13およびオーバーコート層14の分解開始温度は、230℃程度である。
【0022】
また、ガスバリア層20は、具体的に、Al23、TiO2、SiN、SiO2、SiON、ZrO2、MgO、CaO、GeO2、HfO2およびZnOから選ばれる1種以上からなる無機膜とすることができる。本例では、ガスバリア層20は、アルミナ(Al23)膜としている。
【0023】
そして、基板11の一面上すなわちガスバリア層20の上には、有機EL構造体30が形成されている。この有機EL構造体30は、互いに対向する一対の電極31、33間に有機発光材料を含む有機層32を配置してなる構造体である。有機EL構造体30としては、通常の有機EL構造体に用いられる材料や膜構成を採用することができるが、図1に示される一具体例について説明しておく。
【0024】
ガスバリア層20の上に、ITOなどの透明導電膜からなる陽極31が形成されている。本例では、陽極31は、図1中の左右方向に延びるストライプ状に形成されたものである。
【0025】
さらに陽極31のエッジでのショートを防ぐため、絶縁材料からなる絶縁膜40が形成されている。同様に、陰極33を分離するための隔壁41が樹脂などにより形成されている。
【0026】
この陽極31の上には、有機発光材料からなる発光層を含む有機層32が形成されており、この有機層32の上には、Alなどからなる陰極33が形成されている。本例では、陰極33は、陽極31と直交するストライプ状をなすものであり、図1中の紙面垂直方向に延びるストライプ状に形成されたものである。
【0027】
このように、本例の有機EL構造体30は、互いに直交するストライプ状の陽極31と隔壁41によって分離された陰極33とが交差して重なり合っており、これら両電極31、33の重なりあう領域が、発光表示を行うべき部分である画素を構成している。
【0028】
このような本カラー有機ELディスプレイ100においては、陽極31と陰極33との間に駆動用の直流電圧を印加することにより、所望の画素において、有機層32中の発光層が発光するようになっている。この発光はカラーフィルタ層13を通って基板11側から取り出される。
【0029】
次に、本カラー有機ELディスプレイ100の製造方法について、図2も参照して述べる。図2は、本製造方法の各工程S1〜S10の流れを示す工程フロー図である。
【0030】
本製造方法は、上記先願に示される製造方法において、硫黄除去工程S3を追加したものであり、オーバーコート層形成工程S2と脱水工程S4との間に硫黄除去工程S3を行う。
【0031】
まず、カラーフィルタ層形成工程S1では、無アルカリガラス基板などからなる基板10の一面に、スピンコート法やホトリソグラフ法により、光重合性アクリル樹脂などからなるカラーフィルタ層13を、たとえば膜厚1.5μmにて形成する。また、各色に分離されたカラーフィルタ層13の間に、ホトリソグラフ法によりシャドウマスク12を形成する。
【0032】
次に、オーバーコート層形成工程S2では、その上に、スピンコート法やホトリソグラフ法などにより、オーバーコート層14となる樹脂、たとえば光重合性透明アクリル樹脂を配置し、これにUVなどの光を照射して光重合させる。それにより、オーバーコート層14を、たとえば膜厚2.0μmにて形成する。ここまでの工程により、ガスバリア層20の下地部分ができあがる。
【0033】
次に、硫黄除去工程S3では、オーバーコート層14の表層部の硫黄または硫黄化合物を除去処理する。ここで、硫黄または硫黄化合物は、オーバーコート層14を構成する樹脂に添加される一般な光重合開始剤や増感剤に用いられる硫黄成分から発生するもので、硫黄単体や硫黄酸化物などである。
【0034】
これら硫黄成分を除去する具体的な方法としては、オーバーコート層14の表面をラップ研磨などによって研磨したり、オーバーコート層14の表面にUV照射を行ったり、H2Oガスを含む雰囲気中にてオーバーコート層14を加熱したり、オーバーコート層14の表面にアルゴン−酸素混合ガスによるプラズマ照射を行う方法などが挙げられる。
【0035】
ここで、上記した研磨、UV照射およびプラズマ照射は、これらの方法によってオーバーコート層14の表層部の一部を除去するもので、それにより、当該除去される部分とともに、その中に含まれる硫黄成分を除去するものである。
【0036】
本発明者が顕微鏡観察などによる検討を行ったところ、詳細なメカニズムは不明であるが、オーバーコート層14においては、その表面から20nm程度までの深さの部分に、硫黄成分が残留することがわかった。
【0037】
そこで、上記した研磨、UV照射およびプラズマ照射においては、オーバーコート層14の表面を、実質的に硫黄成分が存在しない領域まで、たとえば0.1μm程度の深さまで除去する。
【0038】
また、H2Oガスを含む雰囲気中にてオーバーコート層14を加熱する方法では、詳細なメカニズムは不明であるが、オーバーコート層14の表層部に存在する硫黄成分が、H2Oガスと化学反応し、揮発することにより除去されると考えられる。
【0039】
本例では、硫黄除去工程S3にて、一般的なラップ研磨によりオーバーコート層14の表面部分を厚さ0.1μm除去した。なお、研磨以外の硫黄除去方法の具体例については、後述する。
【0040】
次に、脱水工程S4では、ガスバリア層20の下地部分に脱水処理を施す。この脱水処理温度は、当該脱水処理工S4程以降の工程S4〜S10にて基板11にかかる温度以上の温度であって且つカラーフィルタ層13の分解開始温度以下の温度とする。たとえば本例では、200℃〜230℃の温度とする。
【0041】
次に、ガスバリア層形成工程S5では、基板11をALE装置に基板11をセットし、ガスバリア層20をALE法で形成する。ここでは、カラーフィルタ層13およびオーバーコート層14の分解開始温度以下の温度にて、ガスバリア層20を形成する。たとえば、ガスバリア層20の成膜温度は100〜250℃程度にできる。
【0042】
次に、基板11の一面上すなわちガスバリア層20の上に、有機EL構造体30を形成する。本例では、まず、陽極形成工程S6にて、ガスバリア層20の上にスパッタ法により成膜されたITO膜をエッチング等にてパターニングすることにより、陽極31を形成する。
【0043】
次に、絶縁膜形成工程S7にて、陽極31の間に絶縁膜40をフォトリソグラフィ法により形成し、続いて、隔壁形成工程S8にて、その上に隔壁41をフォトリソグラフィ法により形成する。次に、有機層形成工程S9では、陽極31の上に、有機層32を真空蒸着法により形成する。
【0044】
次に、陰極形成工程S10では、有機層32の上に、陰極33を真空蒸着法により成膜する。なお、これら有機層32や陰極33の真空蒸着による成膜温度は、室温程度である。こうして、上記図1に示されるカラー有機ELディスプレイ100ができあがる。
【0045】
なお、この後、有機EL構造体30の表面からの水分を遮断するため、乾燥剤をもったステンレスまたはガラスの封止缶によって、有機EL構造体30の外表面側を、乾燥窒素などによって封止するようにしてもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態の製造方法では、オーバーコート形成工程S2と脱水工程S4との間に、硫黄除去工程S3を行うようにしている。そのため、本実施形態によれば、ガスバリア層20の下地部分であるオーバーコート層14の表層部に残留する硫黄成分を除去できるから、当該硫黄成分によるダークスポットの発生を極力防止することができる。
【0047】
ここで、上記した製造方法の例では、オーバーコート層14の形成後、硫黄除去工程S3にて、ラップ研磨により、オーバーコート層14のうち硫黄成分が残留する表層部を研磨して除去した。
【0048】
そして、本例において製造されたカラー有機ELディスプレイ100について、発光状態を確認したところ、初期発光ではダークスポットは存在しなかった。また、オーバーコート層14の表層部について表面元素分析を行ったところ、硫黄成分は検出されず、除去されていることを確認した。
【0049】
その後、本例のものを、65℃で200時間放置し、再度、発光状態を確認したが、図3(a)に示されるように、ダークスポットは発生していなかった。なお、図3において、(a)はダークスポットが発生していない画素を示す平面図、(b)はダークスポットDが発生している画素を示す平面図であり、これらは顕微鏡観察に基づいて確認した図である。
【0050】
また、比較例として、硫黄除去工程S3を省略した以外は上記製造方法と同様にカラー有機ELディスプレイを作製した。この比較例のものでは、初期発光ではダークスポットは存在しなかったが、65℃で200時間放置した後、発光状態を確認したところ、図3(b)に示されるように、ダークスポットDが発生した。
【0051】
なお、本例においては、硫黄除去工程S3を、ラップ研磨にて行うことにより、オーバーコート層14の表面の凹凸が低減することも期待できる。また、研磨方法としては、ラップ研磨以外にも、一般的な表面研磨方法を採用してよい。
【0052】
次に、研磨以外の硫黄除去方法として、上述したUV照射、H2Oガス雰囲気中の加熱、プラズマ照射について、具体例を参照して説明する。
【0053】
[具体例1]
本例では、硫黄除去工程S3にて、ラップ研磨の代わりにUV照射を実施したこと以外は、上記製造方法と同様に行った。
【0054】
基板11にオーバーコート層14を形成した後、基板11をUV照射装置にセットし、酸素雰囲気中で20mW/cm2の照度のUVを120秒間、オーバーコート層14の表面に照射した。このUV処理後のオーバーコート層14は、処理前に比べて、膜厚が平均0.1μm減少していた。
【0055】
以下、脱水工程S4〜陰極形成工程S10を行い、本例のカラー有機ELディスプレイ100を作製した。そして、上記研磨の場合と同様に、表面元素分析を行ったところ、硫黄成分は検出されず、また、65℃で200時間放置後の発光状態を調査したが、ダークスポットは観察されなかった。
【0056】
[具体例2]
本例では、硫黄除去工程S3にて、ラップ研磨の代わりにH2Oガス雰囲気中の加熱を実施したこと以外は、上記製造方法と同様に行った。
【0057】
基板11にオーバーコート層14を形成した後、基板11をガスバリア層の成膜装置すなわちALE装置にセットした。そして、当該装置内の真空度を10-2Torrとし、カラーフィルタ層13およびオーバーコート層14の耐熱温度よりも10℃低い温度に、基板11を加熱した。
【0058】
この真空度および加熱の状態を維持したまま、窒素キャリアガスを、水タンクを透した後に、装置内に400SCCMの流量で30分間導入した。これにより、オーバーコート層14は、H2Oガスを含む雰囲気にさらされた状態で加熱される。
【0059】
以下、脱水工程S4〜陰極形成工程S10を行い、本例のカラー有機ELディスプレイ100を作製した。本例においても、硫黄成分は検出されず、また、65℃で200時間放置後においてもダークスポットは観察されなかった。
【0060】
なお、H2Oガスを含む窒素キャリアガスの導入時間、すなわちオーバーコート層14がH2Oガスを含む雰囲気にさらされた状態で加熱される処理時間を、10分、20分とした場合に、同様な評価をしたところ、上記図3(b)に示されるようなダークスポットが観察された。本例における処理時間としては、30分程度は必要である。
【0061】
[具体例3]
本例では、硫黄除去工程S3にて、ラップ研磨の代わりにアルゴン−酸素混合ガスによるプラズマ照射を実施したこと以外は、上記製造方法と同様に行った。
【0062】
基板11にオーバーコート層14を形成した後、基板11をプラズマ照射装置にセットし、装置内を20Paの圧力に調整し、アルゴンガスを80SCCM、酸素ガスを20SCCM流し、40Wの出力で、20秒間でプラズマ処理を行った。このプラズマ処理後のオーバーコート層14は、処理前に比べて、膜厚が平均0.1μm減少していた。
【0063】
以下、脱水工程S4〜陰極形成工程S10を行い、本例のカラー有機ELディスプレイ100を作製した。本例においても、硫黄成分は検出されず、また、65℃で200時間放置後においてもダークスポットは観察されなかった。
【0064】
なお、硫黄成分を除去する具体的な方法としては、上記した研磨、UV照射、H2Oガス雰囲気中の加熱、およびプラズマ照射に限定されるものではなく、オーバーコート層14の表層部の硫黄または硫黄化合物を除去するものであれば、それ以外の方法であってもよい。
【0065】
また、オーバーコート層14に添加される光重合開始剤や光増感剤に含有される硫黄成分としては、硫黄除去工程S3の次工程である脱水工程S4における加熱によって、昇華するようなものが好ましい。そのようなものを用いれば、硫黄除去工程S3の後、多少、硫黄成分が残ってたとしても、その残りは、脱水工程S4にて揮発し除去することができる。
【0066】
また、上記図1に示されるカラー有機ELディスプレイ100の構成は、あくまで一実施形態を示すものであり、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係るカラー有機ELディスプレイの概略断面図である。
【図2】上記実施形態に係るカラー有機ELディスプレイの製造方法における各工程の流れを示す工程フロー図である。
【図3】(a)はダークスポットが発生していない画素の平面図、(b)はダークスポットが発生している画素の平面図である。
【図4】顕微鏡観察に基づくダークスポットの発生部の概略断面図である。
【図5】顕微鏡観察に基づくオーバーコート層の近傍部の概略断面図である。
【符号の説明】
【0068】
11…基板、13…カラーフィルタ層、14…オーバーコート層、
20…ガスバリア層、30…有機EL構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(11)上にカラーフィルタ層(13)、オーバーコート層(14)、ガスバリア層(20)、および有機EL構造体(30)を順次形成するカラー有機ELディスプレイの製造方法において、
前記カラーフィルタ層(13)の上にオーバーコート層(14)を光重合で形成した後、前記オーバーコート層(14)の表層部の硫黄または硫黄化合物を除去する硫黄除去工程と、
続いて、前記ガスバリア層(20)の下地部分に脱水処理を施す脱水工程と、
その後、前記オーバーコート層(14)の上に、前記ガスバリア層(20)を、前記カラーフィルタ層(13)および前記オーバーコート層(14)の分解開始温度以下の温度にて原子層エピタキシャル成長法で形成するガスバリア形成工程と、を備えることを特徴とするカラー有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項2】
前記硫黄除去工程では、前記オーバーコート層(14)の表面を研磨して、硫黄または硫黄化合物を除去処理することを特徴とする請求項1に記載のカラー有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記硫黄除去工程では、前記オーバーコート層(14)の表面にUV照射を行って、硫黄または硫黄化合物を除去処理することを特徴とする請求項1に記載のカラー有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項4】
前記硫黄除去工程では、H2Oガスを含む雰囲気中にて、前記オーバーコート層(14)を加熱して、硫黄または硫黄化合物を除去処理することを特徴とする請求項1に記載のカラー有機ELディスプレイの製造方法。
【請求項5】
前記硫黄除去工程では、前記オーバーコート層(14)の表面にアルゴン−酸素混合ガスによるプラズマ照射を行って、硫黄または硫黄化合物を除去処理することを特徴とする請求項1に記載のカラー有機ELディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−42499(P2007−42499A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226699(P2005−226699)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】